ここからサイトの主なメニューです

国宝・重要文化財(美術工芸品)の指定について

2004年3月19日
文化審議会


報道発表資料


国宝・重要文化財新指定
(美術工芸品関係)


文化審議会答申

平成16年3月19日


文   化   庁




 文化審議会(会長 高階秀爾)は,3月19日(金)に開催される同審議会文化財分科会の審議・議決を経て,新たに50件の美術工芸品を国宝・重要文化財に指定するよう文部科学大臣に答申する予定である。
  また,今回答申される物件の詳細については別紙のとおり。
  なお,この結果,近日中に行われる官報告示を経て,国宝・重要文化財(美術工芸品)は10,166件(国宝を含む。)となる予定である。

○ 今回の答申における主なもの

○重要文化財を国宝に指定
紙本墨画淡彩慧可断臂図(しほんぼくがたんさいえかだんぴず) 雪舟筆(せっしゅうひつ) 七十七歳(ななじゅうななさい)の款記(かんき)がある 一幅
 款記から、雪舟が明応五年(1496)に77歳で制作したことがわかる、禅宗祖師図の大作である。簡潔明快な構成でありながら、厳しい顔貌表現と達磨の体躯の大胆な形態、さらには覆い被さるような岩壁の量塊感が異様なまでの緊迫感を生んでおり、日本絵画史上最も迫力ある人物画のひとつである。我が国の絵画史上最大の巨匠で、後世に絶大な影響をおよぼした雪舟の人物画の代表作であり、国宝にふさわしい傑作である。(室町時代)

絹本著色五大尊像(けんぽんちゃくしょくごだいそんぞう)   五幅
 密教の五壇法(ごだんほう)の本尊であり、天台系智証大師請来様(てんだいけいちしょうだいししょうらいよう)の図像による五大尊像として最古、かつ中世以前に遡る唯一の遺品。各幅は技法的に異質であるが、優美な色彩と形態を持つ点では共通し、不動明王幅がやや時代が降るものの、寛治二年の供養銘を持つ降三世(ごうざんぜ)明王幅以下四幅は11世紀末の作と見られる。美術的にも優れた平安時代に遡る大作であるというにとどまらず、密教図像史上にも極めて重要な遺例である。
(平安時代 1088年・1090年)

金色堂堂内諸像及天蓋(こんじきどうどうないしょぞうおよびてんがい)
 天治元年(1124)藤原清衡(ふじわらきよひら)が中尊寺内に建てた金色堂には、清衡自身の遺骸を納める須弥壇(しゅみだん)上に十一くの仏像が安置され、ついで基衡(もとひら)、秀衡(ひでひら)の各遺骸を納めた二基の須弥壇も増設され同じ構成の仏像が置かれた。流出した一部の像を除き大部分の像は当初のまま残っており、かけがえのない貴重な文化遺産となっている。近年の調査により、諸像の技法構造が一層よく把握され本来の壇に関する復元的研究も進んだ状況を踏まえて、工芸国宝だった天蓋(てんがい)を分割所属替えした上、国宝へ格上する。
(平安時代)

奈良県藤ノ木古墳出土品(ならけんふじのきこふんしゅつどひん)
 古墳時代後期の円墳から出土した副葬品の一括。横穴式石室に安置された石棺の内外から、夥しい量の馬具類、玉類、刀剣類が出土した。特に動物意匠やガラス象嵌の装飾が施された金銅装鞍金具(こんどうそうくらかなぐ)や杏葉(ぎょうよう)等の馬具類、沓(くつ)・冠等の金銅製品、金空玉(きんうつろたま)等の玉類は、他の古墳時代出土品の追随を許さない豊富な内容で、遺存状態も良い。当時の古墳副葬品の実態を考える上で欠かすことのできない資料である。
(古墳時代)
 

○ 国宝・重要文化財(美術工芸品)件数一覧

事 項

種 別
新 指 定 件 数
合     計
 
国   宝 重要文化財
絵   画    2    6 1,940(157)
彫   刻    1    8 2,601(125)
工 芸 品      7 2,393(252)
書跡・典籍       6 1,847(223)
古 文 書        5 708( 59)
考古資料    1    6 545( 40)
歴史資料      8 132(  1)
合   計    4   46  10,166(857)
(注)合計欄括弧内の数字は国宝の件数で、内数である。

目    次

1.国宝(美術工芸品)
絵画の部
(重要文化財から国宝へ 2件)
1 紙本墨画淡彩慧可断臂図 雪舟筆 七十七歳の款記がある【宗教法人斉年寺】
2 絹本著色五大尊像【宗教法人来振寺】

彫刻の部
(重要文化財から国宝へ 1件)
1 金色堂堂内諸像及天蓋【宗教法人金色院】

考古資料の部
(重要文化財から国宝へ 1件)
1 奈良県藤ノ木古墳出土品【国(文化庁保管)】

2.重要文化財(美術工芸品)
絵画の部
(重要美術品から重要文化財へ 2件)
1 紙本白描不動明王図像【独立行政法人国立博物館(奈良国立博物館保管)】
2 紙本著色歌舞伎草紙【財団法人徳川黎明会】
(未指定から重要文化財へ 4件)
3 紙本著色四季花鳥図 六曲屏風【独立行政法人国立博物館(京都国立博物館保管)】
4 絹本著色日吉山王宮曼荼羅図【独立行政法人国立博物館(奈良国立博物館保管)】
5 絹本著色法華曼荼羅図【宗教法人法隆寺】
6 絹本著色星曼荼羅図【宗教法人法隆寺】

彫刻の部
(重要美術品から重要文化財へ 1件)
1 木造阿弥陀如来立像【宗教法人世界救世教(財団法人エムーオーエー美術文化財団・MOA美術館保管)】
(未指定から重要文化財へ 6件)
2 塑造金剛蔵王立像心木【宗教法人石山寺】
3 木造大威徳明王像(五大堂安置)【宗教法人醍醐寺】
4 木造毘沙門天立像【宗教法人弘源寺】
5 木造阿弥陀如来立像【宗教法人極楽寺】
6
木造獅子
          【宗教法人高野神社】
木造獅子
7 木造倶利迦羅竜剣【宗教法人小武寺】
(重要文化財を分割して重要文化財へ 1件)
8 木造傅大士及二童子像(北野経王堂輪蔵旧安置)【宗教法人大報恩寺】

