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2   解   説


【重要無形民俗文化財の指定】


  はちのへさんしゃたいさい   だし
1    八戸三社大祭の山車行事

    (1)文化財の所在地    青森県八戸市
  (2)保護団体 八戸三社大祭山車祭り行事保存会
  (3)公開期日 毎年8月1日〜8月3日
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   大型で豪華な風流(ふりゅう)系の山車(だし)が行列を組んで市内を巡行する、この地方を代表する山車行事である。
2文化財の説明
   この行事は、青森県八戸市内にある(おがみ)神社、新羅(しんら)神社、神明宮(しんめいぐう)の三社合同の祭礼に行われる行事で、三社の神輿行列とともに、町内などが毎年作り替えて奉納する大型で豪華な風流系の山車が市内を巡行する。
   この行事は、風流系山車行事として近代的展開をしているが、藩の庇護下に裕福な町人を中心とする城下町祭礼が、一般町人の祭りへと変化する地方都市祭礼の展開過程が示されるとともに、山車の所有形態が分限者中心から町内主体へと代わるのに伴って、意匠が固定した人形山車から趣向を凝らして作り替える風流系の山車に代わっていく、我が国の山車祭りの変遷過程の典型を示すものとして貴重である。
   また、この行事は、青森県東南部から岩手県北部太平洋沿岸一帯にかけて広く分布する同種の山車行事の中心であり、この地方を代表する祭礼行事として重要である。


  よしはま
2    吉浜のスネカ

    (1)文化財の所在地    岩手県大船渡(おおふなと)市三陸町(さんりくちょう)吉浜
  (2)保護団体 吉浜スネカ保存会
  (3)公開期日 毎年1月15日
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   スネカと呼ばれる異装の者が小正月の夜に家々を訪問する、岩手県を代表する来訪神の行事である。
2文化財の説明
   この行事は、岩手県大船渡市三陸町吉浜に伝承されている来訪神の行事で、奇怪な面をかぶり、藁蓑などを身に着けてスネカに扮した男性たちが小正月の夜に地区内の家々を訪れて、怠け者や泣く子を戒める。スネカとは、囲炉裏のそばで怠けている者の脛にできる火班を剥ぐスネカワタグリに由来するといわれており、また、スネカは、里に春を告げ、五穀豊穣や豊漁をもたらす存在とも考えられている。
   年の折り目に異装の者が家々を訪れて祝福をもたらす行事は、日本の各地に地域的特色をもって伝承されているが、この行事は、岩手県内に伝承されている来訪神の行事の典型例と考えられるとともに、これまでに指定のなかった太平洋沿岸地域における同種の行事の代表的なものとして注目される。
   日本人の神観念や年中行事を理解する上で重要であるとともに、来訪神の風貌や所作などに地域的特色も豊かである。


  ねっこばんがく
3    根子番楽

    (1)文化財の所在地    秋田県北秋田郡阿仁町(あにまち)根子
  (2)保護団体 根子番楽保存会
  (3)公開期日 毎年8月14日ほか
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   武士を主人公にした勇壮な舞を中心に、作り物の蛇が登場するなど独特の工夫を加えて伝承される民俗芸能である。
2文化財の説明
   根子番楽は、またぎの里として知られる阿仁町根子で伝承され、毎年8月14日に阿仁町公民館根子分館体育館で演じられるほか、地元の行事などで披露されている。8月14日には10番ほどが披露される。太鼓と笛、手(て)びら鉦(がね)、拍子板(ひょうしいた)などのにぎやかな伴奏により、「鞍馬(くらま)」「曾我(そが)兄弟」などの武士舞、「翁」「三番叟(さんばそう)」など儀式的な意味を持つ舞などが、いずれも小気味よい所作で勇壮に舞われる。「鐘巻(かねまき)」では、作り物の蛇が出て、舞手と争う場面を演じる。地元では平家あるいは源氏の武将が始めたと伝えている。
   根子番楽は、武士の舞を中心に勇壮に舞うもので、作り物の蛇など独特の工夫を加えて伝承され、芸能の変遷過程や地域的特色を示すものとして特に重要である。


