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宇宙3機関統合準備会議

2001/09/26 議事録

宇宙3機関統合準備会議(第1回)

宇宙3機関統合準備会議(第1回)

1.日時

平成13年9月26日(水)13:31〜17:32

2.場所

第5会議室(文部科学省分館10階)

3.議題

  • (1)統合後の新機関の在り方について
  • (2)その他

4.資料

  • (1)宇宙3機関統合準備会議の設置について
  • (2)宇宙3機関統合準備会議構成員名簿
  • (3)宇宙3機関統合準備会議における検討課題等について
  • (4)宇宙3機関における宇宙開発活動の状況
  • (5)米国・欧州・日本の宇宙活動及び開発体制について

参考資料

1)宇宙の研究開発機関の在り方について

(平成13年8月21日大臣談話)

2)宇宙3機関パンフレット
  • 宇宙開発事業団
  • 宇宙科学研究所
  • 航空宇宙技術研究所

5.出席者

文部科学副大臣 青山 丘
宇宙3機関統合準備会議委員長 井口 雅一
宇宙3機関統合準備会議委員長代理 川崎 雅弘
宇宙3機関統合準備会議委員 栗木 恭一
航空宇宙技術研究所理事長 戸田 勧
宇宙科学研究所長 松尾 弘毅
宇宙開発事業団理事長

山之内 秀一郎

有識者 飯田 尚志
有識者 市川 惇信
有識者 江名 輝彦
有識者 小平 桂一
有識者 佐藤 勝彦
有識者 谷口 一郎
有識者 西岡 喬
有識者 廣渡 清吾
有識者

安田 靖彦

研究開発局長 今村 努
官房審議官 素川 富司
宇宙政策課長 芝田 政之
宇宙開発利用課長 藤木 完治

【今村局長】

  それでは、時間になりましたので、宇宙3機関統合準備会議第1回を開催させていただきたいと思います。私は、文部科学省研究開発局長の今村でございます。当準備会議の議事進行役を務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
  それでは、初めに、宇宙3機関統合準備会議の座長であります青山文部科学副大臣からごあいさつをお願いいたしたいと思います。

【青山副大臣】

  それでは、最初だけ立ってごあいさつをさせていただきたいと思います。
  去る8月29日、宇宙開発事業団が進めておりましたH-2Aロケットが、あのようにまことに精度の高い、見事な成功をすることができました。山之内理事長さんをはじめ関係者の皆様方、本当に御苦労をいただきました。また、きょうお集まりの皆様方には、いろいろな立場でお力添えをいただいたことを心からお礼申し上げたいと思います。
  この成功は、我が国の宇宙開発にとって非常に意味のあることでございまして、この成功を一つの踏み台として、我が国はこれから宇宙の研究開発をさらに発展させていかなければなりません。このことは、今このことに関係している我々にとっては、非常に重要な課題だと思います。そのときに、宇宙3機関の統合の問題、宇宙開発事業団と宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所、の3機関の統合をすることによって、さらに宇宙研究開発の基盤を飛躍的に強固なものに是非していきたいですし、いかなければならないということでこの準備会議が開かれたものでございまして、それまでそれぞれの皆さん方には、いろいろな立場で御協力をいただきましたこと、感謝申し上げます。
  さらに、是非この機会に、宇宙開発委員の皆様、3機関の関係者の皆様、それから、学識経験者、有識者の皆様方にお集まりいただいて、これからの日本の宇宙科学の方向をしっかりと見据えていく、とりわけ性格の全く違う3つの機関が統合していくわけでございますから、そのことを踏まえ、しかし、我が国の宇宙開発に対して明るいビジョンをはっきり示していかなければなりません。そして研究開発の基盤をしっかり整えていきたい。こういう大きな命題に向けて、ひとつ是非この場で皆さん方から、それぞれのお立場でいろいろな御意見をいただいて、将来の方向性を明らかなものとして出していきたいと思いますので、とりわけこの準備会議の運営について、特段の御協力を心からお願い申し上げて、ごあいさつにさせていただきます。よろしくどうぞお願いいたします。

【今村局長】

  それでは、議事に入ります前に、座長の青山副大臣から、副座長の御指名をお願いいたしたいと思います。

【青山副大臣】

  本会議については、私が座長として取りまとめをさせていただきたいと思いますが、国会等の関係で急に席を外さなければならないようなこともあろうかと思いますので、副座長を井口宇宙3機関統合準備会議委員長にお願いいたしたいと思います。井口先生、何とぞよろしくお願いいたします。

【今村局長】

  どうもありがとうございました。
  それでは、統合準備会議の構成員の先生方の御紹介を申し上げたいと思います。
  私から、お名前、肩書を御紹介申し上げますので、それぞれ一言御発言をいただければ、大変幸いでございます。
  ラウンドテーブルで、右の方からまいりたいと思います。
  宇宙開発事業団の山之内理事長でございます。

【山之内理事長】

  山之内でございます。よろしくお願いいたします。
  先ほど、冒頭、青山副大臣から身に余るお言葉をいただきまして、今回本当にH-2Aの成功、文部科学省の御指導並びに宇宙3機関統合準備会議の御指導、特に関係各メーカーの方々が結集していただいた成果がここにつながったというふうに考えております。あと一つは、継続は力なりと申しますので、是非これを継続していきたいと思います。
  当然のことながら、新型ロケットでございますし、テストパイロットでございますから、今後検討すべき基本的な問題も幾つか出ておりますので、全力を挙げてそれに取り組みたいと思いますが、つくづく痛感いたしますのは、欧米に比べまして、私どもの宇宙開発の歴史、経験が非常に浅いものですから、やはり基礎的部分についての力が非常に不足をしていることを認めざるを得ないところです。
  そういった意味では、今回、3機関を統合することによって、その結集力を発揮して、今後とも日本の宇宙開発、ロケットだけではなく、衛星並びに広範なサイエンスに向けての非常にいいスタートポイントになると思いますので、今回の3機関統合は単なる形式統合ではなくて、本当に実のある統合を目指していきたい。おそらく多くの具体的な問題が出てくると思いますが、全力を挙げて実のあるものをつくっていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

【今村局長】

  山之内理事長、どうもありがとうございました。
  次からはお座りになってお話をいただきたいと思います。
  次は、宇宙科学研究所の所長、松尾先生でございます。

【松尾所長】

  宇宙科学研究所の松尾でございます。副大臣の方から、大いに性格の異なる機関というお話がございました。そういう意味で、私ども、最もその中では毛色が変わっているかと思いますが、ただ、この機会を前向きにとらえて、是非積極的に対処していきたいと思っておりますので、細かい点では、山之内理事長からお話がありましたように、それこそいろいろなことが山積していると思いますけれども、そういう心構えでおりますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。以上です。

【今村局長】

  次に、航空宇宙技術研究所理事長の戸田先生でございます。

【戸田理事長】

  航空宇宙技術研究所の戸田でございます。
  私どもの研究所は、7割方は航空をずっと、しかも、航空の安全や性能というものに関して研究を実施しております。ただ、航空で培った信頼性、安全性の研究というものは、必ず宇宙の輸送系の信頼性、安全性につながっていくものと確信しておりますので、是非基盤技術の確立に向けて努力していきたいと思います。何とぞよろしくお願いします。

【今村局長】

  次は、早稲田大学理工学部電子情報通信学科教授の安田先生でございます。

【安田教授】

  安田でございます。私は、ただいま御紹介いただきましたように、通信の専門でございます。そういう立場から何かお役に立てればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【今村局長】

  東京大学学長特別補佐 廣渡先生でございます。

【廣渡学長特別補佐】

  廣渡でございます。私は法律家でございまして、ここで論じられるマターでは非専門家でございますけれども、今、特別補佐をやっておりますが、その前は東京大学の社会科学の研究所の所長をやっておりまして、その時分、文部科学省附置大学共同利用機関全国研究所長会議というのがございまして、そこの副会長をやっておりました。松尾先生とはそこでいろいろお話をさせていただいた仲でございます。よろしくお願いいたします。

【今村局長】

  三菱重工業株式会社 西岡社長でございます。

【西岡社長】

  今回、宇宙3機関統合の予定になっております航空宇宙技術研究所、それから宇宙科学研究所、それから宇宙開発事業団、各々の機関は、我々航空宇宙に関係しているメーカーにとりましては、本当に今まで多大の御指導と御援助をいただいたところだと、思っております。この3機関がこのように統合されるということになりますと、我々としては、非常に重要な、いろいろお願いする機関でもありますので、関心を持っておるところでございます。我々メーカーとして何か気がつくことがあったら申し述べたいと、このように思っております。以上でございます。

【今村局長】

  経済団体連合会宇宙開発利用推進会議会長 谷口会長でございます。

【谷口会長】

  三菱電機の谷口でございます。今御紹介がありましたように、経団連の宇宙開発利用推進会議会長も仰せつかっております。
  三菱電機は、人工衛星の開発製造並びに人工衛星搭載機器を開発製造してまいりまして、3機関ともに大変な御指導を賜ってまいりました。ただ、人工衛星を担当しているという立場からだけではなく、申し上げましたように、経団連の宇宙開発利用推進会議の代表として、産業界から見てどのようにあるべきかということについて、少しでもお役に立てるような発言ができればと、こんなふうに思っております。よろしくお願いします。

【今村局長】

  東京大学大学院理学系研究科研究科長 佐藤先生でございます。

【佐藤教授】

  佐藤でございます。専門は宇宙物理学でございます。青山副大臣がおっしゃられましたように、性格の異なった3つの機関の統合という大変難しいミッションでございますけれども、この統合をきっかけに、我が国の宇宙開発、宇宙科学の進み方に関しまして、より強力に進めることができるようになれば大変ありがたいと思っております。微力ながら努力したいと思います。よろしくお願いいたします。

【今村局長】

  総合研究大学院大学の学長 小平先生でございます。

【小平学長】

  小平でございます。専門は天文学でございます。それぞれすぐれた特徴をお持ちの3つの機関が、これからその連携協力を強めるということで、そのすぐれた特徴を生かした形で是非力を合わせていけるようなシステムができることを願っております。

【今村局長】

  宇宙通信株式会社 代表取締役社長 江名社長でございます。

【江名社長】

  江名でございます。私どもは、衛星通信事業者で、言うなれば衛星とロケットのユーザーの立場におりますけれども、今後、宇宙の産業化という視点で意見を述べさせていただければありがたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【今村局長】

