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資料3−4

私立大学における公的研究費不正経理事例と今後の管理・監査体制の問題点

第3回研究費の不正対策検討会資料(2006年10月4日)

芝浦工業大学 石渡朝男

(1)  芝浦工業大学の科学研究費不正使用事例及び今後の検討課題
 
段階 事例内容 措置内容 今後の検討課題
発生段階 [事象]
科学研究費を「預かり金」として業者(大学生協)にプールした。
 
研究者(教員)の公的資金に対する意識を教授会や主任会議等、多くの機会を通じて高める努力が必要である。
[発生のきっかけ]
内部告発と新聞報道による。(2003年6月)
理事会の判断で取上げた。
受付窓口と取上げるかどうかの判断をどの機関で行うかを明確にする。
[原因]
研究の継続性の確保、研究期間終了後の支出への対応、無駄な支出の回避、等が原因として考えられる。
予算執行を取り敢えず停止した。
業者(生協)にプールの取扱いを即日禁止した。
現状の繰越し制度は、ある特定な理由に限られているが、ある一定期間(例えば4,5月以内程度)に限って繰越条件の緩和ができないか。
[外部への対応]
文部科学省等、関係機関へ発生時点での状況説明を行った。
記者会見により情報公開した。
情報公開の方法等を普段から決めておく。
(特にマスコミ対応等)
調査段階 [調査]
理事会及び大学側との合同による調査委員会を発足し、研究費不正使用疑惑の解明と実行者の責任を明らかにし、あわせて再発防止を目的に活動を開始した。
過去5年間の科研費交付対象教員から、生協に「預かり金」としてプールしたと思われる内容の自己申告を求めた。
自己申告書及び業者から提出された書類と大学の書類との間での突合を行い、事実確認を行った。
書類による調査が完了した時点で業者及び該当教員との個別ヒアリングを行い、事実確認を行った。
調査の結果、過去5年度間のうち4年度間に9人(総額750万円余り)の科研費が生協に一旦「預かり金」としてプールされ、その後、日を改めて各教員の当該研究活動に充てられていることが判明した。
以上の調査結果を教授会及び理事会に報告した。
調査委員会の位置づけ、責任と権限、及び諮問事項を明確にしておく。
調査委員会の構成員に、学外者(例えば弁護士や公認会計士等)を入れることが望ましい。
調査に当っては、業者の全面的な協力が不可欠である。
事後段階 [事後処置]
1.処分
不適正経理を行った教員に対し、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)に基づき、科研費を国に返還し、あわせて「科学研究費補助金取扱規程(昭和40年文部省告示第110号)に基づき、次年度以降の科研費の申請を認めないことにした。
該当教員には、学長による「厳重注意」処分を行った。
すでに交付され、使用を留保していた新年度の科研費についても、自主的返還を求めた。
さらに、該当教員には、学内の「特別研究費」の申請も一定期間停止する措置をとった。
理事長、学長、副学長、及び学部長は、役員報酬もしくは職務手当の一部を自主的に返納し、管理責任を取った。
常に厳正な処分ができるよう、処分の対象者(実施責任と管理責任)の範囲と、処分の程度を予め基準を定めておくことが望ましい。(処分の最終決定権は「理事会」にあるが、教員の処分は「教授会」の議決事項となっている場合が多い。)
取引業者に対するペナルティー(例えば取引の一時停止等)も必要ではないか。
2.再発防止
学内及び社会に対し、調査結果を公表するとともに謝罪し、再発防止策をとった。
生協における「預かり金」処理を廃止させた。
本学の「倫理綱領」の周知徹底を図った。
科研費申請者、採択者に対する説明会を実施し、適正経理に努めるよう指導を行った。
学内の監査体制の強化(「監査室」の設置と専門スタッフの配置)を図った。
学内の研究費の一部について、次年度に限り繰越せる制度を設けた。
年度始めの研究活動に支障が出ないよう、一般経費とは別に、研究ファンドを設定し、科研費が交付されるまでの間、大学が立替する方法が考えられる。
最近私立大学において、大学出資による子会社を立ち上げて財務改善を図っているケースが増えているが、この子会社から物品調達することにより、一般業者との癒着などの不適正な関係や不適正な経理を回避することも可能となるのではないか。
3.報告及び返還・停止措置
2004年3月、「『科学研究費』不適正経理報告書」を文部科学大臣及び日本学術振興会理事長に提出し、その結果、科研費返還命令と4年間の申請停止措置を受けた。
科研費の返還及び申請停止措置により、科研費の運用の重要性の認識を植えつける効果がみられるが、その一方では、このことによって、該当教員の一部に、研究活動に対する姿勢に消極化の兆候がみられ、大学全体の研究活動に少なからず影響を与えている。(大学が自ら謙虚に受け止めなければならない問題である。)

