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原子力損害賠償紛争審査会(第14回) 議事録

1.日時

平成23年9月21日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省(中央合同庁舎7号館東館)3階講堂

3.議題

  1. 自主的避難について
  2. 除染について
  3. その他

4.出席者

委員

能見会長、大塚委員、鎌田委員、高橋委員、田中委員、中島委員、野村委員、米倉委員

文部科学省

中川文部科学大臣、奥村文部科学副大臣、神本文部科学大臣政務官、清水文部科学事務次官、森口文部科学審議官、藤木研究開発局長、田中原子力損害賠償対策室長、篠崎原子力損害賠償対策室次長、田口原子力損害賠償対策室次長

内閣官房

加藤 原子力発電所事故による経済被害対応室審議官

説明者

松永内閣府被災者生活支援チーム参事官、高畠内閣府被災者生活支援チーム室長、大村環境省水・大気環境課大気生活環境室長

5.議事録

【能見会長】  それでは、時間になりましたので、第14回原子力損害賠償紛争審査会を開催いたします。本日は、お忙しいところお集まりいただきまして、大変ありがとうございます。
 本日は、中川文部科学大臣にご出席いただいておりますので、まず中川大臣よりごあいさつをいただきたいと思います。

【中川文部科学大臣】  台風がまさに東京に向かってきておる中なんですが、日々ご努力をいただいて、こうして新しい、本当にご苦労の中での基準づくりということに携わっていただいております。改めて私のほうから、心からお礼を申し上げたいと思います。
 野田内閣が発足したんですけれども、私たちはこの際、しっかり原点に戻って、基本に戻って、落ちついた取り組み、そして、今やらなければならないこと、これを先のばしにせずに迅速に取りかかっていくということ、そういうことを基本にして頑張っていきたい、取り組んでいきたいとおりますので、改めてよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 今回の事故について、着実に収束に向かっているということを一つ一つ確認しながら今対応を進めておるわけでありますが、住民の皆さんにとっては長期間にわたる避難、あるいは出荷停止や風評被害による事業者の減収、また依然としてまだ続いている、いつ帰れるんだろうかということに対する不安、そういうものがありまして、こういうことに対して、この賠償というスキーム、これを皆さんに今ご議論いただいておるんですが、それとともに、私たちの政府としてこのことに対する補償措置、あるいは政府としてコミットをして安心感をつくり出していく措置、これをあわせてやっていかなければならない。しかも、それに対して時間を先のばしすることがあってはならないということ、こんなことが具体的な課題としてあると思っております。
 さらに追加された法律のもとに、原子力損害賠償支援機構の設立、あるいは原子力事故被害緊急措置法による政府の仮払い、また原子力損害賠償紛争解決センターの設置、こういう枠組みと具体的な組織構成ということ、これを進めてまいりまして、さらに必要な措置についてこれからも検討を重ねていきたいと思っております。
 一方で、自主避難、あるいは先ほど申し上げた、いつ帰れる状態にしていくかということの基準になっている除染という問題等々において、これを賠償措置の中でどう位置づけていただくかということ、あるいは精神的苦痛に対してということで、それぞれ各自治体の長の皆さんからも課題としていただいておりますが、そういう問題を含めて非常に厳しくて難しい課題であろうと思いますが、どうぞできるだけ早く方向づけをしていただいて、私たちに対してもしっかりとした基準づくりができていく、そういう礎を、そして知恵を与えていただきますようにお願いを申し上げたいと思います。
 以上、皆様方にはご多忙のところ、また、こんな台風の中の環境で集まっていただいて本当にありがとうございます。今後の指針に関する追加的議論、先ほど申し上げたような課題に対してどうぞよろしく議論を進めていただきますようにお願いを申し上げて、私のごあいさつにかえさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。ありがとうございました。

【能見会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、議事を進めたいと思いますが、初めに事務局から配付資料の確認をしてください。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  資料の確認の前に、まず文部科学省のほうから、中川大臣のほか、奥村副大臣、神本大臣政務官にご出席をいただいておりますので、そのことをご紹介いたします。それから、中川大臣におかれては、この後、別の公務のため、退席をさせていただきます。
 それから、本日、委員は草間委員がご都合で欠席でございまして、あとの方は皆さんおそろいでございます。
 それでは、お手元の議事次第を見ていただきますと、配付資料といたしまして、資料1から資料5、資料1は、福島県における避難の概況でございます。資料2は、自主的避難に関する主な論点、それから資料3として、緊急実施基本方針に基づく除染の推進、それから資料4に、これはちょっと名前が長いのですが、特別措置法の概要、それから資料5といたしまして、除染に関する緊急実施基本方針に関する主な論点でございます。
 そのほか参考資料といたしまして、前回の議事録、それから避難等対象区域外の空間線量率の推移、さらに先ほどの基本方針の本文、それから特別措置法の本文、さらには参考5でございますが、これは原子力委員会の約10年前の資料でございます原子力損害賠償制度専門部会の報告書ということで、除染に関連しまして環境損害について扱っている報告書を参考に添付をさせていただいてございます。資料の過不足がございましたら、事務局のほうまでお申しつけください。
 以上でございます。

【能見会長】  それでは、本日の議題に入ります。
 議題の第1は、自主的避難についてでございます。前回の審査会でこのテーマにつきましては引き続き議論をするということになっていたわけでございますが、ただ、いろいろ議論のためには調査をしなくてはいけないということがございました。議論のための土台となる資料につきまして、事務局で可能な限り情報を集めましたので、その点につきまして、まず説明を事務局からいたします。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  それでは、資料1でございます。福島県における避難の概況ということで、まず、1枚めくっていただきまして、両面になってございますが、ページ番号でいうと2ページ目からということになります。
 まず、この資料全体でございますが、福島県のほうから多大なご協力をいただきまして、できる限りのデータを集めたつもりでございます。ただし、自主避難そのものはなかなか詳細なところまで、統計、あるいは数字で把握することが難しいところもございますので、その点はご容赦いただきたいと思います。
 まず、1の福島県における避難の全体像、これで概数を大体示してございます。一番右のところに避難区域等というのがございますが、ここから避難している方々の数は、県のほうが各市町村へヒアリングをした結果、ある程度正確というか、概数がはじかれてございまして、避難区域から福島県外に避難された方が、そこの下に書いてございますが4.2万人、これは8月末時点でございます。それから、左側で県内への避難、この方々が7.3万人ぐらいいるであろうということでございます。
 それから、真ん中の一番上のところでございますが、県内への避難者というのが、これは県のほうで、旅館ホテルへの避難者数、あるいは仮設住宅への入居済み戸数ということで概数が把握されてございまして、これは仮設住宅の入居者を1戸当たり2.8人、福島県内の平均の世帯当たりの人数で計算してございますが、約9.5万人という数字がございます。ここから県内への自主避難、自主的避難の者の数について、丸1-(1)にございますが、先ほどの7.3万人と9.5万人の差でおよそ2.2万人いるであろうという推計をしてございます。
 さらに県外につきましては、下のところを見ていただきたいんですが、県外への避難ということで、これは災害対策本部の8月25日のデータでございますが、5万5,793人という数字がございます。これと先ほどの避難区域からの避難者4.2万人の差をとりますと、約1.4万人が県外に自主避難しているであろうという推計をしてございます。両者合わせますと、左の緑の下のほうの四角でございますが、8月末時点で約3.6万人という自主避難者の推計ができます。ただし、知人や親戚宅に避難している方とか把握しきれてない部分もございますので、当然、相当な幅があると考えられます。
 それから、左側の上の事故当初3月15日の自主的避難というのがございますが、これが、県のほうで、主に県内の避難所への避難者を集計したデータがございまして、4万256人という数字がございます。
 この内訳につきましては、次のページを見ていただきたいんですが、2の自主的避難者数、これは3月15日現在ということでございます。左の黄色い四角のところに4万256人という先ほどのデータがございますが、その内訳を、相双、いわき、県北、県中、県南、会津に分けてそれぞれ数字が出てございます。一番上のところの脚注に書いてございますが、相双地区、いわき地区がやはり数が多いということでございます。で、県北、県中、県南、会津と続く形でございます。
 一方で、四角のところに書いてございますが、いずれの地区におきましても、自主避難をして出ていった方のほかに、受け入れ数というのがございますが、他の地域から避難者を受け入れているということがございます。それが下の段の数字になってございます。
 続いて、4ページの3-丸1でございますが、これは公立小中学校の児童生徒につきまして、県外に転校した児童生徒数、5月1日時点のものがございましたので、それをまとめたものでございます。先ほどの自主避難者数と異なりまして、小中学生の転入、あるいは転校につきましては、かなり教育委員会のほうで正確な数字が出てございます。これも上のところに書いてございますが、5月1日時点では7,240人が県外に転出しているということでございます。
 さらには、転校の受け入れのデータもあわせて記してございます。例えば、右側の相双地区でございますと、転校の受け入れ数が192人、これに対して県外に転出した児童生徒が5,300人ということでございます。それぞれの差を見ますと、やはり相双、いわきあたりは県外に転出した人数のほうが多い、あるいは県北、県中、県南その他の地域では、この時点ではむしろ転出よりも受け入れの数が多いという格好になってございます。
 それの続きで5ページでございますが、3-丸2、これは福島県外へ転校した児童生徒の推移を最新の夏休みの終了時点まで延ばしたものでございます。上の四角のところに書いてございますが、全体として前の5月1日時点で7,240人だったものが8,753人に増加をしてございます。その増加も、先ほどの相双、いわきのところはわずかに増加してございますが、むしろ県北、県中のところで県外への転校した児童生徒が増えているという形になってございます。
 全体的なデータは以上でございますが、その他の情報としまして6ページ以降に幾つかの参考になる情報を挙げてございます。
 まず、6ページの4-丸1のところは、8月25日に共同通信が、これは幼稚園児も含めたアンケート調査で、あるいは私立の学校も含めた形で、県内外への転校者数として1万7,651人という数字。その内訳は、そこに幼稚園、小学生、中学生ございます。さらには転校前の学校の所在自治体としては、南相馬、浪江、富岡、いわき、福島の順でこのようになってございます。それから、転校後8月25日の時点でもとの学校に戻ってきた人がそのうち745人というようなことがございます。ちなみに福島県内外避難の児童生徒数の転校状況というのも教育委員会の調べで下の表のようになってございます。
 それから7ページは、福島県内に転校した児童生徒の推移ということで、夏休み前と夏休み中の、夏休みまでの合計の数字が表になってございます。その下は自主的避難と直接は関係ございませんが、すみません、最初に説明するのを忘れましたが、この全体のデータにつきましては、地震・津波で避難された方も含まれているということで、ホームページから南相馬といわきについて、5月11日時点で、津波で家屋の倒壊した数、あるいはインフラの状況について参考で記してございます。
 その後ろ、8ページ、9ページはさらに参考でございます。
 まず8ページは、福島県の推計人口の推移ということで、平成22年と平成23年、それぞれについて、3月から7月の間の人口の増減数、増減率を地区別に書いてございます。そこの四角に書いてございますが、事故以降に住民数はいずれも減少しておりますが、昨年に比べて特に減少しているのは相双、いわき、県北、県中ということが読み取れます。
 最後のページは、県内の各市町村の配置ということで、奥羽山脈、阿武隈高地を境にいたしまして、大きく、会津、中通り、浜通りというわけでございますが、それぞれの県中とか県南、県北、相双、いわき、会津、南会津、こういった配置になってございます。
 資料の説明は以上でございます。

