サービス科学・工学の推進に関する検討会(第2回) 配付資料

1.日時

平成20年9月1日(月曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省16F特別会議室

3.議題

  1. サービス・サイエンスの概念とITサービスについて
  2. ロジスティクスの現状と将来
  3. 検討事項について
  4. その他

4.配付資料

5.出席者

委員

 生駒座長、安部委員、大澤委員、太田委員、加藤委員、儀我委員、北川委員、妹尾委員、高安委員、友田委員、長井委員、中島委員、丹羽委員、日高委員

文部科学省

(科学技術・学術政策局)
 泉科学技術・学術政策局長、近藤調査調整課長、川端基盤政策課長、柿田計画官、堀田調査調整課課長補佐、渡邉計画官補佐
(研究振興局)
 大竹基礎基盤研究課長、古田基礎基盤研究課融合領域研究推進官

オブザーバー

(説明者)
 東京海洋大学苦瀬教授

6.議事録

【生駒座長】
 それでは、時間になりましたので、第2回のサービス科学・工学の推進に関する検討会を始めさせていただきます。
 お忙しいところ、この時間帯にお集まりいただきまして、大変ありがとうございます。まず、最初に、今回初めてご出席の委員のご紹介ですが、大澤委員、よろしくお願いいたします。

【大澤委員】
 大澤です。どうぞよろしくお願いいたします。

【生駒座長】
 それでは、本日は3件ございまして、まず第1に日高委員からサービス・サイエンスについてのお話、それから、東京海洋大学の苦瀬先生にお見えいただきまして、ロジスティクスのお話をお伺いいたします。
 それから、3番目の議題がこの前のいろいろなご議論を論点整理していただきました。それをもとに今後どういうふうに検討を進めるべきかということのご議論をいただきたいと思います。
 それでは、まず、資料の確認を事務局からお願いいたします。

【渡邉計画官補佐】
 それでは、資料についてご説明させていただきます。
 一番上が議事次第になってございます。その次が本日の座席表になってございます。議事次第の下に書いてございます配付資料に従ってご説明させていただきます。
 資料1「サービス・サイエンスの概念 ITサービスについて」という横紙、その次が資料2「ロジスティクスの現状と将来」、こちらも横紙になってございます。次が資料3‐1「サービス科学・工学の推進に関する検討会の進め方(案)」。資料3‐2「サービス科学・工学の推進に関する検討会における検討事項について(案)」。その次が参考資料1、前回の検討会における主な意見ということで、参考資料1になってございます。その次が参考資料2、サービス科学・工学研究の推進(平成21年度概算要求資料)となってございます。
 資料については以上でございます。もし落丁等ございましたら、お手数ですが事務局のほうまでお知らせください。

【生駒座長】
 ありがとうございました。
 それでは、議題に進みます。まず、議題1と議題2のプレゼンテーションは続けてお願いいたしまして、その後、まとめて質疑応答をしたいと思います。
 まず、日高委員から「サービス・サイエンスの概念とITサービスについて」をお願いいたします。約20分、お話を願います。よろしくお願いします。

【日高委員】
 こんにちは。IBMの日高です。それでは、文部科学省のほうから「サービス・サイエンスの概念とITサービス」というテーマでご指定がありましたので、これに関して20分間、説明を差し上げようと思います。最初に、両方とも話すと非常に長い話で、20分の中では少しはしょりますといいますか、随分スキップしなければいけないので断片的になるかと思うのですけれども、ご了承いただきたいと思います。今日の議論のたたき台と話題提供ということでご理解ください。
 最初に、サービス・サイエンスの概念というのでここは簡単にいきたいと思うのですけれども、IBMがサービス・サイエンスというのを言い出しまして、IBMはコンピューターの会社ですから、どうしてもコンピューターをベースにしたサービスという形で議論してまいりました。我々、IBMのビジネスのレベニューがコンピューターだけを売って、ハードウエアとか、ソフトウエアとか、その辺が大半を占めている場合には、コンピューター・サイエンスというところで、世の中を理解するための基本的な知識というのは、ここを土台にしていればよかったのですけれども、昨今、60パーセント以上がIBMはサービスというカテゴリーから収益を得ています。
 したがって、今、ドミナントなビジネスのテーマはサービスですので、ここなどが要るだろう話ですね。ここを、名前は何でもいいんですけれども、英語で恐縮なのですけれども、New set of knowledge from different domain giving complete understanding about our service business worldというようなものが、ここが要るだろうという話になったわけです。これを我々はサービス・サイエンスと名付けてずっと来ています。
 4ページになりますけれども、「サービス・サイエンスとは」。この間もお話ししましたけれども、最近はSSMEDとSSMEの最後に「D」をつけて呼んでいますけれども、最初はService Sciences, Management and Engineering、SSMEと言っておりました。課題のためにサービス・サイエンスと呼んでおりますけれども、これはサービスをサイエンスの対象としてとらえて、科学的手法を用いてサービスの持つ問題を解決して、生産性を高めてイノベーションをシステマティックに実現するということが言い切れると思います。ただし、この中に書いてある文言を突き詰めていきますと、そんなに簡単なテーマはなくて、より深く理解しなければいけないものもたくさんあるわけですけれども、まとめてみると、こういうふうに言えるのかなということがあります。
 5ページになります。またコンピューターとサービスのアナロジーが出てきましたけれども、順番に話していきたいと思うのですけれども、画面のほうをご覧ください。コンピューター・サイエンスはどのようにして発達したのか?分解したわけです。科学技術の常套手段なわけで、これを要素で分解していってソフトウエアとハードウエア、それをまた分割していってコンポーネントに分けていった。このコンポーネントの中の1つ1つを丁寧に研究して技術開発することにより、コンピューター自体が発展していったと言えると思うのですけれども、したがって、コンピューター・サイエンスの科学技術のさまざまなエフォートの中心というのは、こちら側にあったわけです。赤く丸をつけましたけれども、この一番下にあったわけです。
 ところが、サービスはどうするかというと、サービスをどういうふうに分割するのかというのは議論があるところで、定説はないのですけれども、テクノロジーと人間とか、ビジネスとか、そういうものに分解できるのではないかなという話をしています。ただし、コンピューター・サイエンスと一番違うのは、サービス・サイエンスは一番上の部分、ここのところに研究開発の一番のエフォートがあるべきであろうと。すなわち、さまざまな知見をどのように統合するのか。あるいは知見を統合するための知識体系をいかにつくっていくのか。そういうところが大事かなという話をしております。
 この辺は重々ご存じだと思うのですけれども、サービスは現在、世界経済において最も急激に成長している。その背景として、サービス産業の成長と、それから、製造業のサービス化があるわけですけれども、これによって経済におけるサービスの重要性が高まっていて、サービス・サイエンスに対する期待も高まっているのかなと思います。また、今までの発明とか、あるいは研究投資というものは、物づくりを中心にしてきたものです。そのものというのは必然的にイノベーションのためのメカニズムが暗黙で世の中にあるわけですね。
 最初に基礎研究に投資をして、次に開発、うまくいくものに関しては開発研究に行く。それをマーケットに出していくという、こういう時間軸に沿った流れがあるわけですけれども、サービスのイノベーション、あるいはサービス科学が同じようなイノベーションのメカニズムでもっていけるのかどうかというのはわかっていない。多分、同じところもあるんだろうなという議論はあるわけですけれども、すなわち、創造性という観点においてはサービスはあまり考えられていなかったので、そのメカニズムを含めて解明していこうというところがあると思います。このようなことが背景になってサービス・サイエンスという学問が世の中で重要視をされているのかなと。
 IBMはコンピューターの会社ですので、最初はコンピューターを使ったサービスの話をしていたわけです。ところが、サービス・サイエンスという言葉が出ますと、実はコンピューターだけではなくて、さまざまなサービスの分野、旅行とか観光もあるし、医療もあるし、それから、福祉もあるし、行政もあるし、そういうところも同じような考え方でサイエンスの対象としていくべきだろうという議論が挙がっているのが現状であると理解しております。
 研究の方針と教育の方針と、ここも結論だけバッと持ってきて、本当はもう少し説明が要るところだと思うのですけれども、研究の方針としては2つあるのかなと。
 1つは、今あるサービスをよくするという観点の研究ですね。サービスを提供する側とサービスの受け手の側と2つの側面があるのですけれども、提供する側から言うと、生産性を向上させる。受け手から見た場合にはサービスの質を向上させるという観点があると思います。すなわち、両方の側面があるわけですけれども、今あるサービスをよくしていくというための科学というものと、2番目が今無いサービスをつくっていく。すなわち、サービスの創造に関する科学というので、ここら辺はイノベーションの議論になってくると思うのですけれども、こういう観点から、研究としては大きく2つに分かれるのかなと。よく言われるのが、上の方が、1番目が2番目の土台になっているのだということはあるわけですけれども、そういう点も踏まえまして方向性としては2つあると理解しています。
 これはお手元の資料に入っていますか。これはアルマデンで我々が議論したときの資料なのですけれども、少し内容的に細かくなってしまうのですけれども、そもそもどういうようなことを研究として考えるのかといいますと、これはサービスのプロダクティビティの話をしているわけです。プロダクティビティは分母と分子がわかると計算できるだろう。サービスの場合には、そもそもこの分母と分子に何を持ってくるのか、どういうふうに定義するのか、それをどういうふうに測るのかというあたりが、物に関する、製造に関する生産性よりは難しいだろうということが議論されています。
 したがって、さまざまなアイデアがあると思うのですけれども、どのように定義するのか、どのように測定するのか、どのように計算するのかというのがそもそも明確ではない。こういうところをはっきりさせていく必要があるだろうと考えています。そのためには、いろいろな分野の融合ということが言われているわけですけれども、数学、情報科学、経済、心理というものを融合させて、例えばプロダクティビティ1つにしても、どのように定義して、どのように測って計算するのかというのを考えていく。複合領域としてのサイエンスの可能性が求められていると言えると思います。
 次、教育の面で、ここは簡単にいきますけれども、いわゆるT字型の人材、1つのディシプリンに関しては非常に深い見識がある。ただし、ほかの分野に関しても一応は知っているというような人間を、そういうようなインターディシプリナリーな人間を育てていくことが大事だろう。なぜかというと、T型の人間が1人いてもおもしろくないんですけれども、こういう人が何人も集まると、T型の横の部分を重ね合わせてコミュニケーションできるんですね。実は深いところだけだと、お互いに会話ができない。ただし、横軸のほかの分野に関する知識もあればコミュニケーションができる。それによってイノベーションが加速していくのではなかろうかという観点で、このような人材が大事だと考えています。
 以上、駆け足で申しわけないのですけれども、サービス・サイエンスの概念を少し整理させていただきました。
 次にITサービスという観点で少しお話をさせていただこうと思うのですけれども、大きく2つあります。1つはITサービスです。もう一つがIT Enabled Services、これを我々は区別して使っています。ITサービスは、これはコンピューターをお客さんに使っていただく。そのためのコンピューターのサービスをするということです。2番目は、ITを現場で使いながらサービスそのもののイノベーションを起こしていくという観点のものですね。上のほうなのですけれども、これはITサービスを話していると1日ぐらいかかってしまうので、2枚で済ませるのが本当に妥当かどうかということなのですけれども、まとめるとこんなものがあるのかなと。
 ここに我々が考えるITサービスのコンポーネントが列挙されています。例えばネットワークがあるとか、アプリケーションサポートがあるとか、ITセキュリティがあるとか、ディスクサポートがあるとか、さまざまなものがあります。大体ここに網羅されている。この絵を入れたのは、1個1個説明するのではなくて、これはここに線が引けるんですね。左側にいっぱいある部分、これは何かというと、実はここは全部リモートでできてしまいます。右側の方は、これは実際にお客さんのビルに行って、そこの机に行かないとできないものですね。見ると、圧倒的にリモートでやるほうが多い。
 すなわち、IBMにしても、なるべく世界を見渡して一番このデータセンターが適している部分において、あとは日本であろうが、ヨーロッパであろうが、リモートでやろうかなという戦略を持つわけですね。そういうふうにITの業界というのは通信を使ったリモートサービスの方向に動いていると理解していただきたいと思います。
 2番目、ここはITサービス市場の変化と書いてありますけれども、過去5年ぐらいとこの二、三年と書いてあって、言葉を読んでいただければわかると思うのですけれども、さまざまなITサービスの位置づけが変化している。単独のサービスから総合的なソリューションへ、フルスコープのアウトソーシングから選択的なアウトソーシングへ。それから、カスタマイズされたサービスオファリングから標準化されたサービスオファリングへと動いている。動向なのですけれども、1つ、こういう場でもって議論することがあるとすると、日本のIT産業は非常に構造的な問題に悩んでいます。それはサービス・サイエンスに非常に関係があることだと思います。
 なぜかというと、日本のITベンダーは、お客さんの言うことをきちんと聞いたんですね。お客さんの言うことは正しいです、つくりましょうといってつくってきたわけです。ところが、アメリカとか、そういうところのITベンダーは少し違うんですね。こういうものがあります、使ってくださいというふうにやってきました。要するに標準化とか、コンポーネント化が進んでいるんですね。日本はその辺、いい意味でも悪い意味でもお客様第一で進んできましたから、かなりお客様ごとにごちゃごちゃ、ごちゃごちゃいっぱいつくってきてしまいました。したがって、その辺のコンポーネント化とか標準化が進まなくて、多分、IT産業自体が今非常に効率化の問題に悩んでいるのかなと理解しています。それが1つ、サービスという観点では問題として取り上げることができると思います。
 次、IT Enabled Services、あと時間が3分なので全部ご説明できないのですけれども、ここの資料がありますので見ていただきたいのですけれども、私は、生駒座長が言われていることは非常に正しいと思います。要するに数学なんですね。数学が1つのコアになっています。例えばRFIDによる動線分析というので、これはうちでやっていたわけですけれども、要するにショッピングストアのカートに発信機をつけて、それでお客さんに買い物をしてもらう。買い物をしてもらって、お店の中をどういうふうに動いたのかというもののデータをとるわけです。何万人もとります。
 そういうデータを、最後にレジでお客さんが買うわけですね。それとを照合するわけです。データ解析を行います。そうすると、さまざまなことがわかってくるわけです。そこにいろいろな、このページにはいろいろな絵があって、お客様の流れとか、どこで時間を使っているかと分析できるわけですけれども、これは実際のお客様のデータでページには入れられなかったのですけれども、これをご覧いただきたいのですけれども、この横軸が滞留時間なんですね。縦軸が売り上げなんですよ。
 これを持ってきたのは、この1点は、例えばどう見るかというと、ここで30秒いたお客さんが最終的に幾ら買っていますかというのが分析できるんですね。見るとおもしろいのは、いろいろなカテゴリーがあるんですけれども、この商品カテゴリーは時間が経てば経つほど買わなくなってしまうんです。要するにお店でもって眺めていると、眺めているうちに実は買わなくなってしまう商品があることがわかるわけです。そういう非常に細かな分析ができます。この辺はデータマイニングとか、クラスタリングとかいろいろやるわけですけれども、そういうことが可能になっている。
 ほかにキャンペーン・マネジメント、これは例えばカードホルダーが--その人にキャンペーンを打ちます。例えば飛行機のマイレージとか、その人にメールを出したり、いろいろなサービスをします。それによって、その人がどのように購買パターンを変えるかと分析するわけです。これも何十万件もやる。そうすると、キャンペーンの出し方による購買の変化ということがわかってくる。これもさまざまな分析をすることによってわかってくる。ずっとあります。ほかにロジスティクスとか、後で出てくると思うのですけれども、物流の問題。
 それで、例えば配送経路問題というのがありますと、例えばトラックが物を届けると、どういうような配送パターンが一番効率的であるのか、時間が速いのか、トラックが少ないのかということも計算できるわけです。その中で、では、こんな現実的な制約条件も加えることができる。例えば車両の制限とか、乗務員の勤務時間とか、休息時間とか、訪問枠、お客さんが何時から何時に持ってこいと言っているとか、非常に現実的な制約を入れながらやることができる。こんなこともやっています。
 それで、幾つもあって、この辺、基本的には最適化技術とデータ解析と、そういう数学の世界のさまざまな技術を使って解くことができるというものの例が出ているわけですけれども、これも私、最後に書き加えていて入っていないのですけれども、多分、一番大事なチャートかなと思いますのでご覧いただきたいのですけれども、それでは、何が問題か。テクノロジーと実問題のギャップをどういうふうに埋めるのかというところが、多分、研究としては大事かなと思います。北川委員がいらっしゃいますけれども、非常に数学のコアになるところというのは有用なわけです。それをいかに実問題に適用していくのかというのを一体誰がやるのかという話ですね。
 一頃は産業界も大学の方も、大学の研究というのは基礎研究だ。だから、将来、産業の中で応用できるような、そのコアを研究することが大事であると思ってきたわけですけれども、企業の研究所に居て見ていると、それだけやっていてもちっとも使えるようにならないわけですね。逆に世の中の問題がわかってこない。極端に言うと、数学者がどこか世の中に出て行って問題を発見したり、自分のアルゴリズムを使ってみるということをやらないと、ちっともイノベーションというのは起こってこないと感じています。企業でやるにはそれで問題ないと思うんですけれども、一体大学でそこまでやるのかなと。
 すなわち、実際の技術と実問題の接点を考える。あるいはそこのストラクチャーをいろいろつくっていくというところをこれから大学の研究でやるのか、あるいはそれは企業に任せるのか。サービス・サイエンスという範疇の中でどこまでカバーするのかというあたりが、実は今回の1つのトピックになるのではないかと思っております。
 ほんとうは細かくいっぱい資料があってお話ししたいのですけれども、もう5分過ぎてしまいましたので、終わりにしようと思います。後でまたご質問をお受けしようと思います。どうもありがとうございました。

