放射線安全規制検討会(第25回) 議事録

1.日時

平成21年4月21日(火曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 科学技術・学術政策局会議室1(15階)

3.議題

  1. クリアランス制度について
  2. その他

4.出席者

委員

小佐古座長、近藤座長代理、大森委員、長見委員、木村委員、田中委員、東委員、古川委員、山口委員、山本幸佳委員、山本英明委員、米原委員

文部科学省

中原次長・原子力安全監、黒木原子力安全課長、中矢放射線規制室長、桐生放射線安全企画官、粟辻原子力安全課長補佐、服部放射線規制室長補佐 他

5.配付資料

資料第25-1号:第24回放射線安全規制検討会議事録
資料第25-2号:放射線障害防止法におけるクリアランス制度導入に向けた放射線安全規制検討会における検討について
資料第25-3号:放射線障害防止法におけるクリアランス制度導入に向けた過去の検討状況及びそれに基づく今後の方針
資料第25-4号:クリアランス制度導入等に係る制度設計の基本方針(案)
資料第25-5号:クリアランス判断方法の検討に関する基本方針(案)
資料第25-6号:今後の検討の進め方

参考資料1:放射線安全規制検討会委員名簿
参考資料2:クリアランス技術検討ワーキンググループの設置について
参考資料3:放射性同位元素の使用施設等の事故・故障等に係る事象の国際原子力事象評価尺度(INES)の運用について

6.議事

○資料第25-1号に基づき、第24回放射線安全規制検討会の議事録の報告が行われた。
○資料第25-2号、資料第25-3号、資料第25-4号、資料第25-5号、資料第25-6号に基づき、事務局よりクリアランス制度についての説明がなされた。
○今後の検討のあり方として、参考資料2に基づき、クリアランス技術検討ワーキンググループによる測定・評価方法等の技術的な検討を行うことが了承された。
○参考資料3に基づき、事務局より、放射性同位元素の使用施設等の事故・故障等に係る事象の国際原子力事象評価尺度の運用についての説明がなされた。

主な質疑応答

<資料第25-2号、資料第25-3号関係>
(趣旨説明、過去の検討状況について)

【山口委員】説明いただいた考え方に賛同する。医療関係では、加速器、短半減期の放射性同位元素を使用しており、クリアランス制度が規制として運用できるように利点を業界関係者に伝えて理解を得る活動が必要である。

【小佐古座長】核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下、「原子炉等規制法」という。)では、社会とのコミュニケーションの中でクリアランス制度を実際に実施することができる状況である。制度設計においては、短半減期核種を使用する事業所などの特定の分野のみに対応する制度設計ではなく、幅広く対応できるような検討をしていただけばと考える。

【木村委員】原子炉等規制法のクリアランス制度のレベルの想定におけるシナリオでは、物量、性状、それらに基づき再利用、処分などによる計算がされたが、シナリオの網羅性が非常に難しいため、包括性や諸外国の評価シナリオなどから崩落性についての検討を行った。放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(以下、「放射線障害防止法」という。)のシナリオの検討は、物量、性状が様々でより難しくなるのではないかと考える。

【小佐古座長】クリアランスの方法は、無条件による方法、またはある枠の中で行う緩い条件による方法との2通りがあると考える。

【長見委員】低い放射能濃度であっても、一般の方々に理解を得ていただくために説明を行っていく必要がある。

【田中委員】放射性同位元素によって汚染された物と放射線発生装置の使用に伴い生じた放射線を放出する同位元素によって汚染された物(以下、「RI汚染物」という。)について、廃棄物だった言葉を全てRI汚染物に置きかえられているが、廃棄物の定義は不要な物で、処理処分をしたい物であるため、その中で放射性同位元素による汚染の程度を議論するのであって、別な評価軸でないかと考えられる。
 スイスの病院では、既にクリアランス制度を行っており、短半減期の放射性同位元素の保管場所があり、その場所で保管容器に保存し、また、いつまで保管する等のラベルがあり、保管する期間が経過すると産業廃棄物の容器に移されるとのことであった。産業廃棄物の容器に移される際には、搬出して良いかを判断する検認システムがあった。

【米原委員】クリアランスレベルについて、文部科学省で関係機関に協力を得て、新たに導出されるとあるが、クリアランスした物は、流通し、外国に輸送されることも考えられ、日本独自のクリアランスレベルを導入すると混乱するのではないか。

【中矢放射線規制室長】導出するクリアランスレベルがどのようなレベルになるのかがわからないため、試算を考えている。このレベルがIAEA(国際原子力機関)のRS-G-1.7に近い値であれば、その値を考えれば良いが、もっと厳しい値が算出された場合はどうするのか、また、日本の特殊な需要があって、厳しいシナリオで検討していかなければならないとき等をどのように検討していくのかを考えている。
 廃棄物をRI汚染物としたのは、これは物の状態であると考えられるからである。例えば、コップが汚れているという状態のことであり、これを廃棄するかどうかは、実際に検認した後の行為である。どちらでも制度との関連はあるが、例えば、有効利用だけに限定する制度を設計すれば、それは後で再利用されることが前提であり、捨てることに対して一般的に何も法的制限をしなければ、それはどちらで行われても自由であり、あえて廃棄物に限定して行う必要はないと考える。物の状態だけで汚染されたものとして着目すれば良いと考える。

【田中委員】放射性同位元素だけではないのではないか。廃棄物の処理及び清掃に関する法律では「放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。」と記載されている。

