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原子力損害賠償紛争審査会(第9回) 議事録

1.日時

平成23年7月1日(金曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省旧文部省庁舎6階 第2講堂

3.議題

  1. 中間指針作成に向けた論点について
  2. その他

4.出席者

委員

能見会長、大塚委員、鎌田委員、高橋委員、田中委員、野村委員、米倉委員

文部科学省

笹木文部科学副大臣、林文部科学大臣政務官、清水文部科学事務次官、森口文部科学審議官、土屋大臣官房長、藤木研究開発局長、田中原子力損害賠償対策室長、田口原子力損害賠償対策室次長

内閣官房

加藤 原子力発電所事故による経済被害対応室審議官、川上 原子力発電所事故による経済被害対応室審議官

5.議事録

【田口原子力損害賠償対策室次長】  ただいま能見会長と連絡がとれまして、まだ渋滞を脱することができないでいるということでございますので、まずお手元の資料を事務的に確認させていただきたいと思います。
 第9回原子力損害賠償紛争審査会、議事次第が1枚ございます。そこに配付資料としまして6種類用意してございます。まず、資料1といたしまして、中間指針の論点(案)というものでございます。資料2につきましては、公共用地の取得に伴う損失補償における転業等に必要となる期間についてということで、参考資料を用意させていただいてございます。資料3-1から3-3が、諸外国の規制措置等の資料でございまして、資料3-1が、食品関係の輸入に関する措置でございます。6月28日現在のものでございます。資料3-2が、日本への渡航に関する勧告等でございます。それぞれの国について、一番初めのものと最新のものを一覧の表にしてございます。資料3-3は、若干字が小さくて恐縮でございますが、鉱工業品の関係で、各国が行っている措置の内容。具体的には、輸入品目に対する放射能検査ということになります。資料4でございますが、これはいわゆる「間接被害」に関する判決の例ということで、3枚にわたりまして幾つかの裁判例ないしは判例を資料として用意させていただいてございます。
 能見会長からは、資料1について、中間指針の論点とございますが、これは事務局で能見会長の指示に基づきましてつくらせていただいたものでございますので、これについて、事前に説明をしておいてほしいということですので、資料1について、事務局からご説明を申し上げたいと思います。
 第1でございますが、指針の位置づけでございます。この指針の位置づけにつきましては、これまでも審査会でたびたびご議論がございましたが、そこに大きく2つ書いてございます。指針自体は、賠償すべき損害と認められた一定の類型を示すものでございまして、指針に示されていないものも個別の事情によって原子力損害と認められ得るということ。あるいは、今回、取りまとめを目指してございます中間指針におきましては、当面の被害のうち、類型化が可能で賠償すべき損害について示しますが、今後、事故の収束、避難区域等の見直しなどの状況の変化に伴って、必要に応じて改めて検討を行うということでございます。
 これは第一次指針にもこの項目がございましたが、各損害項目に共通する考え方として、ここでは5点挙げさせていただいてございます。このうち、1番、2番、4番、5番については、第一次指針に既に書いてあるものでございまして、原子力損害の基本的な考え方、あるいはJCOの例は参考にすべきであるけれども、本件事故はそれとは比べものにならない範囲、あるいは内容を含んでございますので、そこを十分に考慮しなければいけない。3につきましては、第一次指針にはなかった項目でございますが、地震・津波による被害との関係について、原則論を記載するということでございます。4番目、5番目は、これも一次指針にあったものでございますが、広範な損害や被害者の数を踏まえて、合理的な方法を行う必要がある。さらには、東京電力において支払い等において、合理的かつ柔軟な対応が求められるということでございます。
 それから、次の第3番から具体的な損害の内容に入ってまいりますが、これも一次指針の順番に従って申しますと、まず、政府による避難等の指示に係る損害ということで、対象区域については、既にこれまで避難区域あるいは警戒区域、屋内退避区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域、これにつきまして、一次指針、二次指針で記述してございますが、前回の審査会で説明、原災本部から説明がございましたように、今後、特定避難勧奨地点、これらを追加していくものがあるかということでございます。
 損害項目といたしましては、検査費用あるいは避難費用、生命・身体的損害、精神的損害、営業損害等ございますが、このうち生命・身体的損害につきましては、以前の審査会で議論がございましたが、PTSDなどの精神疾患などもこの中に含まれるということを明記するということになるかと思います。
 営業損害につきましては、一次指針において幾つかの検討課題が、今後検討するということで残されてございまして、1つは、1ページの一番下にございます、廃業や倒産の場合の損害の算定方法、あるいは終期の判断がございます。
 2ページに参りまして、現在、専門委員によるさまざまな分野の産業あるいは業態について調査をしてございますが、それも踏まえて、必要な損害類型を追加的に示してはどうかということでございます。
 6番の就労不能に伴う損害についても、終期の判断について、一次指針で宿題となってございます。
 さらに、物の検査費用あるいは財物価値の喪失、減少といったものがございます。
 能見会長がいらっしゃいましたが、このまま資料の説明を一通りさせていただきます。
 8番目の財物価値の喪失または減少のところでは、除染をする場合の考え方、特に除染費用がそのものの価値を超えてしまう場合、こういったものの取り扱いの考え方について検討する必要があるということでございます。
 これはJCOのときもございましたが、不動産を担保とする融資の拒絶、賃貸借契約の解除等の取り扱いについてどうするか。これが一次指針で宿題となってございます。ここについては、専門委員の調査結果を踏まえて、中間指針の中に記載していくということになるかと思います。
 4番目といたしまして、政府による航行禁止区域設定等に係る損害についてということで、一次指針において、航行禁止区域の漁業あるいは海運について記載をさせていただいてございましたが、別途、飛行禁止区域、これも設定されてございまして、航空路の変更等が行われてございますので、これを損害項目の中に加えていってはどうかということでございます。
 3ページに参りまして、政府による出荷制限指示等に係る損害ということで、これは農産物を中心として記載してまいりましたが、食品加工等にも基準値を上回る例が出てきてございますので、これについてきちんと読めるような形でここを構成していくということになるかと思います。
 第6が新しい項目として記載してございますが、タイトルは最終的にどうするかというのは、今後検討でございますが、その他の政府指示等に係る損害ということで、水道水の摂取制限を実施した水道事業者等の損害、及び政府の指導等に基づき、放射性物質が検出された上下水処理等副次産物、いわゆる汚泥でございますが、これの取り扱いを行った事業者の損害というものを営業損害、就労不能損害、その他、検査費用、除染費用の追加的費用、こういったものが考えられるということで、これも専門委員の調査を今取りまとめているところでございますので、この結果も見ながら中間指針に示していくということになるかと思います。
 第7のいわゆる風評被害についてでございますが、ここでは、一般基準は第二次指針で示してございますが、農林漁業、観光業、あるいはその他の業種における風評被害について、これはまさに専門委員において市場調査等を今取りまとめの最終段階をやっているところでございまして、次回、次々回以降の審査会において、その結果を踏まえながら検討していくということになるかと思います。
 4ページでございます。第一次指針の中に今後検討ということが書いてございましたが、間接被害者の損害(いわゆる間接被害)について、これから審査会の検討の中で、相当因果関係のある類型をどこまで示せるのかという問題があるかと思います。
 第9でございますが、これは事故の復旧作業の従事者等、相当量の放射線被ばくをした者に対する損害ということで、生命・身体的損害あるいは精神的損害、こういうものが項目として考えられます。
 その他といたしまして、これも第一次指針の中で検討事項になってございますが、災害救助法等、被害者への各種給付金がございますが、これと損害賠償金との関係、具体的には、損益相殺をするのか、控除するのか、しないのかという問題がございます。これについては、関係行政機関の協力を得ながら、今事務局で整理中でございます。
 さらには、地方公共団体等の独自の財産的損害ということで、先ほど出てまいりました上水あるいは下水道事業のような事業体としての事業は営業損害で見るにしても、その他地方公共団体の独自の損害、これについても専門委員で現在調査中ということでございます。
 2ページ、3ページ、4ページにそれぞれ括弧の中で論点が書いてございますが、これは後の議論でまた改めて説明をさせていただきたいと思います。
 資料1の説明は以上でございます。

