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「脳科学と教育」研究に関する検討会

2002/03/22
「脳科学と教育」研究に関する検討会(第1回)議事概要


「脳科学と教育」研究に関する検討会(第1回)議事概要


1. 日   時 平成14年3月22日(金)15:30〜18:30
 
2. 場   所 文部科学省別館  大会議室
 
3. 出席者
  (委   員) 伊藤座長、金澤委員、小泉委員、小西委員、佐伯委員、多賀委員、野村委員、長谷川委員、廣川委員、星委員、無藤委員
  (事務局) 山元科学技術・学術政策局長、遠藤研究振興局長、布村教育課程課長、土屋基盤政策課長、田中ライフサイエンス課長、今里教育課程企画室長    他
 
4. 議   題
(1) 「脳科学と教育」に関する研究計画について
(2) その他

5. 配布資料
資料1 「脳科学と教育」研究に関する検討会の開催について
資料2 OECDにおける「学習科学と脳研究」プロジェクトの概要
資料3 「脳科学と教育」研究に関する検討会の運営について
資料4−1 脳を育む 脳科学から教育へのインパクト
資料4−2 教育関係審議会調査研究会報告書 ≪教育再生研究会≫
−臨教審会長15年の回顧と検討−
資料5 脳科学研究計画について
資料6 脳機能の計測の現状及び社会技術研究「脳科学と教育」
資料7 総合討議用資料

6. 議事要旨
  (1) 事務局より研究会委員及び出席者の紹介があった。
  (2) 山元科学技術・学術政策局長の挨拶があった。
  (3) 事務局より配布資料の確認があった。
  (4) 事務局より検討会の趣旨、検討事項、検討のスケジュール及び運営並びにOECDにおける「学習科学と脳研究」プロジェクトの概要について説明があった。
  (5) 事務局より脳科学研究計画について説明があった。
  (6) 伊藤座長よりOECDにおける「学習科学と脳研究」プロジェクトの概要について追加説明の後、脳科学から教育へのインパクトについて説明があった。
  (7) 小泉委員より社会技術研究「脳科学と教育」の経緯と現況について説明があった。

    その際以下のような意見、質疑応答があった。

  手話と読唇術とでは、脳の働いている場所が異なるのではないかという話がある。そのような仕組みがわかれば、赤ちゃんの頃から対応が可能となる可能性がある。

  脳を理解するためには、環境や行動など外界とのインターラクションをきちんと把握することが必要。

  社会技術研究の公募に際しては、教育学の側から脳を視野に入れた提案もあったのか。
  言語学の立場から脳科学を視野に入れた提案があった。

  (8) 事務局より総合討論用資料について説明があり、その後、以下のような意見、質疑応答があった。

  脳科学者と教育学者の対話の場を設けることは重要である。

  教育学の側には、脳科学の成果が極端に解釈されて早期教育に適用されることに警戒心がある。誤解や過度の一般化に対する警戒があり、保守的にならざるを得ない。脳科学の成果を上から下ろしていくという形で教育に適用していくのではなく、双方が対等の立場で進めていくことが重要。

  脳科学の側から教育界に対し一方的に押しつけるような形ではなく、あくまでも協力という形で進めていくことが必要。

  教育の分野において脳の働きを実際に測定したいと考えても、医学部と協力して測定できるようなルートがなかった。対話だけでなく共同プロジェクトチームのような形になっていけばよい。

  英語教育については、RとLを発音したり聞き分けたりするよりも話す中身が重要ではないか。

  現場の先生方には、20年前から同じような授業をする方もいる。脳科学は急速に進展するであろうが、現場の変化は急速には進まないのではないか。

  この検討は、ヒトを検討の対象の中心に考えるということでよいのか。「脳を育む」というライフサイエンスの研究との関係はどうなっているのか。
  社会的な大きな関心事項の一つが教育。新しい視点から取り組むことによって新しい知識体系や新たな科学の構築が可能となる。

  教育にはよき日本人を作るという文化の問題も関係してくる。

  脳の発達には個体差が大きいことや個体の多様性をどう考えるかということも検討することが必要。

  「脳を育む」領域については、霊長類に重点があるので、微小脳については、「脳を知る」という領域に位置付けることが適当ではないか。

  鳥を対象とした実験などについては、「脳科学と教育」研究の対象と考えてもいいのではないか。

  「脳科学と教育」を対象とした研究の重要性についてアピールすることが必要。脳科学の成果を科学研究としてヒトで確かめようとするならば、倫理的な検討や社会のコンセンサスが必要。

  ヒトを対象とした脳研究は、国際的に日本は遅れている。脳科学についての社会的な理解を増進することが必要。

  例えばフランスの社会は、生まれたての新生児に関する脳研究に対して非常に協力的であるが、一方で倫理委員会は非常に厳しい。

  検討会の目的には、脳科学の成果を教育政策に取り入れることまで含んでいるのか

  教育問題の解決のために新たな視点に立った助言ができないかということが検討会の目的。
  本検討会の役割は、5年くらいをかけて共同研究の場を設定することだと認識している。検討会での検討がすぐに教育政策に反映されるものではない。考える力を身につける教材のヒントを生み出せるような共同研究の芽がこの場ででてくればよい。これが更に数多くの成果を積み重ねて教育政策になっていくということだと思う。

  社会技術研究で行っている「脳科学と教育」においては、人間らしさというのは本来はどういうものであるのか、また相手の立場で考えるとはどういうことか等について脳を研究することによって見えないかということを考えている。

  現場での子ども達の問題をこのような場で脳科学の先生に紹介することが有意義。現場での子ども達の問題を知ることが重要である。

  脳科学と教育学の間に行動学が存在するのではないか。行動学の研究者を増やしていくことが必要。特に赤ちゃんを見ている人が少ない。

  人間の個体差については、社会との関わりの中で生まれてくるものもあるのではないかと思うが、脳科学ではどのように考えられているのか。

  遺伝的な差は、それほど多くはないのではないか。現在の脳科学研究の成果では、完全な説明はできない。

  社会性の問題など人間特有の臨界期はまだよくわかっていない大事なテーマ。

  少年教育では、臨界期の問題が大きなテーマとなり得る。障害児教育において、本人ができないのであれば、他の機能を使って代替するということを考えていくことも必要。

  性差のことを取り上げてもらいたい。思春期と脳の発達の関係については、これまで注意が払われておらず、このような観点からの検討も必要。

  感情制御についての小学校低学年と高学年、小学校と中学校の違いなどについて取り上げてもらいたい。

  脳の機能が大きく失われても、高校、大学と進んだ例がある。脳の機能はどの程度まで代替可能なのか。
  脳機能の計測をした経験によると、小さい子どもの脳は、代替が可能な例がいくつか見られている。高次脳機能のリハビリも方法によってはかなり可能かもしれない。

  (9) 事務局より今後のスケジュール等について説明があった。
以   上




(科学技術・学術政策局基盤政策課)

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