日本原子力研究開発機構改革本部(第4回) 議事要旨

1.日時

平成25年8月8日(木曜日)13時30分~14時20分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 日本原子力研究開発機構改革案の基本的とりまとめ(中間とりまとめ)について

4.出席者

委員

青山委員、井手委員(代理人出席)、中西委員、宮野委員

文部科学省

下村文部科学大臣、福井文部科学副大臣、丹羽文部科学大臣政務官、山中文部科学事務次官、藤木文部科学審議官、戸谷大臣官房長、川上大臣大臣官房政策評価審議官、田中研究開発局長、田中大臣官房審議官(研究開発局担当)、増子研究開発局原子力課長

オブザーバー

松浦日本原子力研究開発機構理事長

5.議事要旨

事務局より資料に基づき説明し、日本原子力研究開発機構の改革の基本的方向について了承を得た。主な意見は以下のとおり。

<青山委員>
○今までこの会議でなされた問題提起、議論については、おおむね盛り込まれていると評価する。ただし、項目ごとにはまだ不明確なところが残っている。今後、具体的に原子力機構と詰めを行っていく中で、より具体化していただきたいことのひとつとして、改革案の中の「その他業務についても、廃止や移管も含めて抜本的に見直していく」という部分については、今回の原子力機構の解体的に再出発という趣旨が担保されるのかに大きく関わるところであり、中身に踏み込んで、今までの機構をそのまま温存させるのではないということが、中身としても人員としても予算配分としてもわかるようなかたちが求められると思う。1年間、集中改革期間とするという、いわば期限を切った目標も示されており、その1年の間に、この点についても具体化を是非お願いしたい。

○また、「新たな名称を含め、原子力機構を抜本的に改革するための法案を検討」と中間とりまとめ案に記されているが、「もんじゅ」を中心とした新たな名称などを検討して、原子力機構法の改正を早ければ次期通常国会にも出していきたいということか。
●(事務局)法案の提出については、できる限り早急に検討したいと思っている。1年に限った改革期間をきちんと視野に入れて対応していきたいと考えている。

○「もんじゅ発電所」を設置して、民間から所長経験者を安全担当役員にして現地に置くなど、「もんじゅ発電所」を稼働させる場合の責任体制や安全確保の体制が、これでかなり明確になると思う。ただし、今後、「もんじゅ」を再開する上で、長い空白を経て「もんじゅ」を何のために動かすのかという原子力政策全体の中での位置付けは必ず必要になる。分かりやすくスリム化したからといって、それだけで「もんじゅ」について、国民の理解が得られるとは限らない。東電福島第一原子力発電所事故後も、なぜ、「もんじゅ」が必要なのか、その必要性のために、あえてスリム化を行い、機構の解体的再出発もするということについて、これを文科省だけの問題とするのではなく、1年の改革期間の間に、原子力規制委員会や規制庁、経産省や総理官邸などとも連携しながら、必要な説明や取り組みをきちんと遂行していく必要がある。

○日本の原子力の問題、あるいは今までの取組は国際社会から非常に注目されている。東電福島第一原発事故後、それをどう収束するのか、そこをどうやって乗り越えていくのかということも注目されているが、同時に、蓄積されたプルトニウムを一体どうするのかということも注目されている。単に核燃料サイクルをこれからもやること、あるいは、独立性の高い原子力規制委員会ができたので、その新しい安全基準に適合した原子力発電所は再稼働させるということだけでなく、蓄積されたプルトニウムの悪しき転用が決して起きない、そういう意味での核燃料サイクルやそれに必要となるFBRの開発について、国際社会への説明が十分になる体系を作っていくためにも、今回の改革案を役立ててもらいたい。

○予見できない小さなトラブルというのは、ヒューマンエラーを含めて、どうしても起こり得ると思う。そのため、この改革案の中にある「敦賀在中の安全担当役員」については、何かトラブルが起きたときに、それがどういう意味があるのか、大きいのか小さいのか、重いのか軽いのかなど生じた事象を直ちに説明できる人を必ず配置して、理事長の直轄として連携をふだんから深めておく必要がある。初期のナトリウム漏えいのときも、漏えいしたことよりも、隠蔽を続けて、さらにはビデオの改ざんまであったということが、長期的な深刻な事態につながっており、それを繰り返さないために、運転の安全管理だけでなく、国民に情報公開を直ちにできる人材の配置とその体制をつくる必要がある。

<井手委員代理>
○今回の中間とりまとめに関して異論はない。ただ、今後の検討において、特に以下の3点について留意してほしい。
1点目は、幹部を含む全職員一人一人に、我が国の原子力を担っているという責任感と誇り、現下の状況の厳しさを共有させた上で、コンプライアンスと安全に対する意識改革を徹底しなければならない。各人の士気を向上・維持させる必要もあり、組織目標の明確化とトップの強いリーダーシップが欠かせないというのが1点目。
2点目は、放射線利用などを含む原子力利用全般に対する国民の信頼を取り戻すために抜本的な改革が必要であるが、業務の重点化や整理・統合などの動きが、国民への間違ったメッセージとならないように留意する必要がある。原子力の基礎・基盤の確保、技術継承と人材育成及び核燃料サイクルの確立というJAEAの本来目標の達成が、国として損なわれるような形の改革となってはならない。今後の原子力政策は、福島事故の真摯な反省の上に、我が国の成長戦略における原子力の役割を再考しながら策定されることになるが、その如何によらず、今回の改革が政策の実現に貢献するものにしていかなければならない。
3点目、そのためには国の一定の関与も必要となる。今回の問題の背景には、分野・業種の異なる事業所、多様な技能のメンバーを抱える組織における意識共有の難しさがあり、新体制を1つの枠に収めることには限界があるかもしれない。ガバナンスの観点からも、業務の重点化、他組織への移管、外部人材や組織の活用を視野に入れた全体最適を図る機能が必要となる。これにより、安全確保を第一としながらも、組織の冗長化や管理組織の肥大化を回避した改革を実現し、効率的な組織運営を図るべきと考える。