  東京工業大学名誉教授 市川先生でございます。

【市川名誉教授】

  市川でございます。システムの経営科学設計、運用のようなことを専門としてまいりましたので、その面からお役に立てれば幸いと思っております。

【今村局長】

  通信総合研究所 飯田理事長でございます。

【飯田理事長】

  飯田でございます。私、専門は衛星通信なんですけれども、私の研究所は、衛星通信、リモートセンシング、その他衛星の利用を多くやっておりまして、そういう意味からも、この3機関がどうなるかによって我々も非常に影響を受けますので、いろいろな意味でお役に立てればと思います。よろしくお願いいたします。

【今村局長】

  宇宙3機関統合準備会議 井口委員長でございます。

【井口委員長】

  宇宙3機関統合準備会議の委員長を仰せつかっております井口でございます。遠山大臣から、この3機関の統合を考えるに当たっては、3機関がどこに進んでいくのか、その方向性を明らかにする必要がある、そしてその将来イメージにつきましては、宇宙3機関統合準備会議で検討するようにという御指示を受けまして、先ほどまで委員会を開いておりまして、その検討をしておりました。結果が明らかになり次第、御報告申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。

【今村局長】

  宇宙3機関統合準備会議 川崎委員長代理でございます。

【川崎委員長代理】

  川崎でございます。私は、長らく宇宙開発を含めまして行政畑におりましたので、私自身としては、やはり今回の3機関の統合によって、そして民間のそれぞれの活力によって、我が国が世界の一極にふさわしい宇宙開発利用国に成長するように、この統合に全力を挙げていきたいと考えて、発言させていただければと考えております。

【今村局長】

  宇宙3機関統合準備会議、栗木委員でございます。

【栗木委員】

  栗木でございます。宇宙科学研究所のOBでございます。宇宙開発全体が、国として一体となって有効な政策をつくるためにはこの3機関が中心となるということに期待しておりますが、お集まりの有識者、学識経験者の方々、そのほか産業界を代表する方々も含めまして、一体となる政策を立てるその組織とはどうあるべきかということに議論が及ぶことを期待して、この会議に参加したい、そう考えております。よろしくお願いします。

【今村局長】

  どうもありがとうございました。統合準備会議の構成員の方々の御紹介は以上でございます。
  なお、この準備会議をサポートいたします事務局でございますが、私から御紹介申し上げます。
  青山副大臣の左、研究開発局審議官の素川でございます。

【素川審議会】

  素川でございます。よろしくお願いいたします。

【今村局長】

  その左が、宇宙政策課の芝田課長でございます。

【芝田課長】

  芝田です。よろしくお願いします。

【今村局長】

  私の右隣が、宇宙開発利用課長の藤木課長でございます。

【藤木課長】

  藤木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【今村局長】

  なお、私が全体の議事進行役を務めさせていただきますが、大変恐縮でございますが、ちょっと別用がございまして、途中、議事進行役を素川審議官にバトンタッチさせていただきますので、あらかじめ御了承いただきます。大変申し訳ございません。
  それでは、議題に入らせていただきたいと思います。
  本日の議題は、統合後の新機関の在り方ということでございますが、幾つか資料を準備させていただいております。この資料の説明を通じまして、これまでの検討の経緯、方向性、あるいはスケジュール等について御説明を申し上げたいと思います。
  この宇宙3機関の統合につきましては、3機関の間に私ども研究開発局も入りまして、少し実務的な打ち合わせもさせていただいております。そうした内容も御紹介させていただきながら、この準備会合で基本的な方向をお示しいただければ、とこのように考えております。
  説明は、資料3に基づきまして、素川審議官の方からさせていただきます。

【素川審議官】

  それでは、資料3と、それから、後ろの方に参考資料といたしまして、8月21日付の文部科学大臣の決定といいますか、発表文がございます。宇宙の研究開発機関の在り方について、この2つを使いまして簡単に触れたいと思います。
  まず、参考資料の21日付の大臣の談話にもございますように、若干経緯について書いてあるわけでございますけれども、委員の先生方も御案内のように、本年の4月からいわゆる宇宙3機関で運営本部を設置いたしまして、信頼性向上の共同プロジェクトでございますとか、エンジンの中核研究開発の体制の整備、こういう具体的な事業について共同で一体的な運営を図ってまいっているところでございます。
  そういう中で、御案内のように8月10日に公表されました「特殊法人等の個別事業見直しの考え方」というのがございますけれども、その中におきまして、第2段落目に書いてございますように、宇宙開発事業団については、「効率的・効果的な研究開発の実施の観点から、宇宙科学研究所及び航空宇宙技術研究所の宇宙開発関係の事業と統合する」という指摘を受けたということでございます。こういう経緯を踏まえまして、8月21日の文部科学大臣の発表となったわけでございます。
  続きまして、資料3をごらんいただきたいと思うわけでございます。
  このような経緯を踏まえまして、この3機関の統合問題を検討するわけでございますけれども、この資料3にあります検討課題等でございますが、まず基本的な検討の方針といたしまして、我が国の宇宙開発の在り方を踏まえ、その中で宇宙3機関を統合した新組織の役割に関する検討を行うということでございます。この「我が国の宇宙開発の在り方を踏まえ」といいますのは、9月18日、これも資料にあるかと思いますけれども、「宇宙3機関の統合準備会議について」という、この設置根拠でございますけれども、この中に、3機関の役割を検討する、その前に「我が国の宇宙開発の在り方」、この全体の在り方というものをまず踏まえまして、機関の在り方を考えるということになっておりますので、それを踏まえた検討の方針でございます。
  さらに、2.にございますように、そのような検討を踏まえた新機関の役割に沿って、その新機関の主な機能、経営方針及び統合に当たって特に留意すべき事項等について検討していく。このような検討の方針、流れになっているわけでございます。
  それでは、具体的にはどのような検討課題を検討していただくかということでございますけれども、四角で囲ってあります1.我が国の宇宙開発の目的と方向ということで、これは、我が国の宇宙開発全体の在り方ということを踏まえるということに沿ったものでございます。ここに例として幾つか目的と方向性を検討する場合の観点を書いておりますが、これは、このような観点があるのではないかという参考としてお示ししているわけでございます。
  それに引き続きまして、2.で公的機関が行うべき宇宙開発ということで、言い換えますと、宇宙開発における公的機関の役割というようなものを次に御議論していただくのかなと思っております。そこでは、例としてございますように、公的機関が行うべき宇宙開発の例を幾つか掲げておるわけでございます。1から6まで掲げておりますけれども、このような公的機関の役割というものに関連いたしまして、(2)(3)にございますように、宇宙産業の発展に対する公的機関の貢献の在り方、いわば果たすべき役割、こういったものも御議論いただければと思います。さらに、宇宙開発における官民の役割分担の在り方というのも検討課題であろうかと思っております。
  これらの議論を踏まえまして、さらに検討すべき点といたしまして、3.にございますように、具体的な宇宙3機関統合後の新機関の主な機能ということを検討していただきたいということでございます。例といたしまして6つほど掲げておりますけれども、このような点につきまして議論をしていただきたいということでございます。
  さらに、新機関に期待されるところの4.にございます宇宙産業発展への貢献ということで、産官学連携の基本的考え方、また産官学連携のための仕組みというものについて、また御検討をお願いしたいと思っております。
  3ページへまいりまして、さらに具体的になってまいりますけれども、5.にありますように、宇宙3機関統合後の新しい機関の組織の骨格というものにつきましても、御議論いただきたいと思います。例といたしましては、設置形態、職員の身分、主な組織構成というようなものがあろうかと思います。
  このような検討項目の検討スケジュールでございますけれども、3ページの中ごろに書いてありますように、平成13年度末までに取りまとめることとするということを予定にいたしておりますが、年末にはこの中間的な取りまとめを行いたいと考えております。そういうことで、大体月1回程度のペースでこの会合を開催させていただきたいと考えている次第でございます。以上でございます。

【今村局長】

  どうもありがとうございました。
  本日は、後ほど時間をとりまして、新機関の機能、役割の議論の基本となる宇宙開発の目的、方向性について自由に討議をしていただきたいと思っておりますが、その参考といたしまして、さらに資料を2つほど準備をいたしております。これにつきましても、あまり資料の説明に長時間をとるのはいかがとは思いますけれども、一応バックグラウンドということで準備をいたしましたので、ポイントを御説明させていただきたいと思います。
  それでは2つございまして、1つは、宇宙3機関における宇宙開発活動の現状ということについてでございます。資料4でございます。
  それからもう一つが、諸外国、特に米国・欧州・日本の宇宙活動及び開発体制についての説明ということでございまして、これが資料5でございます。この資料4と資料5を、続けましてポイントだけ、芝田宇宙政策課長から説明をお願いいたします。