工芸品の部
(重要美術品から重要文化財へ 1件)
1 丸壺茶入(相坂) 瀬戸【財団法人根津美術館】
(未指定から重要文化財へ 6件)
2 黄釉銹絵梅樹文大瓶 宮川香山作【独立行政法人国立博物館(東京国立博物館保管)】
3
紫地葵紋付葵葉文様纃が花染羽織
                 【財団法人徳川黎明会(徳川美術館保管)】
浅葱地葵紋散文様纃が花染小袖
4 朱漆輪花天目盆【財団法人常盤山文庫(根津美術館保管)】
5
黄地蝶梅文様繍狩
                  【宗教法人白山神社】
黄地牡丹文様繍狩衣
6 金銅密教法具【宗教法人西大寺】
7 彩絵鼓胴【宗教法人手向山八幡宮】


書跡・典籍の部
(未指定から重要文化財へ 6件)
1 晋書列伝巻第五十一零巻【国(文化庁保管)】
2 継色紙(よしのかは)【山田恭平】
3 色紙阿弥陀経【宗教法人満性寺】
4 物語類并注釈書【財団法人冷泉家時雨亭文庫】
5 前十五番歌合(彩牋)【学校法人大阪青山学園】
6 四十番歌合 建保五年十月十九日【学校法人大阪青山学園】

古文書の部
(未指定から重要文化財へ 5件)
1 師守記 自筆本【国(国立国会図書館保管)】
2 三箇院家抄【独立行政法人国立公文書館】
3 湯浅景基寄進状 寛喜三年四月 日【学校法人真宗大谷学園】
4 車図【財団法人陽明文庫】
5 立花家文書【福岡県(柳川古文書館保管)・株式会社御花(柳川古文書館保管)】

考古資料の部
(未指定から重要文化財へ 6件)
1 北海道有珠モシリ遺跡出土品【国(文化庁保管)】
2 奈良県黒塚古墳出土品【国(文化庁保管)】
3 北海道有珠モシリ遺跡出土品【北海道伊達市】
4 京都府奈具岡遺跡出土品【京都府(京都府埋蔵文化財調査研究センター保管)】
5 広島県草戸千軒町遺跡出土品【広島県(広島県立歴史博物館保管)】
6 福岡県隈・西小田遺跡群出土品【福岡県筑紫野市(筑紫野市歴史博物館保管)】

歴史資料の部
(未指定から重要文化財へ 8件)
1 大久保利通関係資料【国(国立歴史民俗博物館保管)】
2 身幹儀(星野木骨)【国(広島大学保管)】
3 蘇言機(錫箔蓄音機) 英国製【独立行政法人国立科学博物館】
4 今井八九郎北方測量関係資料【独立行政法人国立博物館(東京国立博物館保管)】
5 箱館奉行所文書【北海道(北海道立文書館保管)】
6 鷹見泉石関係資料【茨城県古河市(古河歴史博物館保管)】
7 壬申検査関係ステレオ写真ガラス原板【東京都(江戸東京博物館保管)】
8 大久保利通関係資料【鹿児島県(鹿児島県歴史資料センター黎明館保管)】




1.国宝(美術工芸品)


絵画の部

(重要文化財から国宝へ)

1
紙本墨画淡彩慧可断臂図(しほんぼくがたんさいえかだんぴず) 雪舟筆(せっしゅうひつ)
七十七歳(ななじゅうななさい)の款記(かんき)がある
一幅
 
大きさ:縦183.8cm 横112.8cm
所有者:宗教法人斉年寺 愛知県常滑市大野町9-139

  款記から、雪舟が明応五年(1496)に77歳で制作したことがわかる、禅宗祖師図の大作である。簡潔明快な構成でありながら、厳しい顔貌表現と達磨の体躯の大胆な形態、さらには覆い被さるような岩壁の量塊感が異様なまでの緊迫感を生んでおり、日本絵画史上最も迫力ある人物画のひとつである。我が国の絵画史上最大の巨匠で、後世に絶大な影響をおよぼした雪舟の人物画の代表作であり、国宝にふさわしい傑作である。
(室町時代)

2 絹本著色五大尊像(けんぽんちゃくしょくごだいそんぞう)   五幅

大きさ:各 縦138.0〜140.8cm 横88.0cm
所有者:宗教法人来振寺 岐阜県揖斐郡大野町稲富397-1

  密教の五壇法(ごだんほう)の本尊であり、天台系智証大師請来様(てんだいけいちしょうだいししょうらいよう)の図像による五大尊像として最古、かつ中世以前に遡る唯一の遺品。各幅は技法的に異質であるが、優美な色彩と形態を持つ点では共通し、不動明王幅がやや時代が降るものの、寛治二年の供養銘を持つ降三世(ごうざんぜ)明王幅以下四幅は11世紀末の作と見られる。美術的にも優れた平安時代に遡る大作であるというにとどまらず、密教図像史上にも極めて重要な遺例である。
(平安時代 1088年・1090年)

彫刻の部

(重要文化財から国宝へ)

1 金色堂堂内諸像及天蓋(こんじきどうどうないしょぞうおよびてんがい)

大きさ:像高62.3〜74.2cm
所有者:宗教法人金色院 岩手県西磐井郡平泉町平泉字衣関

  天治元年(1124)藤原清衡(ふじわらきよひら)が中尊寺内に建てた金色堂には、清衡自身の遺骸を納める須弥壇(しゅみだん)上に十一くの仏像が安置され、ついで基衡(もとひら)、秀衡(ひでひら)の各遺骸を納めた二基の須弥壇も増設され同じ構成の仏像が置かれた。流出した一部の像を除き大部分の像は当初のまま残っており、かけがえのない貴重な文化遺産となっている。近年の調査により、諸像の技法構造が一層よく把握され本来の壇に関する復元的研究も進んだ状況を踏まえて、工芸国宝だった天蓋(てんがい)を分割所属替えした上、国宝へ格上する。
(平安時代)

考古資料の部

(重要文化財から国宝へ)

1 奈良県藤ノ木古墳出土品(ならけんふじのきこふんしゅつどひん)

所有者:国(文化庁保管)

