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科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」アドバイザリー委員会(第5回) 議事録

1.日時

平成28年12月19日(月曜日)13時~15時

2.場所

中央合同庁舎第7号館16階科学技術・学術政策研究所大会議室

東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』事業全体の方向性について
  2. その他

4.議事録

科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」アドバイザリー委員会(第5回)

平成28年12月19日

【黒田主査】
  それでは、第5回SciREXアドバイザリー委員会を開催させていただきます。非常にお忙しいこのような時期においでいただいて、本当にありがとうございました。
  まず、配付資料の確認を事務局の方からお願いいたします。

【橋本室長】
  資料は、お手元の議事次第の裏にあります資料1から5、参考資料として1から3を配付しております。資料に欠落等がございましたら、事務局の方までお知らせいただけますでしょうか。
  また、本委員会は設置規則に基づき、出席者の了解を得た上で議事録を公開することとなっております。よろしく御了承くださいますようお願いいたします。以上です。

【黒田主査】
  よろしゅうございますか。
  それでは早速ですが、本日の議事に入りたいと思います。SciREX事業については、中長期的に今まで議論してきたわけですけれども、第1回から第4回までの御議論いただいた結果は、今回の資料に、最初の部分にまとめられているということですので、ごらんいただいて、何かありましたら御指摘いただきたいと思います。
  本日はまず若杉委員から、SciREXに関するいろいろな思いを込めて少し御報告いただきたいと思います。では、よろしくお願いします。