【芝田課長】

  それでは、ごく簡単に、ポイントのみ御説明申し上げます。
  資料4でございますけれども、1ページめくっていただきますと、昨年の12月に宇宙3機関統合準備会議が決定いたしまして閣議報告がされております「我が国の宇宙開発の中長期戦略について」というものの概要でございます。
  これが、従前は宇宙政策大綱という形で決められていたものでございますが、基本的な方針を示してございます。そこの一番上の黄色い部分だけ御説明申し上げます。
  中長期戦略の中で、特に重要な指摘といたしまして、黄色い矢印の真ん中に書いてございますが、宇宙開発が手作りに近い1品生産で、高い信頼性を実現する技術力が今のところ、不足しているのではないかという御指摘に基づきまして、今後の課題として、特に重要なものが技術基盤の形成ということでございます。
  それからもう1点が、その下の宇宙開発活動と投入資源との間のアンバランスということでございますが、簡単に言えば、投入資源に比べて活動範囲が広がり過ぎているので、重点化を図る必要があるという、この2点が特に重要な御指摘でございました。
  次のページを開いていただきますと、「宇宙開発に関する基本計画」の概要というのがございます。これは、宇宙開発事業団の今後5年程度の業務運営の基準となる基本計画で、本年の6月に宇宙3機関統合準備会議が議決いたしました。そこも一番上の黄色い部分だけ、基本的な考え方として御説明申し上げたいと思います。
  宇宙開発の目的・方向性ということで、4点掲げてございます。知の創造、それから、安心、安全で質の高い生活に貢献すること、それから、国際貢献を通じて人類全体の生存と持続的な発展に寄与すること、それから先端的技術の開発を通して、新技術の創出、産業の活性化に貢献すること。特にそれを受けて、事業団の役割といたしまして、民間のみでは対応できない、長期的、不確実性の高い分野において、先端的、基盤的な研究開発、先導的技術開発プロジェクト、公益性の高い宇宙開発を行うということです。
  次の項にございますように、速やかに民間に技術を移行して、成果の実用化、産業化に努めるという指摘でございます。
  次のページは飛ばしまして、その次のページに、宇宙3機関についてということで、現状の概要が書いてございます。
  左から事業団、昭和44年設置の特殊法人で、定員が1,090人、予算が1,559億円というふうに見ていただくんですが、その役割として、今のところは、国策としての人工衛星及びロケットの開発ということでございます。人工衛星には、そこに書いてございますような衛星がありまして、ロケットは、H-2A等のロケットを開発しているということでございます。
  真ん中が航空宇宙技術研究所、昭和30年の設置で、本年4月より独立行政法人となっております。413人の定員で、197億円、航空宇宙技術の基礎的、先行的な研究ということで、エンジン等の研究を推進してきておるところでございます。
  それから、一番右が宇宙科学研究所でございます。これは、前身は東大の研究所でございまして、昭和56年に大学共同利用機関となりました。現在、294人、予算が185億円、X線観測衛星、あるいは探査機等を通じて宇宙科学の研究活動を実施している。その手段といたしまして、M-Vロケット、中型ロケット、固体燃料ロケットを開発してきております。
  次のページは、今の活動の具体的な機能として幾つかまとめてございますが、これはまた後ほどごらんいただければいいかと思います。
  次に、資料5でございます。資料5は、米国・欧州・日本の宇宙活動及び開発体制についてまとめた資料でございます。
  1ページ目は、詳しいアメリカの宇宙活動の概要でございます。ちょっと飛ばしまして、4枚目を御覧いただきたいと思います。米国の宇宙開発体制というチャートが載っている資料でございますが、これは、NASAの組織についてまとめております。NASAの場合には、ヘッドクォーターのもとに、そこに書いてございますような、フィールドセンターと言われるセンターが設置されておりまして、これらを中心に、おのおの特徴のある活動が展開されております。
  一番左にございますジェット推進研究所というのは、これは、カリフォルニア工科大学に、NASAが事業を全面的に委託して宇宙科学を推進しているということでございます。
  次のページが、これはヨーロッパのESAでございますが、それの詳しい資料でございます。

【青山副大臣】

  これは単位は億円ですか。

【芝田課長】

  単位は億円でございます。すみません。
  次のESAの資料のところも少し飛ばしまして、現在のチャートが出ているところへまいります。欧州における宇宙開発体制ということで、組織図がございます。そこの右側の欧州宇宙機関というところを御覧いただきますと、ここも、右から欧州宇宙研究所、欧州宇宙飛行士センターというふうに、センター的な部門を持って役割分担をしております。
  それとは別に各国が、左側にございますように、独自にセンター等を持ちまして、ESAとともに特定の分野の研究開発を行っているということでございます。
  次のページが、「我が国の宇宙開発が目指す方向について」ということでございますが、これは後ほど御覧いただければと思います。
  最後のページに、各国の宇宙計画の比較というのがございます。各国で出されております主要な政策文書からピックアップいたしまして、どんな特徴が見られるかを整理したものでございます。
  一番上に帯状の棒グラフがございますが、これが予算の規模を示しております。そこには具体的な数字での予算が書かれておりますが、それの内訳といたしまして、予算額で見た分野別の活動状況の内訳がございます。
  下の方に、基本的目的/方針というのがございまして、米国のところを見ていただきますと、基本的目的といたしまして、有人あるいは無人探査による宇宙に関する知識の深化、安全保障の強化、経済競争力、科学技術能力の向上といったことが掲げてございます。
  特徴といたしまして、米国の場合は、輸送系については、次世代の再使用型の開発にNASAとしては特に重点を置き、使い切り型のロケットについては、DODが中心に開発を行っているということであります。
  それから、ISS及びスペースシャトルの有人関連で全体予算の3分の1を占めているということと、それから、その上の棒状のグラフで推移が書いてございますが、一番上のブルーの部分が宇宙科学でございますが、比較的宇宙科学の割合が大きいようでございます。
  それから、衛星通信事業につきましては、ピンクの部分でありますが、非常に割合としては小さくなっておりまして、民間主体に移行しているというふうに考えられます。
  それから、欧州でございますが、欧州の基本的目的のところをご覧いただきますと、独自に宇宙にアクセスできる手段の確保というのを大変重視しております。それから、科学的知識の向上及び産業利用を考慮した研究活動の増強といったことも重視されております。
  予算的に見ますと、打上げ機・有人飛行・地球観測がそれぞれほぼ同比率で支出割合の半分強を占めております。
  それから、これは通信に入っておりますけれども、測位についてガリレオ計画という独自の計画を今、推進しようとしておりまして、その関係で通信のところが、測位の計画も含んでございますけれども、割合が比較的大きくなっております。
  それから、フランスにつきましては、これはCNESという組織で行っておりますが、ここもフランスと欧州の自立を保証するといったようなことを目的として掲げております。
  それから、カナダにつきましては、ご存じのとおり輸送手段としてのロケットの開発を行っておりません。特にこの場合は宇宙産業の育成ということに大変力を入れております。あと、地球観測、通信衛星の分野に重点的に資源を配分しております。
  韓国は、これは将来計画が書いてございまして、2015年までに自国の衛星技術、打上げ手段を確保するというのを目的に掲げております。
  それから、日本の場合ですが、日本は、このグラフで御覧いただくとわかるように、あまり今までのところは重点化ということがなされていないということが、このグラフからもわかるかと思います。比較的均衡のとれたといいますか、そういった配分になっているように見受けられます。以上でございます。

【今村局長】

  どうもありがとうございました。今の事務局の資料説明は、本準備会議の資料3に基づく検討の経緯、及び資料4、資料5に基づく、我が国及び諸外国の宇宙活動及び開発体制についての御説明でございました。今の資料そのものに限って、何か御質問等ございますでしょうか。
  資料そのものは、これから御議論をいただくときの参考にもなると思いますので、そのときに御質問があれば、またお願いいたしたいと思います。
  それでは、事務局の説明は以上でございますが、あとは……。

【安田教授】

  米国の内訳などには、DODのデータは入ってないわけですね。

【芝田課長】

  これはDODは入っておりません。

【安田教授】

  そうすると、GPS関連はこれの中に入ってないんですか。

【芝田課長】

  入っておりません。

【安田教授】

  そうすると、欧州の方は、通信といっても、GPSといいますか、ガリレオでしたかな、それが入っていると、こういうことですね。

【芝田課長】

  そうです。

【安田教授】

  わかりました。

【戸田理事長】

  今の御質問に関連しますけれども、NASAの中で、エアロノーティクス、航空の予算は入っているのかいないのかだけ、ちょっと質問します。エアロノーティクスは、NASAは1つの大きな柱としてやっておるはずなので……。

【芝田課長】

  航空はこのデータには入っておりません。航空だけ取り出しますと、ちょっと今、概算ですけれども、20億ドル程度かなと思いますが、一度精査してみたいと思いますが。

【戸田理事長】

  いや、多分そんなものだったと思います。

【谷口会長】

  先ほどの安田先生の御質問と関連するんですが、米国の部分は、ここはNASAだけだということですが、DODだと一声どのぐらいだというふうに見積もられておりますか。

【芝田課長】

  今のデータの中にもDODの数字が入っておりまして、米国のところの一番上を御覧いただきますと、1兆4,951億円がNASAでございまして、その下のDODというのが1兆5,000億、ほぼ同額ぐらいでございます。

【谷口会長】

  失礼しました。はい、どうも。

【飯田理事長】

  このデータに中国を加えてほしいんですけどね。韓国は載っているんですけれども。

【芝田課長】

  中国は、詳しい数字のデータがどうしても拾えなかったものですから、ちょっと省略してございますが、定性的な分析は可能かなと思います。

【飯田理事長】

  よろしくお願いします。

【素川審議官】

  ほかに御質問ございませんでしょうか。

【市川名誉教授】

  今まで資料4、5についての御質問が多かったんですけれども、資料1についても質問してよろしゅうございますか。あるいは資料3についてもよろしいですか。

【素川審議官】

  はい。どうぞ。

【市川名誉教授】

  まず、先ほども、経費の点から御質問があったんですけれども、これから議論していくシステムの中で、航空をどう考えるかということが第1の質問でございます。と申しますのは、先ほどもお話がありましたように、NASAは航空を抱えている。それから、今度統合される3機関の中の1つも航空がある部分を占めている。そうしたときに、これからの検討を進める機関で航空はどうしていくのか、外へ出して、ここでは宇宙開発だけを考えればいいのかどうかという問題。そうしたときに、じゃ、航空は今後どうしていくかということが第1点です。
  それから2番目、3機関の統合ということになっておりますが、新しい機関をどういう思想で設計していくかというか、どういう前提で設計していくかということですが、要するに3機関統合するんだから、3機関のこれまでの人材、あるいは実績、業績というようなものを束ねて新しいものを作るんだという考え方もあるかと思いますが、同時にもう一つの考え方としては、新しいシステムは白紙の新しいものを書くんだと。そのときに、3機関の人材あるいは業績、実績というものは、それを含めてリソースとして考える。新しいものをつくるんだという、その2つの考え方があるかと思うんですが、そのどちらの立場で今後議論を進めていくかということでございます。
  3つ目といたしましては、資料4、5で議論されておりますが、システムをデザインするときには、資源制約というものが非常に大きな意味を持っております。資源制約と、それから機能及び性能というのは不可分でございますので、ここでの機能設計、性能設計というものは、今後、我が国における宇宙開発に必要と考えられるものをすべて書き出すのか、あるいはこれまで導入されてきた大体の資源の大きさみたいなものが念頭にあって、それを制約として考えていくのか、その辺のところが明確になってないと、重点化等々がかなり歯切れの悪いものになっていくだろうと思います。
  4つ目は、これは私のアメリカにおける経験ですが、私自身、NASAからお金をもらって大学で研究したという経験があるのですけれども、アメリカの場合には、広がりといいましょうか、要するにNASAとかDOD以外に、大学等への広がりが非常に大きいんですね。これに比べて、私は、日本のものについて、どれぐらい広がっているか調べたことはないんですが、私の感触としましては非常に広がりが小さい。としたときに、今後の我が国の宇宙開発において、これから作ろうとしている統合した機関の外側への広がりをどう考えていくか、それとの連携をどう考えていくか、この辺もやっぱりシステム設計の上からは、前提としてはっきりさせておく必要があるのではないかという気がいたします。
  以上4点でございます。