  古墳時代後期の円墳から出土した副葬品の一括。横穴式石室に安置された石棺の内外から、夥しい量の馬具類、玉類、刀剣類が出土した。特に動物意匠やガラス象嵌の装飾が施された金銅装鞍金具(こんどうそうくらかなぐ)や杏葉(ぎょうよう)等の馬具類、沓(くつ)・冠等の金銅製品、金空玉(きんうつろたま)等の玉類は、他の古墳時代出土品の追随を許さない豊富な内容で、遺存状態も良い。当時の古墳副葬品の実態を考える上で欠かすことのできない資料である。
(古墳時代)



2.重要文化財(美術工芸品)

絵画の部

12 重要美術品から重要文化財へ)

1 紙本白描不動明王図像(しほんはくびょうふどうみょうおうずぞう)   一巻

大きさ:縦30.5cm 長1227.5センチ
所有者:独立行政法人国立博物館(奈良国立博物館保管)

  図像の異なる十八種の不動明王、不動明王の眷属である二種の八大童子などの像計三十一図を納め、それぞれに注記を記した図像集。鎌倉時代の寛元三年(1245)、鎌倉で天台僧、兼胤が書写した旨の奥書がある。絵としても優れた筆致で描かれているのみならず、真言系の像、通例のものとは異なる珍しい不動明王像なども数多く納められている点、日本密教史上にも貴重である。
(鎌倉時代・1245年)


2 紙本著色歌舞伎草紙(しほんちゃくしょくかぶきぞうし)   二巻

大きさ:各縦36.7cm 長 上巻 828.1cm 下巻 720.2cm
所有者:財団法人徳川黎明会(徳川美術館保管) 東京都豊島区目白3-8-11

  慶長期に出雲の阿国が京都で興行して人気を博した歌舞伎踊りが歌舞伎小屋で繰り広げられるさまを六段の絵に構成し、それぞれの踊りの歌詞を詞書としたもので、第一段に「釆女序」とあるところから、追随者釆女の舞台を描いたものとわかる。歌舞伎を描いた絵画のなかでも最も華麗な彩色と緻密な描写を有する巻子本作例であり、詞書の料紙装飾も絵同様美麗を極める。創生期歌舞伎の活況を伝える史料としても貴重である。
(桃山時代〜江戸時代)

36、未指定から重要文化財へ)

3 紙本著色四季花鳥図(しほんちゃくしょくしきかちょうず) 六曲屏風(ろっきょくびょうぶ)     一双

大きさ:各縦105.0cm  横345.2cm
所有者:独立行政法人国立博物館(京都国立博物館保管)

  水墨による池畔の景観に、四季のさまざまな花卉花木と、そこに遊ぶ小禽や蝶々が清々しい色彩感覚で描かれる。中国の草虫図の影響を留めながらも、花鳥がいずれも日本的な題材であることが本図を親愛感に満ちた作例としている。岩の皴、松樹の幹などにみられる勢いと動きにあふれた筆致、生命感あふれる禽鳥の表現などから、室町時代末期に活躍した芸愛の作品と推定され、遺品の少ない室町時代花鳥図の優品としても高く評価される。
(室町時代)


4 絹本著色日吉山王宮曼荼羅図(けんぽんちゃくしょくひえさんのうみやまんだらず)   一幅

大きさ:縦120.7cm 横67.5cm(画面)、縦177.0cm 横79.0cm(描表具含む)
所有者:独立行政法人国立博物館(奈良国立博物館保管)

  俯瞰構図の広い自然景の中に日吉山王二十一社の景観を描き、その上部には本地垂迹説に基づいて二十一社の本地仏、それに対応する各社の祭神の名や画像を整然と並べて表す。自然な景観描写によって表す日吉山王曼荼羅はこれ以前の時代では例がほとんどなく、繊細な筆致で描かれた風景画としても貴重な作品といえる。表具も絵と同時に描かれた描表具であり、保存もよい。
(南北朝時代)


5 絹本著色法華曼荼羅図(けんぽんちゃくしょくほっけまんだらず)   一幅

大きさ:縦71.7cm  横59.3cm
所有者:宗教法人法隆寺 奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺山内1-1

  法華曼荼羅は密教の法華経法本尊として描かれる。本図は小品ではあるが法華曼荼羅として我が国最古、かつ平安時代に遡る唯一の遺品である。内容は金剛智訳『法華曼荼羅威儀形色法経』に主として依拠しているが、釈迦・多宝二仏の図像等に鎌倉時代以降の遺品と異なる特色を示している。若干の損傷はあるが、平安仏画らしい穏和で優雅な線描と色調をよくとどめている。
(平安時代)


6 絹本著色星曼荼羅図(けんぽんちゃくしょくほしまんだらず)   一幅

大きさ:縦89.0cm  横82.4cm
所有者:宗教法人法隆寺 奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺山内1-1

  星曼荼羅は密教の北斗法本尊として描かれ、北斗曼荼羅とも称される。星曼荼羅の図像には大きく円形と方形の二系統あり、いずれも日本で成立したものと考えられているが、本図は十世紀末に台密の慶円によって案出されたといわれる円形の曼荼羅の遺例で、若干図像を異にする法隆寺に所蔵される他本(重要文化財)と並ぶ古作である。損傷が少なくないものの制作優秀であり、平安時代に遡る遺品として重要である。
(平安時代)



彫刻の部

1、重要美術品から重要文化財へ)

1 木造阿弥陀如来立像(もくぞうあみだにょらいりゅうぞう)   一く

大きさ:像高79.1cm
所有者:宗教法人世界救世教(財団法人エム・オー・エー 美術文化財団・MOA美術館保管)     静岡県熱海市桃山町26-1

  鎌倉時代に流行した来迎印(らいごういん)を結ぶ三尺阿弥陀立像の一例で、銅製覆輪(ふくりん)をもつ光背、雲に乗る台座も当初のものである。東大寺俊乗堂(しゅんじょうどう)阿弥陀如来像(快慶作、重文)に作風・形状ともよく似、鎌倉時代前半期、快慶周辺の作として上質な像である。台座裏の墨書銘により、東大寺四聖坊(ししょうぼう)に安置されていたことが分かる。
(鎌倉時代)


27、未指定から重要文化財へ)