【若杉委員】
  それでは、御指名でございますので、私の方から資料2に基づきまして御報告をさせていただきたいと思います。メーンの報告の内容は、経済学に携わる者が科学、技術あるいはイノベーションをどういうふうに捉えているのかということについて少しお話をさせていただきたいと思います。ただ、決して全体像をお話しするという所までには及びませんので、その中の一部としてこういう見方があるんだというふうに御理解いただければ大変有り難いと思っております。
  1枚めくっていただきますと、科学へのモチベーションという話をさせていただきたいと思います。経済学では、人々が行動を起こすときのインセンティブは何なのかということを非常に重視いたします。最近は行動経済学という分野でそういうところが非常に開けているんですけれども、科学者の行動に関しては既にかなり早い段階から経済学者が注目している分野でございました。行動経済学ができる前からいろいろ考えていた分野であります。タイトルにありますように、「発見の歓(よろこ)び」~「金銭報酬」というところまで非常にワイドなレンジがございます。
  基本的なインセンティブの1つとして、これ、フィンマンが、たしか朝永先生と御一緒にノーベル物理学賞を受賞された方だと思うのですけれども、この方が、こういうふうに言っておられます。「この研究が受賞に値する高尚な価値を持つとスウェーデン王立アカデミーの誰かが判断したとしても、それに意味があるとは思えない。私自身既に賞をもらっている。それは物事をつきとめる喜びであり、発見する楽しみである」と。ある種の自然界のなぞを発見するときの喜び、これが1つの大きなインセンティブになっているということは間違いないだろうと思います。
  それから、最終的にどこまで行くかというと、報酬というところがございます。これは巨額の富を得るということであります。例えばHIVの治療薬でエモリー大学が5億ドル以上の収入を得ました。これは取得していた特許を製薬会社に売却したわけでありますが、その4割が研究者に配分されたというのがございます。これはある種の巨額の富という形で報酬がモチベーションになったということだろうと思います。
  その少し前に、ヘンリー・ロソフスキー、ハーバードの教授なのですけれども、この方が書いている本の中で、どうして科学をやるのですかというと、お金とお世辞だよという話をされたこともございます。これも1つの金銭的報酬に少し近付いてきているという部分があると思います。
  それから、その1つ前に、先取権の確保というのがございます。これは科学において非常に重要なコンセプトであります。一番先に業績を上げたことへの認定、世の中がそれを認知する、その功績を認めるということが、科学者にとって非常に大きなインセンティブ、モチベーションになっているという部分がございます。
  こういう意味で自然界のなぞを発見して密(ひそ)かに喜ぶというところから莫大(ばくだい)な報酬というところまで、様々なインセンティブがあるということが言えるだろうと思います。そういう意味では、必ずしも金銭的なものだけがインセンティブになっているというわけではないと考えられます。しかし、金銭的なものがないわけではないというのが現実だろうというふうに思われます。
  次の下のスライドでありますけれども、では、経済学はどういうふうにこれを見るのかということであります。経済学というのは、ある意味では資源が限られている、その限られた資源をどうやって効率的に配分したら良いかを求める学問の体系である。そればかりではないのですけれども、そういったものも含まれているということであります。そうすると、所与の限られたインプットを用いてどうやってより大きなアウトプットをうまく出していくのかということが重要になります。効率性あるいは有意性、それから、それぞれのインプットがアウトプットを生み出す上での貢献がどうなのかということを分析していくということが1つの流れになります。
  そういう意味ではインプットというのが非常に重要なわけですが、ここには、時間とか、あるいはこれまでの知識の蓄積が含まれます。もちろん投入されるリソース――資本とか労働、この中には御自身の労働もあるし、研究者、アシスタント、いろいろなものがあります。それから、装置、研究ツール、最近では実験材料というようなものも含まれます。さらに環境条件というようなものがあります。こういった多大なインプットが入ってきてアウトプットが出ていくという、こういう体系を1つの分析対象として行っているという部分がございます。
  次のスライドでは標準的なアプローチを例に示しておりますが、これはもう本当に膨大な分析が行われているので、イメージとして捕まえていただければいいと思うのですけれども、数式の中のYをアウトプットとします。これは例えば論文数とか特許とか受賞とかそういったものがあります。それがどういったものから生み出されていくのかを分析する際に、特定の関数形を想定するということがございます。時間の経過とか、あるいは外部の知識ストック、それから、自分自身あるいは御自身の研究者としてのエフォート、あるいは研究費、機材、素材、いろいろなものが組み合わさって出ていくわけであります。
  これを測定するときにはいろいろな特定の仕方があります。ここでは単に非常に簡単な関数形によって特定化していますけれども、これには限らないわけであります。ノンパラメトリックな手法もあるし、パラメトリックな手法の中でも確率を推計してみるとか、あるいは連続的な変数でなく離散的な変数を捉えてみるとかして、それぞれのインプットに係るパラメーターを推定するわけです。そうしたパラメータが推計されると、科学的な知識を生み出していくときの要因が何だったのかが分かってくるわけです。もしその要因が明らかになったら、そこに向けて政策的な方向付け、そういったものを実施する上での基礎になり得るのかどうかというようなことをいろいろ分析するということにつながるわけで、これまで多くの研究が行われているわけであります。
  次のスライドは、少しテクニカルなので、省略をさせていただきます。
  こういったことが出てくるわけですけれども、科学の成果としてどういうものを念頭に置いているのかということなのですけれども、科学の場合は、例えば論文とか、あるいは引用件数というようなものが具体的な観察の対象になります。例えばマクロで観察すると中国とか韓国とかシンガポールとか台湾とかが最近非常に活発に成果を出しているというようなことも言われます。それから、コホート、塊として科学に対して取り組んでいる世代があるわけですけれども、その世代間によってどう違っていくのかと。科学技術の基盤の変化あるいはリソースへのアクセスの仕方、あるいは勤務形態、例えば最近あるパーマネントであるか期限付であるかというようなことが影響してくるのかどうかと、いろいろな分析があります。
  それから、更に細かく言うと、ミクロデータを観察して、個人の特性の何が高いアウトプットを生み出していくのかということに着目していく分析が行われています。これはあくまでも個体をトレースしていかなければいけないわけであります。したがって、そのデータが不可欠なわけでありますけれども、アメリカではNSFが以前から進めてきておりますが、日本でもJST-NISTEPが最近これに着手しているということで、非常に意味があるのではないかなと私は思います。こういった個々の個体に即した分析が既に各国では行われているという状況であります。
  そうした分析ではどんなことが言えてきているのかということをお話しさせていただきたいと思います。次のスライドで、成果と年齢あるいはライフサイクルを説明します。アインシュタインの有名な言葉で、「30歳前に科学に偉大な貢献をしなかったものは一生涯できない」という、非常にショッキングな言葉があります。これはアインシュタインが言ってはいますが、全てに当てはまるとは思いません。しかし、ミクロデータを分析すると、若者がやはり高い論文のプロダクティビティを示していると、これは確かなわけで、下のグラフにありますように、ある研究者の分析では非常にピークが早い段階で来るものと、それから、分野によってはそうでもないというものがあるとの指摘があります。生産性が年齢とともになだらかに下落していくというようなものがあります。
  それから、次のスライドは、では、ノーベル賞の場合はどうだったのかということです。受賞に結びついた研究を開始した年齢が30歳前半のところがピークになっているということが指摘されています。また、55以降に研究を始めた人でノーベル賞につながった例はほぼ皆無に等しいというようなことも言われていますので、ある意味では若手研究者支援ということが意味を持つという、非常にはっきりしたエビデンスがあるということではないかと思います。
  それからもう1つは、ロトカの法則というものがあります。これは特定の研究者に成果が集中していくという、そういうものであります。これ、サンプルが余り多くありませんが、論文の数でいうと、1から5のところが比較的たくさんの、40%ぐらいでしょうかね、人たちがいるんですけれども、特許の場合ですと、10以上特許を取っている人が0.1%ということで、非常に少ない人数の研究者のところにたくさんの成果が集中するという、そういう傾向も見られているということが分かります。
こういったいろいろな推計を経済学では取り組んでいますが、様々な問題点がないわけではありません。次のスライドでございますけれども、これはたしか有川先生が前に御指摘されたんじゃないかと思うんですけれども、知識はたくさんあったからといっていいものじゃない、あるいは過去の知識が必ずしもいいものじゃないということです。過剰な知識というのは曇らせるという可能性があるわけで、ベテランよりも知識量の少ない若手が並外れた研究成果を出していくということも見られるわけで、このことを見逃さないことが必要だと思います。そういう意味では、過去の成果で研究費を配分することの危険性ということは考えておかなければならないと思います。
  それから、セレンディピティの指摘があります。よく大きな研究をなさった方が、「いや、思わぬ結果が出たんですよ」ということをおっしゃいますけれども、これは偶然を意味するのではないと思います。チャンスは心構えのある者のみに訪れるということかなと思われます。パスツールの発見やコロンブスの話もそうかもしれません。したがって、これは偶然というよりも、予期せぬ幸運に遭ったということかなということで、そういうことを考えると、ミッションが定められていない基礎研究の重要性がここから浮かび上がってくるということが言えるのではないかと思います。
  ただ、もう1つは、科学者の努力の測定というのは非常に難しくて、本当に研究しているのか、別のことをやっているのか判定が難しいという部分があって、研究者の努力の程度をモニタリングすることが非常に難しいということがございます。そういう意味では、科学者の問題というのは、やっぱりincentive compatibleな報酬の仕組みの開発が非常に重要であると思います。途中をいかにトレースしようとしてもなかなか難しいんだということも我々も考えなければいけないということであります。
  次のスライドですが、前提として努力はモニタリングできないということを考えると、科学の報酬ということを考えることが必要になってくるわけですが、どういう報酬があるのかをもう一度考えてみたいと思います。一般に科学の成果というのは無報酬かというと、必ずしもそうでもないということで、先ほどちょっとお話ししましたけれども、先取権に基づく報酬構造というのはやっぱり非常に重要な要素となっており、科学的な知識が市場での評価以外のところでインセンティブをもたらしている点が重要で、これは非常に他の商業活動と違う大きな側面があるということであります。
  一般に公共財というのは、研究成果が公表されて、広く利用されて、独り占めできないということなんですけれども、だとすると、報酬が得られないので努力をしないんじゃないかと思うんですけれども、そうじゃなくて、実は公知した結果、その公知されることが事実上、ある研究者が生み出したものであるということを社会的に認知するということになるので、そこで私的財化が起きるという非常に面白いメカニズムが働くことが指摘されています。報酬が金銭である必要はないということは既に1980年代の後半以降いろいろな人が言ってきているということであります。
  多くの人々が生み出された成果を無料で利用できるということなのですけれども、そうはいいながら、大きな観点から言うと、無料で利用できるということは、それを生み出した人が必ずしも報酬あるいは収入あるいは成果を十分に受け取ることができない危険性が残ります。その結果として、やはりエフォートへのインセンティブが不足するのではないかということがございます。特にお金の問題を考えたときに、公共財としての資金調達を市場だけに委ねる、先取権があるとしたとしても、必ずしも十分なインセンティブとなってはいないかもしれない。そうなるとやはり公的な支援が必要ではないかと言う議論に行き着きます。ただし、その公的支援のときに、望ましい規模、あるいはどういう分野が必要なのか、あるいはどういう配分原理を適用するのか、ピアレビュー・グラント型が良いのか、あるいは組織に対して配分していくのが良いのかということに関する分析はまだまだ途上にあるというふうに考えていいのではないかと思います。
  他方、この公的支援に替えて成果に独占権を与えるということで特許にしたらどうかと、あるいは非常に成果の利用を制限的にするような制度を考案したらどうかということがあります。知的財産権を付与するというのはその1つの最たるものでありますけれども、これは公共財を私的財に置き換えることによって、誰も使えないようにすることによって報酬を保証するということなんですけれども、これを科学に適用すると、実は競争による非効率が起きる可能性がある。特許は1人しか取れませんので、それを目掛けてどんどん重複投資が行われていって、その結果、科学者が過剰に競争というか、ライバルが増えてくるというようなことがあり得ます。それが過大な投資を生み出していくということも十分注意しなければいけないということだろうと思います。
  ここまでが科学の話をさせていただきました。科学技術と言われていますけれども、科学と技術は、経済学の観点からいうと少し区別して考える必要があるのではないかと思うわけで、ここではその点についてお話をさせていただきたいと思います。
  次のスライドで、基礎原理と実用性というチャートが書いてございます。ここにいらっしゃる方皆さんには釈迦(しゃか)に説法で御存じのことばかりです。基礎原理の発見あるいは理解と、実用性という軸で科学あるいは技術を切ってみると、パスツールの象限、あるいはボーアの象限、エジソンの象限というような形で特性が分かれてくるということが言われています。最近では、パスツールの象限のところで、科学と技術がだんだん接近していってグレーゾーンが拡大してきているということも確かなわけであります。そうはいいながら、ここでは両者の違いを際立たせて考えておくことが必要あるだろうということで、少し経済学の視点から区別するとすればどういうことかということをお話してみたいと思います。
  先ほどの話と多少関係してきますが、成果を生み出す過程に関しては、両者ともに秘密にすることでは共通しています。出し抜かれないという意味では、これはほぼ同じだろうと。だけども、生まれてきた成果については科学と技術は異質かもしれないと思われる。科学の方は、先ほど申し上げましたように、一番乗りの認知、これが非常に大事なわけで、早いうちに公知して、この人が出したんだよという成果を広く知ってもらうということがやっぱり報酬を与える上で非常に大きな要素になるということなわけです。
  ところが、技術の方は、長く独り占めしたい、それによって利益を得たいというインセンティブが非常に大きいわけで、だとすると、成果の独占利用あるいは秘匿というところに結び付いていると思います。すなわち、科学と技術の間の違いをもし分けるとしたならば、成果の異質性ということで考えるというのが1つの考え方ではないかと。そうすると、その発表の仕方も、論文で発表するか、あるいは特許として権利を確保するという形で発表するか、いろいろな違いが出てきますし、それから、インセンティブも、非金銭的なインセンティブと、報酬という、あるいは利益という形でのインセンティブに分かれる可能性があるかもしれない。
  次のスライドに行きますが、今の議論は実は科学界と産業界とのすみ分けの違いということにも少し関わってくるかもしれないと思います。科学界は、発見なり発明をできるだけ全面公開していこうという方向性はあります。技術を生み出そうとする産業界は、これはちょっときつく書き過ぎているのかもしれませんが、発見・発明を全面公開してはならないという部分があるのかもしれないということであります。もちろん最近は、科学の私物化の進行というのもないわけではなくて、データの非公開とか、あるいは研究素材、例えば細胞株の支配をするとか、そういった形で競争に対して制限を加えるというようなことも進んでないわけではありません。
  それから、片方で、論文と特許の間のインターフェースといいますか、それもないわけではありません。論文から特許がたくさん生まれてくるということは、アメリカでも随分言われますし、それから、日本でも、例えば長岡さんは、医薬品の分析でそういった研究結果も出しておられて、論文から特許という流れもあります。それから、逆に特許から論文という、そういった因果関係が出てきているということもいろいろ分析されていますので、両者の関係というのはかなり密接な関係になりつつあるということではありますけれども、両極端をいえば、今申し上げたような違いがあるかもしれない。
  それから、最後に、余り時間を取ってはいけませんが、幅広い社会との接点でイノベーションということについて触れたいと思います。イノベーションという言葉は、シュンペーターが創造的破壊という言葉で解説をしています。ほぼ同じ意味と思いますけれども、新しい財とかサービス、あるいは生産方法、販売先、あるは原材料、半製品、あるいは新しい組織の実現から構成されている。革新的な成果が独占をもたらすが、それをまた次の競争者が打ち崩してという、そういったことでありますけれども、そういった破壊の過程、生み出して破壊していく、生み出して破壊していくという過程がイノベーションだというのが基本的な理解ではないかと思います。そういう意味では、技術革新、あるいは科学、技術とイノベーションとの関係を考えると、科学とか技術は、イノベーションを生み出す1つの要素ではあるけれども、全部ではないということも確かだということだろうと思います。
  では、担い手は誰なのだろうかというと、これはもはや科学者とか技術者というよりも、起業家と言った方がむしろふさわしいのではないかということであります。イノベーションがどういう効果を生み出すのかを考えるとき、経済全体、社会全体との関わり合いを重視しますから、経済成長にどう結び付くのかというようなことについての様々な分析が行われています。
  これもテクニカルなので、次のスライドは省略させていただきますが、経済成長を生み出す要因には、技術もあるし、資本もあるし、労働もあるし、いろいろなものもあって、その中の技術というのはどのぐらいの役割を果たすのかということはいろいろな形で分析が行われています。
  イノベーションはそういう意味では、非常に狭い意味での科学とか技術とかによって直接的に生まれてくるというものだけではなくて、間接的な影響が大きいわけです。例えばあるものが生み出されて、全然違うところに知識が波及していくということで新たなイノベーションを生み出す、あるいはそれによって経済成長が生み出されていくという分野がたくさんあることが言われています。そういう意味では重要なのは、間接的な影響も含めて考える必要があるのではないかと。こういう点で、黒田先生がやっておられるI-Oを使った様々な波及効果の分析というのは、これはイノベーションと経済成長の関係を分析する上においては非常に有効ではないかなと思います。
  よく言われるのは、知的財産権を強化すればイノベーションは生み出されるのではないかという議論があります。これは2つの見方があります。確かに保護を強化すると、技術の報酬が高まりますから、投資も生まれてくる。したがって、それによって新しいものが生まれてきて成長が促進されるかもしれないという、これは1つのプラスの効果です。
  片方で国際的な資源の配分を考えてみます。ここで途上国と先進国があったとします。知識の保護を非常に強くしますと、途上国がなかなかそれを手にすることができない。したがって、それによって生産活動もできないというようなことが起きてきます。生産活動ができなければ、先進国はそれに着目して、自分が生産活動を行ってしまうということにあります。ところが、その生産活動を行うと、先進国には資源には限りがあるわけですから、研究開発に回す資源が減っていく可能性があります。その結果として、今度は研究開発投資が実は減っていくという可能性がある。すなわち、後進国と先進国との役割分担が崩れてくることを回避する上では、むしろ少し緩めの方が、すなわち、後進国が生産活動をやって、先進国が知識を生み出すような知的な活動にどんどん資源を配分していくような役割分担の方がいいのではないかというような考え方もあります。
  最後になりますけれども、イノベーションが起きると生産性が高くなっていくのではないかということをしばしば言う人がいます。ただ、生産性の上昇とイノベーションとの間は若干ずれがあるということに注意したいと思います。プロダクティビティー・ジレンマと言われていますけれども、新しい製品とかサービスがイノベーションで生み出されるとします。その結果として生産方法が確立されます。その結果、効率性の高い生産が行われてきます。ここでは生産性が向上していきます。しかしそれはある意味ではだんだん型にはまったプロダクションのシステムが確立されているということですから、製品・サービスの固定化につながっていくわけです。その結果として、その時点ではもうイノベーションは停滞したということになりかねないということです。イノベーションというのはあくまでも新しいものを生み出していくということであると、生産性上昇が起きている局面ではもうイノベーションは停滞しているという逆説的なことも言われかねないということであります。
  以上、非常に雑駁(ざっぱく)ですけれども、科学、それから、技術、イノベーション、こういったものに経済学がどう取り組んでいるかということについて一端をお話しさせていただきました。理論分析あるいは実証分析でメーンのところは、最適な資源配分に関してどうしたらいいかという研究蓄積であります。それから、最近は重要なのは、対象とされるデータ、これはコホートデータもそうですし、個票データもそうですが、この整備が非常に重要になってきています。それから、経済との関係でいえば、幅広い波及効果を捉(とら)える必要があるかもしれない。更に、政策の科学との関係でいうと、実験的な方法というのが非常に重要ではないかと思われます。政策実験をやってみて、政策の対象になった場合とならない場合でどれだけ違うのかということを比較することです。コントロールグループとトリートメントグループをきちんと比較していくというような大事かもしれない。それから、将来に向けてのシナリオ作り、こういったものについては一般均衡の様々なモデルで大きな変化を捉えてみるというようなことも行われているということであります。
  私の報告は以上ですけれども、若干、最近の日本の統計で不安材料だけ、最後に30秒でお話をしたいと思います。R&D支出の減少傾向ということで、太い黒字のところは日本であります。伸びているのがアメリカと中国であります。それから、R&DのGDP比率の停滞と。これも日本は停滞傾向にあります。しかもこのGDPの比率のところは、日本のGDPが伸びていないということの上での話ということであります。
  それから、科学技術予算の減少傾向ということで、2005年以降一般会計に占める比率はずっと落ちてきているということであります。それから、理工系博士号取得者の減少です。日本は非常に群を抜いて低くなってきているということであります。
  それから、論文数の停滞。これもアメリカ、中国から比べると大きく離されつつある。それから、特許出願の減少傾向も見られているということで、不安材料がたくさんあるという中で、我々としてはいろいろなことを考えていかなければいけない現実にあるということであります。
  ちょっと長くなりましたが、私の御報告は以上にしたいと思います。

