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文化審議会国語分科会読書活動等小委員会の意見のまとめ

平成11年8月22日
 

1   読書をめぐる状況等について

(1)   読書の重要性

   読書は人類が獲得した文化である。読書により我々は,楽しく,知識が付き,ものを考えることができる。また,あらゆる分野が用意され,簡単に享受でき,しかも安いという特色を有する。読書習慣を身に付けることは,国語力を向上させるばかりでなく,一生の財産として生きる力ともなり,楽しみの基ともなるものである。読書の習慣を若いうちに身に付けることが大切である。
   国語力との関係でも,既に,本年1月にまとめられた「審議経過の概要」にも示されているように,読書は,国語力を形成している「考える力」,「感じる力」,「想像する力」,「表す力」,「国語の知識等」のいずれにもかかわり,これらの力を育てる上で中核となるものである。また,すべての活動の基盤である「教養・価値観・感性」などを生涯を通じて身に付けていくために不可欠,というより,読書なしに教養等を形成していくことはあり得ない。
   また,昨今「読書離れ」が叫ばれて久しいが,これからの時代を考えるとき,読書の重要性が増すことはあっても,減ることはない。
   特に,読むことは情報化社会の中ではますます必要になってくる。情報化が進むと断片的な情報を受け取るだけの受け身の人間になってしまい,自分でものを考えなくなる。自分でものを考える必要があるからこそ読書が必要なのである。
   文化庁の「国語に関する世論調査」によれば,読書の重要性や意義については,国民の間でも十分に認識されているものと考えられる。

(2)   読書活動の現状

   一方,毎日新聞社・社団法人全国学校図書館協議会の「学校読書調査」によれば,「本を読むことは大切である」と小学校から高等学校まで9割前後の児童生徒が認識している。それにもかかわらず,5月の1か月間に1冊も本を読まなかった児童生徒の割合は,小学校から中学校,高等学校と進むにつれて高くなる。
   また,文化庁の「国語に関する世論調査」によれば,子供ばかりでなく全年代にわたって,ある程度の割合で「全く本を読まない」人がいるという結果が出ている。これらの結果から,子供のみならず,大人にも「読書離れ」が認められると言えよう。
   こうした現状の中でも特に,小学校・中学校・高等学校と進むほど読む本の冊数が減るという状況に至っていることは,国語力の育成という観点から言っても見過ごすことができない問題であると考えられる。このことは,学校教育において読書が十分に位置付けられていないことや受験などのために子供たちに読書のための余裕が十分にないこと,大人の「読書離れ」によって身近な大人が読書をする姿を見ることが少ないことなどに起因する面もあろう。

(3)   現在取り組まれている国や地方自治体等の施策・取組

   平成13年12月に「子どもの読書活動の推進に関する法律」が公布・施行された。この法律は,子供の読書活動の推進に関し,基本理念を定め,国及び地方公共団体の責務等を明らかにし,施策の総合的かつ計画的な推進を図るものである。
   平成14年8月に「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が閣議決定された。この計画は,すべての子供があらゆる機会とあらゆる場所において,自主的に読書活動を行うことができるよう,施策の総合的かつ計画的な推進を図るために定められたものであり,後は「実行あるのみ」である。
   しかしながら,学校図書館図書標準の通知が平成5年に出て,学校図書館図書整備5か年計画によって地方交付税措置が講じられていながら,いまだに満たしている学校が3割ほどにとどまっているというように,計画はあっても現実がそうなっていないことが問題であり,この点に今後力を入れていく必要があると考えられる。
   一方,地方においても,それぞれの地域の実情を踏まえて,読書活動推進のため,積極的に様々な取組を行っているところがある。さらに,国の読書活動推進のための基本計画に続き,各自治体でも推進計画を策定中であり,策定された推進計画に基づいて着実に取り組まれることが望まれる。
   ただ,読書活動推進のための自治体の取組についても,自治体による格差が大きい。例えば,学校図書館についても,司書教諭の授業時間数削減のために非常勤講師を雇用しているところもあれば,司書教諭を任命するだけのところもある。図書の寄付や教員と図書委員の生徒とが一体となって積極的に活動しているところもある。このような自治体の取組においては,首長や校長等のリーダーの意識に影響されるところが大きい。
   また,民間でも,子供を対象とするものばかりでなく,大人を意識したものを含めて様々な取組が進められている。しかし,取組についての情報を交換し,共有化する場がなく,個別の取組になってしまっていることもある。

