【資料1】次世代放射光施設検討ワーキンググループ(第7回)議事録(案)

【高原主査】  それでは、定刻になりましたので、第7回次世代放射光施設検討ワーキンググループを始めさせていただきます。お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。

 今回は、北川委員、櫻井委員、廣瀨委員が御欠席との連絡を受けております。

 それではまず、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【岡村補佐】  それでは、お手元の資料を御確認ください。資料1は、前回会議の議事録です。既に御確認いただいているものですけれども、議事録は公開資料となりますので、反映漏れなどございましたら、本日の会議終了時までに事務局までお知らせください。資料2ですが、これは既にお送りしているものですけれども、報告書の骨子案でございます。こちらについては後ほど議題3の総括的議論の中で御説明させていただきます。また、いつもどおりドッジファイルの方で過去6回の会議資料、そして各施設の運転時間や人員情報を補足する「日本の主な放射光施設基礎資料」を御用意しております。こちらは御議論に当たって御活用ください。欠落などありましたら、事務局までお知らせいただければと思います。

【高原主査】  特に欠落等ございませんでしょうか。

 それでは、早速ですけれども、本日の議題の方に入りたいと思います。まず議題の1ですが、本年度の文部科学省委託調査である次世代放射光に関わるニーズ調査の状況についてということで、東北大学から御報告をいただきます。それでは、上田先生、よろしくお願いいたします。

【上田教授】  東北大学の上田です。明けましておめでとうございます。東北大学は今年度、今御紹介にありましたように、文科省の受託事業としまして、次世代放射光に関するニーズ調査を行ってまいりました。今年度中に報告書をまとめて提出しますが、それに先立って今日、皆様に概要を御報告し、御意見を賜れればと思っております。

 これが今日の報告の目次です。最初にニーズ調査の実施体制、それから目的・対象・調査項目、調査方法について御説明します。それから、この調査を通して、ビーム性能を明らかにせよということでございましたので、それをもとにグループ分け、つまりクラスター化を行う作業があるのですが、それについてどのようにしたか、最初に説明します。それに引き続きまして、各分野の課題、研究内容、放射光の貢献できる部分、要求されるビーム性能について調査結果をざっと御説明します。この結果については、既に放射光以外の様々な実験技術の専門家からコメントをいただいておりますので、そちらも紹介させていただきます。今回の調査を通しまして、普遍的な課題、あるいは分野横断型の研究内容とか、それから次世代放射光の果たす役割のようなものが明らかになってきていますので、それも次世代放射光に求められるビーム性能とともに紹介いたします。それから、今度、日本の放射光施設の現状、世界の動向を概観しましてまとめさせていただきます。調査項目の中に、整備されたときのメリット、されないときのデメリット、それから次世代放射光の運用に関する要望等多々出てきておりますが、ここで議論されていることと多くの場合重複しますので、割愛させていただきます。

 初めに、東北大学がこのニーズ調査を受託しまして、最初に光・量子ビーム連携推進室の中に、次世代放射光施設に関するニーズ調査専門委員会を設置しました。ここでありますように、東北大学以外にも他大学だとか宮城県、それから企業の方にも参加していただいております。更に海外施設の施設長の方にも、アドバイザリーとして御参加いただいております。この委員会のもとに作業チームを立ち上げまして、今回の調査を行ってまいりました。また、今回ずっとこの会議にも出席させていただいているのですけれども、ワーキングの情報と、文科省の検討ワーキングと情報を共有させていただきまして、ニーズ調査の方に反映させていただいております。これが実際に作業に携わったメンバーですが、1つずつの分野ごとに4名の研究者が調査に携わっております。

 それでは、実際に調査の内容について説明します。今回の調査の目的は、次世代放射光施設の設備方針の検討に向けて、放射光施設に関する研究者のニーズを調査して、有益な資料を作ることとなっています。調査対象分野は、環境・エネルギー、健康・医療、材料、情報通信、基礎科学、産業利用の6分野です。この6分野を更に細分化しまして、分野ごとに10名前後の方について、書面と電話によるヒアリング調査を行っております。そのヒアリング調査の結果をまとめたものをもとに、更にレビュー調査を行っています。レビューは実際には、このヒアリングのまとめをレビュアーの方に読んでいただきまして、東京に集まっていただきまして、2時間ほどの会議をもって行っております。このレビューの中には、放射光だけではなくて、放射光以外の様々な実験手法の専門家からなるレビューもございました。

 実際の調査項目なのですが、項目1が、今後5年ないし10年にわたって想定される社会的・科学的課題。項目2が、その課題を解決するために取り組むべき研究内容。項目3が、当該研究内容を進めるに当たり、放射光がどのように貢献できるか。項目4が、その課題解決に対応するために要求される施設のビーム性能。5が、それが実際に共用された場合のメリット、共用されない場合のデメリット。6が、運用等に関する御意見ということでした。

 実際にこの調査を行って、正直大変だったのが4です。要求される放射光のビーム性能ということなのですが、実際のヒアリングの対象者はビーム性能というものを余り念頭に置いて研究をされているわけではございませんでした。それで実際にはレビューの会議で、このあたりのことを御議論いただき、更にレビューに御参加いただいた施設の方、専門家の方にもいろいろ御協力いただきまして、現在の放射光施設でできる研究と、次世代放射光施設で可能になる研究というものをクラス分けして、更に分類していくという作業を行いました。作業の過程について、簡単に説明します。

 まずは、例えばこれは環境・エネルギーの例なのですが、環境・エネルギーの場合、例えば資源サイクルだとか、最初に挙げていますような小項目があるわけですが、それについて放射光でどのような研究がなされるかということが、ニーズ調査の中で上がってきているわけです。更にどういう実験手法が用いられているかということ。それから、中にはビーム性能についても言及いただいているかと思いますが、まずこういうものをもとにざっと洗い出して、ビーム性能、現在どのようなビームラインで実験が行われているかということを検討し、その中から実際に次世代放射光で必要とされているビーム性能をすくい出すという、そういう作業を各分野について行ったわけです。その性能をもとに、クラスター化ということを行いました。ビーム性能をもとにクラスター化ということを行いました。

 これが最終的にクラスター化に我々が用いた図なのですけれども、結果として実際には横軸にフォトンエネルギー、縦軸を輝度という、この会議でも何度か見たような図をもとに、クラスター化を行いました。まず構造解析ですけれども、大体ハードX線を使っている方は、5keV以上の光を使っておられます。それがこの緑の部分で、分光の方というのは、吸収分光、発光分光、電子分光、かなりエネルギー領域広い範囲を使っておられますが、ここの部分に相当します。この緑と黄色の部分が、実は国内の施設、SPring-8やフォトンファクトリーその他の施設で実際に使われている、既にある領域になります。

 先ほども言いましたけれども、実際に調査を行っていますと、SPring-8並みとかいう言葉がよく出てくるわけですが、それがちょうどこの緑や黄色の部分に相当することになります。それから、ほかの言葉としてよく出てくるのが、SPring-8の10倍とか100倍とかということになります。それが例えば、5K以上のところだとブルーの先端構造解析。仮につけた名前ですけれども、分光の方だと先端分光という形になります。更にSPring-8の100倍以上でコヒーレント光を使いたいという要望がかなりありましたが、それがここの部分になっています。更にこういったいわゆる放射光だけでなくてFEL、特に軟X線FELが必要であるということもかなりの割合で出てきていますので、それも加えています。全部で6個のクラスターに分けて、今日はお話しします。

 実際にここからが報告なのですが、例えば環境・エネルギーの場合、クリーンで安全で持続可能エネルギー、あるいは環境調和・環境保全、回復などが重要な課題として挙げられました。それを行うために必要な研究内容というのが、この2つ目のコラムに代表的なものが上がっていて、更に放射光がどのようにトリビュートできるかというのが、3つ目のコラムにざっと書いてあります。更にそれを今度、ビーム性能まで落とし込んでいったときには、ここで見ていただけると分かりますように、多くの場合SPring-8並みと言われている緑のところとか、黄色の分光とかが十分使われています。ただ、このように赤、オレンジのところ、これは主にナノビーム利用なのですけれども、実際の日本の今現在の放射光ではできないような先端分光の要望が幾つか出てまいります。

 同じようなことを、健康・医療について行ったものがこれです。課題として出てくるのは、ある意味では当たり前のようなものですけれども、高齢化社会の問題、希少疾患・個別医療・新しいウイルスへの対応、食糧問題、創薬・再生医療分野の国際競争といったものが課題として出てきます。ここの部分は省略しますが、これらを解決するためのビーム性能としては、やはりSPring-8の硬X線並みというものが結構ありまして、それ以外に分光については赤で示したように、より輝度の高いものという要望が多く出てきます。ただ、今分光に分類はしているのですけれども、中身を見てみますと、軟X線のイメージングとか、結晶構造解析でサルファを使うという例が含まれています。

 次に材料ですけれども、材料では低環境負荷材料創製、あるいは元素戦略に基づく代替材料。元素戦略ということが度々調査で出てまいりました。ここでもまたこういうような実験研究内容があって、放射光が非常に広範に使われていますということですが、ここでも高エネルギーのX線についてはSPring-8並みというのが、緑ですけれども結構多くて、黄色のSPring-8並の分光というのも結構ありますが、やはり赤い、より輝度の高いエネルギーを使いたいという希望がこのように出てきます。これは主にナノビームの仕様です。

 今度、情報通信ですが、これは超高速・大容量データ処理、伝送技術、それから小型・軽量・低消費デバイス等が課題として出てきますが、これもビーム性能のところにいきなりきまして、やはり同様な傾向です。幾つかの、特にスピンデバイスとかで非常にナノビームの使用ということが訴えられていまして、結果として先端分光というものが幾つか出てまいります。

 次、基礎ですけれども、基礎はサイエンスの構築とか、あるいは時間・空間スケールの階層構造の理解ということが強く訴えられています。この研究内容、放射光貢献のところは見ていただくとして、ビーム性能を見ていただきますと、緑のSPring-8並みというのは、構造解析ですけれども結構あるのですが、黄色の分光というのはなくなってしまって、先端分光と名づけた高輝度放射光が必要というのが、全分野について広がっているという状況です。そのほかに、例えば、より輝度の高いX線が必要であるというものだとか、さらにはソフトX線の自由電子レーザー、それから生態、あるいは地学の方ではコヒーレント光の利用というものが出てきています。

 産業利用ですけれども、これも硬X線は概してSPring-8並みで、かなりの方が満足されているのですが、分光の方では、やはり非常に高輝度のものを求めるという傾向が明らかに見てとれます。これもやはりナノビーム利用、それから時間分解です。特に注目したいのは、これは企業の方なのですが、タイヤの東部創薬ですけれども、コヒーレント光利用を必要としておられました。

