次世代放射光施設検討ワーキンググループ(第6回) 議事録

1.日時

平成26年12月16日(火曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 3階 特別第2会議室

3.議題

  1. 次世代放射光施設のあり方について
  2. その他

4.議事録

【高原主査】  それでは、定刻になりましたので、第6回次世代放射光施設検討ワーキンググループを始めさせていただきます。お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。

 今回は、上村委員、北川委員、菅原委員、廣瀨委員、渡邊委員が御欠席との連絡を受けております。それではまず、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【岡村補佐】  では、本日はどうぞよろしくお願いいたします。座って失礼させていただきます。

 お手元の資料を御確認ください。まずドッチファイルで、過去5回の会議資料及び各施設の運転時間や人員情報について補足する「日本の主な放射光施設 基礎資料」を御用意してございます。こちらも議論にあたって御活用ください。

 資料1ですが、前回会議の議事録でございます。委員の皆様には既に御確認いただいているものですけれども、この議事録自体公開資料となりますので、反映漏れなどございましたら、本日の会議終了時までに事務局までお知らせください。資料2は、本日の委員プレゼン内容の補足資料でございます。また、資料3ですけれども、今後のワーキンググループの開催予定に関する資料です。こちら、後ほどの議題2の中で御説明させていただきます。

 以上でございますが、何か資料の欠落などございますか。もしございましたら、事務局までお問い合わせ願います。

【高原主査】  よろしいでしょうか。

 それでは、本日の議題に入りたいと思います。本ワーキンググループとしては、次世代放射光施設に求められる性能・機能を幅広く議論することが主な目的となっております。本日は是非、各分野のサイエンスを深化させるためにはどのような光が必要かといった点につきまして、第3回のワーキンググループにて配付しました「今後の次世代放射光施設検討WGにおける議論の観点について」を適宜御参考いただき、活発に御議論いただければと思います。

 まず議題1ですが、本日は、内海委員、それから、曽我委員、小松委員に発表をお願いしております。委員の皆様には、今後取り組むべき研究課題について、それから、次世代放射光施設に期待する貢献について、次世代放射光施設に期待する運営の在り方についての3項目についてプレゼンを行っていただきます。

 プレゼンごとに15分程度で説明時間を設けまして、10分程度質疑応答を行いたいと思います。また、3人のプレゼン終了後、最後に全体の意見交換として30分から40分程度議論をしたいと思います。

 それではまず、内海委員より御説明をお願いいたします。

【内海委員】  ありがとうございます。原子力機構の量子ビーム応用研究センターにおります内海でございます。私のバックグラウンドは物質材料科学でございまして地球惑星科学の分野にも友達がおります。この委員会で物質科学、地球惑星科学のお話を既にたくさんの委員の先生方がされておりまして、もう最後の方になってくると話すことが何もないという状況になっております。それで、どうしようかなと思ったのですが、原子力機構という組織に所属している立場で、JAEAらしいお話を少しさせていただいた後、次世代放射光で期待される組織や制度のことについて、J-PARCを例にして、今後こういうことが望まれるというようなお話をさせていただきたいと思います。

 最初に、福島原発事故の対処に関わる研究に放射光がいかに使われているかという御紹介をしたいと思います。これはJAEAだけではなくて、ここに書かせていただきましたように非常にたくさんの研究機関、大学の方に参加していただいてやっている研究でございます。実を言いますと、私自身は直接コミットしておらず、特に矢板というリーダーが中核となって精力的に進めている内容でございます。

 これはSPring-8とPFのビームラインマップですが、SPring-8は、理研と原研が共同で建設をしたという歴史がございます。そんなことあったの? 原研がやっていたの? と、もうほとんど忘れられているかもしれませんが。 SPring-8の経営から撤退した後も、JAEAは4本の専用ビームラインを持って研究を進めております。また、フォトンファクトリーにも、これは決して原研ビームラインというわけではないのですが、いろいろな過去の経緯を反映して、27番のビームラインの運営・利用者支援に対してかなり強くコミットしてお手伝いさせていただいているという、そういう状況でございます。現在、SPring-8には、片山副センター長をヘッドとして40名ぐらいの研究員がJAEAの職員としております。

 まず福島の環境回復、いわゆる除染のお話です。福島の除染は大概終わってしまってもう何もすることがないのではないかというふうに思われる方がおられるかもしれませんが、決してそんなことはございません。御存じのように、セシウムによる土壌汚染による空間線量を下げるために表面土壌のはく離が大量に行われて、今、これが仮置場に置かれています。これを今後、中間貯蔵施設で保管した後、30年後に最終処分をするということになっているわけです。

 この中で、果たして中間貯蔵施設で汚染土壌を本当に安定的に貯蔵できるのかとか、30年後に今度は最終処分場へ持っていかないといけないのですが、そのときに今の体積のまま最終処分場へ持っていくわけにいきませんので、これをいかにして減容化するかというのが今の喫緊の課題になっています。そのために、粘土鉱物に対してセシウムがどういうふうに吸着しているかとか粘土吸着種の同定とか、セシウムの選択性、セシウムの取り込みモデルなどの基本的な情報がまだまだ不足しており、これらの基礎的な研究が是非とも必要です。

 最初に、これは非常に分かりやすい実験なのですが、福島の飯館村の山林から汚染された土をとってきまして、それをイメージングプレートの上にパラパラとばらまいて、放射性セシウムに侵されている粒がどれであるのかというのを調べた研究でございます。イメージングプレートの上に粒をのせて、どこが感光するかということを調べると、このように実際には2万粒の試料のうちわずか15粒にしか感光するものがない。つまり、セシウムが土壌に均一的に含まれているのではなくて、かなり選択的に含まれているのだということが分かったわけです。

 この感光した粒子をSEMやいろいろなもので調べると、風化雲母(うんも)、花こう岩の中に黒雲母というのが含まれていますが、その黒雲母が風化されてできたバーミキュライトと言われる名前の鉱物なのですが、に非常にたくさんのセシウムが選択的に取り込まれているということが分かってきました。ですから上手に15粒だけを取り出すことができれば、極めて効率的に減容ができるということでございます。

 これは放射光を使って、風化雲母(うんも)の中にセシウムがどういうふうに取り込まれていくかということをいろいろな手段を駆使して調べた結果のひとつでございます。雲母(うんも)というのは、皆さんよく御存じのとおりぺらぺらの層状物質です。その層状物質の層間にセシウムが取り込まれていくというイメージです。これはセシウム周りのXAFSのデータです。いろいろな粘土鉱物に対してXAFSの実験をやった結果、セシウムの吸着サイトとして、粘土表面にくっつく場合、端面にくっつく場合、層間に入っていく場合、端のほつれたここら辺のところに付く場合と、四つのサイトがあるということが分かっています。それで、層間に入っているセシウムというのは、ファンデルワールス力で弱く母相とつながっているのではなく、入ってしまうと酸素との間で非常に強固な共有結合を作り、いったん中に入ってしまうとなかなか出てこられない、というようなことが明らかになってきました。 こちらは、XAFSを時分割で取ったデータです。下から順番に時間変化を示していますが、この濃くなっているところがスペクトルの強いところを表しており、これをモデルで示したものがこちらです。もともとの雲母(うんも)の層間には天然のカリウムがたくさんこういうふうに入っています。それが風化されるに伴って、水和されたマグネシウムが、ここ、膨潤層の中に入ってきます。これが天然の風化雲母(うんも)、バーミキュライトというものです。ここに水と一緒にセシウムを置きますと、セシウムイオンは水構造を破壊する特性を持っているので、この膨潤層の水を破壊して、セシウムがどんどん中に入っていく。その結果、膨潤層はどんどん脱水されて、セシウムが入ったあと最後はファスナーが締まるように強固に閉まってしまいます。

 このような基本的なデータは、データが取れましたから面白いですねというだけではなくて、福島での減容化処理にいろいろな面で役立っています。一つは、先ほど申し上げましたように、土をより分けることによって、セシウムが含まれているものとそうでないものに分ける作業。実際には土砂をこのような湿式や乾式やいろいろな方法で分級することで、セシウムの含まれているもの、含まれていないものを粒径などで分類することができるようになってきており、減容化のための効率的な分級試験が今も飯館村で行われている。こういう実地のところにも、放射光を使った基礎的な解析データが非常に有益であるということでございます。

 こちらの方は、実際に入ってしまったものをどういうふうに取り出すかということに関する研究です。これは粘土中のイオンの拡散スピードを調べたものですが、イオンの中に水と一緒に入ってしまうと、セシウムはものすごいスピードで中に拡散して入っていくということが分かっています。また、これは非常に最近の研究結果ですが、ある種のアルカリのイオンを含んだ溶液にひたすことによって、粘土鉱物中に入ったセシウムを、ここの蓋をこじ開けて外に追い出すことができるということもわかってきました。これも、放射光をツールにした基礎的な研究が極めて重要な貢献をしているという例でございます。

 ここまでは福島の環境回復のお話でしたが、今度は原発の廃炉についてのお話でございます。御存じのように、福島の第一原発1号機から3号機は今後解体をしていかないといけないわけですが、その中で最大の問題は、いわゆる核燃料デブリと言われている原子炉燃料が溶融して原子炉構造材や制御棒とともに冷えて固まったものを、いかに安全に原子炉内から取り出すかというところにあります。

 御存じのように福島原発にはいっぱい海水が入っていますから、原子炉の燃料棒と構造材だけではなくて、ナトリウムや海水との複雑な反応が起きているだろうということが推測されるわけです。それを安全に取り出すためには、やはりこの中のものの詳細な分析を今後行っていく必要があります。

 これはスリーマイル島での事故のデブリのデータをローレンス・バークレーの研究者からお借りしてきたものです。STXM、走査透過X線電子顕微鏡によって、非常に微小元素としてこの中に含まれているキュリウムの電子状態の解析なんかもできますよという一つの例です。今後、福島原発のデブリを取り出すに当たっては、再臨界を防ぐ等の安全性確保のために、ウランやプルトニウムがどういうような形でここに含まれているかというようなことを、きちんと分析するということが必要になっていくわけです。

 原子力機構では、第一原発のある双葉町の少し南に位置する楢葉町、楢葉遠隔技術開発センターを現在、建設中でございます。ここでは、遠隔操作機器等に関する技術基盤の確立を通して廃止措置に貢献するということで、いろいろな遠隔機器、遠隔操作の技術開発を行うということになっています。先日、起工式も行われました。今後、新しい放射光利用の一つの方向性として、このような福島原発の廃炉措置の対応にも大きく貢献するということが期待されております。

 これは今、東北大学で進めておられる次世代放射光にどういうものを期待しますかというアンケートに対して、原子力機構の矢板グループが答えた回答をそのまま持ってきたものです。デブリの取り出しのために放射光を用いた様々な状態分析解析等が必要であるということが書かれています。そのために必要なエネルギー範囲として、軟X線領域からハードのX線領域まで、一般的に用いられているあらゆる放射光の解析手段が全て有効であるということでございます。