【素川審議官】

  それでは、私の方から、準備をいたしました事務局という立場で、お答えできるところはお答えしたいと思います。
  まず、航空の扱いでございますけれども、また後ほど戸田理事長から補足で御意見をいただければと思いますけれども、事務局といたしましては、航空も含めてNALの全体を3機関統合のうちの1つの対象と考えたいという思いではいるわけでございます。
  あと、3つばかりいただきました質問に順次答えてまいりますが、3機関統合の前提でございますけれども、実績を束ねるのか、白紙に書くのかということでございますが、これは、実はそのことも含めて少し御議論いただければいいのかなと思っておりますけれども、事務局の気持ちといたしましては、実績というのは、当然その議論の前提にはしなければいけないわけでございますけれども、かなり白紙に書いていただくような議論があってもよろしいのではないかという気持ちは持っております。これにつきましては、委員の先生方の討論にゆだねたいという気もいたすわけでございます。
  3番の資源制約でございますけれども、これにつきましては、2番目の答えとはまたちょっと違います。本当はこれも白紙でというのが一番討論しやすいといいますか、自由な討論ができるわけでございますけれども、やはり予算につきましては、完全に今の枠内で、という縛りは必要ないのかもしれませんけれども、やはり現実的な考え方を示すという意味では、今までの予算というものを少し踏まえて、増えても一定の幅というものを念頭に置きながらご議論いただくのが必要かなと、思っております。
  それから、3機関の外への広がりということにつきましては、これは非常に大切なことであろうと思っております。検討項目、検討課題のところでも御説明いたしましたように、イメージ的には産業界との連携といいますか、産業界との関係ということを意識した検討をしていただきたいと考えていますとともに、やはり大学の宇宙科学の関係者の皆さんは、まさに大学共同利用機関としての宇宙研を支えてきているユーザーでもあり、研究者の構成員でもあるということでございますので、いろいろな面での広がりというものを視野に入れて、3機関の在り方を検討していただくのが大切ではないかと考えております。
  戸田理事長、何かございましたら。

【戸田理事長】

  宇宙開発において最も重要なインフラは、まず宇宙にどうやって行くかということだろうと思います。宇宙輸送系がないことには、まず宇宙でのミッションは達成できないと思います。
  それについて、ロケット、今現在の使い切りロケットにしても、空気の抵抗をいかに小さくするかとか、航空でいろいろやっているような検討のデータというものがやっぱり役立つと思います。それから、さらに進んで、有人、また最終型のロケットになりますと、これはまさにどういうふうなシステムになるにしても、再度地球に戻ってくるとき、地上から出発するとき、いずれにしても航空の技術、空気の運動による揚力、それから空気の抵抗、揚力をいかに大きくしたり、抵抗をいかに小さくしたり、それから、空気中にある酸素をいかに利用するか、こういうところにコスト削減のポイントもあるのではないかと思われますので、私は、輸送系に関しては、「航空と宇宙」と分離しないで、あくまでエアロスペース・トランスポーテーションとしてとらえていくのが、これからはよろしいんじゃないかと考えております。
  NASAでは、資料を見せていただきますと、マーシャルが航空をやっているというようになっていますけれども、ドイツの航空宇宙研究所でも、40%ほどは航空に極めて重点的に、航空と宇宙とは双方的に補完しながらやっていこうという思想でやっていると思います。

【市川名誉教授】

  まだ議論が始まってないかもしれませんけれども、宇宙の研究を進めていく上での基礎的なものとしての航空というのは、当然、宇宙という範疇に入ってくる話だろうと思うんですけれども、私が、エイムズ研究センターあたりで見ましたのは、本当に航空だけやっている人たちがかなりいるんですね。珍妙な飛行機を考えたりなんかしている。そういう部分は、今回は外になるのか中になるのかという、その辺の認識でございますけれども。

【戸田理事長】

  市川先生の御指摘、本当の飛行機は、これはやはり私は一緒にやった方がいいと考えています。というのは、小さな航空、ビジネスジェットにしても、これはやはり人間を乗せるということで、いわゆるフェイルセーフ的な設計といいますか、極めて安全性を重視した考え方に特に最近はなっておりますので、この考え方をやはり宇宙の方につなげていかなければならないんじゃないか、特にストラクチャーデザインの方では、絶対そちらの方に持っていかなければならないんじゃないかと考えております。
  それから、運航とか、騒音とか、そういったものも含めて、やっぱり一緒にいろいろディスカッションしながら、航空と宇宙は一緒にやった方がよろしいんじゃないかと考えております。

【素川審議官】

  よろしいでしょうか。それでは、資料につきまして、ほかに御質問ございましょうか。

【西岡社長】

  資料3に、宇宙産業の発展への貢献というところがありまして、この議論をやる上には、やはり米国の場合、NASAだけが取り上げられていますけれども、やっぱりNASAとメーカーとの関係はどういう具合になっているかという状況をしっかりデータとして出す必要があると思いますし、それから、欧州の場合も、アリアンスペースのことが、下に宇宙規模というところだけで、ちょっと事業規模のデータが出ていますけれども、そことの間で、開発と、要するに産業との在り方、この辺りの話は、やっぱりアメリカと欧州とだけはきっちり対比した上で、この3機関統合に際して3機関がどうあるべきかということを決めておく必要があると思います。そのためにもその辺りはやっぱり詳しく出していく必要があると思います。

【素川審議官】

  次回以降、特に官民の役割とか、産学の連携といった議論に及びますので、そのときには追加資料として、今ご指摘のところを用意してまいりたいと考えております。

【谷口会長】

  資料5の8ページでございます。DODにそんなにこだわるつもりはないんですが、先ほどのDODのトータルはわかりましたけれども、NASAの分析と同じように、もしわかりましたら、DODの分野別比率の推移というのを、次回にでも、お示しいただければ大変ありがたいと思います。

【素川審議官】

  データを探してみて、ありましたら資料として提出したいと思います。

【谷口会長】

  よろしくお願いします。

【戸田理事長】

  その場合、DODの航空の方も、もしわかれば、よろしくお願いします。

【素川審議官】

  はい。探してみたいと思います。

【松尾所長】

  すみません、この表について、宇宙科学なんですが、このところのディフィニションはどういうことになっていますでしょうか。地球観測分野はどうも含まれてないみたいなんですけれども、2000年から2001年にかけて、金額で見ると増えておって、大変心強いんですけれども、なかなか実感としてはございませんので。

【芝田課長】

  それは日本のことでございますか。

【松尾所長】

  はい。日本のことです。

【芝田課長】

  基本的には宇宙研の予算を書いてございまして、増えているというのは、これは比率の話でございますよね。

【松尾所長】

  わかりました。全体としては減っていると、こういうことを示しているグラフだということですね。

【佐藤教授】

  先ほど、広がりという話で、産業界との関係のことも出ましたが、宇宙科学研究所の場合は、大学と共同のいろいろなプロジェクト、そして同時に、大学院教育、その他についての大きな寄与がございますけれども、そのあたりにつきましても、現在はより具体的にどのように進めているのか、どのように大学院教育に参加しているのか、そういうデータにつきましても、多くの委員の方々には役に立つのではないかと思うので、お願いできたらと思うんですけれども。

【素川審議官】

  はい、承知しました。
  それでは、幾つか資料の御要請がございましたので、次回以降、議題と照らし合わせながら用意させていただきたいと思います。
  それでは、もしよろしければ、先ほど資料3で御説明いたしました具体的な検討課題の最初の「我が国の宇宙開発の目的と方向」、これは先ほど説明いたしましたように、新機関の役割を議論する前の段階として、我が国の宇宙開発の在り方というものを踏まえるということにかかわる部分でございます。ということで、今回は第1回でございますので、まずこのあたりから自由討議に入っていただければと思います。
  今お示しいたしました資料も、十分ではございませんけれども、参考にしていただきまして、自由な討論をお願いしたいと思います。

【市川名誉教授】

  シーンとしていますので、素人からというと変ですけれども、率直に言わせていただきますが、NASAと比較しましても、人員が十数分の一で、それから予算は、これも1けた近く、7、8倍はNASAの方が多いという気がいたします。それから、ESAと比較しても、これは、ヨーロッパ各国のものをどう考えるかは別といたしまして、各国のものを入れるとしますと、これもやはり数倍から1けたまではいかなくても6、7倍、金額にしましても3、4倍の違いがある。
  今までの日本の宇宙開発を拝見いたしますと、こういう少ない人員予算で、極めて効率的に開発を進めてこられた。これは非常に立派なことだと思いますが、当然のことながら、「必要なむだ」がその中になかったのであろう、普通の言い方をすれば、十分な基礎データあるいは失敗例の蓄積がなかったのではないか。そういたしますと、これからの宇宙開発活動というものは、従来のような、ある意味でアクロバット的な、あるいは職人芸的な、非常に効率のいい姿で行くのか、それともがっちりと基礎から積み上げていくものにするのか。もし投入資源が同じならばひとつ思い切った重点化が要るでしょうし、従来型のようにふろしきを広げているとすれば、かなり大幅な資源投入の増が必要になるだろうと思いますけれども、その辺り、これまで開発に関与してこられた方はどういう御認識をお持ちなのか、お伺いしたいなという気がいたします。

【素川審議官】

  それでは川崎委員。

【川崎委員長代理】

  私より委員長の方がよろしいのかもしれませんが、やはり今回出されたこのテーゼを見ていると、10年前だったらこの中に「キャッチアップ」という項があったはずなんですね。要するに今、本当に肩を並べて、ここに出ている比較されるべき対象国と同列で宇宙開発利用を論じ得るほどに、パブリックの機関やプライベートの機関の力があるのかどうか、私は、委員会委員としてではなく個人的にですが、ちょっとまだ疑問であって、現在はやはりまだキャッチアップのフェーズではないのか、と思っています。
  そうすると、市川先生の一番最初の御質問の4番目に関連するんですが、キャッチアップ時代だったからこそ幾多の議論があったけれども、44年にNASDAをつくり、その後、国立大学の共同利用機関として、いろいろ議論があったにもかかわらず、1つのセンター的なものを作ったという経緯があったわけで、アメリカのように草の根的にあちらこちらにこのようなことをやっている方々が散らばってはいない。むしろ集める努力を今までしてきたんだ、というのが過去の歴史だったと思うんですね。
  そういう意味でいうと、今度の3機関統合は、集め方をどうリコンビネーションして、まあ、遺伝子の組み換えみたいなものですが、より今日的課題にこたえ得るようにするかというふうに考えるのがよいのかな、と思っています。ただ、そのときに、具体的な検討課題の1番のところに、これを達成するまでの我が国の水準ということについて、やはり何らかの認識をこの会議でも出していただいた方がいいような気が、私個人としてはしております。ちょっと蛇足だったかもしれませんが、市川先生の問いとの関連で。