 このようなレビュー結果を、放射光以外のレビュアーについても見ていただきました。皆さんが共通しておっしゃったことというのは、放射光の代替、あるいは競合としてNMRや電子顕微鏡、中性子があるのではなくて、相互的な役割を担っていて、組み合わせて実験をやることが必要だということが共通の意見としてございました。ただ、この会議では結構辛口のコメントをいろいろいただいていますので、ここで列記してありますが、例えば電子顕微鏡の田中先生からは、放射性物質の取扱い可能な施設というのが非常に重要になるだろうということを指摘されています。それから、例えばレーザーの緑川さんは、次世代の光源を作るとすれば、やはりユニークさで世界一を目指すべきだという御指摘です。それから、中性子の吉沢先生は、中性子ではできないオペランドや顕微観測、これもしょっちゅうヒアリングの途中で出てきた言葉なのですけれども、これがやはり重要であるという指摘をいただいています。それから、黒田先生からは、産業利用を促進するためのコーディネートの仕組みが新しい施設では重要だということを御指摘いただいています。

 今回調査をしてきてずっと見てきて、やはり大変面白かったというか、違う分野の調査をしているはずなのですが、非常に横断型の内容というのが出てきます。何度も同じような話が出てきました。例えば、その研究内容ですが、これも当たり前と言えば当たり前なのですが、科学的見地に基づいた課題解決を可能とするような研究内容の展開が必要だというようなコメントは、ほとんどの分野で出てきました。それから、あと機能性材料の発現機構の解明とか、合成プロセス、評価法の開発が重要というのも、全ての分野で出てまいりました。それから、あと興味深かったのは、これは基礎からの提案なのですけれども、物事を3次元空間と時間、さらには3次元運動量・エネルギーの8次元で統合的に探索するということが、全ての分野についてこれから必要になるという主張をいただいております。

 それから、今度放射光利用に関して、分野ごとにキーとなる言葉を並べてみたのですが、例えば環境・エネルギーだと、実動作環境下でのオペランド。健康・医療だと、可視化・リアルタイム。材料だとナノビーム、元素選択。情報通信、高空間分解能、高時間分解能。基礎は最適な時間・空間分解能、最適なエネルギー・運動量。このように分野によって異なるというよりも、むしろこういうように抽出してくると、共通項の方が目立ってくる。あるいは、何が次世代光源に対して求められてくるかというのがだんだん見えてくるという、そういう結果になっています。

 階層の問題について、幾つもの分野で御指摘がございました。階層の理解ということが、空間的な階層を持つ物質の理解というものが必要であると。一例として、これは住友ゴムの岸本さんの記事にあります絵ですけれども、タイヤですね。こういう小さなものからだんだん階層構造が上がっていって、タイヤができる。まさにこういう階層を理解するということが必要であるというのは、例えば生物の方でも出てきました。塩基からDNA、タンパク、さらにはそれの複合体、細胞と、こういった階層構造を見るということが、これから先重要になると。この階層ごとのダイナミクス、分光構造を見るということが大事だということも、何人かの方から指摘されています。

 この流れなのですけれども、階層ごとに特有の時間領域というのがあることになります。例えば、固体物性の方では、現在均一系から不均一系へと関心が移っておりますし、デバイスだとか材料の方でもナノ構造、あるいはそのために界面というものが重要になってきていますが、こういう領域を見るには、次第により高い時間分解能が必要になってくる。実際に空間を定めながら、時間分解能を定めながら、運動量・エネルギーの4次元分光をしなければいけない。4次元分光であらわされる階層ごとの――4次元空間、すみません。空間的・3次元的な広がりと時間的広がりの4次元空間であらわされる階層ごとに、運動量とエネルギーの4次元分光というものが必要になるということが指摘されていて、これでもって初めて階層の構造が理解できる。これこそが、次世代放射光で行われるべきことだという提案がございました。

 それから、今回のレビューを通して、調査を通して何度か指摘されたことなのですが、分野を分けて我々は調査をしましたが、必ず分野を超えた議論の必要性が指摘されました。分野というのは現在、基礎から産業利用まで、シームレスにつながっている。あるいは、材料というものをつなぎとして、全ての分野が由来とされているという議論です。その例として、例えばここには、栗原先生が代表を務められておられます超低摩擦技術の領域の研究が挙げられています。典型的に基礎科学から産業創設までシームレスにつながる例として挙げられました。

 もう一つ指摘されたのが、今回課題として、5年から10年のという限定がついていたのですが、まさに新しい放射光施設ができたとして、5年間でやるべき課題ということのようなのですが、もっと長期的、あるいは高い視点で議論するべきだという意見も随分の方からいただきました。そのときに出てきたキーワードが、ここに幾つか記してあります。人類が永続・繁栄するための持続可能社会の実現。技術立国として、国際競争力を維持・向上する。それから、人類の知の蓄積、このようなことに新しい放射光施設は寄与するべきであるという御意見でした。

 それからあと、新しい次期放射光施設の役割を表す言葉としてよく出てきたのが、科学技術、産業イノベーションを創出・加速するべき場所である、それから、新産業育成のエンジンである、こういった表現でした。

 ビーム特性に戻ります。今回、このように5つプラスFELという形で分類しましたが、調査対象の半数、あるいはそれ以上の方が緑のところ、黄色のところ、既にある放射光施設のスペックに合わせて、この赤の部分、先端分光の領域を挙げておられました。それに対してここの青の部分、あるいはコヒーレントイメージング、FEL、それぞれが調査対象差の大体10%の割合です。この分光というのが、20eVから20keVまで書いてあるのですが、多くの方の主張が、分光される方は非常に広い範囲をシームレスに見たいというのがございました。その根拠になっているのが上に書いてあるターゲットですが、低いエネルギーを使って価電子帯、バンドをナノビームで見たい、あるいはスピンデゾーブしてみたいという要望がございました。それから、軽元素があって、スピンで重要な領域がありまして、ソフトマターで重要な領域があって、触媒の方は非常に広い範囲のフォトンを、光子を、エネルギーを要求されていました。20keVというのは、モリブデンの1Sに相当します。

 具体的にフォーカスサイズだとか空間分解能、出てきたスペックをここに幾つか挙げてあります。まずはフォーカスなのですが、非常に多くの方が10nmという数値を出されました。こういう数値が出てきたものですから、レビューでも何回か議論になりましたが、次世代放射光で目指すには、このくらいの値というのが妥当でしょうということでした。ただ、何人かが指摘されたのが、実際に必要な空間分解能は、それより1桁高い1nm、そういう分解能が必要ですということは主張されていました。実際にそれに関しても、イメージング等で達成できるだろうというコメントをいただいております。

 同じように時間分解能の方で多かったのが1ピコです。これについては、次世代放射光で実現するのが困難ではないかというコメントをいただいております。

 この絵はこの会議でも何度か既に出てきていますが、先ほどから使っていますフォトンエネルギーとブリリアンスの中に、現在日本であるアンジュレーターの線を書き込んだものに相当します。繰り返しですが、グリーンのところと黄色のところというのは、既に日本にあるアンジュレーターでカバーされている領域で、実はこのブルーのところもSPring-8の長尺アンジュレーターで半分ぐらいはカバーされています。それに対して現在日本で全くないのが、この赤の部分、それからコヒーレントイメージングに相当するここの部分です。恐らく次の熊谷先生の方からお話があるかと思いますが、海外ではこの辺が既に出ています。

 なぜ日本でその領域がないかということですが、これも既に何度かお話が出たんでないかと思いますが、日本の放射光施設というのは非常にたくさんあるのですが、SPring-8を除いてエミッタンスが大きくて、そのために輝度が小さいということがあります。SPring-8を除いて全ての放射光が、この単位で20という値よりも上にあります。

 これに対して世界の動向ということなのですが、世界で今現在標準的に3GeV近傍の放射光施設というのが、ほとんどの国にできつつあるという状況なのですが、これの輝度が大体5になります。現在稼働しているものは5という値が出てくるのですが、立ち上げ中、あるいは建設中のものは更に小さな輝度になっています。

 今お話ししました輝度を、実は放射光の周長に対してプロットをしています。輝度を上げるためにどういうことができるかということなのですが、一番簡単にはビームのサイズを大きくしていくと。1回に曲げる電子ビームを曲げる角度が小さくなるので、輝度が上がると。もう一つは、磁石の数を増やすということです。実際に現在ある、海外で稼働している放射光施設というのはこのあたりにあるわけですが、これも恐らく熊谷先生のお話にあると思いますが、現在この辺の施設が1桁ぐらい輝度を上げることを、アップグレードプランとして持っています。

 実際に例えば5nmのものが0.5になったら、輝度としては10倍になるのですが、これまでの古典的な分光等ではほとんど効果はありません。じゃ、なぜ彼らの施設がそういう高輝度化を目指すかというと、実は回折限界波長が軟X線領域にくるということがございます。実際にこうして回折限界付近の光が得られるようになりますと、まずはナノフォーカスができるということと、コヒーレント成分が輝度に比例して増加します。

 例えば、ALSでごく最近ですけれども、タイコグラフィーを使って空間分解能3nmが達成されました。コヒーレント光の利用です。ALSの次期プランは、3次元の空間、まさにマイクロスコピー、ナノスコピーを行うということになっています。

 これは先ほど言いましたけれども、重なりますので省略します。

 最後にまとめです。我々は6つに分けて書いたのですが、まず構造解析ですが、5K以上の高ハードX線というのは、確かにSPring-8で皆さん満足しているのですが、非常にビームタイムがないということを、ほとんど皆さん口をそろえておっしゃいました。特に3・11以降、海外へのメールインサービスの利用というのが、国内からも非常に増えています。だからそういうこともあって、新施設ができたとしても、少なくとも5から20ぐらいはカバーしてほしいという意見がかなり多くありました。

 それから、分光の20から20keV領域の話ですが、確かに海外の施設よりフラックスは低いはずなのですが、ここも数が限られているということがあって、ビームタイムは大体競争率が倍ぐらい。場合によっては、幾つかの課題で完全に埋めつくされているという状況でした。まさにそれの同じ領域で輝度が1桁ないし2桁上がった領域ですけれども、これはまさに日本で最も弱いところで、具体的には、例えば軟X線のRIXSの運動量分光というのは日本ではできません。スピンがそのために見えないということがありまして、多くの試料が海外に流出しているという現状が、今回の調査でも出てきました。