  こたき
4    小滝のチョウクライロ舞

    (1)文化財の所在地    秋田県由利(ゆり)郡象潟町(きさかたまち)小滝
  (2)保護団体 鳥海山小滝舞楽保存会
  (3)公開期日 毎年6月第2土曜日
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   中世に大寺院等で演じられた舞楽(ぶがく)や田楽(でんがく)の姿をうかがわせる民俗芸能である。
2文化財の説明
   小滝のチョウクライロ舞は、象潟町小滝の金峰(きんぽう)神社の祭礼で、神社境内の土の舞台で演じられる。小滝は鳥海山の秋田側の登山口に当たり、近世には鳥海修験の拠点の一つであった。この舞は、かつて、それらの修験の関係者によって伝承されていた。
   チョウクライロ舞として「九舎(くしゃ)の舞」「荒金(あらがね)の舞」「小児(ちご)の舞」「太平楽(たいへいらく)の舞」「祖父祖母(そふそぼ)の舞」「瓊矛(ぬほこ)の舞」が伝承される。舞楽面の陵王(りょうおう)や納曽利の面を着ける舞や、田楽をしのばせる舞として、子供たちが、花笠をかぶり、びんざさらや鞨鼓(かっこ)を持つ舞がある。
   中世に大寺院の僧侶等によって舞楽や田楽などが盛んに行われた。小滝のチョウクライロ舞は、中世の芸能の姿をうかがわせる演目や、土の舞台での上演など、芸能の変遷過程や地域的特色を示し特に重要である。


  こはた   はた
5    木幡の幡祭り

    (1)文化財の所在地    福島県安達(あだち)郡東和町(とうわまち)木幡
  (2)保護団体 木幡幡祭保存会
  (3)公開期日 毎年12月第1日曜日
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   秋の収穫後に豊作祈願と成人儀礼として行われる登拝行事で、特に、成人儀礼としての性格が濃厚に認められる。
2文化財の説明
   この行事は、福島県安達郡東和町木幡で12月の第1日曜日に行われる豊作祈願と成人儀礼の性格を持つ行事である。地区を単位とした堂社と呼ばれる集団によってお籠もりなどの行事が行われた後に、参加する堂社合同でお山かけが行われる。前夜には行事に参加するゴンダチと呼ばれる青年の水垢離(みずごり)とりが行われる。
   お山かけは色とりどりの大幡を持った一行とゴンダチが木幡山に登拝し、途中から二手に分かれて進み、ゴンダチは胎内くぐりや命名、食い初めなど生まれかわりの儀礼を行う。
   この行事は、福島県内における同種の行事の中で成人儀礼としての性格をより明確に示すものの典型と考えられるものである。


 
つつこわけ おたうえ
6    都々古別神社の御田植

    (1)文化財の所在地    福島県東白川(ひがししらかわ)郡棚倉町(たなぐらまち)八槻(やつき)
  (2)保護団体 八槻都々古別神社御田植保存会
  (3)公開期日 毎年旧暦1月6日
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   年の始めに、豊作を祈って、神楽などとあわせて、せりふと簡単な所作で稲作の作業過程を演じる民俗芸能である。
2文化財の説明
   毎年旧暦1月6日に、八槻都々古別神社の拝殿で披露されている。この御田植は、神楽から始まり、その後、せりふと簡単な所作で、堰(せき)の様子を確認する「せき検分」が演じられる。さらに太鼓や拝殿を水田にみたてて「代(しろ)かき」「畦(あぜ)ぬり」などの田植の諸準備が演じられて「田植」になり、「天狐の舞」が舞われ、最後に中飯(ちゅうはん)(昼食)として参列者に餅をまいて終わる。
   年の始めなどに、あらかじめ稲作過程を模擬的に演じて、豊作を祈願する芸能は、田遊(たあそ)びや御田(おんだ)などとも呼ばれて、各地に伝承されている。この御田植は、神楽などとともに、せりふと簡単な所作で、時に滑稽に、稲作の作業過程を演じるもので、狂言をうかがわせる演じ方など、芸能の変遷過程や地域的特色を示し特に重要である。