2 塑造金剛蔵王立像心木(そぞうこんごうざおうりゅうぞうしんぎ)   一く

大きさ:像高159.8cm
所有者:宗教法人石山寺 滋賀県大津市石山寺1-1-1

  天平宝字五年(761)から翌年にかけて造石山院所(ぞういしやまいんしょ)で造立された石山寺本尊のうち、右脇侍である塑造金剛蔵王像の心木である。近年の修理で近世の塑土(そど)が除去され造立当初の心木が現れた。さらに面相部から当初の塑造断片が取り出され、心木の刳(く)り内から舎利(しゃり)及び経典の納入された五輪塔形(ごりんとうぎょう)が発見されている。奈良時代、官営造仏所(かんえいぞうぶっしょ)の製作になる塑像心木の実物として極めて貴重な資料である。塑像断片、納入品及び光背を附(つけたり)とする。
(奈良時代)

3 木造大威徳明王像(もくぞうだいいとくみょうおうぞう)(五大堂安置(ごだいどうあんち))   一く

大きさ:像高126.2cm
所有者:宗教法人醍醐寺 京都府京都市伏見区醍醐伽藍町

  醍醐寺を創建した聖宝(しょうぼう)が発願し延喜(えんぎ)十三年(913)に完成を見た上醍醐五大堂五大明王像のうち、当初像と認められる大威徳明王像。東寺講堂大威徳明王像の図像を忠実に踏まえ、真言密教の正系であることを示す重要な作である。他の四像は、義演(ぎえん)による復興事業の中で新造されたものを含み歴史的な意義が多いので附(つけたり)とする。
(平安時代)


4 木造毘沙門天立像(もくぞうびしゃもんてんりゅうぞう)   一く

大きさ:像高99.7cm
所有者:宗教法人弘源寺 京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町65

  比叡山無動寺(むどうじ)旧蔵と伝える毘沙門天像である。重厚感あるつくりは平安時代前期の製作を推定させ、無動寺の創建された貞観(じょうがん)七年(865)をあまり下らない頃の製作として大きな齟齬はない。腰を大きく捻り衣を高く翻させる躍動感はこの頃として比類なく強靱な表現である。兜の脇から炎髪(えんぱつ)の出る天部形像(てんぶぎょうぞう)としてもごく初期に位置する。
(平安時代)


5 木造阿弥陀如来立像(もくぞうあみだにょらいりゅうぞう)   一く

大きさ:像高79.7cm
所有者:宗教法人極楽寺 京都府城陽市富野南垣内81

  鎌倉時代に多い三尺の大きさの阿弥陀如来立像。像内に結縁者名(けちえんしゃめい)を連記した文書と印仏(いんぶつ)が納入され、その内に嘉禄(かろく)三年(1227)の年紀と、快慶(かいけい)と行快(ぎょうかい)がかかわって造立したこと、及び円阿弥陀仏(えんあみだぶつ)等の快慶周辺の仏師名が記される。これにより、従来不明だった快慶没年の最下限が押さえられ、快慶の弟子たちがその追善(ついぜん)を意図して造立したことが推定できる。快慶没前後の仏師たちの活動を窺いうる重要な作である。
(鎌倉時代)


6
木造獅子(もくぞうしし) 一対
木造獅子
(もくぞうしし) 一対
 
大きさ:像高68.5、67.4cm
像高27.0、26.9cm
所有者:宗教法人高野神社 岡山県津山市二宮601

  二対とも無角なので、獅子(しし)・狛犬(こまいぬ)でなく両方とも獅子という珍しい一対の例である。それぞれの二像とも開口・閉口の相違を除くと、耳の向き、直毛となるたてがみ、ほぼまっすぐの体勢などがお互いに同一となるのは古式な表現である。その一(大型)は重量感あるつくりから平安時代も前期にさかのぼると考えられ現存最古の獅子一対の遺例である。その二(小型)は平安時代後期の作である。
(平安時代)


7 木造倶利迦羅竜剣(もくぞうくりからりゅうけん)   一基

大きさ:像高177.3cm
所有者:宗教法人小武寺 大分県速見郡山香町大字小武1592-1

  宝剣を抱き剣先を呑む勢いの竜をあらわし、彫刻としては稀有の主題が扱われている。不動明王の道場観として倶利迦羅竜が説かれるが、別に請雨法(しょううほう)の本尊とされることがあり、いずれかの本尊と推定される。剣身を巻いていないのが特徴的だが、竜の属性を的確に表現しており、平安時代後期の作と推定される。
(平安時代)

8、重要文化財を分割して重要文化財へ)

8
木造傅大士及二童子像(もくぞうふたいしおよびにどうじぞう) く
北野経王堂輪蔵旧安置(きたのきょうおうどうりんぞうきゅうあんち))


大きさ:像高70.9、72.3、73.0cm
所有者:宗教法人大報恩寺 京都府京都市上京区五辻通六軒町西入溝前町1034

  傅翕(ふきゅう)と普建(ふけん)・普成(ふじょう)二童子からなる三尊像を輪蔵(りんぞう)に祀る習慣は中世に始まった。わが国最古の遺例である本像は、山名氏清(やまなうじきよ)追善のために建てられた経王堂(きょうおうどう)の輪蔵に置かれた。近年修理の際、二童子像の像内に応永二十五年(1417)の年紀と院隆(いんりゅう)の名のある銘が見出され製作時期と仏師が判明する基準作となったので、書跡から分離して彫刻指定とする。
(室町時代)



工芸品の部

1、重要美術品から重要文化財へ)

1 丸壺茶入(まるつぼちゃいれ)(相坂(おうさか))瀬戸(せと)     一口

大きさ:高 6.4cm 口径 2.9cm 底径 3.1cm
所有者:財団法人根津美術館 東京都港区南青山6-5-36

  唐物茶入をもとにして瀬戸で焼造された和物茶入である。球形の胴部を有する小型の丸壺茶入で、外面には全体に鉄釉が掛けられ柿色に発色し、肩に掛けられた灰釉は一方に釉が流れて釉景色を作り出す。和物茶入を中興名物(ちゅうこうめいぶつ)として見出した小堀遠州が所持した茶入である。端正な形姿に鉄釉や灰釉も見事に発色し、和物茶入を代表する優品である。いわゆる中興名物。
(室町〜桃山時代)