【黒田主査】
  どうもありがとうございました。若杉委員の方から、経済学で科学技術イノベーションをどういうふうに扱っているかという話を頂きました。何か御質問、それから、コメントがありましたら、何でもお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
  それでは、僕は経済学なものですから、おっしゃっている話は経済学の実態として非常に正確にお伝えいただいたと思います。最後のデータにありますように、最近の科学技術研究投資の割合とかその貢献度というのは結果でしか分かりませんけれども、現状では、インプットの比率が減っているとか、傾向的に論文数が減っているとかということが実態としてあるわけですね。片方で、研究開発投資というものがどうして、社会なりGDPの測定でもいいんですけれども、それに結び付くのかという方法が経済学ではまた必ずしも分かっていないと。生産関数なり技術関数なりに変数として何らかを入れれば、その符合はプラスかマイナスか分かりますけれども、一体どうすれば科学技術の知見がイノベーションに結び付くのかということはどういうふうに経済学では解釈するのか。科学技術の投資をたくさんしたからといってイノベーションが起こるとは言い切れない部分があるということが一番問題のような気がするのですが、その辺はいかがでしょうかね。

【若杉委員】
  非常に難しい、本質的な問題だと思います。ハーバードのグリリカスが、生産性ということに関して、いろいろ分析をしたが最終的にたどり着けなかった残差(ざんさ)がイノベーションによる生産性の上昇の部分だというようなことを以前言ったことを私、記憶しているのです。そういう意味では、成長を生み出していくいろいろな要素があって、それをどんどん説明していって、しかし、それでもなおかつ説明し切れていないという部分を残差として、イノベーションとして扱ってきているというのが、これまでの標準的な、といいますか、そういった部分ではないかなと思うわけです。
  したがって、その努力はもちろんしていかなければいけないし、突き詰めていく必要がありますけれども、多分それだけではなかなか解決し得ない、そういった分野がたくさん出てきていて、先ほどイノベーションと生産性のトレードオフといいますか、ジレンマという話を申し上げましたけれども、これもまさにそういう現象を表していて、生産性は上がっているのだけどもイノベーションが起きていないというような局面というのはないわけではないと。タイムラグが当然両者には出てきているというような、そういったものをどうやって把握していくかということが非常に重要なことだと思います。
  それから、我々はアウトプットをいろいろな形で計測しようとします。それは幾つかの段階があります。科学の世界では、論文とか引用数とかインパクトとかいろいろなことを考えます。技術では特許とかそういうことを考えますし、もう少し幅広く、利益率とか、あるいは株価の上昇とかまで考えるときもあります。したがって、分析する対象をどういうところに焦点を置くかということを、我々前提をはっきりさせて、何でもかんでも説明できるということではなくて、こういうものに関してはこれによって説明ができますよ、こういうものに関してはこれでは説明が出来ませんよという形で分析をしていくのが現在のあり得る姿かなと思っています。
  そういう意味では、最近、無体財産権に関する研究というのは非常に重要視されていますし、政府のGDP統計でもそういったものに関する取組が行われて、研究開発の部分に関してもGDPの扱いが変わりつつあるという、そういう変化の局面というのは、私も納得できるし、これからも進めていかなければいけない、非常に重要な分野だなと思っています。

【黒田主査】
  ありがとうございました。多分自然科学の先生方は、これをお聞きになって、経済学というのは何だと思われるような部分が、僕自身いつもCRDSで経験していますのであると思うのですけれども、何か御質問。
  どうぞ。

【小林委員】
  経済学だから、最終的にGDPか何かで測るというのは、それはとりあえずいいとして、タイムラグというか時間、実際分析されるときには、時間というのはどのぐらいのタイムレンジまで影響を、10年とか20年というところまで考えて分析されておるのかどうかという。

【若杉委員】
  分析の内容によって非常に大きく違います。例えば非常に大きなイノベーションが社会全体に与えた影響ということを大局的に見るときには、これはもう50年とか、あるいは100年とか、そういったレンジで考えなければいけないこともあります。例えばガソリンエンジンが開発されるとか電力が開発されるとかそういった大きな変化、ほかにも最近たくさんありますけれども、そういったものはやはりレンジが非常に長くないと全体に効果が現れてこないと。
  それから、技術の普及といいますか、社会全体にどう浸透していくかというところを考えるときには、もう少し短いレンジで、5年とか10年とかそういった形で。例えばある新しいものが生み出されたときに、どういう形で普及過程が入っていくんだろうかということを考えると、よく言われるのは、S字型の曲線で普及していくという経験則です。最初はぼちぼちなんだけれども、急速に普及して、最後の90%以上になると今度は100%にはなかなか行かないという、ロジスティックカーブと言った方がいいのかもしれませんが、そういったこともあります。そういうときにはやはり時間的には数年単位あるいは十数年というようなことではないかと。
  それから、例えば医薬品が生み出されたことによって治療効果が大きく違ってくるというようなことはもっと短いかもしれませんし、それから更に、マニュファクチャリングの過程では、ある半導体が生み出されたことによって爆発的にコンピューターのサイズが小さくなっていくとか、そういったものはもう本当に数か月なり1年なりの範囲で生まれてくるということで、分析の視点をどこに置くかということによってかなり違ってくる。
  ただし、研究の現場で非常に難しいのは、研究開発のエフォートをデータとして数か月単位で取るというのは非常に難しいことで、せいぜい取れて年単位です。非常に短い期間でそういう感じかなと。例えば大学であってもそうですし、研究機関でも、あるいは企業でもそうですけれども、年次報告書が出て初めてどのぐらいのエフォートがあったのかということが明らかになるということなので、中間的な数か月というのはなかなか難しいというのが現状ではないかなと思います。

【小林委員】
  何か技術とかを特定して見ればそういうふうにそれぞれスケールを考えることはできると思うのですけれども、例えば基礎科学のような場合ですと、そもそもどこにどういう成果が出てくるか分からないわけですね。では、基礎科学に投資した投資効果をGDPで測るということはできると考えてよろしいですか。

【若杉委員】
  最終的には私はGDPに反映されていると思います。されているのですけれども、それを特定化することが非常に難しいということがあるとすると、それは最終的には残差になって現れる。要するに、説明しようとしているものをどんどん入れていって、それで説明し切れないものがやっぱり残っているという部分が、そこに多分基礎科学の成果が何らかの形で反映されているんではないかと推定するしかないかなというふうに思います。
  明示的にこういうふうな変化があったからということを、幾つかエレメントとして、ファクターとして入れていくわけですね。それが統計的に有意な説明力があるかどうかということをずっと検証していって、有意なものがあれば、それはそこで説明力がある程度あるわけです。だけども、恐らく基礎科学の様々なことというのは、そういうふうにはなかなかうまく出てこない。だとすると、しかしながら、残差というのは非常に大きなものが残っているというのが現実なわけで、そこが恐らく基礎科学であり、社会の大きなフレームワークの変化であり、あるいは教育かもしれませんけれども、そういったものが貢献している部分かなというふうに私は理解しています。

【有信委員】
  こういう分析はすごく重要だと思うのですけれども、考えていることは2つあって、1つは、いわゆる基礎研究の延長上に応用研究なり開発研究があって、それがイノベーションに結び付くと、こういう例というのは実は極めてまれなので、基礎研究は基礎研究として、ここにも知識のストックという書き方をしていますけれども、ある意味で知識ストックを作り出すという考え方がある。それからもう1つは、それが技術革新につながるにしても、単一の技術革新がイノベーションを生み出すわけではない。常に多くの技術革新が必要とされていて、そのときの技術革新というのですかね、ある種の組合せが実現したときに初めて大きな革新なり、ディスラプトイノベーションというようなものが起きている。
  これは全てではありませんけれども、特に今までのケースだとそういうことが多い。この辺を今のような定式化の中でやっていくと、基礎研究の本当の意味がもう少し分かると思うんです。基礎研究を無理やりに出口に向けてやっても余りいいことはなくて、そこで出てくる知識のストックをどういう形で新しい、さっきおっしゃったように、イノベーションの担い手は誰かというときに、科学者でも技術者でもない、いわばある種のイノベーターがそのストックをどういうふうにオーガナイズして組み合わせて新しい出口に結び付けるかという、ここの部分から今のこの定式化を見直すと、結構難しいと思うのですけれども、議論のいい種になると思います。

【若杉委員】
  全くそのとおりだと思います。私も全くそのとおりだと思います。

【黒田主査】
  ほかにどうぞ。

【有川委員】
  ありがとうございました。非常に勉強になりました。少し気になるところがあります。16ページ、17ページの付近ですけれども、科学と技術の線引きとか、科学と技術はこういうふうに違うのだということを強調してあるのですけれども、実際には差が少なくなってきているのではないのかなという気がしております。それはいろんなところに見られるのですけれども、例えば大学なんかですと、昔は理学部と工学部なんていったら、理学部は理屈をやっていて、工学は技術をやると言っていたのですけれども、今その差はほとんどなくなってきているのかなという気がしております。それはほかの意味でもちょっと問題なのかもしれないですけれども。
  それで、その次の17ページのところなのですけれども、技術の方は全面公開してはならないとなっているのですけれども、ここも例えばトヨタが燃料電池関係の技術というか特許を全部オープンにするとニュースになりましたね。これはそうすることによって、使ってもらって全体として活性化するといいますか、そういったことを狙っているのですね。ですから、ここも何か、じゃあ、あれはやっぱり技術じゃなくて科学なのか、だから、まだ役に立ってないのかと、そういうふうに言ったりしたくもなるのですけれども。
  それから、一方でイノベーションに関しては、オープンイノベーションというようなことで、さっき有信さんがおっしゃったようなことと非常に関係あるのだと思うのですけれども、サイエンスの方もオープン化といいますか、論文の方は当然オープンですけれども、データもオープンにして、そして、直接実験なり観察なりに関わらなかった人でも研究ができるというようなことをしようという、そういった動きがあると思います。そういう意味では、何かどっちもオープンになりつつあるのかなというような気がしておりますけれども、いかがでしょう。