  さわら         だし
7    佐原の山車行事

    (1)文化財の所在地    千葉県佐原市
  (2)保護団体 佐原山車行事伝承保存会
  (3)公開期日 八坂神社(本宿(ほんじゅく))毎年7月9日直後の金・土・日曜日
諏訪神社(新宿(しんじゅく))毎年10月第2金・土・日曜日
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   大人形などを飾った数多くの豪華な山車が勇壮に巡行する、関東地方を代表する山車行事である。
2文化財の説明
   この行事は、利根川水運の要衝として栄えた千葉県佐原市の本宿(ほんじゅく)と新宿(しんじゅく)の二つの祭礼に行われ、豪華な山車が佐原囃子の多彩な調べにのって市内を曳き回される。本宿の山車行事は7月の八坂神社の祇園祭に、新宿の山車行事は10月の諏訪神社の大祭に行われ、それぞれの山車が自らの町内を回る乱曳(らんび)きや、全町内の山車が順列を組んだり、位置を定めて行う番組(ばんぐみ)行事、山車の曳き回しの見せ場である曲曳(きょくび)きなどが行われる。
   近世以来、江戸の祭礼文化の影響を受けながらも独自の山車と囃子を展開させてきており、本宿と新宿が山車の意匠を競い合いながら、年齢階梯的な性格の強い厳格な祭祀組織によって行事を伝えているなど、地域的特色が豊かである。また、周辺地域の祭りに大きな影響を与え、佐原を中心とする一つの山車文化圏を形成するに至っており、我が国の祭礼文化や山車行事を理解する上で重要である。


  いとさき   ほとけのまい
8    糸崎の仏舞

    (1)文化財の所在地    福井県福井市糸崎町(いとさきちょう)
  (2)保護団体 仏舞保存会
  (3)公開期日 隔年の4月18日
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   仏の仮面を着けて舞うもので、類例が少なく、今は伝わらない舞楽の演目をうかがわせる民俗芸能である。
2文化財の説明
   隔年の4月18日に、糸崎寺観音堂の正面に設けられた石組の舞台で披露されている。仏の面をかぶった合計10人の舞人と、白い童子の面を着けた2人の幼児が舞台に進む。幼児は舞台の端で合唱して舞を見守る。舞人は太鼓と鉦(かね)の伴奏にのせて舞台の中をめぐるように舞う。途中で2名の仏が舞台中央の机に蓮の花を置く場面などもある。
   地元では、8世紀に観音菩薩を安置した時に大勢の菩薩が現れて舞ったことから始まると伝えている。江戸時代(19世紀初め)の記録に、この仏舞が絵図入りで紹介されている。
   仏の仮面を着けて舞う芸能は珍しく、現在では舞の伝承が途絶えている舞楽の「菩薩(ぼさつ)」をうかがわせるとされ、芸能の変遷過程や地域的特色を示し特に重要である。


  とば
9    鳥羽の火祭り

    (1)文化財の所在地    愛知県幡豆(はず)郡幡豆町(はずちょう)鳥羽
  (2)保護団体 鳥羽区
  (3)公開期日 毎年2月の第2日曜日
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   年頭に大松明(おおたいまつ)を焚いて一年の作柄や吉凶などを占う、大規模で特色ある正月行事である。
2文化財の説明
   この行事は、愛知県幡豆郡幡豆町鳥羽で行われる正月の大松明行事で、神明社の境内で行われる。鳥羽川を境に、東の「乾地(かんち)」と西の「福地(ふくち)」に地区を二分し、それぞれ25の厄年の若者1名を神男(しんおとこ)に選び、この役を中心に進行する。二つの地区が、燃え盛るスズミと呼ばれる大松明の中から、神木(しんぎ)と十二縄(じゅうになわ)を取り出して神前に供える速さを競い、その勝敗や松明の燃え具合などで、その年の天候や作柄を占う。
   年の始めに大火を焚き、災厄を除いたりその年の豊凶などを占う行事は、日本の各地に地域的特色をもって伝承されているが、この行事は、神男を中心とした伝承組織や地域を二分して行われる形態などに特色が見られる。
   また、特に燃え盛る松明の中から神木などを競争で取り出す行事は類例が少なく、地域的特色を示していて重要である。