27、未指定から重要文化財へ)

2 黄釉銹絵梅樹文大瓶(おうゆうさびえばいじゅもんたいへい) 宮川香山作(みやがわこうざんさく)   一口

大きさ:高 52.1cm 口径 14.5cm 高台径 10.7cm
所有者:独立行政法人国立博物館(東京国立博物館保管)

  明治時代に国内外で最も高い評価を受け、明治二十九年に帝室技芸員となった陶芸家・宮川香山(1842〜1916)の作品である。器形は胴部が球形をなし口頸部が喇叭状に開く中国陶磁玉壺春(ぎょっこしゅん)形瓶に倣った大型瓶で、近代に至り新たに開発された技法である透明釉の下に高火度の色絵で賦彩する釉下彩(ゆうかさい)により文様が描かれる。破綻無く均整がとれた器形の全面に梅樹が銹絵で見事に描かれ、地の黄釉も斑なく均一に発色する。本品は宮川香山が美術部で受賞した明治二十六年米国シカゴ・コロンブス世界博覧会に出品された作品で、唯一その存在が今日確認されるものである。明治時代にいち早くわが国で釉下彩磁器を完成させた陶芸家の一人である宮川香山を最も代表する作品であるとともに、明治時代の陶芸を代表する作品の一つである。
(明治時代=1893)


3
紫地葵紋付葵葉文様纃が花染羽織(むらさきじあおいもんつきあおいばもんようつじがはなぞめはおり) 一領
浅葱地葵紋散文様纃が花染小袖
(あさぎじあおいもんちらしもんようつじがはなぞめこそで) 一領
 
大きさ:(羽織) 丈 112.0cm 裄 58.0cm
     (小袖) 丈 136.6cm 裄 60.6cm
所有者:財団法人徳川黎明会(徳川美術館保管) 東京都豊島区目白3-8-11

  室町時代後期から江戸時代初期に盛行した、文様を縫い絞って染め、摺箔(すりはく)や描絵、色挿しなどにより図様を表した纃が花染による羽織と小袖である。当初の形態を残す現存遺例の多くが豊臣秀吉や徳川家康に関わる作品であるが、本品も尾張徳川家に伝えられたもので、徳川家康の遺品と考えられる。羽織は大きな葵葉文様を襟の裏表まで豊に散らし、小袖は墨描を加えた葵紋を均等に全面に配している。保存状態が極めて良好で製作当初の姿をそのまま伝える貴重な作品である。
(桃山時代)


4 朱漆輪花天目盆(しゅうるしりんかてんもくぼん)   一面

大きさ:高 11.4cm 面径 49.8cm 高台径 42.8cm
所有者:財団法人常盤山文庫 神奈川県鎌倉市笹目町4-3 (根津美術館保管)

  中世社寺を中心に盛んに製作・使用された、いわゆる根来塗りの一例で、唐物漆器の影響を受けた律動的な曲線で構成される輪花形盆の大型の優品である。底裏に記された銘により、享徳四年(1455)に制作され、もとは西大寺に伝来した一対のうち一面であったことが知られる。西大寺に伝来する盆とともに、これが天目茶碗を置く天目盆であったことがわかる唯一の遺例であり、茶道文化史上においても貴重な資料である。
(室町時代=1455)


5
黄地蝶梅文様繍狩衣(きじちょううめもんようぬいかりぎぬ)   一領
黄地牡丹文様繍狩衣
(きじぼたんもんようぬいかりぎぬ)   一領
 
大きさ:丈 78.0cm 裄 89.5cm、丈 79.0cm 裄 89.5cm
所有者:宗教法人白山神社 岐阜県郡上市白鳥町長滝杉山91

  背の全面と前身頃に文様を刺繍で表した狩衣である。刺繍は桃山時代に流行した糸を生地の表のみに渡す渡し繍の技法によっており、長く浮いた糸がふっくらと柔らかい雰囲気を作り出している。牡丹様や梅と大きな蝶などの文様は大胆に色糸を使い分けて見事に表現している。後身頃の裏地に書かれた墨書銘から、寄進者・製作者・製作年(元和六年)を知ることができる貴重な資料であるとともに、極めて遺例が少ない繍狩衣の保存状態良好な作品としても貴重である。
(江戸時代=1620)


6 金銅密教法具(こんどうみっきょうほうぐ)

大きさ:
(金剛盤)幅 28.8cm  高   6.0cm
(五鈷鈴)高 19.3cm  口径 6.9cm
(独鈷杵)長 17.9cm
(三鈷杵)長 17.3cm
(五鈷杵)長 17.9cm
所有者:宗教法人西大寺 奈良県奈良市西大寺芝町1-1-5

  密教法具は寺院での密教修法で用いられる仏具である。本件は銅鋳造鍍金、五点が一揃いとなった皆具(かいぐ)で、大きさや意匠、細部の造りなどの共通性から、一具として製作されたと判断される。重厚で端整な作風は、鎌倉時代後期の特色を良く示しているが、その精緻で破綻のない造形は同時代の金工品の中でも優れている。また五点一具として製作された皆具の古例はきわめて数少なく、稀少な皆具の一遺例としても貴重である。
(鎌倉時代)


7 彩絵鼓胴(さいえこどう)   一口

大きさ:長 44.5cm 口径 25.3cm
所有者:宗教法人手向山八幡宮 奈良県奈良市雑司町434

  舞楽・雅楽で用いられる鼓の胴部である。本件は欅(けやき)の一材から轆轤(ろくろ)成形し、表面には漆下地に群青・緑青・朱・白などで花弁を彩絵し、要所に金箔を押している。内部の墨書銘から、康平四年(1061)三月十四日、覚源により東大寺に施入されたことが判明し、鼓胴としての古様な形態もこれを裏付けている。年記を有する鼓胴としては現存最古であり、鼓胴の絶対的基準作として貴重である。なお本件には他に永暦二年(1161)に修理したとする墨書銘があり、現在の彩色はその画風からみて、永暦二年あるいはそれを大きく隔たらぬ時期のものと判断される。
(平安時代=1061)


書跡・典籍の部

16、未指定から重要文化財へ)

1 晋書列伝巻第五十一零巻(しんじょれつでんまきだいごじゅういちれいかん)   一巻

大きさ:縦28.3cm 全長284.7cm
所有者:国(文化庁保管)