【生駒座長】
 どうもありがとうございました。
 大変時間がなくて申しわけございません。2件ございますので、もう1件、苦瀬先生のお話をいただいてから質疑、討論を行いたいと思います。
 苦瀬先生、どうぞよろしくお願いいたします。

【苦瀬教授】
 東京海洋大学の苦瀬と申します。よろしくお願いいたします。今日はロジスティクスの現状と将来ということで話をするようにということでございます。私、サービス・サイエンスということがどういうものかというのはあまり勉強不足でわかっておりませんので的外れかもしれませんけれども、その場合にはお許しください。
 お手元には私の大学の概要と学部の概要と、あと私が所属しております学科、つまり物流のロジスティクスのことをやっている流通情報工学科のパンフレットを持ってまいりました。それから、やはり同じく私が日本ロジスティクスシステム協会で委員長をやっている全国大会と総合物流展のパンフレットを持ってまいりました。お時間のあるときに目を通していただければありがたいと思います。
 それでは、早速、ご報告させていただきます。ロジスティクスの現状と将来、私は東京海洋大学におりますが、昔の東京商船大学というところでして、5年ほど前に東京商船大学と東京水産大学が統合いたしまして今の名前になりました。私は流通情報工学科というロジスティクスを専門にやっている学科におります。また、4年前から東大の医学系研究科に併任しておりまして、そこではホスピタル・ロジスティクスということをやっておりますので、その辺を参考ということでご紹介させていただきたいと思います。
 まず、1枚目の紙、スライドナンバー3、物流からロジスティクスへ。ご存じのように軍事用語でございました「ロジスティクス」という用語が、ビジネス・ロジスティクスと使われるようになってきました。物流コスト最小化とか、もしくは付加価値最大化というのがキーワードだろうと思っております。一方で、学会ではソーシャル・ロジスティクスという用語が10年ぐらい前から出てきておりますけれども、これはグリーン・ロジスティクスであるとか、リバース・ロジスティクスであるとか、ロジスティクスのインフラなどです。リデュース、リユース、リサイクルとか、資源の利用とか、環境負荷削減とか、こういうことが出ているように思います。
 右下でございますが、私が学生に話すとき、ロジスティクスには3つぐらい考え方があると言っているのですけれども、これはピザをつくるときの例でございますが、農家からタマネギがとれてピザ屋さんまで行く場合と、ピザ屋さんに皆さん方がピザを発注して商品が届く場合、これはリードタイムというものだと思います。あとオーソドックスにはピザ屋さんが調達して、生産して販売する。現実はこの組み合わせだろうと思っているわけでございます。
 めくっていただきまして、ロジスティクスの高付加価値化ということをお話ししたいと思います。先ほども申し上げましたように、もちろんコストダウンというのが大事なことなのですけれども、一方では付加価値を上げるということがあるだろうと思うわけでございます。ここに例を2つ持ってまいりましたけれども、商品が高付加価値化する。それから、配送が高付加価値化する、こういうことでございます。小麦粉が製粉の技術で小麦粉になって、焼かれてパンになって料理されるとサンドイッチになっていく。詰め合わせて弁当になって、ジュースと組み合わせてランチセット、こういうふうに商品が変わってきている。こういう例は、この下にいろいろ書いてございますけれども、キャベツが半切りになって、千切りになって、サラダのセットになって、キャベツのサラダになるというようなこともある。
 こういうふうに商品が高付加価値化していくと何が起きるかというと、その右でございますけれども、我々の分野で言う流通加工とか包装といったような仕事が増えてくる。お米をブレンドしたり、陶磁器の検査をしたり、パソコンのインストールをしたり、洋服の針をチェックしてみたり、いろいろなことが出てくるということでございます。このように技術がソフト化というんでしょうか、価値が上がることによって実はものすごく高価な商品を我々は食べる。
 これはよく冗談で言うのですけれども、普通乗用車が1.5トンで150万円だとすると、100グラム100円だそうでございますが、我々がコンビニで食べているサラダは100グラム200円ぐらいするものでございます。自動車メーカーの方に言わせると、日本の消費者は普通乗用車より高いサラダを食べているとよく言っているのですが、そういうことを日々物流でカバーしているということでございます。
 同じように配送も、単に輸送していたのならそれでよかったわけですけれども、荷役の管理をして、運行管理をして、在庫管理も合わせてやりましょうと。商品の管理、温度管理、壊れはないかというようなチェックをしたり、生産と流通と統合していこうというふうになればなるほど、単に運ぶということだけではなくなっていくということで、右下のようないろいろな仕組みができ上がってくる。こういうふうに思うわけでございます。
 次の9ページでございますけれども、ノードから見たロジスティクスのインフラです。私はもともと土木出身で、都市計画とか交通計画をやっておりましたので、どちらかというと下側の施設のインフラとか、そちら側の方が分野なのですけれども、上の方では受発注の仕組みであるとか、商品の情報とか、そういうものができ上がってくるというふうに思っております。
 10枚目のスライド、これは我々が、物が流れるときに考えるのは、業種間で流れるか、施設間で流れるか、地域間で流れるかと分けて考えているという図面でございます。
 続いて2、「ロジスティクスとサービス」です。私はあまりこの辺は勉強しておりませんけれども、ある先生の言い方によりますと、業務的なサービスだけが販売行為であるというようなことを書いておられます。このサービスがマーケティングの中ではPlace、ChannelとLogisticsと書いてありますが、そこの一番下のどこで流通させて売るかという範囲に入っているようでございます。こういうことからロジスティクスが時折マーケティングの一部であるというふうに言われる場合もあるようでございます。
 12枚目のスライドは、産業分類と標準分類です。
 次、めくっていただきまして、インフラとしての都市および都市の物流システムです。都市を考えたときには、広域の物流拠点、埠頭とか、港湾とか、空港がありまして、その間に幹線があって、その後だんだん都市の中に入っていくわけですが、ブルーの都市内集配拠点とか、荷捌き施設、路上・路外・建物内の駐車場みたいなところでございます。それから、最後に工場や事務所や公共の施設、オフィス、住宅も物流はたまると思っているわけでございます。この間に黄色いところにネットワークができてくる。
 ですから、都市の物流を考えるときには、この拠点とネットワークの組み合わせだと私は理解をしております。そうした場合に、14枚目のスライドでございますけれども、流通センターから商店・ビルに届くとしたならば、民間企業さんがロジスティクスのシステムを改善するというのも幾つかの仕組みがあるわけですが、インフラ側からは規制の誘導、規制誘導の対策とか、いろいろな施設の対策、これらを組み合わせることで、いい物流システムができると思っているわけでございます。
 次に教育と研究でございます。一例として私どもの大学の説明をさせていただきますと、明治8年に私立の三菱商船学校というのができまして、その後、国立大学になりました。昭和53年に私どもの学科の前身の運送工学科というのができました。今から30年ぐらい前でございますが、物は港から港へ運ぶのではなくて工場からお店まで運ばれるのだから、陸上で物の運ぶほうも考えてみようということでございます。その後私がお世話になるわけですが、私は船はわかりませんと言ったら、いや、いいんだ、陸のことがわかればいい、ということでした。
 ロジスティクスの専門家を養成すると称しておりますが、3つの講座があります。工学系には私みたいな土木の者もおりますけれども、経営工学の者もおります。数理情報では数学の先生と情報の先生と心理の先生、流通経営では経済と経営の先生ということでございます。教えている科目は16ページのところでございまして、こんなように大体50近くの科目を用意しております。
 次の17枚目のスライドでございますが、修士課程ではこんなような授業を設けており、博士課程でも同じようでございます。18枚目のスライドでは卒業論文のタイトルの例として、デジタルタコグラフを用いた環境負荷評価とか、鉄鋼生産のスケジューリングであるだとか、施設配置など。修士論文、博士論文のサンプルにはこんなものがあります。
 19枚目のスライドでございます。日本のロジスティクスの研究ということで、繰り返しになりますけれども、商学、経営学系の学部にロジスティクスの授業科目が多いと思います。それから、研究者は土木とか、都市とか、経営工学とか、商学、経営であります。ただ、どうも輸送に集中しがちなところがありまして、特に交通系の人たちは輸送問題に特化している可能性が高いと思います。ロジスティクスの独立した学科としては極めて少ないと思っております。多分、日本でも10大学はないのではないかと思うのです。ちなみにある先生の調べによりますと、アメリカでロジスティクス経営の学科を持っている大学は200近くあるとか、ドイツで40幾つあるとかいうようなことを言っております。
 それから、欧米、アジアとの比較ですけれども、学生に人気が高いわけでございます。どうもこれはロジスティクスをやっているとスペシャリストとして認定されて、結構、ランクの高い仕事につかせていただけるということかなと思います。それから、韓国の例を書いてありますが、仁川大学は公立大学から国立大学にかわって、ロジスティクスの大学院を専門につくりまして、仁荷大学は英語のロジスティクスコースを一昨年つくりまして、私も2週間ほどお邪魔してきました。それから、JICA(ジャイカ)等のODAの案件もロジスティクス関連が最近非常に多いということでございます。例えば私がお手伝いしたインドの鉄道なのですけれども、旅客用新幹線ではなく、貨物鉄道というようなこともありました。
 20枚目のスライドです。アジアと日本、日本の強さは現場を知り抜いた管理者や経営者ということなのですけれども、逆にキャリアパスが見えないというところもあるかもしれない。それからもう一つ、表2でちょっと書き過ぎかもしれませんけれども、ある本によりますと、太平洋戦争のとき日本は情報と兵站の重要性が信じられないほど希薄でした。情報参謀とか、兵站参謀はそこにいればいいという程度の認識のされ方だったということです。これと同じく現代の日本でもロジスティクスがまだまだ重要視されていないという感じはいたしております。