 アクチノイドのような取扱いの制約の大きい放射性核物質を含む試料というのは、安全性を考慮しますと極めて微小サンプルの分析しかできないということもあって、高輝度放射光の利用が必要になります。また、実験ステーションの特殊スペックとして、核燃料物質や放射性物質の取扱いが可能であるような少し特殊なビームラインが必要になるかもしれません。

 この図面は、前回の委員会でも雨宮先生から出された、東北大学の浜先生がSLiT-Jのビームスペックを示したものです。新光源ではどういうようなビームのスペックが必要ですかという問いに対しては、今までの委員会での議論を聞かせていただいても、私自身の経験からしても、もうかなり答えは極めてはっきりしてきたのではないかと感じております。

 一つは、今までの国内外の状況から、軟X線領域のここが今、我が国に決定的に抜けているというところで、これの必要性というのは極めて明々白々であろうと思います。一方で、この図を見ると、ハードのX線の方にも十分対応できるようなスペクトルが伸びております。実際に10keVから数十keVのオーダー、この辺りのハードX線の需要もやはり極めて高いものがあります。SPring-8やPF、PFは今後どうなるかにもよりますけれども、でさばききれない多数のハードX線の需要に対応するためにも、この辺のエネルギー領域のビームラインも必要であろうと。SLiT-Jは、その辺のかなりのところをきちっとカバーできている、非常に魅力的な光源になっているのではないかと私は考えています。

 さて、今度は制度や組織のことについて少しだけお話をさせていただきます。これは東海村にございますJ-PARCのいわゆるパルス中性子源のビームラインマップでございます。絵がいっぱい描いてあるので、放射光と比べてごちゃごちゃしているイメージがございますが、J-PARCは基本的には23本のビームラインが建設できることになっておりまして、今、数本を除いてほとんどフルオキュパイに近い状態になっています。

 J-PARCは、御存じの方多いと思いますが、JAEAとKEKの共同運営の組織になっております。共用促進法と大学共同利用の制度が同じ施設に共存することによって、非常に複雑な制度になっています。装置もいろいろで、共用ビームラインあり、専用ビームラインあり、JAEAの装置あり、KEKの装置ありと、それぞれの組織の方針に基づいた装置が存在し、非常に複雑な運営を余儀無くされています。

 そういうような状況がユーザーにとって不便にならないようにできるだけ一元化した運営をしましょうということで、これはJ-PARCの課題審査の体制表なのですけれども、ユーザーズオフィスを一つにして、ユーザーからは余り組織のばらばらさが見えないようにするなど非常に多くの苦労をしてJ-PARCは運営をしています。しかしながら実際にはこれ以外にも、それぞれのビームラインの専用部分についてはまた別の課題採択システムを持ったりしていて、全体として極めて複雑な状況になっているというのが現状でございます。

 そういう意味で私から是非ともお願いしたいのは、新しい放射光施設というのは、できるだけシンプルな組織体制や制度にしていただきたいということです。複数の組織や制度が共存すると、運営に関して非常に大きな非効率性とエネルギーロスが起きます。そういうことが今後はできれば無いようにしていただくということが重要かなと考えている次第です。

 それからもう一つ。実はこの図は出そうかどうか迷ったのですが、以前たしか阪大の北岡先生が、SPring-8は理研から出たらどうですかみたいなお話をされた記憶があるのでご紹介することにします。皆さん御承知のとおり、今、KEKがPFを持っています。それから、原子力機構が、J-PARCやレーザー施設、イオンビーム施設など様々な量子ビーム施設を持っています。また、SPring-8は理研の所有になっています。こういった大型施設は多目的のユーザーファシリティーという位置付けが強いはずなのですが、その方向性が親組織の向かっている方向性とは必ずしも一致しなくなってきているというところが最近出てきているのではないかなという気がします。

 その一番典型は原子力機構なのですが、原子力機構から、もう量子ビームは出ていけと今言われていると、そういう状況にあるわけです。似たようなことがこことここにもあるでしょうとは申し上げませんが、ロングレンジで見て、こういった大型加速器などをベースにした共用施設のコンセプト、すなわち基盤施設を有する施設者側はきちんと運転して支援をし、自らも研究をする、だたし、メインは外部利用者に開放することを目的とするユーザーファシリティーである、によって一くくりにしたような新しい制度や予算枠みたいなものがやはり必要な時期に来ているのではないかなということを最近は痛切に感じます。これらがみんな親組織から出て、別の一つの組織になりなさい、という意味ではないのですが。

 共用促進法というのは、親組織の勝手にさせないという一つの仕掛けですが、それはお金だけのお話で、人事その他についてはやはり親組織の意向に逆らえないという面があります。次世代放射光施設においては、真面目にこういうことも考えていかないといけないのではないかと。また、詳しいことは今申し上げませんが、大学共同利用の制度と共用促進法の制度、この辺についての整理と見直しというのもやはりそろそろ必要なのではないかということを思っております。

 新しいものを造る際にはどうしても予算の問題がありますので、こんなぐらいでできますよと予算をできるだけ小さく見せて、ともかく造ろう、それから、また、いろいろな組織から予算・人を集めて造りましょうということにならざるを得ないところがありますけれども、中途半端なことを作ってしまうと後々非常に苦労するというのが目に見えていますので、そこは是非とも文部科学省に頑張っていただいて、きっちりした予算確保と制度設計をしていただいて、しっかりした新しい放射光施設ができるということを切に願っております。

 これは最後の余計な漫画なのですけれども、今、物理学会の副会長をなさっている藤井保彦先生という方が常におっしゃっているコンセプトを漫画にしてきたものです。量子ビームというのはレストランと同じだよということをよくおっしゃっています。というのは何かというと、量子ビーム源あるいは放射光、それはガスコンロであり、調理器具というのが実験装置である。レストラン内部にも調理器具やガスコンロのことがよく分かったシェフはいるのだけども、やはりたくさんの優秀なシェフがよそからいろいろな食材を持ってここにやって来て、いい料理を作って国民の皆さんにサーブする。これが量子ビーム施設、放射光施設のあるべき姿だというわけです。

 そういう意味で、量子ビームレストランにはどれが欠けても駄目でして、まず、非常に性能の高い火力の強いガスバーナーが必要です。そこにやはり一流のシェフがいることが重要で、せっかくの食材を台無しにしてしまうようなことがあってはいけない。それから、やはり今の時代、料理、成果を外に見せるということは非常に大事で、それはやはりこういうミシュランのガイドブックで三ツ星をもらわないといけない。いわゆるSmall Sciences at Large Facilityのコンセプトが量子ビーム施設には全部まとまってあるんだよということを藤井先生は言っておられるわけです。

 この支配人というのは私が最近付け足したものです。先ほど申し上げましたように、優秀なシェフが非常に重要なのですけれども、シェフはわがままですから、放っておくと勝手にこのバーナーを自分が使わせろとか、この食材だけ使えればいいのだとか、そういうことを研究者は言い出すわけです。ですから、それをマネージするディレクターがやはり施設全体には必要で、それが複数の組織がまたがっていると、この支配人が3人いるともう全然統制がとれないということになります。そういった意味からもやはり最初の制度設計が極めて重要であると思っている次第です。

 最後の方は要らないお話でしたけれども、以上でございます。

【高原主査】  ありがとうございました。何か御質問等ございましたら、お願いいたします。

 尾嶋先生、お願いいたします。

【尾嶋委員】  大変分かりやすい話を頂き、ありがとうございました。特に私が興味を持ったのは、原発の廃止措置に対してどう貢献できるかという点で、これ、分析がやはり非常に重要で、放射光は、先ほどお示しになったように非常に強力なツールになるなと思っております。

 平成26年度に文科省概算要求で9億円程度の廃止措置等基盤研究・人材育成プログラムというのを走らせておりまして、拠点形成をすると書いてあります。要するに、除染と燃料デブリと大きく分けて2つが重要だと思うのですが、それには拠点を幾つか作っていく必要があるとされています。その拠点、基本的には大学が人材育成の拠点になるとは思うのですが、といっても、大学で現在、原子力をやっているところというのはかなり限られている。それに対して、人材育成という観点で原子力研究機構はどういうふうにそこに取り組まれようとされているのか、を伺いたいと思います。

 一般的に、汚染された土をもらってきて分析する、私のところにもナノビームでそれ解析してほしいという要求も来ているのですが、そういう単発的な分析じゃなくて、やはり組織的に取り組む必要があるのではないかと思っておりまして、それを長期的にどういうふうに考えていかれるのかということをお聞きしたいのです。

【内海委員】  ありがとうございます。今、原子力の分野で、まあ、原子力分野にもちろん限らないのですけれども、人材育成という言葉が極めて重要なキーワードになっております。今、JAEAにとって福島の復興及びこれからの廃止措置云々(うんぬん)のところが極めて重要なテーマであるということはもう火を見るより明らかというか、もうそういう方向に進んでおります。その中で予算措置等に関しても、原子力人材育成というのが一丁目二番地とか三番地ぐらいのところに来ている。

 ただし、難しいのは、原子力人材育成という言葉の重要性は非常によく分かるのですけれども、そのときに、皆さんがイメージしているものが結構ばらばらでして、やはりJAEAとしての最重要は、いわゆる原子力技術者。大学などであまり輩出できない、そういうところにやはりJAEAがまず一番に貢献しないといけないでしょうということだろうと思います。

 その中で、ご指摘のような仕事の分野というのはなかなか難しいところがございまして、原子力機構がもちろんコミットできる、専門性を発揮できるところもあるのですけれども、原子力機構でないとできないのですかという、微妙なところがございます。こういう両方にまたがるようなところの人材育成、それから、人材だけに限らないと思いますけれども、どこでやるのというようなことも含めて、いわゆる原子力コミュニティと科学技術一般コミュニティと別に分ける必要は全くないですけれども、あえて2色に分けるとすると、そこの両方にまたがったところでこういう仕事をやっていくというのが現実かなと思っています。

 ただ、これに関しては、新しい放射光施設が東北にできるかどうか全く存じ上げませんし、次世代放射光光源をこういう福島復興と絡めるのがいいのかという議論もありますから、必ずしもこれを前面に出すというのがいいとは私は思わないのですけれども、これは日本としてこれからやっていかないといけない極めて重要な問題だとは思っています。

【高原主査】  ありがとうございました。

 ほかにございませんでしょうか。

 北岡先生、お願いします。

【北岡委員】  スライドの10ページに、BrillianceとPhoton Energyの図がありますね。それでおっしゃる意味は、軟X線あるいは数十keVの硬X線もいけるという、最初はSLiT-Jなのでしょうか。すみません、どういう略語なのですか、SLiT-Jという。

【内海委員】  ごめんなさい、これ、すみません、勝手に持ってきてしまっていますが、これは、いいのですよね、前回も出たのでいいと思っているのですけれども、今、東北大で検討しておられるビームスペックの図面を持ってきたものだと聞いています。

【北岡委員】  いっぱいそのエネルギー領域で太い線がありますね。それはどういう?