   (注)    「学校図書館図書標準」とは,公立の義務教育諸学校において,学校図書館の図書の整備を図る際の目標として,文部省(平成5年当時)が定めた学校種・学校規模別の蔵書冊数である。


2   読書活動推進のための今後の方策に関する基本的考え方と具体的取組について

(1)    家庭・学校・地域社会全体で「自ら本に手を伸ばす子供を育てる」ことが最も重要である。

   国民の読書活動を考えるとき,子供の時期の指導は特に大切であり,その後の人生を左右するものであると言っても過言ではない。この時期に,読書の喜びを知り,好奇心を満たす手段を身に付けることが大切である。「自ら本に手を伸ばす子供を育てる」ために何をなすべきかということこそ国語教育の大きな課題であると言うことができる。
   子供が自ら読みたいという方向に向かうような工夫,すなわち,自ら本に手を伸ばす子供を育てることが必要である。その観点で,子供の自主性や自発性は大切であり,尊重すべきであるが,大人による教育的配慮や適切な指導は当然必要である。
   また,読書指導を行う上で学校の役割は大きいが,学校だけでなく,家庭や地域全体で取り組んでいくことが重要である。


1   家庭や地域における読み聞かせ等を支援する。
   ○    これから子供が生まれる両親に,読み聞かせの楽しさを感じさせるため,母親だけでなく,父親も参加できる場を設定する必要がある。
   乳幼児教育では,保育園や幼稚園などの社会的な場における啓発や講習を推進していく必要がある。
   読み聞かせの楽しさを保護者に指導できる人材,言葉を軸にした文化活動のリーダーなどの人材の養成や研修を進めていくことが望まれる。
   読み聞かせボランティア等の相互の情報交換や情報の共有化を図るため,文化庁等のホームページを利用した魅力ある仕組みを考える。

   本を読むようにするための最初の入り口は聞かせることにあり,読み聞かせを重要視すべきである。特に,乳幼児期から小学校へ入学する前の時期は,言葉に対する信頼感を得,言葉を通じての人間関係形成能力の基礎を培う上で極めて重要である。この時期に,家庭や地域が中心となって絵本等の読み聞かせなどを積極的に行うことが望まれる。
   現在,乳幼児への読み聞かせは,各家庭で取り組まれているだけでなく,各種サークルや公共図書館等で読み聞かせ運動として進められている。しかし,それらのノウハウはなかなかほかに伝わらず,ほかでどうやっているのか知りたいという要望もある。
   また,乳幼児に本を贈る「ブックスタート運動」も地方公共団体や民間団体によって進められつつある。
   一方,国においても,「子どもゆめ基金」などにより,読み聞かせ運動を行う団体等への助成なども進められている。
   今後,このような取組をより一層進めるとともに,情報交換の場の整備など,自治体やボランティア活動を行う団体が動きやすくなるように,また,このような取組がより発展するにはどうすればよいかといった面から検討すべきである。


2   読書環境のデータを整備し,情報を公開する。
   ○    国や地方自治体が,読書環境の整備の現状を知らせるため,データを整備し,積極的に情報を公開する必要がある。
   各自治体で策定する読書の推進に関する推進計画では,抽象的な目標ではなく,数値目標を示して評価を受けることが望ましい。