 続いて、先端構造解析とコヒーレントイメージング併せて書いてありますが、日本のSPring-8の長尺アンジュレーターというのが今、世界一なのですが、ソフトマターや細胞等で軟X線のイメージングの重要性ということが指摘されていますが、これは残念ながら日本では対処できていません。XFELに関しては、軟X線XFELの必要性というものが、構造生物学、物理、化学の分野で指摘されました。この分野も、残念ながら日本では遅れているという状況でした。以上です。どうもありがとうございました。

【高原主査】  上田先生、ありがとうございました。

 それでは、何か御質問等ございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。かなり広範な内容ですので、なかなか質問の方もしにくいかと思いますけれども、いかがでしょうか。はい、どうぞ。

【尾嶋委員】  1年間にわたって、大変総括的といいますか、全て網羅した結果でございまして、ある程度予測されたところで、やはりみんないろいろな分野の方、基礎の分野、それから応用の分野の方が、やはりこの領域は必要なんだなということが非常に明確にあらわれてきたというふうに思います。

 それで1点、ちょっと気になった点が、理研の緑川さんのレーザーに関する話で、ユニークな放射光施設をということが書いてあったのですけれども、これは具体的にはどういうイメージでしょうか。

【上田教授】  他分野の方から見られた印象としまして、既に日本にあるような施設をもう1個作るのはぜい沢ではないかという表現ですね。それは緑川先生だけではなくて他分野の方、結構おっしゃいました。作るからには、今現在日本にはない施設、ものという、そういう言葉でユニークという言葉を使われたとは思います。

【尾嶋委員】  世界的に見てもユニークだというような書き方がしてあったのですが。例えば、単なる高輝度化ではなくて。

【上田教授】  どこか売りを作ったらいかがですかという意味だと思います。緑川先生の言葉が一番シビアでした、今回の。

【尾嶋委員】  ああ、そうですか。はい、分かりました。

【高原主査】  ほかにございませんでしょうか。どうぞ。

【石川センター長】  この調査対象で、他分野以外の方というのは、ほとんどは現在のユーザーを対象にしているんでしょうか。

【上田教授】  まずヒアリング対象者は、必ずしも放射光を使っていない方も含まれていました。それに対してレビューの対象者は、全ての分野、6分野に関しましては、どちらかというとパワーユーザーの方と施設の方が対象となっています。それに対して放射光ではない、電子顕微鏡だとかNMRとか、ほかの手法を使っている先生方を1グループとしたレビューというのが課題に入っておりまして、それがまさに先ほどお見せした、緑川先生の辛口のコメント等があった部分です。

 当初の意図としましては、我々放射光でできることと思っていることが、ほかの手法でもっといいんでないかということを指摘されるということをある意味では期待していたのですが、それに関しては、先ほども報告しましたように、むしろ相補的で両方使う方がいいという意見が主だったのですが。まさに放射光の外の人から見たときに、放射光の方が言っていることがぜい沢であるかどうかとか、そういうことについてのコメントが結構あったということです。

【高原主査】  よろしいでしょうか。ほかに何かございますか。

 特になければ、次の議題2の方に移りたいと思います。続きましては議題の2で、JASRIの熊谷理事から、海外の放射光施設の状況について御報告をいただきます。それでは熊谷理事、お願いいたします。

【熊谷理事】  皆さんのお手元に資料がありますので、それに沿って説明します。

 最初に、これは世界の放射光施設の、特に中型以上の第3世代の光源を並べたものです。上がヨーロッパ、その次がアメリカ、それからアジアと。下は現状の日本の放射光施設。これは見方はいろいろとあるのですが、ここで見ていただきたいのは、ここの運転時間、ヨーロッパ、それからアメリカは大体6,000時間のうち5,000時間程度がきちっと利用されていると。それからアジアでも、SSRS、上海、それから浦項、それからオーストラリアシンクロトロンも6,000時間で5,000時間程度ということが特徴です。それに比べて日本の場合は、SPring-8は5,000ですが、そのほかはPFがある時期、4,000で3,000ですが、これは昨今の電力事情で減っていますが、大体ヨーロッパの3分の1とか半分しか運転されていないということです。

 こういう施設と、それから現在、世界でどんな施設が建設、または計画中か。赤が今建設中のものです。NSLS-Ⅱが既に高度処理が始まっていまして、ビームカレントが100は超えているかと思いますが、既に運転、利用ができるような状況になっている。それからMAX-Ⅳは今建設中。TPSも、もうそろそろ運転が始まる。それからブラジルのSiriusは、建設のサイトが決まって、建設が始まっているということで、これらの施設は大体周長が500mから800m、エネルギーは全部3GeVで、電流値が500。先ほど話があった第3世代の中型の電流値というのは、大体100とか200で、この数年間、10年ぐらいの技術の進展で、ビーム電流は上がっているということです。これによって輝度が上がっていると。フラックスが上がったために輝度が上がっているということです。それから、エミッタンスが、先ほどはこれが数nmですが、みんなサブナノのところにきている。TPSだけは1.6ですが、ほかの第3世代というのは大体サブナノになっているということです。

 計画中にアップグレードというのがあるわけですが、ALS、SOLEIL、Diamond、ESRF、APSと、それぞれ第3世代の放射光施設が世界で作られたときの初期に作られた加速器ですが、いずれもエネルギーに比べて周長が大きいということを最大限活用して、今、アップグレードの計画が進んでいます。これらの計画では、例えばALSは1.9GeVで100ピコという値。それからSOLEILでは0.59、Diamondで0.28、ESRFは、もうこれでスタートすると思いますが160。APSが60pmradということで、ラティス構造は9ベンドとか4ベンドとか7ベンドでswap-outという新しい方式の加速器で、これを実現しようと今しているわけです。

 一方我が国は、SPring-8もESRF、APSのアップグレードを同時にして、同時期に6GeVで0.15、150ピコというのを4ベンド、または5ベンドで実現しようとしております。それから前回お話があったSLiT-Jというのは340mというもので計画した場合は、エミッタンスが0.98ということになります。いずれにしても、現在こういう計画は、低エミッタンス化、大電流化、短周期化と。これはアンジュレーターの短周期化ということですが、それで高輝度化を実現しようということです。

 こういういろいろな放射光施設を、少しカテゴリーに分けようということで分けたのがこれです。この赤のラインはセルといって、磁石配列が1つのユニットの中に偏向電磁石が2台設置されているもののライのです。これが通常、今まで建設されてきた放射光の施設がこの赤のラインになります。最近建設が始まっている、例えばMAX-Ⅳみたいなものは、この青のラインになっています。これは4ベンドであったり5ベンドであったり、7ベンド。いわゆる1つのユニットセルの中に偏向電磁石が4台であったり5台であったり7台、そういうふうに刻みを細かくして、一つ一つの偏向角を小さくして、エミッタンスを小さくするということですが、大体こういう青のラインのものが、今建設の主流になってきているということになります。

 先ほど小規模のものという話で、ALSはここにありますけれども、次に計画しているのは9ベンドで10分の1ぐらい、もっとですね、数十分の1ぐらいにエミッタンスを下げると。それから、SOLEILも10分の1、Diamondも約10分の1、ESRFも数十分の1に下げる。APSも同じく数十分の1、SPring-8は10分の1ぐらい。それぐらいですね。というような計画が、今、世界各地で進められております。

 これは先ほどもお話がありましたけれども、世界のアンジュレーター光の輝度をプロットしたものです。これは実はいろいろな図を一緒にしてまとめてありますので、見方はここから左側、こっちは日本の我が国の現在ある放射光施設で実現可能、達成可能な光源からの輝度になります。SPring-8がこの青いライン、それからPFが少し茶色っぽいライン。それからNeW-SUBARU、UVSOR、AichiSRと、済みません、こっちはどっちかがSAGA-LSですね、というようなラインで、大体こういう領域が、今日本では実現ができている。

 それに対して、先ほどの第3世代の中型というのは、ちょうどこの10keVから数百eV、100eVの間。この間をSPring-8が完成した後、世界いろいろなところでその建設が進んで、今実現しているのがこのエリアになります。赤い部分が現在稼働中のもので、ALBA、SSRF、PLS2、それからオーストラリア、CSRという、世界に至るところがこの領域の放射光施設を作って、今利用が始まっている。最近それよりも更に輝度を10倍以上ということで、MAX-ⅣとかNSLS-Ⅱ、Siriusというのが緑のラインになります。MAX-Ⅳですと、この数keVあたりで輝度が5×10の21乗ということが、今計算上はなっています。

 それから、この領域は、なかなか加速器では実現が非常に難しい領域になります。なぜかというと、このエネルギーを下げるということは波長が長くなるので、輝度というその分母に実行的なビームのサイズ、エミッタンスというのがありますが、それが波長がだんだん長くなるということは分母が大きくなる。一方、蓄積に至る電流値を上げるというのは非常に困難になりますので、波長とメムは下がっていってしまうということで、この部分は非常にどの放射光施設も難しい。ただ、この数十eV程度のところまでは、最近FELのいろいろなソースが開発されていまして、ここの進展というのが非常に大きいということもあって、そういうところとの見合いに今後なるのかなと思います。

 更に先ほど世界では、硬X線側の計画があるというお話をしましたけれども、APSのアップグレード、それからESRFのアップグレード、SPring-8のアップグレード、これは同じCPMU、いわゆるパーマネントマグネットのアンジュレーターで周期長をみんな固定にして同じにして計算すると、大体APSの場合で10の22乗というのが10keV以上で達成できると。こういうのが今、世界の潮流になっております。

 ここに点線で書いてあるのが、前回も話題になった340mという中型高輝度リングで達成できる輝度の曲線になります。21乗という値を数keVのところでクリアしている。ちなみにこれを486mという20セル、先ほどのは14セルですが、20セルにすると、21乗の、先ほどから2倍とか3倍ぐらい上がったところになります。周長が340でも486でも、輝度のゲインはそれほど大きくはない。もっと重要なのが、この輝度を上げるということが、高エネルギー側のX線の利用領域が広がるということがあります。先ほど486のときのこの点線の輝度というのは、せいぜいBL47XUの20keVぐらいのところでクロスするのですが、輝度を上げるとBL19XUという30mの長尺ラインで20keVぐらいのところは等価になるということで、この辺は、ですから中型リングでどういうエネルギー領域、周長領域を選ぶのかというのは考慮しないといけないということになります。