【若杉委員】
  ありがとうございます。私、議論をすっきりさせるためにあえて両極端を強調したのですけれども、先ほどちょっと言い訳のように申し上げましたけれども、科学と技術がもう接近して、グレーゾーンがどんどん増えてきているという現状はおっしゃるとおりだと思います。
  それから、2番目におっしゃった、産業界が発見あるいは発明を全面公開してはならないということについての御認識も、全くそのとおりです。私、昔のことで少し思い出したのは、VHSとβの争いがあって、VHSは技術内容を公開して多くの企業が使えるようにしたことがありました。結果的にはビクターがシェアを取ったという、そういうこともでありますが、デファクトのスタンダードを作っていくということが非常に重要な意味を持っているということはまさにおっしゃるとおりだと思います。
  それから、オープンイノベーションあるいはオープンサイエンスという、そういった現象がごく最近非常に活発になってきているということも、1つのブレークスルーをするための知恵として重要な点ではないかなという御指摘は、全くそのとおりだと思います。ありがとうございます。

【黒田主査】
  ほかにいかがでしょうか。

【赤池科学技術・学術政策局付】
  先ほどの小林先生が御提起された、例えば基礎的な科学がGDPに貢献するかどうかということなのですけれども、私が思うには、やっぱり人が生み出す価値の相場という意味では貢献を当然しているのだと思うんですけれども、GDPという測定という側面からいうと、例えば人の知に対する充足感とか、あるいは宇宙の原理に対する人の満足感とか、そういうものとかも含めて、じゃあ、市場を介して適正なものとして測定されているかどうかという意味では、今のGDPという形が反映されてない可能性がある。もちろんR&Dの資本化というのは、1つは大きな変化ではあるのですけれども、やっぱり測定の問題と両方あって、ただ、その測定の問題が故に、把握し切れない部分が適正にフィードバックされるように評価されていないというような、例えば科学者の方の不満というのも理解できるところがあるかなというふうな気持ちはあると思います。

【有本副センター長】
  よろしいですか。ちょっと若杉先生の歴史的な認識を教えていただきたいのです。10年前にアメリカの、当時の大統領科学補佐官のマーバーガーが、科学技術イノベーション政策のための科学を始めようということで提案したときのバックグラウンドとしては、彼は、大統領の閣議に臨むと恥ずかしいと。横に座っている経済諮問会議の議長、経済アドバイザーは、いろいろなデータを持ち寄って、それをコンピューターに掛けて、こういうシナリオもあります、こういう案もあります、どうしますかねというふうに盛んにオプションを提案する。自分の担当の科学技術政策の方は恥ずかしいと。エキスパート・ジャッジメントで、こうやりましょうというぐらいしか言えなくて、これは恥ずかしいと。それで、何とか科学技術政策も経済政策と同じように閣議で議論できると、データがあって、コンピューターが、そして、モデルがあって、それで、オプションを出せるようにしようじゃないかということで始めたというふうに理解しているのです。
  経済政策の基本は、今のGDP。1930年代に、大恐慌の後ですかね、GDP指標をやろうということになった。80年ぐらいたって、そのGDP自身が、本当にそれでいいのというふうに問われている。世界の経済構造が変わっているものだから。科学技術の構造もいろいろ変わっていると思うのです。一体科学技術政策のための科学の中で、1つの大きな焦点は、いろいろな関連データがあるのだから、それを接続させようということにあると思うのですけれども、そこら辺の問題点が何かあれば。

【若杉委員】
  ありがとうございます。有本先生がおっしゃるように、科学あるいは技術の政策へのエビデンスの精緻(せいち)化といいますか、マーバーガーがカウンシル・オブ・エコノミックアドバイザーと同じぐらいにエビデンスを用意したいという気持ちになられるというのはよく分かるんですけれども、やっぱり時間や範囲において科学や技術は広範に及んでいます。例えば金利を上げたときに金融機関・企業がどういう行動を起こすのか、あるいは預金者がどういう行動を起こすのかというようなこととか、あるいは道路をつくったときに人の流れがどう変わるのかとか、あるいはどんなに輸送量が変わってくるのかということを測定することと比べたときに、科学あるいは技術に対してインプットを投入したときの影響の時間軸の長さ、それから、間接性、波及の仕方、こういったものは比べ物がないぐらいに長い時間と、それから、幅広いものがあるのだということは出発点として私は認識していいのではないかなと思います。
  経済活動と同じぐらいに、科学技術予算をこれだけ投入したらすぐにどんな効果が出るのかということは、結局それは無理な話で、ないものねだりをしているわけです。ただ、そうはいっても、なるだけ影響するレンジの長さも含めて説明責任は当然果たさなければいけないし、効果のないところにお金を投入するということはインエフィシェントとですから、これは避けるべきだと思うんですけれども、ほかの政策手段と比べて、まさに経済の様々な短期的に効果が出るようなものと比べて同じレベルにということは、私は到底これは不可能に近いことではないかと思いますし、そうすることによって、かえって資源配分がゆがむ可能性があるという、そういう危険性があるというふうに私は考えております。

【有信委員】
  ちょっと話が変わるのですけれども、今思い出したのは、昔、研究開発投資をどれだけやるべきかという議論をやったときに、基本的に、御存じかもしれませんけれども、永田先生なんか多分よく知っていると思うんだけど、要するに、研究開発の知的ストックをいわば資産価値として、そのディプリシエーションを考えると。つまり、知識は陳腐化をするので、その陳腐化をする部分を補うためにいわば減価償却の形で常に最低限の投資をやらなければいけない。したがって、知識の陳腐化率が重要になってきて、その知識の陳腐化率というのは、企業でいえば、製品のサイクルに関わるわけです。つまり、新製品が何年ごとに出てくるかによって知識がどれぐらいの勢いで陳腐化していくかというのは、これは事業活動ではそういう計算ができるので、その中で陳腐化の議論を盛んにやった時期があります。
  基礎研究の知的ストックというのは、これだってやっぱりディプリシエートするわけで、この減価をどう評価するかというのが多分基礎研究にどれだけ投資をすべきかということとも関わってくるような気がするんです。ただ、極めてリスキーなのは、基礎研究の場合は、先に発見をされてしまうと、途端に今までのストックの知識があっという間に吹っ飛んでしまうわけです。この辺をどういうふうに考えるかによって、それは多分リスクファクターとして、その部分のリスクを考えながら実際の投資をやる。つまり、ゲインというか、GDPにどれだけ効果があるからということではなくて、むしろ減価するものとして。そうすると、その前に、ストックとしての知識をどう評価するかという議論があって、ストックとしての知識の評価のところで、その知識のいわば経済に対するポテンシャル的な影響力のような形で知識の資産量を評価して、それのディプリシエーションといわばリスクを兼ね合わせた評価をやっていけば、多分どれぐらい投資が必要かというところは評価できそうな気がする、ちょっと素人考えですけれども…。

【若杉委員】
  今のお話はすごく重要なお話で、しかし、非常に難しいお話だと思います。これまでの知識ストックの計測というのは、私も計測したことがあります。例えば年率7%で減価していくとか、ディプリシエーションレートを入れて、経時的変化を積み重ねていったときにはどのぐらいのストックになるかというようなことは計算いたします。だけど、これは物理的な資本、そういったものの減価償却の考えをそのまま当てはめているんですね。したがって、知識ストックの確かな評価方法としては、果たして適切かどうかというのは今でも疑問を持っています。そういう意味では、この分野というのはやっぱり、非常に難しいが故にまだ研究の進んでいない分野で、現在までのところの知識ストックというのは、物的資本のストックの計算方法をなぞってそのまま当てはめているというのが現状で、十分な研究が尽きているというふうには私は思っておりません。

【黒田主査】
  ありがとうございました。
  ほかに何か御質問。どうぞ。

【森田委員】
  きょうの若杉先生の御発表についての感想ということで言わせていただきます。私自身、自然科学者でもありませんし、経済学者でもないので、その観点からですけれども、きょうの御報告伺っていて、確かにどういう形で経済学のツールを使って、イノベーションあるいは技術の方もそうですけれども、基礎研究も進んでいくかというのは分かりました。
例えば先生のご報告で非常に示唆的だったのは、7ページ、8ページで、観察と分析ということです。1つはやはり私自身思いますのは、マクロ的に見てこれだけ投資をしてこういう効果がある、そして、マクロ的な環境条件がどうあって、それがどういうふうにイノベーションに長期的に結び付いてくるかというお話があったのですけれども、他方、下の方では、要するに、年齢の方で早くなければ駄目ということですよね。ちょっと違う観点になるかもしれませんけれども、政策論として考えるとき、どういう形で一番基礎的な研究の成果を生み出すかというときに、何が生み出すきっかけといいますか、ポイントになるかといいますと、私自身はやっぱり若い人たちができるだけ研究に専念できる、そして、資金もそうですけれども、その環境をいかにして作っていくかということが非常に重要ではないかと思っています。その意味でいいますと、ミクロデータにおいて、どういう研究環境でどのような成果が生まれているかということを経済学のツールを使ってきちっと出していくということは必要ではないかなと思います。
  私自身は40年ぐらい前、大学の助手に残ったのですけれども、あのときには何も義務がなくて、あるのは時間的制約と試験のときの監督が二、三回あるぐらいで、あとはもう全く自由に時間を使っていいというすばらしい環境で、その割に成果が出たかどうか自信はないのですけれども、今の若い研究者の人たちというのがどれぐらい本当の自分のクリエーティブな活動のために時間を割いているかといいうことを考えると、これは、かなり悲惨な状態ではないかと思っています。その環境をどういうふうに改善していくか、そこをきちっと考えて政策を立てなければ、投資をした効果というものの意味が余りないのではないか。どんどんお金をつぎ込むけれども、ますます、例えば研究費の管理とか、大学関係ですと大学の様々な業務で限られた時間を使われてしまう。そうした環境で若い人たちに知恵を出せ、新しいことをやれと言っても、そもそも矛盾しているのじゃないかなという気がします。
  そういう意味ですと、経済学は是非ミクロ的にそうした意味でのクリエーティブな活動にどれだけ若い人たちの可能性を開くような資源の使い方をしているかということを調べていただきたいと思います。このことは、私のささやかな経験でいいますと、シンガポールとかイスラエルの場合に、若い研究者をどれほど優遇しているかと。かなり日本とは違っていると思います。アメリカでもそれなりの大学の場合にはやっぱりそういう環境に若い研究者を置いているわけです。我が国の場合、相当それが違っている。そこをきちっとコントロールしないで余りマクロ的な議論をしてもちょっと的はずれではないかという気がいたしました。