  まつのおでら   ほとけまい
10    松尾寺の仏舞

    (1)文化財の所在地    京都府舞鶴市
  (2)保護団体 松尾寺仏舞保存会
  (3)公開期日 毎年5月8日
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   仏の仮面を着けて舞うもので、類例が少なく、今は伝わらない舞楽の演目をうかがわせる民俗芸能である。
2文化財の説明
   毎年5月8日に、松尾寺本堂内に舞台を整えて披露されている。当日になると、本堂の向かって左手奥の一隅で、舞人が仏の面を付けるなど準備する。雅楽の楽人と仏の面をかぶった6名の舞人が行列になって登場し、舞人は本堂内の舞台に並ぶ。舞人は3人ずつの2列を作り、楽太鼓、鞨鼓(かっこ)、篳篥(ひちりき)、龍笛(りゅうてき)など雅楽楽器の伴奏にのせて、内向きや外向きになり、途中で列を入れ替わって舞い、また列を作って舞台から退出して終わる。
   地元では600年前に始まったと伝えている。江戸時代(18世紀中頃)の記録に紹介されている。
   仏の仮面を着けて舞う芸能は珍しく、現在では舞の伝承が途絶えている舞楽の「菩薩(ぼさつ)」をうかがわせるとされ、芸能の変遷過程や地域的特色を示し特に重要である。



【記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財の選択】

  なんぶきりたかぐら
1    南部切田神楽

  (1)文化財の所在地    青森県十和田市切田字下切田
  (2)保護団体 南部切田神楽会
  (3)公開期日 毎年9月15日ほか
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   御神体である獅子頭による権現(ごんげん)舞(まい)を中心にした神楽で、特に数多くの多彩な演目を伝承している民俗芸能である。
2文化財の説明
   毎年9月15日の切田八幡宮の祭礼のほか地元の行事などで披露されている。祭礼では、権現舞が、太鼓、手(て)びら鉦(がね)、笛の伴奏にのせて勇壮に演じられる。時には、さらに別の1演目が演じられることもある。なお毎年2月に地域の人々だけで行われる行事では、4年に一度、多数の演目を上演している。
   江戸時代初期に、羽黒の修験者から伝承したものと伝え、その後、江戸時代末期に衰えたので、他の地域から伝承者を招いて再興に努めたとされる。
   南部切田神楽は、御神体である獅子による権現舞(ごんげんまい)を中心に、山神(やまのかみ)舞、三番叟(さんばそう)、鳥舞(とりまい)、機織(はたおり)など数多くの多彩な演目を伝承し、芸能の変遷の過程や地域的特色を示している。


2   青森県南部地方の虫送り
  (1)文化財の所在地    青森県
  (2)保護団体  
  (3)公開期日 毎年旧暦6月24日ほか
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   青森県の旧南部藩領一帯に、かつては広く伝承されていた虫送りの行事で、麦の収穫儀礼としての性格をあわせ持つ行事である。
2文化財の説明
   この行事は、麦刈りが終了した旧暦6月24日前後に行われる。虫送りは集落単位に行われ、麦稈(むぎから)や稲藁で作った人形を持って、鉦(かね)、太鼓、笛などでにぎやかに囃しながら集落内を練り歩いた後、村はずれに立てたり、川に流したり、あるいは投げ捨てたりする。
   この行事は、広く行われていたが、近年行事が廃絶した地域が多くなっている


  しらかわいぬそとば
3    白川犬卒都婆のゴンダチ

  (1)文化財の所在地    宮城県白石市白川犬卒都婆
  (2)保護団体 羽山神社総代会
  (3)公開期日 毎年11月8日
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   数え7歳の子供が羽山神社の奥宮に一升餅を背負って登山し、成長を感謝、祈願する行事である。
2文化財の説明
   この行事は、宮城県白石市白川犬卒都婆で、毎年11月8日の羽山神社の例祭に行われる。
   7日には参加する子供と父親が親戚や近所に挨拶をし、夕方から子供の家で祝宴が開かれる。翌8日は早朝4時頃から父親や親戚に付き添われた子供たちが奥宮に登り、奥宮でお祓いを受けた後、持ち寄った料理を振る舞い合い夜が明ける頃下山する。下山すると親戚などにお礼回りをした後、家に親戚や近所の人たちを呼んで祝宴が行われて行事が終わる。
   この行事は、東北地方に広く見られるお山がけとか七つ児参りといわれる生育儀礼の一つである。