 低エミッタンス化というのは、高輝度化とともにX線の高エネルギー利用を可能にするということです。

 それからもう一つ、偏向電磁石ですが、偏向電磁石の利用というのは、今、先ほどのお話でも余り出てきてはいないと思うのですが、日本の中でいろいろな小さなと言うと怒られちゃうかもしれませんが、小型の放射光施設と、それからPF、SPring-8の利用が、連携ができるのではないかといっていろいろとやられている理由はここにありますが、要はAURURAという立命館の、これは何GeVでしたっけ、超伝導型のシンクロトロのですが、磁場が高いので、割に1keVぐらいまでのスペクトルを持っている。AichiSRとそれからSAGA-LSというのも、スーパーコンダクティブの5Tesla、それから4Teslaのウィグラーということで、割にエネルギーが低いので10keV以上までスペクトルが伸びている。そういうスペクトルを見ると、エネルギーが低くてもPFが、ARがこれかな。それからPFもどこかにあるな。余り遜色がないということで、ここの部分に関しては、国内で連携という話がよくあるのは、多分こういうことだと思います。

 ただ、世界的に見ると、この偏向電磁石の利用というよりは、むしろこちらのマルチポールウィグラーというものの設置が今、先ほどの第3世代の放射光施設では導入が盛んに進められています。ここでは3.5Teslaですが、実際には4.2Teslaまでいくようなマルチポールウィグラーが、実際にもうDiamondで入っている。DiamondはLが20セル近くまであると思うのですが、そういうものを入れますと、SPring-8のBL08と余り遜色がないところまで、X線の利用領域が広がると。しかも強度も増えるということで、今後低エネルギーの放射光施設にとって、超伝導のマルチポールウィグラーの利用というのは、少し考える必要があるかと思います。

 それから、世界の放射光施設の中で、先ほどからディファクションリミット、回折限界という話が出てきていますが、これは横軸はフォトンのエナジー、縦軸がエミッタンス。これは電子ビームのエミッタンスでも、電子ビームのエミッタンスと考えていただければいいのですが。電子ビームのエミッタンスが4π分のλ、いわゆるエミッタンスが光のエミッタンスと同じになったラインというのはこういうラインになります。ですので、ある加速器でこのラインに乗っかっているということは、トータルのコヒーレントフラクションが0.5という、フラックスの半分はコヒーレント光ですよというライのです。今現状、日本の放射光施設の中で、このラインに乗っかっているというのはUVSORの1か所だけです。約10eVのところで乗っかっている。あとはこのラインより上にありますので、ディフラクションリミットには到達していないと。いわゆるビームの中の0.何%とか1%以下の部分がコヒーレントになっているということになります。

 SPring-8はどうかというとここにあるわけで、既設の3GeV、世界の3GeVでブリリアンスが10の19乗というエリアを通ったのがこの部分です。それから新設のMAX-ⅣとSiriusというのがこういう格好で、これは一部100エレクトロン、数百、まあ、二、三百ぐらいのところで回折、いわゆるこの条件を満たすことになります。それから第三世代のSR光源。これは先ほどのAPSとかESRFとか、それからSPring-8もそうですが、回折限界、この条件を満たすのは1keV程度ということで、ハードX線に関しては10分の1ぐらいでまだ大きいということになります。

 ですので、先ほどから何をユニークにするかといったときに、ハードX線で回折限界、こういう条件を満たすような光、いわゆるフラックスの半分以上がコヒーレント光であるというようなリングにするということが1つの方法だと思いますが、そのときに必要なエミッタンスというのが10pmradだと。今の10分の1ということになります。ですので、こういうものが今後実現できるのかどうかということ。それから、中途半端な施設というのは一体どう使ったらいいのか、今後よくよく考えることが必要かと思います。

 今言ったことをまとめたのがこれですので、これは後で読んでおいていただければと思います。それから、これは我が国の現状です。我が国の現状も、世界と比べると、基本的には現在の質と本数では、世界と互角に競争することは多分不可能ではないかと私自身は思います。これは利用者の方はどう思っているか分かりませんが、加速器屋として単純に考えると、よくやっているなという印象です。

 それからもう一つ、課題ですが、これも加速器屋として勝手に言っているだけかもしれませんが、物質科学の視点に立った放射光施設を戦略的に整備・運用する視点が、どうも欠けているような雰囲気。それから既存の放射光資源を有効的に活用する財政的な視点もどうかと。いわゆる運転時間が、どうも世界に比べると非常に短いというのが、本当にこれでいいのかというようなことです。

 これも読んでおいていただければと。先ほどの指摘にもありましたけれども、作るのであれば、コヒーレンスを利用するのだったら0.3nmradのところまでかなと。それから、こういう100eVから20keVの準単色、100keVの白色。20本以上は必要ではないのですかねと。利便性は、通年運転が可能なシステムにすべきではないか。それから汎用的利用と先端的利用に対応した支援体制が必要かなということが挙げられるかと思います。

 世界における挿入光源の現状ですが、先ほどもお話ししましたけれども、短周期アンジュレーターの高次光で20から30keV。それから、超伝導多極ウィグラーで100keVまでの白色X線。白色といってもピンクなのですが。要はクライオアンジュレーターですと、こういうところまでが可能な領域になっています。液体窒素を冷やすとですね。それから、超伝導多極ウィグラーではニオブチタンで4.2Kまで冷やして、大体こういうものが現状、コマーシャルに手に入るということで、例えばDiamondとかCLS、ELETRA、Aus-SRでは導入されているということです。ですので、こういう超伝導に関する技術の動向をきちっと調査した上で、導入することが必要かと思います。

 それから、今後の開発の動向ですが、1つはよりエネルギーの低い電子ビームで、より輝度の高い高エネルギーX線を実現するということで、超短周期アンジュレーターの開発というのがあります。これは今、KEKのフォトンファクトリーの山本さんがやっているものですが、今までは周長17mmとか、SPring-8だと32mmが標準ですが、これは4mm、ギャップが1.6mmと。これは実際の磁場を測定したものですが、まだ実際のビームを通していないのですが、これぐらいの精度で4mmのアンジュレーションができているということで、これを実際に2.5GeVから3GeVの電子ビームを通すと、1次光で22keV、2.5GeVで15keVというようなハードX線ができるということです。

 それからもう一つ、超伝導アンジュレーターの動向ですが、先ほど3.5とか4.2という超伝導アンジュレーター、マルチポール以外のことを言いましたが、アメリカでは現状、ネクストジェネレーションライフソースといって、これはFELのときに使うアンジュレーターを今、開発しています。これは横軸が周期長、縦軸がBゼロです。今、LCSで実際に考えているのは、こっちのハイブリッドのパーマネントマグネットライン、ここですが、彼らはニオブチタンとNb3Snでこういうライン状のものを作ろうとしている。上は例えば16mmでBが1.5とか、そういうたぐいのものですので、割にコンパクトでスペクトルが1次光と3次光から連続的につながるという、ある意味じゃ利便性の高いアンジュレーターが、こういう超伝導を使うことで実現しそうな雰囲気になっています。

 こういういろいろなところで今、開発されている技術要素というものをうまく組み合わせるということが、今後非常に重要になるかと思います。だからそういう意味では、世界のいろいろな施設との連携が非常に今後、重要になるかと思います。

 それから、ナノ集光ですが、SPring-8では現状、例えば12.4keVのところで、100nですかね、集光ができています。一方、これはPETRA-3ですが、このKBミラーの後にFZPを置いて集光したのが4.3nと4.7、これは数keVだと思いますけれども、そういうものが今、実現しているということで、世の中ナノフォーカスにだんだん入っていくことになります。そのときに最も重要なこと。

 これは加速器をやっている装置側から考えて、ちょっと心配ごとということですが、こういう施設で試料位置での光子数というのは一体どのぐらいになっているのだろう。これは前回も前々回もあったかと思いますけれども、余りにもフラックスが高過ぎて試料がもたないという話もありましたけれども、例えばPFのBL-1A、これは多分PFの中でも多分一番強い軟X線のラインだと思いますが、これで4×10の11乗。それから、AR、SPring-8、ESRF、NSLS。一番高いので10の13乗個、12.4keVという値になります。これを単純に計算すると、20W/nm2ぐらいになります。という熱というのか、X線のビームの持っているパワーとしてはこの程度あります。ですので、こういうハイパワーのものに、今後ナノビーム化していったときに、このハイパワー化に追従するような試料の問題が出てくるような印象を、私自身は持っております。これが危惧であればいいのですが。要はここにある熱的とか放射線損傷の課題というのは、今後入射パワーが更に上がったときにどうなるのかというのは、よくよく考えておいた方がよろしいかと思います。

 そうは言っても、高輝度化したときにメリットがないのかというとそうではなくて、輝度という指標を少し捨てた方がいいのかなという感じがします。ここに挙げているのは、ナノ集光したときに、さっきのハイパワー化になるのですけれども、それの使い方もそれ自身あるのかもしれません。それから、高コヒーレンス。それだけハイパワーになっているんだったら、コヒーレンスが今の状態でも、多少先ほどの極限をいかなければ、1%以下しかありませんので、ビームを加工してコヒーレンスのいいところだけ100分の1にして使えば、それでコヒーレンスはほとんど100%が得られるのだったら、そういう使い方もあると。

 それから、非常にたくさんフラックスがあるのだったら、いわゆる高エネルギー分解能のX線にしてしまって、加工してそれを使ったらいいのではないか。それから、2次元半導体検出器。多分これが一番主流になるのかなと思いますが、さっきの放射線損傷だとか熱的な問題というのは、セキウン型だとずっととっていればなまってきてしまうわけで、非常に繰り返しの速い半導体検出器を使って、高エネルギーでやっているようなタグ付きのデータをとって、後でそれを戻すというような、そういう新しいシステムを組み込むということで精度が上がるというような部分もあるかと思います。

 それからもう一つ、レーザー、電子ビームによるフェムト秒領域の短パルスX線ビームの生成。これはふんだんにあるんだったら、こういうことをしても十分な実験ができるようなフラックスが手に入るのではないか。

 次が、最後になりますけれども、放射光光源の開発の世界的動向ということで、100pmradに向けてということで、今、世界では2種類の取組があります。1つは、今現在はoff-axisといって、SPring-8もESRFもそうですが、入射をするときに入射軌道を少しずらして、on-axisからずらして、そこに入射をする。そのために入った電子が安定に回る領域がないといけないということですが、超低エミッタンスにすると、その安定領域がなかなか大きくはできないということで、on-axisの入射型のリング光源。これがAPSとかALSで今目指しているswap-outという方法ですが、入っているビームを捨てて、on-axisでそのかわりに入れてしまうという方法です。これですと60ピコとかそのぐらいのエミッタンスでビーム電流が100とか200までいくだろうと、そういう方法があります。これはAPS、ALS、SLSでのアップグレードは、このon-axisでswap-outという方法。