   学校図書館については,学校図書館図書標準が定められて図書整備のための地方交付税措置が講じられている。しかしながら,実態を見ると,達成率が3割台でしかない。
   さらに,一般の公立図書館についても,整備は進みつつあるが,まだ,かなりの町村では進んでいないし,その蔵書も地域住民の要求に十分にこたえられる程には整っていないところがあるという状況である。地域ごとの図書館整備への取組については,大きな格差が認められるが,なかなかその現状が住民に伝わっていない状況にある。
   地方自治体では,現在,「子ども読書活動推進計画」を策定しているところであり,学校図書館や公共図書館の整備や連携,図書館を核にする読書活動の推進などが盛り込まれているようである。地方自治体が責任を持って,策定した計画を実行に移していくことが望まれる。
   このような点を踏まえると,地方自治体で,具体的な目標を伴った「子ども読書活動推進計画」を策定するとともに,その計画を中心として読書環境の整備に向けて具体的にどのように取り組んでいるかについての情報を明らかにすることが求められる。こうした情報によって,住民や保護者等が,地方自治体の取組に対し,関心を高め,評価し,働き掛けていくことになり,首長や校長などのリーダーの読書に対する認識を高めることにつながると考えられる。


3   学校週5日制の土曜日等を読書活動推進に活用する。
   ○    完全学校週5日制を踏まえ,社会教育の面から,土曜日を読書活動推進に積極的に利用する必要がある。
   単に本を読むように勧めるだけでなく,他の要素も加えて,興味を持って自ら読みたいという気持ちにさせる機会や行事を工夫することが望ましい。
   学校や図書館,各種図書館間における地域との結び付きや活動の場作りが大切であり,それぞれの機関の有機的な連携を進めることが必要である。

   現在の学校生活は忙しく,子供たちの活動も多様化しており,学校教育の中だけで読書活動を推進していくことには限界がある。そのため,地方自治体によっては,社会教育の面から積極的に取り組んで,一定の効果をあげている事例もある。
   このような点を踏まえると,今後,学校教育の中だけで読書活動を推進するのではなく,社会教育の観点が必要である。


(2)    小学校における読書は重要であり,その充実を図るべきである。それにも増して,中学校,高等学校,大学となるにつれて本を読まなくなる状況を改めるべきである。特に,読書を身に付けさせるためには,学校教育全体の中で,一つの大きな柱として読書を明確に位置付けることが必要である。

   本を読むという行為は,それぞれの個人の自主性に基づいて営まれる優れて個人的な行為であるが,特に若いうちに読書の習慣を身に付けることは極めて重要である。
   読書の習慣を身に付けるためにはある時期苦しい期間があるが,それを乗り越える必要がある。社会人になってから,急に本を読み,調べてまとめるといったような知的活動を求められても対応できない。どれだけ子供の時に,本に親しみ,慣れているかが大切ではないか。


1   学校図書館の整備を計画的に進める。
   ○    学校図書館の整備を,地方自治体が責任を持って計画的に進めていき,国においても,必要に応じ,適切な指導・助言を行っていく必要がある。
   学校の自己点検や評価の項目として,学校図書館の図書の整備状況等を盛り込み,保護者も積極的にかかわりながら評価を行っていくことや本の選定方法を工夫することが望まれる。
   保護者や関係団体などに読書の重要性や読書環境整備の評価の必要性等について理解・協力を求める必要がある。