【能見会長】  おくれて大変申しわけございませんでした。この後、私が司会を引き続きしたいと思いますが、今説明がありましたように、どういうテーマをここで扱うかという全体の構成についての説明と、少し資料など用意しないと議論が難しいだろうと、また時間がかかるかもしれないというテーマについて、別途、括弧の中に多少論点も詳しく書いた上で、これについてはまた別途ご議論いただきたいと思っております。
 そういうことで、最初に、全体の構成、あるいは全体の構成で、こういうものが落ちているけれども、こういうものを入れたほうがいいではないかとか、構成の組み直し、そんな点についてご議論いただけるとありがたいと思っております。
 それでは、皆様からご意見がございましたら、お願いいたします。
 多少、後でもって特別に議論するテーマは、それなりに時間を用意しておりますけれども、そこに少し関連するテーマでももちろん、全体の構成に関係することであれば構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。
 事務局の案は、私自身ももちろん関与しているのですが、今自分で見て、こういう点はどういうふうに扱ったらいいかという点を改めて思ったんですが、最近、内部被ばくであるとか、放射能にある程度汚染しているけれども、まだ健康被害にまでは至ってないと、そういう人についてどう扱ったらいいかという問題がございます。今、全体の構成では、第9のところで、事故の復旧作業に関与した人たちについては、ある程度の放射線の被ばくを受けていることが考えられますので、そういう人々に対して、生命・身体についての損害、精神的損害という項目が4ページに取り上げられております。
 復旧作業に関係したものではなくて、ごく普通の一般の住民についても被ばくをしている方々が現にある程度おられると聞いておりますが、そういう方がまだ健康被害は発生していないけれども、放射能を浴びたことによる精神的損害ということになるかと思いますが、最初、私、第9のところであわせて考えればいいのかなと思っていたんですけれども、もしかしたら今の点は復旧作業者ではないので、別途項目を設けたほうがいいかもしれないと思いました。私の意見ですけれども。
 こんなような類似する問題等についてのご意見があれば、お願いいたします。
 全体の構成についてはよろしいですか。
 それでは、資料を踏まえながら議論したほうがいいという個別の論点の議論に移りたいと思います。こういった個別の論点といたしましては、就労不能等に伴う損害について、そもそもどういうふうに考えたらいいか。あるいは、こういった損害については、一定の終期というものを考えたほうがいいのかどうかという問題が第1でございます。
 それから、第2番目は、いわゆる風評被害のうち、外国人が介在する被害。関与の仕方はいろいろあるのですけれども、その関与の仕方も含めて少し検討したほうがいいだろうと。
 それから、3番目に、間接被害者に生じた損害。いずれも、理論的にもなかなか難しい問題点を含んでおりますので、先ほど申し上げたように、少し資料、あるいは論点を整理したものをこれからご紹介してご議論いただきたいと思います。
 それでは、順次といいますか、それぞれ別に分けて議論したほうがいいと思いますので、営業損害とか就労不能に伴う損害に関連する問題ということで、これの説明をお願いします。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  資料1の2ページの括弧の中でございます。ここは、避難等の指示の区域に係る損害でございますが、この中で、営業損害及び就労不能に伴う損害、さらには、営業損害のうち廃業や倒産に至った場合の損害の算定方法、こういったものが一次指針で今後の検討課題として挙げられてございます。
 現在、事故そのものがまだ収束しない中で、中間指針においてこれらをどう扱うかということが1つの大きな検討課題と認識してございます。
 具体的には、そこの丸1から丸3でございますが、事故が収束してないというところで、損害の終期をどのような形式で記述するかという問題でございます。具体的には、この段階で期限を具体的に切って示す方法、あるいは指示解除等の今後考えられるステップを踏まえて、そこから一定期間などの記述、あるいは指示解除後、具体的な期間を記述する、そういったいろいろな選択肢があるかと存じます。
 その際に考慮するべき事項として、期限を切らない形で、そのまま損害が継続するとした場合、例えば被害者側にとって、転業や再就職の意欲、あるいはその見通し、今度は逆に、被害者からいたしますと、避難等区域に戻って、以前の仕事を行いたいと、そういう希望をお持ちの方がたくさん、ほとんどだと思いますが、そういったものとの関係で、こういったものをどう考えるかということでございます。
 2番目といたしまして、損害額の算定に当たって、営業損害にしましても、就労不能につきましても、損害発生中、賠償が行われる期間中に得た他の収入を控除するか否か、あるいは控除するとしても、どの程度控除するのかという問題がございます。ここについては、現に今、被災地で例えば緊急時避難準備区域の警備等を地元の雇用でという話がございますが、そこに当たって、就労をして収入を、日当を得ても、その分が損害から控除されるということであれば、ある意味ではモラルハザードのようなことが起こってしまうのではないかという懸念が実際、現場で提起をされてございます。
 3番目は、これは上の営業損害、就労不能と直接は関係ないのですが、その考え方で後ほどご説明するところで若干関係が出てきますが、廃業する場合の損害の算定方法、これにつきましては、残存の資産価値、あるいは一定期間の逸失利益とする考え方があるかと思いますが、これについても中間指針の中で、どのような形で示していくかというものがございます。
 それから、資料2で示してございますが、損害賠償ではなくて、補償の基準ではございますが、昭和37年に閣議決定して以来、各省で基準等をつくって運用してまいりました公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱というのがございます。あるいは、就労不能につきましては、例えば雇用保険の失業等給付、これの期間、こういったものが参考となるかどうかというものがございます。
 これにつきましても、専門委員でただいま調査結果をまとめているところではございますが、審査会本体でもご議論いただければと思ってございます。
 その資料2でございますが、公共用地の取得に伴う損失補償の基準でございます。この中には、ここに書いてございますように、営業廃止に伴う転業、あるいは営業休止に係る補償期間というのが業種ごとに示されてございます。
 具体的な条文は、後ろの2枚目、3枚目にございますが、1枚目にそれを要約したものが書いてございます。この基準によりますと、商工業等の一般の営業の場合は、この営業廃止に伴う転業に必要となる期間というのを2年以内、ただし、括弧で書いてございますように、特別な場合は3年、あるいは営業休止に係る補償期間は、工事期間もしくは2から4カ月に準備期間を加えたものという規定がございます。
 農業の場合は、これが営業廃止は3年、あるいは漁業は4年ということで、業種ごとにそれぞれ異なる期間が定められてございます。
 また、それぞれに関して、離職者に係る補償期間ということで、再就職に通常必要な期間として最長1年という基準が定められて、その上のところにございますが、各中央省庁等で構成されます連絡協議会で、基準あるいは細則を定めて運用をしているということでございます。
 こういったものが例えば廃業する場合の算定方法、ないしは損害の終期を考えるに当たって参考となり得るものとして、とりあえず、今日、資料を用意させていただいてございます。
 説明は以上でございます。

【能見会長】  なかなか直ちに問題点がどこにあるかというのはつかみにくい問題かもしれませんけれども、何か質問等も含めて、ご議論があればお願いしたいと思います。
 この丸1、丸2、丸3、多少違った問題ですので、順次検討していただければと思いますが、損害の終期というんでしょうか、中間指針でもって何かそういうものを書くかどうか。前にも書いたほうがいいというご意見も審査会の中にはあったかと思いますけれども、いかがでしょうか。
 野村委員、どうぞ。

【野村委員】  最後の資料で、判例があげられてましたが、公共用地の損失補償とか雇用保険というのは、給付額は、必ずしも損害とリンクして決めているものではないわけですよね。だから、ある程度、これらの制度では、期間を決めて給付しているというのは、それなりの理由があると思うのですけれども、損害賠償の場合に、ずっと損害が続いているときに、被害者がどういう行動をとらなくてはならないのかという、損害軽減義務みたいなものを強く言うのは難しいのかなと思います。そうはいっても、やはりある程度、期間を区切れるものなら区切ったほうがいいのではないかという気がしています。そのためには、従来、裁判例の中で、損害賠償の分野でそういうことがあるかのかどうかという、その辺が、最後の資料は、間接損害を整理したものですが、同じように期間によって定められる損害額が従来の裁判例から抽出できれば、考えたほうがいいのではないかと思うのですけれども。

【能見会長】  これは終期といいますか、算定方法とも関係するのでしょうけれども、例えば避難区域の指定がずっと続いていて、そこでの営業、あるいは就労などができない。そういうときに、ある意味で損害はずっと続いているのですけれども、果たして、無限にというんでしょうか、無限に続くという形で算定するのか、あるいはどこかで一括して精算するような形で損害を評価して、賠償の額を決めてしまうのか、そういう問題ともおそらく関連するんだろうと思いますね。
 今の問題、そういう意味では、丸3の廃業する場合の算定方法をどうするかということとも関係する。ただ、営業を実際に続けられるという言葉はあいまいな言葉かもしれませんけれども、そこに将来戻る可能性があって、営業を続けることができるんだという可能性があるときに、戻る可能性が非常に遠い将来なので、ここで廃業するという扱いをして、一括精算するんだということを強制できるのかどうかということも含めて、ちょっと問題があるかもしれません。
 そういう意味で、ここではどういう方向でやるべきかという方向性を打ち出しているわけではなくて、こういう論点についてどう考えるかということの率直なご意見を伺いたいと思っております。
 それから、野村委員が言われた資料2の公共用地の取得に伴う損失補償で、それに基づいて、2ページの今の6の就労不能等に伴う損害のところの括弧の中の3番目のポツのところで、これが資料として挙げられているわけですけれども、確かにこれは公共用地の収用の場合の損失補償で、東京電力に賠償責任があるという前提のもとで考えたときの損害賠償とはやはり違う問題を扱っていますので、こういうものを果たして根拠にしていいのかどうかということ自体、ここでご議論いただければと思っております。野村委員が、そういう意味でおっしゃった点は、そのとおりだと思います。
 判例が、損害賠償の場合についても、一定の期間を区切って賠償額を算定するということをしているのかどうかということについて、まだ調査中ですけれども、今までの調べた限りでは、そういうものは出てこなかったと理解しております。
 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ、高橋委員。