【素川審議官】

  それでは、今、市川先生からの御質問に関連いたしまして、宇宙3機関、まず、山之内理事長から何か御意見ございますでしょうか。

【山之内理事長】

  今日の段階では、今の御指摘は、これまでも議論しているような、新しいものであると思いますし、川崎委員からお話のあったことも、ある部分は事実ですし、ある部分は言うなればキャッチアップに近づいた部分もあります。そこはかなり違って、いわゆる純キャッチアップの時代はちょっと過ぎて、とは言いながら、まだまだギャップがあると私は認識しておりますので、キャッチアップ論だけではもう立ち行かないだろうと思います。特にそういう意味では、先ほどから御質問がございますが、これからの議論になりますけれども、現実問題として今の国家財政並びに世界のマーケット、経済情勢を見ますと、あんまり誇大妄想的なことにはなりっこないと思わざるを得ないと思いますね。そこで、やっぱりある種のコンセントレーションは要るだろうけれども、純キャッチアップ時代に入ったがゆえに、リスクとご努力が要りますが、やはり思い切って民の方にお渡しする部分が出てきて、その上で私どものコンセントレーションを高いところに持っていかなくちゃいけないのかなというのが1つの視点でしょうか。
  ただ、キャッチアップは、先に行っている国ほど、全面的に民に行くには、まだちょっと時間がかかる、断片的なお返事だけは控えさせていただきますが、そんな感じを持っております。

【素川審議官】

  ありがとうございました。
  それでは、宇宙科学研究所から。

【松尾所長】

  お答えは極めて平凡のことに落ちつくと思います。がっちりとやるのとそうではないのと、どちらに偏っても私はいけないんだと思うんです。インフラについてはがっちりやる必要がありますけれども、ミッションについてはある程度大胆に、アンビシャスにやっていく必要が、少なくとも我々の畑で言えば、あり得ると思います。ただ、これは決して失敗を容認するという意味では全くありません。我々は、やるときには絶対しくじるまいと思ってやるのは当然のことでございますが、そういった要素がやっぱりあるのではないかと思います。
  だから、今の時点では、どちらかに偏った議論をして、「がっちりと」という場合、ずっとがっちりしたままということも起こり得るわけでして、それに対して我々は何らかのアウトプットを出さくちゃいけないというのも真実だと思います。

【戸田理事長】

  松尾先生がおっしゃったことなんですが、私は、輸送系に関しては、やっぱり飛行実証も含めて、地上試験、それから飛行実証試験を確実に、がっちりとやっていかなければならないと思います。
  それから、キャッチアップについてですけれども、ある分野では十分にキャッチアップして、世界の最先端を行っている分野も、例えばロケットのサブシステム1つとっても、あると思います。それは、企業の方も立派に成長している分野だと思います。

【素川審議官】

  ありがとうございました。それでは、ほかに御意見ございませんでしょうか。

【安田教授】

  これは質問なんでございますけれども、先ほどの戸田さんがご説明されたというわけではないかもしれませんが、航空宇宙技術研究所の予算を見ますと、宇宙部門の部分が非常に少ないですね。宇宙部門が36億円ということですが、航空に大部分使っておられるということでしょうか。航空宇宙産業界というのも、多分、航空の方が、売り上げといいますか、事業としては大きいのでしょうか。それにもかかわらず、我々一般から見ますと、日本に航空産業というのはあるのかなと思ってしまいます。全然見えてこないんですよ。宇宙の方がまだその点は目立っているわけです。その辺りが、日本の航空産業はどうなっているのか、航空の研究はどうなっているのかということを、ちょっと考えさせるのです。

【西岡社長】

  私の方からちょっと答えさせていただきますけれども、私はそれはやっぱり防衛産業というものを日本が無視した形でいろいろ考えているからだと思います。やっぱり航空というのは、まず第1は防衛産業を基盤にしているわけでして、防衛産業から見れば、極端に言えば、技術基盤としても非常に世界的なポジションにまで到達しているところがあるのに、それが全然報道されないというところに、航空が異常に低いポジションになっている要因があると思いますね。
  それからもう一つ、民間航空機の分野でいきますと、これは世界的なマーケットの中で、いかに自分のポジションをとるかということが一番大切で、これは宇宙の方もそうですけれども、マーケティングがあって初めて「商業・産業化」なんですね。マーケティングがないところにはやっぱり産業は育たない、ということだと思うんです。したがって、産業を育てるためには、マーケットの中にどうやって入り込んでいくかということを考えて、現在、民間の航空機はやっているわけで、こういう事情だと思いますから、やはりその辺り、航空宇宙技術研究所の方が力を入れられているのが航空分野だというのは、それをバックにして防衛産業は成り立っている、あるいは民間産業は成り立っている状況がある、と理解していただいていいんじゃないかと思います。

【素川審議官】

  ありがとうございました。今のでよろしいでしょうか。

【安田教授】

  はい。

【素川審議官】

  ほかにございますか。

【飯田理事長】

  あえて過激なことを少し申し上げたいんですけれども、外国の宇宙活動を見ると、やっぱり日本が今まで人数も少なくて、予算も少なくて効率よりやってきた、それは確かだと思うんですけれども、何かそれがやっぱり曲がり角に来ているんだと思うんですね。これからどこに踏み出していくのかということをよく考えて、もうキャッチアップじゃないから日本だけで考えてやっていくんだ、と言っても、もうそうはいかないんじゃないかな。
  私はさっき中国のことをちょっと申し上げたんですが、中国のことをちゃんと調べてほしいのですが、中国は7万人体制でやっている。そしておそらく、来年か再来年には有人の、飛行士が3人ぐらい乗ったのを上げるらしいんです。そのような周りの状況で、本当に日本は独自のものでやっていくという覚悟があるのかどうか。これは、別に国粋主義とか、そんな意味ではないんですけれども。
  それで、やっぱり宇宙というのは、本格的にやろうと思ったら、今までの予算や人員では少な過ぎると思うんですね。それは、今の枠ではとてもすぐには増やせませんけれども、将来どんなふうにそこに結集してやっていくかというビジョンを立てないと、3機関が統合しても、みんな意気消沈するだけだと思うんですね。
  さっき市川先生がいろいろ項目を挙げられましたけれども、私自身、一番大切なのは、3機関を統合したときに3機関の中にいる人が意気消沈しないようにすることが必要だと思うんですね。だから、そういう意味でどうしたらいいのかということを考えて、これだけの方が集まられているわけですから、やはりビジョンを出すべきだと思うんですね。そうしないと、現状としては財政的に厳しいとか、あるいは法人改革等、いろいろな波があるでしょうけれども、それは多分、ここ何年かの話だと思うんですね。ですから、そこは、現実的な方法としてはどうする、という話はしていいと思うんですけれども、そうではなく、やはり宇宙というものは、もう少し長い目で見てビジョンを出さないと、私が一番心配しているのはやっぱり若い人がくっついてこないんですね。若い人がどんどん離れてしまうということは我々に責任があると思います。
  宇宙というのは非常に大きなプロジェクトで、みんなが力を合わせてやらなきゃ成功しない分野ですから、本当に成功か不成功かというのは、ロケットの打上げを見ればわかるわけで、これほど一目瞭然のものはないわけです。ですから、そこをよく踏まえて、何かいい案を出していただければと思います。

【素川審議官】

  今、飯田理事長から、ビジョンを出すべきだというお話でございましたけれども、これに関連いたしまして、御意見をいただけたらと思います。

【西岡社長】

  私も全く同意見なんです。この「宇宙開発の目的と方向」のところで、現在宇宙開発において、日本の場合は、NASDAにしても、それから、NALにしても、あるいは宇宙研にしても、ここ2、3年で失敗がありましたから、非常にそれが大きく取り上げられて、非常に実力が落ちているんじゃないかなどと言われるわけですけれども、これまでの経過を見ますと、やっぱり国産ロケットをきっちり打上げる実力は備えてきたし、それから、科学衛星などもきっちり打ち上げてきていると思うんですね。
  ところが、現実に2つ続けて失敗した、というようなことがありますと、やはり1兆円かけたから、2兆円かけたから、早く商業化してちゃんと利益を出さないといけないじゃないか、という意見が先に立った議論が行われて、技術屋が余分な仕事ばっかりに時間を使わなければならなくなるわけですね。
  こういうことをきっちり直すためには、やっぱり宇宙開発というのは日本で必要なんだということが一番初めにないといけない。その上で、それを利用する商売があるんだったら商売があるんですけれども、もし本当にそういう宇宙開発を金をかけてもやるという方針・ビジョンが国としてなかったらだめだろうと私は思うんですね。そこが一番重要なところだろうと、私は常日ごろ思っております。

【谷口会長】

  今、西岡さんからお話があったことに全く同感であります。したがいまして、資料3で、まず第1の我が国の宇宙開発の目的と方向、あるいはミッション、これを十分討議して、わかっていることだと言いながらも、もう一度かっちり押さえるいうことが必要、ということが1つ。
  その次に、全くの私の私見でありますが、「公的機関が行うべき宇宙開発」を考える前に、この3機関統合した後の新機関が日本のなかで一体どういう位置づけになるんでしょうかということも議論していただきたいと思うんですね。なぜかといいますと、今日は文部科学省の会議ですが、大変失礼なことを言います。この場は何となく文部科学省の中だという意識が僕はあるんじゃないかと思うんですね。現在、総合科学技術会議というものがあって、その会議で、先ほど西岡さんがおっしゃったように、日本はこれはやるべきである、国家戦略であるということになれば、一体この新しい機関をどこに位置づけるんでしょうか。そう考えた時に、内閣府の中に堂々と位置づけますというのかどうか、宇宙局というものを考えて、その中にこの研究機関がある、という図式はどうか。例えば宇宙3機関統合準備会議というのは、今、文部科学省の中にありますよね。けれども、横同士でやるということであれば、総合科学技術会議の中にあってしかるべきだ。そうすると、これも全くの私見でありますけれども、宇宙開発局といったものにそういうものがあったとしますと、宇宙3機関統合準備会議的なものは要らないかもしれないですよね。つまり、そこが日本の横断的な宇宙開発を取り持つのであるということであれば、明々白々この新機関を受け持つことになるんですね。だから、とらえ方やあるいはその位置づけをもうちょっと議論した後で「行うべき宇宙開発」という議論へ行ったっていいんじゃないかなと思いながら来たんです。
  大変文部科学省の方々には失礼なことを申し上げたかもしれませんが、そういうふうに感じました。