【能見会長】  それでは、ただ今の資料につきまして、何かご質問、あるいはご意見がございましたらお願いいたします。よろしいですか。それでは資料1につきましては、以上のとおり説明を受けたということにいたしたいと思います。
 次に、自主的な避難に関連して、損害賠償という観点からどういう論点があるかというものをまとめた資料がございます。この資料の説明を事務局からしてもらいまして、その後に議論をしたいと考えております。それでは、資料2についての説明をお願いします。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  それでは、資料2でございます。自主的避難に関する主な論点ということで、論点を挙げた格好の資料でございます。
 まず、これまでの経緯でございます。ここにつきましては、前回ご議論ございましたので省略をさせていただきますが、最後の3行のところでございます。「一定範囲の自主的避難に係る損害につき原則として相当因果関係が認められる類型として指針で明示することが可能か否か、審査会において引き続き検討を行うこととされた。」というのが前回の8月5日の第13回の審査会の結論であったということでございます。
 それで、以下に論点を挙げてございますが、まず自主的避難に関する検討の方向性ということで、最初のパラグラフ、「一般的には」というところからのくだりは、前回の審査会で資料としてお出しした、用意された文章をそのまま引用してございますが、一般的には、社会通念上合理的であると認められる場合には、賠償すべき損害となり得る。このような避難の合理性を判断するための適切な基準について検討するということでございます。
 その次のところでございますが、自主的避難については、まず指針によって具体的な基準を示して類型化するか、あるいは一般的な基準を指針で示して個別具体的な事情に応じて相当因果関係を判断するかという論点もございます。
 これを検討するに当たって、次の2つのケースに分けられるのではないかというところでございまして、まず丸1でございますが、事故当初の時期に、これは情報が十分にないような状況の中で大量の放射性物質の放出による被曝を回避するために避難を選択した場合というのが考えられる。さらに、丸2につきましては、その後、比較的低線量の放射線による健康への影響を可能な限り減らしたいと考えて避難するケース、この2つに大きく分けられるのではないかということでございます。
 まず、以下、事故当初の自主的避難についてということで、最初に書いてございますが、事故当初、原子炉建屋で爆発が起きる、あるいは避難指示の範囲が次々に拡大されるなどの状況であった、あるいはその情報も現在と比べて相当不足していた、こういう状況の中で、政府による避難指示等の対象はないが、住民が自主的に避難を行ったことについてどう考えるかでございます。
 それでまず、対象区域でございます。自主的避難の合理性を判断する際に、区域による具体的基準を設けることが可能かというのが1つでございます。「その際」と書いてございますが、その区域を分けるに当たって、行政区域、あるいは距離、さらには、下のほうにございますが、放射線量、あるいは避難者数、あるいは避難者数の人口比率、こういったものも考慮することが考えられるのではないかということでございます。
 下の小さな字のところで、先ほどの資料と同じでございますが、3月15日時点での自主的避難者数を人口比とともに書いてございます。
 次は、対象時期でございます。自主的避難をした時期によって、合理性を判断する基準とすることが可能かということでございます。これについては、ここに3月16日、あるいは3月19日といったことが書いてございますが、次の3ページに、これもちょっと小さな字になりますが、事故発生以降の政府の対応ということで、当初3月11日に、まず1号機から2キロ圏内の住民に避難指示というところから、3月15日に半径20キロから30キロの屋内退避指示、さらには4月12日のINESのレベル7の評価の発表、さらには、その次のページになりますが、最後、6月30日の特定避難勧奨地点の指定という、幾つかの節目になるかもしれないタイミングについて時系列で書いてございます。
 それで3ページに戻っていただきたいんですが、丸1、丸2、丸3のところで、これが論点になるかと思いますが、どの時点までをこの事故当初の時期として議論すべきか、あるいは事故当初の時期といっても、本当の最初の時期と少したった時期と違うのか、当初の時期といってもその中で扱いを変える必要があるのか、あるいは避難をした後、避難先に滞在する期間というのも扱いを変える要素になるのかならないのかという論点があるということでございます。
 続いて、4ページでございます。対象区域、対象時期に引き続きまして、損害項目でございます。中間指針で書いてございます、政府による避難等の指示によって避難した者につきましては、今、避難費用、営業損害、就労不能、あるいは精神的損害、さらには帰宅等もございますが、これらについて、損害項目について賠償すべき損害と認めてございます。一方、自主避難について同じように損害項目を考えるのか、あるいは自ら避難を選択したということを考える、あるいは自主避難をした者の住む地域に避難をせずに滞在した者がいたという点で、政府指示の避難とは異なる状況がございますので、これらを踏まえて自主的避難に係る損害を認める場合、どのような損害項目を賠償の対象とすべきか。
 さらには、続きまして、(4)の対象者の属性でございます。幼い子供を持つ親、あるいは妊婦につきまして、それ以外の者が行った者と分けて考える必要があるかないかというような論点があるのではないか。
 4ページの下のところからは、事故から一定期間経過後の自主的避難についてでございます。ここにつきましては、最初に書いてございますように、4月22日、一定期間経過後につきましては、年間20ミリシーベルトを超える地点については計画的避難区域に指定されて、それ以外の地域については放射線量が年間20ミリシーベルト以下と予測されさることが確認されたが、少しでも被曝線量を低減させるため自主的避難をすること、これについてどう考えるかということでございます。これについても、まず先ほどと同じように対象区域をどうするか、さらには対象時期をどうするかという論点がございます。
 書いてございますように、年間20ミリシーベルト以下の地域では、政府は避難指示を行っていないわけでございますが、一方、年間20ミリシーベルト以下の地域であっても通常よりも比較的高い放射線量の地域については、長期間その放射線量を維持したま生活することは想定されていない。このため、除染を計画的に行うわけでございますが、その中で、現時点で――次のページでございますが――放射線量が通常よりも高いことを理由に、自主的避難することをどう考えるかということでございます。
 それから、損害項目につきましては、先ほどの事故直後の避難と同じようなことが言えるということでございます。
 それから、対象者の属性についても、幼い子供を持つ親や妊婦、こういったものを分けて考える必要があるかということでございます。
 以上、最初に述べました2つ場合分け、ケースについて、それぞれ論点を書いてございますが、さらに、その他考慮すべき事項として、3点挙げてございます。
 まず1点目は、避難しなかった者との関係ということで、自主的避難者の数よりも避難せずに滞在していた者の数がはるかに多い中で、避難した者に損害を賠償することをどう考えるか。避難しなかった者が不安に感じたまま滞在することがあると考えられるが、これをどう考えるか。さらには、中間指針では実際に避難した者について精神的苦痛、これは避難に伴って正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛として賠償対象と認められておりましたが、これとの関係をどうするかというのがございます。
 2番目といたしまして、避難指示等の区域における損害との関係ということで、仮に自主的避難に関する損害を認める場合、中間指針で示されている避難指示等に係る損害の範囲との関係をどう考えるか。具体的には、そこに書いてございますが、まず1つ目のポツでございますが、損害項目や範囲に関して、避難指示等に関する損害の賠償を超えないようにすべきか、それとも、両者の関係を考えずに議論してもいいのか。さらには、次のページにまいりますが、避難指示等が解除された後に旧指示等区域から避難した場合をどう考えるか。その他の区域からの自主的避難と同等に扱うべきか。さらには、少し具体的になりますが、中間指針では、6月20日以降に緊急時避難準備区域から避難を開始した場合は、子供、妊婦、要介護者、入院患者等に限って賠償の対象とされていますが、このこととの関係をどうするかということがございます。
 それから、最後の論点といたしまして、対象者及びその損害の認定の困難さということで、実情の把握も非常に困難でございますが、一方で、自主的避難につきましては認定が困難な場合が相当想定されまして、証明の事務負担を緩和しつつ適切に賠償するための方策というのが考えられるかということでございます。
 それから、申しおくれましたが、ここでは自主避難、自主的避難、いろいろ言葉がありますが、これまでの指針の中で緊急時避難準備区域から自主的避難にすることを自主避難という言葉で使ってございますので、今回、避難等区域外からの自主的な避難については、自主的避難という言葉で資料は統一させていただいております。
 説明は以上でございます。

【能見会長】  以上が、自主的な避難についての論点を整理したものでございます。多くの論点は前回審査会の議論の中で出てきたもので、多少はこれを発展させたものもありますけれども、前回出てきた議論がほとんどだったと思います。若干つけ加わっている点もあるわけですが、この資料自体は一定の方向性を示すものではございません。ということで、今日は全くご自由にご議論いただきたいと思っております。
 前回の審査会においでにならなかった先生方もおられるかもしれませんが、議事録等はごらんいただいていると思いますので、大体の議論の雰囲気はおわかりかと思います。前回の議論を、私がまとめると、何か方向性をつけるようになるかもしれないので適当でないかもしれませんが、そういうつもりはありませんで、方向性を先取りしないように注意して要点をお話しします。前回いろいろ議論がありまして、自主的な避難について賠償するか否かの判断をする基準がそう簡単ではないが、賠償の対象になるような損害はあるのではないかというようなことになりました。あるのではないかというのは、あいまいな言い方ですが、どのような人々のどのような損害が賠償対象になるか今の段階では言えないが、賠償がなされるべき損害は考えられるのではないかというようなご意見が多かったと思います。ただ、今のようにことばまとめることができたとしても、それに対して皆さんが持っているニュアンスというのはそれぞれ大分違っていたかと思います。従って、ただいまの私のまとめにかかわらず、今日は皆様ご自由にご発言いただければと思います。どなたからでも、ご意見がございましたら、お願いいたします。
 どこからでもというとかえって議論しにくいかもしれませんので、論点の整理では賠償の対象となりうる人達のグループを2つに分けましたので、ここらから議論していただければと思います。2つに分けることについては、前回の審査会の中でも出てまいりましたが、ちょっと切り口が違ったご発言をされた方もおられますけれども、要は、原子力発電所の事故が起きた直後に十分な情報がないまま避難したというグループと、それから、情報がある程度出てきて、放射線量がある程度わかって、その段階で被爆に対する危惧・不安から避難されたグループとに分けることができるのではないか、両者では賠償の根拠や人的範囲などちょっと違う問題があるのではないかというご議論がございましたので、今日も一応その2つのグループを分けて論点を整理いたしました。そもそもこの2つの分け方でよいかどうかについては議論がありえます。中島委員は少し違った切り口もご発言されたかと思います。一過性のというのか、最終的には20ミリシーベルトに満たないけれども、途中の段階で瞬間的にそういう高い放射線量の計測がされたという場合に、そういうものについてはその段階で避難したグループというのはそれなりに合理性があるのではないかというご発言だったと思いますが、こうしたご指摘も念頭に置きながら、カテゴリーを分けるということについて、もし何かご意見があればお願いしたいと思います。

【中島委員】  前回は、今、会長がご指摘のような観点で考えてみたんですが、少なくとも緊急時については、データに基づいて避難したというわけではないということも考えますと、時間的な区分として、当初の時期、緊急時については線量を基準とするという意見は撤回したいと思います。むしろ線量よりは時間と場所という切り口からの基準のほうが実態に合っているのではないかと考えます。

【能見会長】  前回、大塚委員も、初期の避難者と、少し後からの避難者とで分けたらどうかというご意見でしたけれども、今日のまとめの仕方等について、何かご意見ございますか。