 めくっていただきまして21枚目のスライドでございます。海洋工学部というところでこの3月まで入試委員長をやっておりましたけれども、一番困っていたのが入試の倍率確保。おかげさまで4倍以上確保しておりましたけれども、最近は工学が人気がないということで非常に苦労したりしました。
 それから、表4ですけれども、ロジスティクスを専門とする学科としての課題ということなのですが、ロジスティクスを希望する学生は希少なのですけれども、確実に存在しているわけです。ただ、それをなかなか企業の方たちにご理解いただいていないというのが現実でございます。ある非常に有名な、どなたでも知っているような会社に今年、私どもの修士の学生が入るわけですけれども、ロジスティクスは文系の分野だから、大学院相当の給料は出さないと言われてショックを感じているという、そういう現実がございます。
 それから、表5でございますけれども、社会での認識のギャップでございます。文系の社員が経験を積めば十分であると理解しているところが多くて、なかなか数学的というか、工学的な者を受け入れていただけないというところもあるように思っております。
 22枚目のスライドです。企業での認識は知識というものよりも経験を重視して、現場へ行ってこいと、こういう感覚があるようであります。それから、物流担当の方は法学や、経済系の出身の方が多くて、あまり工学系の価値をご理解いただいていないのではないかと心配しております。一方で、欧米ではチーフ・ロジスティクス・オフィサーというような言い方であったり、スペシャリストとして相当ハイランクなロジスティシャンというのが育っているように思っておりますので、その辺がギャップかもしれないと思っている次第でございます。
 23を飛ばしまして24枚目のスライドです。教育研究においては、私どもの大学でどんなことが今まであったかというのを、少し宣伝めいていますけれどもご紹介いたしますと、国際輸送実務論とか、インターンシップをやっております。また共同研究としては配送用電気自動車とか、インドシナ半島での複合一貫輸送とか、オフィスにおけるセキュリティ確保とロジスティクス、インドネシアにおけるコーヒー豆の輸送管理と安全管理、公共駐車場の貨物車利用の可能性、貨物車交通量をベースとした道路計画の方法論などということをやっております。
 4番目、最後でございますが、ロジスティクスはこれからどうなるんだろうかということでございますが、25番目のスライドは、今まで輸送システムがどう変わってきたかということを強引にまとめてみたものでございます。26、27のスライドは、今まで機械化、自動化技術、物流技術の革新ということで、どんなことが重要視されてきただろうか。もちろん今でも重要ですけれどもここに書きました。28が、いわゆる最近はやりと言ってはいけませんけれども、重要なグリーンとリバースのロジスティクスの考え方でございます。
 めくっていただきまして29枚目、近年のロジスティクスの動向でございますけれども、例えば情報化といったときにEDIとか、RFIDとか、それから、先ほどもお話がありましたけれども、標準化の議論、顧客サービス、マス広告からセグメントでの購買履歴をチェックするという、アマゾン・ドットコムで買いますと、あなたはこういう本が好きなのではないかと出てくるような、ああいうたぐいでございます。それから、ネット流通、在庫管理、共同配送。環境問題ではモーダルシフトとか、カーボン・フットプリント。安全・安心の面では、生産の履歴から物流の履歴、ペットボトルには生産の履歴、どこでつくったというのは書いてございますけれども、どうやって運んだというのは書いてございませんので、そういう時代が来るかなと。それから、セキュリティ、こういうことでございます。
 これらを今回お話がありましたので、何かないかということで無理やり考えてみたのですが、例えば国際物流における情報化システム、シングルウィンドウといいます。さあ、どういう課題があるか。輸出入手続の簡素化、システム間の整合なのか。輸送における情報システム、なぜカーナビはトラックに乗らないのか、これは大きなテーマです。私も内閣府でITSのお手伝いをさせていただいていますけれども、まだまだ十分物流の世界に載ってきていない。これはデータ制約なのか、それとも管轄範囲の制約なのか。
 それから、物流の効率化。在庫・販売ではなくて、使用して、かつ廃棄するまでだったらどうするか。例えば東京のミッドタウンやオペラシティなどではビルの中では、植木、コーヒー、電球、何から何まで全部、ビルの中に入ってくるものはある会社1つで管理、廃棄までやるというようなことをやっておりますので、オフィスの物流というのも変わってくるでしょう。それから、都市内の物流も、これもビルの地区の中での共同配送とか、通行規制とか、私がお手伝いしている丸の内のビル街はつくるたびに地下のトンネルを造っています。将来、10年ぐらいたったら、大手町のあるビルの地下に入ったら、有楽町のあるビルの地下から出るというようなことをやって、中で全部ビル内の共同配送を実現するというつもりで今やっておりますけれども、そんなようなことができるかもしれません。
 31の環境対策では、カーボン・フットプリントとか、包装材をどうするか。安心・安全では食品の公正な表示と、それから、資源回収の問題とか、高齢者・医療における物流サービスということでございます。こういう課題は32のスライドでございますけれども、新たなシステムづくりと違って、既存のシステムの改変というのはなかなか難しいところがある。それから、既存の企業活動との調整が要る。法制度とか、いろいろな課題がありそうだということを書きました。
 あと、めくっていただきまして33からは、私が座長をさせていただきました東京都市圏の物資流動調査、これは国土交通省の調査でございますけれども、10年に1回やるのですけれども、そのときのデータを持ってまいりました。33は東京都市圏の物流がこんなになっていると。34はどういうところにどういう物流施設が立地しているか。35も同じでございます。36ページは、どういうところを大型車が走行しているか。
 めくっていただきまして、37ページ、物流施設とマンションとが挟んであって、こういうことはどういうふうにしたら解決できるでしょうか。38枚目のスライドは、大型のトラックが走れるルートというのが決まっているわけでございますけれども、こういうコンテナが大きくなっていく時代の潮流に合わせて、どういうふうにネットワークをつくるか。真ん中の図面は銀座四丁目で大きなトラックが走っておりますが、こういうことはよくないと思うのでございます。
 39枚目の図面は、ロンドンのレッド・ルートという道路の図面でございますが、ごらんのとおり、駐停車禁止道路なのですが、荷物の上げ下ろし、積み下ろしと身障者だけはとまっていいという道でございます。こういう計画が基本的に多くなっているのですけれども、日本はまだまだそこまで行っていない。それから、40ページは、トラックの高さが3メートルでございますが、入り口が2.7メートルで入れないということでございます。この結果、外にトラックがあふれるということが起きているわけです。
 それで、めくっていただきまして41枚目のスライドで、荷捌きをうまくやるのであるならば、輸配送計画も民間できちんと立てなければいけないけれども、同じように建築計画や交通計画と連携をとらないと、だれかが1人頑張ってもうまくいかないということでございます。
 42は、汐留の再開発計画の図面です。地下鉄大江戸線の駅の横のところに地下車両を設けまして、ちょうど穴があきますので、そこを使って各ビルとつないでいる。この結果、各ビルに行く車は地上を通らないということで、トラックを隠しながらスムーズに流そうという計画でございます。これは実現しております。
 43ページは、海陸一貫輸送の情報のシームレス化ということで、それぞれのEDIやAISやITSはあるのだけれども、お互いになかなか連携ができていないというようなことを書いてございます。
 最後でございますが、めくっていただきまして45からでございますけれども、これは私が客員教員として併任しております東大の例でございます。病院のロジスティクスです。47のスライドを見ていただきますと、病院外からの物流と病院の中での物流というのがあるわけですけれども、それぞれに実は相当うまく効率化されているという実態もございます。
 そうだとすると、少し見方を変えたほうがいいのではないかということで、48ページで、人がいて、施設がいて、物資が入ってくるとするならば、その人はだれだろうか。病院のスタッフもいれば、業者さんもいるけれども、実は患者さんが最大の顧客ではないかということです。めくっていただきまして49ページの図面でございますけれども、病院でのサービスとして、手ぶらで入退院いたしましょう、入院が決まったら荷物は宅配で持ってきます、というものです。
 それから、物品の調達、これは病院の中で怪我をなさった方が、お子さんであればお母さんはなかなか離れられない。お母さんの食べ物や患者さんはパジャマを調達してもいいし、タオルを調達してもいいというようなことでございます。それから、療養食を宅配したらどうかとか、医薬品の宅配も始めました。これらのサービスの開発では、例えば何時にどういうふうに配送すればいいかとか、治療の邪魔にならないかとか、患者さんの病状に合わせてどういうものなら頼んでも大丈夫か、大丈夫じゃないかということをチェックしてまいりました。
 それで、50ページで、院内の共同配送とか、そういうものはアイデアだけは出してきました。それから、患者さんへの利便向上のサービスとしては、手ぶら入退院パックと医薬品の宅配は東大病院でやっております。ただし、物品調達と療養食は残念ながらまだできていない。
 それから、最後の52枚目のスライドでございます。共同購入とか巡回集荷、つまり、配送問題ではなくて集荷問題にして、医薬品とか医療材料を安く購入する、入札をする。これは韓国とかアメリカでやっているのですけれども、そういうこともできないか検討しているということでございます。
 少し長くなりまして申しわけなのですけれども、以上で説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【生駒座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、約20分時間がございますので、ご質疑をお願いしたいと思います。どうぞ。儀我委員。

