資料3 科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業 基本方針

科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業(SciREX事業)基本方針

平成28年3月31日作成
文部科学省科学技術・学術政策局

1  事業の背景及び経緯
  社会経済のグローバル化、先進諸国の少子高齢化・労働人口減少と途上国の急激な人口増加、エネルギー・水・食料等の資源の逼迫、地球環境問題、感染症・テロ問題など、複雑かつ多様な課題が顕在化し、また、潜在的な課題も想定される現代社会において、そのような課題の解決のための科学技術イノベーションへの期待が高まっている。また、限られた資源のもとで効率的に科学技術イノベーションを展開するためには、経済・社会等の状況、その課題と、そして科学技術の現状と可能性等を多面的な視点から把握・分析するとともに、客観的根拠(エビデンス)に基づいた合理的な政策形成が求められる。
  平成7年に制定された科学技術基本法の規定により策定された科学技術基本計画(以下、科学技術基本計画を「基本計画」という。)に基づき、科学技術振興のための政府研究開発投資が行われるとともに、科学技術と社会との関係が強く意識されるようになってきた。また、マーバーガー前米国大統領補佐官の提唱に基づく米国のSciSIPプログラムや欧州におけるホライゾン・スキャニング、テクノロジーアセスメント等の取組も行われてきた。
  このような背景の下、平成23年に科学技術振興機構研究開発戦略センター(以下「CRDS」という。)は、戦略プロポーザル“エビデンスに基づく政策形成のための「科学技術イノベーション政策の科学」の構築”をとりまとめるとともに、第4期基本計画において、「科学技術イノベーション政策のための科学」の推進が明記された。これらの状況を受け、平成23年度にSciREX事業が開始されたところである。
平成26年度には、SciREX事業の進展に伴い、事業全体を一層効果的かつ強力に推進する観点から行われた体制の見直しにより、中核的拠点機能を置き、その核となる科学技術イノベーション政策研究センター(以下「SciREXセンター」という。)を政策研究大学院大学に設置した。
さらに平成27年度には、SciREX事業についての中間評価が行われ、事業推進に当たっての課題も指摘された。これらの指摘を受け、平成27年12月21日に開催された「科学技術イノベーション政策のための科学推進委員会」において、「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業の今後の推進方策について」(以下「アクションプラン」という。)が定められた。
  また、平成28年1月22日に閣議決定された第5期基本計画においては、「第7章 科学技術イノベーションの推進機能の強化」において、「客観的根拠に基づく政策の企画立案、評価、政策への反映等を進めることにより、実効性のある科学技術イノベーション政策を推進していく」旨が明記され、あわせて、「第6章 科学技術イノベーションと社会の関係深化」おいて、「共創的科学技術イノベーションの推進」のためのステイクホルダーの対話・協働・共創等が示されたところである。SciREX事業は、これらに対し、科学技術・学術政策研究所(以下「NISTEP」という。)やCRDSといった公的シンクタンク等と共に、エビデンスベースの政策形成の一翼を担う責務がある。
科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業基本方針(以下「基本方針」という。)は、上記の状況を受け、平成28年度からの当面5年間をめどとした事業の実行に当たり、事業の推進方策等の基本的な方針を新たに定めるものである。

2  事業の目的及び目標
  (1)事業の目的
  本事業の推進に当たっては、科学としての「科学技術イノベーション政策のための科学」の深化と、客観的根拠に基づく政策形成の実現に向けた「政策形成プロセス」の進化が不可欠であり、両者を車の両輪として推進し、共進化を図っていく。
  「科学技術イノベーション政策のための科学」の深化に当たっては、自然科学のみならず、人文社会科学を含む幅広い研究分野の領域を超えた融合が必要であり、このため、「科学技術イノベーション政策のための科学」という新たな学際的学問分野の発展により、各分野の研究者や政策担当者など、幅広い人材が連携する「開かれた場」を構築する。これは、「政策のための科学」の科学的方法論の開発や提示等で終わるものではなく、その成果が政策形成の実践の場で活用できるものを目指す。「科学技術イノベーション政策のための科学」は、科学としての論理の構築に伴う分析的側面と、そこで得られた分析結果等を用いて科学技術イノベーション政策を形成する設計的側面の2つの側面を持っており、それらを両方行うことで、「科学技術イノベーション政策のための科学」が深化していくものであることに留意しなければならない。
  一方、「政策形成プロセス」の進化のためには、これまでの行政システムを見直すとともに、政治・行政に携わる者の意識を改革し、素養を養うことが不可欠である。
  また、政策形成に携わる者と研究者との対話を継続的に行い、双方の問題意識を共に理解し、両コミュニティが、双方の信頼関係の下、それぞれの役割や責任に応じて協働することが必要である。
  加えて、本事業の推進により得られた客観的根拠とそれに基づく政策形成プロセスの進化(知見・手法・人材等)は、社会の共有資産として、国民の政策形成への参加の基盤となることが期待される。
  なお、SciREX事業が対象としている「政策形成」の過程とは、政策の企画・立案、実施、評価とその政策への反映の全てを含むものである。