【大塚委員】  基本的に私の考えはこれとほとんど似ていますので、大変きれいにまとめていただいたなと思っていました。
 1つだけちょっと追加的に、伺うということでもあるんですけれども、4ページの3のところで、事故から一定期間経過後の自主的避難と書かれていて、その3行目に、この区域が決まって、「自らの生活圏内の放射線量も年間20ミリシーベルト以下と予測されることが確認された」と書いてあって、ここは私自身も重要なところだと思っているんですけれども、これが確認されたのは、上の、3ページ下から始まっているこの一連の流れの中では、私は4月22日だと思っているのですが、そのような理解でいいかどうかちょっと確認させていただきたいと思います。その辺がおそらく、事故当初の自主的避難と事故から一定期間経過した後の自主的避難を区別する境目になるのではないかと個人的には考えていますので、そこを確認させていただきたいということでございます。

【能見会長】  これは資料をつくった事務局から説明してください。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  ここの確認されたのがいつかということについては、先ほど説明で、4月22日ということも念頭には置いていますので、そういうふうに説明をさせていただきましたけれども、その前の4月11日のところも官房長官の記者会見があったりして、どの時点かというのは、必ずしも事務局としては判断をしたものではございません。

【能見会長】  ということですので、この資料をもとにしながらこの審査会で決めていただければと思いますが、一定の関係があるということですね、大塚委員のご発言は。

【大塚委員】  はい。

【能見会長】  いずれにせよ、こういう区分けの仕方、時間的にどこまでかというのは問題が残っているかもしれませんけれども、こういうふうに一応分けた上で、事故直後に避難した場合について先に議論するということでよろしいでしょうか。それでは、その中身について、もう少し踏み込んだご議論があればお願いしたいと思います。
 今のように分けますと、事故直後の避難とはいつまでかというのが1つの問題です。また、どの範囲の人々の避難を合理的と考えるか、その対象区域をどういうふうに決めるかが問題となります。あと、重要なのは損害の項目ですね。どのような損害を賠償するのかということです。が、この対象者、おそらく皆さんも比較的近い意見をお持ちかもしれませんけれども、この第2カテゴリーの長期の、少したってからの避難の場合と比べると、初期に情報量がないもとで避難したという場合については、対象者の属性はあまり大きな考慮の要素ではないんじゃないかという感じもいたしますけれども、いかがでしょうか。

【高橋委員】  前回は休みまして申しわけございませんでした。基本的な区別についても異論はございません。
 ただ、行政上の指針として考える場合には、やはり定型的な基準を明確にした上で、あと個別の事情がいろいろおありの方については個別にご主張いただくという形が望ましいのではないかと思います。そういう意味では、行政上の区域を1つ考えるというのは合理的なんじゃないかと思います。
 対象者についても、今、会長がおっしゃいましたように、この場合には属性を気にする必要はないのかなと思います。ただ、その場合の比率とか、そういうところまで見るのかどうか。やっぱりそこは政府指示の過程を見て、その区域ごとに、その対象にするのを拾うのが合理的かどうかというところの過程を少し見ながら考えるのがよろしいのかなと思っておりまして、そこら辺のところは副次的な要素として見るほうがいいのではないかと思っております。
 以上です。

【能見会長】  先ほど私は、こういうふうにカテゴリーを分けて賠償を考えると言いましたが、そのそもこのようなカテゴリーで考えたときに、自主的避難者に賠償することが適当なのか否かという大前提の問題は勿論まだ残っているのであって、そこも含めて、皆さんのご議論をお願いしたいと思います。従って、もし賠償するとなったら、どういう区域で、いつまでで、どういう損害かという問題を議論して頂いているということになります。今までのご議論ですと、当初、情報量が少ない段階で自主的に避難されたグループというのは、それなりに賠償の合理性があるという理解でよろしいでしょうか。そうすると、どういう範囲の人々を対象として、どういう損害について、どういう時期の損害を賠償するのか、ということが争点になるということでよろしければ、少しこれら点に踏み込んで議論を進めていただければと思います。今、高橋委員からは、対象区域については行政区域ごとで検討するのがいいのではないかというご意見だったと思いますが、ほかの点についていかがですか。

【中島委員】  私はむしろ、距離のほうを基準にし、行政区域は副次的な要素として考えるべきではないかと考えます。主は距離を、行政区域は従とすべきではないかと考えます。その1つの理由としては、そもそも政府の指示も距離を基準になされていたわけですし、ここの資料では、3月16日のアメリカ政府の退避勧告が80キロと、これも距離を基準にしておりました。行政区域は人的なつながりという副次的な要素としては考慮すべきかもしれませんけれども、主はやはり距離と考えるべきではないかと。特に当初の時期については、事情がよくわからない恐怖感もあったと思いますし、それを考えますと水素爆発もあったりして、それが行政単位を基準にするというのはちょっと違和感を感じるんですけれども。放射能が届く距離というのは、やはり感覚的には行政区画よりは距離なのではないかと思うんですけど。
 ちなみに、アメリカ政府は80キロとしたようですけれども、調べましたら、カナダ政府は日本政府に従っていたようですけれど。
 しかし、いずれにしろ、距離のほうを主とするほうが、当初の緊急事態の時期には、第2ステップのときはちょっとまた違うかもしれませんが、当初の時期は距離ではないかと考えます。

【能見会長】  行政区域であれ、あるいは距離であれ、何か高橋委員、あるいは中島委員、こんなのはどうかという具体的な線引きについてのお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。もっとも、具体的な線引きは後でまた詰めればいいことかもしれませんけど。

【米倉委員】  私もやはり最初の段階では距離が一番重要なファクターかなと思っています。それは、1つは、もちろん政府の指示が20キロ圏、そして20キロ圏から30キロ圏の間の屋内退避という段階があったということもありますし、それから、この時点でどれだけ住民の方々に、放射線量あるいは放射能がどういったところを汚染しているかという情報等もそれほど与えられていたとは思わない。もちろん、いろいろなファクターはあるにしても、それが第一かなと思います。
 そして、その上で、では隣の村はどうなのとか、同じ行政区域でありながら、距離が若干異なることによる差等をどのように勘案して副次的に考えるのかなと、そういう2段階なのかなということを感じます。

【能見会長】  どうもありがとうございます。ほかにご意見ございますか。

【高橋委員】  すみません。私が申し上げたのは、当然、行政区域を選ぶときには距離感というのがあると思うんですね。ただ、円を描いて線を引くのかということを問題にしただけで、その引き方はやはりある種、社会的な共同体のところの線の引き方があるんじゃないかと申し上げたので、スパッと距離で引くのかどうかということをちょっと申し上げたということだと思います。

【能見会長】  この距離、あるいは行政区域等でどういうふうに範囲を確定するかということ自体、もちろん大きな問題ですけれども、もし今ここで、すぐに適切な提案がなければ、今の第1グループについての関連するその他の問題についてもご議論いただきたいと思いますけれども、距離あるいは行政区域範囲について、何かほかにご意見はございますか。
 対象者の場所的範囲については、どういうふうに決めたらいいか更に資料をもとにいろいろ検討しなくちゃいけないかと思いますので、一度持ち帰って検討したいと思います。

【大塚委員】  ちょっと質問でいいですか。

【能見会長】  はい、どうぞ。

【大塚委員】  ヨウ素を50キロ範囲で配っているんですけれども、これはどういう理由で50キロにしたかというのを教えていただけますか。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  すみません。はっきり記憶しているわけではないんですけれども、県のほうから、これは県の防災計画に基づいて、どこかで判断をして市町村に配布をしたということで、必ずしも住民に配ったわけではございません。

【大塚委員】  はい。ありがとうございます。

【能見会長】  いいですか。
 それでは、この範囲については、もう少し材料をもとに、と言ってもよい検討材料があるかどうかわかりませんけれども、引き続き検討するとして、その他の点についていかがでしょうか。こちらもなかなか難しい問題がたくさんございますが。
 時期をどこまでにしたらいいかというのも悩ましい点ですけれども、初期の自主的な避難者については、どこかに時間的な限度があるだろうということで、それをどう決めるかという問題が残るわけですが、私の理解では、その期間に避難して、その後もずっと避難していても、その避難中の期間全部が初期の問題というわけではなくて、初期の問題というのは、一定のどこかで終期を区切ると、そこまでの期間の避難中の損害が初期の損害として賠償対象になるというふうに考えています。あるいは違う理解をされた方はおられますか。
 それ以後も避難を継続していれば、それはむしろ第2段階の問題であり、第2段階の賠償をどういう基準で判断するかによることになるのかなと思います。
田中委員、どうぞ。

【田中委員】  先ほど質問にもありましたけれども、我が国の防災規定、当初の防災法では、強制避難というのは50ミリシーベルトですね。ですから、当初はそれで対応してきたんですけれども、途中から計画的避難区域とか、そういうところに20ミリという基準がが出てきました。
 それから、今、確認をしたいのですけれども、20ミリシーベルト以上は避難で、20ミリシーベルト以下未満であれば1年間、来年の予測線量が20ミリシーベルト以下であれば、一応現存被曝状況で住んでいていいということになっていますので、その20ミリシーベルトがいつ公知の事実になったかというのが非常に大事なような気がするんですね。
 だから、先ほどもご質問ありましたけれども、それが4月22日なのか、11日なのかというところ、どっちでもいいのかもしれませんけれども、そのあたりが、今、会長がおっしゃいましたような1つの区切りになるんじゃないかなと私は思います。

【能見会長】  はい。野村委員、どうぞ。

【野村委員】  今の区切りの問題なのですけれども、最初の混乱時期は、おそらくどの程度汚染されているかというのがわからないということとあわせて、事故がこの先どういうふうに展開していくのかというのがわからないということもかなり大きな要素ではないかと思うのです。そうしますと、例えば20ミリシーベルトなら安全だとか、それに従った避難指示が出たりした段階で、既に事故の先行きがこれ以上悪化しないということが明確になっていないとすると、自主避難している人が、そういう指示の外側の住民だからといって、自主避難することが合理的でないという判断はしにくいのかなと思っています。

【能見会長】  なかなか難しい、悩ましい問題ですね。
 はい、中島委員。

【中島委員】  今の野村委員と同感なんですが、そうしますと、事実として、当時原子力がもうコントロール可能になったというふうに、一応まだ少なくとも水素爆発のような事態は回避できるようになったと一般に、あるいは政府が認めた時期がいつであったのかを少し調べてみる必要があるように思うんですが、今の手持ちの資料では、4月22日に解除されたところを見ますと、おそらくこの時点である程度めどがついたということが多分根拠になっていると思いますと、大塚委員がおっしゃるように、4月22日あたりかなという気がするんですが、ただ当時、実際どうだったのか、ちょっともう少し確かな資料があったほうがいいように思うんですけれども。

【能見会長】  これは、今、直ちに何か答えることができますか。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  即答は難しいので調べさせていただいて、そのタイミング、それからそれが周知されたタイミングがわかるような資料を、次回には間違いなく用意いたしますし、でき次第、皆様にお送りできるようにしたいと思います。

【能見会長】  はい。

【田中委員】  ちょっとよろしいですか。

【能見会長】  はい、どうぞ。

【田中委員】  私はそこをあいまいにしてしまったら、国の防災の指針が全くないと同じになるんだと思います。だから、当初50ミリだったんだけれども、20ミリに下げたのはそれはそれでいいんですけれども、20ミリよりもさらに大きな範囲で、20キロ以上の範囲で20ミリ以上の被曝が予測されるとすると、国としてはそこまで避難させなければならないことになります。それは、避難を強制していないということで、20から30は屋内避難、緊急非難準備区域ということでやっているということは、やはり明確なエビデンスとして、国のほうがこれ以上は大丈夫だということは言っていないと思いますけれども、事実としてはそういうふうに理解しないと、何かよくわからない、基準がどこになるのか、全然わからないことになってしまうような気がするので、私はそこを動かすとなると、ちょっと収拾つかないなという感じがしているんですけれども。