  とらおどり
4    横須賀の虎踊

  (1)文化財の所在地    神奈川県横須賀市西浦(にしうら)賀(が)町(ちょう)、野比
  (2)保護団体 浦賀虎踊り保存会
中村町内会虎踊り保存会
  (3)公開期日 毎年6月第2土曜日(西浦賀町)、
隔年7月の第2ないし第3土曜日(野比)
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   二人で演じる獅子舞のように虎の頭部をかぶった虎が、暴れるように踊り、後に鎮められるもので、唐子踊とあわせて演じられる。
2文化財の説明
   それぞれ、地区の神社祭礼時に境内に舞台を仮設し、唐子踊りののちに、二人一組で扮する虎が登場し、和藤内(わとうない)に鎮められる様子を演じる。
   西浦賀町では、毎年6月第2土曜日に為朝(ためとも)神社の祭礼で、女児の唐子踊があり、次に大小2頭の虎が暴れるように踊り、男児の和藤内が虎を鎮める。
   野比では、隔年7月の第2ないし第3土曜日に、白髭神社の祭礼で、子どもの唐子踊ののち、一頭の虎が登場して暴れるように踊り、和唐(藤)内が、虎を鎮めて連れ帰るもので、5回ほど演じられる。
   この虎踊は、『国性爺合戦(こくせんやかっせん)』(近松門左衛門:1715年人形浄瑠璃初演。後に歌舞伎でも上演)から工夫されたものと考えられ、唐子踊を加えて上演されるなど、芸能の変遷過程や地域的特色を示している。


  うらさびしゃもんどう
5    浦佐毘沙門堂の裸押合の習俗

  (1)文化財の所在地    新潟県南魚沼郡大和町(やまとまち)浦佐
  (2)保護団体 越後浦佐裸押合大祭委員会
  (3)公開期日 毎年3月3日
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   年頭や春先に行われる無病息災や五穀豊穣を祈願する行事で、参加者たちが裸で奉納品を奪い合う。
2文化財の説明
   この裸押合の習俗は、毎年3月3日に新潟県南魚沼郡大和町浦佐の真言宗普光寺の毘沙門堂で行われる。明治5年までは正月3日に行われていたと伝えられており、元は年頭に行われる行事であった。
   この行事は浦佐地区の人たちが中心になって行われるが、周辺地域から多くの参加者が広く集まる。押合の参加者は水行(みずぎょう)をとり堂内で押合を行う。この押合の間に信者が奉納した供物を供える行列が何度も入堂し、そのたびごとに奉納品名を書いた木札がまかれ、裸押合の参加者が奪い合う。最後に年男が入堂してささらすりを行い、音頭取りが音頭歌(おんどうた)を歌う中で参加者が堂内を左回りに回って行事が終了する。
   この行事は、年男や音頭取り、ささらの奉納を特定の家が務めるなどの特色が見られる。


  わかみこ
6    若神子のほうとう祭

  (1)文化財の所在地    山梨県北巨摩(きたこま)郡須玉町(すたまちょう)若神子
  (2)保護団体 三輪神社総代会
  (3)公開期日 毎年7月30日
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   大きな藁人形を用いた禊(みそぎ)祓いの行事と虫送りの火焚き行事から成る特色ある行事である。
2文化財の説明
   この行事は、山梨県北巨摩郡須玉町若神子にある三輪(みわ)神社の例祭に行われ、行事の際に儀礼食として小豆ぼうとうが作られることから、ほうとう祭りの名称で呼ばれている。神社の境内で稲の害虫除けを祈願するドンドン火が焚かれ、参詣者はその傍らに立てられた藁人形の腹掛に自分の体の悪い部分を撫でた紙を納める。穢(けが)れを託された藁人形は、かつては須玉川に流して送ったが、現在は境内のドンドン火で燃やされる。
   旧暦6月晦日に身体の不浄を祓う夏越(なごし)の祓いの儀礼を、藁人形に穢れを託して送るかたちで伝えており、それに害虫除けの虫送りの行事が習合したと考えられる地域的特色の豊かな行事である。我が国の年中行事や民間信仰を理解する上で貴重であるが、人形の送り方が変化し、ドンドン火も縮小化してきているなど、時代の変化に伴って衰退・変貌の恐れが高くなっている。