(2)事業の推進の目標
  上記の目的を達成するため、本事業は、第5期基本計画に定める科学技術イノベーション政策の実効性の確保及び第6期基本計画の検討に具体的に貢献することを基本的な目標とする。なお、科学技術イノベーション政策は、基本計画に示すように、いわゆる研究開発の推進のための政策にとどまるのではなく、経済・社会課題解決のための科学技術の貢献や、イノベーションを実現するための規制や税制などの制度改革も含むものである。
  具体的には、以下を目標とする。
  1  政策担当者と研究者間の対話の機会の拡大と、双方向のコミュニケーションによる政策形成への結実
  2  「科学技術イノベーション政策のための科学」という新たな学際的学問分野を発展・深化させ、各分野の研究者や政策担当者など、幅広い人材が連携する「開かれた場」の構築
  3  データや情報を適切に収集し、客観的根拠(エビデンス)を的確かつ適切に活用し、現実の政策形成ができる人材、研究者及びこれらを繋ぐことのできる人材の創出と、これらの人材が活躍できるキャリアパスの確立
  4  政策形成に携わる者、研究者、これらを繋ぐ者によるネットワークの構築と研究コミュニティの拡大

3  事業の基本的構成等
  (1)SciREX事業におけるプログラムの構成
  本事業の目的・目標達成のためには、客観的根拠に基づく合理的なプロセスによる政策形成の実践に資する研究開発を進めていく必要があるとともに、客観的根拠に基づく合理的なプロセスによる政策形成の基盤として、人材育成とデータ・情報基盤の確立も引き続き重要である。
本事業は、第1期から引き続き、次の3つのプログラムから構成する。なお、中核的拠点機能は、基盤的研究・人材育成拠点が行う研究活動の総体として置かれているものである。
  ○基盤的研究・人材育成拠点(中核的拠点機能を含む)(実施主体:SciREXセンター及び各拠点大学)
  ○公募型研究開発プログラム(実施主体:科学技術振興機構社会技術研究開発センター(以下「RISTEX」という。)
  ○データ・情報基盤(実施主体:NISTEP)

  (2)重点課題の設定による拠点間・機関間の連携強化と政策形成への貢献
  平成27年度に実施された中間評価において、個々のプログラムの成果をつなぎ、システムとしての成果を創出し、実際の政策形成に結び付けるためには、各拠点や関係機関等の連携をさらに強化する必要があり、このためには、中核的拠点機能の一層の充実・強化に努めるべきであると指摘された。また、政策形成に具体的貢献できるような成果の創出のため、生きた政策課題に積極的に取り組むことなども期待されているところである。
  このため、各拠点・関係機関が連携して取り組む共通の課題である重点課題を設定し、それに基づいて、より一層の連携強化と政策形成の実践のための研究開発を進めていくこととする。重点課題に基づく取組に当たっては、SciREXセンターが中心となり、各拠点やRISTEXが連携して研究開発を進めるとともに、NISTEPやCRDSも、それぞれの持つデータ・情報や知見・人材を活かして積極的にこれに関わり、貢献することが求められる。
  具体的な重点課題については、文部科学省が別途定めることとするが、その内容については、政策担当者側のニーズを十分踏まえると同時に、研究者側のシーズも重視することが必要である。このため、重点課題の設定に当たっては、政策担当者や研究者との十分な議論を経ることが重要である。
  重点課題の設定期間は3年間を基本とするが、重点課題に基づく取組の進捗状況や評価等を踏まえ、適宜見直しを行うこととする。
  なお、連携については、SciREX事業の実施者のみに限ることなく、ネットワークを広げていくことにも留意すべきである。