  『晋書』は、唐の太宗(たいそう)の勅命により、房玄齢(ぼうげんれい)らが編纂したもので、晋朝の歴史を記した中国の正史で、百三十巻からなる。本巻は列伝巻第五十一に収載される朱伺(しゅし)伝の後半と毛寶(もうほう)伝の大半とが収められている。『晋書』成立からあまり時代の隔たらない八世紀に、わが国において端麗な筆致で書写されたものである。紙背には、窺基(きき)『因明入正理論疏(いんみょうにっしょうりろんそ)』の注釈書である平安時代前半期の書写になる『因明四種相違疏(いんみょうししゅそういそ)』が書かれている。
(奈良時代)


2 継色紙(つぎしきし)(よしのかは)   一幅

大きさ:縦13.2cm 横26.4cm
所有者:山田恭平 東京都三鷹市井の頭3-34-5

  「継色紙」は秀歌撰を書写した粘葉装(でっちょうそう)冊子本の断簡で、「寸松庵色紙(すんしょうあんしきし)」「升色紙(ますしきし)」とともに三色紙と呼ばれ、古筆切(こひつぎれ)の名品である。本幅には古体の草仮名にて『古今和歌集』巻第十一の「恋一」に所収される紀貫之(きのつらゆき)の「よしのかは」云々の歌が書写されている。料紙には藍と薄藍の色紙が用いられ、歌は二紙にわたって散らし書きしている。仮名の造形美をみせる名筆で、格調高い書風に平安貴族の美意識が反映している。
(平安時代)


3 色紙阿弥陀経(しきしあみだきょう)   一巻

大きさ:縦25.0cm 全長194.2cm
所有者:宗教法人満性寺 愛知県岡崎市管生町字元菅57

  本巻は、平安時代後期書写になる色紙阿弥陀経の遺巻である。料紙には茶、紫、白茶、藍、濃萌葱(こきもえぎ)地の色紙を用い、金銀の砂子(すなご)や切箔(きりはく)を散らし、また飛雲(とびくも)の装飾もみえる。美麗な九枚の色紙を濃淡の色違いに継ぎ合わせ、金泥界を施して典麗な筆致で書写している。奥書はないが、その料紙や書風などよりみて、十一世紀前半の書写と考えられる。類例稀な色紙阿弥陀経の遺品として極めて貴重なものである。
(平安時代)


4 物語類并注釈書(ものがたりるいならびにちゅうしゃくしょ)

所有者:財団法人冷泉家時雨亭文庫 京都府京都市上京区今出川通烏丸東入玄武町599

  冷泉家に伝来する物語類と注釈書とを一括したもので、物語類には鎌倉時代の最古写本『いはでしのぶ』、阿仏尼(あぶつに)の『いざよひの日記』、鴨長明(かものちょうめい)の『方丈記』などがある。伊勢物語并注釈書類には、天福二年の定家書写本奥書をもつ室町時代の書写本『伊勢物語』や一条兼良(いちじょうかねら)の自筆本『愚見抄(ぐけんしょう)』などの注釈書がある。源氏物語并注釈書類には、世尊寺伊行(せそんじこれゆき)の作で、『源氏物語』注釈の嚆矢とされる『源氏釈(げんじしゃく)』が含まれている。『源氏釈』は零本とされてきた宮内庁書陵部蔵『源氏物語釈』の完全な親本として注目すべきものである。
(鎌倉〜安土桃山時代)


5 前十五番歌合(さきのじゅうごばんうたあわせ)(彩牋(さいせん))   一巻

大きさ:縦26.3cm 全長396.1cm
所有者:学校法人大阪青山学園 大阪府箕面市新稲2-11-1

  「十五番歌合」は歌仙三十人の優れた和歌一首ずつを左右に結番した歌合形式の秀歌撰で、藤原公任(ふじわらのきんとう)の撰になる。「前十五番歌合」は寛弘四・五年頃の成立とされ、一番に『古今集』撰者の貫之と躬恒(みつね)を並べ、十五番に『万葉集』の人麻呂(ひとまろ)と赤人(あかひと)とを組み合わせる。本巻は光厳(こうごん)天皇の宸筆(しんぴつ)と伝えられ、料紙は梅折枝文様・花菱文様などの文様を雲母引(きらび)きした上に金銀の砂子などを霞状に散らした装飾料紙を用いる。典雅な料紙に、おおらかな筆致で認められた優美な書風からみて、宮廷の調度手本としてあつらえられたものと思われる。
(鎌倉時代)


6 四十番歌合(よんじゅうばんうたあわせ)建保五年十月十九日(けんぽごねんじゅうがつじゅうくにち)            一巻

大きさ:縦20.4cm 全長695.0cm
所有者:学校法人大阪青山学園 大阪府箕面市新稲2-11-1

  鎌倉時代の歌人としても知られる順徳(じゅんとく)天皇が主催者となって行われた「建保五年十月十九日歌合」の写本である。建保五年、藤原為家(ふじわらのためいえ)ら十六人が左右に分かれ、四十番まで一首ずつ詠み合い、順徳天皇が判者となっている。巻頭に「春雨 夏月 秋露 冬風 変恋(かわるこい)」と五つの歌題を記している。鎌倉時代中期の書写になる現存最古写本である。
(鎌倉時代)



古文書の部

15、未指定から重要文化財へ)

1 師守記自筆本(もろもりきじひつぼん)     六十三巻

所有者:国(国立国会図書館保管)

  『師守記』は中原師守の自筆日記、暦応二年から貞治七年までを存する。内容は少外記(しょうげき)、記録所寄人(よりうど)として北朝における政務朝儀(せいむちょうぎ)や公事などの政治的な記録が中心である。とくに、政治・社会の激動期を反映し、南北朝の合一をめぐる双方の駆け引きなどの記載は詳細である。公家の生活の他、祗園会(ぎおんえ)の山鉾巡行(やまぼこじゅんこう)などの記述もみえる。南北朝内乱期における公武の政治・軍事活動や社会の出来事に関する記載が豊富で、この時代の第一級の史料である。
(南北朝時代)