【儀我委員】
 日高委員の先ほどのご説明、興味深かったのですけれども、その中でテクノロジーと実問題のギャップをどう埋めるかというお話があったかと思うのです。だれがやるかという話で、数学者が世に出ていくというのが1つの案だと。それはそうだと思うのです。この分野に関して海外のことはよくわからないのですけれども、例えばほかの分野ですと、海外では数学者ではないのですけれども、その該当分野の専攻だといっている人がものすごく数学的な能力が高くて、数学者もびっくりするようなことがたくさんあります。このサービス・サイエンスの分野でも外国ではそうなんでしょうか。つまり、数学以外の分野専攻にもかかわらず、数学力がものすごくあるという人がいらっしゃるんでしょうか。

【日高委員】
 具体的には、コンサルタントがいますけれども、IBMでもアメリカのコンサルタントチームにはドクターがいっぱいいます。ORとか、応用数学の統計とかのドクターを持った人がコンサルタントとなっています。日本はやはり、よくてマスターというレベル、そういう差はあると思うんですけれども。

【儀我委員】
 はい。わかりました。どうもありがとうございます。

【高安委員】
 私自身、もともと大学にいて、今、企業で研究をやっているわけなのですけれども、それでいろいろ、両委員の話で経験から感じることは、データをどれだけ外に出せるかというところなんですね。それで、主に大学などで研究するときには公開のデータを使うわけですけれども、それは非常に限定されていたり古かったりしていて、そのデータで一生懸命研究をやっても、実際の実務とはかけ離れたものになってしまうという傾向があるわけですね。一方、企業の中には生の解析したいデータがたくさんあるわけですけれども、それはあんまり外へ出せないので、ごく限られた人でしか研究できない。ただ、似たようなことをいろいろなところでやっていて、それぞれ工夫があるので、そこの横の壁を切り崩して、少なくともその手法だけでも共有したりできれば大きく進むと思うのです。
 そのために一番必要だと私が最近感じているのは、細かい実際のデータで、だれでも使えるような見本のようなデータ、最近、金融市場などですと、お金を出すと詳細なデータが買えるようになってきて、大分、研究が進んできているのですけれども、まだまだこういう例えばロジスティクスであるとか、サービス絡みのデータというのはなかなか、だれでも見られるような形のデータにしにくいと思うのですけれども、そこを何とか工夫して、実際の商品名を消して全部番号にするなり何なり、いろいろな工夫があると思うのですけれども、それでまとめて、例えば大きなサーバーに、こういう本当の最新のデータがあります。これをみんなで研究してくださいというような形にすると、それをもとにたくさんの人がいろいろ研究できるのではないかと思っています。

【生駒座長】
 いかがですか。データの公開性、これはこういうプラクティカルな学問では常に問題になりますが。

【日高委員】
 そうですね。私も今の高安委員のご意見には賛成で、そういうふうになっていくと、手法自体の研究開発も進んでくるのではないかなと思います。

【生駒座長】
 苦瀬先生、ロジスティクスはいかがですか。

【苦瀬教授】
 私も同感でございまして、私が座長を務めた東京都市圏のデータは全部アップしてありまして、全部とれるようになっております。さらに、申し込めば加工料、3万円か4万円だったと思うのですけれども、データ加工料だけで全部とれます。ただし、条件がありまして、個別の企業がわからない範囲という条件をつけています。つまり、神奈川県まるまる市のトラックの工場となると、どこの会社かわかってしまいますので、それだけは困るということを除いています。
 あともう一つ、先ほどの話で追加させていただきますと、実問題とのギャップで我々はいつも感じているのですが、例えば配送問題で我々がお手伝いする時、ある配送会社に行くと、VIPという部屋があってそのお客さんの荷物が来ている。このお客さんの次にあそこの家に行かなければいけない。あそこの家はこの時間にはゴルフの練習に行っているからいない、というデータがみんな運転手の中に入っているわけですね。だから、そこまで実問題として解かなければいけないかどうか。どこかその手前でいいのではないかなというふうにいつも思っているんです。
 以上です。

【生駒座長】
 今、先生がおっしゃられた企業名とか場所がわからないようにして使えるようにするというのは、企業側はどういう意味で同意しているんですか。企業の同意が要るわけですね。そこの何かコンソーシアムに入っていると、そういうことをするという仕組みですか。

【苦瀬教授】
 今の東京都市圏のデータは、どなたでもそれは依頼すればいただけるんですね。例えば横浜市まるまる区のトラックの発生量とか、商品の発生量というのだったら幾らでも細かくできます。しかしあまり細かくすると、ある会社を特定できてしまうので、そういう場合はデータは出しませんという約束で集めているのです。

【生駒座長】
 それは、企業が出すインセンティブは何ですか。強制的に出させているんですか。

【苦瀬教授】
 まあ、お願いして事業所で全部とってきているわけです。

【生駒座長】
 ああ、そうですか。スーパーマーケットの行動の調査、あんなのはそういうようなことで企業は出せるんですか。

【日高委員】
 結構難しいみたいですね。そういうような考え方をしていること自体もちょっと、あんまり見せたくはないというふうにお客様はおっしゃいますね。

【生駒座長】
 そうするとやっぱり、サービス・サイエンスというのを掘り下げるときには、現場のデータをいかにして研究に供するかというのは、1つの共通の大きな課題だということですね。

【日高委員】
 そうですね。だから、そこでできた手法が何か自分にも将来的にはメリットがあるとなってくると、皆さんデータを提供するようになると思うんです。

【丹羽委員】
 データについて、私の知っている限りでは、病院の、特に公立病院のデータについては、一応、公開されていて、かなり限定された情報だと思いますけれども、例えばベッド数が幾らとか、医師数が何人とか、そういう情報は公開されていると思います。

【大澤委員】
 私、今回初めてなので、いろいろ意見はあるのですけれども、まずこのデータについて、私の最近あったことで言いますと、スーパーマーケットのデータをとろうと思うと、現場に行って自分で集めないと、どうしてもとれないですね。
 有り物のデータに依存するということでは、どうしてもやっぱりサービスの研究ってできないのかなと思っていまして、最近やったのは、うちの学生をスーパーマーケットに行かせまして、とにかくおばちゃんを捕まえて全部話を聞いてこいと。つけ回してこいと言って、パコ・アンダーヒルですか、あの本によると、近くで見たらばれないと書いてあったので、近くで見たらばれないぞといって、ずっとつけ回したら大丈夫だといって、行ったらやっぱり怒られまして、それで、スーパーの店員さんにとめられたのですが、そこでちゃんと一生懸命説明したんですね。
 これはやったら御社にとっても非常にメリットになるということを学生が--私はそんなことを教えていないのですけれども、自分で一生懸命説明して、それで、その後ずっとそこで寝泊まりまでしてデータを集める権利を得たということがありまして、そこから大分研究が進んだということがあります。これが大事なのかなと思っていまして、現場で一緒にお店の人とか、客、それから、店員と一緒に動くというふうなところからスタートしなければいけない面もあるかなと思っています。

【安部委員】
 私どもの会社も日高委員のところと同じで、データベースをいかにお客様からもらうかということで大量のデータを処理して意思決定とか、そっちに持っていくという努力をしているんですけれども、今の大澤委員の話もありますけれども、自分の会社の中もリファレンスデータといいますか、まずそれをやってみるというところが一番大事だなという気がしています。ただ単にデータを集めるだけだと、あんまり大したことが出ないんですね、労力だけはかかるけれども。セブン‐イレブンさんなどもそうだと思うんですけれども、ある程度自分の仮説を持って、どのデータをどういった状況で集めるかといったところまで厳密にしないと、なかなかほんとうの意思決定にまではいきにくいということがあるので、大量のデータをただ単に集めるというところも大事だとは思うのですけれども、その前に仮説をちゃんと持つ。それで、分析するということが結構大事だなと思っています。
 それからもう1点は、データを集めるときに個人情報保護法、これがやけに面倒くさくなって活動しにくくなったなという気がしていまして、これも大事なのですけれども、学問的な面とか、サービスの生産性を上げるとか、そちらのときには、それはそれで大事なのだけれども、また別の取り扱いをするとか、そういった制度的な考えも大事になってくるのではないかなと思っております。特にヘルスケアとか、アメリカでEvidence-based medicineとか、そういうのがありますけれども、そういった、日本でもやっぱりこちらのほうに持っていかないといけないときに、なかなかここの個人情報保護法のところの制約というのは大きいなという気がしておりまして、ここのところも少し考えていただければと思っております。

