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研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)に基づく体制整備等の実施状況について(分析結果報告)4.ガイドライン第3節 不正を発生させる要因の把握と不正防止計画の策定・実施

 不正を発生させる要因を把握し、具体的な不正防止対応計画を策定・実施することにより、関係者の自主的な取り組みを喚起し、不正の発生を防止することが必要である。

(1)不正を発生させる要因の把握と不正防止計画の策定

(全機関に実施を要請する事項)

  • 1 不正を発生させる要因がどこにどのような形であるのか、機関全体の状況を体系的に整理し評価する。
  • 2 不正を発生させる要因に対応する具体的な不正防止計画を策定する。

各研究機関における取組状況

【不正を発生させる要因の把握と不正防止計画の策定への取組状況】

 不正防止計画の策定状況については、検討中の機関が約34パーセント、策定に至っていない機関が約43パーセントという状況であり、要因の把握も計画もできていない機関約6パーセントを併せると約83パーセントに上り、策定できている機関は約17パーセントに止まった。不正発生要因の把握に当たっては、ガイドラインでは現状のルールと実態について、乖離が生じていないかどうかという点などに注意が必要であることを謳っているが、まず要因把握の入り口である実態調査の段階で、実行できていない機関が見受けられた。さらに、不正には複数の要因が関わる可能性があるという観点から要因の洗い出しを行っている機関はほとんど無く、経理的な側面からの単独的な分析が多いように見受けられた。今後は、不正発生要因を機関全体の状況を体系的に整理・評価した防止計画の充実に努めることが望まれる。

<不正防止計画の策定状況について(取組状況整理票の項目11)>

不正防止計画の策定状況について(1,536機関)

不正防止計画の策定方法について【255機関:複数回答】
(策定状況で「策定」を選択した場合)

  1. 研究者・職員の意識調査などを実施し、具体的な不正発生要因を踏まえた
  2. 一部の研究者等からヒアリング等を行い、現場の実態を踏まえた
  3. これまで議論されてきた論点に基づいて策定
  4. 一部の部局における不正発生要因を調査したものを踏まえた
  5. 全ての部局における不正発生要因を調査したものを踏まえた
  6. 特定した不正発生要因について、重要と考えられる事項を中心にした対応策とした
  7. 計画の推進について、期限、責任者、成果の具体像などを明示した具体的なものになっている
  8. 過去の研究費の不正使用についてその不正発生要因ごとに対応策を検討して計画を策定している
  9. その他

不正発生要因の把握に当たって留意した事項について【772機関:複数回答】
(策定状況で「策定、計画の検討」を選択した場合)

  1. ルールと実態が乖離していないか
  2. 決済手続きが複雑で責任の所在が不明確になっていないか
  3. 取引に対するチェックが不十分でないか
  4. 予算執行状況が特定の時期に偏っていないか
  5. 過去に業者に対する未払い問題が生じていないか
  6. 競争的資金等が集中している部局・研究室に関して十分な管理体制がとれているか
  7. 非常勤雇用者の管理が研究室まかせになっていないか
  8. 機関全体の幅広い関係者の協力を求めて発生要因を把握しているか
  9. その他

(2)不正防止計画の実施

(全機関に実施を要請する事項)

  • 1 研究機関全体の観点から不正防止計画の推進を担当する者又は部署(以下、「防止計画推進部署」という。)を置く。【必須事項】
  • 2 最高管理責任者が率先して対応することを機関内外に表明するとともに、自ら不正防止計画の進捗管理に努めるものとする。

【防止計画推進部署の設置への取組状況】

 「必須事項」である防止計画推進部署の設置については、約67パーセントの機関で対応がなされている。設置形態については、新たに人員を配置した機関は少数で、既存の部署との兼務をしている機関が多く見られる。検討中と回答している機関は約22パーセント、設置できていないと回答している機関は約11パーセントであった。平成19年9月末時点の競争的資金等の受給状況を見ると、競争的資金等の配分を受けていない、配分は受けているが5件以下かつ1,000万円以下と小規模な研究機関が約68パーセントを占めているという状況である。なお、防止計画推進部署を設置できていないと回答している機関においても、「防止計画推進部署」と特定の名称をつけた部署は設置されていなくても、その役割を担っている部署または者が対応しているが、報告書では設置できていないと回答した機関もいくつか見受けられた。この点を考慮すれば、防止計画推進部署の設置については、概ね対応できていると考えられる。なお、設置できていないと回答した機関にあっては、早急に対応することが望まれる。

<防止計画推進部署の設置について(取組状況整理票の項目12)>

防止計画推進部署の設置について【必須事項】(1,555機関)

防止計画推進部署の設置形態について【1,038機関:複数回答】
(設置で「設置している」を選択した場合)

  1. 内部監査部門とは別に設置している
  2. 内部監査部門と兼ねている
  3. 新たに人員を配置した
  4. 既存の部署(職員を)充て兼務をしている
  5. その他

防止計画推進部署を設置できていない機関(受給状況別:177機関)