【若杉委員】
  全くそのとおりだと思います。先ほどのエグザンプルで2つおっしゃった例があると思います。40年前と比べてと。要するに、これは今を評価するとき何と比べて評価するのかということを考える上において、時系列的な分析というのは非常に重要だということが1つだと思います。それからもう1つおっしゃったのは、シンガポールと比べてと。日本の今のインプットとアウトプットの関係を国際的によその国と比べてどうかという比較をしてみると。それはもちろんマクロの比較じゃなくて、非常に年齢層も絞り込んで、コホートも絞り込んで、いろいろな環境もコントロールした上でということをちゃんとやっていなければいけないということです。古いようで新しいと思いますけれども、時系列と、それから、クロスセクションの両方でできるだけディテールなデータに基づいたシャープな分析をすることが、政策のツールに対してエビデンスとなるだろうと思いますので、ここは分析する余地はまだまだたくさん残っているのではないかなと思います。

【黒田主査】
  どうもありがとうございました。

【住川委員】
  もう1点いいですか。

【黒田主査】
  どうぞ。

【住川委員】
  住川でございます。非常にいい話を聞かせていただいたと思うのです。統計的に見ると、日本の若い研究者の数がどんどん減り、質の評価というよりは数の評価で劣り、結果的には質にも影響を及ぼしているのではないかと。そうなると、何らかの新しい、若い人を育てるための施策、予算増加ということも重要なのですが、もう1つ、質的に違う支援を何かしてやる必要があるのではないかと思っております。
  例えば研究者に対して、いろいろな部門で現在の世界の最先端技術成果は何かというようなきちっとしたエビデンスを与える手段を日本が一歩世界に先駆けて構築すれば、少ない優秀な研究者を少ない予算で支援をするのだけども、成果としては非常に効果的なものが生み出せるという新たな展開を日本としては考えていかなければいけない時代に来ているという気がするのです。
  そういう点について、エビデンスベースの政策のための科学という中に、従来と違う、世界と違う何か、世界も試みていると間違いなく思うのですが、一歩先を行くような提案ができればいいが、という感じがいたしております。先生はまた別の面から感じておられると思うのですけれども、その辺に関して何かございますでしょうか。

【若杉委員】
  おっしゃるとおりだと思います。今のパフォーマンスを評価して、思ったほど上がってないなという評価があるとすれば、それはどこかが違っている、どこかを新しくしなければいけないという、そういうことだろうと思います。

【黒田主査】
  どうもありがとうございました。非常に活発な御議論いただいたのですが、これからSciREX事業としてはいろいろ考えるべき点多々頂いたと思います。
  幾つかだけ私の感じたことですけれども、R&Dの陳腐化というのは非常に重要で、やっぱりどうやってそれを測定できるのか。本当にできるのかどうかも僕はいまだ分からないところがあるんですが、それもありますけれども、今、住川先生がおっしゃったことというのは、組織も陳腐化しているんですね。科学技術のナレッジだけがどんどん進んでも、それを受け止める組織が陳腐化しているとイノベーションは起きないという感じがするのです。
  それで、そういう組織の陳腐化に対して何がやれるかというのは、多分科学技術にお金を付けて研究を進ませるよりも政策としてはやりやすい政策なんじゃないかなという気はしますけれども、そういうことも考えてみなければいけないなという気がいたします。経済学がどれぐらいできるのかということに関しては、もうなかなか限界がありますけれども、やっと経済学の分野でも大きなデータが使えるようになったというのは物すごい技術の進歩だと思いますし、そういう意味で、個票を使ったり、ビッグデータを使ったりして各々のマイクロの行動がやっと経済学者も触れて観察ができるようになってきたというのは、これから大きな方向の展開になるだろうと思っています。
  それでは、またこの議論はまだまだ続くと思いますので、次の議題に進めさせていただきます。このアドバイザリー委員会の使命は、組織を変えてから1年間続けてまいりましたけれども、このSciREXという事業に対して今後の進め方等にいろいろなアドバイスを頂くというのが一番大きな課題でございます。事務局としては、今年度の末ぐらいにアドバイザリー委員会から進め方についてアドバイスがあれば、それをまとめて御提案いただきたいということを考えていらっしゃるようです。そのためには、我々委員そのものが現状、SciREXプログラム拠点大学とか、SciREXセンターとか、NISTEP、それから、RISTEX、いろいろなところで活動いただいているわけですけれども、その活動がどういう進捗の状況にあるか、認識をきちんと持っていた方がいいだろうと思いまして、きょうは、その入り口だけということになるかもしれませんけれども、事務局の方から各拠点の取組について簡単に御紹介いただきたいと思います。

【橋本室長】
  最初は私の方から簡単にガイダンスを申し上げまして始めます。
  それでは、お手元の資料のところの資料3をごらんいただけますでしょうか。SciREX事業の全体構造についてということです。これから各プログラムに関連してそれぞれの説明をいたしますけれども、その前に、全体像を分かりやすく示した資料を用意させていただきました。
  この2番の資料でございますが、これは第1期のときまでに大体出来上がった姿を見せておるものでございます。そもそもまず政策のための科学というのは2011年から始まりましたけれども、その中でいわゆるデータ・情報基盤としてのNISTEPとか、公募型研究開発ということで、これはRISTEXさんの方で始めた研究、それと、更に、GRIPS及び4大学5拠点の基盤的研究・人材育成拠点事業が走っていきまして、そして、それが2年前にいわゆる中核的拠点機能という形で更にGRIPSにSciREXセンターを置いて、それで全体を糾合する体制ができてきたと。こういう状況の中で、研究成果を出していくこと、あるいは人材を育成していくこと、それに対して文部科学省としてどんな形でコミットをしていって、どういう形で成果の実装・展開がなされていくのかというような図を簡単に描いたものでございます。これは概念ということでございますけれども、その次のページをごらんいただけますでしょうか。
  第1期の評価を頂き、その上で関係機関の主な役割を新たに整理させていただきました資料がこれです。この資料はこれまでも何回か説明させていただいておりますので省略させていただきますけれども、今回第2期を始めるに当たって一番重要だと思われる点は、これまで人材育成という形で事業を進めておりましたが、研究に関しましても、拠点が共同で研究プロジェクトを運営していくということが今回第2期の非常に大きな柱となっています。
  最後のページをごらんいただけますでしょうか。最後のページでございますけれども、研究をやる際には、文部科学省としてこういうものが重要であるという形についての重点課題を定めて、その下に基づいて各拠点で研究を行う体制にしておりますことは、3月のときにも御説明させていただきました。それに関連しまして、1つの重点取組分野というのは、各個別の研究機関だけに閉じるものではなくて、SciREXセンターにおけるプロジェクトとか、RISTEXのプロジェクトなど、横である程度つながるような形で重点課題に基づく研究を進めていくという体制となっております。
  重点課題の資料につきましては、参考資料3に各9課題、それを載せておりますので、これは御参考にしていただければと思います。
  それでは、実際にSciREX事業の基盤的研究・人材育成拠点整備事業の現在の運営状況につきましては、これはGRIPSの方から御説明をいただければと。