【内海委員】  はい、それの中の、前回も出てきましたけれども、この赤のところ、これが全部SLiT-Jで達成できるという図のBrillianceだと聞いています。

【北岡委員】  それは全部そのエネルギーとBrillianceをカバーできるという意味ですか。

【内海委員】  まず基本リングがあって、一つ一つにアンジュレーターがある……。

【北岡委員】  その施設で。

【内海委員】  ええ、ビームラインごとにもちろんそれぞれ専用のアンジュレーターがあるでしょうけれども。

【北岡委員】  分かりました。

【高原主査】  前回の雨宮先生の資料にあったところですね。

【北岡委員】  そうですか。前回ちょっと欠席したので。

【高原主査】  このお手元の第5回のところに出てきている図で。

【雨宮委員】  ここに書いてあるように、東北大の浜さんから頂いたのですけれども、SLiT-Jのあれはアンジュレーターの基本波、高磁波で、その使い方であそこがカバーできるということです。

【北岡委員】  それ全部やって300億ぐらいかかるのですか。いや、僕は全く素人なので。予算規模的なものはどうなのですか。

【雨宮委員】  そういう規模だと私は聞いています。

【高原主査】  ほかにございませんでしょうか。

 最後の方の施設の在り方につきましても、何か御意見、コメント等ございましたら。

 13枚目は、これ、バーチャルな組織を作るというふうなイメージなのでしょうか。

【内海委員】  何が言いたいのと余り強く言われると困るのですけれども。それぞれの施設は今、運転費の確保にものすごく苦労されているというのが実態ではないかなと思うのです。やはり親組織の事情で運転費が削られたりするというところは何とかしていかないと、それを脱却するようなスキームがないと、今後大型施設は安定して回っていかないのではないか。私は、施設側に近い立場とユーザーの立場の両方で見ているのですけれども、今の制度の問題点のひとつはそういうところにあるかなと思います。多くの量子ビーム施設が一つの組織になったらいいと私は思いますけれども、それはそう簡単ではないですし、そういうことを目指しましょうというのは言い過ぎだと思っていますが。

【北岡委員】  いいですか、すみません。外へ出すという意味は、これは独立行政法人的なイメージですか。

【内海委員】  今、特に具体的なイメージはないです。ただ、私は独法にいる人間ですから、独立行政法人が、今度は国立研究開発法人という名前に制度設計して変わりますが、こういう大型施設は運営していくというのがやはり自然ではないかなというふうに思ってしまいますけれども。

【北岡委員】  私ら一般研究者から見ても、こういう形で統合するなり、一つの組織としてやってもらわないと、いつも言っているコストパフォーマンスをやはり国とか我々のレベルでもそれ追求しないと。民間にならえというのではないのですけれども、いかに効率よくリソースを使ってアウトプットを出すかというようなことのコストパフォーマンスをある程度考えた組織設計をやらないと、ただ造りたいだけでは駄目ではないかという気は、私は部外者なのでそういう気がしますけれども、是非ともこういうものを進めていただきたいと思います。

【高原主査】  ほかに。

 水木先生。

【水木委員】  組織に関しては全く賛成しますというか、是非そうなってほしいと思います。

 ちょっと話が戻るのですけれども、先ほど内海さんの質問からの答えとして、日本では絶対やるべきなのが例えば廃炉と言われていますけれども、これは、日本でというよりも世界全体の問題で、世界的に見て、近い将来100基以上廃炉にしないといけないような状況が来ています。それを日本から、ああいう悲しい出来事があったのをきっかけに新しい技術をどんどん出していくということが重要で、そうすることによって全世界からアプリシエートされるというか、尊敬される国になります。今やらないと駄目で、例えばフランスのSOLEILでも、あるいはアメリカのALSでも、放射光を使った廃炉の研究が進んでいって、むしろ今、日本がやらないと、また後れるというよりも、日本が尊敬される国にならない。逆に言うと、今やれば尊敬される国になれる。しかも、今、新しい放射光を造ることによって、初めからそれを設計したものが必要になってくると思うので、是非を原子力機構からその重要さをもっと声高に言ってもらわないとダメだと思いますので、よろしくお願いします。

【内海委員】  ありがとうございます。水木さんが原子力機構におられたときに頑張っていただければよかったと思っているのですけれども、でも、全くおっしゃっているとおりだと思います。事故が起きた福島原発の処理だけではなくて、世界中の原発の廃炉そのものが非常に重要なテーマであるというのは全くそのとおりで、それにコミットしなかったのは私のミスです。しかも、俗な言い方で申し訳ないですけれども、廃炉は極めて大きなビジネスになり得るものだと聞いています。

【高原主査】  ほかにございませんでしょうか。

 雨宮先生。

【雨宮委員】  今の廃炉のことに関係あるので。5番で、セシウムが2万粒のうち15粒のみと。これを選別すれば減容化できると。三桁以上コンパクトになるのは非常に画期的だと思うのですけれども、これ具体的にどういうふうに減容化するというアイデアがこの後に出されているのかちょっと関心があって。

【内海委員】  ありがとうございます。こういう基礎研究とは別に、実は現実にいろいろなことがどんどん進んでいるのですけれども、二つの方向性があります。一つは、粒を、セシウムが入っているものと入っていないものを分けましょうというお話です。それがこちら側です。先ほど言いましたように、黒雲母というのはぺらぺらの物質で、しかもミキサーみたいなもので湿式でいろいろとやって粒径で分級をすると、ある範囲の粒径のところにかなりのセシウム入りの粒が集まっていることが実際にあります。そういうメカニカルな分級をして、ここからここの範囲のところだけはよけて、あとはもう地面に戻す、実際にはそういう作業をやるのですけれども、その途中で、全部こういうような測定をしたり分析をしたりしながら、それが正しいということをバックアップしている。実際に今、ゼネコンが入ってこういうことを現実的にやり始めようとしています。こちらの方は、入っているものを強制的に取り出す方法を考えましょうという方向です。これもいろいろな研究が行われており、酸で煮るとかいろいろなことをやるのですが、土の構成元素をばらばらにしてしまったら当然セシウムは出ていくのですけれども、そうではなくて、ここの鉱物の構造は全部きちっと残したまま中のセシウムだけ取り出すことができれば一番いいわけです。そのような研究が最近進展しており、そこでも小角散乱やXAFSなどのデータが極めて効率的に使われているという例で御紹介させていただきました。

【雨宮委員】  ありがとうございます。

【高原主査】  ありがとうございました。

 それでは、時間の方も若干超過しておりますので、続きまして、曽我委員より説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【曽我委員】  第一三共の曽我でございます。よろしくお願いいたします。

 それでは、最初に、私のバックグラウンドだけお話ししますと、私は、今、研究統括部という研究のスタッフ部門におりますけれども、一昨年度までは研究の現場にいて、創薬化学の研究所におりました。でも、専門は有機化学の方でして、実際に放射光とはちょっと縁遠い感じです。使い方としては、研究所内にいる構造解析の研究者たちが放射光施設を利用して取ってきたデータを更に我々が利用してドラッグデザインに活用すると、そのような立場です。ですので、先日の上村委員のプレゼンのような専門的なお話はできませんけれども、ユーザー側の立場からお話ししたいと思います。

 まずこれが、事務局の方から示された課題として、三つほどあります。それから、あと、追加で示されたものを含め、この順番でお話ししていきたいと思います。

 最初に、今後取り組むべき研究課題についてです。私のような製薬企業の人間としましては、何といっても、世界の健康文化の向上に貢献する優れた医薬品を創製することで、使命としてはこれに尽きるかと思います。この使命を達成するために取り組むべき研究課題として何があるかということなのですけれども、実はこれはかなりいろいろと多岐にわたって課題があるわけです。本日は、放射光施設ということで、それに関連した研究課題として二つほど取り上げました。一つ目が、効果的かつ効率的なドラッグデザインができないかです。もう一つが、生物学的現象のメカニズム解析による新規創薬標的の発見に役立てられないかということです。

 特に前半の方ですけれども、御承知のように、創薬研究は成功確率が非常に低いものであります。一つの医薬品となる化合物等を見付けるために、非常に多くの化合物を合成して、試行錯誤を繰り返しているということがありますし、あとは、研究を始めてから実際に薬として製品になるまでには20年に近いような長期間が必要ということです。ここの効率の悪い部分を少しでも効率的にできないか、やみくもな試行錯誤の繰り返しから理論的な薬物設計ができないかということに取り組んできています。

 まず、効率的なドラッグデザインについてです。多くの医薬品は、大体タンパク質に結合して作用を発揮するというパターンが多いです。例えば細胞の中にはいろいろなタンパク質その他ありますけれども、その中で物質をいろいろやりとりしながら、いろいろな作用を起こすということです。例えばそのうちの一つのタンパク質にある薬のような物質が結合することによって、タンパク質の作用を抑制したり、あるいは逆に促進したりして、薬というものが作られていくと考えております。

 そのためには、標的となるようなタンパク質の結晶をとりまして、それを放射光、X線の解析を行って構造解析します。例えばここに化合物が取り込まれたようなデータが取れますと、この化合物は今ここの溝に入っていますけれども、この溝のこの辺にはまだもう少しすき間があるから、この分子をもう少しこちらの方に大きくしたら更に活性が上がるのではないかとか、そのようなことを考えながらデザインしていくということで、標的タンパク質と薬物の形の相補性を考えて、幾らかでも合理的な薬物設計ができないかということで取り組んでおります。

 これも、同じですけれども、従来は合成化学者が作った薬理活性を評価して、ここの間だけでのやりとりだったのですけれども、活性を評価すると同時に複合体などの解析を行い、それを基にした化合物のデザインをして、それを合成研究者に返す。こういうサイクルを回すことによって、幾らかでも理論的な薬物設計ができるのではないかと考えております。我々の中では、Structure Based Drug Design、SBDDという言葉を使って研究を進めております。

 もう一つは、後半の方にあった、生物学的現象のメカニズム解析による新規創薬標的の発見ということです。これには大きく期待はしているのですけれども、残念ながら弊社では今のところまだ具体的に何かやっているという形ではなくて、今後の課題になろうかと思います。ですが、例えば生きた細胞や自然状態にある生体分子の構造解明とかそういうことにまで応用ができれば、何らかの新しい創薬ターゲットなどが見付かるという、そういうことにも役立てるんではないかということで大いに期待しているところであります。

 続きまして、次世代放射光施設に期待する貢献についてというということで2点ほど挙げました。一つが、優れた医薬品を創製するためのドラッグデザインへの貢献、もう一つが、生物学的新知見や新規創薬標的の発見への貢献ということです。前半の方がメーンになるかと思いますけれども、今回はこの四つの項目を、トピックとして挙げました。

