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「脳科学と教育」研究に関する検討会

2002年6月24日 議事録
「脳科学と教育」研究に関する検討会(第4回)議事概要



  
「脳科学と教育」研究に関する検討会(第4回)議事概要

  
1.日  時   平成14年6月24日(月)10:00〜12:00

2.場  所   文部科学省 分館201・202会議室

3.出席者  
(委  員)   伊藤座長、金澤委員、小泉委員、小西委員、多賀委員、野村委員、本田委員、山田委員
(事務局)   山元科学技術・学術政策局長、布村教育課程課長、土屋基盤政策課長、田中ライフサイエンス課長、今里教育課程企画室長   他


4. 議  題
(1)「脳科学と教育」に関する研究計画について
(2)その他


5. 配布資料
資料1   「脳科学と教育」研究に関する検討会(第3回)議事概要(案)
資料2   「脳科学と教育」話題提供(本田委員配布資料)
資料3   「突発性攻撃的行動及び衝動」を示す子どもの発達過程に関する研究(山田委員配布資料)
資料4−1 海外出張報告書(小泉員配布資料)
資料4−2 Developing the Brain : An Approach toward Learning and Educational Science by Functional Imaging  (小泉員配布資料)
資料4−3 8th International Conference on Functional Mapping of the Human Brain  (小泉員配布資料)
資料4−4 Brain and Learning ; A Revolution in Education for the 21st  Century?  (小泉員配布資料)
資料5 「脳科学と教育」研究に関する意義、当面の調査研究課題、今後の検討の進め方等について(案)


6. 議事要旨
(1) 伊藤座長より開会の挨拶があった。
(2) 事務局より配布資料の確認があった。
(3) 本田委員より資料に基づき説明があった。
(4) 山田委員より資料に基づき説明があり、その際以下のような意見、質疑応答があった。

 
「キレた」子どもの生育歴に関する要因の分類がなされているが、家庭等の問題を抱えている子どもの全てが「キレた」子どもとなっているわけではなく、これらの比較についてはどう考えているのか。
コントロール群を設けることが必要であるが、今回の調査ではできなかった。

問題の所在を明らかにするため、例えば零歳児から育児の過程がどうであったのか解明することが必要。
そのような検討を行うためには追跡的な調査が必要であるが、今回の調査ではそこまで実施することは不可能だった。

(5) 小泉委員より資料に基づき本年5月開催されたOECDフォーラムに関するに説明があった。

(6) 事務局より、「「脳科学と教育」研究に関する意義、当面の調査研究課題、今後の検討の進め方等について(案)」に基づき説明があり、その際以下のような意見、質疑応答があった。

            ○ 資料中「1−1」に「健やかな発達・成長を目指す」という記述があるが、「健やかな発達・成長・維持を目指す」とした方がよい。

資料中「2−1」の「行動発達学等の脳に関わる分野の科学とともに、教育学と統合・融合することにより」という部分については、「脳科学と教育」研究が胎児、乳幼児に力点を置いており、教育学と一括して記述すると対象がぼやけてしまうため、保育学等を追加で記述した方が焦点が鮮明になるのではないか。

資料中「2−1」で「認知学」とされているが、認知科学とするのが普通ではないか。また「脳に関わる分野」は、「脳に関連する分野」の方がいいのではないか。
「認知学」は、「認知科学」に修正する。

本田先生から指摘のあった「脳神話」等の部分については、「意義」の部分に更に反映させたい。
脳については、科学的根拠なしに様々なことが言われてきたことがあり、それが「脳神話」とかニューロミソロジーと言われている。現在では、脳の細部については解明が進んできたが、心に関わる問題については未解明の部分が多く、それを克服しようという意味で「脳神話」という語を使う。さらに最近では、社会が大きく変化してきたのに我々の脳は石器時代の脳と同じであり、いかに社会に脳を適応させているのかという見方が非常に大事であると言われている。

資料中「意義」は、非常に大事な部分だが、2−1が最初に出てくるのは奇妙である。全体の中での位置づけという意味では、2−2を最初にする方がよい。

ブッシュ夫人がOECDフォーラムで述べたSecurity、 Equity、 Education、Growthの4つは、今回のOECDフォーラムのテーマ。ブッシュ政権からの指摘は、この4つは並列ではなくEducationがその要であるというメッセージ。Educationが今問題となっているSecurityのベースにもなるし、世界の平和を維持するために米国としてはこのような形で教育を継続するという内容も盛り込まれている。

科学技術学術政策を立てる際に、ブレークスルーを生むための創造性に係る教育や、創造性を如何にもたらすかということで大きな関心事項であるが、それと脳研究の視野に入ると考えてもよいのか。
創造性については、テーマとしては非常に重要。この10年間で心理学においても本格的に取り上げられており、創造性の研究についても、これから脳科学の一つのターゲットに入ってくると思う。

脳科学においては、前頭葉機能と左右の脳の働きの違いというのは人生観に影響を及ぼした大きな成果だった。今後期待される大きな成果としては、創造性の根源についての脳の仕組みが課題。また、愛と憎しみがどこから来るのか、どうして人間は戦争を行うのか等についても、脳と心の健やかな成長・発達ということに意味を含めている。

資料中「2−1」の終わりに教育学云々とあるが、教育学と固定した概念で捉えられる言葉を使わず、例えば人の教育にかかわる広範な研究等とした方が多くの意味が包含される。

「脳神話」については、資料中「2−2」よりも「2−3」の留意事項に記載した方がいいのではないか。

資料中「4−2−2」の環境については、何を指すのかが不明確。例えば「キレる」の原因は、社会の変化や、環境の変化ではないかと思うが、そういう根拠を集める、つまり情報を収集するとの意味も含まれているのか。

本検討会の検討と並行して脳の発達・成長等と環境変化に関する具体的な事柄について調査や情報収集を開始し、適宜その成果を検討会に報告し、さらに検討を進め、来年の3月あたりに全体の整理をしたいと考えている。

資料中で「ITやコンピューターのような新たな環境因子」となっているが、自然体験とか社会体験、生活体験が軽薄になったことについても、新たな環境因子ではないか。
資料中「4−2−1」、「4−2−2」、「4−2−5」は更に検討が必要な事項だが、この3つの方向で検討するということでよろしいか。特に研究方法論については、社会的な条件により特に日本でこのような研究が困難であるので、そのような中で有効な手法を発展させることができるかというのが大きなポイントになるため是非検討したい。3方向の検討をしながら、資料中「5」の研究を実際にどう進めるのかさらに検討する必要がある。また、今後更に詳細な検討が必要であるので、「4−2−1」、「4−2−2」、「4−2−5」については、この検討会の委員の何名かの方々でワーキンググループを作り検討したい。


      (7) 研究会全体を通じた議論として以下のような意見、質疑応答があった。

  「まとめ」に関し、「従来の脳科学や教育学とも異なる新たな研究領域であり」とあるが、これが非常に大切なこと。つまり、脳科学と教育というと、脳科学の知見から教育にどのようなヒントを与えるかと考えがちであり、そのため、警戒感も出てきてしまう。既成の教育学と脳科学がドッキングするだけでなく、新たな研究領域が創設されるということがより鮮明になった方がこの研究の趣旨がはっきりし、理解されやすいのではないか。


以  上

(科学技術・学術政策局基盤政策課)

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