2 三箇院家抄(さんかいんげしょう)   四冊

所有者:独立行政法人国立公文書館

  『三箇院家抄』は、興福寺大乗院門跡(だいじょういんもんぜき)を構成する大乗院・竜華樹院(りゅうげじゅいん)・禅定院(ぜんじょういん)の三院家などの法務と所領の基本台帳である。応仁二年頃に成立し、その後書き継ぎが行われて現在の形となったもので大乗院第二十代門跡尋尊(じんそん)の筆になる。大乗院門跡の人的構成とその給与や大和国内外の門跡領庄園の変遷の様相などを極めて具体的に列挙している。室町時代における寺院社会史・経済史研究上に極めて貴重な史料である。
(室町時代)


3 湯浅景基寄進状 (ゆあさかげもときしんじょう) 寛喜三年四月  日(かんぎさんねんしがつ じつ)   一巻

大きさ:縦31.6cm 全長203.4cm
所有者:学校法人真宗大谷学園 京都府京都市下京区烏丸通七条上ル常葉町

  湯浅景基寄の供養には、高弁も都から下ってきている。寺院の敷地内の殺生禁断を望む景基の意志に賛同した湯浅一族の人々も署判を加えている。袖に高弁が自筆の外題(げだい)と花押(かおう)をすえる。施無畏寺の創建由緒と湯浅氏との関係を語る根本史料として貴重である。
(鎌倉時代)


4 車図(くるまず)   一巻

大きさ:縦31.1cm 全長515.5cm
所有者:財団法人陽明文庫 京都府京都市右京区宇多野上ノ谷町1-2

  牛車(ぎっしゃ)に関する一つ書き形式の説明書きと網代(あじろ)車・雨眉(あままゆ)車の四図とが描かれている。網代車は車箱を檜などの薄板で網代に組んだ車で、袖や立板(たていた)などに漆で文様を描く。描かれている扇面散(せんめんちら)しの文様から、洞院(とういん)実雄(さねお)の嫡流の使用する車であることが知られる。本巻は洞院公守(とういんきんもり)の正安元年六月、太政大臣就任に伴い必要が生じた牛車に関する記録を子息実泰(さねやす)が、『中右記(ちゅうゆうき)』など日記から蒐集して自家用に供するためにまとめた記録である。
(鎌倉時代)


5 立花家文書(たちばなけもんじょ)

所有者:福岡県(柳川古文書館保管)
株式会社御花 福岡県柳川市新外町1(柳川古文書館保管)

  立花家は、立花宗茂(むねしげ)が柳河城主となり、関ヶ原の戦いで西軍に味方して改易となったが、元和六年柳河に再入封し、それ以降歴代の柳河藩主家として明治維新・廃藩置県を迎える。立花家文書には刀狩令をはじめとする豊臣秀吉からの文書、検地、領地、藩財政などに関する文書が多数伝えられている。他方、立花家旧蔵の柳河藩立花家文書には藩主らの動静を記した諸日記や家臣団の系譜などの記録を中心とする藩政に関する文書がまとまっている。元来一具の立花家文書であり、十万石の大名家文書として典型的な文書群であるとともに、近世幕藩体制を研究する上において基準的な文書である。
(室町〜明治時代)



考古資料の部

16、未指定から重要文化財へ)

1 北海道有珠モシリ遺跡出土品(ほっかいどううすもしりいせきしゅつどひん)

所有者:国(文化庁保管)

  続縄文時代の墓坑内に副葬された骨角牙貝製品(こっかくきばかいせいひん)の一括。銛頭(もりがしら)や釣針等の豊富な漁労用具、頭部を熊の彫刻で飾る匙(さじ)形製品、幾何学文が彫られた槍先形製品、小型の巻貝を素材とした装身具等、多彩な内容で構成される。これらは、続縄文時代の葬送儀礼を考える上で欠かせない資料であると共に、当時の骨角牙貝製品の製作技術や造形の特色を知る上で、極めて貴重である。
(続縄文時代)


2 奈良県黒塚古墳出土品(ならけんくろつかこふんしゅつどひん)

所有者:国(文化庁保管)

  前方後円墳から出土した副葬品の一括。特に銅鏡は、三角縁神獣鏡や画文帯神獣鏡を含み、総計三十四面が出土した。これらの鏡には、他の古墳から出土した銅鏡との同笵関係をもつ箇体が含まれ、被葬者の勢力関係を推測する手かがりとなっている。本件は、古墳時代前期の、首長墓における副葬品の質的な高さを示すと共に、その葬送儀礼の実態を示す、極めて貴重な資料である。
(古墳時代)


3 北海道有珠モシリ遺跡出土品(ほっかいどううすもしりいせきしゅつどひん)

所有者:北海道伊達市

  内浦湾内の低平な小島に築かれた縄文時代晩期から続縄文時代の墓地遺跡からの出土品一括。副葬品として墓坑内に納められた、骨角牙貝製品、土器・土製品、石器・石製品で構成される。銛頭や釣針等の豊富な漁労用具、幾何学文が彫られた槍先形製品、南海産のオオツタノハを素材とした貝輪等、多彩な内容で構成される。葬送儀礼や、交易を考える上で欠かせない資料である。
(縄文時代〜続縄文時代)


4 京都府奈具岡遺跡出土品(きょうとふなぐおかいせきしゅつどひん)

所有者:京都府(京都府埋蔵文化財調査研究センター保管)

  丹後半島内陸部に所在した玉類製作工房跡の出土品一括。碧玉(緑色凝灰岩)管玉、水晶棗玉(なつめだま)、ガラス小玉等の製作工程を示す原石や未製品、穿孔工具としての微細な石針、成形用の玉砥石、袋状の鉄斧や鉄器製作のための切片等、多彩な遺物で構成される。これらは、弥生時代における、玉製作の工程と、技術的到達点を考える上で、貴重な資料である。
(弥生時代)


5 広島県草戸千軒町遺跡出土品(ひろしまけんくさどせんげんちょういせきしゅつどひん)

所有者:広島県(広島県立歴史博物館保管)

  芦田川下流の河川敷に広がる中世の港湾都市跡からの出土品。土師質土器等の日常雑器から中国・朝鮮産を含む各種の陶磁器、下駄や羽子板・付札等の木簡や呪符・漆器等の木製品、刀装具や手斧・銅鏡等の金属製品、笄(こうがい)・根付け等の骨角製品で構成される。これらは、衣食住の全体に関わる、当時の庶民生活を復元する上で、貴重な内容を持っている。
(鎌倉〜室町時代)