【能見会長】  これは、後のグループの問題ともちょっと微妙に関係していると思うんですけれども、初期の情報が少ない段階で避難したグループについて賠償を認めるかどうかという問題のところは、先ほどから議論しておりますように、当初の段階ではとにかく放射線量がどんなかということもわからない、とにかく爆発があって危険なので、とにかく逃げるというわけですね。ですから、そこでは放射線量の問題は関係ない。
 問題は、それがある程度明らかになってきたときに、田中委員のご意見は、20ミリシーベルトという基準が周知されて、その段階で初期に情報のない中で避難してきた人たちも、初期の避難の正当化はその時点で終わると。簡単に言うとそういうことですね。ですから、その20ミリシーベルトという基準が設定された時点がいつかということですね。

【田中委員】  はい。

【能見会長】  さっきの野村委員のご意見ですと、そういうふうに設定されたかどうかではなくて、やはり爆発等の危険がほんとうになくなったと言えるのかという段階まで、おそらくそちらのほうが期間が長くなる可能性があるんだと思いますが、そういうことでしたか。

【野村委員】  いや、ただ、22日に屋内退避の指示を解除した時点において、20ミリシーベルトの基準とあわせて、将来さらに爆発が起こる危険がほとんどなくなったという判断がなされたということがはっきりすれば、それはそれでいいのではないかという趣旨で申し上げました。

【能見会長】  わかりました。
 田中委員のご意見だと、具体的には何日になるということですか。

【田中委員】  11日か22日かどちらか。

【能見会長】  どちらかですね。はい。あとは考え方の問題ということですね。

【田中委員】  はい。

【能見会長】  ほかにご意見ございますでしょうか。
 微妙に考え方は違うかもしれませんけれども、大体11日か22日かというところなんだと思いますが、ただ理屈づけ、どういうふうに理屈をつけるかということが、先ほどちょっと言いましたように、後の問題にも少し関係してくるかと思いますので、ほかにご意見があれば伺います。あるいはほかの点、損害項目とか、ほかの部分まで含めてご議論いただければと思いますがいかがでしょうか。
 先ほどちょっと言いましたけれども、実際には初期に避難されて、22日までに戻るという方も当然おられたとは思いますけれども、そのままずっと引き続き避難されているという方も結構おられるのではないかと思いますが、こういうグループについてはどういうふうに考えたらいいかということも問題となります。これは第2のカテゴリーの自主的避難とも関係するわけですけれども、何かご意見があればお聞かせいただければと思います。
 どうぞ、大塚委員。

【大塚委員】  この点については、先ほど会長がおっしゃったように、基本的に第2の問題のほうに、事故から一定期間経過後の自主的避難についてどう考えるかという問題のほうに移っていくものと思います。
 細かいことを言えば、4月22日に直ちにそちらに移るのか、二、三日の日数を追加するのかというようなことは多少考えたほうがいいかもしれません、新しく別のところに移ってからもとに戻る間に、相当期間必要かというようなことは多少考えたほうがいいかもしれませんが、基本的には4月22日で、11日というご意見ももちろんあると思いますけれども、事故から一定期間経過後のほうの問題に移るのではないかと思います。

【能見会長】  損害の項目はいかがですか。
 簡単に言えば、これは政府の避難等の指示によって避難した者と全く同じようにするということなのか、少し違うように考えるかということですね。
はい、高橋委員、どうぞ。

【高橋委員】  合理性を認めている以上は、あまり区別する必要もないのかなと思うのですけれども、ただ問題は、精神的損害の取り扱いなのではないかなと思います。政府の指示で避難された方の精神的な損害の話と、自主的な判断でされた場合とではどういう精神的な損害を考えるのかというのは、難しい問題なのかなと思います。それ以外のものについては合理的と考えれば、それは一種、救済の対象になるのかなと私自身は思っていますが、その辺ちょっとほかの先生の意見もお聞きしたいと思っています。

【能見会長】  ほかの皆さん、いかがでしょうか。
 これは、今まで政府の避難等の指示によって避難した人たちに対する精神的損害というのがそもそも何であったかということ自体とも関係するんだと思いますけれども、これもぎりぎり全部詰めているわけではなくて、おそらく皆さんの間でも少し理解が違うんだと思いますが、私の理解は、これは避難を余儀なくされて、避難している間の生活の不便さ、あるいはコミュニティから切り離されたことによる不便さといいますか、そういうものが中心であったと思います。若干ほかの要素も含んでいるかもしれませんけれども、それが中心であったろうと考えております。
 だからこそ、一定期間たつと、不便さというものは多少緩和されるので減額もされるという考え方だったと思っております。そういう不便さということだとすると、私もまだ十分詰めておりませんけれども、初期の段階で自主的避難したということがそれなりに合理性があるんだということであれば、精神的損害も同じような賠償の対象になるのかなというふうに思いますけれども、これは皆さんのご意見を伺えればと思います。
 はい、大塚委員、どうぞ。

【大塚委員】  会長がおっしゃるとおり、不便さという点ではおそらく違わないと思うんですけれども、先ほど高橋委員が言われたこととの関係でちょっと申し上げますと、不便さのもとになっているところの、なぜそういう状況が発生したかというところが若干の違いはあるかもしれなくて、それが強制されているかどうかというところが違うと見るかどうかという問題だと思いますけれども、しかし、いずれにしてもそういう状況があって、意に反して追い出されたと考えれば同じだと思いますが、政府から強制されたという点をどのぐらい重く見るかによって、ちょっと判断が分かれるのかなと思っています。

【能見会長】  ほかにご意見ございますか。
はい、中島委員、どうぞ。

【中島委員】  大塚委員がおっしゃるのももっともかと思いますが、避難指示よりも外側の人で逃げた行為も合理的であったと認める以上は、そのときの強制、恐怖心による避難というのは、政府指示と同質ではないけれども、近い一種の恐怖心による強制のようなものがあったと考えてもよいのではないかなと思います。

【能見会長】  この点は、皆さんのご意見が微妙に違う、そんなに大きく違うわけではないかもしれませんけれども、少し違うようです。大塚委員のような考え方に基づくと、少し減額して認めるというようなことなんですか。

【大塚委員】  私も考え方のことを申し上げただけで、結論は自分自身も出ていないものですから、考え方を申し上げただけです。すみません。

【能見会長】  ほかにこの第1グループについて、この際詰めておかなくてはいけないという問題点がございますでしょうか。
 それでは、これは今日のご意見を踏まえまして、もう一度練り直しといいますか、整理してまいりたいと思いますけれども、後でまたお気づきの点があれば戻っていただいても結構でございます。
 次の、事故から一定の期間経過後の自主的な避難についてで、こちらのほうがある意味で難しい、大きな問題を含んでいると思いますけれども、こちらについてはいかがでしょうか。

【田中委員】  ちょっとよろしいですか。

【能見会長】  はい、田中委員。

【田中委員】  私自身もちょっと悩ましいなと思っているのは、6月30日に特定避難勧奨地点というのが出て、部落の中で隣同士で違った措置が出てきた。そのときに、小さい子供がいる人たちが自主避難をしたというケースもあるんですね。そういうのをどう扱うかというところが、そこが20ミリになるのか、ならないのかというのは、おそらくそれほど確信を持って国が出せたかというくらいの微妙なレベルのところで避難勧奨したり、しなかったりということが起こっていますので、そのあたりは個別扱いになるのかどうか。それ以外は、先ほどの議論で、私は22日か、4月の一定の後のほうは、もう20ミリ、そういう場所以外は対象外でいいんじゃないかと、個人的にはそんなふうに思っているんですけれども。

【能見会長】  はい。ほかのご意見、いかがでしょうか。
 これは、田中委員にお聞きしたい点があるんですけれども、政府のほうでもって行政的な措置として避難すべきかどうかという基準は、これは20ミリシーベルトなんだと思いますけれども、それを基準に避難するというのは、緊急に避難しろということなんだと思うんですね。
 そこに長期間いると放射線をたくさん浴びる、最終的には合計では何年かも継続して浴びるようになって、それは危険であるという問題と、今緊急に避難すべきだという考えのもとに設定されている基準というのは、やはり違って考えるべきだと思うんですが、今、自主的な避難について問題となっているのが、そこに長いこと住んでいると、今すぐということじゃないかもしれない。長いこと住んでいると危険かもしれないということで避難しているとすると、これは、20ミリというのは基準にはならないんじゃないかと。20ミリというのは、あくまで緊急に避難すべきだという基準ではないんですか。

【田中委員】  非常に難しい問題で、実は国の基準は来年の3月、要するに事故発生から1年間ですね。その積算線量が20ミリになるか、ならないかで判断しているんですね。だけど、普通は、そういうふうに長期には事故が続く、被曝状況が続くというふうにはほんとうはあまり考えていなかったというところに、非常に混乱があることも事実のような気はしますけれども、今、会長がおっしゃったことからいきますと、どれだけになるかわからないという時期を過ぎた後は、もう予測がわかっているんだから、あとは来年の3月までに除染をするなり何なりして、線量を下げてしまえば、避難する必要はなくなるという判断も出てくるんですね。

【能見会長】  それは、どのぐらい除染できるかという予測のもとに考えるということですか。どのくらい除染できるかというのは、まだやってみないとわからないと私なんかは思うんですが。

【田中委員】  そのぎりぎりのところが十分20ミリを下げるぐらいのことはできると思いますけれども、努力すれば。

【能見会長】  いや、私が申し上げているのは、20ミリというのは、緊急に避難するための基準だから、そこに例えば10年住んでいるときに、積算で危険かどうかという問題とは直接は関係ないのではないかということです。そうすると、例えば1年ぐらいで除染で放射線量が半分ぐらいになったとしても、その後ずっと住んでいても大丈夫ですよということにはならないのではないか。また、除染の結果ということを考慮して、除染するから避難する必要はないということが十分言える場合もあるかもしれないけれども、除染はこれからやってみないとわからないので、考慮要素の1つにはなるが、それ以上ではないのではないか。更に言えば、今、避難しているのが合理的かどうかという判断の基準には、直ちにならないのではないかと思います。

【田中委員】  今、会長がおっしゃったように、10年単位で住んでいて、高いところに住んでいて、幾らならいいという基準は、今は多分なくて、ICRPのリコメンデーションとしては、できるだけ年間1ミリシーベルトに近づくように努力しなさいということだけしか、今は基準はないんだと思います。だから、避難のこととは少し違ってきますね。

【能見会長】  ちょっとまだ少し食い違いはあるかもしれませんけれども、そして、違いがあるのであれば、それを明かにするために、仮定の話しとして、次のような場合はどうかを伺いたいと思います。これはあくまで仮の話として、今年間10ミリシーベルトの放射線被曝を受ける地域があるとして、除染によって減っていくので、ずっとそれが続くわけではないかもしれないけれども、仮に10ミリシーベルトが続くと考えて、その10年間積算されると100ミリシーベルトになる。積算の仕方も、本当はこのように単純に積算していいのかどうかわかりませんけれども、仮に総量で100ミリシーベルトになったときに、その積算で100ミリシーベルトという総量はそんな安全であるというふうには考えられていないのではないかと思いますけれどもどうなのでしょうか。このように低線量であっても長期に先まで考えて、現在、特に心配されているのは子供だと思いますけれども、こうした子供などを避難させたいと考えるのが不合理なのかどうかという問題なんだと思いますけれども。

【田中委員】  その100ミリの基準は、私はちょっと今答えられないですね。どちらかというと医学的な観点が入ってくると思いますので、100ミリというのが、国としてそういうふうに積算線量を決めてしまったのかどうかということも、まだ明確ではないし、それを決めてしまったらば、今、会長がおっしゃったようなことがいっぱい出てきますね。それは非常に広域になります。