【川崎委員長代理】

  みんな宇宙開発でとめてしまうんですが、宇宙開発というと非常に限られた話になるので、是非「開発利用」を入れていただきたいし、文部科学省といえども利用に無関心ではないわけで、利用があって研究開発があるのだと考えますので、やはりこの会議では、利用までをスコープに入れた議論をさせていただきたいと思います。

【素川審議官】

  今の谷口会長のお話、御意見、少しコメントをさせていただきますと、国全体でどういう宇宙開発戦略をやるかということは非常に重要でございまして、宇宙3機関統合準備会議の権限との関係で、総合科学技術会議の方でも広く宇宙開発利用政策というべきものが議論されるということをうかがっております。
  私どもの方としては、内閣府は科学技術の総合政策をオールジャパンで検討する。ただ、宇宙開発の実施機関の所管は、現在も各省庁、文部科学省のほか国土交通省、総務省という各省がそれぞれの実施機関の所管をしているわけで、全体を俯瞰するといいますか、そういった総合戦略を立てる内閣府と、そこからさらに個別の実際の業務、またその実施する機関を所管する各省、こういう整理がされたものが基本的には今の新省庁の体制であるのかな、と思っております。

【江名社長】

  さっき西岡社長が言われたことと関連するんですが、「宇宙の産業化」というところに行ったときに考え方を言おうと思ったんですが、私は産業化と言ってもそう簡単な話ではないと思っています。例えばロケットについてですが、現状は皆さん御存じと思いますけれども、現状で宇宙ロケットの商業打上げは、年間で30機ぐらいの利用しかないわけで、ここに、アリアンから、アトラスから、デルタ、シーロンチ、プロトン、長征、全部あったって1年間に5機の打上げ受注を拾えるかどうかという、そういう状況下でH-2Aの商業化という議論が今出ておりますけれども、現実は、価格競争力も含めて、大変難しいんじゃないか、今、私共は自社の次期打上げロケットの選定作業を進めている最中ですが、H-2Aはそう簡単な話ではないのでは、と思われます。
  ですから、宇宙開発を論ずる場合に、今回H-2Aが成功したから、とすぐ商業化・産業化というところへ話が行ってしまうと、日本の宇宙政策の方向を誤るんじゃないかと考えています。やはり宇宙開発というのは、さっき西岡さんが言われたように、まず国としてきちんと宇宙開発の方向づけをして開発をする。その延長線上で産業化できるものがあればやるということが正しい方向であって、初めから産業化ありきでやっても、現実はそう甘くないということを認識して議論する必要があるんじゃないかと考えます。

【小平学長】

  既にいろいろな方がおっしゃっていますけれども、私も、日本が欧米の中の一極、あるいはアジア諸国と並んで、これからこの宇宙開発利用に本格的に乗り出して、あるところまで追いついた上で地歩を占めていくというのは、今、マーケットでも苦戦しているような状態では、国民もしくは国として相当の覚悟が要ることで、なまじ、ただ3機関を統合したという事実、それでもちろん一歩を進められるとは思いますが、ただそれだけでは大変厳しいだろうという認識をしております。
  やはり特徴のある3つの機関を合わせて、ただ高さだけを、狭い領域にピークをつくるというようなまとめ方では、将来的に悔いを残すと思います。そうだとしますと、先ほど資源条件という話がございましたけれども、これを格段に高める必要があるんじゃないかと思います。それには国民の強いコンセンサスが必要で、日本の国として、今、日本の宇宙開発利用というのは重大な時期に差しかかっていて、この機を逸すると追いついていくのがますます大変になっていくというような認識が必要なのではないかと思うんです。それだけの大きなコストの投資を覚悟するには、ここの「宇宙開発利用の目的と方向」というところに並んでいます例では、1にしても、2にしても、割合だれでも思いつくようなといいますか、国民がこれで感動してそれだけの負担を担おうという気になるとはあまり思えないんですね。やはり国民がそれだけの覚悟をするには、「我が国の安全の保障」ということも入れて、安全保障というとなかなか今まで議論に乗らなかったわけですけれども、やはりそろそろそういうことをきちんと議論すべき時期ではないかというのがひとつですね。
  それからもうひとつは、宇宙に出るということは、人類にとって非常に大きな挑戦で、総合科学技術会議の中ではフロンティアという部分で扱われているわけですが、そういう一国の文化的価値というんでしょうか、文化的ビジョンといいますか、人類の一員としての日本が、そういう地球の外へ出ていくんだというようなスピリットが重要だと思うんですね。他の国々、例えば欧米の機関の事業内容の記述を見ますと、やはりそういうものが感じられるんですね。ですが、ここに並んでいる例ではあまり感じ取れない。私は、日本がこれから格段に資源投資をして、宇宙開発利用という側面で3極の1極として並ぶぐらいにしていこうと思ったのならば、やはりそういう文化的なスピリットといいますか、国民の意識を結集できるビジョンを提示する必要があると思います。

【素川審議官】

  ありがとうございます。非常に貴重な御意見をありがとうございました。
  3機関の機能を検討する前提として、やはり全体に宇宙開発といいますか、宇宙科学、そういうものを盛り立てるような環境条件整備という、そういう全体的な広がりを議論していかなければならないという御指摘のように思いました。
  ほかに、今までのご議論を踏まえて、もしくは新たな視点でもよろしゅうございますが。
  先ほど江名社長の方から、商業化・産業化というのは簡単ではない、ということでご指摘がございましたけれども、この辺りに関連して、谷口会長、もしくは西岡社長、何かございませんでしょうか。

【谷口会長】

  先ほどの資料にもありましたように、日本の場合は、資料5に、たしか官需が50、という数字が出ていましたね。NASAとDODの比率を見ましても、DODの方が若干多いというわけですから、純然たる官需の方が多いということなんですよね。だから、いわゆる商業衛星を上げるための輸送系のロケットであるとか、人工衛星であるといったようなものが、世界的な競争の真っただ中にあって難しいということはわかります。難しいけれども、我々はそれを切り開いていかなければ、というふうに思いながらやっているわけでありまして、過去の宇宙開発計画大綱を見ましても、その中で、例えば官にいろいろお願いしたり、例えば試験装置等については是非お願いしたいというようなことは言われましたけれども、結果的にそれはできなかったという経緯があるんですね。
  じゃ、欧米はどういうことかというと、やっぱり官需でそういう力を蓄えてきているんですよね。そこに長い歴史と、投下資本のギャップがあるわけです。したがって、先ほど冒頭に市川先生の方からお話がありましたように、ではどうなんだと言われますと、日本の場合は、たとえ官需といえども、これは衛星だとかロケットに限らずほかのものもそうなんですが、大体でき上がった品物、つまり、でき上がったハードに対しては開発費が出ていますよね。ところが、そこへ行き着くまでのお金が出ているかというとなかなか出ていないから、現実には結構メーカーが開発費を投じてやっているというケースが私は多いと思いますね。
  したがって、一見効率がいい開発をやってきたと言いながら、底が浅いというところは否めないですね。だから、いざ事が起こると、いや、底が浅かったなということで、これからしっかりやろうと言うのなら、それなりの投資をやっていかないといけない。それがもととなって商業化に至るときに力を発揮するわけですね。ロケットもそうですね。何発か成功裏に上がらなきゃだめ。人工衛星が宇宙に何発か無事に上がってからお客さんがつきます。こういう過程を経ているわけですから、確かに実績が少なければそれだけひ弱いわけで、しかしそうは言っても、メーカーとしてはこれから我が国の宇宙開発、あるいはその産業化を固い意思を持って取り組んでいきたいと思っているわけです。
  したがって、チャレンジャブルなところの開発については、政府予算を投じながら、我々の力を強化していくための御支援を賜りたい、と思っております。

【西岡社長】

  私は、ロケットの方を例に見ていたわけですけれども、やはりH-2が5号機までは成功して、そこまでは順調にいっていたわけですね。それによって、ちゃんと30発、オプションが10発ついていますけれども、少なくともそれだけの受注を確保し得るところまで行っていたということは、やっぱりビジネスのやり方が重要であったと思うんですよ。
  事が起こってみると、そこからの対応の仕方というものが、やっぱりマーケティングを全く無視した対応の仕方になっているんじゃないかと思うんですね。例えばアリアンの方ですが、アリアンもやっぱり、アリアンVは今成功して、いかにもという感じでやっていますけれども、初めの2発は続けて失敗しているわけですね。この間も失敗しているわけです。けれども、彼らはそれをちゃんと乗り越えて、次から次へ手を打っていっている。
  ところが、日本の場合は、初めにお話ししましたように、1回失敗しますと、それに伴うフィードバック回路ばっかりがかかってしまって、前へ進めなくなる。このような体制がある限りは、やっぱり商業化は難しいんだろうと思いますね。
  ですから、それを乗り越えていくためには、まず1つは、初めH-2を5発打上げて、6、7が失敗したということで見えた「底の浅さ」ですね。H-2というの全国産化でやりながら、確実に全部成功していくような基礎的なところまできっちりやってなくちゃいけないのが、予算制約等もあったと思いますけれども、できていないから、やっぱり破綻を来すことになる。やっぱり金のかけ方が、世界の中で商売していくにおいては、まだまだ足りないんじゃないか。宇宙開発、そしてその商業化には非常に金がかかるわけですから、国が関与しないで進めているところはどこもないと思いますね。ですから、しっかり開発された後、商売の方はやっぱり商売の方として動かせる道を作っておかないと、今のようなやり方のままで商業化という道を歩んだとしたら、これはお客さんなんか1件もつかないんじゃないかと、こういうような気がします。
  ですから、非常に成功しているバウンダリーをもとに、みんなうまくいっていたんだけれども、失敗したところで商業という面から考えると、難しさがかなり出ているので、見直しが要るのではないかと思います。