4  事業推進にあたっての指針
  (1)透明性の確保、国民への説明責任等
  経済・社会の大変革時代と国内外の課題の複雑化・多様化という状況の中で、科学技術イノベーション政策の推進に当たっては、第5期基本計画で述べられているように、これまで以上に、「先見性と戦略性」、「多様性と柔軟性」を持つ必要がある。限られた資源をより効率的に活用しながら、科学技術イノベーション政策を展開・推進し、複雑化・多様化する社会の課題を克服するためには、これらの課題の正確な把握とそれにふさわしい解決方法、さらには、その解決方法を支える基盤の在り方まで、様々な観点からの検討がなされなければならない。その上で、客観的根拠(エビデンス)に基づき、合理的なプロセスにより政策を形成することが求められている。資源的な制約の下で、客観的根拠に基づき効果的に問題解決に向かう政策選択が必要であり、かつ、政策の内容が客観的根拠を必要とするばかりでなく、政策形成のプロセスもまた合理性を備えたものでなければならない。
  「未来への投資」である科学技術イノベーション政策に関しては、様々な分野からのアプローチにより、科学技術とイノベーションの関係やそのプロセスに対する理解を深め、経済・社会への影響を包括的に可視化していくことが重要であり、その結果を基に、社会との対話を進めていかなければならない。さらには、これらの成果を踏まえ政策形成の実践の場に適用する手法を確立することにより、政策形成の在り方を改善し、政策形成における透明性を確保することで、国民への説明責任を果たす必要がある。これらについても、本事業の推進により達成されるべきものである。
また、エビデンスベースの政策形成を進める際に、ビッグデータの利活用をはじめとした科学技術の発展等により、エビデンスや「政策のための科学」の在り方、さらには政策形成の手法そのものが変化しうることにも留意すべきであり、そのような新たな研究や政策形成にも果敢にチャレンジしていくことも必要である。

  (2)適切なマイルストーンの設定と事業の実施
  SciREX事業の平成28年度からの開始に当たっては、スケジュールを見据えて、適時適切に事業を推進していくことが重要である。SciREX事業は第5期基本計画の実効性の確保に資する取組や第6期基本計画のためのエビデンス提供などの貢献が期待されている。したがって、科学としての「政策のための科学」の内容を深化させつつ、より現実の政策形成を見据えた成果の創出をするため、事業の目標の達成に向けた適切なマイルストーンを設定し事業を推進することが必要である。
  重点課題に基づくプロジェクトに当たっては、3年を目処として、マイルストーンを設定することとする。

4  事業全体の運営体制
  客観的根拠に基づく科学技術イノベーション政策の形成を実現するため、文部科学省は、事業の運営管理に積極的な役割を果たすとともに、本事業による成果を積極的に活用し、あわせて政府全体の政策形成に寄与することを目指す。
事業の方向性の検討等については、アクションプランに基づき別途設置された「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』アドバイザリー委員会」(以下「アドバイザリー委員会」という。)が行う。
  また、事業の具体的な実施内容の調整等については、同じくアクションプランに基づき設置する「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業運営委員会」(以下「運営委員会」という。)が行う。運営委員会の統括の下、各プログラム等を推進していく。
  事業全体の俯瞰等については、従前のとおり、CRDSが実施することとする。

  (1)文部科学省
  事業担当部局として、事業全体の設計・執行を担う。事業が適切に遂行されるよう、基本的な事業方針や事業の課題等を定め、運営委員会への基本方針及び重点課題の提示等を行う。また、事業推進担当部署である科学技術・学術政策局企画評価課政策科学推進室は事業が適切に推進されるよう、省内や関係機関との各種調整を行う。具体的には、文部科学省内外の政策担当部署と連携した政策課題の抽出、本事業で得られた研究成果等の整理、担当部署に対する成果利用の働きかけなどを行う。

  (2)科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」アドバイザリー委員会
  SciREX事業の実施に当たり、事業の方向性の検討等を行うため、アドバイザリー委員会を設置する。また、アドバイザリー委員会の広範かつ多面的議論を促進するため、各拠点や各関係機関のみならず、外部の有識者等から幅広く意見を聴取するとともに、現場の政策担当者や研究者等とも積極的に議論を行い、「政策のための科学」と「政策形成プロセス」の共進化に資する議論を深めるものとする。委員会の具体的な検討事項は以下のとおりである。
  a)「政策のための科学」と「政策形成」の共進化の方向性や方法論
  b)「科学技術イノベーション政策のための科学」の「科学」の在り方
  c)政策形成プロセスの進化の在り方
  d)科学技術イノベーション政策の哲学的・歴史的背景とその将来像
  e)海外の類似の取組等と比較した、日本の取組の在り方
  f)本事業の推進による、中長期的な将来像
  議論の結果については、随時、事業全体の方向性に関する意見としてとりまとめる。文部科学省は、本事業の執行に当たりこれを尊重し、また、政策形成プロセスの進化に役立てていかなければならない。あわせて、事業を実施する各拠点や関係機関についても、アドバイザリー委員会の意見を活かしながら、それぞれの取組を推進すべきである。