【能見会長】  はい。高橋委員、どうぞ。

【高橋委員】  今の会長のお言葉ですが、これを避難の概念に入れるかどうかということだと思うんです。今考えているのは、当面の福島の事故で、放射能の被曝を避けるために一たん出られて、中長期的には戻られることも前提にした方の話をしていると私は受けとめていて、そういう意味では、居住された方が、居所を転居されてしまって、もうもとへ戻られないというところはちょっと将来的な推移も考えないと、なかなか現段階で想像できないんじゃないかという気がします。そこは会長、いかがお考えでしょうか。

【能見会長】  もう戻れない、あるいは戻るつもりはないという人たちについてどう考えるかは、おっしゃるように別の問題があります。私は、先ほどのような長期の放射線の影響を考えて当面避難しているが、線量が下がれば戻ってくるという場合を考えています。そして、その祭、長期の影響を考えて放射線被爆を危惧して避難していることが合理的かどうかということを問題としています。それが合理的だという判断になれば、次に何を賠償するかというはまた別の問題になります。私は個人的には、おそらく増加する生活費みたいなものが一定期間賠償されるということが中心的な損害になるのではないかと思いますけれども、何を賠償するかはまた後で議論したい。いずれにせよ、今のような危惧から、避難して、その人がほんとうにもう戻らないということになれば、それはケース・バイ・ケースでもありますが、またちょっと違った問題が生じてくるだろうと思います。
 繰り返しになりますが、今、自主的な避難ということで問題となるのは、放射線量が年間20ミリシーベルトを切っているけれども、長期の被爆についてそれなりに不安を感じて避難する人の避難が合理的かどうかという点で、その人たちが戻らないと決心したときにどうするかはと別の問題です。その場合に、どうすべきかについては、私としてはまだ考えておりませんけれども。

【高橋委員】  後から出てきますが、当面2年の除染の方針が出ております。それはやはり前提にして議論したほうがよろしいのかなと私は思います。
だから、2年後にこうなっているということを前提にして、それで避難されている、戻らない、2年後戻らないという方が合理的かどうかというところを議論すればいいかなと思うんですけれども。

【能見会長】  すると、2年間はどうなんですか。

【高橋委員】  とりあえず2年という話になるんじゃないでしょうか。

【能見会長】  いや、その2年間分の避難は、それなりに合理性があるということになるのではないですか。

【高橋委員】  いや、そこをどう考えるかということだと思います。政府としては当然除染するのですから、それを踏まえて、当分は戻ってこないのが合理的か否かを検討しようということです。

【能見会長】  ちょっと私があまり多く話しすぎたかもしれない。ほかの委員、いかがでしょうか。
 はい、中島委員、どうぞ。

【中島委員】  今の会長のお考えをちょっとそしゃくして、議論がかみ合っていないようなところもありますので整理したいんですが、今までの議論の大まかなところは、まず大きなところでは時期で分けると。その時期、第1、最初の緊急時の時期というのが、仮にある程度コントロールできるというめどがついたときを境にするということ前提にしますと、最初の緊急時の時期における避難の合理性を基礎づけるものは恐怖心だと思うんですが、ある程度めどがついた次の段階では、避難の合理性を基礎づけるのは放射線量だというふうに考えられると。そうしますと、どの程度の放射線量を根拠に避難を継続していることが合理的と見るかが問題になると。
 このように第2段階のところでは、放射線量が基準になるというふうに考えると、20ミリ以内だからいいか、もう帰れという強制をしていいか、あるいは低放射線の影響を考慮して帰ることを躊躇していることを合理的だと見ていいか、そういう問題ではないかと。
 だとすると、第2段階では、対象者の属性も問題になってくるのかなと思います。

【能見会長】  そこまでは先ほど申し上げませんでしたけれども、基本的にそういう考え方をしております。
 大塚委員、どうぞ。

【大塚委員】  中島委員のご見解に私も基本的に賛成でして、放射線量を見て合理的かどうかを見ていったほうがいいと思っていますけれども、先ほど田中委員の話にあったところがさらに重要だと思いますが、食品安全委員会で今も検討中の生涯100ミリシーベルトというのをもし政府として何か出すのであれば、おそらくそれが結構大きな意味を持ってくるかと思います。
 そういう新たな基準のようなものができた場合には、政府として、やはりそこから出ていくという方に対して合理的な行動ではないとは言えなくなると思いますので、その点はよく検討したほうがいいと思います。
 高橋委員が言われるように、除染は2年でというのは方針としては出ているというのも重要だと思いますが、そこは、なかなか悩ましいところではあるんですけれども、2年で完全に全部終わるのかということは一応考えておいたほうがいいと私自身は思っておりまして、生涯100ミリシーベルトを超えるようなところに住んでいるということがある程度確かであれば、一定額を払うというのはあり得る選択ではないかと思っています。
 そのときに、放射線量を基準に考えるんだと思うんですけれども、ただ、例えば生涯100ミリシーベルトでもがんによる死亡が0.55%増えるということですので、それ自体を賠償の理由にするわけにはなかなかいかないと思いますので、そこはやはり、放射線量を基準にするという中島委員の意見に賛成ですが、最後はやはり不安というところに根拠を持ってくるのだろうと私自身は考えております。

【能見会長】  先に、高橋委員、どうぞ。その後に米倉委員。

【高橋委員】  大塚委員から言及がありましたが、実際、除染が2年で終わるということを申し上げたつもりはなくて、2年後の除染の状況を考えて、それで戻られない方の行動が合理的かどうかを考えましょうと、こういうお話をしたわけです。

【大塚委員】  すると、今は、指針はできないけれども、2年後にもう一度考えるというご趣旨なんでしょうか。

【高橋委員】  いやいや、当面2年を考えましょうと。2年後にまた考えればいい話だと思います。要するに、2年後に例えば60%減ると言っているわけですね、今の方針だと。その60%のところまで減ったということを想定されて動かれるかどうかということを、それが合理的と評価できるかどうかを考えましょうというお話を申し上げたということです。

【大塚委員】  何か、将来の損害賠償の話をしているような感じがちょっとしてきましたけれども。

【能見会長】  それはまた後で議論しましょう。
 では、米倉委員、どうぞ。

【米倉委員】  ちょっと、先ほどからの議論に少し違和感を感じているんです。最初の、早期において皆さんがある意味で恐怖感を感じて避難をしたというのは、これはそれなりに合理的であるということで、これは、私はいいかなと思うんですが、この4月22日以降は事故が終息し、そして、どういったところでは線量が高いと情報が与えられた、それに基づいて政府がある一定の方針を決めたわけですね。この、決めたときの年間20ミリシーベルトというのが非常に大きな誤解を招いてしまって、そんなところに5年も10年も住んでいられないよねというところが出発点だと思います。
 ただ、本来これが永久に続くことを想定してこの20ミリシーベルトを決めたはずではないはずで、本来は、ICRPの勧告でいえば、これを最終的に年間1ミリシーベルトまで下げていくという努力をする、その中で一つの基準を決めて、それを超える人たちは避難をさせようという、そういう基準として求められているもので、これは随時変わっていくべき性質のものです。
 そうすると、そこに住んでいる人たちがどのように感じたか、そこにきちっとした説明があったのかどうかというのも非常に大事なところで、こんなところに5年10年住めといわれても住んでいられないよねという感覚を持たれることは、ある意味で合理的かもしれないというふうに感じているんです。
 ただ、そこで問題になるのは、そういう人たちが自分の意思でもって自主的に避難した場合と、それから隣の人たちがそこに残ったという、そこにある種の個人の選択が入ってくる。これは、合理的な判断かどうかというのは、非常に私は難しいんではないかというのが率直な感想です。

【能見会長】  自主的な選択が介在していることが合理的な判断であったか否かに影響するかについては、私は違う考えを持っていますけれども、少なくとも残った人たちとの関係といいますか、バランスといいますか、そういう問題が出てくるということはこの論点メモにも書いてありますとおり、また重要な、難しい問題だと思っております。その点をどう考えるかも含めて、もしさらにご意見があればどうぞ。
 どうぞ、大塚委員。

【大塚委員】  私も多分、会長と同じ意見じゃないかと思ってはいるんですけれども、避難しなかった方についても、合理的な不安を感じていらっしゃる方については基本的に同じように考えていいと思ってはいるんですが、ここに書いてある「一方」というところとの関係で申し上げますと、中間指針で実際に避難した方についてこういうことを考えていたということとの関連で申し上げますと、これは放射性物質との関係での不安とかいうのは考慮していなかったことになると思いますので、それとは別物ではないかという整理はできると思います。
 結局、この避難しなかった人と一定期間経過後に自主的に避難した人との間のバランスというのはどこかで考えなくてはいけないことで、片方だけを賠償して片方はしないというのは、実際なかなか難しくなるものと思っています。

【能見会長】  どこまで大塚委員と同じなのか、よくわかりませんけれども……。

【大塚委員】  すみません。

【能見会長】  いやいや、大塚委員のご意見と似たところはもちろんあると私も考えています。ただ、これは重要な問題なので、どこか同じで、どこが違うのか明かにしておきたいのです。私は、自主的に避難をされた人の賠償と、仮に残った人たちについても何らかの賠償をすべきだというときに、それぞれの賠償の中身は違ってくるんじゃないかという気がしています。不安という点で同じだというとらえ方はもちろんあり得ると思うんですけれども、残っておられる方は不安そのもの、一定の放射線をあびつつ生活するということの不安が続くということが賠償の対象だと思いますけれども、避難された方は放射線をあび続けるわけではないので、避難のきっかけは放射線に対する不安ですけれども、避難された後の損害は不安そのものの慰謝料かというと、ちょっと違うのかなと思います。むしろ、避難したことの一定の合理性があるという前提ですが、増加する生活費などが賠償が中心になるんではないかと個人的には思います。この点についても皆さんのご意見を伺えればと思います。そもそも賠償するかどうかも含めてですけれども。

【大塚委員】  損害の項目とかは違ってくると思うんですけれども、私が特に申し上げたかったのは、何が合理的かというところの基準は多分同じになるかなと。生涯100ミリシーベルトかなと思っているんですけれども、そこは変わらないのかなという趣旨です。

【能見会長】  はい、わかりました。ほかにいかがでしょうか。
 この生涯100ミリシーベルトという話は、私もどこかで聞いていますけれども、これは具体的に、今、どこかで話しが進んでいるのですか。これはもし事務局のほうで知っているところがあれば教えて下さい。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  今、食品安全委員会が食品の、現在は暫定基準になってございますが、これのちゃんとした基準をつくろうということで、基準をつくるのは厚労省でございますが、厚労省から食品安全委員会に求めて、評価をしてください、食品の安全基準を決めるための線量について評価をしてくださいということで、求めに応じて食品安全委員会がその生涯線量100ミリシーベルトというのを食品の安全をつくるための基準として使うようなんです。ちょっと正確な表現は忘れましたが、基準として出しているということでございますので、一般の被曝線量の基準を議論するための数字ではないと理解しております。

【能見会長】  そうすると、食品での放射線被曝もあるし、ほかにも被曝もあるかもしれないけれども、食品についてはこれで限定しようという考え方だということになるのでしょうか?