  こいな   とらまい
7    小稲の虎舞
  (1)文化財の所在地 静岡県賀茂(かも)郡南伊豆町手石(ていし)
  (2)保護団体 来宮会(きのみやかい)
  (3)公開期日 毎年旧暦8月13日・14日
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   二人で演じる獅子舞のように虎の頭部をかぶった虎が、暴れるように踊り、後に鎮められるもので、数年に一度は、龍を加えて演じられる。
2文化財の説明
   南伊豆町手石の旧小稲地区で伝承され、毎年、旧暦8月の来宮(きのみや)神社の祭礼で演じられる。海岸の仮設舞台で、旧暦8月13日の宵宮、14日の本祭の夜に、それぞれ三回虎舞が舞われる。三回目の最後に、少年が演じる和藤内が御幣を持って、虎と激しく争い、鎮めた虎を引いて舞台を降りて終わる。
   また、数年に一度、豊漁など村の祝い事があると、龍が登場することがある。この時、和藤内は虎に敗れて退場し、そののちに龍が登場して虎と争い、敗れた虎は来宮神社へ逃げて終了するという。
   この虎踊は、『国性爺合戦(こくせんやかっせん)』(近松門左衛門:1715年人形浄瑠璃初演。後に歌舞伎でも上演)から工夫されたものと考えられ、龍の舞が加わることがあるなど、芸能の変遷過程や地域的特色を示している。


8   愛知のオマント
  (1)文化財の所在地 愛知県
  (2)保護団体  
  (3)公開期日 体育の日の前日の日曜日他
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   飾り立てた馬を社寺に奉納する行事で、人と動物の関わりを知る上で貴重な習俗の一つである。
2文化財の説明
   愛知県の尾張や西三河地方には、オマントあるいは馬の塔と呼ばれる行事が広く分布していた。この行事は、鞍に御幣や作り物を立てて飾った馬を社寺に奉納するもので、警固祭りなどとも呼ばれている。集落の氏神に奉納するのが基本的な形式であるが、熱田神宮や猿投(さなげ)神社などの著名な社寺に数十か村が連合して奉納するガッシュクと呼ばれる形式もあった。
   このような行事も、生業構造の変化等により馬の飼育が困難となるとともに、祭祀組織が変化するなど衰退・変貌の恐れが高い。


 
なきり よみせ
9    名喜里祇園祭の夜見世

  (1)文化財の所在地 和歌山県田辺市新庄町(しんじょうちょう)名喜里
  (2)保護団体 名喜里町内会
  (3)公開期日 毎年7月13日
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   祭りの宵宮に、各家が身近な素材を使って夜見世と呼ばれる出し物を作り、家の玄関先などに飾り付けて披露する、類例の少ない行事である。
2文化財の説明
   この行事は、和歌山県田辺市新庄町名喜里に伝承されており、当地の祇園社の宵宮に各家が昔話や伝説、動植物、世相などに取材した出し物を、季節の野菜や草花などの身近な素材を用いて製作し、家の軒先や玄関先に飾り付けて見せ合う行事である。夜見世とは、各家が毎年趣向を凝らして作る出し物のことでもあり、神社の参道から天王橋までの約400メートル程の家並み沿いに飾られ、多くの人々で賑わう。
   祭礼に際して、家々が家宝の屏風や什器などを室内に飾り付けて一般の人たちに見せる習俗は、屏風祭などと呼ばれて各地に見られるが、この行事は身近な素材を利用して、創意工夫に富んだ出し物を各家が作りあげるところに特色があり、全国的にも類例が少なく貴重である。しかし、夜見世を出す範囲が縮小してきているなど、時代の変化に伴って衰退・変貌の恐れが高くなっている。