【高橋委員】  今ご紹介いただいた損失補償要綱ですが、基本的には、損失補償の考え方というのは、収用の前と後で、収用された方の財産的な状況が基本的に変わりないという考え方に基づいて補償する、また、それに加えて通常存すべき損害を補償するという考え方に基づいたものでございます。損害賠償理論とどういう関係になるかわからないのですが、ただ、基本的には生じた不利益については、財産的にきちんと同等なところまで補償する、付随的な損失についても合理的な範囲のものは保障するという考え方に基づいている基準だということは押さえておいていただければありがたい、というのが第1点です。 それから、第2点ですが、これを見ても、例えば営業廃止や休止もそうだと思うんですけれども、1つは、これは面的な補償にも適用があるとしても、今回のように地域全体がある種、大きな被害を受けて、容易に代替するような仕事が見つからないといった場合を想定しているものではありません。例えばダムで底地が沈んでしまっただとか。ですから、そういった意味では、一般的な経験則に従って、2年とか2カ月、4カ月という話をしておりますので、そこは、私としては長目に見るということもあってよい、というのが第2点です。
 もう一つは、ただ2年とかいう話になりますと、収束してない段階でどうなのかなということがあります。今回、必ずしも2年先まで予想しなければならないのか。そこはとりあえず1年程度のものを見通して、この間は、現在確実にいえる範囲のものを賠償の対象とし、その段階でさらに事態が変わったらば考え直すということもあるのではないかと思います。その辺も、選択肢としてはご検討いただければありがたいと思っております。
 以上です。

【能見会長】  どうもありがとうございました。
 他にいかがですか。大塚委員。

【大塚委員】  幾つかありますけれども、細かいほうからいきますと、丸3の廃業する場合の算定方法ですけれども、これは残存した価値と一定期間の逸失利益というと、両方考え方があるとは思いますが、今回、避難をしてしまって廃業せざるを得なかった、営業譲渡もできないということを考えると、残存資産価値のほうがいいのではないかなと私は考えています。ただ、これは、考え方は両方あると思います。
 それから、下からさかのぼっていって丸2ですけれども、これは、先ほど野村委員が言われたこととも関係しますが、損害の拡大防止義務とかいう話は、民法学界で20年前ぐらいから出てきてはいますので、こういうことは多少は考えざるを得ないところはあるのかなとは思っています。
 丸1が多分、今一番大事な問題なんだと思うんですけれども、公共用地の取得に伴う損失補償における転業等というのは、例えばダムの話だと、高橋委員にもお伺いしたいところがありますけれども、これは結構、村がなくなったりするようなところもあるので、似てるところが一部はあるかと思うんですけれども、他方で、今回は不法行為なわけなので、そこが大きく違うということがあるのと、いろいろな委員の方が既に言われたように、元の居住地に戻れるかどうか、いつ戻れるか、少し長くなるのかどうかというあたりがよくわからない状況で、算定をしなくてはいけないとか、何年間ということを考えなくてはいけないということになってくると、少し違うことを考えないといけない、避難をされた方も、どういうふうに損害を回避したらいいかということがわかりにくいというところを考慮しないといけないと感じています。
 それから、能見会長にお伺いしたいんですけれども、判例で、カラオケの営業に関して、損害回避をしないで休業損害とか営業損害を求めたものについて、1年7カ月分しか認めないといった判決などがあり過去の判決の中で参考にできるものがあるのではないかとは思っております。

【能見会長】  そういう損害について、損害軽減義務というんでしょうか、営業損害について、一体いつまでとれるかという問題だと思いますけれども、それについてはさらに調査をしたいと思います。
 いろいろな論点が微妙に重なり合っているけれども、それなりに独立性があるところもあって、なかなか議論がしにくいんですけれども、今、大塚委員が最後言われたのは、営業損害について、一定期間の逸失利益を計算するというときの期間に関連する問題ということですかね。

【大塚委員】  はい。

【能見会長】  残存資産価値と一定期間の逸失利益との関係、損害軽減義務ということを、そういう問題があるということは承知しながらも、それを考慮に入れないで考えると、原子力の事故によって、営業が実際できなくなって、廃業状態になっていると。そのときに、まず第1におそらく問題が生じるのは、いつ再開できるかわからないので、被災者でも、この際、転業するとか、新たな道を見つけて別なことをやると。そういう意味では、廃業を選択するという問題が出てきて、そうすると、廃業を選択したときにどういう損害というものを請求できるかという問題があるだろうと思うのですね。そういう積極的な選択をしないで、ずっと営業ができないという状態が続いていると、これは、けがなどをして仕事ができないために、逸失利益が毎期間ずつ発生するのと似ていて、そういう意味では逸失利益の問題が生じると。
 ただ、けがなんかの場合と違って、営業というときには、人間のけがですと、就労可能年数とかいうので一定の期間もありますけれども、営業の場合には、特別、そういう期間の設定も考えられないので、ある意味で永久に続くところがあるので、果たしてそれでいいのかと。やっぱり一定の合理的な期間があるのかという問題になってくるのではないかと思います。
 あるいは、考え方として、毎期、毎期の逸失利益ではなくて、これは特に廃業を選択したり、あるいは事実上、就業不能なので、廃業と同じだという考え方をとる場合かもしれませんが、そうすると、営業の価値というんですか、ここら辺は私もあまり十分勉強してない点ですけれども、会社なんかですと、会社のゴーイングコンサーンとしての価値というのがあるんだと思いますが、そういう価値をどうやって評価するかという問題。その部分が全部ゼロになるということですから、そんな賠償の仕方がある。いろいろな賠償の仕方がある。
 かつ、問題を複雑にしているのは、被災者の選択によって多少影響が、どの賠償方法をとるかというのが影響してくる可能性がある。そんな問題点がこの3に関してはあるのかなと思いました。
 それとの関係で、公共用地の取得に関する補償の基準というもので、一定の期間を定めているのが使えるのか、使えないのかというのが3に関する、私の理解する問題なんですが、また皆様のご意見を伺えればと思います。
 では、先に田中委員。

【田中委員】  1点確認したいというか、確認、なかなかできないんですが、この「指示解除後一定期間」、その指示解除というのがどういう条件で出されるかということなんです。一般的に言うと、今、避難をしているという状況ですから、避難をしなくてもいいですよというのが指示解除だとすると……。

【能見会長】  図式的にそうですね。

【田中委員】  そうすると、それがいつなされるのかというと、これがまた見えないんですね。そこが1つ。仮に指示解除や、避難しなくてもいいですよと言われたときに、今度は選択の問題というのが出てくると思うんですね。農業する人は、地元に帰って続けたいという人もかなりおられるだろうし、若い勤め人は、ほかでいいという方も出てくると。そういう場合の損害というのは、ある程度、ご専門の立場からいろいろ評価できるのかなというのが1つ。そんなところを1つ、終期というのを言う場合に、なかなか難しいなというのが1つあります。
 それから、さっきダムの問題も出ていましたけれども、ダムなんかの場合は代替地というのがあるんですが、今回はあまりにも広過ぎまして、今の状態だと、代替地というのはあり得ないんだと思うんですね。例えば飯舘村でも240平方キロメートルありますから、そんなの日本中、どこ探したって見つからないわけですから、そういうときに、どういうふうにするのかなというと、私はやはり、こういった被害を軽減する義務というのを十分に果たした上で、賠償の議論ができるようにする状況をつくっていくことが大事なんじゃないかなと、意見にもなってないですが。