 まず一つ目は、膜タンパクのX線結晶構造解析です。従来の水に溶けているようなタンパク質と薬物の複合体構造解析は今、大分できるようになりましたけれども、それに比べて、膜に入っているタンパク質の測定というのは非常に困難で、なかなかデータが取れません。でも、そういう標的が薬の標的として多いのがまた事実であります。最近はそれでも技術の進歩によりまして、膜タンパクの解析成功例が出てきました。この技術の進歩というのは、タンパク側の試料調製の様々な工夫とともに、測定機器側の進歩と両方が相まって成功例が出てきておりますけれども、それでもまだまだ成功例は少なくていまだに困難で、やはり膜タンパクを阻害する薬にこういうものを活用するのはなかなかまだ難しいという状況です。なので、放射光施設の進歩により解析成功例が増えていくということに期待したいと思います。

 次いで、微小結晶でも可能なX線構造解析にも期待したいと思います。構造解析の成功には、どうしてもやはりある程度の大きさの結晶をとる必要があります。もちろん結晶そのものがとれない場合もあるのですけれども、とにかくまず結晶をとるということがどうしても必要になってしまうのですが、それが実際にはかなり大変な場合が多いです。こちらも技術の進歩により微小な結晶でも解析できるようにはなってきてはいますけれども、いまだに結晶がなかなかとれない、とれても本当に小さいものしかとれなくてやはり諦めざるを得ないと、そういうケースが非常に多いです。ですので、施設の進歩により、微小結晶構造の解析が当たり前にできるようになるということについても期待したいと思います。

 次が高分解能な結晶構造解析。タンパクのような複雑な分子の構造解析では、なかなかきれいなデータが取れない場合もかなりあります。特にタンパク質はコンフォメーションがかなり揺らいでいる部分がありますので、コンフォメーションの一部が確定できないケースも多いということです。それから、大きい分子の解析ですと、そこに付いている水素原子、そこまでなかなかきれいに観察できないというケースも多いです。ところが、実際には、薬物とタンパクの相互作用では水素結合を介して結合するというケースも多いので、そういうところが見えるとドラッグデザインには非常に役に立つということでして、やはりこういうことが可能になるような施設の進歩に期待しております。

 それから、最後には、ハイスループットなスクリーニングもできたらいいなということも考えています。生化学的な活性のスクリーニングでは、単純な酵素阻害活性の測定などでは、技術の進歩で、今、1日で例えば5万検体を一度にスクリーニングをすることも、特殊なケースではありますけれども、不可能ではありません。もちろんこのスクリーニングのための準備はものすごく大変なのですけれども、そういうことができています。それに比べますと、X線の構造解析は一度にたくさんの測定をすることはなかなかできません。もしハイスループットが可能になると、次にお示ししますけれども、Fragment Based Drug Discoveryのような、Fragmentの探索などもできるのではないかということに期待を寄せています。

 ちょっと補足しますと、例えばこれ、タンパク質の一部のところに入るような小さいFragment、こういうものやこういうものを見付けることができれば、例えばそれを大きい分子に発展させるとか、あるいは二つを組み合わせた分子を設計するなどして、非常に薬効の強い医薬品を見付けるということに役立てられるかと思うのですけれども、実際こういう活性の弱い小さいFragmentを見付けるというのは非常に困難です。例えば生化学的なアッセイでは、活性が弱過ぎてなかなか検出できない。検出しようと思って感度を上げると、今度はここに入っていないようなノイズの化合物をいっぱい拾ってきて、結局訳が分からなくなってしまうと、そういう問題があるわけです。

 その点、X線構造解析の場合は、活性が強かろうが、弱かろうが、ここに入っていますというデータが取れれば、それは間違いなく入っているものなので、そういうデータを利用していろいろなデザインをすることが可能になるかと思います。ただ、そのためにはたくさんの小さいFragmentをスクリーニングする必要があるので、ハイスループット化がどうしても必要になってくるということです。それができますと、今までは作った化合物の活性を見る時に解析してデザインの評価をしていたのが、構造解析を探索としても使えるようになるのではないかと思われます。

 それから、その他としては、これはかなり夢に近いような部分があるかと思うのですけれども、例えば溶液中に存在する1分子のタンパク質の構造解析ができると非常に有り難いなと。そうなれば、結晶化そのものが不要になりますし、あるいはタンパク質の多様なコンフォメーションを解析できれば、創薬デザインにおいては非常に役に立つこともあります。それから、生きた細胞や自然状態にある生体分子の測定などができれば、生物学的な新知見や新しい創薬ターゲットの発見にも非常に役立つのではないかと思います。さらに、研究機器が格段に進歩することにより、最初は全く想定していなかったいろいろな活用法が見いだされるということもあると思います。思いもかけなかった利用法が、皆さんが使うようになって、それが非常に役立ち、いずれは誰でも使うような標準的な手段になるということもあると思いますので、そういう意味でも研究機器の進歩というのはやはり大事なことではないかと思います。

 3点目として、施設に期待する運営の在り方について、担当の者からいろいろ聞いたお話をここに示します。まず1点目として、施設ごとで特徴を出して、試料に合わせて適切な施設の推薦ができるようなシステムを考えてもらいたいということです。最先端の施設では、やはりそこでなければ測定できないような試料を優先して取っていただいて、そうでないものはほかの施設に回すというような、そういうやりとりができればいいと思います。

 そのためには、もちろん逆に汎用的なビームラインの確保が必要ですし、現場でのサポート強化をお願いしたいと思います。我々の研究でも、最先端の施設はもちろん役に立ちますけれども、最先端の一歩手前、二歩手前の施設がたくさんあるということもやはり非常に重要かと思いますので、そのバランスを考慮していただければと思います。あとは、我々の研究所では放射光の専門家はいませんので、トラブルの対応はやはり専門家に支援をしていただきたいと思います。

 それから、今、非常に役立っているのですが、リモート測定の体制がもっとできればいいと思っています。実はつくばのフォトンファクトリーでは、今、リモート測定をしていまして、実際にそちらに行かなくても、会社のコンピューターから操作して、空き時間をなるべく見付けて測定するというような方法を取り入れています。更に極端な話としては、例えば会社から貸与されたパソコンを自宅に持ち帰って、深夜に起きて、すいている時間を使えます。あまりいい働き方ではないですけれども、そういうこともできると非常に時間が効率的に使えるのではないかと思います。

 それから、もう一つは、皆さん何度も話が出ていますけれども、やはり通年測定が可能な体制を作っていただきたいというのは切実な要望であります。それができないなら、せめて施設ごとの停止期間はずらしていただければという思いもあります。これは私の方から教えていただきたいことですけれども、通年測定ができないのが、予算の問題でできないのかどうか、あるいは予算があっても結局今の施設では不可能なのかどうかということについては教えていただきたいと思っています。

 それから、インターフェースの共通化など国内施設間の連携強化をお願いしたいということです。我々は今、SPring-8とフォトンファクトリーをよく使っていますけれども、この二つが結構インターフェースが違っていて、やはり使い方が全然違い、操作に慣れる必要があるそうです。もし新しいものを造るのであれば、その点も考慮していただいて、少なくともその二つのどちらかとは同じようなシステムにしていただかないとまた大変かなというのがあります。

 それから、これは、最後に、事務局の方から追加で示された議論の観点についてのコメントです。まず、次世代放射光施設についての在り方に関して、です。まず、得意とする波長領域を特化すべきかどうかということについてですが、我々製薬会社の現状としては、残念ながら硬X線のみしか使用していませんが、全体を硬X線に特化する必要はないと思われます。ただし、軟X線だけに特化されてしまうと、製薬企業としてはちょっと使い道がなくなってしまうのではないかという危惧はあります。エミッタンスについては、今と同程度が得られればいいし、あとは、先鋭的な光源を目指すべきかについては、現在の施設で安定性を確保していただけるのであれば、次世代の放射光施設は先鋭的な方向でもよろしいのではないかと思います。

 あとは、設計・整備に際して考慮すべき制約についてです。1番目については、専門的な見地ですので、私の方からは割愛させていただきます。

 グローバル化の観点から見れば、我々としては、国内の施設で取っても、国外の施設であっても、実際にはデータさえ取れれば構わないという問題があります。ですので、もし性能とか使用枠の問題で、国内でできないのであれば、我々研究者はどうしても海外の施設に流れてしまうということは十分考えられると思います。しかし、実際、日本の科学の進歩ということを考えれば、そういう研究がどんどん海外に流れてしまうのはやはりいかがなものかと思われますので、そういうことにならないためにはそれなりにやはり国内での体制、サービス面も含めて何か考えていただければなということを思います。

 あとは、金銭的、時間的なものですけれども、最後はお金のことになるかもしれないのですけれども、やはり運転時間や安定稼働の確保に予算は投入していただきたいと思います。新しい施設を造るお金でこちらができなくなるのであれば、それはやはり困るなという面もあります。一方で、新しい施設が出来上がって、それによってコストが大幅に下がる、ランニングコストが下がるということであれば、それは長い目で見れば省コスト化にもなると思いますので、その点も考えていただければなと思います。

 私の発表は以上でございます。どうもありがとうございました。

【高原主査】  ありがとうございます。

 何か御質問等ございましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。

 先ほど運転時間の件がありましたけれども、施設の方から何かコメントをお願いいたします。

【熊谷理事】  その前に質問が一つあるのですけれども、よろしいですか。

【高原主査】  どうぞ。

【熊谷理事】  2ポツの次世代放射光施設に期待する貢献についてと、優れた医薬品のところの2ポツのこの画面の真ん中に、X線構造解析は測定に時間が掛かるという指摘がありましたけれども、これを短縮するためにはどんなことができていればよろしいのかを教えていただきたいと。

【曽我委員】  私、施設についての専門性はないので具体的には何もお答えできないのですけれども、例えばここにありますように、1本のビームラインで複数試料をパラレルに測定できたりなんかできないかとか、あるいは機械の進歩によって短時間でデータが出てしまうようなことができないかというようなことを現場の意見としてよく聞いています。

【熊谷理事】  今、タンパクのビームラインで一番問題になっているのが、放射線損傷ということで、測定時間は今、非常に短いと思うのです。試料が小さくなったときに一番困るのが、X線を試料にいかに正確に当てるかという、そこに時間が掛かっているように聞いているのです。X線構造解析を数こなすためには、一体どんなことが施設としてできていればいいのかをやはり議論しておかないと、単に光を明るくすれば時間が短くなるという、そういう事情ではないような。ですので、具体的に使われる方が測定に時間が掛かってらっしゃるとしたら、どんなところに時間が掛かっているかを教えていただいた方がお互いにいい……。

【曽我委員】  そうですね、そういうことはやはり現場の人とよく話し合う機会を持っていただいて、どんどん改良できればいいかなと思います。ありがとうございます。

【熊谷理事】  それから、先ほど……。

【高原主査】  運転時間。

【熊谷理事】  運転時間でしたっけ。多分、今、建設をするような放射光施設であれば、通年運転ができるような設計思想で物を造ればいいんだと思うのですが、今までのSPring-8とか、多分PFもそうだと思うのですが、使っている機器の中で例えば高圧を扱っているものが、防じん対策をきちっとしていないとか、必ずメンテナンスで1年のうちの1箇月か2箇月間はそういう高圧の部分のメンテナンスをしないといけないと、そういうようなことがあったりするので、お金があってもあるところまでは増えない。ですが、今の段階ですと、多少、建設をするときに、例えばそういうメンテナンスを1箇月とか掛かるようなところを、きちっと対策をとったものを導入すれば、割に通年運転はできるとは思います。