 それからもう一つは、リニアックベース型の光源というので、これは高品質な電子ビームの技術の進展が非常に早くて、現状、0.5πノーマライズエミッタンスで77ピコ。これをそのまま例えばリングへ入れると、マルチバーにして全部入れてしまうと、数十mAに相当するようなビーム強度になりますが、そういう昔ではとても実現できなかったような電子ビームが得られる。その電子ビームのクオリティーの高さを、そのまま超伝導のCWのリニアックをもっていって、加速して、そのまま放射光の発生に使おうというようなものです。

 この2つを組み合わせたのがこの結果にありますけれども、19psecで5GeVまで加速するんだったらと書いてあって、25mAまでいきますよと。それからもう一つは、リングでは絶対に達成できないのがエネルギー分解能。リングでは10のマイナス3乗程度ですが、これは10のマイナス5乗。しかもバンチ長はpsec以下になる可能性があります。これはFELで実際にできているわけですが。リングでは10psecということで、今この2つが走っておりますが、どうも世の中、こっち側の検討が、今急速に進みつつあるという印象を持っております。その理由はこういうことです。リング型光源には到底できないビーム性能の利用が可能になるということです。

 1つ、これはヨーロッパですが、CERNとドイツのベルリン、HZBがコラボして、今考えている放射光施設ですが、1GeVの超伝導ライナックを2本置いて、6回回して6GeVにして、ここで光を出す。光の強度が、平均のブリリアンスが22乗という値になっている。こういうものが高エネルギーで開発された技術と、それから放射光の利用とが連携して、今進みつつあります。

 それから、これはNGLSで、超伝導ライアウトを使ったものですが、これはFELということですが。FELで大強度、CWのビームを高速スイッチングで複数のビームラインにパラで分けて使おうということで、これも非常に高い輝度が得られると。

 アメリカとヨーロッパと日本との取組のまとめたものがこの図ですが、ヨーロッパではCERN、DESY、ESRF、MAX、そういういろいろな研究所がありますが、それが連携をして、こういう放射光施設の整備をやっている。ESRFとPETRA-3という、同じような6GeV近辺の、こちらは高エネルギーのマシのですが、それを転用して、ほとんど同じですが、ハードX線に特化している。それから、Euro-XFELがあって、MAX-Ⅳがあって、あと第3世代という図式になります。

 アメリカではAPS、SLAC、Jeffesonラボ、FNAL、BERKELEYと。アメリカにある高エネルギーの加速器、またはERAの加速器施設、また研究所が連携をして、NGLSの立ち上げをしつつあると。こっちですね。レーザーですけれども。

 それに対して我が国はどうなのかというと、KEKとSPring-8、JAEAとあるのですが、きちっと連携しているかどうかは、今後きちっとしないといけないとは思いますが、まずは特徴的なのは、この部分が我が国は全くないということになります。TPS、これは台湾です。上海、韓国、オーストラリア、オセアニアです。それからSLiT-Jという、このMAX-Ⅳに対応するものが、今日本にはない。FELではSACLA、SCSS+、それから韓国のPAL-XFELというものが今走っているということで、日本、またアジアを含めて、戦略的に施設をきちっと整備することが必要かと思います。

 ちなみにNGLSというアメリカの2GeVの計画ですが、この計画は、何でこの写真を載せているかというと、1つのネクストジェネレーションライトソースと。いわゆるこれは計画の立案はBERKELEYで立案して、その建設はSLACです。ということが、きちっとある枠の中でできているということになります。ですので、今後日本はこうあってほしいなというのが最後で、次世代放射光施設というのは、理研、KEK、SPring-8、JAEA、オールジャパンの体制で取り組むことが必要ではないかと思います。以上です。

【高原主査】  よろしいでしょうか。それでは、何か御質問等ございましたらお願いいたします。どうぞ。

【北岡委員】  ちょっと初歩的な質問で、3ページの現在建設中の赤で書いたリストありますね。これはほとんど同じスペックで、これは世界的に見るとこの光源というのは、どういうニーズがあって、世界中でこういうスペックの3GeVのこういう装置を建設中なのですか。

【熊谷理事】  多分先ほどの動向調査の中で、先端分野というのがありましたよね、青色のポチがある部分。ナノ化とかコヒーレンスを使うとか、多分そういうことだとは思います。そこは利用者の方にきちっと整理していただかないと困るのですが。

【北岡委員】  それと5ページを見ると、先ほどの赤で書いた建設のやつ、これ緑ですよね。我が国は全部それから外れて、下の方に固まっているわけです。これを見ると、我が国は今まではトップを走っていたんだけれども、いつの間にかガラパゴス化してですね。

【熊谷理事】  おっしゃるとおりだと思います。

【北岡委員】  これでもう一遍3ページに戻ったときに、我が国のSPring-8Ⅱがあって、これ、6GeVと100mAうんぬんと書いていて、エミッタンスが0.15というやつは、この5ページのどこにくるのですか。

【熊谷理事】  5ページの次の7ページを見ていただければいいです。7ページのSPring-8Ⅱというのは点線の青があります。これですね。これがSPring-8Ⅱです。今のですよ。現状のパラメーターを使ったSPring-8Ⅱはこのあたりになります。

【北岡委員】  SPring-8Ⅱというのは何ですか。

【熊谷理事】  済みません、SPring-8はアップグレード計画というのがあって、これは石川さんのところで今理研がやっているのですが、現状のリングを全部出して、新しく4ベンドかバイベンドの新しい磁石配列にして一新するという計画です。一新すると、現状のBSSP8のBL47XUという、こういうラインからこの点線のところまで輝度が上がると、そういう計画です。ESRFもAPSも、大型の第3世代の放射光施設というのは世界で3つあるのですが、今3つともアップグレード計画が進められていまして、一番早く多分動くだろうと思われるのが、このESRFと言われるものです。ですので、世界の潮流は、大型放射光施設の持っている機能を更に数十倍上に持っていこうということを、今考えています。

【北岡委員】  考えていると。そうすると、先ほどの5ページの緑で、今建設中のやつは3GeVで、これは非常に汎用性が高くできるという装置は、それを超えるということですか。

【熊谷理事】  いや、これはどう考えたらいいか、これはユーザーの方もちょっと考えていただいた方がいいとは思うのですが……。ちょっと待ってください。

【北岡委員】  先端性ということですよね、今の話のテーマは。

【熊谷理事】  今ここにある点線の部分が、今、中型、例ですけれども、例えば230mで3GeVのリングを考えると、輝度はこの点線の位置にきますよと。その輝度を、今のSPring-8で比べると20キロぐらいまではSPring-8の標準型アンジュレーターのスペクトルとほとんど遜色はない。むしろ高い。もう一つ、340ではなくて480のもう一回り大きいリングにするとどうなのかというと、それは先ほどの47よりもSPring-8の19という30mの直線になりますが、その輝度と20keVぐらいでクロスします。ですので、こういう日本に1か所しかない放射光施設のアップグレードを考えるときに、SPring-8がシャットダウンしてしまっている間、ユーザーの方は外国に行けということになるわけで。ですので、中型リングというのは、ある意味では今ある8GeV大型放射光施設のかなりのユーザーを囲い込むことができるような性能を持っていないと、世界と競争できないんでないかということです。

【北岡委員】  そうすると、先ほどの5ページのこの図を見てもらえると、現状では非常に日本は遅れているというイメージが強くなっちゃうのですけれども、先ほど上田先生のお話で、緑川先生はユニークなやつを作れと言いますけれども、その現状からいくと、その後世界に追いついて、それから追い越せというような形にしないと、施設としては今後、グランドデザインとしては、これだけ今、お話を聞くとマルチディストリアリーで、ヒエラルキーで、ものすごい日本の科学技術、学術基盤、産業基盤、そういうものにも随分差し障りが出るような状況のように見えるのですけれども。私、外部の者なのですけれども。そういうことの中で、実際ユーザーとして調べられたときに、やはりここの危機感とかを持っておられるということですか。

【上田教授】  まず緑川先生の発言というのは、先ほども言いましたけれども、最もラディカルなものでしたが、一応そういう発言があったということは記録にとどめておくべきだということで紹介いたしました。それから、典型的なユーザーの1人としては、既に私のグループの場合、数年前から海外です、正直なところ。プロジェクト、SPring-8で立ち上げさせていただいたソフトX線のプロジェクトは、2008年ぐらいに既に競争力を失って、海外に持ち出しています。そういう意味では、非常に危機感を持っている1人です。

 にもかかわらず、我々が立ち上げたビームラインの競争率が今でも倍なのですね、ソフトX線の27は。ですから、本当にそういう意味では危機的な感覚というのがひしひしと伝わってきましたけれども。

【高原主査】  ほかにございますか。また後ほどのお話とも関連がありますので、何か御質問特に。では、お願いいたします。

【小杉施設長】  今の熊谷さんの話は、加速器の技術という意味で少しというか、かなり日本は遅れているということなのですけれども、ユーザーサイドからすると、現状のSPring-8やフォトンファクトリーでも、硬X線分野では国際的にも標準的な装置というのは整備されているので、そういう意味では完全に遅れているかというとそうでもないと思います。ヨーロッパが何でこういうふうに高いレベルをどんどん目指しているかといいますと、ヨーロッパ全体での競争と協力の中で、一部の輝度などへの需要があるところに対応するためにも、対応できる国から性能を上げていっているという感じで、放射光利用研究全体がそれでよくなるかというと、必ずしもそういうわけではなさそうな気がします。

 一方アジアで見ますと、台湾や中国では、日本よりは後で加速器を使っていますから、加速器的には非常にいいものというか、欧米の流れから今や遅れつつありますけれども、それでも日本よりははるかにいい加速器はできています。しかし、利用という観点からすると、中国や台湾で作られて計画されているビームラインというのはそれほど最先端のものではなくて、日本で言えばSPring-8やフォトンファクトリーでも普通にできるようなものしかないのが実態です。硬X線についてはSPring-8があるおかげで、世界的にも戦えるような状況に維持できていますし、SPring-8が次の計画を目指せば、更に世界的に負けないようなところでやっていけると思います。

 一方軟X線については、SPring-8に相当するものは一切なくて、そのために日本は硬X線にかなりユーザーも偏って、軟X線で本来あるべきユーザー層は減少してしまい、今回の東北大学によるニーズ調査の際にも、本当の意味で軟X線の最先端の議論ができたかというと、私は一部メンバーに入っていましたけれども、必ずしもそうでない印象を持っています。だから、軟X線でも今の世界標準はちゃんとやれるようにしないといけないし、更にヨーロッパ等がうまく連携をとって目指しているような先端性も入れたような形のリングを作っていかないと、なかなか軟X線のユーザー層が世界標準レベルまでキャッチアップし、更に追い越していくところができないかなという印象を持っています。以上です。

