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研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)に基づく体制整備等の実施状況について(分析結果報告)5.まとめ

(1)全体傾向の総括

【必須事項への取組】

  •  機関内の責任体系の明確化、通報窓口の設置、当事者以外の検収体制の整備等をはじめとする必須事項については、ガイドライン制定後1年足らずの間に急速に整備がなされたと言える。
  •  適切な管理・監査のための最低限の「器」としての体制は、ほとんどの機関において整備がなされたことは評価できる。

【「不正防止計画」及び「行動規範」】

  •  しかしながら、「不正防止計画」や「行動規範」の策定等、必須事項ではない事項については、規模が大きく、多額の研究費配分を受けている機関の中でさえも取組姿勢に大きな開きがあると言える。
  •  「不正防止計画」を策定している場合であっても、リスク分析や具体的対応策についての議論を十分行わずに策定したと思われる「不正防止計画」も見受けられる。「不正防止計画」は自機関の抱える課題を把握することが出発点であるが、研究者や事務職員がどのような問題意識をもっているかアンケートや聞き取りなどを行っている機関は必ずしも多くない。
  •  また、「不正防止計画」は、リスク分析を十分に行った上で、研究の効率性・迅速性を確保しながら、管理・監査のための限られたリソースをどのような優先順位でどのような対策に振り向けるべきか、研究者と事務職員が十分に議論して策定すべきである。しかしながらこのようなプロセスを経ていないために、具体性を欠いていたり、優先順位や目標・期限等が明確でない「不正防止計画」も多く見られる。
  •  不正事案処理の経験を有する機関においては、その経験を踏まえた不正防止計画の策定に取組んでいるところがほとんどであるが、中には過去の事例への対応の経験が不正防止計画策定の議論に結びついていないと思われるケースが見受けられる。
  •  また、「行動規範」については、既存のものを「流用」して抽象的な精神規程として取り扱われている事例が多く、ボトムアップ的に構築している機関は少ない。
  •  「行動規範」と「不正防止計画」は本来、非常に密接で連続的な関係にあるべきであるが、異なる部局で別々に策定しているケースも見受けられた。

【適正な運営・管理活動】

  •  数多くの機関でそれぞれの機関の特性に応じた様々な取組が模索されている。
  •  発注・検収体制については、機関によっては、「預け金」対策として、当事者以外の検収体制を整えることだけに力点が置かれている場合があるが、多くの機関において、財務会計システム等の整備による執行状況の遅滞ない把握、業者との癒着防止策、抜き打ちの納品確認など複数の取組を組み合わせ、柔軟性・迅速性を確保しつつ、実効的なチェックを可能とするシステムを模索している。なお、比較的規模の大きい大学等においては、財務会計システムの導入等により、物品の発注段階から納品・支払に至る各段階での執行状況について、複数の目による組織的チェックが可能となる体制の構築を目指している機関が多い。

【積極的な情報の公開】

  •  ガイドラインに基づく体制整備状況については、単に報告書を文部科学省や資金配分機関に報告書を提出すればよいというものではなく、国民に対して公的研究費の配分を受け適切に管理する体制をどのように整備しているか積極的に発信することが有意義であるが、HP等でわかりやすく情報発信を行っている事例は少ない。
  •  機関内の関係者に対する周知は特に規模の大きい機関においては機関内HPを活用している例が多く見られた。

【モニタリング】

  •  全般的にモニタリング体制整備に対する意識は必ずしも高いとは言えず、大規模な機関であっても、日常業務におけるリスク管理を行う防止計画推進部署、実施部門とは独立し全体としてシステムが機能しているか検証する内部監査部門、経営から独立した立場から組織的牽制機能を果たす監事の役割といった多層的な監査体制を構築している機関は少ない。
  •  実効的な監査を実施するには経理的な書類の要件のチェックといった形式的側面からだけでなく、管理体制や方法の適切性も含めた実効的なものであることが望ましい。一部の機関において事務職員と研究者がチームを組み監査に当たる例などは注目すべきである。

(2)今後の取組に対する提言

  •  「不正防止計画」「行動規範」の策定はガイドラインの根幹をなすものであり、実効的なものとなるよう積極的に取り組むべきである。特に大規模な機関においては、これらが整備されることが強く求められる。その際、実効性のあるものとなるよう、研究現場における実態の把握を踏まえた自己規律の精神に沿った対応が重要である。
  •  機関の管理・監査体制についてはわかりやすい形で機関内外に積極的な情報発信を行うべきである。
  •  「預け金」「カラ出張」「カラ謝金」等への対策は一つの方法だけでなく、複数の取組を組み合わせた総合的な取組による効果的な牽制を検討すべきである。
     また、対応を検討するに当たっては、研究者と事務職員が議論し、採用した取組の効果を評価し、改善を図るというPDCAサイクルの仕組みが構築されることが重要である。
  •  財務会計システム、Web購入システムなど経費管理のIT化は業務効率化に貢献することはいうまでもないが、研究費使用における迅速性や透明性及び牽制効果において不正防止に大きく貢献する。中・長期的な視点で積極的に検討すべきである。また、その際、初期投資は一定レベル必要なことから、小・中規模機関の導入方策については更に検討が進められるべきである。
  •  研究者と事務職員間での円滑なコミュニケーションと組織全体として取り組むという意識の喚起は極めて重要であり、最高管理責任者のリーダーシップの発揮が強く期待される。
  •  研究機関においては、ガイドラインの根本精神に基づき、地道で手間のかかる作業に正面から取り組むことが望まれる。

(3)今後のガイドライン運用全般についての検討課題等

  •  ガイドラインの趣旨の周知徹底はまだ十分ではない。文部科学省や資金配分機関がこれに取り組むことはもちろんであるが、研究機関においても、幹部職員、研究者、事務担当職員等様々なレベルでの集中的な研修が必要である。
  •  小規模な機関からは、ガイドラインが一定規模以上の大学における管理・監査を主眼に置いたものであり、自機関が対応することは困難であるとの声が多く聞かれた。ガイドラインの趣旨は実質的な機能が担保されているかが問題であって、形式的に窓口や部署を置くことを求めることではないことの周知徹底と、組織の実態に即した実効的な体制整備が促進されるような形でのアドバイスなどを文部科学省や資金配分機関において積極的に実施する必要がある。
  •  研究費の制度改善についての要望が多くの研究機関からなされた。特に制度毎に異なる研究費の使用ルールの統一化等に関する要望が多かった。研究費の制度改善については、各制度においても着実に進めてきたところであるが、米国FDPの取組も参考としつつ、研究資金の配分側機関と大学等受入機関の継続的意見交換を行う恒常的な協議の場を設け、更なる制度改善を行っていく必要がある。