【小山田専門職】
  それでは、基盤的研究・人材育成拠点整備事業の運営状況ということで、資料3-1をごらんいただければと思います。まず各人材育成拠点の取組状況ですけれども、こちらは資料3-1の別紙1、こちらの紙ですね、こちらの方に簡単にまとめてございます。
  既に御案内されているかと思いますけれども、この基盤的研究・人材育成拠点整備事業ですけれども、大きく2つのタイプの拠点から構成されています。1つは総合拠点としまして、当政策研究大学院大学にございます。そのほか、4拠点、5大学で4拠点になりますけれども、東京大学、大阪大学・京都大学、一橋大学、九州大学、これらの4拠点が領域開拓拠点ということで、それぞれ異なるミッションを帯びております。
  総合拠点の方としては、政策のために科学に関する博士及び修士課程を設置して、専門的知識及び能力を習得するための総合的なカリキュラムを設定するということで、学位プログラムを出すということがまず求められてございます。その他領域開拓拠点としましては、それぞれの強みに応じて、実際は修士や博士課程レベルでそれぞれほかに専門を、例えば工学部とか公共政策とかそういった専門を持つ学生に対して科学技術イノベーションの教育プログラムを提供して、サプルメントとして修了証明書を出すというような形のプログラム構成になってございます。
  それで、現在の取組状況ですけれども、我が政策研究大学院大学では、科学技術イノベーション政策の企画・立案・実施・評価・改善を行う総合的な能力を有する人材を育成するということで取組を行ってございます。専門の修士・博士課程を設置しておりまして、こちらの方、この夏の時点、8月時点ですけれども、修士課程は2名、博士課程は15名、総計17名という形の今、在籍状況になってございます。
  東京大学につきましては、公共政策と工学の領域を軸とした形になってございまして、こちらは修士課程が215名、博士レベルの学生が29名という形になってございます。
  下に行っていただきまして、一橋大学は、経営学、経済学等の社会科学を基盤としてプログラムになってございまして、こちら、博士課程レベルで12名、その他、社会人、科目等履修生も含めて14名というような形になってございます。
  また、大阪大学・京都大学ですけれども、これは科学技術の倫理的・法的・社会的問題、ELSIと称しますが、その研究を軸としたプログラムを実施しております。大阪大学では修士課程レベルで28名、博士課程レベルで12名、京都大学では修士課程レベルで13名、博士レベルで1名となってございます。
  また、九州大学につきましては、東アジアと地域イノベーションを領域の軸としたプログラムということです。これは大学院の基幹教育プログラムとして開講してございまして、修士レベルで17名、科目等履修生で10名というふうな在籍状況となってございます。
  また、このそれぞれの大学ですけれども、この人数につきましては、プログラムの質がそれぞれ違いますので、一概に単純な比較はできませんけれども、参考として記載させていただいてございます。
  続きまして、もとの3-1の資料に戻っていただきまして、続きまして、各拠点の連携協働体制になってございます。こちら、毎年各拠点合同でサマーキャンプを実施してございます。今年度は一橋大学が幹事拠点となりまして、9月15日から17日に宮城県において開催いたしました。こちらにつきましては、資料3-1の別紙2という3枚スライドのこの紙をごらんいただければと思います。このサマーキャンプの目的としましては、各拠点それぞれ特徴的なプログラムを実施しておりますが、その各拠点の学生・教員が一堂に会して、それぞれの取組を知るとともに、ネットワークを作るということを目的としております。特に学生に関しましては、グループワークを通じて一緒に作業することによってネットワークと相互理解を深めるということになってございます。
  今年は、テーマとしまして「科学技術イノベーション政策と震災復興」としまして、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県松島において、震災復興、一見して科学技術イノベーションとどう接続点があるのかと言われる可能性もありますけれども、実際その中で科学技術が重要な役割を果たす場面もありますので、そういったテーマでグループワークを行いました。
  1枚めくっていただきまして、最初に各拠点の取組の理解ということで、九州大学と京都大学のそれぞれ拠点長でいらっしゃいます永田先生、川上先生から御講演いただくとともに、特別講演としまして、こちらは一橋大学のアレンジメントですけれども、アイリスオーヤマの大山社長にも御講演いただいてございます。
  その後、視察としまして、実際の被害状況を伺うようなバスツアーとか、またグループワークに関連するテーマ別に分かれて、現地視察を行いました。こちらにつきましては3枚目のスライドをごらんいただければと思います。農業とか医療、医療は東北大学のメディカルメガバンク機構ですけれども、そちらの方を視察させていただきましたし、実際、産学連携のケースとか中小企業の取組などについてもお話を伺ってございます。また、仙台が近いことですから、楽天の地域に根差した取組とか、実際東日本大震災で被害を受けました松島の観光産業みたいなものもお話を伺ってございます。そういったもの、実際の現地を視察するとともに、関係者とも議論を進めながら、学生同士でディスカッションをして、最後に実際、現地の観光文化会館という場所でそれぞれのプロジェクトに関する議論の結果を発表したという形になってございます。
  そのほかですけれども、また済みません、何度も行き来して恐縮ですけれども、資料3-1にまた戻っていただきまして、このほか、拠点間では、コアカリキュラムや行政官短期研修などの開発にも取り組んでございます。コアカリキュラムにつきましては、この後の俯瞰(ふかん)・構造化の議論とも関連しますので、そちらの方で詳細を説明させていただきますけれども、本日の午前中にも各拠点の関係者及び関係機関の関係者で集まりまして、政策のための科学においてどういった知識体系を構築して教えていくべきかというような議論を先ほど行ってございます。
  また、現役行政官や実務家を対象とした短期研修を文部科学省と一緒に共同で企画しておりまして、若手行政官とか科学技術担当部局に初めて着任された方を対象としましたセミナーを当SciREXセンターとNISTEPさんとの共同主催で開催してございます。昨年度も実際は各拠点とも共同して実施しておりますが、今年は2回開催しております。まずそもそも科学技術政策とはどういうものかというようなものに関する講義とか、あと、いろいろ科学技術に関わるような、先ほどもいろいろデータや指標の話がございましたけれども、そういったデータや指標はどういうものがあるのか、それをどう読み込むのか、そこから現在の、日本の科学技術イノベーションの状況というのはどういうふうに考えることができるのかということに関して講習を行いました。これは各回20名程度参加していただきまして、文部科学省に限らず、科学技術に関係するような部局の方や省庁の方にも来ていただいてございます。
  また、そのほかですけれども、実際当SciREXセンターにおいて、インターンシップとしまして、各拠点大学とかその他拠点に限らず関係する大学の大学院生を中心としまして学生を受け入れておりまして、実際の研究プロジェクトに参画していただいたりしております。今年度の実績をこちらの方には記載させていただいております。
  また、活動内容、研究成果の情報発信ですけれども、SciREX事業のポータルサイトを運用するとともに、お手元にございます、このクリ色のパンフレットがございますが、このような機関誌を四半期に1回発行してございます。ここで科学技術イノベーションに関わるような省庁の方との問題意識を聞き出すような座談会とか、SciREX事業の各種成果の発信、人材育成拠点の取組の紹介などを継続して実施してございます。
  また、多様な関係者が相互に連携する場としまして、SciREXセミナーを開催しております。今年度の実績については、別紙3に記載してございます。SciREXの様々な取組を御紹介するとともに、また今年からは、少し長期的な視点での、今日本の置かれている状況や世界の状況をちょっと引いた形で見ているような変革期の科学技術イノベーション政策というようなシリーズも別途企画しております。これまでの中では、グローバリズムと「価値」の変容とか、人口構造の変化、また労働市場のパラダイムシフトというようなテーマでお話を頂いてございます。
  裏の方に行っていただきまして、来年の1月24日から25日にかけまして、当センターが主催し、各関係機関・拠点と共催する形で、科学技術イノベーション政策のための科学オープンフォーラムを開催する予定になってございます。こちらはお手元のところにこういうカラーのパンフレットがあるかと思いますけれども、今年は、「エビデンスから考える未来社会の戦略とシナリオ」という形で題して開催する予定になってございます。
  まず第1部、初日ですけれども、これは「未来社会に向けた日本の科学技術イノベーション政策の課題と戦略・シナリオ」と題してございます。先ほどSciREXセミナーの方でも御紹介しましたけれども、やはり人口構造とか、グローバリズム、科学技術自体の変容みたいな、日本社会がいろいろ大きな構造変化を迎える中で、どういった未来社会を描いて、それをエビデンスに基づいてどう進めていくのか、政策をどう進めていくのかという観点で広く議論する形にしたいと考えてございます。
  基調講演としましては、本学学長であり、当センターのセンター長であります白石隆から基調講演を1題させていただくとともに、また、外務大臣の科学技術顧問でいらっしゃいます岸先生からもお話しいただく予定になってございます。また、特別講演としまして、つい最近今国会において官民データ利用推進基本法が成立しましたけれども、そういった法律の推進に関わってこられました福田峰之衆議院議員からもお話しいただく予定になってございます。また、その後、全体セッションでは、各府省における未来ビジョンの構築の取組などをそれぞれ御紹介いただくというふうに予定してございます。
  また、第2部、2日目になりますけれども、これはSciREXの各プロジェクトや機関が取り組まれている活動を紹介するとともに、実際はただ単に研究発表というよりは、政策的な議論を引き起こすような形でのセッション構成で考えてございます。
  という取組をさせていただいておりますが、そのほかに、もう一度資料3-1に戻っていきますと、こういったアウトリーチなども今、積極的に仕掛けているところですけれども、拠点間の着実な交流も実施してございます。SciREX交流研究会ということで、まさに研究面での実際どういう取組を今やっているか、どういう課題があるかということを相互に理解するような研究会、地道な形ではございますけれども、研究会を持ち回りで開催しているということになってございます。
  済みません、長くなりましたが、以上であります。

【黒田主査】
  どうもありがとうございました。

【橋本室長】
  それでは、先ほども申し上げました、重点課題に基づくプロジェクト一覧については、A3の資料3-2に記載させていただいております。これも重点課題のAのグループ、重点課題のBのグループに分かれておりまして、Aグループは基本的にSciREXセンターが中心になるもの、それで、Bの課題が各大学拠点中心になるものでございます。
  基本的に、それぞれの重点課題、重点取組分野にひも付けられた形で研究課題が走っております。例えば重点課題のA-1でありますと、これは黒田先生が中心にされておりますけれども、経済社会的効果測定指標をどうやって開発していくかということでありますでしょうし、あと、有本先生のところの政策のモニタリングと改善、そういったものに対しての指標をどう開発していくか。
  あるいは、科学技術イノベーションと社会に関する測定をする方法、それはどうやっていくのか。あるいは、国家的な課題、そういったものについてどう取り組んでいくかというのが、これが重点課題A-4です。
  重点課題3ですけれども、これは上山先生及び有本先生が中心になって、大学の機能強化、そういった中でどういった形で制度的な課題を見つけていって、それを改善していくかというような形のプロジェクトです。更に、重点課題のA-5でございますけれども、これは政策形成プロセスの改善ということで、例えば医療情報の共有に向けた政策形成過程の研究とか、対話型技法とシステムの研究ということで、各プロジェクトが走っているところでございます。
  一方、重点課題のB-1からB-4までというのは、もう少し個別具体的な課題になっております。例えばB-1でございますけれども、これは超スマート社会が実現するというときに向けて、例えば社会的な課題、これは当然、超スマート社会となりますと、やっぱりプライバシーの問題とか、あるいは過去のそういう事例がどうなっているのかとか、そういったことも反映させて、実際に政策立案段階で、やるときにもうそれを事前にちゃんと分析するための支援のシステム、そういったものを開発する研究でございます。
  重点課題のB-2ですと、自治体の持つ行政健康資料の可視化とその利用に向けた基盤構築ということで、学校健診情報と母子保健情報等を可視化して、それで、例えば幼い頃の健康状態というのは、それが将来的にどういうふうにつながっていくのかというような分析の方法を行い、実際にそれによって政策にどうやって生かしていくかということを実施しております。
  また、B-3でございますけれども、これは地域イノベーション政策における政策形成立案ツールの手法の開発ということでございます。これも九州大学がRISTEXの課題で開発しましたレジデンスという、地域のイノベーションの課題というのは何があるか、そこの、どういうようなツールがあるのか、あるいはどういうようなリソースがあるのか、そういったものを一目で見ることができるというような形の、ある意味、RESASの科学技術版ということですけれども、そういったものを開発していますし、具体的にそこで出てきている、例えば地域でのイノベーション事例を今度は一橋が分析するというような流れになっています。
  最後の重点課題B-4でございますけれども、これは東京大学が中心になっておりまして、オープンサイエンスとか、利益相反マネジメント、そういうものに向けた大学の組織体制・制度、そういったものについてどういった形でそれを設計していくのか、あるいはそのためのデータベース、ケース集をどうやって構築していくのか、ガイドラインをどうやって構築していくのかというような形のプロジェクトを始めております。
  ただ、当然始まりましてまだ1年にも満たない状況ですので、まだ必ずしも具体的な成果ができたとはなかなか言えない状態ではありますけれども、先ほどもこちらのオープンフォーラムの中でも出てきておりましたけれども、一部進捗状況を御説明できるようなものが出てくるかと思います。3-2については以上でございます。
  次に、資料3-3でございます。3-3につきましては、先ほど拠点の話と重点課題の話を申し上げましたけれども、その他の公募型研究開発プログラムと俯瞰、海外情報の提供、あるいは更に、データ情報基盤整備ということでございます。公募型研究開発プログラムにつきましては、第2期の公募が行われましたので、それにつきましては資料がございますので、是非岩瀬センター長から簡単に御説明いただければ。