 ただ、その通年運転を5年間続けろと言われると非常に困るので、それは難しい話になります。ですから、必ずバックアップシステムというか、お互いに相補的になるようなシステムがあって、例えば新幹線でも、予備車両というのは必ず持っているわけですね。利用者としてはずっと走りっ放しになっているように見えるのですが、実はそういうメンテナンスはきちっとしているという時間がある。そういうようなことがきちっとできていれば、通年運転は可能だと思います。

 それからもう一つ、通年運転をするときに、さっきお話ししたように、光の質というのか特性が同じものであれば、ずらせば皆さんは多分恩恵を受けるのだと思うのですが、ずらしたところで、使うX線の特性だとか品質が合っていない、単にずらすだけというのでは多分ユーザーの利便性にはならないと思うのです。ですから、そこら辺で、我が国の放射光施設というのは現状どういう性能を持っているのかということもきちっと整理をしないといけないのかなと私は思っています。

【曽我委員】  すみません、一つ教えていただきたいのですけれども、海外の方では通年で運転されているようなのですけれども、そこはどこが違うのでしょうか。

【熊谷理事】  通年といっても、どこかに1箇月ぐらいとか数週間ぐらいの停止期間はあると思います。ですが、もう一つは、ヨーロッパとかアメリカだと、同じような施設が複数あるので、例えばESRFが止まっても、今だとPETRA3があったりするわけですね。ですので、相補的になっていたりします。それから、DIAMONDだとか、それから、SOLEILだとか、3GeVの中型高輝度リングがヨーロッパの中にはかなりたくさんあるわけですよね。ですので、ある施設がメンテナンスで止めますよといっても、ほかのところが動いていれば、それほどユーザーには支障はない。ヨーロッパの施設をよく見ると、運転がやはりそういうふうになっているのですね。

 もう一つは、電気代が昔はヨーロッパとかアメリカは安かったというので、割に運転を続けるということが可能だった。ですから、ヨーロッパの場合は6,000時間運転しているところもかなりあるとは思います。日本の場合ちょっと電気代が高くなっているということですが、最近はヨーロッパも電気代が高いので、結構苦労しているという話は聞いています。

【高原主査】  運転時間に関しましては、1回目のときの資料の方に世界各国の運転時間と国内の運転時間・利用時間が記載されていますので、そちらもごらんいただければと思います。

 はい、村上先生。

【村上副所長】  運転時間に関して質問なのですけれども、今、日本の場合は、夏場はなかなか電気代が高くて運転できないというようなそういう問題はあるのですが、質問は、前こういう議論していたときに、たしか年間通じてやはりコンスタントに動いているというのが非常に重要だという、そういう御指摘があったかと思います。例えば1日のうちでも昼間だけ運転するとか、その代わり年間運転するとか、そこまで均一化というものは重要なのか、あるいはそこまで言わなくても、1箇月ぐらいはポツポツと休んではいいけれども、2箇月休んでは駄目だとか、そういう時間感覚を、製薬の世界ではどういう時間感覚なのかというのを教えていただければ。

【曽我委員】  今のイメージでいけば、1日のうちで止まっている時間があってもかまわないので、毎日運転してもらった方が有り難いと思います。それは間違いないと思います。いつこういう取りたいデータが出るか、結晶がとれるかというのは全く分かりませんので、やはりとれたときに見たい。でも、1時間、2時間とか半日待つのはさほど苦ではないでしょうから。そういうイメージです。

【村上副所長】  数日ぐらいの感じが。1週間待てと言われると、うーんという感じですね。

【曽我委員】  そうですね。1週間2週間待たされるのだったら、もう海外に送って取ってもらおうという話も出る可能性があります。

【熊谷理事】  すみません、先ほど、通年運転ができない理由は日本の場合はそういうお話ししましたけれども、今、ヨーロッパとかアメリカでは、日本だと高圧の部分をソリッドステート化している、半導体化していて、そういう新しい機器、装置を持ち込むことで通年化ができている部分もあります。日本でもSPring-8を例えば今のクライストロンみたいな非常に高圧のものではなくて、半導体増幅器を使うということであれば、そういう可能性は出てくると思います。ただ、リングが8GeVと非常にエネルギーが高いので、そういうパワーを半導体増幅器で全部そろえるというのはなかなか大変なことだとは思いますが、必要であればそういうことは、お金さえあればできるとは思います。

【高原主査】  ありがとうございました。

 ほかにございませんでしょうか。

 櫻井先生。

【櫻井委員】  タンパク質はやはり結晶があると非常に出ますけれども、多分もう結構限界に来ているのではないかと、私、専門外ですけれども、思っています。これは御社に言うことじゃなくて我々アカデミックサイドの話だと思いますけれども、結晶をしなくてちゃんと構造が分かるということを、いわゆる発想の転換をしてやらなければいけないなと私は思っています。ですから、結晶構造解析の方はそうではないと言われるかもしれないけれども、やはり結晶しないやつもあると思うのですね。膜タンパクなんか結晶するはずがないと私は思っているのです。ですから、それはやはり一つの大きな方向感だと。つまり、結晶しなくても1分子で測定するとか、いわゆるX線自由電子を使うなど、そういう非結晶のタンパク質の構造解析というのが一つの方向かなと私は思っています。

【曽我委員】  その辺は、結晶化していないものでの解析という研究は、いろいろな研究をされている方がたくさんいらっしゃって、成果も出ております。そういうことに期待したいと思います。

【石川センター長】  よろしいですか。

【高原主査】  どうぞ。

【石川センター長】  X線自由電子レーザーで一つのタンパクでということを結構進めてきたのですが、どうもタンパクをやってみると、小さい結晶がたくさん出てくるというのがどうも現実のようで、本当に一つでいるかというと、余り一つではいなくて……。

【櫻井委員】  いるときないですか。

【石川センター長】  いや、あるものはあるのですが、本当に小さい結晶がたくさん出てくるというのが結構多いパターのです。そうしますと、今、SPring-8で10ミクロンぐらいの結晶ができると構造解析が一応できると言われているのですが、たくさん出てくるのは、例えば100ナノとか、それを切るような本当に小さいものがたくさん出てきますので、そういうところでいかにして構造解析をするかというのが多分次のターゲットになってくるんだろうと思っています。

【高原主査】  ありがとうございます。

 また例によって若干時間超過ぎみですけれども、ほかに質問がなければ、次に進みまして、それで、最後にまとめて議論させていただければと思います。

 続きまして、小松委員からの方のプレゼンをお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【小松委員】  先生方の事例発表、私が最後ということみたいですが、私でいいのか、というのは常に思っておりますけれども、私のもともとの専門は有機合成化学で、恐らくここにおられる先生方の中で放射光のことが一番分かっていないのではないかと思っています。それで、担当の者からいろいろレクチャーを受けてきたのですけれども、やはりまだ腹に落ちていません。ただ、我々、どちらかというとブリヂストンは後発でSPring-8を使わせていただいたのですが、成果としては非常に大きく出ています。ですから、その成果の大きさとともに、次は何をやるべきか我々としては非常に明確に持っておりますので、先ほどの曽我先生の御発表と一緒で、一ユーザーの意見ということでお聞きいただければと思います。

 報告内容は、我々が今どのような形で活用させていただいているかということと、事務局の方から与えられました課題のこの三つについて、順次御説明させていただきます。それと、私、前回、都合で委員会に出られなかったのですけれども、雨宮先生の資料を今見させていただいて、タイヤ材料のことを書かれていただいたので、非常に心強く思って、ちょっと自信を持って今日発表させていただきます。

 タイヤというのは、皆さん知らない方はいらっしゃらないと思いますが、タイヤのもともとの基本要素というのは、走る、曲がる、止まる、支えるという、基本的にはこの四つの要素からなっています。ただ、この四つというのは、基本的にはタイヤが、乗用車用のタイヤですと地面に接するのははがき1枚ぐらいのエリアで、それが4枚ぐらいで結局、運転者の車の安全を支えているというようなことの安全性、それと快適性というのがあるのですが、御承知のように最近は環境性能が非常にフィーチャーされて、単純に言いますと、燃費性能というところが今、各社が技術としてしのぎを削っているというところでございます。

 もともとタイヤのライフサイクルでCO2がどれぐらい、排出されるかというと、タイヤで使う原材料の製造のところから、タイヤを作る製造、あと、それがロジで運ばれて流通して、車に付いて走って、最後、廃棄されるというようなことであるのですが、当然ながら一番CO2が発生されるのはここの使用の段階で、全体の約87%のCO2が使用中の中で排出されるということで、ある見積りによりますと、タイヤの使用段階、ここの段階でCO2の排出の推定量というのは全世界で毎年6億トンあると。これは日本の年間CO2排出量の約50%に当たるという計算がある。

 実は、2008年のたしか洞爺湖サミットだと思うのですが、G8の中でIEAが七つの将来の環境に向けて提言をしています。そのうちの5番目にトランスポーテーションのシステムについて書かれています。その中のリコメンデーション、やるべきことというのがここに四つありまして、そのうちの1番がFuel-efficient tiresということで、燃費性能がいいタイヤをやるのがいいということをG8の中で提案されています。

 次に書いてあるのは、皆さんそうだと思うのですが、一般ユーザーの方はタイヤがどういう性能を示すのかというのは全く分からない。黒い物体で何も分からない。だから、何が環境にいいタイヤか分からない。それが一番の問題だというようなことがあって、これを受けて、前回の雨宮先生の資料にもありましたけれども、日本だけでなくいろいろな国でタイヤのラベリング制度ができて、このタイヤはどういう環境性能を持っているというのが一般のユーザーの方にも分かることになっています。これのもともとの起点というのが、2008年のG8での提言ということになっています。

 我々が、これは他社もよく似たものと思うのですが、一つは、タイヤの転がり抵抗を下げていきましょうということでまず一つの研究開発をやってきておりますが、低燃費というのも、ヒステリシスを下げるというのもある程度、まだやる余地はあると思いますが、だんだん限界が見えているということで、もう一つの方法は、資源を使うのを減らしましょうと、即ち、軽量化してやろうということで、薄い、軽い、こういうタイヤを作ればいいということで、これによって軽くなれば、使う材料も減りますし、転がり抵抗も自動的に下がります。ここのところを今、重点的に開発をやっているということです。

 このためには何が必要かというのは、当然ながら、路面に接する、トレッドといいますが、ここを半分のゲージにしてやれば軽くなるのですが、そのためには単純にライフが短くなるのでは技術開発ではありませんので、この半分でも摩耗が十分にもつということをやる。さらには、ここの、サイドウォールといいますが、衝撃をクッションで支えるところですが、縁石に当たったりとかいろいろなものが当たってきたりして、それを薄くするとやはりそこで強い材料が要るというようなことです。単純にいくと、非常にしなやかで強い材料が要るということで、今、内閣府がやっていますImPACTに参画している東大の伊藤耕三先生のタフポリマーのプロジェクトに弊社も参画させていただいて、ここの部分の開発をしているというところです。