【高原主査】  ありがとうございました。何かございますか。特によろしいですか。

【熊谷理事】  特にないです。

【高原主査】  それでは、時間の方もきておりますので、続きまして議題の3の方に移りたいと思います。

 では、まず事務局から、報告書の骨子案について説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【工藤室長】  それでは、説明させていただきます。資料2の次世代放射光施設検討ワーキンググループ報告書骨子案(論点整理)につきまして、まずこのペーパーの構成と今後の使い道といいましょうか、これが一体どういうものであるかの全体を御説明いたします。この骨子案はAとB2つ項目を分けてあるのですけれども、Aにおいてはワーキンググループの概観、それから議論の観点。そして今回、分野固有の観点というものと研究分野・対象に係る横断的な議論求められる波長領域。こうしたものに加えましてB、今後整理が必要な論点というふうに設けておりますが、これはこの後、それぞれの項目を膨らませる形で報告書が作られる、1つのスケルトンであるというふうに御理解いただければと思います。

 したがいまして、まずこのAの検討経過については、これまでここの場で議論していただいた内容を俯瞰して説明してあります。そして裏面のBはこれまでの議論を踏まえて浮き彫りになってきた事柄、殊更に今日の東北大学の調査結果、それから熊谷先生の世界の動向、こういうものを踏まえると、大分浮き彫りになっていることが皆さんの中に共有されてきたのではないかと思うのですが、これを1つの形として、結論を得るためには、まだ少し議論が足りないなと思う点に気付きましたので、この点について書かせていただいたのがBの施設性能に係る論点整理と運用体制に係る論点整理になります。

 すでに年末に皆様に、取り急ぎまとめたものを御紹介させていただきまして、いろいろ御意見いただいた部分もございました。その点につきましては、今、スライド上に青字でいただいたコメントをまとめたものを映させていただいています。お手元には配付しておりません。

 最初のワーキンググループの概観につきまして申し上げますと、これまで、領域ごとに先生方に検討事項、技術的課題についてひとしきりプレゼンいただきまして、かつ、それにつきまして検討いただきました。この中で、各個別の課題についてのものもありましたし、更に分野によらないような横断的な事項、共通的な事項についても大分分かってきたことが、概観でございます。

 続きまして、2.の議論の観点につきましては、これは第4回になりますけれども、我々事務局の方から、議論の観点を配付させていただきました。それをそのままこの中にビルトインしております。もちろんこれは報告書をしたためるときには、この観点に従って議論した内容もここに入ってくるというふうに理解をしています。

 そして、先ほどの繰り返しになりますけれども、分野固有の観点というものが、それぞれの分野の先生方からいただいたコメント、それから議論を踏まえまして見えてきたものというのをここに記載いたしまして、次のページに今日も東北大学の調査結果において見えてきているのだと思うのですけれども、各研究分野対象に、横断的な事項としての、特に非平衡・不均一系とかアモルファス系といったものに対して講じようとする研究手段、具体的にはin situ、オペランド観察といったものが重要になっていることを記載しております。

 それからその上に、求められる波長領域として、これはいろいろな議論がございましたけれども、やはり技術的な特性として、先ほど熊谷先生からもありましたけれども、硬X線領域と軟X線領域、大分オーバーラップする部分がありますけれども、両方において回折限界というのは技術上不可能であり、こういった波長領域ごとに最高の光というのを求めるというのは、1つの施設でやるのが本当に、それは技術的にできないものをどう実現するのかというのが、多分ここで必要になってくるというふうに考えました。

 そこでBに移るのですけれども、今後整理が必要な論点といたしまして、施設性能を本当に1つの施設で、いわゆるonsize fits allといいましょうか、全ての要求を1つのもので満たすというのができない以上、これをどういうふうに考えてやっていくのか。ある程度妥協しながら、様々な要求に応え得る施設を作ってやっていくのか、それともそれぞれ能力の得意とするところある程度焦点を置きながら施設を作り、それぞれが相互に緩やかに連携していくようなものを目指していくのか、この辺をもう少し御議論いただければなという思いで書いております。

 また、多少従属変数的になるのですけれども、施設の運用体制についても御議論ございました。この運用体制につきましても、1の方で施設性能の捉え方を、まさに連携した形で見ていくのか、それとも個々の施設がそれぞれかなりの領域をカバーしてやっていくのかという、これに従属する形で、例えば運転支援員、いわゆるビームラインサイエンティストやコーディネーター、アドミニストレーターといった方々をどういうふうに配置していくのか。それから、教育的な要素をどうやってカバーしていくのかということが、おのずと決まってくるのではないかなというふうにも考えております。ここはあくまでも我々の見積りにすぎないのですけれども、もしこの点についても精力的に御議論いただければ、時間的には大分短くなってしまったのですけれども、ひとつよろしくお願いいたします。私からは以上です。

【高原主査】  ありがとうございました。それでは、ただいま事務局の方から説明のありました、報告書の骨子案について、骨子案そのものに対する御意見と、それから、できればBの今後整理が必要な論点(案)ですね、そちらの方に重点を置いて、今日は御議論いただきたいと思いますけれども。まず、この骨子案に追加すべきポイントや認識が異なる点など、御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。

 最初のところから出していただけますか。まずワーキンググループの概要ですけれども、これに関しまして、何か追加すべきポイント等ございましたらお願いいたします。年末に配っておりますものから、少し変わっている部分もあるかと思いますし、また、いただいた意見が全部反映されていない部分もございますので、ちょっとその点は、期間も短かったので御承知おきいただきたいと思いますけれども。

【工藤室長】  すみません、補足いたしますと、このペーパーそのものの書きぶり自体は、細部は時間がなかったもので、大分粗い部分がそもそもございます。最終報告書にするときには、この柱に沿って増やしていく、内容を充実させていくというスタイルをとりますので、必ずしも今ここに記載されている事項の逐一について、これは違うとか、こういうふうに変えたらいいという御意見をいただくのではなく、むしろもう少し骨太といいましょうか、項目そのものとしてこういうものを入れてはどうかといったご意見をいただければというふうに思います。

【高原主査】  じゃ、続いて2の方で、議論の観点ですね。次世代放射光施設の役割。それから、2番目に次世代放射光施設の設計・整備に際して考慮すべき制約ですね。これはその次のBの方とも密接に関連してきますので、そちらでもかなり細かい点を入れていくことが、そちらで細かい点を入れていく必要があるということになりますので。それから3番が、分野固有の観点。これが先日の年末にお送りしたものからプラスアルファした部分になります。それから、4番目が研究分野・対象に係る横断的な議論というのを行いまして、その後求められる波長領域というのについて、これまでの検討結果、これは概要ですけれども行ったということですが、このほかにもこの検討経過として入れた方がいいという項目がありましたら、御提案といいますか、御意見いただければと思いますけれども、いかがでしょうか。小杉先生、お願いいたします。

【小杉施設長】  すぐ次世代の放射光施設のコンセプト設計という議論に入っているのですけれども、その前に現状把握して、そこで何が問題かというのを書くところがあってしかるべきだろうと思います。

【高原主査】  ありがとうございます。現状把握ですね。

【工藤室長】  はい、分かりました。

【高原主査】  これにあと肉付けしていきますので、どうぞ御意見がありましたらお願いいたします。

【佐野委員】  産業界側の方から、一度議論が出たと思うのですけれども、大きなものを見るようなスペースを作っておくとかという議論があったかと思うのですけれども。例えば、タービンを回しながら見るとか、そういったものが本当に必要かどうかはあると思うのですけれども、そういった議論がある、あるいは、そういった実験ができるスペースがあるとかというのも、1つの売りになるんでないかなというふうに考えています。

【工藤室長】  ありがとうございます。恐らく産業分野の中で、それぞれ確かにスペースが必要とか、そういった要望があると思います。その点につきましては、恐らく分野固有の観点の中の1項目として、多分入れさせていただく方向になるかと思います。

【高原主査】  産業界が求めるものということですかね。

【工藤室長】  はい。

【高原主査】  ほかにございますか。ここはだから、今までに検討してきた経過ということですので、ここで何か落ちているというのがあれば、入れておいていただければよろしいかと思います。

 大体よろしいですか。そういたしましたら、これはまだ時間的にあといろいろなことを入れ込む余裕というのはございますので。続きまして、Bの今後整理が必要な論点(案)をお示ししていただいている論点に対する御意見ですね。ここにつきまして、議論を行いたいと思います。

 まず、施設性能に係る論点整理ですけれども、次世代放射光施設の検討に当たっては、施設性能の所在をどこに求めるべきかということで、これが1ページ目ですね。それから、2ページ目。青字でも入れておりますけれども、こういったポイント、論点というのを整理して入れておりますけれども、そのほかに何かこういった論点というのを入れるべきというのがございましたら、ここでまず項目別にいきたいと思いますので、御意見をお願いできればと思います。本日のも含めて、ここで御指摘いただければよろしいかと思います。小杉先生、お願いします。

【小杉施設長】  最初の議論の観点で、硬X線、軟X線動向という議論がありましたけれども、一方、パルスの議論をした場合には、リング型とライナック型、FELをどういうふうに捉えて次世代を考えるかというところがないと、1つの施設で全て、パルスから何からやるのは無理だと思います。例えば、ドイツでは軟X線のFELは予算化されないことになったためパルスに特徴がある軟X線のFELが持てないという中での解として、高輝度軟X線を担っているベルリンのヘルムホルツセンターがERL的なものをやっていますし、BESSY-IIリングでも光源パルスでいろいろなタイムストラクチャーを持てるようなトライアルを今やっているわけですが、そこまで盛り込んだBESSY-IIのようなものを次世代の中型施設に考えるかどうかというのは、ちゃんと整理しておかないといけないのではないでしょうか。パルスなど時間特性の方はFELで集中して考え、リング型では時間特性以外の特性を重視する方向で考えるのでいいかどうかは結構大きなところだと思いますので、そのあたりはどこかに入れていただきたい。

【高原主査】  分かりました。

 お願いいたします。

【石川センター長】  熊谷先生のお話にもあったのですけれども、まず1つはエミッタンスというのが、我々の何かを記述するいいパラメーターになっているのかどうか。ここはかなりちゃんと考えないと、エミッタンスを小さくしていけば本当にいいのかどうかというところはかなり疑問があるところだと思っています。