(2)  私立大学における公的研究費の管理・監査体制の問題点
 
1  大学のガバナンスのあり方(経営主体は誰か)
 
私立大学においては、経営の責任者である「理事長」と、教学の責任者である「学長」が置かれる(二重構造)のが一般的である。(本来「経営」と「教学」は一体のものでなければならないが、二重構造により、しばしば両者にコンフリクトが発生することがあり、このことが私学経営を難しくしている。)
従って研究にかかる運営の責任者は「学長」であるが、法人の代表権を有するのは、原則「理事長」であるので、「経営主体者は誰か」と問われれば、それは「理事長」である。
さらに理事会と教授会との関係、加えて理事会と評議員会(特に寄附行為で議決機関として位置づけている評議員会)との関係で対立構造となることがあるが、このたびの改正私立学校法の趣旨にもあるように、理事会(理事長)に権限と責任を集中し、学校法人のガバナンス機能を強化すべきである。
今後の私学におけるガバナンス機能を強化するためには、しっかりとした経営理念を持って積極的に経営戦略を実行できる「経営者」と、それを支える「アドミニストレーター(専門性を有する行政管理職)」が不可欠である。
これまでの私学における「甘えの構造」は今や通用せず、「経営者責任」が強く求められる時代が到来したことを、私学経営者は自ら認識し、自己改革すべきである。

2  大学の統制環境
 
大学の組織風土の改革と教員の意識改革が最も重要な問題であることには違いないが、極めて難しい問題である。
しかしながら、難しいと言っているだけでは問題の解決にならないので、何らかの方策を考えなければならないが、一つの方法としては、「制度やルールを変えることによって意識改革を図る」、これ以外に即効薬は見当たらない。

3  統制活動のうち学内ルール、職務分担及び発注・検収のあり方
 
大学を取り巻く環境の大きな変化の中で、旧態依然のままの学内ルールが多く存在しており、実態にそぐわないことが問題を引き起こしている場合がある。実態に合った規程の見直しと、職務分担、職務権限を明確することが求められている。
発注と検収のルールを今一度見直しを行い、不正が行われないようなシステムを構築する必要がある。
しかしながら、理系・文系の専門分野によっても大きく異なるし、また大学の規模にもよって扱いが異なるので、実効性のある発注と検収制度の構築と実際の運用は、人的な面で極めて難しい。
検収センター構想もあるが、特に工学部門では専門分化が著しく、発注・検収に専門性が求められ、少人数で全ての分野に対応するのは困難である。
従って、発注・検収を事務部門で行えるのは、ある一定金額以上(例えば1件100万円以上)の物品等に限られ、それ以下のものについては、現場(教員)に権限の委譲をしなければならないのが実情である。

4  情報と伝達
 
すでに事例の中で述べたとおり、内部通報制度の構築と、受付窓口の明確化等、不正の申し出を受けた場合の対応手順を明確にしておくことが大切である。

5  監査制度のあり方
 
監査制度には、主として業務監査を担当する「監事」による監査、財務監査を主として担当する「公認会計士」による監査、さらには「内部監査人」による監査の、いわゆる「三様監査」が一般的である。
今後の監査制度のあり方としては、学校法人の監査方針と監査計画に基づき、三者のそれぞれの役割、分担を明確にした上で連携をとりつつ、体系的かつ実効性のある監査を行っていくことが重要である。

以上


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