  (3)科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業運営委員会
  SciREX事業を実施する各拠点・関係機関の実務責任者からなる運営委員会を設置し、事業の実施内容の調整や追跡調査等を行う。運営委員会の事務局については、文部科学省科学技術・学術政策局企画評価課政策科学推進室とSciREXセンターが共同で行う。
運営委員会では、文部科学省が定めた基本方針や重点課題に基づいて、各拠点・関係機関の取組や役割分担の検討・調整を行う。また、SciREX事業全体、特に、重点課題に基づくプロジェクト(後述のとおり)についての情報共有及びフォローアップ等を行う。
アドバイザリー委員会とは、双方の委員会で行われる議論について情報共有を図り、事業全体の方向性と個別の課題の進捗状況に齟齬がないよう適切に連携を図る。

  (4)CRDS
  CRDS は内外の動向調査を行うことなどにより、「政策のための科学」の俯瞰に取り組む。これらと併せ、必要に応じ、自らが行っている各種活動の情報について、アドバイザリー委員会や運営委員会における情報提供を行う。

5  各プログラムの推進体制
  個別のプログラムの詳細については以下のとおりとするが、SciREXセンターを中心に、それぞれを連携させて実行することが必要不可欠である。具体的な連携の在り方については、次節に記載する。
  なお、それぞれのプログラムについては、事業全体の中間評価に先立ち、外部委員による評価を受けており、そこにおいて課題等の指摘がされている。今後の事業実行に当たって、各実施主体は、当該指摘事項に留意し、必要に応じて改善を図らなければならない。

  (1)基盤的研究・人材育成拠点
   1  中核的拠点機能
  基盤的研究・人材育成拠点が行う研究活動の総体として中核的拠点機能を置く。SciREXセンターは、中核的拠点機能の中心的役割を担う機関として位置づけられる。SciREXセンターには、SciREX事業のネットワークの形成や成果の政策形成への実装のため、中核として橋渡しの機能が求められている。SciREXセンター及び各拠点は、SciREXセンターが中心となって、重点課題に基づき、政策形成の実践に資する具体的な成果の創出を目指した実践的な研究を進める。
  また、SciREXセンターは、重点課題に基づくプロジェクトの成果を最大化するために、SciREXセンターが自ら主体となって行うプロジェクトと拠点間連携プロジェクト、公募型研究開発プロジェクトとの間の調整を図るとともに、事業全体の成果の発信と、関係者が議論する場の設定を行うこととする。
  なお、研究活動と政策形成との橋渡しのため、SciREXセンターは、行政経験のある者からなるSciREXセンターの政策リエゾンネットワークを活用し、研究活動と実際の科学技術イノベーション政策形成の現場とのつなぎを支援することとする。
  また、中核的拠点機能を構成する各拠点は、それぞれが担当する重点課題に基づく拠点間連携プロジェクトを主体的に実施する。研究プロジェクトの実施に於いては、SciREXセンターを通じてだけでなく、自らが主体的に成果の普及・展開に取り組むとともに、当該研究分野の発展と関係者のネットワーク拡大に努める。
  2  基盤的研究・人材育成拠点
  基盤的研究・人材育成拠点については、平成23年度に「総合拠点」(政策研究大学院大学)及び「領域開拓拠点」(東京大学、一橋大学、大阪大学/京都大学、九州大学)を設置し、客観的根拠に基づく政策形成に携わる人材や、「科学技術イノベーション政策のための科学」という新たな研究領域の発展の担い手となる人材、政策と研究をつなぐ人材を育成するとともに、関係する基盤的研究を推進するための国際的な水準の研究・人材育成拠点として、それぞれが基盤的研究・人材育成を進めてきており、引き続き基盤的研究及び人材育成を行う。
  a)総合拠点:総合拠点として、教育プログラムを実施するとともに基盤的研究を実施。また、基盤的研究・人材育成拠点整備事業の主導及び、領域開拓拠点を牽引しつつ、取りまとめ機関として総合調整。
  b)領域開拓拠点:領域開拓拠点として、各大学の特性を活かして、教育プログラムを実施するとともに基盤的研究を実施。