【田口原子力損害賠償対策室次長】  すみません、どこまで正確にしゃべれるかちょっとあれなんですが、食品の安全基準を決めるに当たって個人の摂取量から逆算して、濃度といいますか、食品中の放射性物質の量を決めるわけですけれども、それを、もとのところをどういうふうに考えるかというところで、外部被曝も合わせて生涯100ミリシーベルトという数字が出てきているということなので、決してそれは、一般の外部被曝の線量基準を決めたり、こういった場で議論するのとはちょっと性質の違う数字だと理解をしております。

【能見会長】  ちょっと基準の目的等がいろいろ違うのかもしれませんけれども、一つの基準として検討する余地はあるかもしれません。この基準は、直ちに外部被曝の科学的な安全性を考えるときの基準そのものではないけれども、避難したことが合理性があるのかどうかを判断する基準として使えるかもしれないというのが大塚委員の意見であり、私も100ミリシーベルトというのは一つの考え方だと思います。ただ、そうは思いつつ当てはめていこうとすると、生涯線量ですから、いろいろ放射線量の状況は、先ほどからご意見があるように変化するというもとで、避難行動に合理性があるかどうかと判断をするときに使うには、少しモディファイしないと使えないというところがありそうな気がします。
 大塚委員、どうぞ。

【大塚委員】  ちょっと生涯100ミリシーベルトについて、厚生労働省が依頼したことと食品安全委員会が考えたり、答えようとしたことと若干ずれがあるとかいうことも報道では伺っていますけれども、その辺は私よりももっと専門的な方に伺ったほうがいいと思いますが、もし生涯100ミリシーベルトが無理だとした場合には、例えばこの間、中島委員がおっしゃっていたような年5ミリシーベルトとか、これは作業員の方の基準ですけれども、例えばそういうことも検討の対象にはなるかなと思います。

【能見会長】  これは非常に難しい問題であり、いろいろなご意見が出るのは当然だと思っています。今日確定するわけではないのですが、できるだけいろいろな意見をお出しいただけますとさらに論点を詰めるということに役立ちますので、さらにご議論をお願いできればと思います。
 では、高橋委員、どうぞ。

【高橋委員】  今までの議論もそうですが、放射線防護の場合は合理的に達成できるほど低く、低減しなければいけないという原則があって、これがなかなか理解が難しい。私も含めて、専門家以外の方には難しいところがあるんだろうと思います。
 特に、乳幼児の方、妊婦の方についてはこの原則は理解するのは難しいだろう。そういう意味で、自分の子供さんとか、これから生まれる方についてはそういうのは避けるべきであるというのは、合理的なのかなと思いますので、成年については私自身いろいろとこれから議論したいと思いますが、やはりこの(3)の属性については、明確に救済する方向で指針の中に取り込んだほうがいいのかなというのが私の感想、意見です。

【能見会長】  先に、米倉委員、どうぞ。

【米倉委員】  先ほど来、線量のところで生涯何ミリシーベルトというのが出てきているんですけれども、この考え方をこの中で入れるのは少し無理があるかなと思っています。特に刻々と変わる状況の中で皆さんが避難をしているというときには、やはりせめて年間線量、私は線量率のほうがいいと思っているんですけれども、空間線量率が無理であれば、そこから類推される年間の線量を基準にすべきであろうと思います。
 そして、20ミリシーベルトというのは、たまたま作業者の5年間を平均したときに1年当たり20ミリシーベルトというのがありますので、これが基準になっていて、これはあまりにも高過ぎるんではないかという皆さん方の感覚というのはそれなりに理解できるだろうと。特にお子さん、それから妊婦に関してそういう感覚を持たれることは、ある種の合理性はあるんだろうと思います。
 では、それをどこまで下げるかというのもなかなか難しいところで、そのときにやはり地域性というのも一つかかわってくるのかなと。先ほど、最初の段階では、どちらかというと私は距離というふうにお話をしていたんですが、この段階に入ってくるとコミュニティー自身が成り立つかどうかということも非常に大きなファクターとなってくる。そうすると、そのときに出てきた、新たにホットスポットといわれる部分が出てきて、この近辺ではある種の自主性を持って避難するということが認められているということも考えると、そういうところも含めた地域性で考えるというのも一つのやり方かなと思っています。

【能見会長】  田中委員、どうぞ。

【田中委員】  私も米倉委員と同じで、今ここの場で100ミリが合理的だということを言うのはちょっと言い過ぎ。というのは、先ほど事務局の説明がありましたけれども、食品安全委員会は内部被曝も外部被曝も合わせて100ミリということを言っていて、全体として仮に100ミリとした場合に、内部被曝、食品からとるものを、そこから100ミリのうち10ミリにするか、20ミリにするかということを決めて、それから逆算して個々の食物の濃度を決めようという考えだと私は思うんです。今がそうだから。
 だからそれが、今、米倉委員がおっしゃったように、生涯100ミリというのは国際的に認知されていると私は思っていないんです。私の知る限りにおいては。だから、それをここで決めてしまって、それが賠償の基準にしてしまうというのは少し無理があるかなと思うんです。もしそれを決めるんであれば国のほうで決めていただかないといけないし、先ほどALARAの精神でできる限りということも含めて、幼児のリスクの問題も含めて、本来は国がもっときちっと出していただかないと、それに基づいた賠償というのはできないんじゃないかという気がしています。

【能見会長】  これは前回十分議論したつもりですけれども、この審査会で議論するのは安全かどうかの基準そのものではもちろんない。問題は、安全に関する基準がどこかにあるということを念頭に置きながら、しかし、その基準自体が明確でないというところがありますけれども、そういうものを一方でにらみながら、住民が危険性を感じて避難することに合理性があるかどうかというレベルで議論をしているので、この基準はおそらく科学的な基準そのものと完全に一致する必要はないのだと思うんですね。
 それからもう一つは、これはおそらく前回全員が了解した点だと思ったんですが、ただ、やっぱりまた議論してくると、科学的な放射線量の危険性というのが基礎にはありますので、私を含めてどうしても科学的な基準を議論してしまいがちです。この点は注意して議論する必要があると感じました。
 それから長期にわたる積算での100ミリシーベルトという基準が認知されていないという意味は、100ミリシーベルトに至ると危険だという考え方が国際的には認知されているわけではない、そういうご趣旨ですか。これは科学の問題としての基準のことなので私にはわかりませんけれども、こうした基準がないとすると、基準そのものを議論するのではなく、避難の合理性を議論するのだとしても、私も何を科学的な根拠にしていいのかよくわからなくなります。しかし、ご発言のご主旨は、一般的にはそういう科学的な基準というのはないというご理解、危険な基準というのはわかっていないということなんでしょうか。

【田中委員】  私はそういうふうに思います。

【能見会長】  はい。米倉委員、どうぞ。

【米倉委員】  私は、生涯線量としての100ミリシーベルトという考え方は基本的にとられていないだろうと私は思っています。1回100ミリシーベルトという急性被曝をしたときには、よく知られているように、0.5%のがん死亡率の増加が起こるということがわかっている。これは事実です。これを危険と考えるかどうかというのはまた別の政策の話でして、ただ、これが一つの基準になっていて、緊急時においては、100ミリシーベルトを超えるような事態になるときには強制的に避難をさせてもいい、こういうことが勧告されていますし、我が国ではそれを50ミリシーベルトと決めていたわけなんですけれども、そういうレベルの一つの指標にはなっていると思います。

【能見会長】  私自身は、あまり科学的なことについて発言するつもりはありませんけれども、業務上の線量でしたか、あれは5年間継続して放射線に被爆し、積算で100ミリシーベルトになるのを防ぐという考えを基礎にしながら1年間分を割り出しているという話だったんじゃなかったですか。

【米倉委員】  年平均で20ミリシーベルト、5年間で100ミリシーベルトを超えないということになっています。

【能見会長】  その場合の100というのは何ですか。

【米倉委員】  基本的には年間50ミリシーベルトまで作業者については認められている、これは線量限度なんですけれども、5年間を通じて50ミリシーベルトでいいわけではなくて、年平均として20ミリシーベルトに抑えようという方策です。

【田中委員】  それは従事者の基準ですから、一般の人の基準ではない。

【能見会長】  はい、また違う点ですね。

【田中委員】  ええ。

【能見会長】  この科学的な基準との関係をどう考えるか、そもそも科学的な安全性というものについて基準がないんだという言い方は、だから危険か安全か分からないという意味ならともかく、安全だから避難の合理性を否定することになるという意味だとすると、私には、おかしな感じがしますけれども、放射線量の基準については十分調べられるかどうかわかりませんが、調べてみることにいたしましょう。ほかの論点についても、もしご議論があれば、この際お願いしたいと思います。

【大塚委員】  ちょっと確認をさせてください。対象者の属性について、子供に関して特に気になるところなんですけれども、米倉委員にちょっとお伺いしておきたいんですが、低線量被曝の場合、子供と大人とでそれほど違いがないというご趣旨のことも伺ったことがありますが、ここは確認させていただきたいんですけれども、よろしいでしょうか。

【米倉委員】  要するに、そういうエビデンスがあるかどうかというところは難しいところで、ある程度以上の、1グレイを超えるような線量のところでは、子供のほうが二、三倍感受性が高いというデータは出ています。
 ただ、低線量がわからないからといって、そこで差がないという方策をとるのがいいのかどうかは難しいところがあって、子供さんが感受性が高いので、親御さんが、じゃあ20ミリシーベルトというのは怖いという感覚を持たれることにはある一定の合理性があるんじゃないかなと思います。

【大塚委員】  わかりました。ありがとうございます。

【能見会長】  属性の問題はもちろん重要な問題点だと思っておりますけれども、これは科学的な根拠があるのかどうかわからないけれども、今までの指針とか、あるいは避難の政府の対応でも、妊婦や子供については、ある意味でより積極的に避難すべきであるということが基本的に政府の指針の中にもあらわれていると思いますので、そんなにおかしな考え方ではないのではないかと思うんですけれども。

【大塚委員】  米倉委員に科学的なお話を伺ったものですから、それについて確認させていただきました。ありがとうございました。

【能見会長】  ほかに詰めておくべき論点というのはございますでしょうか。
 よろしいですか。今日のご議論を伺っておりますと、おおまかな合意があるところもあれば、自主的避難の問題を考える際の幾つかの重要な問題については、まだ十分な合意ができたというものではなくて、なお引き続き議論しなくてはいけないと思いますので、もう少し論点の詰めを行って、再度ご議論していただきたいと思います。
 そういうことでよろしいでしょうか。鎌田委員、どうぞ。