 それともう一つは、やはりリトレッドということで、これは一般的には大型タイヤ、特にトラック・アンド・バスとか航空機用のタイヤでやられているのですが、ここの上のところが減ってもう溝が消えても、ここの、台タイヤと我々は呼んでいますが、台タイヤが十分もつのであれば、ここの上のところにもう1回新しいトレッドパターンを足してやって、それでもう1回リユースしてやるというようなことになります。これはアメリカのトラック、バスではもう50%ぐらいがこういうようなことをやられていますが、日本はまだ20%にも行っていないということで、我々としましてはここの部分をもうちょっと進めていく必要があるのではないかと。

 すなわち、ここの中で課題としては二つあるのは、一つは非常に強い材料をやはり作ってやろうということ、それともう一つは、台はずっとまた何回も使われますので、こういうふうに何十万キロも走るようなそういうところでは、ゴムの耐久性、例えばスチールコードというのが中に入っているのですが、それのゴムとの接着を上げていってやらないと、こういう世界はなかなか見られないということになります。

 耐久性とか強い材料を考えたときに、我々はやはり天然ゴムという、東南アジア等でとれる木の樹液からとれるものですが、これはもともとここの外に出ていない内側のゴム、さらには建機用の大きなタイヤ、航空機用のこういう荷重をしっかり支えるようなタイヤというのは基本的には天然ゴムが非常に主体で使われています。

 すなわち、天然ゴムというのは実は非常に強いゴムなのだと、タイヤ業界の人たちには暗黙の了解があります。それはなぜかというと、それは天然ゴムというのは、引っ張ったときに結晶化するということであると。これは我々なら誰でも知っている話なのに、メカニズムとかそういうのが本当は何だ、ということが分からない。ということで、強いというキーワードからして、天然ゴムを徹底的に検討してやりましょうということをまずやりました。

 もともと天然ゴムというのは1、4のイソプレン構造体で、天然ゴムの場合には、これが100%シス構造ということで、合成、石油から作った、C5から作ったものでもやはりまだまだ98%というところから行かなくて、まだ天然ゴムを超えるものはできていない。X線で伸長結晶するというのは分かっているのですが、我々としては、タイヤが使われているときのいろいろな変形とか、いろいろな周波数とか、そういうようなところで本当にこの伸長結晶というのはどれくらい出ていてどうなのだというのを、古い現象をもう1回しっかり見てやろうということで、2010年からSPring-8を使わせていただいているということです。

 先ほどちょっと議論がありましたが、我々も、正直申し上げて、ビームに関しては全く、文句と言ったら失礼ですが、もうこれで十分ですという状況です。先ほどありましたが、輝度としては非常に強いので、数秒たつともう穴が開くというか、ポコンと壊れますので、短時間の間にどうやって取るかというのを、すなわち、我々が欲しい条件をここで作り出して、どんどんいい精度を出そうとすると、サンプルがどんどん細くなるとか小さくなっていって、そこに的確に当てるというようなことが非常に難しいことになります。

 ですから、先ほどの議論ではないのですが、我々はここの測定にすさまじい時間とお金を掛けているということです。それによって、結晶の格子のところを背景と分離して、ちゃんと結晶を実時間、これは一例ですが、結晶がどういう形で形成していっているのかというのをちゃんと定量的にできたと。実はこれができたので、これは面白いということで、ここに、四捨五入すると1億円ぐらいの装置をずっと開発して、測定はもうこれの開発と言っても恐らくあまり過言ではないと思っています。

 それを例えば一例ですが、この温度依存性をとることによって結晶というのはどんどんできなくなってきて、NRの伸長結晶の平衡融点というのは110度ですというようなことを、論文には出していないですが、こういうものを初めて測定したこと、それと、伸長結晶というある特異な結晶の生成形態であったとしても、やはり古典的な核生成理論のそういう原理とちゃんと成り立つのだなというようなことも初めてSPring-8を使って証明することができました。

 ただし、これは表の顔というか、裏の顔というか、品行方正な基礎データですが、この裏では我々の開発に資するいろいろなデータを実は取って、それが今、我々の次世代の材料開発に関しては非常にサジェスティブで非常にいいデータを取っています。そういうものが出なければ、あの測定機器にあんなにお金をかけないということになります。

 活用事例のまとめですが、高輝度のこれで我々は幸い、引っ張りみたいな一つの動的な測定に関して非常にいいデータを取ることができましたので、これで一つ大きなアウトプットは出たかなと。これによって、次の高強度ゴムのある開発の方向性が非常に出ましたし、先ほど示しました学術的な成果も得られたかなと思っています。

 その次は、我々としては、高強度に向けた開発というのはもちろんこれからもやっていくわけですが、今後必要になってくるのは、先ほどのここのリトレッドでもありますような、長寿命化に向けてどうするのかと。先ほどの構造にも出ていましたが、普通のオレフィン系とかのポリマーと違ってこのジエン系のポリマーというのは、もともと最終的に構造として二重結合を持っていますので、紫外線とかオゾンとか熱とかそういうところで分子としては基本的に非常に変わりやすい。

 はっきり言いますと、新品で走ってから恐らく皆さん乗られている車のタイヤでも、もう5年たったら物性なんていうのは、私が言ってはいけないかもしれないですけれども、かなり変わっているということで、それをもし抑えることができれば、今、大体これが2回ぐらいリトレッドしたら到底もたないということになりますが、それを3回できないか、もっとできないかということになりますと、今度は強度ではなくて、劣化の傾きを抑えるというか、要するに、劣化反応を基本的に抑えていきたい。

 そうなりますと、今度は軽元素のこういう元素が分析できないかなということで、今、UVSORとかいろいろお試しではやらせていただいていますが、今度の方向性としてはこっちを我々としてはやってきたいと考えています。すなわち、ここの劣化がどうやって起こるのか。ゴムとゴムの界面でピールオフみたいなことでパーンとはがれることもありますので、これどうするんだ、接着の界面というのはどうするのだというようなことを、劣化というような観点でやはりはっきりさせていきたいなと思っています。

 ここはちょっと重なりますので、スキップさせて。

 今後取り組むべき研究課題というのは、はっきり言いますと、先ほど出ました軽元素の化学の状態解析をやはりしっかりやっていって、より高耐久なタイヤ材料を作っていってやるということです。

 次世代放射光に対する期待としましては、輝度に関しては、先ほど言いましたけれども、我々としてはもう十分です。これ以上強くされてもサンプルがもたなくなりますので、我々の装置をもっと精度良くしていくというのが一つです。ただし、今後、やはり軽元素の測定を我々としては今度の大きなテーマとしては捉えていきたいなと考えています。

 そういう中で、我々ちょっと後発であったという部分もあって、ほかの先生方も言っておられますが、やはりビームタイムが非常に少なくて、もっと取りたいのだけどというようなところは常にのどが渇いた状態でいます。これまた非常にわがままな話しですが、SPring-8がやはり東京からしますと遠いので、先ほどの我々が持ち込みます装置というのは、往復で1回100万ぐらいかけて運んでいますので、もうちょっと東日本に近いところにないかなという、これはちょっと勝手な事ですが、実際そういう費用の問題もある。

 運営の在り方に関しては、我々ユーザーとしてそんな偉そうに言うつもりはございません。ただし、今度いろいろ軽元素の測定とかやると、我々にとっても初めての測定になる可能性は高いので、いろいろな相談に乗っていただきたいなというようなこと。あと、これは時間が欲しいということです。

 昨年、5年に一度のSPring-8の評価の際に思っていたのですが、成果公開は、重荷というと言葉が悪いのですが、恐らく我々ユーザー側の問題だと思うのですが、先ほど申し上げましたように、我々ユーザーとしては、このSPring-8というのは非常にパワフルで、今まで我々が思っていたある種の概念的なものを完全に変えてくれたというような、非常に有り難いと思っているのですが、ただし、そういう概念というか、データというのはまず絶対に出せないのです。ですから、その我々のアプリシエーションというのをどう伝えていいのだろうかというようなことはジレンマとして個人的は思っています。

 先ほどありましたけれども、ソフトの問題はやはり改善していっていただければなとは思っています。

 私の方からは以上です。ありがとうございました。

【高原主査】  どうもありがとうございました。

 それでは、何か御質問等ございましたら、お願いいたします。

 タイヤ会社ですと、フランスのミシュランとかもやはり放射光とかを活用していると思うのですけれども、いかがでしょうか。どういうふうにやられているかという。

【小松委員】  リヨン大とやっているとかいうのが出ているのですが、彼らがやっていることも、私の知る限りでは非常に似たような感じで破壊のところをやっています。それを横目で見ながら、負けないように頑張りますと言うしかないのですけれども、この分野はここ数年来非常に競争が激しくなってきて、他社もミシュランも恐らく同じことを考えられているのではないかなというふうには思います。さらに、環境の問題に対するセンシティビティーというのは日本よりも欧州の方がはるかに強いと思いますので、そういう面も含めて研究開発というのは、学術的な面でここ数年非常によく精力的にやられているというのは我々も非常に危機感を持っていますので、負けてはいけないとは思っています。

【高原主査】  ほかにいかがでしょうか、質問とか。

 櫻井先生、お願いします。

【櫻井委員】  私もFSBLの学術の方をやっていますけれども、FSBLの中ではかなりいわゆる公開に関しては、会社の方に関してはいわゆる配慮しているつもりなのですけれども、ここにはやはり社会発表が負担とかありますけれども、FSBLの程度の発表でもやはりかなり負担だということですか。

【小松委員】  これはもし我々がもっと使う時間が増えればそんな負担ではないと思うのです。でも、限られた時間の中で、成果公開のために先ほどお示ししましたようなそういうこともやはりやらなければ駄目だというところがありますので、正直申して、それに時間を取られるというのは実はもったいないなというのが正直な気持ちです。本来なら我々の開発に資するそういういろいろな条件とかいろいろなサンプルが本当に取りたいのですけれども、ちょっとそこの時間を食われるなというのが正直なところです。

【櫻井委員】  FSBLの立場からいうと、もちろんハッチは19社で出しましたけれども、X線源は違う。だから、その部分はやはり説明しなければいけないという部分があってお願いしておりますけれども。

【小松委員】  ですから、我々はそういうのもやはりやっていくというのは責務だとは思っています。それで、我々の一つ考えるべきところというのは、成果の発表の仕方というのですか……。

【櫻井委員】  アプリシエーションを。

【小松委員】  アプリシエーションをやはりもっと出すべきかと。

【櫻井委員】  ですから、別に論文発表じゃなくて、もっと、SPring-8はこんなにいいんだということを別のことで発表していただくだけでも結構だとは思います。

【小松委員】  そうなったときに、じゃ、どこまでどういう形で言うのかというのが、開発のアウトプットに応じて非常にセンシティブなところがあるなとは思っておりました。