【能見会長】  大変参考になります。
 続いて、鎌田委員。

【鎌田委員】  終期にかかわる問題、これまでの議論の中でも出てきたんですけれども、終期が問題になるのも、いろいろな場面があって、これまでの議論も、必ずしもここの営業損害、就労不能にかかわる終期の議論だけがされてきたのでないと思うんです。
 その中で、営業損害、就労不能に関しての終期を定めるということの現時点での問題意識は、正直言って必ずしも十分には理解できてないところがなおあります。
 というのは、1つは、今までご指摘がありましたように、これから先、指示が解除されて、もとへ戻れるようになるのか、あるいは二度と立ち入れなくなるのかということによっても変わってくるんでしょうし、それがいつ、どんな形でなるのかがわからない段階で決めることはかなり難しいと思うのです。
 それともう一つは、営業の形態、内容、あるいは使用者なのか被用者なのかによっても全部個別で違うんじゃないかということで、これは一律の基準にはならないのではないかということです。例えば、ここまで包括的な指針にするのかどうかわかりませんが、パートの労働者の人がいて、このまま待っていても、今まで勤務していたところは二度と復活しないだろうというときでも、解除されてから一定期間が経過するまではずっと働かないでいても補償がもらえるとするのが妥当なのか、容易に転職先が見つかるような場合と、そうでない場合と区別する必要はないかということが問題になりますし、この公共用地の取得に伴う損失補償の基準というのも、適用行為か違法行為か適法行為かというところにも問題はあるかもしれませんけれども、今のこの課題との関係で言えば、損失補償基準での考え方の中で、参考にされるべきなのは、業態によって、新たにそこで事業を始めるのに要する期間というのは、それぞれ違うんですよということがこの中には出てきているわけです。そういう点は、損失補償基準要項に盛り込まれている考え方は、今我々が考えるべき課題にも参考になると思っています。
それらの点を考慮すれば、やはり今専門委員の方々がいろいろな業種別の被害の特色等を調べていらっしゃるわけですから、それぞれの業種、業態、あるいは勤務形態による被害のあらわれ方と、そこの中で被害者の期待される行動パターンはどのようなものであるのかということを総合的に考えて、かなりきめ細かく検討しなければいけない課題ではないかというのが現時点での感想でございます。

【能見会長】  どうもありがとうございました。
 どうもいろいろな問題が錯綜してて、私もまだ十分整理できなくて申しわけございませんけれども、仮に営業とか就労不能についても、廃業という言葉で両方ひっくるめて、もうその営業をやめる、あるいはその仕事をやめるという場合を含めますと、1つは、廃業する、あるいは廃業せざるを得ないという客観的な状況があるときで、一定の期間内でほかの仕事を探したり転業するという、その期間の長さが違うんじゃないかという話ですよね、今のは。これはおっしゃるとおりで、整理をできればしたいと思います。
 それからもう一つは、客観的には、まだ廃業しなくてはいけないという状況ではなくて、単に営業ができない、就労ができないという状況が続いていて、そういうときに、これを期間の制限なしにずっといくのか、それも一定の期間があるのか。これはある意味で相当因果関係というか、賠償範囲の一般の問題なのかもしれませんね。2つ分ける必要があるかなと。分けた上で、今、鎌田委員が言われたような、さらにきめ細かい期間、これは廃業した場合の話ということになると思いますけれども、その期間というのを考える。そんな整理ができるのではないかと今思いました。
 他にご意見、いかがでしょうか。
 いろいろな問題が微妙に重なり合っているので、2の問題も、転業するというか、2で問題となっているのは、転業するということを決めてないで、逸失利益を一方で請求できる状態で、他に収入は得ているというときにどうするかという問題で、損益相殺みたいなもので、一般的にはおそらく控除するというのが一般理論だとは思いますけれども、大塚委員もその趣旨のことを言われたんだと思いますが、ただ、苦しい状況の中で、非常にまた苦労して他の仕事をしているという場合に、特別な苦労というか、特別な労力を払って他の収入を得ているという状況がありますと、これは必ずしも損益相殺をしなくていい場合があるかもしれませんので、損益相殺しなくちゃいけない場合と、しなくてもいい場合というものの区別も考える必要があるのかなという気がいたします。
 それから、田中委員が丸1の指定解除、その解除というのはそもそもどういう基準でなされて、どういうときに解除されるのかということ自体がよくわからないという状況のもとで、どう考えたらいいかというお話だったと思います。
 仮に記述をするとしても、ここに書いてあるように、指定解除がどういう条件でなされるかは踏み込まないで、指定解除後一定の期間。しかし、一定の期間というのが具体的に書けるかというと、さっきの鎌田委員の問題と同じ問題で、業種だとか、対応、その人のいろいろな状況によって違うかもしれないので、ここは特に営業の問題を扱っていますので。そうなると、非常に抽象的な、今申し上げたように、指定解除後一定期間とぐらいしか書けなくて、あまり意味がないかもしれない。そんな問題点、ないし悩みというのがあるということでございます。
 他にいかがでしょうか。
 もしなければ、また後でご議論いただいても結構ですので。
 大塚委員、どうぞ。

【大塚委員】  私、整理がまだできてなくて済みませんが、営業損害と就労不能等というのは、ほかにも何か入るんでしょうけれども、そうすると、丸3は営業損害のほうで廃業した場合の話で、丸2はおそらく、普通は就労不能、個人のことを考えているような……。

【能見会長】  就労不能のほうは個人のことですね。

【大塚委員】  個人のことを考えていますよね。丸1は両方入っているという、そういう整理でよろしいんですね。

【能見会長】  はい。

【大塚委員】  丸3の廃業する場合というのは、先ほど鎌田委員と能見会長に整理していただいたと思いますけれども、廃業せざるを得ない場合のことを基本的には言っているのかなと私は思っていたんですけれども、廃業を選択した場合のいろいろなことをまた考えないといけないかもしれませんが、廃業せざるを得ない場合に、一定期間の逸失利益という考え方もあると思いますけれども、残存資産価値のほうがはっきりするのかなと個人的には思いました。

【能見会長】  残存資産価値の理解というのは、私の意見と同じでいいのでしょうか?

【大塚委員】  多分同じだと思うんですけれども。

【能見会長】  営業が持っている資産価値ということですね。

【大塚委員】  ええ。

【能見会長】  その時点というとちょっと微妙なのかもしれません。

【大塚委員】  その時点だと思うんです。営業譲渡できるはずなのに、避難しなければならずそれがしばらく使えなくなってしまったので営業譲渡できないという、ゼロになってしまったということですよね。それは私の個人的な意見ですが。

【能見会長】  選択する場合に、営業を続けることができるのかもしれないけど、あまり不安定な状態で、どっちつかずの状態は嫌なので転業したいと、別な仕事を始めたい、営業したいという選択をするときの問題というのは、大塚委員は、今、ちょっと違うかもしれないと言われたんですけど、もし何か考えておられることがあれば。

【大塚委員】  残存資産価値として考えてもいいんだろうと思いますけれども、選択が多分合理的でないといけないということが入ってくるかなという気がしました。でも、多くの場合は合理的だと思いますので、実際には問題にならないかなと思います。

