資料第12-3号 :2011年度第2次土壌採取等調査について(案)
1.概況
○ 6月から7月にかけて実施した第1次の土壌採取等調査により、空間線量率分布、放射性核種毎の沈着量分布、線量に寄与する主な核種等、現在の詳細な汚染状況が明らかになった。ここで得られた知見さらには航空機サーベイで得られた知見を基に、適切な第2次調査を計画する必要がある。
○ 被ばく線量に寄与する主要な汚染核種はCs-137、134であることが明らかであり、今後これらの核種の分布、挙動を追うことが最重要課題である。線量評価、核種移行モデル、環境除染等への寄与を考慮すると、深度分布の測定が重要となる。
○ その他の核種に関して残された課題として、I-131の汚染マップを充実させるために、過去の文科省等のモニタリングデータ及び加速器質量分析装置(AMS)を使用したI-129分析データを参照し、マップデータを改訂する作業があげられる。また、社会的には、プルトニウム、ストロンチウムの測定に対する要望がある。
○ 第1次調査で得られたような多数の自発的参加者の協力を次回も望むことは難しい。調査を実施する人員を組織的に集めることを考える必要がある。核種分析についても、第1次調査のように多数の大学で分担して分析を行うことは難しいことが予想されるため、信頼性を確保しつつ限られた機関での分析を行う。
○ 調査の実施方法についてはいくつかの改善点が考えられる。データ処理・解析に関しては、手書き記録方式を用いたことに起因して、電子化に多大な労力を要す等、本質的でない部分に相当の時間と労力を費やしたため、合理化が必要である。
2.基本方針
○ 調査の継続性
- 汚染状況の経時変化を調べるために、前回行った調査と同じ内容、同じ地点での測定を実施することが原則として必要である。一方、測定地点数は大幅に減らし、またより簡便な方法での置き換えを行うことが可能である。
○ 調査の最適化・重点化
- 第2回調査を適切に実施するために、調査項目、項目毎の実施数、実施範囲、代替の選択等、計画全体の最適化について検討する。また、第1次調査の結果を基に、被ばく線量評価や今後の対策上重要と考えられる地域に対する調査の頻度を高める。
○ 未調査地点のカバー
- 第1次調査でカバーできなかったが重要であると思われる地域の調査を行う。特に走行サーベイについては、栃木、群馬等、前回走行できなかった地域を対象とした調査が必要である。
○ 視点の変更
- 核種の同定の必要性は小さい
- 平面密度より深度分布が問題になる
- 汚染の経時変化に比べて地域変化がより重要
○ 新しい技術の導入
- 土壌深度分布測定:スクレイパープレート
- 核種定量:Ge 検出器を用いたin situ 測定
- KURAMA-IIによる生活環境広域測定
- ラジプローブを用いた走行サーベイ
○ 調査の効率化
- 組織的に調査実施者を集約:モニタリング関係業者や地元自治体等の参画
- 手書き記録にかわりデータ自動収集装置を開発、使用
- 測定拠点の分散化:二本松、東海村、高崎、柏
3.実施計画案
(1) 土壌試料採取
a) U8容器による土壌採取測定
- 3 チーム、10 日間、1日5点:150 地点(80km圏内100地点、計画的避難区域、80kmに含まれない自治体あるいは高汚染地域50地点)
- 750試料を分析センターと東大で核種測定
b) 深度分布測定
- 30cmパイプ and スクレイパープレート(10 試料/1地点):100 地点
- 1000試料を分析センターと東大で核種測定
(2)in situ Ge 検出器測定
- 10台のGe 検出器を使用して12日間測定、1日に5地点:600 地点
- 基本的に80km 圏内外の地域を中心に測定:必要に応じて福島から離れた地点の測定も考慮
- 土壌試料測定で検出されなかった核種にも注目
- 分析センターが全体を統括する形で実施
(3) 空間線量率のみ測定
- 10台のサーベイメータを使用して15日間測定、1日10地点:1500地点
(4) 走行サーベイ
- 福島地区の主要道路を測定(経時変化):3000km
- より広域の汚染地域の測定(栃木、群馬、茨城、埼玉、千葉、東京):60000km
- 10台のKURAMA、1日に200km、延べ30日程度
- ラジプロープ(放医研)を使用してスペクトル測定
(5) 関連詳細調査等
- 核種移行調査(筑波大ほか)
- 狭域詳細調査(原子力機構)
- Sr-89、90、Pu-238、239、240、241 の調査(分析センター他)
- I-129分析(学習院大学、分析センター)
- データベースの充実(原子力機構):データの追加、解析、英語版の公開
- KURAMA-IIを利用した線量率データ収集配信システム(原子力機構、京大、地方自治体)
(2011/10/25 原子力機構 斎藤)