   学校図書館については,学校図書館図書標準が平成5年3月に定められて既に10年という期間が経過している。また,その間,学校図書館図書整備5か年計画が定められ,現在も毎年130億円という地方交付税措置が講じられている。しかしながら,文部科学省の調査によれば,達成率が3割台でしかない。ここに大きな問題がある。本がない学校図書館では子供たちの声にこたえられず,読書活動を推進する上での基盤そのものに問題があるということになる。
   例えば,小学校では絵本をはじめとして幅広い本をそろえる必要がある。その上,同じ本を相当数用意する必要もあり,本の数が足りないというところがある。中学校の学校図書館においても冊数はあっても古い本が多く,図書購入予算も少ないところがある。総合的な学習の時間を考えてももっと本が必要である。
   この学校図書館図書標準の達成率については,自治体ごとの格差が大きく,また,学校によって,学校図書館図書標準の達成率も全く違う。
   また,学校図書館の利用が増えないのは,「これを読みなさい」という発想での蔵書構成になっていて,子供たちが読みたい本を提供できていないことにもその一因があるのではないかと考えられる。「良い本」「良くない本」という教職員の判断だけではなく,保護者や子供たちの意向も取り入れられるような選定方法を検討することも必要なのではないか。
   こうした中,学校や教育委員会の情報公開,学校の評価などの取組が進められつつあるが,その内容や方法等については大きな課題となっている。
   学校図書館の図書の整備については,学校図書館図書標準の達成率に大きな格差があるという現実を問題点として直視し,地方自治体が責任を持って達成していく必要がある。国においても,必要な指導・助言を行っていくことを考えるべきである。そのためにも,学校や地域で図書が適切に整備されているかを保護者の協力を得て確実に検証し,評価するところから始まるのではないか。そして,保護者の読書に対する意識を改革することによって学校の取組も変わってこよう。保護者の意識改革のためには,青少年への有害図書や放送番組,インターネット等の問題に積極的に取り組んでいる社団法人日本PTA全国協議会などに協力を求めることも必要であろう。
   また,学校図書館では,子供が読みたい本が提供され,そこからレベルアップしていけるような蔵書構成であるべきであり,そのために,子供や保護者がどのように関与すべきかということを考える必要がある。


2   学校図書館における人的体制を整備する。
   ○    読書指導においては,子供の視線で面白さや教養的な雰囲気を感じさせることのできる,魅力的で優秀な人材を集める必要がある。
   民間の優秀な人を司書として活用すること,特に,地域のボランティアの協力等を積極的に求め,人的体制の整備を進めることが望まれる。

   子供たちの読書活動を盛んにするためには,本の充実だけでなく,気軽に相談できるようにするための人的な面での充実が不可欠である。だれもいない学校図書館では子供たちは進んで本に近づこうとはしない。
   それだけに,学校に図書館の専任者がいることが大事である。人がきちんと図書館にいると,休み時間でも子供たちはやってくるようになる。良い指導者がいれば読書活動は進んでいくはずであり,子供を指導できる人がいることが大切である。
   また,平成15年度から12学級以上のすべての小学校・中学校・高等学校に司書教諭が配置されたが,その司書教諭がもっと自由に活動できる時間を作るなどの環境整備も必要である。
   特に,保護者をはじめとする地域のボランティアの力なども借りて,読書に関して子供たちの話し相手,相談相手になるような人が常にいる体制を整備することが必要であると考えられる。


3   学校教育において,「読書」を明確に位置付ける。
   ○    読書を国語科という一教科の中だけでなく,学校を挙げてすべての教科で取り組むべきものとして,明確に位置付けることを考える必要がある。
   総合的な学習の時間で読書の時間を確保することを考えるだけでなく,教師が常に付いた形での朝の10分間読書を行えるよう工夫することが必要である。
   現在の学校においては,図書館に行く時間が確保できないのが現実であり,「読書の時間」を学校教育の中で設定することなども検討することが必要である。
   高校入試や大学入試などで,読書してきたことが評価されるような仕組みを考えることが望まれる。