【太田委員】
 病院関係、今、公立病院というお話が出ましたけれども、公立病院のデータというのは比較的とりやすいのでしょうけれども、民間病院でデータをとるのは非常に難しい。おそらくデータを出していただけません。これが現状だと思います。私のところで療養病床ということがありまして、その調査というものをさせていただきました。病院と介護施設の入所者の数、それから、新しく入った方、患者、病院に紹介していただく数、これは実を言いますと正直にデータを出していただきまして、こういうデータというのは非常に大切で、今、病院の病床数が減少するということで、療養病床が減少するということは一般の病棟の、これは冬などのときに病床が足りなくなるというような問題が現実にあるのですけれども、これはそのデータを出して、保健所、医師会、県の方にも報告させていただきました。おそらくこういうデータは、私どもが初めてではないかと思うのですけれども、そういうふうにある程度協力していただけるような地域でなければできない。他の地域ではまず無理だというような、医療関係の方ではそういう問題があるのではないかなという気がいたします。

【生駒座長】
 ありがとうございます。
 苦瀬先生にお伺いしたいのですけれども、この流通の分野、流通ロジスティクスで、いわゆるサイエンスと呼ばれるもの、これは学部の講義の科目がここに書いてございますけれども、本当のベースになるものはどういうものだとお考えですか、一番重要な部分で。

【苦瀬教授】
 私は、経営工学とかORとか、応用数学とか、そういうのが一番重要なのではないかなと思いますけれども、そういう先生方がいますので教えていますけれども。

【生駒座長】
 それは学生さんにそういうのを、この学科になってから教える。それとも、その前の方で、ベースはどんな学生なんですか。

【苦瀬教授】
 ベースは、私どものところに受験してくる学生で数学を受けてくる学生ですね。

【生駒座長】
 数学は必修にしておられるんですね。

【苦瀬教授】
 はい。そういう学生でございます。個別試験では前期日程のみ、数学を必須にしています。もちろん、何割かは文系っぽい学生もいるんですけれども、それはそれで吸収しようということで経済、経営の先生もいるわけですけれども、1年、2年の間は数学とかプログラミング、C言語ぐらいまではやらせて、それから次第、次第にこれに変えさせていくのですけれども、一応、数学がわかるようにと教育はしているつもりです。

【丹羽委員】
 データの話に戻ってしまいますけれども、日高委員にお聞きしたいのですけれども、アメリカがサービス・サイエンスが進んでいるとよく言われますけれども、その要因の1つとしてデータを企業公開しているということは、日本との差としてあるのでしょうか。

【日高委員】
 それはあんまりないと思うんですが。

【丹羽委員】
 あんまりない。同じですか。

【日高委員】
 ええ。ただ、最近、サービス・サイエンスのコンテクストとは少し違うかもしれないのですけれども、企業、あるインダストリーによっては共通のデータを整備しようという動きはあるみたいですね。例えばペトロリアムなども今までは自分のどこを発掘したらいいかというのはコンフィデンシャルだったのですけれども、基本的な地学に対するデータは公共なものとして整備しようとか、そういうようなことはある。あるいはいつだかファイアストーンのタイヤというのが問題になったことがありましたね。バーストしやすい。あの事件以後、トレッド法ができて、そういういろいろな車のパーツのトレーサビリティなどというのは非常に注目されている。そういうような安全に関するものは業界として整備しようと、そういうようなことはあるように聞いておりますけれども。

【儀我委員】
 先ほどの生駒座長のご質問と共通のところなのですが、苦瀬先生のご発言の教育面の方なのですけれども、数学という幾つか科目があったかと思います。私が少し心配なのは、この様な物流の問題でも他の問題でもそうなのですけれども、使う数学というのが一定ではなくて、何か状況によってまた違う数学が必要なってくるということがよくあることです。それに対していつも同じ数学--数学を教えるのは非常に結構でよいのですけれども、新しい数学を取り入れられるような数学の力がないと困るかと思いますが、その点はどうお考えでしょうか。

【苦瀬教授】
 私も同じように思っておりまして、その意味でうちの学生がそこまでのレベルに行っているかどうかというのはちょっとつらいところがあるんですね。ただ、学生には、こういうものは日本の包丁と同じで、刺身包丁とか菜切り包丁とみんな使い分けなければいけないんだから、それによっていろいろな道具を勉強するようにというふうに話しています。一応、そういうつもりでやっていますが、そこまでの自信はなかなか。

【生駒座長】
 企業に入ってロジスティクス担当、ロジ専門の会社はいいと思うのですけれども、企業に入ってロジスティクス部門にいる人は数学の勉強をしているんですかね、企業の方。

【苦瀬教授】
 この大学に来て23年ぐらいになるのですけれども、就職先が大分変わってきまして、最初来たころは運送会社さんが多かったんですね。10年ぐらい前は物流子会社さんだった。最近はメーカーさんが多くなっています。先ほど申し上げましたように、ある有名な会社はロジスティクスをやっているんだけれども、まず現場に3年行けとか、そういう感覚の会社です。一方でそうではない会社もあります。こういう研究をやっている研究室から一本釣りで大学院生が欲しいと。要するに需要予測のこの部分とルーティングのこの部分、どうしても人が足らないから欲しいというような会社もあります。

【生駒座長】
 傾向が変わってきたと見ていいわけですね。

【苦瀬教授】
 そうですね。

【生駒座長】
 それは小売じゃなくて、製造業ですか。

【苦瀬教授】
 メーカーさんですね。

【安部委員】
 日高委員の5ページのアナロジーというあれがあって、コンピューターとサービスを対応させていつも考えているところなんですけれども、ここのところのサービスというところのイメージというのは、例えばコンピューターの方で言うと、コンピューターのメーンフレームとかパソコンとか、いろいろタイプがある。こっちのサービスの種類とか、ここの階層というか、流動というか、それはどういったイメージでいいんですか。後ろに書いてあるITサービスとかのここのものをイメージされている。それとか、流通とか、金融とか、そういった産業のレベルを想定されて運営されているのか。

【日高委員】
 これはそういう意味では抽象的に書いてあって、サービスシステムみたいなものというふうにお考えいただければと思うのですけれども、確かにITとか、ほかのいろいろなものも入ってきますけれども、もう少し抽象的な議論としてサービスというふうに書いてあるということです。

【安部委員】
 コンピューターとの対比で、コンピューターの方はより下位のここの技術とかテクノロジー、それが分析されればかなり上にも行く。だけど、こちらの方は上の方が大事だという話ですけれども、やはり上だけだと非常に統合的ですね。とらえどころがなくて、下の要素分解されたところとのウエートというか、関係性というか、そういうのは。

【日高委員】
 そういう意味では、別に下が大事でないということは言っていなくて、ただ、ウエートとしてはインテグレーションのほうが難しいかなという気もしているんですけれども、多分、下には、この先っぽの方にはテクノロジーとか、組織論とか、経済とかいろいろ入ってくると思うのですけれども、それは別に下が大事ではないという意味ではありません。

【安部委員】
 わかりました。最終的にここでは大学でどういったタイプのサービス科学・工学の研究をするかの頭出しとか、そういったところまでいくとするとやっぱり、ここの階層でイメージされているものが何かということを少しつけておかないと、どのレベルのところを最小単位としてやるべきかというのを何か考えておかないとだめだと思うのですけれども、一番上が大事だというふうにもしやるとすると、サービスじゃなくて流通科学とか、小売科学とか、そういったところに行ってしまって、どの点でサービス科学、サービス工学と言っていいのかというところが、私はいつもわからなくなってしまっているんですけれども。

【日高委員】
 私はそういうカテゴリーで話をしていないのですけれども、すみません。

【生駒座長】
 むしろ、この図でインスパイアされるのは、多分、コンピューターを最初につくった人はどういうふうに考えられて、アーキテクチャでしょう。アーキテクトというのがいるから、こういう分解ができていくわけで、何でもそうなんですよね。アーキテクトというのが、サービス・アーキテクチャがいるとすごくいいわけですよ。多分、デザインという言葉をつけられたのは、その意味があると思うんだけれども、もう少しはっきり言って、私はサービスというものを構造化して見せて、それでビルドアップしていくという考え方があると、サービス・サイエンスが何もので、どういう階層でできてというのがわかるような感じがしましたね、これを聞いていてね。だから、サービス・アーキテクチャの研究というのがベースにないといけないような感じですよね。

【高安委員】
 今のお話とも少し関係があるのですけれども、片仮名の「サービス」という日本語と、それから、英語の「service」って大分ニュアンスが違うように思って、英語のほうが、多分、広いと思うんですね。それで、その辺もしIBMの方とかが考えるサービスはどういうものかというのをもう少し説明していただきたい。

【日高委員】
 私もおっしゃるとおりだと思います。英語のサービスは広くて、より逆に実態があると思うんですね。例えば私、会社が中央林間にありますけれども、半蔵門線ですね。中央林間で駅のホームに出ると、掲示板に次の電車の表示が出て、それは日本語と英語であるんですよ。英語のほうはService for どこどこですよ。飛行機のフライトなんかもサービスと言っていますね。経済上の実態のあるような、間違えのないカテゴリーというような、広い意味だけれども、そういうしっかりした位置づけがあると思うんです。日本語のほうが抽象的に議論されていて、よくサービスって、ただのことであるとか、ボランティアとか、そういうような、そこまで含めると非常にあいまいさが残りますね。そういう意味ではおっしゃるとおりだと思います。
 IBMに関しては、最初に説明しましたけれども、やはり我々はコンピューターを使ったITサービスのことで話をしていたのですけれども、ただ、よく考えてみると、我々のお客さんって、そもそもサービス業の人もいっぱいいますよねと。だから、そこをちゃんと理解するために、我々のマーケットを理解するためにサービスというドメインを提示して、そこにあるいろいろなメカニズムを解明していこうと、そういうような位置づけもあるんですね。そんな形で、いろいろなコンテクストによってサービスの意味するものが違うと思うのですけれども、IBMとしては自分自身がサービス会社であると同時に、我々のお客様がサービスを生業としている方が多い。それも理解しようという2つの観点があると思います。

【苦瀬教授】
 今のサービスに関して、私のスライドナンバー11番なのですが、先ほど飛ばしてしまったところなのですけれども、もう十何年前なのですが、清水滋さんの本によりますと、精神的サービス、態度的サービス、犠牲的サービス、業務的サービスと分けているんですね。清水先生によりますと、業務的サービスのみが売買の伴う無形財の販売である。だから、グッズにはコモディティとサービスがあって、売り買いする場合のサービスは業務的サービス、無形財のサービスであると、こういうふうになさっておられます。
 それで12枚目のスライドを持ってきて書いたのですが、要はサービス業というと第3次産業というわけですが、先ほどの運輸、通信業もそうですし、みんなこれ、ほとんど基本的に無形財なんですね。床屋さんとか、お医者さんと同じ意味なんですね。運送をすることによって所有権が移転いたしませんので。ですから、私の考え方としては、ロジスティクスというのは、そもそも無形財だから、サービスを売っているんだ。そのサービスをより高度化するために、前のページの5枚目のスライドとか、7枚目のスライドがあると理解してご説明申し上げたつもりでございます。