【櫻井委員】  分かりました。NHKの「プロフェッショナル」辺りでやっていただければ一番いいなと思いますけれども、どうもありがとうございます。

【高原主査】  商品が前面に出れば一番いいでしょうね。これを使って解析してこういうあれが出てきたと。住友ゴムさんもそういうのをやられていますし。

【小松委員】  最終的にはそれを目指しているのですが、もうちょっと製品には時間を頂きたいなというふうには思います。

【尾嶋委員】  一つよろしいですか。

【高原主査】  どうぞ。

【尾嶋委員】  私は半導体とか主に固体材料の表面界面の研究をやっている者なのですけれども、表面界面という観点からしても、今おっしゃったようなトライボロジーというのが非常に大きなウエートをだんだん占めてきていると感じています。いろいろなものの摩擦をなくすというか、メカニズムを解明するというのが大事だと思っておりまして、そこに放射光、特に今おっしゃった軟X線が非常に強力なツールになるのではないかなというふうに思っております。

 そのときに、いわゆる摩擦して劣化したものを見るのでなくて、やはり劣化しつつあるといいますか、動かしながら見るというようなそういう研究が非常に大事だと思っているのですけれども、こういうタイヤの研究でそういう分野で何かそういう動作中観察の例はあるのでしょうか。それから、サンプルだけを持っていくのでなくて装置から持っていかないといけないとなると、ビームラインを造るまでいかなくても、放射光施設に常駐してやることが必要になるかどうか、お考えを聞かせてもらえますか。

【小松委員】  トライボロジーの問題はもちろんタイヤの中ではすごく重要なテーマなのですが、結構機械工学的なマクロ的な話でしか余りなされてなくて、実は表面界面の話というのは分析手法も余りなくて、特にタイヤの場合は、違う部材がこうやって重なったりしますと、そこで劣化の過程の中でいろいろな物質が動いたりしますので、そういうのもなかなか見られそうで見られないということで、御指摘いただいたような形でそういうものがこういう何かきっかけで見られるようになれば、非常に大きなアウトプットになるんではないのかなと。そういう意味でも、最後のところにお書きしましたけれども、そういうのはどういう可能性があるのでしょうかとか、そういうようなところのディスカッションの受入れ口があればいいかなと思います。

 装置の問題は、実は我々も本当はどこか近いところに置いておきたいのですが、先ほど申し上げましたように、持っていって、ああ、でも、駄目だった、ここまでしか取れないといったら、やはりまた持って帰って、今度、機械の調整を一生懸命やりますので、そこで掛かる費用というのは仕方ないなと。ただ、これができたものとなると今度は測定としてもあんまり面白くないので、より我々の欲しい条件ということでの調整が実際は我々の開発の中では一番大きなところだったとは思います。ですから、持って帰っても仕方ないなと思っています。

【尾嶋委員】  100万円ぐらいかかっても、まあしょうがないと、それは。

【小松委員】  ええ。ただ、強いて言えば、東日本の方がいいなというのはあります。

【高原主査】  佐野さん、どうぞ。

【佐野委員】  先ほどタイヤの劣化の話がございましたけれども、私は今は所属が違うのですが、東芝でいろいろ金属構造物の劣化とかをやってまいりました。一番苦労するのは、例えばSNカーブとかいう疲労曲線を取っても、それが実際に使うときの荷重、条件、環境も含めてそこら辺を模擬するのが非常に難しくて、単にSNカーブを取っても評価できないということがございます。タイヤの場合はよく分からないのですが、次の段階として劣化とかに踏み込もうとしますと、実際の環境を模擬しているかどうかというのは非常に重要になってくると思うのですけれども、そこら辺は何かトライされているんでしょうか。

【小松委員】  我々もある室内の中で劣化条件というのは決めるのですが、それは何によって決めるかといいますと、例えば東南アジアで5年間ある距離を走ったタイヤを引き揚げてきまして、それの各材料を、今のところこれは化学分析なのですけれども、化学分析で、こういう変化が起こっていますよね、物性がこう変わって、いろいろな結合形態が化学的にこう変わっていますねというようなものを、一緒になったら熱劣化でこうですよねというような、そういう結果系のそういうもので合う、合わない、これがどこの何年条件だというのは決めているのですが、先ほどおっしゃいましたように、動的な形でどうなるのか、それが時系列にどういう変化が起こっていって結果としてそういうふうになっているのかというのがまだまだ分かっていない。もしそれが分かりますと、それの傾きを抑えるような何か薬品であるとか、何かを入れていけばいいということになるのですが、そこがまだ見えていないというのが現実かと思います。

【佐野委員】  そこら辺がまだこれから大きな研究課題だと思ってよろしいということですね。

【小松委員】  そうですね。ありがとうございます。

【高原主査】  ほかにいかがでしょうか。

 水木先生。

【水木委員】  今の話にも関係するのですが、時分割という言い方をした場合に、今の時分割の時間分解能はこのぐらいだけども、今後、特に次世代放射光に期待するところでこういう時分割のところが必要なのだという具体的数字を教えてください。

【小松委員】  そうですね、大まかに言うと、100インバースセカンドみたいな、そんなところでもいいのかなという。

【水木委員】  0.01秒? 10ミリ?

【小松委員】  どの辺かというのはどこのレベルで見るかによって恐らく定義は難しいと思うのですが、少なくともそのぐらいのものは欲しいなとは思います。

【水木委員】  その場合もずっと当て続けて時分割で取っていったのでは……。

【小松委員】  いや、それだと……。

【水木委員】  駄目なのですね。

【小松委員】  ええ。

【水木委員】  劣化すると。なるほどね。

【高原主査】  私も疲労とかをやっていた、もともとの学位はそういうので取っているのですけれども、やはり実際にやるとなると、繰り返し変形を与えながら、ある時間にビームラインのところに装置ごとスライドして、それで、そこで終わったらまたもとに戻るとかいうふうな形でやる必要があるかと。

 それとあと、実際にはクラックが入るまでは、クラックの核ができるまではゆっくりの測定でよくて、それで、その後、クラックが成長し始める段階で、非常に短時間で起こる場合とゆっくり成長する場合とありますので、そこでの時間というのは、それほど高速測定は恐らく要らないのではないかなと思うのですけれども、今おっしゃったように、100分の1ミリセックぐらいあれば、恐らく十分に追えます。

 あと、もう一つ重要なのはマッピングですよね。だから、クラック周りのマッピングしながら取っていくと。そういうのを、データで恐らくタフネスというのが決まってくる。多分、金属の方も欠陥とかのあれで同じだと思うのですけれども。だから、そういう大きな装置を1回退避させるような場所とかがあると、こういう材料力学というか、その研究者は一番使いやすいと私自身は思っているのですけれども。今SPring-8は置き場所がないですよね。そういう意味では大きな試験機を退避させておくとかですね。

【石川センター長】  ですから、逆に、大きなものは置きっ放しにしておいて、ビームを時々そちらに持っていくという考え方でもいいわけですよね。だから、それは最初からそういうふうに造ろうと思えば多分できるわけで、その辺りは余り今のものにこだわらずに、いろいろ新しい、こうやったらどうかということを言っていただけると有り難いかなと思います。

【小松委員】  ありがとうございます。

【高原主査】  ありがとうございます。

 ほかにございませんでしょうか。

 それでは、10分少々時間をとれますので、全体での意見交換を行うことにしたいと思います。本日のプレゼン全体を通しまして、また、今後の進め方も含めて、御質問、御意見等を自由に御議論いただければと思いますけれども、いかがでしょうか。

 軟X線に関しても今日幾つかのお話がございましたけれども、その辺りも含めまして御議論の方お願いいたします。

 それから、もしもっと小さな光源でどういったことが期待できるか、あるいは実際にいろいろな御経験がある方がいらっしゃれば、その辺りも含めて御紹介あるいは御提案等をお願いできればと思います。1GeVとかそういうふうなオーダーのところですね。あるいは、海外での軟X線の使用経験がある方がいらっしゃれば、そういったことについてもちょっとお話しいただければと思います。

 いかがでしょうか。雨宮先生、いかがですか。すぐ振ってしまいますけど。

【雨宮委員】  今のこととは直接関係ないのだけど、その前に一つだけ、ちょっと細かいことですけれども、内海さんの資料の中で9のところで、集光位置でのフォトン数が10の13乗という値、光源のこととフォトン数って重要だと思うのですが、これ、積算して、パーセカンド、10の13乗ぐらい来てほしいという意味だと思うのですけれども、この値はどこから出てきた値か。私の経験だと、大体10の11乗から10の12乗ぐらいあれば、1枚のものは十分取れるなというのがいろいろなところの経験する範囲だけど、13乗はちょっと多かったので、もうちょっと強くないといけないのかなという印象を持ったので、ちょっと聞いたのですが。

【内海委員】  申し訳ございません。これはアンケートに矢板が書いたのをそのままカット・アンド・ペーストしてきたので、確認してまたお答えします。

【雨宮委員】  小さな光源のことについては、私が言うべき立場じゃなくて、別の人のコメントもあるかと思います。内海さんの資料の10番で、SLiTのスペクトルが出ていますけれども、これ、私も前回、浜さんから頂いたのを使ったわけですけれども、要するに、8GeVという大きなリングでなくても、3GeVというリングでこれだけのものが出ると。これは本当に光源の進歩が非常に大きいという、日本から出た真空封止のアンジュレーター、やはりこの辺のところが時代が随分変わってきているということが非常に重要で、今日のお話でも、それぞれ施設の特徴が出せるというところが、この辺を全体として最適化することがすごく重要ですし、将来のSPring-8をどうするかということとも密接に関わってきて重要なポイントだと思いますが、1GeVという話になるとちょっとそこまでは、私、どこまで出るのかということについては、1GeVの方のお話を聞きたいなという気は私もあります。

【高原主査】  UVSORでしょうか。

【小杉施設長】  何を言っていいのか分からないところがあるのですけれども、UVSORは0.75GeVで周長50メートルちょっとですから、アンジュレーターも6箇所しかなくて、軟X線の中でも低エネルギー領域しか出せないものが3本とVUV用が3本(うち1本は光源開発用)です我々の施設の特長を生かすには、分子科学研究所に属していることもあるので、化学にターゲットを絞って、そこで少なくとも日本にはない、国際的にもそう多くない実験装置で勝負するという戦略でやっています。このように、1GeV前後の低エネルギーリングでは満遍なくいろいろなエネルギー領域の軟X線をアンジュレーターで用意することができませんし、50メートルとか100メートルとかの小型リングを造っても需要に応じることができません。やはり2~3GeVあたりで高エネルギー領域を含めて軟X線専用のアンジュレーターが10本~20本は最低ないと、本当の意味でちゃんとした対応はできないというのが実感です。