   現在,読書については,国語科の中で行われるものと認識されている面がある。しかし,読書の重要性と「読書離れ」が盛んに言われる状況を考えた場合,読書に対しては,一教科の中のものとして位置付けるだけではなく,すべての教科にわたって,全校を挙げて取り組むべきものとして明確に位置付けるべきである。
   さらに,小学校・中学校・高等学校の発達段階,学校段階に応じて,読書する力の内実と目指すところを明らかにしないといけないのではないか。こうした中で,「調べるための読書」等も位置付けられてこよう。
   また,中・高生レベルの本を読むことができる力を身に付けるための読書教育が十分になされていないとも考えられる。読書という活動の特質から,自主性・自発性の尊重が重要ではあるが,教育することは必要である。就学前に読書への関心が十分に培われていない児童が存在することも考えると,読書習慣を身に付けさせるためには,学校教育における読書指導が大切であると言える。
   このような点を踏まえると,読書を学校教育の中でどのように位置付けるのか,特に学習指導要領などとの関係についても再検討することが必要なのではないかと考えられる。


4   家庭と連携したきめ細かな読書指導を行う。
   ○    教師が自ら読んだ本の一覧を発信したり,個々の子供たちの状況に応じて読書相談にのったり,常に児童生徒に本について語り掛ける必要がある。
   子供の状況を適切に把握しながら,日ごろの生活の中で,子供たちの読書意欲を高めるために一層の工夫を行っていくことが望ましい。
   家庭との連絡帳等に読書の欄を設け,学校での状況を家庭に伝え,読書活動を奨励することなども一つの方策として考えられる。
   学級通信や面談などの場で教師と保護者とが意思疎通を図っていくことが望まれる。

   学校の状況を毎学期ごとに家庭に知らせる,いわゆる通知表に読書の状況を記述するということも一つの意見としてある。
   ただ,いわゆる通知表については,地方分権の時代であり,地域によってはそもそもないところもあるので,全国一律に実施することは難しい。また,読書については質と量の評価が本当にできるのかという面もあり,読書が「評価の道具」となり,子供たちに逆に読書を強いるなど,逆効果になる可能性もある。
   それぞれの学校で,効果的な方法を考えていただくことが適切である。

   「学校読書調査」によれば,学校や家庭で「本をすすめたり,本の話をしたり,読んでくれる人がいる」と回答した人の割合は,小学校から,中学校,高等学校へ進むにつれて下がる。
   また,「何を読んだらよいか分からない」子供の多さも指摘されているが,こういった読書指導については,学校できめ細かく対応すべきである。
   こうした調査結果を見ると,読書について,直接役に立たなくても面白いという読み方を学校教育の中できちんと教える必要があり,これまでの教育では,読むことの楽しさを教えることに失敗しているのではないかとも考えられる。
   さらに,学校教育においては,なぜ読む必要があるのか,なぜ読んだ方が生きる力になるのかについて考えさせることも必要であろう。
   このように見ると,子供と本を橋渡しする教師の役割が重要であり,教師の読書指導の質が問われているということが明らかである。読書指導における教師の姿勢は極めて重要で,「本を読まない教師は求められていない」と言うこともできる。実際,子供たちの読書意欲を高めるために,掲示や読書通信等を活用した様々な取組も行われている。しかし,すべての教師が積極的に取り組んでいるというわけではない。
   教師自身が本を読んでいることが求められるのは当然であり,教師が自らの読書経験を踏まえながら,個々の子供たちの置かれている状況やそれぞれの考え方,感受性等にきめ細かく配慮した読書指導を適切に行うことが求められる。
   例えば,一律に読書感想文を強制するなど子供が負担を感じてしまう指導では,物語の中に入り込めず読書を楽しめない。子供の状況を把握し,意欲を出させるための取組が必要である。教師が子供の読書状況をきちんと把握してきめ細かい指導につなげ,学校と家庭との意思疎通を図る工夫が必要である。学校と家庭との連携は大切であり,子供の励みにもなる。現在でも,学校により,教師によっては,子供たちへの読書指導に加えて,保護者に対する連絡と意思疎通の取組が進められている。
   このような学校と保護者との意思疎通を進めるための取組は読書に限らず推進していくべきものと考えられるが,特に読書については,保護者とともに教師の読書に対する意識改革につながり効果的である。それぞれの学校や教師の判断で,また,子供たちの置かれている状況を踏まえて,積極的に取り組まれるべきではないかと考えられる。
   なお,「いわゆる通知表に読書の状況を記述する」という意見については,賛否両論あり,今後,国語分科会において引き続き検討する必要がある。