【中島委員】
 未来大の中島ですけれども、今の高安委員のお話、私も昔から感じていた。英和辞典を引くと23だか24個出てくるんですよね。日本語に対応したときに、ものすごく広い意味になるというのが英語のサービスの意味で、今、苦瀬先生がおっしゃったのが多分、日本語のサービスの定義にドンピシャだと思うのですが、ここでは英語のというんですか、もう少し広い意味で考えるんですよねというのを確認しておきたい。
 それから、IBMが最初にサービス・サイエンスと言い出したときに、おお、ここまで来たかと私は思ったんですよ。なぜかというと、IBMという会社は最初からそれをやっていたんだろうと思うんですね。International Business Machinesですよね。ビジネスにおいてコンピューターをどう使うかという、むしろ、マシンを売るというのではなくて、サービスの形態を売ってきたのが最初からIBMだったと思っているので、その究極の姿が今かなと思っていて、実はさっきのコンピューターとサービスで逆向きだという図は、あんまりIBMらしくないかなと思って拝見していました。

【生駒座長】
 意見はこの後もまだ続きますので、今の2つのプレゼンに対するご質問の部分はこれで終了したいと思いますが、よろしゅうございますか。
 それでは、次の議題で、今後どういうふうに進めていくかということで、まず、柿田計画官からご説明をいただきまして、その後また自由に意見を交換したいと思います。どうぞ。

【柿田計画官】
 それでは、資料3‐1をご覧いただきたいと思います。この検討会での検討の進め方の案の紙でございまして、前回の検討会のときにも同様の紙を配らせていただきましたが、少し修正をさせていただきましたので、ここでご紹介いたします。
 まず、本日は2件のプレゼンテーションをいただきまして、この後、この検討会で検討すべき事項について、私からご説明させていただきます。第3回目では、1つは海外のファンディングについてご説明させていただき、加えて、プレゼンテーションをある1分野についてお願いしようと思っております。
 それから、3回目、4回目にわたりまして各論についての検討(1)(2)というのがございますが、本日、この検討事項についてご確認いただき、二度に分けて中身の検討をお願いしたいということでございます。4回目につきましては、丹羽委員から、前回につづき、JST/CRDSにおけるService Science and Engineeringについての検討状況についてご紹介いただきたいと思います。そして、第5回、6回で取りまとめに向けた議論をお願いしたいと考えております。
 資料3‐2に参ります前に、参考資料1をご覧いただきたいと思います。これは第1回の検討会における主な意見を取りまとめたものでございます。概略ご紹介いたします。
 まず1つ目は、サービス分野で科学技術政策が果たすべき役割、施策の方向性といったことに関連するものとして、1つはまずサービスとは何かということで、その定義をすべきであるというご意見。それに対してある程度、これは議論、検討していくうちにサービスとは何かというものが見えてくるものではないかというご意見がございました。
 それから、サービス科学・工学とは何かということで、サービス科学・工学には2つのアプローチがある。1つ目は、あらかじめ対象のサービスを設定して、そこで必要となる技術パッケージと要素技術を検討する。2つ目は、複数のサービスで必要となる機能を抽出して、それに必要となる技術パッケージと要素技術を検討するものということです。それから、技術が変わればサービスも変わる。求めるサービスが変われば、求める技術も変わるというご意見。
 それから、サービス科学・工学は単にサービスがあって、そのための科学技術をどうするのかではなく、サービスそのものの新しいモデルを要求するというものではないかというご意見がございました。ユーザーが気づいていないニーズをどのように把握するかということも大切だ。社会現象が物理学の研究対象になる時代である。数学を社会に適用する視点は大切である。サービス科学・工学ではなく、もう少し広い範囲でサービス・スタディーズということで体系化したほうがいい。分析的な学問ではなく、探索的な学問があってもいい。
 それから、科学・工学と実践学の関係は切り離せない、つまり科学・工学に限定すべきではないというご意見がございました。この点に関連しましては、この検討会のネーミングがまさに「サービス科学・工学」ということになっておりますが、まず、ここで言う科学は、物事がどうなっているかという原理などを明らかにすることであり、また、その知識ということになると思います。それから、工学というのは、その知識をもとに価値を社会に適用していくためのもの。そういう意味で、いわゆる実践学というものに該当するというように考えていますので、この科学・工学というものには、当然、自然科学のみならず、社会科学も含めて、また、科学と実践学を対象として捉えるべきであろうと事務局としては考えております。
 それから、戻りますが、経験と勘をサイエンスとどう関連づけるかが大切である。次の経験と勘を創出することもまた科学である。経験と勘を万人に適用できるようにするのが科学。従来の普遍的な知識だけでなく、個人のニーズ等の情報を取り込んで、従来の知識とあわせて対応していくものであるというご意見がございました。
 それから、文部科学省の役割ということで、他省との棲み分けの話がございました。それから、文科省は学問的な部分や満足を追究する部分を担当すべきではないかというご意見。それから、裾野となる人材育成のメカニズムをどのようにつくっていくかというご意見。それから、経産省はケーススタディからベストプラクティスを探すという方法をとっているというご意見がございました。
 それから、2番目でございますが、研究を推進するための施策のあり方について、これは丹羽委員からご紹介いただきましたCRDSでの検討に関してでございますが、アプローチ1、アプローチ2というのがございましたが、これはどちらも分析するアプローチであるということで、サービスを統合的にいかに設計するかというアプローチも必要ではないかというご意見がございました。それから、User driven innovationも考えるべきということで、ユーザー起点型のイノベーション、ユーザーをアイデアを生み出す対象としても見るべきであるというご意見がございました。
 それから、新しいモデルをつくる「イノベーション」と現行モデルを磨き上げる「プロダクティビティ」の両方がある。両方大事だというご意見です。それから、「サービス」と「もの」には代替・補完・相乗関係があるということで、両者を切り離して考えるべきではないというご意見。それから、検討のアプローチには、サービスのアイデアを出して、それを可能にする技術を開発するというイシュー先導型もある。イシュー設定からアイデアを創発させる方法論も研究対象とすべきである。何年か後に応用されて世の中を変えるという数学は非常に重要であるというご意見です。
 その他としまして、サービス科学・工学により、今まで見えなかった人間の行動が見えるようになってきた。それから、POSやその他大量データが十分利用し切れていない。科学的に分析すればもっと有用であるはず。大学における研究活動に関するサービスも推進してほしい等、これ以外にも多くのご意見をいただきましたけれども、概要をこのような形で整理させていただきました。
 それで、資料3‐2でございますけれども、この検討会で次回、次々回において具体的な検討を進めていただきたいと思っておりますが、まず、その検討項目をどういうところにするか、どういう範囲にするかということについて書き出したものでございます。この検討会の設置の趣旨にもありますとおり、サービスの分野で科学技術政策が果たすべき役割とか、施策の方向性についてご議論いただきたいということでございます。
 そこで、まず1つ目としては、1の(1)ですけれども、まず、このサービス科学・工学とはどのようなものであるべきかということで、先ほどのご意見の中にもありましたけれども、サービスは何かというような定義づけではないのですけれども、まず、サービス科学・工学というものがどういうものであるべきかということについては一定の共通認識が必要であろうと思っております。
 それから、(2)サービス科学・工学の施策としてどのようなものがあり得るかということです。ここがまず、基本となる議論ということになります。
 それから、2番目でございますが、差し当たって、サービス科学・工学について研究を推進していきたいということでございまして、その施策のあり方についてご議論いただきたいと思っております。2‐1のところですが、研究対象となるサービスの分野としてどのようなものが適切かということで、このサービスという分野については、当然、いろいろな分野があるわけですけれども、まずこの研究対象、国として進めていく研究の対象となる分野としてはどこが適切か、どこから始めるべきかというご議論をいただきたいと思います。
 それから、2‐2で施策のあり方はどうあるべきかということで、(1)研究資金制度のあり方、後ほどまた参考資料で配っておりますのでご紹介しますが、研究資金制度を、文科省としては進めていきたいと思っておりますので、その制度のあり方について、趣旨、研究の方法論、課題設定の仕方、マネージメント、こういった事柄についてご議論をいただきたいと思っています。
 それから、(2)については、この研究資金制度以外にも考えられる施策というものがあろうかと思いますので、それについてご議論をいただきたいと思っております。
 それから、今申しました参考資料2でございますけれども、これは概算要求で出しております研究資金制度の概略でございまして、サービス科学・工学研究の推進ということで、従来の経験的な手法、これももちろん必要なのですが、それのみならず、サービスを高度化していくために科学的・工学的な手法が必要だという前提に立ちまして、このサービスの分野においてサービスの創出あるいは高度化等を目的として、数学、IT、それのみならず複数分野の知の連携とともに、それから、当然、サービスの実施主体であります産業界、公共機関、これと大学等の共同による基礎的段階の研究を公募型で実施するというものでございます。
 それで、施策の成果として書いておりますのは、サービスの創出または既存のサービスの高度化・最適化に向けて適用可能な方法論、あるいは技術と言えるかもしれませんが、その確立に資する知識体系、ここではさまざまな要素となる知識と、それらの知識を組み上げてどのように適用していくかという、そのための知識をメタ知識と言っているのですが、その知識及びメタ知識の集合体、このモデルを構築するということを念頭に置いた研究を公募型でやるということで要求をしております。
 それでは、資料3‐2につきましてご意見を賜りたいと思います。

【生駒座長】
 それでは、今後の進め方というか、検討事項についてのご意見がメーンでございますけれども、前回のまとめについても結構でございますから、ご意見を自由にお願いいたします。残りの時間、約25分間ですが、議論をしたいと思います。どうぞ。