【岩瀬センター長】
  プレス発表の資料を配付していただいたようですが、公募型研究開発プログラムを第1期に続いて第2期もやらせていただいていて、第2期は、資料3-3、この縦の資料の一番上の方に概要の説明がありますけれども、第1期に比べて政策形成の実践に将来的につながり得るような萌芽(ほうが)的な研究開発提案を公募するという役割でやらせていただいています。2期目の公募が今年度から始まっておりまして、その採択をしたところでございます。このプログラムの運営につきましては、プログラム総括として森田先生を中心にやっていただいております。
  この1ページ目にありますように、今年度、37件の応募があって、3件採択するということで結果が出たわけです。1枚めくっていただきますと、別紙1ということで採択した3件の概要を記載しております。そこにありますように、1つ目は政策過程のエビデンスの記述・解釈ということで、イノベーションを把握・理解するためのある種基本的な方法論を深めていくというもの。2つ目は、先ほどから出てきておりますが、1つの視点としてELSIということが大事だということがあるわけでございますけれども、先端生命科学についてのELSIのアプローチを対象とするもの。3つ目は、科学技術における成果の1つの先端的な分野として期待されております再生医療の普及ということについて学際的にアプローチしてみようというもの、この3点を選んでいただきました。
  2ページの下に森田先生の総評がございますけれども、後で森田先生から必要な補足をしていただいたらと思います。
  1枚めくっていただいて、37から3つを選んだということでございますけれども、そこにありますように、国立大学、公立大学等そういう機関から37出てきたものについて、書類で審査をして、面接をして、最後に3件を選ぶということで採択をし、これから基本的には3年間ということで研究を始めていただいたところでございます。
  簡単でございますが、以上です。

【黒田主査】
  どうもありがとうございました。
  森田先生は何かおっしゃることありますか。

【森田委員】
  2期目に入りましてから、1つは金額が全体として少なくなったのと、他方では、これまでのように幅広くというよりも、1つのテーマについてじっくりと御研究いただきたいという形で、先ほどありましたように9つの重点テーマを手掛かりに応募していただき、最終的にこの3つを採択いたしました。それぞれにつきましてはそこに書いてあるとおりですけれども、特徴として言いますと、お3方とも30代の研究者でいらっしゃるということで、若い方の野心的な、しかも学際的な研究が応募として出てきたと思っております。その意味で期待したいと思いますけれども、来年度はもう少し絞り込んでといいましょうか、こちらの応募要項の問題もございまして、勘違いをされて応募された方もいないわけではないので、その辺もう少し絞り込む形で是非いいものを応募していただければと思っているところでございます。

【黒田主査】
  どうもありがとうございました。

【橋本室長】
  NISTEPデータ・情報基盤の概要と活用状況について、簡単に御説明させていただきます。
  NISTEPの方のデータ・情報基盤でございますが、現在はNISTEPにつきましてはデータ・情報基盤という形で、そういったものをSciREXの事業の中でどうやって提供していくかという、そういう立場から関わっていただいているという形になっています。ただ、NISTEPのデータ自体は、SciREXについて何かの部分をやるという形だけのミシン目ではなくて、全体としてNISTEPがたくさん保有している、そういった情報基盤みたいなものをこの事業の中に活用していただいております。
  それで、NISTEPのデータ・情報基盤ですが、主なコンテンツということでございますけれども、ここにも書いてありますとおり、まず科学技術イノベーションに関する研究の基盤となるもの、それと、政策立案のためのエビデンス提供のツールとなるもの、更に、一般的なデータ・情報基盤となるものという形の整理になっています。特にNISTEPの場合、いわゆる大学・公的機関名の辞書とか、研究者名の辞書、これ、結構分析するときに、T.SatoとかTadashi Satoとか、そういうぐらいのそれがばらばらになっているとその時点で分析に物すごく大変なので、いわゆる定義付けとかそういったものをきちんとしていかなければいけない。あるいは、大学名でも、電気通信大学と書いてあるものがあれば、国立大学法人電気通信大学とこんなような形で、そこがきちんとはっきりしていないようなところ、それをやっぱり一つ一つ追っていくということが重要で、その意味で辞書名とかそういったものを使っているとか等、いろいろなそういう基盤となるところの部分をやっているものでございます。
  次の3ページ以降でございますけれども、NISTEPデータ・情報基盤を活用した所外の研究成果ということでございまして、ここにもいろいろと研究成果をたくさん書いております。例えば企業名辞書を活用ということとか、あるいは大学別のマイクロデータを活用というような形で、6つぐらい下のところに、実際に基盤を活用してやっていただきました研究成果の例が挙げられております。
  更に、4ページの方でございますけれども、例えばこれはNISTEPでも非常に大きい事業でございますけれども、サイエンスマップを発行した。それによって、どの部分の研究が今ホットなのかとか、そういったことを分析するためのツールとしても使われているものでございます。また、ここにもいろいろ書いてありますけれども、科学研究のベンチマーキング。これは大学・公的機関名の辞書を活用しまして、大学の立場からすると、その大学ベンチマーキングをされるということは、ある意味そんなに大手を振って喜ばしいことではないんですけれども、でも、やっぱり自分たちの大学の位置がどういうことがあるのかということを知るためには非常に役に立っておりまして、そういうNISTEPがそういうものを活用してこの分析をしていただいているというような話となっています。
  最後のページにございますけれども、NISTEPのデータ・情報基盤の国際的展開ということでございます。OECD/NESTIのワークショップにおきましてのいわゆるアナリシス・オブ・サイエンスと、そういったところについてのNISTEPのデータ・情報基盤の概要についてNISTEPより発表がありましたとか、あるいはOECDブルースカイ3におきましての科学・イノベーション指標フォーラムにおいて、このNISTEPデータ・情報基盤について言及をされているということでございます。
  補足はありますでしょうか。

【富澤室長】
  最後のところ、ブルースカイ3という、OECDの会議に出たのですけれども、これは、10年に1度の大きな会議でした。ありがたいことに、当研究所のデータ・情報基盤、ちょっとスライドのコピーを貼っておいたのですが、オーソリティファイルズと書いてありますけれども、要するに、いろいろなデータを使うときに、何かちゃんと基準になるものがないと使い物になりませんという文脈の中で、その例としてNISTEPのデータ・情報基盤も出てきたという、そういう認識のされ方をしているということでございます。以上です。

【黒田主査】
  どうもありがとうございました。

【川上所長】
  きょうちょうど若杉委員が先ほど御発言があったところです。いわゆる日本の研究者のパネルデータ、博士号取得者のパネルデータ、これの必要性を言われておりましたが、実はSciREXからは今年度から追い出されているんですけれども、追い出されたと同時にようやく動き始めたJGRADですが、28大学の博士に少しずつでも参加していただけるようになり、登録者については今年度30%増程度にようやくなりました。もう少し時間がかかると思いますけれども、確実に収集できるようにパネル化をしていきます。そのための工夫として、単独のデータベースだとなかなかうまくいかないものですから、リサーチマップとの連携を取ることによって、研究者としての標準的なデータベースとの連携によって活動の把握というようなところまで持っていけるように考えていきたいと思っています。もう少し時間を頂きたいと思います。

【黒田主査】
  ありがとうございました。
  それでは、引き続きまして、資料3-4でございますけれども、CRDSの方から俯瞰・構造化の取組について、よろしくお願いします。

【林フェロー】
  資料3-4をごらんください。CRDSは、GRIPSのSciREXセンターと共同で俯瞰・構造化という取組を行っています。現在SciREXは第2フェーズに入っておりますけれども、第1フェーズからの反省点として、研究コミュニティと行政コミュニティが同じ研究対象、同じ問題意識を共有していないのではないか、ずれがあるのではないかというところがありまして、それを解消する取組として俯瞰・構造化を行っております。
  次のページをめくっていただいて、これは2011年にCRDSのプロポーザルから使われている図ですけれども、3ページ目、2つの円の図は、科学技術イノベーション政策の科学、研究者のコミュニティと、それから、政策形成システムをつかさどる行政の方のシステム、その2つが独立にお互い連携し合って事業を進めていこうという共進化、共に進むと書いて共進化をしようじゃないかということがこの俯瞰・構造化の思想の中心にございます。
  めくっていただいて、俯瞰・構造化というのはどういうことかといいますと、何を研究することが必要かという問題意識とどういうふうに分析していくかということと、そして、それを実際どういうふうにデザインして政策に組み入れていくかということが大きな柱になっております。
  次のページですが、2011年、第1フェーズの最初のSciREX事業が始まった当時も、このサイエンスクエスチョンというのは話し合われておりました。大体この3つの大きなカテゴリーがあって、STI政策の社会経済的影響が1つ、政策形成プロセス及び社会との関係が1つ、STIシステムのダイナミクスが1つというふうに考えられておりましたが、実際事業が開始して実際のプログラムが走る中、俯瞰・構造化ということはもちろんですが、サイエンスクエスチョンということも余り議論されることがなくなってまいりました。
  第2フェーズに入りまして、やはりサイエンスクエスチョンというものを媒介にして、行政コミュニティと研究者コミュニティがお互い問題意識を共有することが必要じゃないかということになりまして、まずワークショップを8月に開催いたしました。こちらは、拠点大学の皆さん、それから、関係機関、そして、政策リエゾンの方々を含めまして、セミクローズのワークショップという形で、現在どういう質問に対する回答が行政の政策立案に求められているかとか、どういう質問に答える研究が必要なのかというようなことに対していろいろ意見を出していただきました。
  ページめくっていただいて、更に8月の後半にRISTEXの合宿があったのですけれども、こちらでもお時間を頂戴して、同様にサイエンスクエスチョンについて話し合いました。
  めくっていただいて、これがそれをたたき台にした図でございます。4つの大きなサイエンスクエスチョンのカテゴリーと、メタの――メタというのは全体をつかさどるマクロ的な視野ですけれども、というふうに分かれました。それで、細かい文章が書いてありますが、これはそれぞれのサイエンスクエスチョンと。
  ただ、これを見たとき、サイエンスクエスチョンが、非常に粒度が違うといいますか、大きな問題を捉えている質問もあれば、非常に局所的な質問というか対象もあるということで、もっと具体的に整理すべきではないかということで、少しずつ段階を追って区分けしていこうということで、次のページめくっていただいて、まず大きな4つのカテゴリーとメタ、マクロ的な視野ということで、第1レイヤーはこういう形になっております。それで、それぞれのカテゴリーに対しての問題意識についてまとめました。
  次をめくっていただいて、第1レイヤーの次に第2レイヤーが来ると。それぞれのカテゴリーにそれぞれの質問、サイエンスクエスチョンが付いているということです。
  更に次はもっと粒子が細かくなります。それぞれ具体的な話、具体的なターゲットについてまとめております。
  もう1つめくっていただいて12ページ。この俯瞰・構造化というのは現在、きょうの午前中も行われたのですけれども、拠点大学のそれぞれの人材育成プログラムにおけるカリキュラムのコアと連携すべきではないかという議論が出まして、実際のところ、中間評価のときにもコアカリキュラムの確立が必要であるというふうな指摘がされたことから、俯瞰・構造化をコアカリキュラムに生かしていこうという話になっております。そして、現在は、各拠点大学それぞれ行われているプログラムのシラバスを収集する等を行っております。きょうは編集委員会をして、コアカリキュラムとしてどういうふうにこの俯瞰・構造化の質問とそれぞれの拠点大学の問題意識とを接続するかというような話をしまして、また実際のハンドブック的なコアカリキュラムを作っていく第一歩を始めたわけでございます。
  次のページですが、13ページ、これは昨年度我々が行った俯瞰・構造化です。それぞれ公募の研究とか、拠点大学の取組、またNISTEPのデータ等のどういうところ、どういう分野にそれぞれの事業があるかというところの散らばりを見たものでございます。これも後々参考にしていきたいと思っています。
  めくっていただいて、14ページは今後のスケジュール。先ほども御説明ありましたけれども、1月のオープンフォーラムで更に行政の方のコミュニティの意見をこのサイエンスクエスチョンに反映させていきたいと考えております。
  最後、参考資料です。サイエンスクエスチョン、リサーチクエスチョンという考え方は、アメリカのSciSIPにもございます。ただ、SciSIPの場合はとてもストレートフォワードでありまして、イノベーションと科学を理解し、どこに投資すればいいかというのを理解し、そして、それを国家優先課題につなげていこうという、すごく明瞭(めいりょう)な戦略を持っております。
  それで、参考2は、今年度2016年の最初にNSFが発表した、NSFの公募研究がどういう散らばりで行われているかという、タブロー型の見取図でございます。いろいろな公募研究がありまして、それぞれカテゴリー分けがされているという図でございます。以上です。