【能見会長】  わかりました。
 それでは、もしほかになければ、とりあえずこのテーマは、以上のような議論を踏まえて、さらに整理していきたいと思います。
 それでは、次の項目。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  2番目は、3ページの第7の風評被害の下にある括弧の中でございます。今回の事故に関しましては、外国政府による食品等の輸入規制、あるいは外国政府による渡航制限勧告にも関係している外国人観光客の減少、こういったものが広範に生じてございます。こういった外国人、あるいは外国政府が介在する被害について、どのように取り扱っていくか。具体的に申し上げますと、第二次指針で風評被害の一般的基準というのを示したわけでございますが、この基本的な考え方を当てはめていくことが妥当なのか、できるのか。そういう中で、原則として、相当因果関係が認められる風評被害の類型、指針に書いていくべき風評被害の類型としてどういったものを追加できるかということでございます。
 これにつきましても、参考資料を用意させていただいてございまして、まず、3-1でございますが、これは食品の輸入、日本から見ると輸出でございますが、この関係の各国の規制措置についてまとめてございます。
 1ページ目からは、輸入停止の措置をとっている国と、輸入が停止されている内容でございます。産地と品目別にそれぞれ規制がかかっているのが現状でございます。対象の地域、あるいは品目等も各国さまざまでございまして、例えば一番上の米国につきましては、対象県が福島、栃木、茨城、品目が右のように限られてございますが、次の2ページ目を見ていただきますと、2ページ目の上のほうのアラブ首長国連邦からずっとイラク、クウェート、レバノン、エジプト等は、そもそも47都道府県全部、右側の、場合によってはすべての食品ということで、輸入規制をかけているということがございます。
 2ページの下のところからは、輸入停止措置ではございませんが、放射能検査、これを政府あるいは指定機関の証明書を要求しているという例でございます。これについても、地域、品目ともさまざまばらつきがございます。
 さらに、3ページの下からは、産地証明を添付することを義務づけているもの、あるいはその後、検査の強化、これはサンプル検査あるいは全ロット検査をしているものを一覧で書いてございます。
 5ページの最後のところは、既に規制が完全に解除されている国としてカナダが挙げられてございます。
 6ページにつきましては、既に農水省さん、あるいは関係団体のヒアリングから提示された資料でございますが、このグラフは、平成22年度の食品の輸出の額と、その国別の内訳でございます。総額が4,920億円というのが平成22年の実績でございます。
 さらに、その下の表を見ていただきますと、21年から22年にかけて、いずれも大きく輸出が伸びているということでございます。輸出の伸びているところで今回の事故に絡んで、それがとまったというか、減少しているという状況がございます。
 次のページは、品目別の内訳でございます。これは4,920億円の内訳でございますが、さらに次のページに参りますと、4月の段階で2010年と2011年の輸出をそれぞれ主な国別で比較したものでございます。これを見ますと、これも国によって、例えば中国などは、右側でございますが、マイナス64%なのに対して、例えばアメリカだと6.5%とか、これも国によってかなり落ち込みに差が出ていると。先ほどの措置の差との関係があるかと思います。
 それから、次のページにつきましては、品目別に同じ比較をしたものでございますが、これも国別と同じ、あるいはそれ以上に、品目によって、輸出の影響が出ているものと出ていないものがあるということでございます。
 続きまして、資料3-2、横長の表でございますが、これは、外国人観光客の減少と関係がかなり強いと思われますが、各国における日本渡航に関する勧告ということで、それぞれ2つございますが、一番最初に出た勧告と、最新の勧告、もちろんこの途中でいろいろな段階があるわけでございますが、最初のものと最新のものを出してございます。
 これも見ていただきますと、かなり多くの国で日本全体への勧告、これは原発の事故だけではなくて、地震の被災地への渡航勧告、そういったものがいろいろな形で出てございます。こちらについては、3月から現在にわたって少しずつ緩和をされている状況が見てとれるかと思います。
 3ページから4ページ、5ページにわたってそれぞれ表が出てございますが、これはそれぞれ、今年の3月、4月、5月につきまして、前年と訪日外国人の数を比較したものでございます。いずれも、この3ページを見ていただきますと、半分、あるいはそれ以上の減少が見られるということでございます。3月は、前半はまだ事故発生前でございましたが、4月、5月までのデータしか現在ございませんが、それぞれ60%あるいは70%近くの減少が出ているのが4月でございまして、5月につきましては、若干ではございますが、減少が緩和されている傾向は見られますが、引き続き半分以上の減ということになっているということでございます。
 最後のページにつきましては、訪日外国人旅行者の国別の割合と全体ということで、総計で861万人、これは2010年のデータでございますが、これも先ほどの食品の輸出と同じく、近年伸びているところでございまして、そもそも対前年にプラス26.8%が2010年でございまして、また増えてきたものがここで、これは地震の影響も含まれてございますが、訪日外国人の数が減っているということでございます。
 それから、最後でございますが、資料3-3に、字が小さくて恐縮でございますが、これは輸出品のうち、鉱工業製品についての規制の状況を表してございます。こちらについては、輸入停止ということではございませんで、放射線検査あるいは放射能検査、これが義務づけられて、基準値というのが各国設定されている場合、あるいは設定されてない場合がございます。これにつきましても、実際、先方で検査をする例、あるいは放射能レベルに関する証明書の添付を要求されている例というのが各国について、これも日本の製品全部を対象としているところ、あるいは特定の地域を対象としているところ、さまざまに分かれてというか、ばらつきがございます。
 こういった外国人あるいは外国政府からの損害について、多くはいわゆる風評被害の範疇に入るかと思いますが、どのように中間指針の中で整理をしていくかというのが1つの大きな課題になっていると認識してございます。
 説明は以上です。

【能見会長】  以上のとおりですが、この外国あるいは外国人が関係する、関与する、そういう特殊性がある風評損害等について、どう考えたらいいかということです。あるいは、なかなか、これも論点がどこにあるのかわかりにくいかもしれませんけれども、私があまり整理してしまうのも適当ではないのかもしれませんが、私の理解を少しご紹介しますと、結論ではなくて理解の仕方ですが、例えば、外国に輸出しようと思ったところ、その国によって輸出を拒否された、規制されたという場合を考えますと、これは、ある意味では風評損害、一般と似た構造で、風評損害というものも国内の場合を考えれば、国内のいろいろなマーケットにおいてその製品が放射能汚染の危険性があるというふうに思われて拒否されるという構造があるわけですね。その国内の風評損害については、マーケットの反応というものが、それなりに合理性がある場合があり、他方で合理性のない場合もあるわけですが、マーケットとして非常に特異な、ある意味で異常な反応を示したという場合には、これはそういう意味で、可能性がない特殊な状況における風評損害ですが、それ以外のマーケットとしては、そういう製品が危険だというふうに判断するのはそれなりに合理性があるという場合には、同じような状況があればまた反復されるでしょうし、そういうものについては相当因果関係があるということで、風評損害も賠償範囲に入るという理解をしたわけであります。
 それと同じような理解を外国における食品の輸入規制などについても考えていいのかどうかというところが一つのポイントだと思います。外国政府、あるいは外国が関与する場合には、その国における、勧告だとか、その国における規制とかいうものが加わってまいりまして、単なるマーケットの反応とはちょっと違う要素もあり、あまり言い過ぎるとちょっと問題ですけれども、それなりにそれぞれの国の特殊性もあったりして、ちょっと、一般の風評被害をマーケットの合理的な反応で拒否されたという場合と同じように考えてよいのかどうかという問題があると。
 ただ、多少特殊性があるにせよ、実際に、これなければあれなしの因果関係があることはそれなりに認められる場合が多いでしょうから、そういう意味ではすべてが賠償範囲に入らないというふうに言い切れるかというと、そちらもそう簡単ではない。そんなところが悩ましいところであります。
 何かご意見があればお願いしたいと思いますが。

【野村委員】  ちょっといいですか。

【能見会長】  どうぞ、野村委員。

【野村委員】  日本の国内の話なのですけれども、例えば、福島産の野菜が汚染されていないとわかっていても、ほかに選択の可能性がいろいろ開かれているというときに、消費者が福島産のものを選ばないというのは、おそらくそんなにアンリーズナブルじゃないと思うのですね。そのことも風評被害の中でカウントされているということではないかと思うのです。そうだとすると、あまり外国政府の対応とかそういうものも考慮しなくても、同じに考えればいいのではないかなと、個人的には思います。

【能見会長】  そういう考え方も十分あり得るので、ぜひご意見を伺いたいと思いますが。
 どうぞ、米倉委員。

【米倉委員】  実際には、こういった食品類、あるいはいろいろなものが海外のいろいろな国に出荷をされていて、使われているわけですよね。その中で、こういう特定の国で規制措置がとられて販売できなかった、あるいは輸入できなかったというところは、やはり実態として、例えば、前年度にどれぐらいの量が出ていたとか、そういうことで計算するんでしょうか。

【能見会長】  どのぐらい売れなくなったというのは、計算の仕方が、今おっしゃったようなのが1つのやり方だと思います。おそらく、ほかに今、すぐにより合理的な方法も考えられないので、計算の仕方はそういうことなんじゃないでしょうか。

【米倉委員】  そのときに、その損害がすべてのように考えていいのか、あるいは、結果としてそこに輸出されなかったものは、やはり国内で消費されたり、他の国で使われたりということも当然考えられるわけですよね。

【能見会長】  そうです。それも考えられます。

【米倉委員】  それを考えると、なかなか難しいのかなと思います。

【能見会長】  ええ。具体的な計算は控除すべきものがあったりするので、難しいかもしれませんね。ですから、まず、抽象的な考え方として、こういう外国に売れなくなった、減少した輸出分というのをどういうふうに賠償の対象にしていいのかどうか。それから、その際、何か控除すべきものがあるのかどうかというのを抽象的に考えて、それについてさらに次の段階でどういう計算の仕方が合理的かというふうに2段階に分けて考えるのがわかりやすいのではないかと思います。
 高橋委員、どうぞ。

