科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業の今後の推進方策について

平成27年12月
科学技術イノベーション政策のための科学推進委員会

科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業の
今後の推進方策について


平成27年12月21日
科学技術イノベーション政策のための科学推進委員会


  科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業(以下「本事業」という。)は、今年度で、事業開始から5年度目を迎え、事業の中間評価が行われたところである。
全体の中間評価終了後、科学技術イノベーション政策のための科学推進委員会(以下「推進委員会」という。)においては、評価結果を踏まえた今後の推進方策等について議論を重ねてきた。これらの議論の内容等を踏まえ、今後の本事業の推進方策について以下のとおり提言する。

1.今後の事業の在り方について
  中間評価においては、本事業が、現状では個別の成果や人材を通じて政策形成への貢献をしているという評価をされたものの、今後は、個々の研究成果や人材をシステムとして統合し、実際の政策形成に活かしていくことが求められている。あわせて、これらの研究や政策形成等を担う人材のネットワークの強化が重要であることも指摘されている。
  また、これらの実際の取組を進めていくことも必要であるが、一方で、その背景となる考え方、すなわち、「政策のための科学」というものの理念を深めていくことも重要であることも指摘されている。
  来年度で事業開始から6年度目を迎える中、中間評価で指摘されたこのような課題に応えていきながら、「政策のための科学」の深化と「政策形成プロセス」の進化の共進化をより一層推進していかなければならない。このためには、学術的な研究開発や人材育成を精力的に実施していくことはもとより、政策側の出口についても明確に見据えていく必要がある。政策形成の実践への貢献は当然であるが、「政策のための科学」が求められる現場として、中央官庁のみならず、地方公共団体や大学のURA組織なども想定されるところであり、今後、本事業の取組をこのようなところにも拡大・発展させていくことを検討すべきである。
  今後、第6期科学技術基本計画の策定等も見据えながら、新たな推進体制の下、関係者が一丸となって、本事業のより一層の発展を目指さなければならない。

2.本事業の推進体制と今後の議論について
  (1)推進委員会の機能の分割
  これまでの推進委員会については、制度的な議論が中心であり、「政策のための科学」の科学としての発展等に関わる体系的な議論が十分に出来なかった。このため、現行の推進委員会の助言機能と統括機能を分割し、助言機能を担う新たな委員会として、「科学技術イノベーション政策のための科学アドバイザリー委員会」(以下「アドバイザリー委員会」という。)を設置することとする。
また、統括機能を担う「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業運営委員会」(以下「運営委員会」という。)を設置する。

    (2)科学技術イノベーション政策のための科学アドバイザリー委員会
    アドバイザリー委員会は、科学技術イノベーション政策に係る有識者等で構成する。委員の選定に当たっては、今後、共進化をより一層進めていくためにも、政策形成の実務者側としての識見豊かな有識者を委員とすることが求められる。また、前述のとおり、地域やURAの観点から有識者を選定することも検討すべきである。
    アドバイザリー委員会は、本事業を実施するに当たり、具体的には、下記のような検討事項について議論を深めていく。
    議論に当たっては、まず、現代の科学の特性を踏まえること、将来起こりうる社会や科学の変革を見据えること、そして、それらに対し「政策のための科学」がどのような役割を求められているかを考えることが必要である。このような議論に資するため、各委員については、それぞれの専門分野に基づく科学観や科学についての歴史観、共進化の在り方についての考え方を議論に提供することが望ましい。CRDSについては、科学技術イノベーション政策に係る国内外の情報や本事業に係る俯瞰の報告等を提供するなど、議論の充実に資する役割を期待する。
    また、本事業の取組を政策形成の実践につなげていくための議論を進めていく中で、政策形成の側からの情報入力がこれまで以上に行われることが強く求められる。政策形成の側からの情報入力を研究の側と摺り合わせていくことが、共進化の方向性等の議論をする上で不可欠な手段であると考えられる。
    加えて、各拠点や各関係機関、更にはそれ以外の外部の有識者等からもヒアリングを行ったり、積極的なサイトビジット等を行ったりすることで、人材育成や研究の現場の意見を吸収して議論を進めることにも取り組むべきである。このことは、これまでも議論されてきたとおり、現在までの各取組がどのような意味を持ち、それらをどう組み合わせていくことで政策のための科学というものを作り上げていくのかを明らかにすることにつながると考えられる。
    アドバイザリー委員会における議論については、基本的に広く門戸を開き、様々な行政官や若手研究者などが参加し、活発な議論が行われることが望ましい。
    また、各委員には、サイトビジット等の機会を通じて、政策のための科学の取組の拡大にも努めることを期待する。
    議論の結果については、随時、事業全体の方向性に関する意見としてまとめる。文部科学省は、本事業の執行に当たりこれを尊重し、政策形成プロセスの進化に役立てていかなければならない。さらには、文部科学省のみならず、各拠点や関係機関についても、アドバイザリー委員会の意見を活かしながら、それぞれの取組を推進すべきである。

    <主な検討事項>

  1. 「政策のための科学」と「政策形成」の共進化の方向性や方法論
  2. 「科学技術イノベーション政策のための科学」の「科学」の在り方
  3. 政策形成プロセスの進化の在り方
  4. 科学技術イノベーション政策の哲学的・歴史的背景とその将来像
  5. 海外の類似の取組等と比較した、日本の取組の在り方
  6. 本事業の推進による、中長期的な将来像   

    (3)科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業運営委員会
    運営委員会は、事業を実施する機関の実務責任者から構成され、事業の実施内容の調整や追跡調査等を行う場として設定される。
    現行の推進委員会においても、統括機能の発揮の重要性は当初から認識されていたところであるが、この機能のより一層の発揮のため、関係機関は責任を持って当該委員会の運営に当たらなければならない。

3.基盤的研究・人材育成拠点及び関係機関の連携について
    中間評価結果においても指摘されているとおり、個々のプログラムの成果をつなぎ、システムとしての成果を創出し、実際の政策形成に結び付けるためには、各拠点や関係機関等の連携を更に強化する必要があり、このためには、中核的拠点機能の一層の充実・強化に努めるべきである。
    このため、推進委員会による中間評価においても提案したとおり、共通の課題である重点課題に取り組み、より一層の連携強化と政策形成の実践のための研究開発を進めていくことが必要である。重点課題に基づく取組に当たっては、SciREXセンターが中心となり、各拠点やRISTEXが連携して研究開発を進めるとともに、NISTEPやCRDSも、それぞれの持つデータ・情報や知見・人材を活かして積極的にこれに係わり、貢献することが求められる。
    また、研究活動と実際の政策形成の現場とのつなぎを強化するため、現職行政官からなるSciREXセンターの政策リエゾンネットワークの活用が重要となる。例えば、具体的な政策ニーズ等の提示、課題設定への助言、プロジェクト遂行やアウトリーチの支援等を政策リエゾンが行うことが期待される。
    加えて、人材育成の面での連携の意味から、コアカリキュラムの確立についても、各拠点のみならず、関係機関が連携して当たることが望まれる。
    アドバイザリー委員会で議論を進める「政策のための科学」と「政策形成プロセス」の共進化を具現化するためには、SciREXセンターを中心に関係者が連携し、また、人材ネットワークを拡大しながら、一丸となってこれらに取り組んでいくことを強く期待する。

お問合せ先

科学技術・学術政策局企画評価課

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(科学技術・学術政策局企画評価課)