 なお、本格的な軟X線光源ができたとしても、ある意味、満遍なくちゃんとした対応ができない我々は気が楽で、需要全てをカバーする方向ではなく、他にない特徴を出せる方向で生きていくことが可能です。先ほどの小松さんの話にもありましたように、軟X線の顕微分光装置を日本で最初に入れて、年間3箇月ぐらいは民間の方に有償で使ってもらっています。そのうち半分ぐらいは何らかの形で環境に関係した化学研究ですので、国際的にもユニークな使い方ができる方向になってきています。

 ついでに別の話になりますが、先ほど民間には成果公開が重荷という話がありました。しかし、我々にとって有り難いのは、それなりの使用料を払っていただいているところです。他にない特徴が出せれば、1本のビームラインでも、フルタイムの人が1人2人は雇えるぐらいの収入がありますので、成果は非公開の民間利用であっても社会還元をしっかりやっていることにもなり、施設には大きな貢献をしていただいていると考えるようにしています。

【高原主査】  ありがとうございます。

 ほかにございますか。

【櫻井委員】  石川先生の先ほどの、大型装置は、逃げないで、X線を動かすという話をもう少し詳しく説明していただきたいのですけれども。どういうことかなと思ったのですけれども。

【石川センター長】  一緒に並べておいて。

【櫻井委員】  並べるということですね。

【石川センター長】  横に並べておいて、X線を振ってあげれば、行きますよね。

【櫻井委員】  そうですか。

【石川センター長】  だから、引っ張り試験をやっている装置が幾つか並んでいて……。

【櫻井委員】  だから、ハッチを並べるのですね、縦に。

【石川センター長】  縦にというか、横に並べてもいけると思います。最初からそういうことを考えておけば、できない話ではないですよね。

【櫻井委員】  そういうことですか。分かりました。

【高原主査】  ありがとうございました。

 あと、小さいところでは、佐賀のLSというのもあるのですけれども、ここが1.4 GeVで、九大は硬X線のビームラインを持っておりますけれども、ここも私たちにとって一番有り難いのは、SPring-8が休みの3月とか、それから、7月、8月にビームタイムがあるので、私たちにとっては非常に使いやすいということで、私どものチームではそこもうまく活用して。特にこれからは軟X線領域のところをうまく。どうしても真空系が必要ですけれども、検出器等もそういったものに対応させることによって、その領域でのSAXSとかそういったものができるようにしたいなというふうなことは大学の方では計画しております。これは予算が伴っての話ですから。それとあと、半日しかビームが出ていないので、学生さんが行って、その後、もう夜帰ってこられるとか、そういったことで割と使い勝手がいいビームラインとして私たちは利用しております。

 はい。

【小杉施設長】  軟X線の実験というのは1日とか時間単位でできる実験じゃなくて、割と時間の掛かる実験が多いので、夜運転しないというのは、ユーザーが何日間か滞在して実験するには適した運転だと我々は思っています。24時間連続運転ではなくて、時間の掛かる実験が割と多いので、夜動かさなくて、むしろ年間休みのない、途切れないように運転するというモードも考えられなくはないかなと思います。

【高原主査】  そうですね。ありがとうございます。

【岡村補佐】  1点よろしいでしょうか。後ほど議題2のほうでも御説明させていただくのですが、次回1月7日ですけれども、議題の一つに、これまでの次世代放射光施設検討ワーキンググループを踏まえた総括的議論と致しましてワーキンググループ報告書を最終的には取りまとめますが、その骨子の案を次回御議論させていただきたいと思っております。

 その際、事務局から案を提示させていただくのですが、本日、先ほどの3名の先生方まで含めてお伺いした上で、事務局として骨子案に加えるべき観点の案を数点挙げさせていただきたければと思います。これにつきまして、御意見、コメント等ございましたら頂ければと思っております。本日は事前にお手元の資料として準備していないもので申し訳ございません。

 まず1点目としまして、やはり国内外の放射光施設についての動向とか課題、現状認識、そういったことが観点になるかと思います。

 次に、いろいろな放射光施設の類型について議論する必要があるかと思っております。第3回の資料でお示しした様々な物理的・技術的なパラメータやそれらの間のトレードオフの観点もございましたので、それに応じていろいろな放射光施設の類型あるいはクラスターのようなものが考えられるかと思います。今現状の国内外の放射光施設もそういったマッピングができるのかもしれません。そういったクラスター、類型といったものを議論してはいかがかと考えております。その上で、各クラスターについてどのような政策的な意義があるのか、さらに、現在実施中の次世代放射光に対するニーズ調査の結果も踏まえつつ、国としてどういう領域の光源、どういった施設性能が必要かという議論も可能かと思います。

 そうした上で、求められる施設性能を踏まえた上で、我が国の放射光施設群に期待される階層的な役割、ミッションがどうあるべきか、そういった観点を含めてはいかがかと考えております。

 最後に、我が国全体としての戦略的な次世代放射光施設のプラットフォームを構築して整備していくにあたって、広範なニーズなりユーザー層をカバーしていくにはどういった戦略的なビジョンが必要であるか。そういったことを、本日含めてこれまで6回の先生方のプレゼン内容を踏まえまして骨子案としてまとめさせていただければと思っておりますが、これについて、もしこういった観点もとか、お考えを広くお寄せいただければと思います。

【高原主査】  何かございますか。これは今回じゃなくてもいいのですよね。

【岡村補佐】  そうですね。ご意見等いただけましたら、次回、年明け、第7回を開かせていただくときに、そこにそれを反映して、踏まえた上での骨子案を事務局の方で御準備させていただきます。

【雨宮委員】  今のことについて質問なのですけれども、3番目のところで、各クラスターの意義、4番目でその階層的な役割と。クラスターというカテゴリーと階層というカテゴリーは全く別なものだと。そこのところ、もうちょっと定義をお聞かせいただければ。

【岡村補佐】  これまで委員の先生方からいただいた内容を様々な切り口でまとめようとする中での現状案としてですが、クラスターと一口に申し上げたときも、いろいろな多元的な軸で定義できるものと考えております。例えば強度、輝度であったり、波長領域であったり、エミッタンスであったり、いろいろな物理的・技術的なパラメータがあると思いますが、そういった空間にマップしてみて、カテゴリーとしてどういった類型が可能かと考えてみたとき、幾つかのグループが同定できるように思っております。

 そうした上で、階層的なといった場合に、例えば周長や電子ビームエネルギーだとか、あるいは予算規模だとか、いわゆる最先端の大型というものもあれば、あるいは先生方の御議論の中でも言及のありましたように、中型高輝度であるとか、そういった規模のものもありますし、様々な切り口や階層というのを考慮することもできるかもしれないですし、そこは多元的なものであると考えております。必ずしもこれまでの議論の中に現れていない観点もあるかもしれないと思います。

【高原主査】  ほかに何かコメント等ありますか。実際今のものをメールで送っていただいて、それから、クラスターとか、階層的というところの定義も若干触れていただいて、次回の会議のときに議論するということでいかがでしょうか。その間に御意見等ありましたらメール等でお寄せいただいて、これを入れてほしいということがあればいただきたく存じます。

【工藤室長】  今、簡単に口頭で御紹介させていただき大変恐縮です。若干補足いたしますと、次回に東北大学の調査の結果と、それから、海外動向についてJASRIから御説明いただくので、我々から今すぐ骨子案としてお送りすることは、なかなか難しいかもしれません。さらに、日程的に見て、次回が1月7日と、ワーキングデーで既にもう1週間程度しかありません。したがって、我々が委員の皆様にお願いするのは、これから取りまとめていく作業を始めるときに一つの方向性をお示しするとともに、もし次回までに何かコメント等で、こんなことも入れておいたらどうかというようなことを頂けるのであれば、それを受け止めて、次回に、今口頭でしかお示しできなかったのをもう少し整理した形で改めてお示しするのに役立てたいと思います。

【高原主査】  それでよろしいでしょうか。そういったことで、お正月の宿題になるかもしれませんけれども、お願いできればと思います。

 今までの今日のディスカッションといいますか、プレゼンの内容で何か更にコメント等ございましたら。

 はい、佐野先生。

【佐野委員】  内海先生の御紹介のときに発言すればよかったのかもしれないのですが、13ページ目で、先ほども話題になりました、共通の組織を作るみたいなお話がありましたけれども、例えば放射光と中性子、それから、ほかの量子ビーム施設とか、そういったものが一緒になりますと、例えば人材の流動といいますか、施設のビームライン担当者の方のキャリアアップになり、広い視野を持ってやっていただける方を育てていただけて、我々ユーザー側としては非常に相談しやすい体制ができるのではないかなと思っております。ただ、実質的にこういったものを作るのはまたかなり大変なことだとは思うのですけれども、いいシステムかというふうに考えています。

【高原主査】  ありがとうございました。

 ほかに御意見ないようでしたら、先ほどからもう既に議題2の一部に入っていますけれども、こちらは今後のスケジュールと連絡事項になりますけれども、事務局よりお願いいたします。よろしくお願いします。

【岡村補佐】  本日はどうもありがとうございました。

 それでは、先ほども少し既に触れさせていただいていますが、資料3を御覧ください。こちらに次回以降の開催予定についてまとめさせていただいております。残すところあと2回でして、次回第7回が1月7日の15時から17時まで、場所は文部科学省3階特別第2会議室、今回と同じ会議室で開催いたします。

 先ほども少し触れましたが、次回は議題として、次世代放射光施設に関するニーズ調査、現在東北大学で調査結果を取りまとめていただいているところですが、その結果について東北大学から御報告をいただくこととしております。加えまして、海外放射光施設の状況について、高輝度光科学センターの方から御説明をいただくこととしております。その上で、先ほど申し上げた骨子案についての総括的な議論をさせていただく予定です。その結果を踏まえまして、第8回では、総括的議論の2回目としまして、報告書自体の案について議論させていただければと思っております。

 また、旅費手続の関係ですけれども、この書類につきましては、押印の上、前回同様、机上に置いておいていただければと思います。配付資料についても同様で、机上に置いておいていただければ、後ほど郵送させていただきます。

 何か御質問等ございましたら、お願いいたします。

 失礼いたしました、旅費の件ですけれども、もう既に頂いておるそうですので、本日の手続は必要ないとのことです。失礼いたしました。

【高原主査】  ありがとうございました。

 それから、あと、もう一つお願いなのですけれども、議事録に関してチェックについてのメールが先生方に届くと思いますけれども、少なくとも御自身のところは責任を持って読んでいただくようお願いいたします。結構読まれている方も多いので、公開資料ですから御注意をお願いいたします。

【水木委員】  ちなみに、17ページのこれ、ミスだと思うのですけれども、資料1の17ページの1行目、XAFSと思うのですけれども、XSFSとなっているので、間違いだと思います。

【高原主査】  そういうところもございますので、チェックをよろしくお願いいたします。時々やはりありますので。

 それでは、また議事録を送るのは年末か、年明けになりますか。文部科学省のホームページにきちんと載っておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、本日も長時間にわたってありがとうございました。今年最後の会議を終了いたします。大変お疲れさまでした。良いお年をお迎えください。

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究開発基盤課量子放射線研究推進室

(科学技術・学術政策局研究開発基盤課量子放射線研究推進室)