  おきにしのしま
10   隠岐西ノ島のシャーラブネ

  (1)文化財の所在地 島根県隠岐郡西ノ島町美田(みた)、浦郷(うらごう)
  (2)保護団体 美田地区、浦郷地区
  (3)公開期日 毎年8月16日
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   藁や竹などで大きな船を作って盆に迎えた精霊を海上に送る、子供たちを中心とした大規模な精霊船流しの行事である。
2文化財の説明
   この行事は、島根県隠岐郡西ノ島町の美田(みた)地区と浦郷(うらごう)地区に伝承される盆の精霊(しょうりょう)送りの行事である。シャーラとは精霊、つまり先祖の霊のことであり、色とりどりの数多くの旗で飾られた大きな藁船に子供たちが供物とともに乗り込むなどして海岸から沖に向かい、盆に迎えた先祖の霊を海の彼方に送る。
   盆の精霊船流しは、隠岐の島前・島後の島々で広く行われている習俗であるが、原則的に新盆の家だけが行う行事である。そうした中で、この行事は、精霊船を共同で作り、子供たちを中心に集落をあげて行う盆の精霊送りの行事として注目されるものであり、我が国の年中行事を理解する上で貴重である。しかし、少子化等の影響によって行事の担い手が変化しつつあるなど、時代の変化に伴って衰退・変貌の恐れが高くなっている。


  よしま   ひついし
11    与島・櫃石の盆踊

  (1)文化財の所在地 香川県坂出(さかいで)市与島、櫃石
  (2)保護団体 与島連合自治会、櫃石盆踊り保存会
  (3)公開期日 毎年8月14日
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   娯楽として踊られる盆踊が多くなっている中、精霊供養としての盆踊の姿をうかがわせる。
2文化財の説明
   香川県坂出市の与島と櫃石島に伝わる盆踊で、音頭取の歌と太鼓にあわせ、櫓を中心に輪になって踊る。
   与島では、新仏(あらぼとけ)の家族等が、位牌を風呂敷や白布にくるむなどして順番に背負い、新仏の名前を「これは○○さんの菩提のためよ」と歌い込んだ歌詞にあわせて、ゆったりした所作で踊る。
   櫃石でも、新仏の位牌を家族等が背負い踊る。踊りは男女で異なり、男性と女性の輪を別に作って踊る。女性は手に団扇を持ち、男性は何も持たない。
   盆踊は全国各地で踊られているが、単に娯楽としての盆踊が多い中、与島・櫃石の盆踊は、精霊供養としての盆踊の姿をうかがわせ、また、ゆったりとした所作は古風で、芸能の変遷過程や地域的特色を示している。


  あやつ   じし
12    操り獅子

  (1)文化財の所在地 沖縄県名護市川上、国頭(くにがみ)郡本部町(もとぶちょう)伊豆味(いずみ)、今帰仁村謝名(なきじんそんじゃな)
  (2)保護団体 名護市川上区、
伊豆味区あやつり獅子舞保存会
謝名アヤーチ獅子保存会
  (3)公開期日 不定期(川上)
4年目ごとの旧暦8月11日(伊豆味)
4年目ごとの旧暦8月15日(謝名)
  (4)文化財の概要 1文化財の特色
   日本の人形芝居の中では珍しい糸操りによるもので、いずれも沖縄県下で豊年祭と結びつき伝承されている。
2文化財の説明
   いずれも糸操りによる獅子舞で、豊年祭の奉納踊りの最終演目として演じられている。二頭の獅子が、舞台中央に吊り下げられた玉を中心に向かいあうように置かれ、三線などの演奏にあわせ、最初はゆっくりと、次第に激しく、玉に飛びつくように動かされる。
   獅子一頭に一人が付いて操作する。獅子の頭部と臀部に、それぞれ一本の糸が結びつけられ、それらの糸は、舞台の天井に取り付けられた竹などの棒の上をわたされて舞台の後方に延ばされている。操作者は、左右の手に、それぞれ一本の糸を握って、激しく上下に動かすなどして獅子を操る。
   日本の人形芝居の中で珍しい糸操りによるものである。いずれも沖縄県下に伝承され、各地の豊年祭と結びつき、豊年祭の中で重視されている獅子舞を糸操りで演じるなど、芸能の変遷過程や地域的特色を示している。


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