【妹尾委員】
 何点かあります。どっちかというと、少し広げる方向で意見を言わせていただくのが私の役目だと思っているのですけれども、今日は苦瀬先生と日高委員のお話、大変おもしろく伺ったのですが、これを拝見していると、サービス・サイエンスがどうしてもオペレーションズ・リサーチとどう違うのだというところにどうしても行き着いてしまうんですね。日高委員が出されたいろいろなパターンについても、これはORだという話ですし、ロジスティクスは当然のことながらORの典型ですよね。そうすると、オペレーションズ・リサーチが戦争前後のオペレーションズ、すなわち、作戦遂行のための研究だったということからいきますと、軍事行動をサービスというんですよね。軍事行動も全部サービスですよ。
 ですから、軍事行動のオペレーションがサービスに変わって、リサーチがサイエンスに変わっただけととらえられてはまずいのだろうと思うわけです。オペレーションズ・リサーチがその後どうなったかというと、これは大体1940年代の終わりから50年代の初めにORの典型的な教科書が書かれましたよね。それはエイコフとアーノフとチャーチマンの典型的なのが出てきて、それ以降、ORはほぼ動いていない。ただし、中で使われる数学や何かはリバースされているけれども、学問構造は変わっていないわけですよね。それが例えば製造的に行くとシステムズ・エンジニアリングになって、政策的になるとシステムズ・アナライスになって、経営的になるとマネジメント・サイエンスに全部展開したというのがORのその後の道だったわけです。
 これらを全部称して、ヨーロッパではハードシステムズ・シンキングというふうに呼んで、そしてそれに対して論理、実証ではない現象学的解釈主義を立脚とするソフトシステムの方法論がダーッと発達した。しかし、アメリカにはそいつは行かなかった。アメリカはどういう動きになったかというと、ORを少なくとも教科書で書いたチャーチマンとエイコフは完全に動いちゃって、すなわち、エイコフの有名な1970年代終わりの「The future of OR is past」というものすごい論文が出て、それでORの首を締めた。自分が生んだ子供の首を締めたとよく言われる。要するにサイエンスから全部アートへ向かった。その後はメイソンだとか、ミトロフの世界へ入っていくわけです。
 それとこのサービス・サイエンスは何が違って、何がORを超えたのだろうかということを言わないと、多分、ORの焼き直しだ。サービス・サイエンスと言っているけれども、ORの世界で全部、つまり、システムズ方法論の世界で全部やったことをまた二、三十年後にやり直すのという話になってしまう。それではおそらくまずいわけなので、多分、今回のこのサービス科学・工学では、いかにORを超えたところを見出すかというのがポイントではないかなと思います。
 それは多分、ORの論理の内側からどうやって超えるかという話と、それから、先ほど申し上げたソフトの流れのほうの、つまり、ヨーロッパ系ですね。ヨーロッパ系を全部射程に入れないと、アメリカのIBMのORグループのリバイスだけに終わってしまうというところがあって、そこら辺が私は否定する意味で言っているのではなくて、課題としてそこがありそうだなと思います。だから、その学問構造が同じ中で幾ら数学の新しいものを入れても、学問そのものとしてはORの進化系でしかないという話になってしまって、そこのところは少し懸念するなというのを、すみません、水を差す意味ではなくて、少しそれを申し上げたいと思ったのが1点目です。
 もう1点が、データがあればいいかという話について少しご参考までに申し上げると、POSのデータがまだ活用されていないというのは、これは私は全く賛成なのです。活用され切っていないというのは賛成なのですけれども、例えば某イトー何とか堂の前のCIOと一緒に仕事をしていたときに、彼らが経営上一番困るのはPOSのデータが活用し切れていないことではなくて、そうではなくて、POSが買った物品のデータしかないことだ。要するに売り逃したデータだとか、売り損ねたデータだとか、ほかで売れているデータだとか、あるいは買おうとして買わなかったもののデータとかがないことを一番嘆いていた。経営上、一番欲しいのはそれだったんですね。だから、そっちの側面も忘れないでくださいという意味を今申し上げたいと思います。
 1つご紹介をすると、去年、秋葉原で中島委員などとご一緒に、買いかけて買わなかったもののデータをとるという実験をやりました。つまり、携帯電話で、最終的に買ったものしかデータは出ないのだけれども、取って開いて見てみたら、これは買いかけたけれども、そのまま置いたというやつは全部データが取れるという実証実験をやりまして、多分、その類はこっち側にプラスになるだろう。つまり、私は何を言いたいかというと、反対をしているだけではない、そういうこともちゃんとやっていますよという正当化をしているんですけれども、そういうことがあると思います。
 3番目、先ほど生駒座長がアーキテクチャが非常に重要だとおっしゃったので、これも全くそのとおりだと思うのですけれども、もう一方で、サービス・エマージェンスがあるはずだ。サービス・アーキテクチャではなく、つまり、論理的に構築するということだけではなく、化学的に2社があったときに3社目が全く予想がつかないというエマージェント・プロパティをつくっていくという創発の方法論があるはずなので、設計の方法論だけではなくて、創発を誘導する方法論についてもこの分野での視野に入れていただくといいのではないかなと思いました。
 以上、3点です。

【生駒座長】
 ありがとうございました。
 最初のORを超えられるかという話は。

【日高委員】
 言い訳ではないのですが、今日の私の後半の部分の話は、これがサービス・サイエンスだというのではなくて、1つの部分としてお話ししたというご理解をいただければと。確かに今のIT Enabled Servicesの場合には、ORに一番近い、そういうソリューションというところが多いと思います。それが全部ですと言っているわけではなくて、そういうようなサービス・サイエンスの中に入るであろう1つの部分という、そういう位置づけでお話ししたということですね。
 もう少し、今日言い足りなかったので少しだけ補足しますと、スーパーのRFIDの話がありましたけれども、あれは一見、ああいうふうに話すとおもしろそうだなと思うんですけれども、それで本当にイノベーションが起こるかどうかというのは別の次元だと思うんです。妹尾委員が今少しおっしゃられましたけれども、セカンド・チョイスとか、あれもわかってくれば、眺めていたんだけれども買わないとか、そういうところの分析というのは、これからまだまだ値打ちがあるだろうし、あるいはもっと違ったポイントで言いますと、ああいうようなものをやって儲かっていくお店と、そうじゃないお店とどうもカテゴリーがあるみたいなんです。
 例えばお客さんが店についてしまっている場合には、あれは幾らやっても上がらないんです。そうではなくて不特定多数が来るような店でやると、また来るかもしれないとかいろいろあって、要するに手法論の体系化というのがあると思うんですけれども、それを適用する現実社会の体系化とか、そっちもあるのかなという点で、そういう意味では、手法としてはトライアルがあるんですけれども、まだまだ現実的にはORを超えて考えなければいけないような部分というのがたくさんあると感じております。

【生駒座長】
 苦瀬先生、いかがですか。物流なんてORだとおっしゃったわけですけれども。

【妹尾委員】
 いや、別に否定的に言ったわけではないですよ。

【生駒座長】
 何か現代の技術の進歩で、多分、それプラスアルファが何か。

【苦瀬教授】
 では、ORだけかどうか。私はORの専門ではなくて、私のところにはORの専門が別にいますけれども、私が思うのはORで解ける範囲と解けないところというのは必ずあると思うんですね。うちの若い先生のを見ていても、先ほど申し上げましたように、VIPが来たらどうするかというのは、どうやっても解けないわけですね。それから、病院のことをやっていても、患者さんがどういうふうに行動するかというのを全部ORで解くことは無理なのではないか。もっと初歩的なグルーピングがあって、それでこういう病歴の方のこういう方はどうしましょうかというところから行かざるを得ないのではないかとかですね。
 それから、都市計画とか病院でやっても、実際、一番大きいのは既得権なんですね。既得権をどう排除していくか。これをゲーム理論で解けばいいのかなとか思ったり、よくわからないのですが、実は既得権がなければスムーズにいくという例はいっぱいあるんですね。そこをもしもロジスティクスというのがサービスだとして、サービスを邪魔しているものがそういう制度上の問題であるとか、それから、そうじゃない問題だとすれば、そういうところにアプローチするのもあるのかなと、先生方のお話を聞いて感じておりました。
 以上です。

【生駒座長】
 ありがとうございました。
 この検討会の内容、検討事項について話題を移したいと思います。どうぞ。

【中島委員】
 先ほどから何回か出てきたんですけれども、1つは大学でこういうサービスの研究ができるかという話と、それから、サービスの担い手である企業と一緒になってとかいう、要するに大前提として大学は基礎研究で、企業がサービスだよということが思われているようなのですが、最近少し読み直した本にハーバート・サイモン、経済ノーベル学賞の彼が1960年代ぐらいに「The Science of The Artificial」というのを書いたんですね。ナチュラルサイエンスに対抗して、人工物のサイエンスをやらなければいけないというのを書いていて、その中に出てくるのですが、昔の大学というのはもっとデザインを教えていたが、戦後の--要するに相対性理論ができたころから、皆さん理論に行ってしまった。
 それはなぜかというと、理論のほうが教えやすいからだというような話が出てきます。CMUなどは、そういうデザインというのをもっと教えなければいけないというので、前からやっているよというような宣伝も書いてあるんですけれども、そういう意味で言うと、大学でこういう現場に出ていってサービスの研究ができないというのは、あんまり自明のことではないと思ったほうがいいのではないかと思っています。先ほども大澤委員が町中に出ていってという話があったのですけれども、全部の大学、全部の学科でやりなさいという話では当然ないんだけれども、一部の大学はそういうことをやるし、一部の大学は理論の基礎をやるというような分業でできてくるというような前提で文科省の体制とか、個々の提言というのがまとめられれば有用かな。我々、少し偏見ではないですけれども、とある前提にとらわれ過ぎているかなということで少し発言しました。

【生駒座長】
 今の点はいかがですか。特にアメリカの大学の先生はプラグマティックに現場へ行って問題を見つけようという気がありますけれども、日本の大学はお金が潤沢になればなるほどそういうことをしたくならない。今の状態、私はそうじゃないかなと思うんだけれども。

【大澤委員】
 今のに関連するのですが、しかし、話として少し戻るのですが、要はいろいろな問題がサービスであると思うんですね。本当にさまざまな、マーケティングという分野だけでもものすごくたくさんあって、ロジスティクスだって具体的な実問題がたくさんあって、ただ、そうやって学術的に扱われて論文になったり、学術的なセッションになったりしているような問題というのは、かなり方法がちゃんと確立してきていて、数学、例えばORでやるとか、データマイニングとか、そういうふうな方法までかなり確立しているのかなと。だから、極めて数学というものが有効に適用できているような気がするんですけれども、一方、そこでまだ全然扱われていないどころか、そこで問題提起すると、あほじゃないかと思われるような、そういう問題っていっぱいあると思うんですよね。
 例えばさっきのうちの学生が、なぜそこで怒られたのかとか、どうやってそこで店長を説得したかとか、そういうのって多分、皆さん、それは学術の問題としてあほだと思われるかもしれませんが、これはなかなか、よくよくその人としゃべってみると、かなり深いなと思うところもあったりするわけなんですね。そういうところはかなりじっくり、具体的にモデル化されていくとまた新しい数学が生まれてくるのかなと思いますので、1つのこの場での、私、この提言を必ずしも全然、採用されるものと思って言っていませんけれども、1つは新しい問題を見つけるようなことも必要なのかなと。
 こんな問題を解いてみたいですというふうな、そこまで具体的な提言というのは、例えばこれは予算化したら、各研究室からの申請の中で書かれるものだと思いますけれども、それより1ランク抽象度の高いような問題の設定というか、こういう問題を解いてくださいというような提言というのは、この場から起こっていっていいのかなと。それに対して例えばそれが数学であるのか、それとも現場に出かけていくことなのか、それともRFIDタグであるのか、全く新しいセンサーの開発なのかというふうな研究のアプローチというのはまたそこから生まれてくるように思いますので、1つは、いわゆる少し抽象度の高い新しい問題を提言するということなのかなと思います。
 それともう一つ、先ほど高安委員からコメントがありましたように、アメリカのサービスというのと日本のサービスというのとはかなり意味が違うなということは、本当に日常的に経験していることですよね。そこでアメリカのサービスということをやるということで本当にいいのかどうかというのは、一旦じっくり考えたほうがいいのかなと。例えばアメリカのスタンフォードの先生とか、イリノイの先生とか、いろいろな先生と共同研究とかしていると、日本はサービスってすばらしいねと言うんですね。
 例えばお店に行ったりして、居酒屋とか、そういうことをおっしゃっているわけなんですけれども、ただそれだけのことなのですが、実にすばらしいと。それで、アメリカにああいうサービスを導入できたら本当にいいだろうなということをおっしゃったりするので、日本のサービスを今度世界に向けて轟かせるような気概があってもいいのではないかなと思うんです。なので、1つは日本のサービス・サイエンス、まあ、サービス・サイエンスという名前でなくてもいいかもしれませんが、それに該当するものとして新しい学問をつくっていくという、そういうアプローチもあっていいのではないかと思っております。