【高橋委員】  外国政府による、様々な措置による輸出に対するマイナスの影響についです。ただ、外国政府の場合は国内と違って情報の入手の話とかも、大分違う部分があると思います。そういう意味では完全に国内の消費者と同じように考えるのがいいのかというのはちょっと疑問があります。かつ、政府としては国民の安全性を考えれば、多少疑義がある段階で踏み込んで規制するというのに合理性がないというわけにもいかないと思います。このように考えますと、外国政府の規制については、多少、合理性の基準については広げる方向で考える余地があるのかなと思います。日本での基準を単純に当てはまるのはどうかということが第1点と、ただ、そうは言ってもあまりに不合理な規制について相当因果関係の範囲に入るのかというのは疑問です。ただ、その際もやはりある種の輸出振興という観点から、政府の積極的な措置というのも求めて良いと思われます。
この点は、先ほど田中委員も、損害回避義務のところで、政府の措置もあるべきだということをおっしゃいました。これは委員会の範囲の外でございますが、やはりそういうことも、相当因果関係論の範囲では損害賠償の範囲には入らないけれども、積極的に救済するということは政府のほうでもお考えになったほうがよいのではないかという要望は、委員会として申し上げる余地はあるのではないかと、私自身は思っています。
 以上です。

【能見会長】  ちょっといろいろインパクトのあるご発言だったと思いますが、最後の点につきましては、損害賠償という範囲には入らないけれども、一定の保障をしたらどうかというようなご意見だったと思います。それはそれで記録としてこれにとどめておきたいと思います。
 なかなか、議論の方向性も難しい、今は国内の場合と同じように考えればいいではないかという意見と、それから、やはりちょっと違う問題があるのではないかという2つのご意見が出ていて、今後さらに詰めた議論をしていきたいと思いますけれども、あるいは、1つの考え方としては、輸出の減少分が確かに原子力事故、それから、それを恐れての風評、風評といいますか、原子力事故が、一応、あれがなければ、原因を与えているという部分では、原因を与えていると。だけども、多少、できれば特殊という言葉はあまり使いたくないんですけれども、日本国内におけるマーケットとは違った幾つかの要因によってその現象が起きているという部分もあるので、そういう意味では原因競合みたいな考え方で、少し割合的な処理をする。あるいは、期間などについてもどのぐらいの期間というのが合理的かという判断をするというような解決の仕方もあるかもしれないという気がちょっといたします。
 どうぞ、大塚委員。

【大塚委員】  今、会長が言われたように、私も原因競合の問題があるかと思っていまして、1つは、やっぱり外国の報道がわりとセンセーショナルだったということがあるのと、あと、もう1つは先ほどのようにやはりもちろん各国の政府が各国の国民を守るために行動しているとは思いますけれども、やや過剰な対応をしているところもあって、そういうことが東電の責任とは別に原因競合としてあるんだろうなと思います。
 それが1点で、その後どういうふうに処理するかというのは先ほど会長がおっしゃいましたので、そういう面があると思うんですけれども、もう1つちょっと申し上げておきたいのが、外国に輸出するというときに国内の販売と同じように、当然、昨年と同じような収入が得られるというふうに考えていいのかどうかということがございまして、国内の販売よりも若干リスクがあるというのが一般的には多少言えるのかなと思います。つまり、損害自体が確実に発生するものという、損害の確率性という点では少し劣るのかなということです。これをどういうふうに結論に結びつけていくかとは私自身まだよくわからないのですけれども、外国に対する輸出というときには、グローバルな社会になっているとは言っても、多少フラジャイルなところがあるというのは考慮してもいいのではないかと思いました。
 他方で、そういう面があるんですけれども、この敬遠したくなる心理というのは、外国に輸出する場合と、日本で販売する場合とで変えるかどうかという一般的な議論をすると、なかなか難しいなと思っていまして、もしこれを完全に変えるということになると、外国に対する輸出のときのほうが救済の可能性を広げるというふうにも受け取られてしまうおそれがあるという問題があると思います。

【能見会長】  はい。今、大塚委員が最後に言われた点は確かにもっともで、これも外国が輸入規制をしている製品、産物ということでいえば、47都道府県全部だなんていう場合もあるわけで、そうなりますと原子力損害との関係というのは非常に薄い製品も入ってくる。多少のきっかけはもちろん原子力事故が与えているわけで、多少といいますか、原因はもちろんある程度与えているわけですけれども、それにしても国内の場合と相当違った構造になるので、そこら辺はどう考えたらいいかということですね。
 ちょっと私も、まだ十分これといった定見がないんですけれども、ぜひまた皆さんのご意見を伺わせていただき、さらにちょっと論点を詰めたいと思います。
 それでは、3番目のほうに移りましょうか。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  それでは、3つ目でございます。これは4ページの上でございますが、間接被害者の損害、いわゆる間接被害についてということで、簡単に論点が書いてございます。今回の事故におきましては、避難による商圏そのものの消滅であるとか、あるいは取引先の営業休止による原材料の調達不能、あるいは販売不能、そういったものが大変広範に生じてございます。これは詳しくは専門委員の調査の結果を待つところもございますが、直接の被害者、それと一定の関係にある第三者、あるいはその第三者とさらに関係のある者、こういった者の被害あるいは損害は、どこまで相当因果関係があって賠償すべき損害と認めるべきかというのが非常に1つの大きな論点でございます。
 資料4にこれまでの裁判例を用意してございますが、これからご説明いたしますが、経済的一体制であるとか、予見可能性、あるいは代替性、そういったものを材料といたしまして、賠償対象か否かを判断している傾向がございます。そこで資料4でございます。これは幾つか、いわゆる間接被害と考えられるものに関する裁判例をここに列挙してございます。1番目と2番目のところは、これは予見可能性というものを1つの判断基準にしてございますが、1番目の例は船舶が航行中に送電線を切断した事故でございますが、これによって電力会社からの送電が停止した列車の運行会社が訴えを起こしたものでございますが、この欄の判示部分の一番下のところを見ていただきますと、原告に対する送電が停止され、正常な列車運行ができなくなることについて、当然に被告の従業員──これは船舶の運行者でございますが──が、それを予見できたとはいえないということで、相当因果関係がないという判断が、これは東京地裁でなされてございます。
 それから、その下の2番目のところについては、若干形は違いますが、貨物船が漁船に衝突して、漁船が沈没した例について、この漁船にカメラマンが乗っておりまして、それでそのカメラマンを雇っている映像制作会社が営業損害を請求したものでございますが、これにつきましても右側の判示部分のところに赤字で書いてございますが、この貨物船の乗員がこのような損害の発生を予見できたとは認められないということで、相当因果関係のない損害として判決が出てございます。
 それから、3番目につきましては、これは左のところに類型と書いてございますが、経済的な一体性を問題にしたものでございまして、これは会社の役員が不起訴になったわけでございますが、逮捕、勾留した期間にこうむった会社の営業損害について求めたものでございますが、勾留をされた者と会社との間に経済的一体性が認められないとされた例でございます。
 それと同じようなものが次の2ページのところでございますが、2ページの5と6がこれに近い格好になってございますが、5番目につきましては交通事故の事案で、交通事故の被害者が取締役を務めている企業が営業損害を請求したものでございますが、これも経済的な一体性を問題にいたしまして相当因果関係の点からしてもこれを認めることはできないという判断が出てございます。
 一方で、その下の6番でございますが、いわゆる個人会社の企業損害、ここには経済的一体性という言葉は用いられてございませんが、この個人経営の会社につきまして、交通事故で代表者が負傷したために存在した営業活動がこちらは相当因果関係が認められた例でございます。
 それから、7番につきましては、これはもう少し複雑になってございますが、原告、交通事故で死亡した親に仕事を手伝ってもらっていた、執筆活動を行っている者。それと、その会社との間接被害者、さらには再間接被害者という言葉が使われてございますが、そういった損害請求に関する例でございまして、この場合は原告の個人、間接被害者の事故直後のある程度の一定期間についてのみ損害と認められているという例でございます。
 それから、3ページ目でございますが、ここにつきましては8番がやはり今のと同じような、交通事故で代表者が負傷したための企業の営業損害ということで、こちらのほうは相当因果関係が認められている例。
 それから、9番につきましては左の類型のところではいろいろ特段の経済的一体性あるいは予見可能性という言葉が書いてございますが、ここでこの判決の中で、東京高裁の判決でございますが、予見可能性がないということでその賠償をすべき損害とは認められないということとしてございますが、その上のところに、企業の従業員としての代替性がないことをもって相当因果関係の1つの判断基準とするのは相当ではないということで、代替性だけでは判断基準にならないというような判決が出た例というふうに考えられます。ここにつきましても、下のほうにございますが、経済的一体性の観点でもこれについてはこの損害自体を肯定することはできないという例になってございます。
 それから、その下の10番につきましては、これも経済的一体性を問題にして判例が出た例でございますが、ここは経済的一体性がないという形の判断になってございます。
 それから、最後の11番が唯一最高裁の判例でございまして、これについては大体左のところに要約して書いてございますが、代替性がなく、経済的に一体をなす関係が認められる場合に相当因果関係を認めて間接被害者でも賠償が請求できるとしたという例になってございます。ここでは経済体制というのは一体性の判断の1つとして使われているということでございます。
 資料の説明は以上でございます。