【鎌田委員】  主要な点についてのご意見をそれぞれお伺いして、もっともだとは思うんですが、この「主な論点」というペーパーの中にも書かれていることではあるんですけれども、例えば、かなり広範に、一定の基準時点が設定された後も一定の被曝線量があるような地域からの自主的避難者には避難区域から避難された方とそれほど変わらない賠償が受けられるようにする方向での検討を進めるというご意見が有力だったと思うんです。そうした方向でいった場合には、この「主な論点」の6ページの上から2つ目の・にあるように、緊急時避難準備区域においては、中間指針では、子供、妊婦、要介護者等に限って避難費用等を賠償の対象にしていたのですが、ここで今ご議論されているような考え方でいけば、この緊急時避難準備区域内のこれらの人以外の自主的避難も、基本的にほぼ同質の賠償が受けられるとなることは当然だし、その外の人たちも同じであるというふうになってくる。そうだとすると、これはちょっと、中間指針の基本的な考え方自体をもう一度考え直すところにつながるというふうなことにもなりかねない。
 それは、損害賠償の範囲とか、損害賠償を認めるためにほかにどういう付加的な要件をつけ加えるのか、こういうこととも関連するんですけれども、次回以降にもうちょっと議論を詰めて具体的な内容にしていくときに考慮すべき内容として、中間指針での考え方とどう連続性を保つのかというのも一つの重要な論点になると思います。
 それから、一定期間経過後の自主的避難について、かなり広範に、生涯100ミリシーベルトという基準になるかどうなるかわかりませんけれども、かなり低線量のところでも避難するのが合理的だということになると、それよりも前の段階の被曝線量等の詳細がわからない不安感というものを合理性の認められる範囲内で賠償の対象にするといったときに、どの範囲まで広がっていくべきなのか。今は20キロとか30キロというふうに言っていますけれども、現実には東京から自主的に避難した人もたくさんいるわけですね。隣接県からもたくさんいる。今のところデータとして出ているのは、福島県における避難の状況だけです。これは、当然に福島県以外はあまり考慮の対象にしないという前提でいるようにも推測されるのですけれども、それはどの程度の不安感を想定しているのか。一定期間経過後のほうが賠償される地理的な範囲が広いというふうなことはおかしくないのか。この辺の調整も必要だと思います。それから、特に初期の段階は、基本的には住民の不安感に基づく避難が合理的かどうかという判定をするわけで、その場合には公的に公表されたデータも問題ですけれども、同時にいろいろな情報が飛び交っている中で、住民に一定の影響を与えた情報としてどういうものがあるんだろうか。ここではアメリカのものが出ていましたけれども、そういう非公式に流布していたものも考慮に入れないと、住民の不安感がどこまで合理的かと判定するときの素材としてはまだ少し足りないのかもしれない。と同時に、そういう自主的に避難した人たちはなぜ自主的避難をしたのかということについても、何かもしその理由を直接に示すデータがあれば、そういうものをご提供いただいた上で議論を詰めていったほうがいいように思っています。
 それからもう一点は、これもこのペーパーに書いてあることですけれども、一定の被曝線量があれば自主的避難をするのが合理的だというふうに、この基準値が客観的に決まれば決まるほど、やっぱりそこに残っている人たちは強い不安を抱くようになって、しかもそれはある程度、科学的にも人体に影響がある数値だと言われれば言われるほど、そういう人たちは賠償なしでは済まなくなっていくというふうなことにもなるのかと思います。これもまた中間指針の考え方にも影響を及ぼしていくということにもなりますので、その辺の論点についても整理した上で次回は議論を進めたほうがいいのではないでしょうか。この問題だけピンポイントでやるといろいろな予期せぬ波及効果が出てしまいそうなので、その辺のところの資料がどれだけ集まるかはわかりませんけれども、ご提供いただいた上で、できれば事前にご提供いただいた上で、次の議論をしたいということで、要望でございます。

【能見会長】  いろいろなご議論ありがとうございました。議論の基礎となるような資料がどのぐらいあるかわかりませんけれども、それは一方で用意しつつ、考え方の問題として、中間指針で示した考え方との整合性を考える必要があるのはそのどおりだと思いますが、中間指針で扱わなかったことを補足することはあり得ると思います。しかし、中間指針と完全に矛盾するような内容については、中間指針を見直すということになるので、それは慎重にしなければなりません。いずれにせよ、ただいまご指摘の点も踏まえて、少し論点を整理していきたいと思います。
 ほかは、よろしいですか。大塚委員、どうぞ。

【大塚委員】  鎌田先生がおっしゃったことはよく考えなければいけないと思いますけれども、若干別のことになってしまうかもしれませんが、5ページの一番最後に書いてあることですが、この事故から一定期間経過後の自主的避難及びその他考慮すべき事項の(1)に書いてある避難しなかった者について、もし賠償を認めるとした場合には、避難指示等に関する損害の賠償を、項目としては超えないというのが普通の考え方ではないかと思いますので、その旨を個人的意見として申し上げておきたいと思います。これは多分、法的に批判があるところかと思いますけれども、私はある程度、割合的賠償のようなことを考えていかざるを得ないのか。つまり、リスクは20ミリシーベルトのところに比べると低いというふうには考えられますので、割合的賠償のようなこともどこかで考えなければいけないのかなとは思っております。以上です。

【能見会長】  どうもありがとうございました。もう1つ議題があるので、時間配分を注意すべきだったかもしれませんけれども、自主的避難の問題は重要なテーマですので皆さんのご意見を十分伺った次第です。
 それでは、これについては以上にしたいと思います。時間がありませんけれども、議題2に移りたいと思います。
 この除染の問題は、理論的にも非常に難しい問題を含んでいます。これについての論点を整理したものがございますので、説明をお願いいたします。

【内閣府原子力被災者生活支援チーム高畠室長】  内閣府原子力被災者生活支援チームであります。我々のほうからお配りしています資料3、あと参考資料として、緊急実施基本方針の原文もありますので、これを用いて簡単にご説明をしたいと思います。
 除染により地域の放射能の不安を解消することが非常に緊急の課題になっております。政府としては、国際放射線防護委員会、ICRPの考え方にのっとって、迅速かつ着実な除染の推進に責任を持って取り組むために、今回、今後2年間に目指すべき当面の目標及び作業方針を「除染に関する緊急実施基本方針」として取りまとめまして、8月26日に原子力災害対策本部において決定しております。
 これに伴いまして、二次補正予算の予備費から2,200億円程度の予算を除染のために使用することを閣議決定をいたしました。さきの国会で成立しました除染に関する特別措置法案が施行されるのが来年の1月1日ですので、それを待たずに具体的な取り組みを始めたいと考えております。
 資料3の1枚めくっていただいて、「除染実施に関する基本的考え方」について、この考え方は、ICRPの勧告及び原子力安全委員会の基本的な考え方に基づいて設定したものです。ICRPの基準としては、原子力事故等の緊急事態における緊急時被曝状況と、緊急事態後の長期被曝状況である現存被曝状況の2つがありますが、前者については年間20から100ミリシーベルトを年間被曝線量の限度としておりまして、後者につきましては、参考レベルを年間1から20ミリシーベルトとしております。
 目標としては、まず、現在、計画的避難区域の基準ともなっている20ミリシーベルト以上の緊急時被曝状況にある地域については、これを段階的に、迅速に縮小することとしております。さらに、現在避難指示の対象外となっている1から20ミリシーベルト以下の現存被曝状況にある地域につきましては、具体的に追加的被曝線量を年間1ミリシーベルト以下にすることを長期的な目標としております。
 資料の次のページでは具体的な目標設定を記載しております。具体的には、放射性物質に汚染された地域の2年後における一般公衆の推定年間被曝線量を約50%減少した状態を目指すということを目標として掲げております。これは放射性物質による物理的減衰や自然要因による減衰として2年後において40%の減少を見込んでおりますが、これに加えまして、除染による減少効果をチェルノブイリの例等を参考に、少なくとも10%と想定して設定しております。
 また、子供についても、学校や通学路等の子供の生活圏については、より重点的に除染を行うということで、60%の減少を目指しております。
 また前のページになりますが、この目標達成のための、具体的な除染の対応とについては、線量の水準に応じて定めております。追加の被曝線量が年間20ミリシーベルトを超える地域、このペーパーでいくと黄色いところ、点線の上のほうでありますが、ここについてはまず国が主体的に除染を実施することとし、まずはこの地域においては除染のモデル事業を行うこととしております。そして、追加被曝線量が年間1から20ミリシーベルトの現存被曝状況の地域ですが、この中において、比較的高い線量の地域においては、汚染の状況を効果的に改善するために、地域の住宅、公共施設、道路、あるいは隣接する森林等の生活圏を広く面的に除染するという対応をとろうと考えています。この中においても、比較的、線量が低い地域においては、側溝や雨樋などの局所的に高線量を示す箇所を個別に除染するということを考えております。
 これは、まずは線量の高い地域から除染を行い、計画的かつ段階的に面的な除染を展開していくことが除染を進めるためには非常に効果的であると考えているからです。住民の実際の被曝の線量を速やかに下げていくという観点からも、線量が比較的高い地域を優先して除染することが適当と考えております。
 この年間1から20ミリシーベルトの地域の除染の実施については、市町村に除染計画の策定をお願いし、これに対して、国が技術的、財政的な支援を行うというスキームを考えております。国はその除染計画の策定への支援を行うほか、市町村が除染実施計画に定められた除染を実施するために必要な費用を負担することとしております。具体的には、市町村が実施する除染の内容に応じて、基本方針、あるいは市町村が効率的、効果的に除染を実施するために必要な事項を定めた市町村による除染実施ガイドラインを策定しておりますが、これに従って除染を実施するための費用を市町村に交付しようと考えております。
 ただ、一方で、私人の負担する除染費用という問題もあります。今回の緊急実施基本方針に先立ち、一部市町村では、みずから予算措置を講じた上で既に除染を実施しており、現にその除染費用が発生しております。例えば南相馬市では、8月の上旬に10億円の予算を計上いたしまして、市内全域の除染を開始しております。また、伊達市においても、9月の上旬に6億円の予算を計上し、除染の取り組みを開始しているところです。また、福島市も、9月中にでも除染計画を取りまとめて公表することとしており、他の市町村もこれに続くものと考えております。
 なお、除染実施計画に基づく除染であっても、民間の所有の施設や、市町村みずからは除染を行わず、民間事業者など私人に除染の実施を求める場合も想定されます。加えて、これまでにも、一部の地域では民間の幼稚園等の施設において、みずから費用負担をして除染を行った事例もあり、こうした費用について賠償の対象となるかどうか不安の声も上がっていると聞いております。
 除染の迅速な実施は、現在、福島県内の最大の懸案事項であり、国や自治体、住民が連携して、一体となって取り組みを進めていくことが必要です。地域の除染活動を円滑に進めていくためには、賠償との関係を整理することも重要と考えております。このため今回、議論をお願いした次第です。
 以上です。

【能見会長】  どうもありがとうございました。それでは、この除染に関する論点等について、何かご意見がございましたらお願いいたします。

【高橋委員】  先ほど作業員について5年間で100というお話をいただいたと思うんですが、米倉先生、それは正しかったでしょうか。

【米倉委員】  私の理解では、年間20ミリシーベルトの平均値のベースになっているのは、5年間で100ですね。

【高橋委員】  100。これ、20のところを5年間続けてこの方針で除染しようとすると、計算すると大体50ぐらいになると思うのです。そうすると、大体半分というのが、ある種、合理的な達成目標だと考えられて、そういう方針を出されたんでしょうか。

【内閣府原子力被災者生活支援チーム高畠室長】  そういった考え方ではありません。年間20ミリシーベルトの地域では、三、四年ぐらい経過すると、線量が大体半分の10ミリシーベルトぐらいになると考えられます。今ご指摘いただいたご趣旨は、多分5年間に浴びる線量が50ミリになるというようなお考えでしょうか。

【高橋委員】  はい。いろいろ計算すると、累計50ぐらいになりそうな気がするんですけれども。

【内閣府原子力被災者生活支援チーム高畠室長】  すいません、そこまでの計算は今のところ考えておりません。

【内閣府原子力被災者生活支援チーム松永参事官】  先ほどの、例えば作業員の被曝線量を前提に、年間20ミリシーベルトについての目標として50%減という目標を設定したわけでは必ずしもありません。やはり年間20ミリシーベルトより高い地域の線量をできるだけ下げるという前提の中で、チェルノブイリの事例などを見ると、10%から20%という除染の効果が結果として出ているので、自然減衰とあわせて達成する目標として、約50%という数字を出したということであり、作業員の被ばく線量の考えから逆算したわけではありません。

【高橋委員】  ただ、しつこいですが、いろいろな議論があって、どのぐらいの安全性なんだという議論が出た場合、作業員のほうからの視点から、世論等からの検証を受ける可能性というのは、ご検討されていなかったんでしょうか。