  (2)公募型研究開発プログラム
  RISTEXを事業主体とし、客観的根拠に基づく科学技術イノベーション政策の形成に寄与するため、重点課題に基づき、新たな指標や手法等の開発のための研究開発を公募により推進する。当該研究開発においては、政策形成の実践に将来的につながりうる成果の創出を目指すものとする。
プログラムの実施に当たっては、個々の研究開発プロジェクトを通じて重点課題の推進に資すること、公募を通じて「科学技術イノベーション政策のための科学」に関わる新たな研究人材の発掘と人材ネットワークの拡大に資することを目標とする。
また、研究開発の推進に当たっては、SciREXセンターと連携して進めていく。

  (3)データ・情報基盤
  NISTEPを中心に、政策形成の実践の場と、本事業を中心とした調査分析や研究に活用されるよう、必要なデータ・情報を体系的かつ継続的に蓄積し、データ・情報基盤を構築する。整備されたデータ・情報は、統計データを含む分析対象としての一次データ(特許、論文、人材、予算等)のほか、それを分析した結果の論文、提言、行政における審議会報告書、調査報告書など多岐にわたる。
本プログラムで得られたデータを社会の共有資産である既存のデータ・情報基盤に加えるとともに、それらを体系的かつ継続的に整備・利用できる環境を構築する。「政策のための科学」と「政策形成プロセス」の共進化の基盤として、情報へのアクセスが容易となるようなデータベース等の構築を目指すとともに、関係機関への積極的な提供等に努める。

6  連携のための取組
  SciREXセンターは、ネットワークの形成や成果の政策形成への橋渡しの中核として一層機能することが求められており、SciREXセンターが中心となって、各拠点・関係機関が連携することが必要である。

  (1)研究開発における連携
  平成28年度からは、重点課題に基づいた研究開発(SciREXセンターが自ら主体となって行うプロジェクト、拠点間連携プロジェクト、公募型研究開発プロジェクト)を推進する。SciREXセンターが自ら主体となって行うプロジェクトと拠点間連携プロジェクトについては、政策形成の実践につながる具体的な成果の創出を目指すものとし、一方で、公募型研究開発プロジェクトについては、それらよりも萌芽的な、政策形成の実践に将来的につながりうる成果の創出を目指すものとする。
  また、NISTEPも、積極的にこれらに協力し、SciREX事業全体としての連携を図らなければならない。NISTEPは、国内外のデータベース等情報、研究所の活動により得られた知見、人的ネットワーク等に関して、重点課題に基づくプロジェクトへの情報提供等を行うとともに、可能であれば、プロジェクトの実施者として関与する。これに当たっては、SciREX事業担当部門以外のNISTEP内の研究部門とのコラボレーションも積極的に進める。併せて、科学技術指標等に携わる専門的な機関の立場から、他機関のデータソースとの連携・接続を図り、データ・情報等に関する助言も行う。
各プロジェクトの設計・実施を通じた各拠点・関係機関の連携は、SciREXセンターが中心となって進め、政策担当者との連携も密に行う。また、SciREXセンターは重点課題に基づいて進められる各拠点・関係機関の取組を把握し、それぞれの情報共有が十分図られるよう環境整備を図る。

  (2)人材育成における連携
  人材育成についても、各拠点のネットワークの強化を図り、連携して進めていくことが必要である。また、平成27年度に実施された中間評価においては、人材育成を進めていくに当たって、「科学技術イノベーション政策のための科学」という学問分野やコアカリキュラムの確立が必要であることが指摘されている。平成27年度においては、文部科学省内の研修に協力する過程を通じて、政策当局の人材育成に関するニーズの把握を行ったところであるが、これらを踏まえ、総合拠点が中心となって、全拠点協力の下で、コアカリキュラムの検討を進め、早期の確立を目指す。これに当たっては、各拠点のみならず、関係機関も協力することが必要である。

7  事業の評価
  本事業では、例えば基盤的研究・人材育成拠点について最長15年の長期間にわたる支援を想定しており、事業全体の工程管理の観点から評価時期、評価の仕組みや評価体制等について検討する必要がある。平成23年度から27年度の5年間については、既に平成27年度に、本事業の進捗確認及び今後の一層の推進に向けての内容の改善を目的とした中間評価を実施したところである。平成28年度以降の事業についても、以下のように中間評価を実施していく。
  ○平成28年度以降の事業の推進についても、5年間のうちの適切な時期に外部委員による中間評価を実施する。
  ○評価委員会の体制等については、今後検討する。
  ○各プログラムについての評価と、事業全体のついての評価を併せて実施する。
  ○評価に当たっては、基本方針や重点課題に定められた事項の達成状況等を踏まえることとする。

お問合せ先

科学技術・学術政策局企画評価課

(科学技術・学術政策局企画評価課)