【能見会長】  それでは、これについてのご議論をお願いしたいと思います。これもなかなか錯綜しておりますが、間接被害者とか間接被害という問題自体が、おそらく、法律の分野ではいろいろな議論が対立しているところですので、ここでもどういうふうに考えたらいいかということも含めてご議論をお願いしたいと思います。
 大塚委員、どうぞ。

【大塚委員】  今、会長もおっしゃっていただきましたように、この問題については、そもそも間接被害という形で問題をとらえるかどうかについて民法学で議論があるところですが、今回、これは指針をつくるということを考えると、間接被害というものをまとめて議論することには大いに意義があるのではないかというふうに考えております。その上で、今、判決のご紹介もございましたけれども、民法の条文からいくと、416条を類推して特別損害に当たるというふうに、大体、間接被害についてはなると思いますので、その上で予見可能性があるかどうかという判断をするということになるわけですけれども、予見可能性があったかどうかということを考えても、なかなか個々の事案について、裁判所が判断するんだったら構わないと思うんですけれども、指針にはちょっとなりにくいというところがあるかと思いますので、予見可能性とか特別損害の議論、これはもちろん必要ではあるかと思いますが、これだけでなく、今の裁判例でいろいろ使われていた、1つは代替性がないということが前提ですけれども、その上で経済的に一体をなしているかどうかというあたりに注目していくのが適切ではないかというふうに考えています。
 それで、この経済的一体というのもなかなか幅のある概念だとは思いますので、サプライチェーンのようなところで、ほんとうに地元でしか関与されていないようなところというのは、当然、私自身は経済的一体性があると思いますけれども、それをどこまで広げて認めていくのかということを、経済的一体性という中で考えていくのが適当ではないかと考えております。
 以上でございます。

【能見会長】  まずはちょっと、ほかのご意見があれば伺いたいと思いますが。
 野村委員、どうぞ。

【野村委員】  今、大塚委員からもありましたけれども、もともと民法は間接被害とか直接被害という区別をしていないので、なかなか、この概念自身が非常に理解が難しいと思うのですね。科学技術庁が監修している、『原子力損害賠償制度』という原賠法の解説の本がありますけれども、あの本ですと、原子力損害という原賠法の2条に定義されている損害が直接損害で、そこから派生したものを間接被害という使い方をしています。この間読んだのですけれども、かなりこの原子力事故に特化した呼び方だとは思います要するに因果関係が遠いところのものをどこまで損害賠償の範囲内に組み込んでいくかというための議論だと思います。今日いろいろ判例をまとめていただいているのですけれども、もうちょっと、理論構成のほうではなくて、事案という点から整理ができないでしょうか。例えば、この中でかなり出てきているのは、比較的小さな企業で、ある人が非常に重要なポジションにあって、その人が交通事故で働けないために会社として損害をこうむっているという場合ですね。このように、何かうまく幾つかの類型に分けられるといいのではないかと思います。全然自分の結論がなくて申し上げて申しわけないのですけれども、判例がそんなように整理できれば、もうちょっと見通しがよくなるのではないかとか、思ったので、意見を申し上げました。

【能見会長】  なかなか判例も、交通事故みたいな事例がほとんどで、今、ここで問題にしている原子力事故に関連しての、今は一応間接被害という言葉を使いますけれども、そういうものを扱っているわけではないので、なかなか、判例からいい基準が出てくるというわけでもないように思うんですね。間接被害というもの、ここで扱っている間接被害がどういうものであるかということについては、先ほど事務局から説明がありましたので明瞭ではあると思いますが、若干具体的な例でわかりやすく申し上げますと、1つのタイプは、この避難指定地区にある会社であるとか、あるいは農家でもいいんですが、そういうところと取り引きをしている別な会社があると。それで、この別な会社は避難指定地域の外にあるような会社で、東京の会社でもいいわけですけれども、仮に東京にあるその会社が避難指定地区にある農家ないし会社等から製品を仕入れてさらに販売、あるいは加工して販売するという営業をやっているときに、この東京にある会社の損害というのが原子力損害賠償法のシステムの中で賠償の対象になるのかどうかというのが1つの典型的なものであります。
 今まで、漠然とした議論ではありますけれども、代替性があるかどうかで考えたらどうかというふうに今まで考えてまいりました。つまり、その東京にある会社が仕入れている製品というものが、ほかからは仕入れることができないような特殊なものであると。例えば、その農家でもって非常に特殊なというか、非常にブランド価値の高い製品をつくっていて、ほかの地区の農家からは仕入れることができないというような特殊なブランド品であるということになると、これは代替性がないということになって、それを扱っていた東京の会社は、それが入らないことによって損害をこうむると。
 ただ、ここで言う代替性もまたいろいろなレベルで考えられて、その製品は仕入れることができなくても、何か別の製品を仕入れれば、東京の会社としては少なくとも営業はできるだろうということになると、代替性もちょっといろいろなレベルの代替性があり得て、なかなか簡単に代替性があるかないかという判断は難しくなってまいります。
 いずれにせよ、こういうタイプの東京にある会社の損害というのが入ってくるかどうかということです。先ほど、大塚委員が、代替性だけではなくて経済的一体性という概念を使われて、確かに判例の中で間接被害者ないし間接被害について議論している判決の中には、それに近い概念を使っていることがあるのは確かなんですが、果たして原子力損害の賠償で問題となっているように、避難地区の会社と、それから、外でそれと取り引きをしている会社というのは完全に本来別の会社であるという場合についてまで、経済的一体性という枠を要求するのかどうか、ちょっとそこは判例の理解の仕方も含めて、多少、私としては違う考え方を持っておりますけれども、いずれにせよ、そんなところが問題となるということですね。
 それから、この4ページの1番目のポツのところに、避難による商圏の消滅ということが書いてありますが、あるいはこれは少しわかりにくいかもしれませんが、これは、例えば、今も損害賠償を請求しようとしている会社なり営業主体というのが避難指定地域の外にある会社であって、あるいは営業主であって、しかし、そこは避難指定地域に商圏を持っている、そこの人と主に取引をしていると。ところが、避難指定地域であるために、その人たちが避難してしまっていなくなってしまったということで、外にある会社ではありますけれども、営業上の損失をこうむるという場合であります。これはいわゆる法律でいう間接被害者とか間接被害とはちょっと違うかもしれませんけれども、似たような構造にありますので、ここでまとめております。例えば、この例がいいかどうかわかりませんが、避難指定地域の外にある会社が、学校用品の販売をしておると。ただ、学校は実は避難指定地域内に幾つか学校があって、そこと主に取引をしていたということになりますと、その学校がすべて閉鎖されて、学校用品を売るということができなくなると営業上の損害をこうむると。こんなのが商圏の消滅の1つの例かと思います。
 いずれにせよ、この間接被害者のタイプについてもいろいろあり、また、どういう枠で判断したらいいかということもあり、また理論的にも、法律の議論してもいろいろな議論が対立している。できれば、ここではあまり法律の議論には踏み込みたくない。むしろ実質的な判断で、あるいは実質的な基準でもって、どういう基準で判断すると合理的に賠償すべきものとすべきでないものの区別ができるのか。そこら辺をぜひご議論していただければと思います。
 ほかに何かご意見、この点についてございますでしょうか。これもなかなか議論がしにくいテーマかと思いますけれども。
 高橋委員、どうぞ。

【高橋委員】  判例を伺っていても、今の先生にご説明いただいた内容をお聞きしても、資料に紹介のある個別的な判例の類型と今回の類型は大分違うのではないかという印象を受けました。そういう意味では、これまでの議論にとらわれずに、今回生じた損害を類型化して、その類型ごとに合理的な線引きをしていくという態度で臨んだほうが、今回の解決方法としてはいいのではないかと思いました。そういう意味では一体性の議論とか経済的一体性の議論、代替性の議論とか使えると思いますが、そういうものを使いつつ、合理性の範囲を委員会においてバランス感覚で決めていくしかないのではないか、と私は思っております。

【能見会長】  どうもありがとうございました。
 他に、よろしいでしょうか。
 それでは、個別のテーマはまだいろいろあると思いますけれども、一通り用意していた個別のテーマをここで終えまして、また全体にわたって今の議論を踏まえた上でもう1回全体について何かご議論があればお願いしたいと思います。時間もありませんので、あまり1つのテーマについてそれほど時間はないかもしれませんが、お気づきの点等がございましたら、お願いいたします。
 田中委員、どうぞ。