 もう一つ、今、小杉先生のお話、先ほどの熊谷先生のお話にあったように、ナノビームで絞っていけばいいのか。それはもちろん、今皆さんがやっているようなことを小さくするところを見るためには、何か違うことが起こってしまうという心配がいろいろあるわけで、そこはかなり考えなければいけないわけですけれども、一方でナノビームにしてパワー密度を上げていくと、違うことが見えてくるということもあって、そのあたりはいろいろなバランスかなというところがあります。

 最初の10nに絞って1nの分解能という上田先生のお話にもございましたように、ビームを絞るとか、パルスを短くするだけで空間・時間の分解能を考えていいのかというのも、また別の問題としてあって、大きいビームで空間分解能を出すにはどうしたらいいかとか、長いパルスで時間分解能を出すにはどうしたらいいかとか、多分そういう視点もこれから重要になってくると思いますので、余りビームを小さくすればいい、ビームを短くすればいいというところだけでなく、多分考えていく必要があるかなと思っています。

【高原主査】  ありがとうございます。ビームの大きさなんかも、産業界からいろいろな要望というのはあるのではないでしょうか。いかがでしょうかね。ビームの大きさ、コヒーレンシーとか。

【佐野委員】  ナノビームの要求はもちろんありますけれども、あと大きいビームも、あるいはイメージングでは視野として大きいものを見たいというのもございますので、両方かと思います。それで例えば大きいものを見ることになりますと、やはりある程度エネルギーも高くないといけないということになりますので、やはりかなり要望によっていろいろ広がってしまうとは思います。

【高原主査】  ここは、ですからいろいろなパラメーターといいますか、出していただくということが重要ですので、何かここで欠けている部分がありましたら、この場で御指摘いただければと思いますけれども、いかがでしょうか。どうぞ。

【北岡委員】  いいですか。先ほどの、上田先生のニーズ調査の概要で、かなり詳しくどれだけの幅広さと、ビームラインについての階層性とおっしゃっていましたかね。ここで、この調査をどういうふうに利用されるのですか、報告書の中には。かなり議論はここの中で随分詳しくニーズ調査をやられているのですけれども、ここの報告に関する取扱いはどういう位置付けなのですか。

【工藤室長】  この報告書そのものは、文部科学省の委託に基づいて、現状のニーズを幅広く聞いてほしいという要請に基づくものです。それを東北大学に委託してやってもらったという内容になります。

【北岡委員】  でも、この中の重要なパートは報告書に入れる必要はないのですか。

【工藤室長】  東北大学の調査報告書をそのままこのワーキンググループの報告書に入れるつもりはないという意味ではおっしゃるとおりなのですけれども。我々も今回の論点整理を考えるときに、この調査報告の内容についてはかなり参考にさせていただいてはおります。具体的には、先ほど来御説明しているとおり施設間のアライアンスというか、個別にどんな施設として作るかというときに、物理的にやはり1つで全てをカバーするのは困難という点や予算的な限界といったことを考えて、それでも我が国として次に進んでいくにはどんなやり方をしたらいいのかという論点として提示させていただいております。

【北岡委員】  そうすると、私は全然施設を使ったことないのですけれども、軟X線とか硬X線、ブリリアンスとかスペックで切り分けてやられるという話の一方で、先ほど言われたように、話を聞いていると、SPring-8の先端性をどこまで追求していくかという。いわゆる世界を追い抜くというか、新しい先導するような施設としての先端性と、先端性を担保しつつ、やはり基盤として安定に供給できる、いわゆる中核施設という、今、世界で建設されているようなタイプのビーム。そういうことと、既存の施設をどううまく利用して、その先端性、あるいは今の施設でも大丈夫だという人だっているわけで。そうすると、今の既存の施設をどういう形で商業的利用とか、人材育成面で使う、転換するとか、そういう3層構造。先端性と汎用性と、それからユーザビリティー、それと既存の施設の有効利用、そういう3層構造である程度、国がカバーされるコストも含めて、どうやってやれば一番効率的に、世界に追いつかなきゃいかんわけで、世界に追いつく、あるいは追い越すという形のトータルグランドデザインをやはりどこかで書かないと駄目なんだと違いますか。

 運用面では、やはり先ほど熊谷さんのお話があったように、オールジャパンで、いろいろ行政側もそれを一括して、どうやってうまく運用して、効率的にコストパフォーマンスを上げて運用していくかと、階層構造の中でね。そういうグランドデザインみたいなものをどこか書いておかないといけないのでないかというのが、私は常に第三者の立場からコストパフォーマンスを言っている立場からいくと、そういうことをやはり真剣に考えて、次の世代の、作るだけ、使うだけではなくて、やはり全体トータルの運営も考える必要があるというのが、私の意見です。

【高原主査】  ちょっとこの青字で追加している部分が、それも一部含んでおりますので。次世代という言葉をどういうふうに考えるかということも含めて議論していきたいと思いますけれども。いかがでしょうか。今、北岡先生から御意見をいただきましたので、もう少し分かりやすくこの中に入れていきたいと思いますけれども。

【石川センター長】  いいですか。今の北岡先生の御意見は、多分もう一歩進めてしまうと、一つ一つで次世代とか何とか考えるのではなくて、トータルとして、日本に次世代放射光のスイッツを作ったらどうかという御提案ですね。

【北岡委員】  そうです。

【高原主査】  アライアンスですね。アライアンスか、機構といいますか、そういう。

【北岡委員】  オールジャパンというのはそういう意味でしょう。使うのも作る方も、あるいは行政、ユーザー、施設側、運用も全部トータル含めてオールジャパンなので。そういう意味では、限られた資源を、我々から見ると大型施設なので、その辺のところのグランドデザインをトータルで考えていただかないと、やはり社会の中の学術としての位置付けすると、もちろんそこからかなりイノベーションは生まれてくるのだろうと思うし、本当の基盤でしょう。それをやはりやるためには、新しいアイデアで、新しい運営体制でやってもらわないといかんのではないかと。パブリックコメントです。

【高原主査】  ありがとうございます。ほかに御意見ございましたら。いただいた御意見に基づいて、またこれに肉付けをしていきますので、ここで出していただくと一番私どもとしてもやりやすいことになりますので。

 はい、どうぞ。

【尾嶋委員】  じゃ、1ついいでしょうか。ちょっと今の御意見と関係するのですが、それと緑川さんのユニークなというのが、まだちょっと引っかかっておりまして。やはりいろいろな状況を考えますと、ユニークさを出すのは、高輝度の先の先まで先回りして追求していくというのは、ちょっと私は全体のバランスから見ると得策ではないんでないかなという意識を非常に持ちました。熊谷先生のお話は非常によく分かって、しかもここは足らないというのはあるのですが、何かちょっとこういう言い方はあれですが、何か切りがないんでないかなという。だから、やはり今、日本の国力とか、それから日本の持っているSPring-8、SACLA、それと考え合わせて、足らないところは軟X線であり、それから連携という言葉が非常に僕は大事だと思っていて、放射光だけで何かを言うというのではなくて、そこにも書いてありましたけれども、NMRとかJ-PARCとかミューオンとか、そういうのと連携しやすいような体制を作っていくと。

 もう一つは、3極構造もやはり意識しなくてはならないと思って、それはおっしゃるとおりで。3極構造の中には、各々がハードX線とソフトX線で書いてあって、ソフトX線の中には、やはりアジアという観点で先ほどくくられましたけれども、私は非常にいいくくり方だなと思っていて。台湾も2016年、それから韓国もそういうのができてくると。だから、そこに対して日本のユニークさ、オリジナリティーが、0.98nmですから、もうちょっと下がるかもしれませんけれども、そこでもやはり十分出せると。それにはやはりユーザーから見て、使いやすい施設が、要するにリピーターになるというか。行ったらちゃんとコンシェルジェやってくれて、1年後には新しい測定もできるようになっているという、そういう余力を残すためには、ここで340mを480m、それから600mとか切りがないので、僕はそれは見識としてはやはりおかしいと。やはり日本全体のオールジャパンの体制で考えて、今、我々がその次に何をやらなくちゃいけないかというのを、要するに冷めた目で見ていかないと、開発競争してもしようがないような気がしております。

【熊谷理事】  今の尾嶋さんのお話で、別に486mの方がいいよというつもりで言ったわけでなくて、それだけ周長を伸ばしても、高々2倍にしかならない、3倍にしかならない。だから、もうそろそろどこかで落ちつきどころがあるのではないかというニュアンスで言おうと思ったのですが、別の捉え方をされたのではちょっと。

【尾嶋委員】  分かりました。

【上田教授】  1つだけ、すみません。時間の関係で省略したのですけれども、私の方の資料の25ページに、運用のことに関するいろいろな意見、全てではないのですけれども、かなり記してあります。調査の中で非常に多くの方が、運営に関する御意見を述べられていました。省略した理由というのは、今聞いたとおり、ここでも結構いろいろ出てきているものですので省略させていただいただけです。25ページですけれども。特に利用申請、これは企業の関係ですけれども、とにかく速やかな対応をしてくれる施設が欲しいということは散々出てきています。先ほどのコンシェルジェ、あるいはコーディネーターの話も必ず出てきていました。

【水木委員】  よろしいですか。ユニークさの中で、今の運営形態等、尾嶋さんがコメントされた、使いやすいということを含めた運用形態は、放射光だけでなくて非常に重要で、やはりテーマというのがユニークさを出せると思っていて。リングの方でのユニークさというよりも、むしろこういう研究、実験は日本でしかできないというようなテーマを設定する、あるいはそういう施設にしていくというのが重要かなというふうに思います。

 幾つかあるのかも分かりませんが、今回の発表、今回というよりはこの委員会での発表の中で、かなり個人的ではありますけれども、前回の内海さんが発表されたような放射性、あるいは廃炉に関わるようなこと、これは本当に全世界の問題ですので、そういうような本当に真剣に、真面目に放射光で研究することによって、廃炉に向かっての技術開発ができていくというようなのをやっていくのは、日本は今からでも全く遅くないし、日本でできるのではないかと。今から設計していくとですね。それは1つの例ですけれども、例えばそういうふうな形で、ユニークさを十分出せていけるし、出すことによって、日本に対する尊敬の芽が出てくるのではないかと思います。

【上田教授】  よろしいでしょうか。

【高原主査】  どうぞ。

【上田教授】  それに関しても、ニーズ調査で1人ではなく複数の方がおっしゃっていただいていました。具体的には原研の方、それから分野外の方からも、そういうことを放射光施設が目指すべきだという御意見はいただいています。報告書には全てそういうことが記載されるかとは思いますが。

