日本原子力研究開発機構改革本部(第2回) 議事要旨

1.日時

平成25年7月4日(木曜日)9時~10時

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 日本原子力研究開発機構が重点化すべき業務の在り方について

4.出席者

委員

青山委員、井手委員、柘植委員、中西委員、宮野委員

文部科学省

下村文部科学大臣、丹羽文部科学大臣政務官、森口文部科学事務次官、藤木文部科学審議官、前川大臣官房長、田中大臣官房総括審議官、土屋科学技術・学術政策局長、戸谷研究開発局長、田中大臣官房審議官(研究開発局担当)、増子研究開発局原子力課長

オブザーバー

松浦日本原子力研究開発機構理事長

5.議事要旨

事務局より資料に基づき説明した内容について、以下の意見があった。

(青山委員)
○ JAEAの業務については、良く言えば、原子力や放射線とその周辺をめぐって、唯一、総合的に取り組んでいる組織といえるが、実体からすると、かなり総花的にたくさん手を出していて、肝心要のもんじゅが全くうまくいっていないというのが現状である。その現状をどうすべきかの方針を出すことがこの改革本部において目指すべきものであると考える。JAEAの事業の内容を整理するのか、しないのか、もんじゅの扱いをどうするのか、いままでどおりJAEAが全部抱えて運営していくのか、電気事業者を含めて新しい連携でやっていくのかを議論した方がいい。

○ また、海外から「JAEA-Japan Atomic Energy Agency」という名称と中身が矛盾しているといわれることがある。今後、業務の重点化を整理・統合していく上で海外に発信していく必要があるため、名称についても見直す必要がある。原子力について総花的に何でも引き受けて研究を行っているというのではなく、核燃料サイクルを安全に行うために、その周辺技術の研究も含め利潤・利益を生まないものであっても国として取り組むというのが趣旨だと思う。その原点がわかるような整理の仕方をやるべき。

○ 例えば、サンディア国立研究所は、核兵器の研究をも遂行しているので日本とは目的は違うものの、民間会社(ロッキード)が運営していて、米原子力政策を根幹から支えている。政府所有で、民間が運営している本研究所の体制は、今回のJAEA改革の議論の参考になると考える。

(井手委員)
○ 原子力利用について社会の目は大変厳しく、今後の原発の再稼働に際して国民の関心も高まっていくものと考えられる。批判の的は様々だが、福島の廃炉と核燃料サイクルの不完全さ、例えば高レベル放射性廃棄物の処分、プルトニウムの利用の目処(めど)が明確化できていないことなどが代表である。
JAEAの業務としては、福島廃炉実現に寄与する研究、核燃料サイクル実現に寄与する高速増殖炉や放射性廃棄物分野の研究開発については、外すことはできないと考える。むしろ、これらについては今後、活発に行うべき業務ではないか。

○ 重点化すべき業務の在り方において強化すべき組織機能については、コンプライアンスや安全管理、広い意味で広報について、なぜ機能しないかを的確に把握した上で、当該組織の権限強化を行い、これにかけるトップの強い意志を周知・徹底しなくてはいけないと考える。また、CSRについても、JAEAに期待されているのは、我が国が永続的に有効に原子力を活用できるようにするための活動を、その他の社会的責任は果たしながら遂行することであり、ステークホルダー、特に国民に対する説明をしっかりしなくてはいけない。そのために内部統制やCSRには強い権限を与えるべき。

(柘植委員)
○ 原子力の基礎基盤研究、人材育成は、単独ではJAEAの業務としては意味が薄い。原子力安全性向上研究における軽水炉の社会的な定着や需要がなければ、基盤研究も、人材育成も機構の役割としては社会的価値が薄い。基礎研究、人材育成は、安全性向上研究とリンクさせる取組となるべきものである。

○ 前回、社会的使命、原因の深掘りの必要性、巨大・複雑なシステムのマネジメント能力について意見したが、今回、新たに国としての重要な視点を、機構改革の視座にいれての改革構想を構築することの重要性について提言したい。
日本の軽水炉発電プラントは、草創期においては事業者も行政の規制側も推進側もそれぞれの観点から、自主技術化と安全性の向上に向けて投資を行い、技術とともに人材も育ってきたが、あるときから急に、「安全性については確立した軽水炉」として事業側も行政の側も「安全神話に自縄自縛」されてしまった。
同時に、本来中立的な立場で「飽くなき安全性の向上に対する社会的使命」を持つべき旧日本原子力研究所は、動燃との合体により、その社会的使命の発揮機能を失ってしまった。
福島原発事故はこのような日本全体の大きな油断・怠慢に根っこを持つ。今の日本は規制体制の強化はなされたが、本質的に「飽くなき安全性を高める実質的・継続的活動」をする機関が空洞化している。
原子力研究開発機構はこのオール・ジャパンの視点も堅持して、機構改革を設計すべきであり、文部科学省もこの視座を堅持し、関連省庁とも協働して、国政に反映することが極めて重要である。