【内閣府原子力被災者生活支援チーム松永参事官】  実際に作業員が実施する場合のマニュアルとして、作業員をどう被曝管理をするかということについて検討はしており、線量管理をきちんと行うための対応は実施をしております。

【能見会長】  ちょっと別なことですけれども、除染の実施の計画の中に、端的に言うと森林みたいな広大な地域があると思うんですけれども、そういうところの除染の計画も、現在、この計画の中には入っているんですか。

【内閣府原子力被災者生活支援チーム松永参事官】  計画の中には、森林については、この資料の後ろのほうにマニュアルがあり、その中で、森林についても除染を実施するということになっております。当面は、やはり生活環境における線量を低くするというところが主眼ですので、生活環境に近い部分の森林については、例えば枝打ちをするといったことをマニュアルに記載させていただいております。森林全体をどうするかということについては、9月中にも、さらに追加的に検討を加えることになっております。

【能見会長】  この除染の問題は、審査会との関係で言いますと、先ほどの自主避難の合理性の問題ともつながる点があるし、それから、除染にかかる費用自体が損害賠償として東電に請求できるものなのかどうかという問題もあると思いますけれども、これはそちらに伺うというよりは、こちらで決めなくちゃいけない問題かもしれません。除染にかかった費用については、そちらでは何か考えているところがあるんですか。これは原子力損害だというふうに考えておられますか。

【内閣府原子力被災者生活支援チーム松永参事官】  この後、おそらく法案の説明があると思いますが、その法案においては、損害賠償の対象となるものが、財政支援の対象と重なるいう考え方を示していると考えております。今回の緊急実施方針は、法律の施行に先立ち、直ちに実施するという趣旨のものですが、賠償については、法律と整合的な考え方であると私どもは理解しております。

【能見会長】  失礼しました。ちょっと誤解をしまして、この後、法案の説明もあるんですね。
 じゃ、ほかに、今の実施方針についてのご質問がなければ、残りの説明を伺いましょうか。

【環境省水・大気環境局大村室長】  環境省でございます。お手元に資料4と参考資料4がございます。資料4が、特別措置法というものの概略の説明になってございます。参考資料4が法律そのものでございますけれども、まず資料4で概略をご説明したいと思います。
 この法律につきましては、8月26日に成立しております。これは議員立法でありますけれども、今回の福島原発の事故に関して特別に措置をするという法律でございます。目的のところにちょっと目を落としていただきますと、今回の放射性物質の拡散というものを環境の汚染というふうにとらえまして、それによる人の健康、または生活環境への影響を速やかに低減する、これが目的ということになっております。責務のところで、国は原子力政策を推進したことに伴う社会的責任にかんがみ必要な措置を実施。一方、地方公共団体は、それへの協力というふうに規定しているところでありますが、関係原子力事業者、すなわち東京電力につきましては、誠意をもって必要な措置を実施するとともに、国または地方公共団体の施策に協力というふうな全体的な位置づけをした上で、具体的な措置について規定をしています。
 大きく2つの措置をやっていくことにしておりまして、汚染された廃棄物の処理、それから汚染された土壌等の除染等の措置などという2つの大きな柱がございます。その柱はページの真ん中のところに書いてあるわけでございますが、それを進めるに当たりまして、まず、制度の最初に、環境大臣が基本方針を出して閣議決定を求めるということになります。ですから、その後に、環境大臣がさまざまな基準ですとかを環境省令で決めるということになります。あとで少しご説明しますが、具体的には、例えば除染をする地域の範囲でありますとか、除染をどの程度進める、どのような方法をとるべきなのかとか、あるいはその際に安全の確保、あるいは環境汚染の防止ということから、どのようなことに留意しなければならないか、そういった環境省令を決めるという構造になってございます。
 大きな2つの措置でございますが、まず左側、「放射性物質により汚染された廃棄物の処理」につきましては、まず、丸1で一定程度の汚染が見込まれるところについては、環境大臣は地域を指定いたします。その地域については、環境大臣が廃棄物の処理に関する計画をつくります。その地域以外にも、例えば焼却灰でありますとか下水汚泥とか、かなり高いレベルの廃棄物が見つかっておりますから、こういうものについては、一定の基準を超えたものについて指定をするということになります。丸4でございますが、具体的に特定の地域から出てくるものと、一定の基準を超えることが明らかになった廃棄物、この2つについては国が処理するという仕掛けになってございます。丸5でありますけれども、一定程度以上より低い廃棄物については、既存の廃棄物処理法の規定を適用して処理を進めていくということになります。以上が廃棄物の処理でございます。
 続いて右側、「放射性物質に汚染された土壌等の除染等の措置等」ということであります。こちらは、まず丸1で、汚染の著しさ等を勘案して、国が除染等の措置を実施する必要がある地域を環境大臣が指定いたします。その地域につきましては、環境大臣が処理の計画を策定して、国のいろいろな機関がそれぞれ分担をして除染等を進めていくということになります。それ以外の地域につきましては、汚染状態がある一定の要件に適合しないと見込まれる地域を環境大臣が指定いたします。その上で、都道府県知事、あるいは市町村長がさまざまな調査をやった上で、あるいは別な結果を使った上で、実際に汚染状態が要件に適合しないと認める区域について、除染の計画をつくる。その計画は環境大臣の協議を経ますけれども、その計画ができましたら、その計画に従って、国、都道府県知事、市町村などが実際の除染の措置を行うということになります。一応、そういうふうにルールを決めているわけでありますけれども、場合によっては、市町村に実施の体制がなかなか整っていない、あるいは技術的に非常に高度なものが要求されている場合には、国が代行できるという規定を置いて、全体として進めていこうということでございます。
 その下に移っていきますけれども、国は地方公共団体の協力を得て、例えば必要な施設の整備とか、いろいろな必要な措置をしていくんだということが書いてございます。
 次に費用の負担でございますが、これについては、参考4の具体的な条文をごらんいただければと思います。参考4のページで言いますと43ページをお開きいただけますでしょうか。43ページに「第5章 費用」というところがございます。まず第43条が、「国は、地方公共団体が事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策を推進するために必要な費用についての財政上の措置その他の措置を講ずるものとする」ということで、国の財政上の措置ということが書いてございますが、続いて、第44条に、「事故由来放射性物質による環境の汚染に対処するためこの法律に基づき講ぜられる措置は、原子力損害の賠償に関する法律の規定により関係原子力事業者が賠償する責めに任ずべき損害に係るものとして、当該関係原子力事業者の負担のもとに実施されるものとする」ということを書いてございます。すなわち、この法律に基づくさまざまな措置というものは、原賠法の損害に係る措置であるということを基本的な考えとして明確にしたものということでございます。
 具体的に、原賠法でどこまで賠償するかということにつきましては、今後いろいろな省令を決めた基本的な方針を定めたりしていく中で、政策的に合理性が図れるよう個別に判断していくことになると考えております。
 先ほど内閣府のほうからご説明がありましたように、現在、除染に係る緊急実施方針というものが、既に8月26日、これは法律ができた日と同じでございますけれども、そこで原災本部で決定がされて、既にこれによる除染の計画の策定でありますとか、いろいろな事業が進められようとしております。先ほどご説明があったように、目標でありますとか、地域の指定の考え方が出ておりますから、法律に基づく地域の指定とか環境省令というのは、これから1月1日の本格施行に向けて準備をしていくわけでございますが、当然先行する緊急実施方針に整合的にやっていくことを想定しているわけでございます。
 したがいまして、先ほど申し上げた費用の範囲ということにつきましても、先行している事業の中で、いろいろ実績も出てきましょうし、基本方針の閣議決定の中で、いろいろ考えが決まっていきますし、それから具体的に環境省令で、どういう除染の範囲を行うのか、方法を行うのかというところで整合的になるようなことを、今、期待しております。以上でございます。

【能見会長】  ありがとうございました。何かご質問等ございますでしょうか。

【大塚委員】  環境省だけじゃなくて、内閣府ともということになると思うんですけれども、先ほどの議論との関係もありまして、対象区域外であって、現に今人が住んでいるところの汚染の除染というのも非常に重要になると思うんですけれども、今回のこの特措法だと、汚染土壌に関しては、汚染の著しいところは国が指定してということで、これは国が直ちに実施されることになっていますけれども、それ以外の、多分、対象区域外の多くのところは、都道府県知事とか、あるいは市町村長がおそらく措置を実施することになっていて、ただ、おできにならなければ国が代行するということになっていますので、ひょっとすると対象区域外の、先ほど問題にしていたような低レベルの放射線の不安にさられているような方たちがいらっしゃるところの汚染の除染が遅れる可能性も、全くないわけではないかなという気がしていて、若干不安なんですけれども、その辺に関して、何かコメントをいただければありがたいと思います。

【内閣府原子力被災者生活支援チーム松永参事官】  先ほどのご説明がわかりづらかったので申しわけございませんけれども、緊急実施方針では、いわゆる避難区域のような地域につきましては、今はまだ線量が高いということ、それから、立入禁止区域になっておりますので、立ち入りが不自由であるということから、国がまずモデル事業をやるという形で進めることになっております。むしろ20ミリシーベルト以下の生活圏の場所について、緊急実施方針として、今、実施するという方針を立てさせていただいておりますので、区域ギリギリのところで不安に思っている方々については、まず早急にやりたいという考え方に基づきまして、今回の緊急実施方針というのを定めたところでございます。

【大塚委員】  ただ、特措法のほうは、多分ですけれども、対象区域外については、むしろ都道府県とか市町村が表に出てこられますよね。

【内閣府原子力被災者生活支援チーム松永参事官】  おっしゃるとおりで、市町村のほうが、地域の特殊事情ですとか、いろいろな諸事情について、非常に詳しいところもあります。もちろん、計画を市町村がつくるに当たって全面的に支援はいたしますが、基本的には市町村に計画をつくっていただいた上で、いろいろな技術面、財政面の支援をしていくという考え方に基づいております。

【大塚委員】  そこは滞りなくやっていただけるということですね。

【内閣府原子力被災者生活支援チーム松永参事官】  はい、そうしたいと考えております。

【大塚委員】  よろしくお願いします。

【能見会長】  ほかに、よろしいでしょうか。
 私の不手際で、時間がなくなって申しわけございません。説明、どうもありがとございました。
 本来であれば、この後、除染についての議論もしていただこうと思ったんですけれども、申しわけありませんが、議論は次回回しにさせていただきたいと思います。そのときに、もしかすると今回説明していただいた方に、またお願いするかどうかは検討させてください。
 時間を超過しましたけれども、本日の議論はこれぐらいにしたいと思います。今日ご議論いただきましたものを踏まえまして、先ほど申し上げたように、さらに議論を詰めてご提示したいと思います。こうした重要な難問についての議論は、審議会の場で直ちにするというのは難しいところもありますので、事前にお送りできるような資料があれば、お送りしたいと考えます。
 では、事務局からアナウンスがありますか。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  すいません。次回の審査会については、これから日時を調整して、決まり次第、公表させていただきたいと思います。以上でございます。

【高橋委員】  以前の審査会でも、支払いの仕方についても、委員会の見識を示したほうがいいんじゃないかということを再三申し上げていました。そして、最近、新聞等で、支払いの仕方について、いろいろと批判が出ているようでございますので、実態を調べられて、問題点等をご報告いただければと思います。

【能見会長】  どうもありがとうございました。できる範囲で。

【田口原子力損害賠償対策室次長】  はい、承知しました。

【能見会長】  それでは、今日の議事はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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