【中矢放射線規制室長】 本件は放射線障害防止法に係るため、放射性同位元素によって汚染されたものが考えられる。なお、放射性同位元素そのものは対象として考えていない。

【小佐古座長】行政庁としてクリアランスレベルを試算して確認したいということが前提になると考えられる。その後、国際的な整合性等について検討する必要があると考える。

<資料第25-4号、資料第25-5号、資料第25-6号関係>
(制度設計について、判断方法の検討について、今後の検討の進め方について)

【大森委員】非常に言葉の解釈が難しいため、定義をきちんと説明することが重要と考える。クリアランスを短半減期の放射性同位元素、長半減期の放射性同位元素に分けて行うことは、放射性廃棄物を減らす点からでも良いと考える。

【近藤委員】放射線障害防止法に係るRI汚染物は、利用数量も小さく、多種多様で、形態についても原子炉等規制法に係る原子炉施設の解体される廃棄物と大幅に異なる。クリアランスレベルは、10μSv/年から考えられる放射能濃度であるが、物量が小さければ、レベルは大きな値となるため、シナリオを検討して、原子炉等規制法との整合性を説明できるのかが問題である。

【東委員】放射性廃棄物をクリアランスして一般廃棄物として取扱い、将来の放射性廃棄物を減らすことは大事なことであると考える。クリアランスレベルの測定を医療機関等で行うのは、関係者が大変であると考えられ、委託、もしくはある機関に測定を依頼できるような方法も制度に入れて検討された方がこの制度の運用が広まるのではないかと考える。

【小佐古座長】実際のクリアランスの判断方法は、場合によっていくつかの手順が必要かもしれないと考える。

【古川委員】陽電子断層撮影に伴い発生する半減期の極めて短いRI汚染物を、RI汚染物でないとする制度とクリアランス制度の併用については、若干矛盾が出ることが考えられる。現行の制度で陽電子断層撮影に伴い発生する半減期の極めて短いRI汚染物を、RI汚染物でないとする制度はうまく行われているので、これを取り込みながら論理上も整合性をとる必要がある。
 放射化物は、課長通知にある線量当量率との関係をどのようにしていくのか。

【中矢放射線規制室長】課長通知の線量当量率は暫定的に決められたものであり、作業者の安全管理を考えて決められている。しかし、今回のクリアランス制度では、一般に流通することを前提として考えられ、また、放射能濃度による基準で考えられるため、これらは一致しないと考えていただいた方が良い。

【小佐古座長】管理区域から持ち出す物に係る基準は、表面汚染密度の1/10以下で規制されており、これはクリアランスされた物と非密封の管理区域から持ち出せる物に絡むと考える。放射性同位元素の基準は、放射性同位元素ごとの規制免除で行われているが、表面汚染密度はα線を放出する放射性同位元素とα線を放出しない放射性同位元素で規制されており、これについて議論が必要になる。

【山本(英)委員】資料第25-4号の1ページの4つの基本方針について、検討を進めて良いと考える。ただし、1.原子炉等規制法に準じたクリアランス制度の導入については、原子炉等規制法のような国が2段階の関与を通して、測定し、認可のいろいろな手続をするなどの方法ではなくて、あくまでも2段階で行われるが、それは放射線障害防止法の独自の方法であることを確認したい。
 品質保証については、放射線障害防止法への導入が初めてになるため、放射線障害防止法の測定などの他の手法との品質保証の整合性についてどのようにしていくのか。
 2.陽電子断層撮影に伴い発生する半減期の極めて短いRI汚染物を、放射性同位元素によって汚染された物でないとする制度とクリアランス制度の併用について、これらはもともと規制にあったものを規制から外す方法という意味で同様である。原子炉等規制法では、クリアランス物と放射性廃棄物でない廃棄物の取扱いがあるように、放射線障害防止法においてもきちんと整理することが必要と考えている。
 3.放射化物に対する安全規制の導入、4.廃止措置計画の届出化については、良いと考えられる。

【小佐古座長】品質保証は、原子炉等規制法ではさまざまな制度設計を経て、品質保証の仕組みが作られているが、放射線障害防止法では必ずしも品質保証を前面に出した制度設計になっていないと考えられ、制度設計上の表現などについては、今後検討をいただければと考えている。
 資料第25-4号の3ページの放射化物の判断基準では、非放射性物質と放射性物質である境目をどのように議論していくのか。例えば、コンクリートで放射性物質でないことは、放射能を含まないという意味ではない。放射能は、少なからず自然界に存在し、人間であっても含まれており、それを厳格に適用されると人間も放射性物質で汚染されたものになる。そのため、放射性物質を含むものでないという言い方を、どのように表現できるのかを検討する必要があり、また、放射性物質の量が微量になればなるほど測定するのに大変時間がかかる。
 廃止措置計画の届出化について、原子炉等規制法では、従前、解体について解体届による届出のみの規制であったが、認可に変更された。放射線障害防止法で密封の放射性同位元素を使用する管理区域であれば届出による廃止は良いと考えられるが、非密封の放射性同位元素をかなり使用する管理区域で廃止するときに届出だけというのは現在の我が国の考え方として問題がないかを議論していく必要があると考える。
 また、加速器施設については、施設が使用の時に加速器のマグネットをどこかで再利用したいということも出る可能性があり、必ずしも解体だけではないということを含めて包括的な議論をしていただきたい。

以上

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科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室

(科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室)