【素川審議官】

  ありがとうございました。栗木先生、どうぞ。

【栗木委員】

  私は、宇宙開発研究の中で、例えば遺伝子の研究をやったものがすぐに商業化に結びついて産業分野の活性化が行われる、というようなことと同じような仕組みがどうして宇宙にないんだろうかとよく考えるんです。
  そのときに、最近宇宙研に行って、久しぶりにいろいろな将来計画を見たんですけれども、制約された中で今後のロケットのケイパビリティを踏まえた上で、いかにして宇宙を見る目玉を大きくしようかということで、例えばフォーメーションフライト、編隊飛行をやって精度を上げよう、というようなアクティビティーは、サンエンスでは起きているわけですが、これを逆さまに使えば、必ず通信でもこういう精度を上げるというようなアクティビティーに使えるわけです。
  そういう観点からしますと、どうしてサイエンスがインダストリーに結びつかないのか、実施機関を通して、サイエンスがディベロップメントに結びつき、さらに商業化、3段階ではなくて研究から一足飛びに、企業が場合によっては魅力を感じて、これを商業化に結びつけるぐらいの筋道があってもいいんじゃないか。そう考えますと今度は逆に産業界から研究分野への注目の浅さというのを私は感じます。是非この3機関が、科学と研究とそれから開発ということを結びつけるときには、是非単なる科学研究で終わらせないというような視点を持っていただければ、とそう思います。

【井口委員長】

  先生方のお話を伺っていて、どれもが正しいと思います。そうでなければ、これからの日本の宇宙開発はうまくいかないんじゃないか。ただし、素川審議官がおっしゃったように、財政的には現在の拘束条件はある程度守らざるを得ない。お金さえあれば、多分全部解決すると思います。だけれども、今のような拘束条件が課せられると、すべてが矛盾を生ずる。どこに解決の糸口を見つけるか、それが我々の役割なんだろうと思います。
  この間まで宇宙開発委員をやっておられた長柄さんが、今はやめられましたけれども、最後に「タスクフォースの報告書」というのをまとめられまして、一言「日本はミニNASAからの脱却」という、そういう言葉を言われました。何となく説得力があるような、新しい言葉のような印象を受けたんですが、よくよく考えてみますと、では日本はロケットの開発をやめるのか、衛星の開発をやめるのか、しかしそんなことは多分できないだろう。そうすると、NASAがやっているいろいろなカテゴリーを、一応はやることになるだろうと思います。そのとき「ミニNASAからの脱却」というのは何を意味しているのか。
  1つ違うところ、NASAの真似をしてもとても追いつかないのは、もちろん財政規模の大きさは10倍以上か、そのくらいあるわけですけれども、それはさておくとしても、産業界の方がおっしゃっていますように、マーケットですね。他国には防衛関係のマーケットが既にそこにあるわけです。日本はそれがほとんどない。ない状態の中でNASAと同じことをやろうとしても、それは無理です。ですから、今までのやり方というのは、技術開発を原点として、その後利用から需要というのはついてくるんだ、という発想でしたけれども、それでは済まない。これからは、技術開発するにしても、利用システムと市場開拓を一体にしてやるということがまず第1だろうと思います。それには、これは産業界の方もおっしゃいましたように、ハードの開発だけではなくて、開発費などをほかの方までちゃんと手当てをするということだと思います。ただし、そのためには、かなりの規模の財政的なバックアップがなければいけません。そうすると、どこか削らなければいけないわけです。
  私は、ちょっとバックグラウンドを申しますと、今でも非常勤の日本自動車研究所の所長をしていますけれども、一種の中小企業です。中小企業というのは、まずお金が頭にあって、あるお金の中でどうやって使うかを考えるわけですけれども、お金のバウンダリーなしで議論すれば、何だってできるわけです。だから、結局、何かやろうと思えば、どこか削ることになるわけです。その痛みは覚悟しなければいけないだろうと思います。それが私の、お話をうかがっておりました中での感想でございます。

【安田教授】

  今の井口委員長のお話は大変よくわかるのでございますが、制約条件を無条件なものとして考えていく必要があるのかないのか。我が国のGNPを考えてみて、あまりに宇宙に関するメニューが少な過ぎるのではないか、このことはみんなが感じているわけで、こういう制約条件をそのままにしておくのかどうか。
  先ほどから皆さんが言われているように、宇宙開発そのものは、先ほどの目的と方向のところの項目で考えてみますと、やっぱり3番、4番ぐらいが一番大きな目標であって、それをやっていけば、自然に1、2というのはついてくるんですね。だから、これにもっとお金をつぎ込むという国民的合意ができるかどうかの問題なんですけれども、その制約条件については、初めから与えられたものということで疑問を持たず何も考えないということでよいのでしょうか。まあ、統合について会議を開くということで、その制約条件についてはもう与えられたものだということなのかもしれませんけれども、どうもその制約内に絞って考えると、結局、解はないのではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。

【井口委員長】

  基本的なところは素川審議官にお答えいただきたいと思いますけれども、今、宇宙3機関統合準備会議で議論しておりますのは、これは現状の制約条件をどう考えるかなんですが、先生も御存じのように私は自動車産業から来まして、外から宇宙を客観的に見るという性格がまだ残っているんですが、現状では大変難しいということです。宇宙というのは「予算の削り代」だ、と総合科学技術会議のある人から言われたんですけれども、そんな中で大ぶろしきを広げても、何を寝ぼけたことを言っているんだと言われるような現状があります。

  しかし、飯田理事長がおっしゃいましたように、将来に渡って3機関がそんな状況では、夢を持って3機関が一緒に動けないわけです。したがって、将来は、輝かしい未来と言っていいのかどうかわかりませんけれども、そのようなものは出さなきゃいけないと思っております。その間をどうつなげるか、世の中を説得できるような、論理といいますか、イメージといいますか、それを考えることが現実的ではないかという感じがしております。決して将来に対する夢を捨てたわけではありません。
  ただ、そのようなことばかり言っても、現時点ではそう簡単に受け入れてくれないというつらさを感じております。

【江名社長】

  また少し産業化の話に戻りますが、「産業化」と「商業化」という言葉を使い分けておられるのかどうかということをおうかがいしたいです。もし産業化を「官がやっていたことを民がそれを引き受けて、100%官需で民間がやる」という意味で言っておられるのか、また「官以外の新規の需要、要するに世界のマーケットに打って出る」ということを商業化と言っておられるのか。もしそういう意味で「産業化」とおっしゃっているのでしたら、産業化は、官の一部を民が引き受ける、ということで成り立つと思っております。先ほど私が申し上げたことは、「商業化」という意味での困難さを申し上げたのですが、私自身も、NASDAができて、N-1ロケットからずっとロケットの仕事に携わっていましたので、大変日本のロケットに愛着があるのでございます。
  ただ、歴史を振り返ってみますと実用衛星打上げ用として初めに開発されたN-1ロケットは68年の日米交換公文によりアメリカからの全面的な技術導入により製作されましたが、当然のことながら、一方で用途面を含めアメリカ側から諸々の制約を受けた。この制約を逃れ自主路線を維持するには完全国産しかないとの考えの下で最終的に開発されたのがH-2ですから、初めからH-2には商業化の視点が全く入っていないと言えます。現在の世界の情勢を見ますと、例えばアトラス3のブースタエンジンはソ連のエンジン、そしてシーロンチに関しては、1段から2段、全部アメリカとやっているわけですが、やはりロシアのエンジンなんですね。
  アリアンVでも、デルタ4でもそうですけれども、いかに安く効率的なエンジンをつくるかという、世界のマーケットの中で競争力を持つロケットを、という方向へどんどん進んでいるわけですから、極論すれば、日本も世界のロンチマーケットに打って出るなら、一応H-2Aというのは横に置いておいて、新たに競争力のあるロケットをどうやってつくるかという視点で物を考える必要があるのではないか。もし「ロケットの商業化」ということを考えるならそういう考え方も必要ではないか、というのが、我々が実際にロケットメーカーからいろいろなプロポーザルを得た上での実感でございます。以上でございます。

【芝田課長】

  少し事務局からお答えさせていただきたいんですが、先ほども宇宙3機関統合準備会議の場でそういった意見がございましたので、あとで補足していただければと思いますが、一般的には若干、商業化と産業化という言葉を混乱して使っているきらいもありますけれども、国が研究開発してできた技術を民間に移転するという、その初期段階のところは、おそらく産業化というふうに呼ぶべきだろうと思っています。それは、産業化した後も、もしかしたら国の下支えがないと成り立っていかない部分かもしれませんが、そこは民間が中心となって一定の開発をやっていくのか、国が中心となって開発をやっていくのかという仕分けの部分で、民間が中心になってやっていこうという部分を、おそらく「産業化」というふうに、今までの文章等ではかなり認識されているんではないかと思います。おっしゃられているように、その先に世界の市場に打って出る実力を備えて商業化ということが出てくるのかなと思います。
  そういう明確な定義が今まであったかというと、ちょっと見当たりませんけれども、今までの議論は、おそらくそういうところが背景にあったのではないかと思っておりますが、これは先ほど宇宙3機関統合準備会議でも議論があったように思いますので、もし補足があれば、お願いします。

【安田教授】

  先ほど日本の宇宙予算についての表がございましたが、この中には偵察衛星の予算は入っているんですか、。

【芝田課長】

  入っております。

【安田教授】

  入っている。いや、これが別データとして出しているのであればまだよいのですが、入った状態でこれではしょうがないですな。

【川崎委員長代理】

  江名さんからの御指摘の点、産業化と商業化は今までちょっとコンフューズしていたところがあります。それですから、今、芝田課長が言ったように、今後使い分ける必要があるならば、定義を明確にすべきと思います。内容としては、いわゆる産業の活力を使ってやる、しかし、それは主として官需であるという場合が、せいぜい産業化と言えるのでしょうか。また国が開発するのではなくて、いわゆる一般のコマーシャル市場に打って出るというのを商業化というふうに言うべきではないかと思っています。そのほかにも言葉遣いであいまいなものが幾つか、先ほどの宇宙3機関統合準備会議の中でもございましたので、これからちょっと吟味をしなきゃいけないんじゃないかと思っています。

【素川審議官】

  先ほどから予算の制約の話がございますけれども、今の予算規模を全く度外視して議論するわけにはまいりません。そういう意味で、先ほど私は、現実というものをまず踏まえなければいけないと申し上げたわけでございますけれども、他方、ご議論の中で、宇宙3機関の新しい機関の研究者・関係者が、元気を出して宇宙開発の研究をやれるようなビジョンが何か必要ではないかというご議論もあるわけでございます。そういうことを考えますと、宇宙開発についての国民といいますか、また国会議員の先生方も含めまして、これは予算にかかわってくる話でございますので、宇宙3機関の新しい構想を1つのメッセージとして、好感を持って受けとめられるようなものを出すことができれば、将来の展望が開けるということもあるのではないでしょうか。是非この準備会議の中で、そのようなビジョンを出せるような新しい機関にしていくようなご議論をいただけたらと、私ども事務局も思っているわけでございます。
  それでは、時間も大分押してまいりましたけれども、ほかにきょうのテーマにつきまして、御意見ございますでしょうか。