5   教科書や副読本等の内容を子供の読書活動に結び付ける。
   ○    副読本等という形で,大人向けの本格的な作品を小・中学校に取り入れることも検討する必要がある。
   種々の読書活動の助けになるように,教科書に掲載する作品数を増やすことや別冊の副読本を用意することを検討することが望ましい。

   現在,学習指導要領に合わせて,教科書に盛り込まれる内容も精選されてきている。しかし,現在,学校教育で使われている教科書等が子供の読みたいという気持ちにこたえているのか,また,教科書等が現在収録している分量・内容で本が読めるようになるのかといった面から問題が指摘されている。
   教科書等で触れた作品をきっかけにして子供たちが自ら新たな本を手に取るようになることもある。教科書等に載せる作品については,時代に対して少し後向きでも良い。ルビを振れば小学生でも読みたくなる作品があり,著名な作家の作品に慣れさせることも重要である。また,授業の中で,比べ読みやブックトークなどの読書活動を取り入れると,子供も本が好きになることがある。子供たちが自ら本を手に取る気持ちになるようにする工夫や文豪と言われる人の作品でも読むことができたという自信を持たせるための工夫なども含めて教科書等についてはもう一度見直す必要があるのではないかと考えられる。


6   出版関係など民間関係団体への働き掛けなどを更に進める。
   ○    出版関係の協力を得て,著名な作家に読書経験を書いてもらい公表するなど読書推進運動の展開への働き掛けなどを検討する必要がある。
   積極的にルビを活用することで,漢字への抵抗感をなくしたり,想像を広げる材料にしたりするということを呼び掛けることも検討する必要がある。

   高校生向けの本の出版が年に150点ほどという現実があり,中学校,高等学校と進むにつれて本を読まなくなる背景には,そもそも読む本がないという面もあると考えられる。
   また,高等学校段階では,古典への入門となるリライトされた古典のように,本格的な作品への橋渡しとなる読書入門として読ませる本がないのも実態である。
   こうした中・高生が読む本がないことについては,出版社の問題だけでなく,書き手の問題もある。子供たちのレベルにこたえる文筆力を持つ書き手が出てくるためには,読む中・高生が少しでも増えて需要が生まれる必要がある。そのために,学校でも読書活動に積極的に取り組んでいくことを明らかにすることが大切である。そうすれば,出版社も関心を持ち,書き手も出てくるはずである。
   また,中・高生が積極的に読書活動に取り組むことができるよう,関係団体との連携協力の下,出版社や作家など関係者への働き掛けも進めるべきであると考えられる。


3   読書活動以外の国語力向上のための方策について

(1)   啓発活動

   「審議経過の概要」にもまとめられているが,国民が国語の重要性を認識し,国語を大切にする意識を共有するために,国民運動の展開や講演会等の啓発活動を更に積極的に進めることは重要である。
   その際,年齢,地域,職業などの違いを超えて自発的に交流し,朗読,演劇,言葉遊びなどを通じて国語(言葉)の魅力や可能性を,検討し楽しみ合う場を作ることを積極的に支援すべきであると考えられる。
   現在も,文化庁では,「「言葉」について考える体験事業」,「国語施策懇談会」,「国語問題研究協議会」,「国語に関する世論調査」等,独立行政法人国立国語研究所では,「「新ことばシリーズ」の作成・配布」,「「ことばビデオ」シリーズの作成・配布」等の事業を積極的に推進しているが,これらは,今後とも継続し,発展可能なものは拡充して,なお一層進めていくべきである。
   その際,事業の成果が多くの人に共有されるよう,さらに,一過性に終わらないような取組が必要である。
   また,地方自治体で啓発活動に取り組んでいる事業もあり,国語力に資するものについては国として支援することを検討すべきである。
   既に取り組まれている事業の推進のほかに,国語力に資する啓発活動という意味で,更に次のような意見も出された。