○ 福島原発事故処理の研究は最大のプライオリティだが、産業競争力の場を主として、それを国がサポートしていくことで、JAEAが行っている福島事故対応の業務は合理化できると思う。

○国の下で、言われたことをやっていればいいという受け身の姿勢でいるのではなくJAEAは自身のあるべき姿を自分たちで考えるべきで、機構が国との関係の中で自主的に職務を遂行できるよう機構改革の設計をするべき。

○ 米国サンディア国立研究所では産業にコントラクトしていて、産業との一体化というコントラクトは機構改革の中で議論される方がいい。この議論の中で福島の研究開発も合理化できるのではないかと思う。

(中西委員)
○ エネルギー関係の観点ばかりで、放射線利用という観点がでてこない。日本市場において、工業利用や医療利用などの放射線利用が原子力利用の半数以上を占めている。放射線利用における安全性についても考える必要がある。また、旧原子力研究所に科学技術の高い蓄積がある。新しいイノベーションを起こすような蓄積が原研にはあるから基礎研究もしっかりやってもらう必要がある。

(宮野委員)
○ JAEAが取り組むべき研究開発においては、原子力安全の確保に関することが重点化すべきものである。原子力安全について、原子力利用と一体のものでなくてはいけない。規制研究は従前、原子力利用と別枠で行っていたが、原子力利用と規制研究を原子力安全という中で一体化して取り組むべきではないか。
原子力を安全に利用するということが原子力の第一原則であり、産官学が一体となって進めることが望ましい。その中でどのように進めるか、なぜ必要か、どのように選択されたかを踏まえて方向性を検討すべき。そのためには国として、原子力安全に関わる技術戦略マップ、ロードマップをしっかり作って、ニーズをとらえて、ニーズに対する目的、課題、研究課題がどこにあって、何ができるかということを示すことが必要。国の研究だけでなく民間、学術界の研究を合わせて、どういう方向にあるのかという認識をした上で、国、JAEAがどのように研究開発に取り組むべきかを示していく必要がある。これを進めていくには学会を活用することも方法のひとつ。JAEAだけが単独でまとめるのでなく、全体として学術分野をどう確立していくのか、原子力安全を確立にしていくのかをまとめるような仕組みをつくるのが第一。その役割が、重点化すべき業務の中の最大の役割。その中でJAEAがやるべき研究がおのずから見えてくるのではないか。

○ リスク評価をやっていく、リスク評価においては国民のコンセンサスを得るといった原子力を社会的に需要されるものにどのようにもっていくのかを研究開発としてやっているところはない。原子力安全をどのように扱うのかについて、技術的な問題だけでなく、社会に受け入れられるにはどうすればいいのかを含めて考えていく役割をJAEAは担うべき。

○ 規制委員会の中でどのように人材を育成するのか、原子力の基礎研究を行い、原子力の基礎基盤をつくっていく人材をどこが育成していくのかという問題がある。民間で基盤的な人材を育成していくのは難しい。JAEAには、原子力人材の育成において重要な役割が期待される。

○ 福島の対策をどうするかというのもあるが、JAEAとして何をするとどう貢献できるかが明確になっていなければいけない。文部科学省の研究予算についても、福島の研究ということでたくさん提案があがってきていると思うが、役立つ先が決まっていないと何を選択したらいいのか判断できない。どういったところをやるべきかという議論を進め、全体の方向性を明確にした上で研究開発の具体的な内容を出していく仕組みが必要だと思う。

○ 産業界と一緒にやるのはいいことだが、現状では、日本の産業はJAEAに関与せず、海外に依存している。以前、JAEAをいかに使うかということを議論したこともあったが、日本のものを使わない理由としては納期や効率が悪いという意見がある。何をターゲットにするのか、いつまでにどういう目標でやるのかということが明確でないと産業界とうまい関係を築けない。JAEAの組織の仕組みと体制をしっかりしないと産業界と一緒にならないのではないかと思う。

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研究開発局原子力課