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5. 司法救済について

○司法救済ワーキングチーム検討報告の概要
いわゆる「間接侵害」規定の創設の必要性について
問題の所在】
 第112条1項は,「著作者,著作権者,出版権者,実演家又は著作隣接権者は,その著作者人格権,著作権,出版権,実演家人格権又は著作隣接権を『侵害する者又は侵害するおそれがある者』に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる」と規定し,差止請求を認めている。
また,第113条は,同条各項に掲げられた一定の行為を,「当該著作者人格権,著作権,出版権,実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす」と規定しているため,当該行為を行った者に対しても第112条1項に基づく差止請求が肯定されることになる。
 もっとも,第112条1項における「侵害する者」を定義する規定はない。そのため,どのような者が「侵害する者」に該当するかは必ずしも明らかであるとは言い難く,第113条各項に規定がある一方で,物理的な利用行為の主体以外の者に対して差止請求を肯定できるかどうかは,現行著作権法上,必ずしも明確でない。
 そのため,物理的な利用行為の主体以外の者に対しても差止請求を肯定すべきかどうか,肯定するとすればその相手方となる主体はどのような者とすべきか,そして,そのことを明示する立法的対応が必要かどうか,立法的対応が必要であるとすればどのような立法的対応を行うべきか,といった点が問題となる。

検討結果】
 主要な裁判例につき分析検討を加える裁判例からのアプローチ,外国法との比較検討を行う外国法からのアプローチ,間接侵害規定を有している特許法につき分析を加える特許法からのアプローチにより検討を行ってきたが,差止請求権と損害賠償請求権との関係や刑事法との関係といった,一般法上の論点も本格的に視野に入れる必要のある複雑困難な論点であり,検討期間が非常に短いものであったため,本格的な検討は始まったばかりという状況である。
 これまでの検討では,特許法第101条第1号・第3号に対応するような間接侵害の規定を著作権法にも何らかの形で盛り込むという基本的方向性については特に異論はなかったが,それを超えるような規定の導入の当否の点については,比較法的検討を含めた総合的研究を踏まえた上で,更に検討を継続し,平成19(2007)年を目途に結論を得るべきとされた。

 司法救済に関する検討課題については,以上のように司法救済ワーキングチームにおける検討の結果について,法制問題小委員会へ報告が行われ,本小委員会の委員から次のような意見が出された。

○本小委員会での意見の概要
 第112条において,誰に対してどういう理屈で差止請求権が認められるのかということについては,最高裁の判例もあるが,理論的な整合性をもって法律構成がしにくい状況にあるので,十分かつ迅速に検討していただきたいとの意見があった。
 また,物理的利用行為の主体以外の者について,権利侵害を理由に差止請求を行い得る範囲の拡大については,侵害と非侵害の双方から,差止請求を行い得る条件等について慎重な検討を行うべきという意見や,また,差止請求が認められる際に,損害賠償については責任を制限する必要性が認められる場合の有無についても検討しておくべきではないか,という意見もあった。

 また,ネット上で著作権侵害を行う者にサービスを提供する者について,著作権侵害の教唆,幇助ではなく,「侵害している者」と考えるべきという意見があった。


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