   ○    「言葉」に関する事業の企画段階から,「言葉の専門家」や「言語活動にかかわる団体」に長期にわたって助言してもらう制度を検討してはどうか。
   「長」(校長,図書館長,教育長など)の積極的な関心や意欲を引き出す方策を検討してはどうか。
   「言葉」,「国語」,「国語力」への関心や意識を高めるために「言葉の日」あるいは「言葉記念日」(仮称)を設定し,「言葉週間」を設け,それぞれの地方で「言葉」に関する取組を行うきっかけを作ることを検討してはどうか。

(2)   公共の場における言語環境の整備等

   「審議経過の概要」にも盛り込まれているが,国語に与えるマスコミの影響についてどう考えていくべきか,しっかり考える必要がある。テレビが与える影響は,子供だけでなく大人も含めて大きいはずである。もともと活字を排する形で出てきたテレビだが,一方で,テレビという媒体を介して国語の重要性を打ち出すことも重要であると考えられる。テレビの影響やテレビとの関係等については,今後も検討を進める必要がある。例えば,国語力向上に貢献している番組やマスコミの取組などを紹介し,表彰することなども考えてはどうかという意見も出された。
   また,カタカナ語なども含めた官公庁の各種文書の在り方や公共の場でのアナウンスなどについても,今後検討する必要がある。


4   目指すべき国語力の具体的目安について

   国語力の具体的目安について読書活動等小委員会では議論を行った。
   例えば,読書という観点から,発達の時期を考え,具体的な書名も挙げて定量的な読書の基準を設けてはどうかという意見があったが,作品にはそれぞれ思想があり,例えば,名作と言われる作品でも評価が分かれるはずで,作品にはそれぞれ賛否両論ある。読書は基本的にスタンダードとは相いれないものであり,これを読めば良いという特定の作品を基準と決めるのは難しいという意見が強かった。
   また,新聞を読む力,新聞の投書欄に出す文章を書く力など,新聞を一つの目安にして論じることについては,一つの観点であるが,新聞はその時代の国民の国語力に合わせて作られており,ものを書く人たちも読む人のレベルに合わせて書いているはずであるから,国語力との関係を考えるのは難しいのではないかという意見が出された。
   さらに,必要とされるあいさつができる,話し言葉で相手に論理的に意思が伝えられる,意見の違う相手を傷つけずに話し合える,意思が意図どおりに伝わる手紙が書ける,他人の話を誤りなく聞けるなど,様々な意見も出された。
   この今後目指すべき国語力の具体的目安の問題については,大変難しい問題であり,現在のところ,結論を得るに至っていない。また,国語教育等小委員会でも議論が行われているところであり,今後,文化審議会国語分科会全体で更に議論を深める必要があると考えられる。


読書活動等小委員会所属委員名簿

  阿刀田         高     小説家

  臼   井   敏   男   朝日新聞論説副主幹

  岡   部   観   榮   臼杵市教育委員会教育長

甲   斐   睦   朗   独立行政法人国立国語研究所長

  勝   方   信   一   読売新聞社東京本社論説委員

  工   藤   直   子   詩人・児童文学作家

  齋   藤         孝   明治大学教授

舘   野   俊   則   埼玉県立熊谷西高等学校長

  手   納   美   枝   (株)デルタポイントインターナショナル代表取締役

  辺   見   じゅん   作家・歌人

  山   根   基   世   NHKエグゼクティブ・アナウンサー

注)◎は主査,○は副主査。

-- 登録:平成21年以前 --