【最高管理責任者による進捗管理等への取組状況】

 最高管理責任者による進捗管理に関しては、機関内外への表明をしている機関は約27パーセント、検討している機関は約57パーセント、表明できていない機関は約16パーセントとなっている。また不正防止計画の進捗管理について努めている機関は約26パーセント、検討している機関は約48パーセント、権限委譲している機関が約17パーセント、管理していない機関が約9パーセントあった。機関内外への表明、不正防止計画の進捗管理については、ともに全体の約1/4しかできていない状況である。これは、不正防止計画自体が策定されている機関が約17パーセントに止まっていることを考えればやむを得ないともいえるが、いずれにしても早急に不正防止計画の策定を行い、最高管理責任者がリーダーシップを発揮して積極的に関与していくことが望まれる。

<最高管理責任者による進捗管理等について(取組状況整理票の項目13)>

最高管理責任者による進捗管理等について

(機関内外への表明:1,526機関)

(不正防止計画の進捗管理:1,513機関)

【まとめ】

 不正を発生させる要因の把握と不正防止計画の策定への取組状況については、速やかな取組を求める意味での必須事項ではないが、研究機関における不正防止の取組において極めて重要な位置付けになるものと考える。
 不正発生要因を把握し、不正防止計画を策定している場合であっても、リスク分析や具体的対応策についての議論を十分行わずに策定したと思われる不正防止計画も見受けられる。不正防止計画は自機関の抱える課題を把握することが出発点であるが、その際、単に経理的な事務処理の観点にとどまらず、その背景となっている研究業務の実情・実態、機関内の組織風土、研究者や事務職員がどのような問題意識をもっているかについて、アンケートや聞き取り調査などを行っている機関は必ずしも多くない。
 そのような実態の把握を踏まえ、リスク分析を十分に行った上で、研究の効率性・迅速性を確保しながら、管理・監査のための限られたリソースをどのような優先順位でどのような対策に振り向けるべきか、研究者と事務職員間の十分な議論を踏まえて策定していくことが重要と考えられる。不正防止計画策定へ向けた取組は早急に着手すべきではあるが、不正防止計画は、機関内での十分な議論無しに拙速につくりあげるものではなく、むしろ策定のプロセスそのものが重要であり、また、随時改善を図るべきものであるとの認識に立ち、持続的な取組が円滑に行われるための体制構築を期待したい。
 また、一部の不正事案処理の経験を有する機関においては、その経験を踏まえた不正防止計画の策定に取り組んでいるところがほとんどであるが、中には過去の事例への対応の経験が不正防止計画策定の議論に結びついていないと思われるケースが見受けられた。
 不正防止計画を策定していく上で、不正使用を行うことが出来ない環境を作ることは重要である。各研究機関においても、検収体制の充実をはじめとした各種の取組がなされているところであるが、更に踏み込むと、なぜ研究費の不正使用が行われるのか、その要因と動機(一例として、年度初めに研究費が交付されるまでの間の研究資金を確保したい)を分析し、それを排除することで、不正使用の防止と円滑な研究遂行の両立につながるものと考えられる。私的流用を目的とする場合を除いて、研究費の不正使用は研究者の要望や事務職員を含めた研究費の制度やルールに対する理解不足や誤解が原因で起こる場合が多いと考えられ、研究活動を遂行する上で、これらの課題を解決していくことが、不正使用を防ぐために極めて重要であると考えられる。
 不正防止計画の策定に当たっては、表面的、形式的対応とならないように、適切かつ実効性を高める計画の策定が望まれる。
 防止計画推進部署については、その役割を担っている部署があるにも関わらず、担当部署として明確にされていない機関においては、責任の所在を明確にして不正防止計画の推進に当たることが必要である。また、不正防止計画の着実な実施は、最高管理責任者の責任であるため、その策定の段階から積極的に関与し進捗管理に努め、率先して対応することを機関内外に表明することが望まれる。

参考となる取組の事例

  • ★ 不正防止計画の策定に際し趣旨を踏まえ要因の分析に積極的に取り組んでいる事例
    • (国立大学)
      •  研究費の不正対策検討における学内アンケートを行う前に、リスクの概要や要因を把握するために各部局に対しヒアリング(教員、事務職員)を行い、リスク調査票を作成。
        アンケートの質問事項については、これを踏まえて作成した。
        1. アンケート調査の目的
          • 1研究費管理に対する認識(風土)の把握
          • 2研究費管理に関するルールの認知度・理解度の把握
          • 3ルールと実態の乖離やルールの問題点等
          • 4アンケートを実施することで大学の取組・問題意識を教職員に知ってもらう
        2. 調査結果の利用方法
          • 1学内のリスク・課題の把握・分析
          • 2不正防止計画への優先順位決定への利用
          • 3行動規範に盛り込むべき項目への反映
          • 4業務の見直し・改善への反映
      •  不正使用だけでなく研究倫理と併せて不正発生要因の検討をした。
      •  要因の洗い出しを個別部門毎に特有なもの、機関全体に起因するもの、もしくは研究者個人の問題・責任に係るもの、組織の問題・責任に係るものに分類し分析した。
    • (私立大学)
      •  過去の不正事例などを検証し、各種報道記事や他機関の事例を参考にしながら不正発生要因の洗い出しを行った。

改善・検討が必要な事例

  •  過去に不正事例が無いため、不正発生要因が無いと判断し洗い出しを行わず、防止計画推進部署も設置していない。
  •  研究経験を有する者の参画が無く、運用に当たって研究者の意見を汲み取る仕組みが無い。
  •  不正発生要因の洗い出し及び分析を十分行わずに不正防止計画を策定した。