<中西委員>
○安全文化の醸成については、経営トップからの視点だけでなく、下からのボトムアップで、職員全員がやる気を出すような雰囲気作りや、自発的に取り組んでいくような仕掛けが必要だと思う。

○業務の重点化については、総花的な業務内容を見直すということだが、今後の具体的な見直しの中で、放射線の利用も含め研究面はきちんと担保するということを考えていってほしい。

○もんじゅの運営管理について、電力会社に全面的に頼るというよりはメーカーや電力会社の知恵全てを取り入れることを考えて、管理部門だけでなく、管理を運営する部門においてもメーカーの知恵をいれるような体制も、今後、検討してほしい。

<宮野委員>
○今回の中間とりまとめにおいて重要な点は、ひとつに「集中と選択をする」ということ、二つ目として、「拠点化の体制、一元化をして組織の簡素化を図る」ということ、三つ目として、「集中改革期間を設定して、具体化する」ということだと理解している。今後、この方針に基づいて、改革を進めていくべきだと思っている。

○原子力機構においてこれから改革への取組の具体化をしていくことになると思うが、装置というのはトラブル事が必ず起こるというのを念頭に置く必要があると思う。また、生じたトラブルについては、それが大きな問題なのか小さな問題なのかということを、リーダーの方が適切に判断して、世の中に説明していかなくてはいけないというところを忘れないでほしい。

○原子力機構には、原子力を扱う上でのリスクに対してどう取り組んでいくのかという検討をきちんとやっていただきたいが、技術というものは常に前向きにチャレンジをして、人間の役に立つものにしていくということを忘れてはならない。この原子力技術を平和利用していくということをしっかり念頭に置いて、技術を確立していく必要があると思っている。


<松浦理事長>
○日本原子力研究開発機構改革本部の取りまとめが、改革の基本的方向として示され、我々、原子力機構役職員一同、真摯に受け止めている。今後、役職員全員が自分たち自身で自分たちを改革するという、そういう覚悟を持ち、実効性のある改革に取り組んでいきたい。そして、この秋を目途に具体的な改革計画を策定するようにしたい。その上で、国民の皆様方から信頼を頂けるような、安全性を最優先とする機構に作り替えていきたいと全力を尽くす覚悟でいる。

○今日の会合で示された御意見の中で、深く考えているところとしては、「もんじゅ」に関してであるが、将来の「もんじゅ」の位置付けについて、国として改めて、どういうものかということをしっかりと示していただくのが非常に大切だと思っている。「もんじゅ」の位置付けを機構自身でいくら考えても、それだけでは社会の納得を得ることは難しい。国として、この位置付けをしっかりと定めていただくことが、ここに働く職員のインセンティブを決定的に高める上で非常に重要だと思っている。

○「もんじゅ」のこれまでの経緯の中で一番大変だったのは、止まっている時間が多く、止まっている時間が長いゆえに、いろいろ問題が深刻化し、また難しくなったものと考えている。しかも、止まった原因については、設計上、原子炉の炉心の一番中心の部分、炉心の安全性、あるいは、その制御の確実性に問題があったというよりも、それ以外のところでの問題によるトラブルが多かった。
こういうような問題は、例えば、規制委員会から指摘されている点検の不備に関して、いかに点検をちゃんとやっていても、事前に把握することが難しい部分があると思う。もしこれを事前に把握しようとすると、設計そのものにさかのぼって確認をし直すことが必要であり、多大な時間、人力、費用がかかると思うが、ちゃんとやっていけば、問題点をあらかじめ見出す確率は高いと思うので、着実にしっかりやっていきたい。

○原子炉の炉心の中心部分の問題ならもちろんであるが、それ以外の部分に関して何か問題が起こったときにも、それに対する対応が素早くできるという内部的な体制とともに、それを社会から認めていただけるような雰囲気をつくるも必要であると思っている。これらが今後の「もんじゅ」を進めていく上で非常に重要なことだと考えており、これらを踏まえて、今後の機構の改革及び「もんじゅ」の運転再開及び研究開発の業務について、十分慎重に行っていきたいと考えている。

<下村大臣>
○「もんじゅ」の保守点検不備などに端を発した原子力機構の改革を行ってきたが、「もんじゅ」自体の重要性は従来から変わっていないと考えている。今後、改めて政府として、核燃料サイクル、「もんじゅ」の位置付け、在り方について明確な見解、あるいは方向性を明示し、国民の皆さんに理解してもらえるかたちで出すことが必要であり、私どもも、「もんじゅ」については、特に「もんじゅ」の位置付けについてはっきりさせるよう、先頭に立って活動をしてまいりたい。

○今後、原子力機構には、本日頂いた意見を含め、本日示した基本的方針に従って、早急に具体的な改革計画を策定し、着実に改革を進展させていくことを求めたい。改革本部としても、原子力機構が策定する具体的な計画の妥当性をチェックするとともに、その計画の実施状況を適宜フォローしていきたい。

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研究開発局原子力課