6 福岡県隈(ふくおかけんくま)・西小田遺跡群出土品(にしおだいせきぐんしゅつどひん)

所有者:福岡県筑紫野市(筑紫野市歴史博物館保管)

  弥生時代の甕棺墓出土品と祭祀遺構から出土した青銅器等の一括。甕棺墓の出土品は、銅鏡・銅剣・貝輪・鉄製品から構成され、特に貝輪は、多数が人骨に装着された状態で発見された。祭祀遺構出土品は、土器二箇と銅戈二十三口である。これらは、弥生時代中期における、九州北部における首長墓の実態と、当時の青銅器埋納の具体例を示す、貴重な資料である。
(弥生時代)


歴史資料の部

18、未指定から重要文化財へ)

1 大久保利通関係資料(おおくぼとしみちかんけいしりょう)   三千五十三点

所有者:国(国立歴史民俗博物館保管)

  倒幕・明治維新の中心的役割を果たし、新政府の指導者として明治国家を建設した大久保利通(1830〜1878)に関する資料群である。書状や日記・建白書等を中心とするこれらの資料は既に大半が活字化され、その学術的価値はつとに著名であり、幕末・維新期の政治史上に貴重である。
(江戸時代〜明治時代)


2 身幹儀(しんかんぎ)(星野木骨(ほしのもっこつ))   一く

所有者:国(広島大学保管)

  広島の医師星野良悦(ほしのりょうえつ)(1754〜1802)が藩許の解剖で得た人骨により、工人原田孝次に模刻させた木製の人体骨格模型である。寛政十年(1798)に江戸で杉田玄白・大槻玄沢ら蘭学者からその精巧さを絶賛され、さらに一くを作成し寛政十二年幕府の医学館に献上した。人体の骨格構造を精密に知る機会を与え、江戸時代の医学・蘭学の発達に寄与した点で、医史学上に重要である。
(江戸時代)


3 蘇言機(そごんき)(錫箔蓄音機(すずはくちくおんき))英国製      一台

大きさ:高22.7cm 幅45.8cm 奥行き30.7cm(木製台共)
所有者:独立行政法人国立科学博物館

  我が国に初めて伝来した蓄音機である。東京大学に招聘されたユーイング
(J.A.Ewing1855〜1935)がエジソンの蓄音機の発明を聞き及び英国で製作し、日本で組立・調整後、明治十一年十一月十六日、東京大学理学部の一橋実験室で録音・再生の実験を行った。これは世界で二例目であるとともに日本で最初に音が録音された機器として録音技術史・レコード文化史上に貴重である。
(19世紀)


4 今井八九郎北方測量関係資料(いまいはちくろうほっぽうそくりょうかんけいしりょう)   八十四点

所有者:独立行政法人国立博物館(東京国立博物館保管)

  蝦夷地松前藩の測量師、今井八九郎(1790〜1862)の手になる、蝦夷地を中心とした北方地域の測量図および関係資料である。今井は間宮林蔵に伊能忠敬流の測量術を学び、実地に応用して精度の高い北方図を独力で作成した。とりわけ利尻、礼文、奥尻、国後、択捉などの島嶼部は優れた作品となっている。藩に収めた上呈図は戊辰戦争で灰燼に帰したが、控として残されていた本資料によりその業績を知ることができる。松前藩士が作成した北方地域の実測地図として本邦地図史上貴重である。
(江戸時代)


5 箱館奉行所文書(はこだてぶぎょうしょもんじょ)   百六十七点

所有者:北海道(北海道立文書館保管)

  箱館奉行所文書は、安政元(1854)年に締結された神奈川条約に基づいて設置された箱館奉行所および出先機関で作成・受理された一群の文書で、箱館における諸外国との交渉に関わる文書や、蝦夷地(現北海道)のモンベツやエトロフなどにおけるアイヌ政策、また北蝦夷(樺太)のシラヌシなどでのアイヌほかの異民族政策にかかわる文書などを含む。幕末外交史、アイヌ史研究上貴重な資料である。
(江戸時代)


6 鷹見泉石関係資料(たかみせんせきかんけいしりょう)   三千百五十七点

所有者:茨城県古河市(古河歴史博物館保管)

  下総国古河藩家老鷹見泉石(1785〜1858)の作成・収集になる資料群で、洋学・地理学関係資料を中心とする。泉石は渡辺崋山の手になる国宝「鷹見泉石像」のモデルとしてつとに知られているが、幕閣・蘭学者・文人・和蘭商館長など当時の政治・文化・外交の中核を担う人々と幅広い交流をもち、海外をはじめ広く情報に通じた知識人であった。本資料は泉石の広い学問の事跡と譜代大名家の家老としての情報収集のあり方を示すとともに、当時の政治・文化・外交の中枢の動きを知る第一級の資料群として貴重である。
(江戸時代)


7 壬申検査関係ステレオ写真ガラス原板(じんしんけんさかんけいすてれおしゃしんがらすげんばん)   二百五十七点

大きさ:各縦約10.7cm 横約15.8cm
所有者:東京都(江戸東京博物館保管)

  明治五年に実施された壬申検査の写真撮影に用いられたガラス原板である。これは昨年度指定したステレオ写真(東京国立博物館保管)の原板であり、本件の指定によって国による近代初の文化財調査である壬申検査に関する写真資料の保護の拡充を期するものである。写真史上・文化財保護制度史上に貴重である。
(明治時代)


8 大久保利通関係資料(おおくぼとしみちかんけいしりょう)   千六百五十点

所有者:鹿児島県(鹿児島県歴史資料センター黎明館保管)

  倒幕・明治維新の中心的役割を果たし、新政府の指導者として明治国家を建設した大久保利通(1830〜1878)に関する資料群である。大久保家からの移管の事情により現有が国立歴史民俗博物館との二館に分かれるが、内容・分量からも両館の資料を併せもって大久保利通の全貌をもの語る。書状や建白書等を中心とする本資料群の学術的価値はつとに知られており、幕末・維新期の政治史上に貴重である。
(江戸時代〜明治時代)

-- 登録:平成21年以前 --