【田中委員】  先ほど会長がおっしゃった被ばくの補償の問題ですけれども、一般に避難……、比較的、一般住民で被ばく量が多いと推定されるところ、避難している人とか、計画的避難区域とか、そういうところの方ですけれども、それだとしても、健康被害が明確に判定できるような状況の被ばくではないんですね。

【能見会長】  はい。

【田中委員】  ということで、これは米倉先生にもご発言いただいたほうがいいのかもしれませんけれども、そうすると、大体この影響というのはどういう形で出るかというと、この1ページの、PTSDというと、こういうところにかなり影響が出てくるような気がするんですね。私たちは被ばくしたとか。だから、そういうところで見ていく、損害賠償という形で見るのがいいのか、健康管理という形で長期的に見ていくのがいいのか、その辺少し議論をしておいたほうがいいかなと、ちょっとそんな思いがしましたので。

【能見会長】  私の理解だけ申し上げますと、今おっしゃったように、おそらく、健康被害に、少なくとも現時点では健康被害と言えるような放射能の被ばくではないと。しかし何らかの被ばくを受けていて、また、その被ばくの程度がそれほど高くないので、PTSDに至るほどでもない。また、PTSDの定義かもしれませんが、精神的な、ある意味で不安とか、それも全然放射能を浴びていないでただ一般的に不安を感じるというのとはやはり違って、浴びているので、それなりに将来もしかしたらがんになるのかもしれないとか、そういう不安はあるという精神的損害のところの問題として私は理解しておりました。それがもっと高じてPTSDという程度に至りますと、これはある種の身体的損害でもあるので、これは一次指針でもこういうものは身体的損害として含めていいというご議論ではあったと思いますが、ですから、そこに入ってしまえば問題ないんですけれども、そこにまで至らないようなものをどうするかというのが残っている問題なのではないかというふうに思いました。
 それから、また放射線専門の方にむしろ私もお伺いしたいのは、今内部被ばくということで問題となっている現象があると思いますが、これもどの程度の内部被ばくだとどの程度の危険があるのかというようなことがおそらく基準も何もないんだと思いますけれども、ただ、相当それは精神的損害というものを、不安、苦痛を引き起こすのではないかと思いますので。しかし、どの程度の被ばくを、基準以上の被ばくを受けていると、じゃあ、精神的損害として認めるかという議論は、なかなか基準が立てにくいので、ここら辺もまずは専門的な分野の先生方のご意見を伺った上で、どう扱うかというのを判断すべきかなとは思います。
 もし何かあれば。米倉委員、どうぞ。

【米倉委員】  最初のPTSDのときにお話がありましたけれども、PTSDというのは本来は非常に大きな精神的なインパクトを受けて、そして、それを何度も想起することによって、いつまでもその記憶が残って非常に長期間にわたって精神的な苦痛を受けると、これが定義だと思うんですけれども、今回、いろいろな住民の方で起こっている現象は、これとはかなり様相が違うのではないかと思います。おそらく、起こった当初にはそれほど大きな不安感を皆さん持っておられなかったと思うんです。ところが、その途中でいろいろな人たちがいろいろなことを発言する中で、自分も何か被ばくしたのではないかというおそれがだんだん出てきて、それがきちんと測れていない。そういう不安感がどんどん増してきて、こういう現象が起こっているように思います。チェルノブイリのときも同じようなことが起こって、結果としては精神的な障害というのが最も多く見られたわけですけれども、これは被ばくそのものによるものではなくて、被ばくを恐れるという現象によって起こってきている。そういうふうに考えますと、確かに何らかの因果関係はあるんだろうけれども、放射線の直接の被害ではないというところをどのようにとらえるかというのは、これはなかなか難しいのかなと思います。

【能見会長】  今のお話を伺っていますと、被ばくはしていないけれども、被ばくをしているかもしれないおそれという意味での不安というのと、それから、私はもう1つ、被ばくはある程度しているんだけれども、科学的に見ると健康被害までは至らない。とはいえ、被ばくしているために生じている不安と。一応、線が引けて、被ばくしていないけれども不安を持っているというものについては、これはもちろん賠償の対象になるかどうかの議論はしなくてはいけないんですけれども、もう1つのグループと比べると、もう1つのグループのほうが被ばくしてはいるけれども、まだ健康被害までは至っていないというほうが、まずは精神的損害として賠償の範囲には入りやすいのかなと。ただ、いずれにせよ基準等を、これは何かの線引きをしなくてはいけないとなると、その基準が難しいという感じを持った次第です。今の、被ばくしてはいるけれども健康被害までは至っていないと、そういう人たちがどのぐらいいるのかということの統計もよくわかりませんけれども、そういうカテゴリーはどうなんでしょうか。

【米倉委員】  現段階は、まだこれからその住民の健康調査が始まるところです。その中で、行動調査から実際に被ばく線量を推定しようということが行われますので、その結果が1つのメルクマールにはなると思います。
 それから、やっぱり内部被ばくに対して不安感を持たれる方がものすごく多いというのは事実なんですけれども、今までのところ、例えば、尿中にアイソトープが見つかった、セシウムが見つかったという方のいろいろな記録等、新聞等で出ているのを見ていても、被ばく線量としては外部被ばくに比べるとはるかに低いレベルだということから考えて、実態はそれほど心配がいらないけれども、非常に不安がられる。こういう事態なのかなと思っています。

【能見会長】  わかりました。どうもありがとうございます。
 どうぞ、高橋委員。

【高橋委員】  確かにあるレベル以上の放射を受けて不安感を持ってらっしゃる方に、精神的な損害を考えるというのもあるかと思います。しかし、まず、行政的に考えるのであれば、そこは健康の管理をして、ご不要な不安を持っていただかないような形を、作り上げる、きちんとした行政的な体制をつくり上げるというのが先だと思います。それで具体的な損害、もし発症等の事態が生ずることになれば、そこで救済ということになるんだろうと思います。したがって、グレーのところは議論したほうがいいと思いますが、そこに至らないものについては、先ほどから、行政的な措置と損害賠償の区別ということを随分申し上げてきましたが、そこは政府に対してきちんと、そういう余計な不安を持たれないようにきちんと制度をつくっていただくことを委員会として申し上げるべきだ、と思います。言い換えれば、健康状況をフォローしていただく体制をつくって、不要な損害賠償が拡張しないようにしていただく体制を整備することをお願いするのは、委員会としての意見の出しようかな、と私は思っております。

【能見会長】  どうもありがとうございました。
 なかなか、損害賠償の限界というものと、それから、それが入らないときの、これは根拠は何になるかは別として、補償との関係はなかなか難しい問題といいますか、一般論としてなかなか難しい問題ですけど、今、ご指摘のような点は確かにあると思いますので。確かにあるというのは、そういう2つの関係を考えるべきだという意味での問題点はあると思いますので、さらにこれも検討したいと思います。ただ、なかなか境界線がはっきりしないので、賠償範囲のほうに入れようと思えば入れられるというような問題もあって、そこがなかなか難しいと思うんですよね。こんなこと言って、言い過ぎかもしれませんけれども、政府のほうで賠償範囲に入らないといったときに補償をちゃんとする仕組みができるのかというと申しわけないけれども、そんな簡単にはできないかもしれないので、そういう意味では賠償のほうでできるものはするという方針も考えられると思います。
 他に何か、ご意見があれば。
 どうぞ、大塚委員。

【大塚委員】  全然別の点で、さっきの外国が関連する風評損害の中の一部として、工業用品とか、工業品の分野での放射線検査というのがありましたが、これはひょっとしたら風評損害ではないものも結構あるのではないかというふうに私自身は考えていますけれども、輸出のときに検査を求められて、その費用を支払うというのは、風評というよりは必要になってくる費用という面が多いのではないかと思いますので、風評のものもあるいはあるかと思いますから、そこはちょっと精査する必要があるかと思いますけれども、風評ではなくて、当然、払うべき賠償の範囲に入るべき問題というのが多いんじゃないかというふうに私自身は考えております。

【能見会長】  その点は少し整理してみたいと思います。
 他によろしいでしょうか。
 それでは、本日の議論はこれで終了したいと思います。若干早いかもしれませんが、次回は、今日の議論を参考にしながらより具体的な検討課題を用意するようにいたします。
 それでは、次回の日程について説明をお願いします。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  それでは、次回7月14日、さらに次々回、7月19日を予定してございます。本日の議論のほかに専門委員の調査の報告も含めて、ここでさせていただければと思ってございます。
 以上でございます。

【能見会長】  それでは、長時間ありがとうございました。これで閉会いたします。

―― 了 ――

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