【石川センター長】  よろしいですか。テーマってとても重要で、ですのでテーマを決めていくということは、次のことを考える場合に非常に重要なのですが。ですが、振り返って放射光がどう進んできたかを考えると、例えばSPring-8を作るときに、いろいろな議論をしました。こんなことができる、あんなことができる。いろいろなSPring-8ができる前に考えていた議論というのは、とても魅力的なものがたくさんあったわけだけれども、そういうのってSPring-8ができてから1年か2年で大体終わって、その後は新しいのがどんどんきた。どんどん新しい課題がやってきて、新しい課題を解決していくというのが、多分放射光で。

 ここの会議でいろいろなお話を聞きましたけれども、いろいろなお話でも、やはり入ってきて解決していく。解決してしまうと次の課題がきて、で、また解決していく。そういう分野の特性というのが、世界中の放射光を多分支えているんだと思います。それはかなりほかの分野でもあるのだろうけれども、放射光って光という非常に使いやすいプローブにかなり特徴的なものなので、やはり根本的なところには、何か新しい課題がきたら、それを解決してやろうというところがないと、この分野、どこかで行き詰まってしまうのではないかというふうに感じています。

【高原主査】  ありがとうございます。一番下に書いてあることもそれと関連していますし、それぞれのユーザーの方はいろいろなアイデアを持っていて、それを施設の方に、こういったものを解決したいということでお願いしていくということでどんどんサイエンスというのが高まってくるということになるかと思いますけれども。

 まず施設性能に係る論点整理というのは大体このあたりの部分と、先ほどの御指摘でよろしいでしょうか。また何か追加がありましたら、事務局の方にメールでお知らせいただいて、それで肉付けをしていってまとめていくというふうな形にしたいと思っております。次回、そのあたりに関してはもう少し細かいところをまとめていくということで、特に御意見ございませんようでしたら、次の施設の運用体制ですね。

 これは東北大学の25ページのところですかね、それとも関連していまして。運転時間の確保ですね。これがだから、アライアンスとかをうまく作れば、このあたりが非常にスムーズにいくということも考えられますし、それから、遠隔自動システム、そういったやり方ですね。それから、人材育成。これはビームラインサイエンティスト、コーディネーター、アドミニストレーター等と書かれていますけれども、これは先ほどの東北大学のスタッフというところにありますけれども、非専門家ユーザーでも最高水準の測定が行えるように専任研究、技術スタッフの常駐、充実ですね。このためには、やはり今、なかなかいい人材がいないということで、そういった人材を育てるための大学教育というのも含めて、考え直す必要があるのかなと思われます。

 それから、立地です。交通の利便性、企業や大学等の研究環境との時制的観点というのもありますし、また本当に最先端の施設であれば、どこにあっても皆さん使いにくるというふうなところもございますので、そのあたりのバランスのいい使い分けですね。そのあたりを、やはり次世代では単独施設というのではなくて、アライアンスみたいなものを含んだ形でうまくやっていくというふうなことが望まれるのではないかと思います。

 それから、分野融合や学際性ですね。次世代放射光施設特有の新たな技術課題等について、分野横断的な観点から幅広い議論が必要であると。その際、施設の技術性能や分野特性についても固有の役割、期待をどの程度考慮すべきか、ということで、施設の運用体制等に係る論点整理というのをここで挙げております。この東北大学の要望、これはだからユーザーの要望ということで、これらは大体入っているのではないかなと思いますけれども。ちょっと緊急性の課題とか、このあたりの細かいことに関しては、会社の場合は不良品解析とかですぐ使いたいとかということがありますので、そういったことだと思いますけれども、そういったところも取り込んでいく必要があるかと。これはだから、運転時間を確保していて、ある程度の性能の施設が幾つかあれば、いつでもカバーできるということになりますけれども、このあたりに関しまして何か御意見等ございましたら。村上先生。

【村上副所長】  これまでの会議でも何回かお話が出たのですけれども、今持っている設備、あるいはこれから作る設備を、最大限に成果を出していくためには何が必要かということなのですが、日本の放射光施設の場合、決定的に海外と比べて非常に厳しい状況にあるというのは、やはり施設のスタッフ数なのだと思うのです。これはやはり成果最大のためにはどの程度の人数がそこの施設で働くべきか、それはとりもなおさずユーザーの方々にどのぐらいサービスできて、どのぐらい使いやすい施設にしていくかということと密接に関係しておりますので、ちょっと人材育成というところと関係するかと思いますが、そういう施設の中のマンパワーというものの観点も、やはり重要なのかなと思います。

 それが1つと、もう一つは、オールジャパンでとにかく全体として放射光、いろいろなところと連携、他分野、量子ビーム、あるいはさらには違う分野との連携というものも非常に重要ですけれども、一応放射光に限って、放射光の中で、オールジャパンで連携していく。その連携したときのトータルのビームラインといいますか、簡単に言えばビームライン。一体今後、放射光価格がどのぐらいの量のビームライン。それは性能に関しては、もちろん総合的ではないといけないと思うけれども、定量的な全体のパワーがどのぐらい本当に必要なのか。現在だけを考えるのではなく、今後の伸びしろも含めて、あるいは全く新しいユーザーが入ってくるという可能性も含めて、難しいとは思うのですけれども、そこはリングの大きさという観点がありましたけれども、それはエミッタンスとかそういう話ではなくて、やはりビームラインの数がどれぐらいとれるのかとか、そういうことが1つ重要な観点ではないかなと思っておりました。ちょっと運用とは2点目は違うことですけれども。

【高原主査】  だけど、運用とはものすごく関わる重要な問題だと思いますけれども。

 ほかに。小杉先生、お願いします。

【小杉施設長】  運用のところで、人材のことが書かれているのですけれども、そこで言っている人材養成というのは、施設を作って、その後どういうふうに成果を出していくかというところの支援体制の人材養成だと思うのですけれども、現在先端的と思って作って、利用のモードに持っていっても、10年後にはそれは標準化されたりしているわけです。つまり、先端性を持ち続けるための人材養成という意味では、いい光源が存在することで、どんどんその性能を引き出すための新しい先端性を生み出していくような10年程度の人材養成サイクルを入れないといけないはずです。先端的な光源加速器を作っても、実験装置を長期間、10年、20年、まあ、30年もつかどうかまでは分からないのですけれども、ずっと維持して支援するだけの人材養成だけでは、多分長くはもたないと思います。

 ある意味、それが日本で軟X線の人材がうまく育たなかった理由で、先端的な実験装置開発にチャレンジしようと思っても、優れた光源がなければ人材も育たないことになっているわけです。硬X線の方はSPring-8があるおかげで何とか先端性の人材養成サイクルを作っていっていますけれども、軟X線で次世代光源ということになってくれば、そういう人材養成サイクルを組み込むようなところを是非入れていただきたいなと思います。

【高原主査】  確かにそうですね。水木先生。

【水木委員】  今のお話、私の理解では、先の話を考えると、やはり大学の学生だと思うので、そういう人たちが今後放射光に入ってきて、彼らがどういう新しいものを、アイデアを出していくかという。だから、この人材育成は、中の人材育成だけではなくて、多分そう言われたんでないかと理解しているのですけれども、大学との連携の在り方とか、そういうのが非常にこういう施設では大事かなというふうに思いますので、そういう観点が議論で必要ではないかと思います。

【高原主査】  ありがとうございます。確かにエデュケーションのところからも含めて。何か新しい大学院構想とかが出てきていますよね、今。そういったものと絡むのかもしれませんけれども、先端的な人材を育成するというふうな方向性というのも、1つ出てきているようですので、そんなところとの絡みになるんでしょうか。

 ほかに御意見等ございますか。

【熊谷理事】  ちょっとよろしいでしょうか。装置側というか、加速器側から見ると、日本の場合と、それから諸外国の場合とで違いがどこにあるかというと、例えばヨーロッパとかアメリカですと、自分の研究所の中に技術職員をきちっと持っていて、そこで技術開発をしている。ところが日本の場合は、技術開発をするかなりの部分を民間の企業にお願いしているのですよ。今後、本当に新しい装置を作ろうとしたときに、その技術を一体どこに残しておいたらいいかということは、きちっと議論しておくべきなのだと思います。民間の会社で残せる技術と、それから、そうでない技術というのをまず仕分けをして、その上で技術開発の方向性をきちっとしないと、今後10年先とかになったときに、何か新しいものを作ろうという提案がされたときに、国内ではできませんよということになりかねないと思いますが。やはりそこのところをきちんと考えていくべきだと、私自身は思います。

【高原主査】  ありがとうございます。石川先生。

【石川センター長】  多分今、熊谷先生がおっしゃったことが、まさに輝度の予算構造に反映されているところではないかと思うわけです。これは多分――多分ではなくて、30年前、40年前から同じようなことをやってきているわけで、そこで随分我々施設が、人が足りないといっても、40年くらい前に決まった構造の中で動いているところがあって、これは非常に歯がゆい思いをしているわけですが。ただ、そうであったらあったで、民間と我々がしっかりと、これもある意味でオールジャパンのアライアンスでございますけれども、作った上でやっていく仕組みというのをしっかりと考えなくてはいけなくて。そこで金が足りない、期間が足りないといっていても、本当に足りないだけになってしまうのかなという感じがしています。

 ちなみにこれ、いつも申し上げていることですが、APSとLCSのオペレーションのバジェットに対して、SACLA、SPring-8は半分でやっています。これはどうでもいいことですが、一言言っておきます。

【高原主査】  ありがとうございました。このあたりはまだ議論を続けると切りがございませんので、後ほどまたこの論点整理の、今日いただいたものに基づいて、更に追加したものを事務局の方からお送りいたしますので、そちらにまた御意見をいただいて、ブラッシュアップしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ちょっと時間が超過してしまいましたけれども、最後に事務局よりお願いいたします。

【岡村補佐】  本日は、どうもありがとうございました。次回が最終回になりますけれども、3月9日月曜日、15時から、文部科学省の3階の特別第2会議室、今回と同じ会議室にて開催いたします。次回、本ワーキンググループの報告書の案、本日は骨子案でしたが、その肉付けした後の報告書の案について御議論いただく予定です。追加でコメント、御意見などございましたら、事務局の方まで、メールで結構ですのでお寄せいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【高原主査】  それでは、本日の会議を終了いたします。大変お疲れ様でした。どうもありがとうございました。

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究開発基盤課量子放射線研究推進室

(科学技術・学術政策局研究開発基盤課量子放射線研究推進室)