【黒田主査】
  どうもありがとうございました。
  有本さん、何かありますか。

【有本副センター長】
  この問題は、繰り返し申し上げておりますけれども、もう足掛け5年、実質的には学生が入って4年、各拠点大学でずっと苦労しながら、それぞれ担当、それこそ15コマの科学政策概論とかずっとやってきたものですから、単なるワークショップを繰り返しただけじゃなくて、そういう集積を分析して、さっきのようなストラクチャーを作って。とにかくそれのコアのところを早く各拠点大学を含めて、30章ぐらいになるのではないかと思いますけれども、割り振って早く書いて、世の中に問うて、議論しながらまた改善していくというアプローチでやろうと。これ、ずっとここのアドバイザリーボードでも懸案だったと思います。

【黒田主査】
  どうもありがとうございました。ひとわたり各事業の内容についてざっと御説明いただきましたが、何か御質問ございますでしょうか。きょうは大急ぎでございますので、余り御理解いただけなかった部分もあるかもしれませんが、何かございましたら。
  どうもありがとうございました。
  今までのことで、何か御報告に御質問、ございますか。

【橋本室長】
  先ほどの重点課題に基づく取組につきましては、一つ一つの課題についてそれぞれ研究している現状を説明している資料を机上配付しておりますので、御参考までごらんいただければ。

【黒田主査】
  アドバイザリー委員会としては、先ほど申しましたように、各拠点なり各事業の進捗状況を理解しながらアドバイスをしていくということが重要な課題なわけですけれども、きょうは全体の事業、現在の進捗状況を御説明いただきましたが、次回含めて、それについてはもう一度各拠点にいろいろな形で御報告いただくと、若しくはまとめて御報告いただくことにして、そこからアドバイスを頂くということにしたいと思いますが、いかがでしょうかね。
  それで、事務局としては今年の3月から新しい体制で事業が始まったわけですけれども、基本方針というのはそのときに決めていただきました。早晩またこの第2期を評価しなければいけない時期が5年後には来るわけですけれども、その前に、基本方針にのっとって各事業がどういう目標を定めるかということを今の時点で確認をしておいた方がいいだろうということで、それに向けての事務局の考え方をまとめていただきましたので、その御報告をいただきたいと思います。

【橋本室長】
  それでは、資料4をごらんいただけますでしょうか。「SciREX事業における目標設定の在り方について(案)」でございます。まず第2期の事業の進め方につきましては、これは事業の基本方針及び重点課題を文部科学省が定めており、基本方針の中に、どういうことをやっていくのかという方針が書かれております。例えばお手元の参考資料の基本方針というところのペーパーの2ページから3ページにかけまして、事業の推進の目標を記載しております。事業の推進の目標、その中で、「上記の目的を達成するため」ということで幾つかの目標を書いておりまして、「特に具体的には、以下の目標とする」と。この1から4までの目標が全てとは言っておりませんけれども、こういった形で、少なくともSciREXの事業第2期はこういうことをやっていくというのを目標として提示しております。したがいまして、当然各拠点なり、あるいはそれぞれの機関も、この目標をある程度見据えながら自分たちの目標を立てていくというような形式になっているのが自然な流れでございます。
  それで、実際この目標に関しまして、資料4に戻りますけれども、1ポツの2ポツと書いているところの公募型研究開発研究プログラム。この公募型研究開発プログラムにつきましては、平成28年度の募集要項に、今の基本方針とともにプログラム目標が書いてありますので、基本的にこのプログラム目標を基に事業を進めていくということが今後の第2期の目標という形に合致していくのかなというふうに考えています。
  また、データ・情報基盤プログラム、これにつきましても、NISTEP独自にいわゆるSciREX事業に関しての目標設定を与えるというのではなくて、平成28年3月に出されたNISTEPの中期計画の中で、特にSciREXに関係している記載において、目標設定がなされているという整理でございます。
  基盤的研究・人材育成拠点整備事業でございますけれども、これにつきましては、そもそも採択のときに構想調書の中で目標を書いております。その構想調書は15年間の目標なので、15年の目標が基本的に大きく変わっているわけではないですけれども、一方で第2期についてこういう形で様々な環境変化もございます。そういった観点から、更に第1期の中間評価もGRIPS及び各拠点大学は頂いておりますので、それを基に目標設定をしていただいて、各年次の年次計画と併せて文部科学省に報告してもらうという形で目標設定の在り方について案を書いています。目標設定を通じて、今後、事業の進捗がどういうところまで進んでいるのかということ、更に、事業が終わりに近付いたときに、どこまでのものが達成されていて、どこまでのものが達成されていないのかを測る予定としてございます。
  2ポツですけれども、各プログラム及び事業全体の評価の方針ということでございます。先ほども申し上げましたとおり、いわゆる基盤的研究・人材育成拠点、データ・情報基盤、公募型研究開発プログラム、それぞれについてプログラムとしての評価とか、重点課題との連携状況等について評価をやっていくという形になっていくかと思います。評価に関しましては、基本方針の最後のページに、「評価の体制等については、今後検討する」と書いておりますが、この基本方針の今後検討するという部分については、なるべく近いうちに、ここの最終部分の章立ても含めて、今、評価の在り方についてというのも書かれていますけれども、そういうものを踏まえた形で評価の仕方について書き換える必要があるかと思っています。以上でございます。

【黒田主査】
  ありがとうございました。きょう御提案いただいた、まだ新しい第2期が始まってからの目標設定が確認されていないのが基盤的研究と人材育成拠点事業だと。それについては目標を設定していただいて、それを次回のアドバイザリー委員会でまた報告いただくという感じになりますか。

【橋本室長】
  そこまでできるかどうか分からないですけれども、そういう形で考えています。

【黒田主査】
  そういう形でやりたいと。

【橋本室長】
  はい。なるべく、もう既に第2期が始まっていますので、ある程度のものは作っていただく必要はあると思っています。

【黒田主査】
  分かりました。目標設定についての御提案ですけれども、よろしいでしょうか。それでは、次回以降そういう形で進めさせていただきたいと思います。次回は、先ほど申しましたように俯瞰・構造化がもう少ししっかりできると思いますので、それと併せて目標設定を議論するということでやるということですよね。
  次回以降のスケジュールについて、それでは、御説明ください。

【橋本室長】
  それでは、資料5、今後のスケジュールをごらんいただけますか。
参考までに、運営委員会の日程を併せて記載させていただいていますが、運営委員会につきましては、第4回の運営委員会を1月6日に開催させていただく予定としております。運営委員会での結果等も踏まえながら第6回を設定させていただく形になるかと思います。また、1月につきましてはオープンフォーラムがありますので、恐らくオープンフォーラムの後という形のセッティングになるのではなかろうかと思っております。
  第7回は、平成29年3月と書いていますけれども、先生方のスケジュールをお伺いしながら設定させていただきたいと考えております。また、もし可能であればということでございますけれども、先ほど事業がそもそもどれぐらい進捗しているのか、やはり各拠点から説明してもらうのが一番はっきり分かるという御指摘もございましたが、運営委員会とSciREXのアドバイザリー委員会をどこかのタイミングで合同開催することも1案として現在検討を加えております。ですので、このスケジュールはもしかしたら3月中には難しくて、4月とかそういう形になる可能性はあるかと思います。

【黒田主査】
  では、今後の予定はよろしゅうございますか。

【有本副センター長】
  ちょっとよろしいですか。ちょっと議論を聞かせていただきたかったのは、2つあるんです。若杉先生のさっきの御講演とその後の議論でもありましたけれども、組織のイノベーションです。幾ら何かいろいろなプロジェクトを作っても、プログラムを作って、それで、予算を多少増やしたところで、基本的な組織、組織のイノベーション、ファンディングのやり方から、また政策の策定決定のやり方とか、こういうやり方も含めてなんですけれども、そういうことを抜本的に、実はそれが来年の1月24、25日の、さっきから出ているオープンフォーラムで議論をしようということのメーンテーマになっています。これはもう役所が絡まないとあれなもんですから、イイノビルでやるということで、経産省とか厚労省、文科省の役人もそう、中堅・若手の方にどんどん入ってもらって議論するということをやろうと思っています。
  もう1つは、SciREXの事業の内容が工学部の授業とか理学部の授業の中にちゃんと組み込まれてやっていくという、組織のイノベーションをやる時代に来ているんじゃないかというふうに思います。今後の課題としてこの点もアドバイザリーボードで議論していただければと思います。

【黒田主査】
  ありがとうございました。大学改革ともつながっていきますね。

【有本副センター長】
  そうです。

【黒田主査】
  非常に大きな問題だと思いますので、よろしくお願いします。
  それでは、今回これで終了させていただきますが、次回は有川先生、有信先生どちらかにお話を頂きたいなと思っているのですが、少しお考えいただけますでしょうか。またよろしくお願いいたします。

【橋本室長】
  あと、先ほども申し上げました、1月24、25にイイノカンファレンスセンターでのオープンフォーラムがございますので、もしお時間がございましたら、是非ご参加いただければと思っております。以上でございます。

【黒田主査】
  それでは、どうも長時間ありがとうございました。

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(科学技術・学術政策局企画評価課)

-- 登録:平成29年02月 --