【北川委員】
 この検討会の検討事項の1つとして、やはり早い時点から、どういう要素的な技術とか方法が必要かというのを意識して考えていったほうがいいのではないかと思います。例えば先ほどから数学が大事だということを言っていただいて、個人的にはありがたいと思うのですけれども、その数学といってもやはり、そこ自体を変えていかないといけないんだろうと思うんですね。先ほど中島委員もチラッと言われたかと思うのですけれども、従来の数学というのは、ある意味で不変の真理を探求していくようなイメージがあったかと思うのですが、サービスというのはむしろその対極にあって、知識を獲得していったり、創造していったり、そういうための数学が必要になってくると思うんですね。
 そのときにやはり何が必要か。それが今の数学にあるかどうかというところも含めてやっていく必要があるのではないか。そういう意味で、1の(1)のサービス科学・工学とはどういうものであるかという、それに関連しますけれども、それをやっていくに当たって必要かということですね。前回、丹羽委員が要素技術と技術パッケージと言われましたけれども、そういう2段階必要かもしれませんけれども、それを考えていくべきではないか。それはある程度進めないと難しいというところはあるかと思うのですが、それを最初から考えていくことが必要ではないかなと思っています。

【長井委員】
 サービス科学・工学とはどのようなものであるべきかということに関して少し、私はまだサービス科学・工学というものをきちんと整理して考えられているわけではないのですけれども、金融工学・数理ファイナンスで起こっているような状況について少しご説明させていただくことで、1つ私たちが考えていることをお話ししたいと思いますけれども、例えば金融工学・数理ファイナンスという分野が起こったことによって、大学の統計学、おそらく北川委員などご存じだと思いますけれども、具体的に株式市場のデータからデータをとって、それを解析するということを始められているわけですが、そうすることによって高頻度データ解析という、非常に困難ですが、統計学上に新しい問題を提起するようなことになっておりまして、その高頻度なデータ解析をすることによってボラティリティという、基本的に金融工学で基本的な量を推定するという問題が起こってきているという状況があります。
 そして、そういうものを推定することによって、市場の数理モデルを構築するというふうな方向に動いていっております。それは先ほど妹尾委員が言われていたオペレーション・リサーチを超えられるかどうかということとも少し関係すると思うのですけれども、これはサービス・サイエンスというふうにわざわざ「サイエンス」という言葉を使ったというところは、原理的な問題自身を追求することによって現実に飛躍的な発展を与えられることがあるのではないかという、そういう現実の問題をただ解決しようという方向ではなくて、サイエンスとして深めることによって、もっと飛躍的な発展があり得るのではないかという、そういう視点があるのではないかと私は感じております。
 これはただ感じているというような状況ですけれども、そのことは先ほど日高委員がお話しになった話の中で、ITには構造的な問題があると言われて、日本のITにはと言われたと思いますけれども、客が要請したものに対する答えとしてこたえようとしているけれども、アメリカではITが提案するということが大きいと言われていて、それはITが提案するというときには、単に現場の問題ということだけではなくて、サイエンスとして深めているから新たなものを提案できるというふうな、そういう観点があるのではないだろうかと感じております。
 それからまた、データのとり方ということについてもなのですけれども、例えば大学の研究者が証券市場のデータからもらう場合でも、実際にいただけるデータは、例えば金融市場のデータでしたら、大学の研究者が関心があるのはBid-Ask Spreadといって、売りと買いのギャップがあるデータが欲しいわけなんですけれども、実際に提供できるデータというのは、しばしば売ったときのデータしかないということで、共同でやりとりすることによって、そういうBid-Ask Spreadが入ったデータというのが非常に大事だということを現場のほうに伝えることができて、そのことによって、そのデータをとることによって市場のモデルもよりよいモデルができるというようなあり方が現場で起こっている。そういうようなこともあると思います。
 だから、どういうふうに今後このサービス・サイエンスというのを進めればいいかというときに、もちろん現場との交流というのは欠かせないのですけれども、大学ができることは、大学の中だけでできることを深めるということもやはり一方、非常に大事で、それらを大事にしながら進めるというのが、このサービス・サイエンスに込められたものだと、私はそういうふう思いたいと思っております。

【大澤委員】
 もしかすると、現場という言葉の齟齬があるかもしれませんが、現場というのは非常に深いんです。これは現場においては、例えば1人の店員さんというのをとっても、その店員さんとお客さんとのインタラクションの中で、店員の人が言葉にできないような、非常に深い、そこにいろいろな知性が宿っているわけですね。それをいかにしてモデル化して、そこから初めて、いわゆる研究室の中に入って研究がスタートする。そこから深めるという手順が必要だと思うので、現場というのを浅いものだというふうにもしお考えであれば、それは全く逆なのではないかと思います。

【長井委員】
 今の点に関しましても、先ほど申し上げたボラティリティというのは、現場ではモデル・フリー・インプライド・ボラリティリティというのを使っておりまして、それは決して軽いものではなくて、それと先ほど申し上げた高頻度データ解析から推定されるボラティリティとのすり合わせという新しい問題を提起していることは十分承知しておりまして、それはやはり現場との行き来というのは欠かせないということはよくわかっているつもりでございます。

【生駒座長】
 金融工学に関して質問したいのですけれども、そういうことをやるのは、証券会社はすごいインセンティブがあるわけですよ。それでむしろ巻き込んで、ああいうのをどんどん開発していって社会問題も起こしていますけれども、大学の中でやるインセンティブは、どうして大学の先生、そんなことをやるんですか。

【長井委員】
 やはりサイエンスとして非常に魅力のある問題が出てきたということがあると思います。

【生駒座長】
 サイエンスとして興味がある方が。

【長井委員】
 はい。

【生駒座長】
 何人ぐらいいらっしゃるんですか、日本で言うと金融工学。

【長井委員】
 日本でそういう観点から研究されている方は、それほど多くはないかもしれませんけれども、ヨーロッパ、アメリカ、ヨーロッパは特に多いと思います。

【生駒座長】
 多いですね。日本では何人ぐらい。10人、100人、1,000人?

【長井委員】
 それははっきりと何人という形と言えないですけどね。

【生駒座長】
 わからない。ああ、そうですか。

【儀我委員】
 100と10の間じゃないですか。

【生駒座長】
 100と10の間だそうです。そんなものですか。

【長井委員】
 まあまあ、それぐらいの粗っぽい数でしたら、それでよろしいかと思います。

【生駒座長】
 いや、私の友達もやっていまして、公開情報から過去の株でもって全部統計データを処理しまして、アメリカの市場で何百万勝って、日本の市場で何十万勝ったって、1桁違うんだそうですね。だけれども、それ、何でやっているのかよくわからないんですね。自分でそれから投資してやるというのがあればいいんですけれども、過去のデータでそういうことを言っておられる。それで数学の式を発展させているんですよね。結構です。

【日高委員】
 大澤委員がおっしゃったところ、この今の発言の前の発言ですけれども、生徒さんが怒られるとか、そういうごちゃごちゃした部分をどういうふうに整理するかとか、その辺、結構、ポイントかなと思っていまして、よく日本の旅館の女将さんの価値はすばらしいと言われますね。だけど、そういう部分を何ですばらしいのかって外人さんに説明できなければいけない。それをどういうようなランゲージで説明するのか。要するに民俗学の話なのか、労働の価値観の話なのか、文化的な話なのか、あるいは数学の話なのか、そういうような何でもって説明するのかというところを価値の可視化といいますか、それをどういうふうに体系化するかというあたりが1つポイントではなかろうかと思います。

【儀我委員】
 今のお話とすごく関係があります。また研究資金の問題とも関係があります。要するに数学にとってみれば、それがどういう数学の問題としてモデル化できるかが重要です。例えばさっきの暗黙知、大澤委員がおっしゃっていますし、日高委員もおっしゃっている暗黙知をどうやってモデル化するかです。これを、モデル化できてしまえば、多分、研究費を申請できるといった感じです。そこへ行くまでは多分、何々をするといって、プロポーザルを出しても通らないわけですよね。そこが一番大事で抜けているところではないでしょうか。この部分を数学の人と工学の方と現場の方とやるというのが1つの一番いいやり方でしょう。ただ、それは問題を解くのではなくて、何が問題かということを解明するというのではないかと思います。
 もう一つ、これはこの項目に入るかどうかわかりませんし、教育はあんまり関係ないのかもしれませんけれども、ただ、日本の数学とほかの国の数学との雰囲気が若干違うというのは、おそらく初等中等教育からずっとあるのではないでしょうか。日本の初等中等教育は問題を簡単にするために、何か等式ですぱっと行くような、答えが1個、きちんと求まるというのがわりと多い形になっています。要するに評価したり、不等式がいっぱい出てくると難しくなるから、それを全部、あるいはかなり排除している感じなのではないでしょうか。
 でも、今の皆様のお話を聞くと、等式で答えがポッとわかるというよりも、どっちかというと、最大限、これだけは大丈夫だとかいった不等式の世界が重要だと思われます。その辺が少し欠けているのではないでしょうか。つまり、物理のきれいなところを扱うためには、いい数学なのですけれども、現実のものを扱うには少し弱いという印象は受けます。単に印象ですが。

【生駒座長】
 時間が参りましたので議論はこの辺で打ち切りたいと思いますが、非常にいろいろなテーマがランダムに議論されました。

【柿田計画官】
 本日、たくさんいただいた意見は、資料3‐2の項目についての議論に十分関連するものが多かったと思いますので、今後の会議の中で再度掘り下げて議論をしていただきたいと思います。

【生駒座長】
 来年度の予算ですが、大澤委員が提案したような、むしろ課題を選定して、これを解決しなさいという募集の仕方ができるかどうかですね。

【柿田計画官】
 そこのところも、研究資金制度のあり方のところで、課題設定の仕方というのがありますけれども、まさに、大澤委員がおっしゃったことに該当すると思います。

【生駒座長】
 それでは、ご議論、どうもありがとうございました。マイクを事務局にお返しいたします。

【渡邉計画官補佐】
 次回の第3回検討会は10月上旬を予定してございます。会場、議題等、詳細につきましては、後日またご連絡させていただきますので、ご了承ください。
 事務局からは以上でございます。

【生駒座長】
 それでは、どうもありがとうございました。これで解散いたします。

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

Get ADOBE READER

PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要な場合があります。
Adobe Acrobat Readerは開発元のWebページにて、無償でダウンロード可能です。

(科学技術・学術政策局計画官付)