【佐藤教授】

  どなたからも御指摘があることですけれども、最初の「我が国の宇宙開発の目的と方向」という部分に関しては、非常に格調の高い理念をしっかり掲げたものを是非つくりたいと私は考えております。
  安田先生からもご指摘がありましたけれども、その例として挙げている1番、2番というのは、やっぱり後の方に来るものであって、我々は一体何を目指しているのか、4番にある人類の知的資産の拡大の観点からの目的と方向というのはございますけれども、やっぱり日本という国が、この歴史の中で非常に大きな経済大国となり、一体何を人類の知の財産として残したのか、が見えるような成果を出すということが1つの大きな目標だと思いますし、また21世紀、いずれは我々人類を宇宙に進出するような、そういう時代になるはずだと思うんですけれども、そういう時代に日本という国が完全によその国のお世話にならないと何もできない国になるのか、自らできる力を残すのか、そういう目的を掲げるのかどうかという非常にはっきりした理念を掲げた上で、まずこれは書くべきだろうと思うんですね。高い理念と格調の高い文章で、これは是非作りたいと私は思います。
  その後で、産業界の移転など、実際に使うお金ではこのようなことがほとんどになるかと思いますけれども、やっぱり我々は高い理念のもとにやるんだと考えるのだと思います。
  私は、宇宙科学研究所は非常に大きな意味で成功していると思いますけれども、やはりそれぞれ工学の先生方が、理学の大きな理念などに賛同して協力されて、一緒にやるということですごく大きな成果が上がってきていると思うんですね。やはりこの新しい組織でも、高い理念を持って、国民の皆さんにはそういう理念はわかっていただけると思うんです。国民生活の質の向上など、それは税金を使っている以上、このようなことを言うのはよくわかるんですけれども、国民の皆さんは、同時に高い理念だとか目標というものを高く評価してくれると思うんです。特にアメリカのNASAの例を見れば明らかなように、宇宙のいろいろな成果を国民に伝えることで、アメリカ国民はものすごく宇宙開発を支援しているわけですね。それはそのような知の財産をつくるということ、ハッブル望遠鏡などの大きな成果を見せることで、アメリカ国民のものすごく大きなサポートが得られているんだと思うんです。同じようなことを高い理念を掲げて是非作りたいと思います。

【素川審議官】

  ありがとうございました。

【小平学長】

  資源の制約ということで、予算の方はどうも現在のところ3機関統合してスタートした段階では、すぐに大幅な増は見込めないわけですけれども、今、佐藤先生が言われたような「理念」を掲げることで、国民のコンセンサス、今の文化的ビジョンと並んで、私はやはり国の安全の保障ということを日本はもっと考えなくちゃいけないと思うんですけど、その点で国民のコンセンサスが将来得られて、この統合した3機関がその活力を生かしていけることを願って考えるにしても、当面は予算の制約が厳しいということであれば、今度は、先ほど産業界や大学への広がりという話がありましたが、その3機関が持つ周辺の広がりのリソースをどう生かせるかということが非常に大切だと思うんです。
  私は、大学の関係しか直接にはわかりませんが、大学が持っている人のプールというのは非常に大きいわけで、この新機関が人材を自分で育成する能力を持たないといけないとも思いますが、大学の人材がこの機関に入ってくる、あるいは機関からまた大学に出ていくというような、大学の人材をこの機関に呼び込めるインセンティブというんでしょうか、そういう魅力をやはりこの機関に与えるべきだと強く感じました。

【素川審議官】

  ありがとうございました。

【市川名誉教授】

  資源問題というのは、この辺で決着をつけておかないと、先へ進まないような気がいたしますので、私なりの決着を申し上げたいと思います。
  佐藤先生がおっしゃいましたような、非常に高い理念を示して人を説得する、私は非常に大事なことだと思います。しかし、物事は理念だけでは動かないという現実があるわけですね。ケネディ大統領があのような理念を掲げて、月に人間を持っていくというふうに動いたというのは、あれはある意味の独裁国家だからできたわけでございまして、日本はその意味では大変に結果平等主義の国でございますから、それだけではなかなか動かない。現実には、かなり下の方のどろどろした部分を動かしていかないと、お金はこの分野に入ってこないということだろうと思います。
  ではそのどろどろした部分をどうするか、これはどろどろした部分は国民に直接訴えてもしょうがないですし、訴えるべき問題ではない。現実に立法、行政の中で動かしていくほかにはない。
  一方、ここに集まったといいましょうか、ここにいない人も含めてですが、宇宙屋さんはやはり「宇宙に金を入れろ」と言うわけで、生命屋さんはやはり「生命に金を入れろ」と言うわけです。それぞれの分野、例えば教育であれば、先進国はGDPの1%を教育に使っているにもかかわらず、日本では0.5%ではないかというような話を出して、それぞれの領域・団体が自分のところへ金を持ってきたいわけでございます。それを、結局、どこかが判断している。今までは大蔵省、新しくは財務省が今では判断しているんでしょうね。
  ところが現在では、少なくとも総合科学技術会議という、財務省と拮抗するか協調するかは別といたしまして、行政の立場で国としてのポリシーを出し得る機関を持ったわけです。そうしますと、これからが実はお願いになるわけでございますが、宇宙3機関統合準備会議が従来は宇宙開発大綱のような形で、何々をするとか、何々をしたいとか、いろいろなことを出しているわけでございますが、本当に必要なのは、極めて具体的なレベルで、これをしなければ日本にとってどういうマイナスが生まれるのかということをきちっと書き出すことだと思うんですね。それをやらなかったらどういうマイナスが出てくるかということが、それぞれのことについて書き出されることによって、総合科学技術会議および財務省がご判断できるのではないか。そうでない限り、すべて実績主義・漸増主義というところに落ちていくのではないか。この会議、もしくは宇宙3機関統合準備会議も含めて、将来宇宙3機関統合準備会議は総合科学技術会議の中に入るのかもしれないというデリケートな話もあるのかもしれませんが、そこで本当に納得できる、やらなければどうなるかも含めて御議論をしていただければありがたいと思います。以上です。

【素川審議官】

  ありがとうございました。かなり御議論を詰めていただきまして、ありがとうございます。
  今日は、宇宙開発の目的と方向性という、ある意味では入り口の部分のご議論をいただいたということでございます。もし今日はこれで自由討議を終わらせていただきますれば、これを踏まえてまた次回につなげたいと思うわけでございますが、よろしゅうございますか。
  それでは、芝田課長より、次回につきまして御説明をさせていただきたいと思います。

【芝田課長】

  今、次回の日程調整をしておりますけれども、おそらく10月の中下旬辺りになるかと思いますが、アレンジさせていただきたいと思います。
  テーマにつきましては、今日の入り口の議論を踏まえまして、公的機関あるいは新機関の具体的な機能・役割について話を詰めていただければと思いますが、その過程で、現在宇宙3機関統合準備会議の方で宇宙開発全体のビジョンについてご議論いただいておりますので、その議論の様子をインプットしていただければ、また議論が進むのではないかと思っております。その点、どうぞよろしくお願いいたします。

【素川審議官】

  それでは、最後に副大臣から。

【青山副大臣】

  皆さんには大変貴重な意見をいただきまして、まことにありがとうございました。皆さんからいただいたご意見は、これからの議論で是非消化していかなければいけないなと思ってお聞きいたしましたが、事務局の方で取りまとめをさせていただいて、次回からのこの会合に生かしていきたいと思います。
  ただ今日の会合は、一番最初の入り口の段階でございまして、まずは3機関に、この同じテーブルについていただくことができました。今まで国会では、3機関を1つに統合すべきではないかという議論の論拠は、同じような研究を同じようなところでもしているのではないか、それはもっと効率よくできないのか、というところがどうもベースにあったように思いますが、3機関がせっかく統合していただけるのであれば、これからの議論は、もっと大いなる目標に向かって力を結集して効率的に効果を上げる、日本の宇宙開発の研究の成果がもっと上げられていく、そう言った方向に持っていければと思います。出口の段階では、やはり産業化とや商業化の問題に当然結びついていかなければ、国民生活や国家に対する大きな成果とはなかなかならないわけですけれども、入り口の段階でございますから、3機関が統合されることによって、基礎的な学問研究の段階から、研究開発の段階まで一体的に効率的な組織になっていくことができる。
  それぞれの機関の人たちが、自分の身分のこともあったりいたしまして、それによって入り口の段階で排除の論理をとってしまいますと、せっかく大きな目標を掲げても、どのような成果が我々に出てくるのかという話にとらわれてしまうので、入り口では是非大きな目標で、我が国の宇宙開発の明るい展望を出せればと思います。先ほどの議論はまことにそういう意味でありがたいといいますか、意味のあるご発言であったと思いまして、そのような皆さんからいただいた具体的なご意見を、これから目的と方向の面できちっと出していくことによって、これから先は議論がどんどん進められていくのではないかと思います。
  この準備会議は、文部科学省の方で既に4月6日に、3機関がより連携を強化し、公的機関として研究の成果を上げていくための運営本部を設置いたしましたが、そこへ政府の方から統合の指摘が先般出てまいりまして、その機運がいよいよ高まってきた、そういう段階で設置されたものでございます。これからはひとまずこの準備会議で、宇宙3機関の統合に伴う新しい機関の新しい目標といいますか、方向というものについて、ご意見をたくさんいただきましたので、その方向に結実させるべく、そして目標や方向が定まってまいりますと、今度はその運営上あるいはその着地点について、おのずから創造的に議論が深められていくと思いますので、これからも、例えば次の会合でしたら、国として責任を持ってこの役割は果たしていかなければならないというようなことであるとか、新しい機関としてこのような機能を是非持っているべきではないかというようなところにまで、議論を進めていただけますようにお願い申し上げたいと思います。
  21世紀の宇宙開発を担う新機関創設のために、引き続き御協力いただきますように心からお願いを申し上げます。ありがとうございました。

【素川審議官】

  どうもありがとうございました。

─了─

(研究開発局宇宙政策課)

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