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重要文化財(建造物)の指定について

平成15年4月
文化庁

報道発表資料

重要文化財指定(建造物)

文化審議会答申

   文化審議会(会長   高階秀爾(たかしなしゅうじ))は,4月18日(金)に開催される同審議会文化財分科会の審議・議決を経て,新たに,8件の建造物を重要文化財に指定するよう文部科学大臣に答申する予定である。
   この結果,近日中に行われる官報告示を経て,重要文化財(建造物)は 2,238件   3,806棟(国宝を含む)となる予定である。指定物件の詳細については別紙参照のこと。

  今回の指定の意義・特筆すべき事項

   今回新たに指定される建造物(予定)のうち,東京駅丸ノ内本屋(ほんや)は,首都東京の中心に位置し,「赤レンガの駅舎」として国民に広く親しまれてきた歴史的建造物である。煉瓦造による建築としては最大級の規模を有し,わが国の明治・大正期を代表する建造物のひとつである。
    今回の指定は,都市再生が進みつつある中心市街地における歴史的建造物の保存活用のあり方に,新たな方向を示す画期となるものといえる。

〈個別解説凡例〉

番号   特筆すべき事項
        名   称 員数 (種別)
      複数棟指定の場合の建造物の名称,土地 * 等    
  所          在          地 所  有  者
*  建造物と一体をなして価値を形成している土地をあわせて指定するもの。



1   東日本で唯一,完備した構成の近世能舞台
  はくさんじんじゃのうぶたい    
        白山神社能舞台 1棟         (近世以前/その他)
                岩手県西磐井郡平泉町
白山神社

   白山神社は中尊寺鎮守のひとつで,境内の北方にある。白山神社の神事能(じんじのう) は,中尊寺一山の僧侶が伝習して行われた。現存する白山神社能舞台は,嘉永2年(1849)の焼失後,同6年(1853)に竣工したものである。
   舞台及び楽屋は東西に長い入母屋造(いりもやづくり),茅葺で,西半を舞台,東半を楽屋とする。この北面につく橋掛(はしがかり)は両下造(りょうさげづくり),鉄板葺の建物で,北東に延び,社殿側にある鏡の間に接続する。鏡の間は,西面は入母屋造,東面は寄棟造(よせむねつくり)の茅葺である。
   白山神社能舞台は,正統的かつ本格的な規模と形式の舞台をはじめ,橋掛,鏡の間,楽屋からなり,完備した構成の近世能舞台遺構としては東日本で唯一といえ,高い価値がある。
   また,古刹中尊寺において連綿と続く芸能の場としても,貴重な遺構である。

○指定基準=歴史的価値の高いもの,流派的又は地方的特色において顕著なもの


2   多彩な煉瓦積技法を駆使した稀少な記念堂
  せいしどう    
        誠之堂    1棟       (近代/その他)
                埼玉県深谷市
深谷市

   誠之堂は,渋沢栄一の喜寿を祝い,第一銀行の運動場及び保養施設の清和園(せいわえん)に建設された記念堂である。大正5年3月に起工,同年11月12日に竣工開館した。設計は清水組技師長の田辺淳吉(たなべじゅんきち)である。平成10年から11年にかけて,大ばらし解体のうえ,現在地に移築復原された。
   煉瓦造,平屋建,屋根は天然スレート葺である。平面は濡縁(ぬれえん)(ヴェランダ)付きの大広間を中心として,次ノ間,化粧所,玄関などの構成になる。
   誠之堂は,外観の基調を英国の田園趣味に基づいたものとし,多彩な煉瓦積技法と自在な意匠とにより,端整かつ雅趣ある建築作品に仕上がっている。
   大正期の名建築デザイナーとされる田辺淳吉の代表作のひとつであり,大正建築の特質の一面である美術工芸運動的傾向を代表する作品として,重要である。

○指定基準=意匠的に優秀なもの


3   煉瓦造で最大規模,首都東京を象徴する建築
  ほんや    
        東京駅丸ノ内本屋    1棟 (近代/その他)
           東京都千代田区 東日本旅客鉄道株式会社

   東京駅丸ノ内本屋は,皇居から東へ一直線に延びる通称行幸通りの正面に位置している。
   明治41年3月25日着工,大正3年12月14日に竣工した。設計は辰野金吾で,辰野葛西事務所によって実施案がまとめられた。
   南北折曲り延長約335mに及ぶ長大な建築で,中央棟の南北に両翼を長く延ばし,建設当初は,地上3階建であった。建築様式は,いわゆる辰野式フリー・クラシックの様式になる。
   東京駅丸ノ内本屋は,わが国鉄道網の起点となる停車場の中心施設であるとともに,明治の市区改正計画に基づき建設された首都東京を象徴する貴重な建築である。
   煉瓦を主体とする建造物のうち最大規模の建築で,当時,日本建築界を主導した辰野金吾の集大成となる作品として,価値が高い。

○指定基準=意匠的に優秀なもの,歴史的価値の高いもの


4   わが国に現存する最古の近代吊橋
  みのはし    
        美濃橋    1基    (近代/その他)
                岐阜県美濃市 美濃市

   美濃橋は,美濃市街地の北部,小倉山(おぐらやま)の西方を長良川が湾曲して流れる地点に架かる吊橋(つりばし)である。
   岐阜県技師戸谷亥名蔵(とたにいなぞう)を中心に建設が進められ,大正4年8月起工,同5年8月に竣工した。橋長113m,支間116m,幅員3.1mの単径間補剛(たんけいかんほごう)吊橋である。
   両岸に据えられたアンカーレイジに,鉄筋コンクリート造の主塔(しゅとう)から吊るされた主ケーブルを碇着(ていちゃく)し,吊ケーブルで支持された橋桁(はしげた)を鉄骨トラスで補剛する。
   美濃橋は,わが国に現存する最古の近代吊橋として,橋梁建設史上,高い価値がある。近代吊橋の要素を構造躯体全体に備え,建設当時わが国で最大級の支間(しかん)を実現した,大正期を代表する吊橋として,重要といえる。

○指定基準=技術的に優秀なもの,歴史的価値の高いもの


5   本格的で装飾も優れた西日本屈指の近世能舞台
  かすがじんじゃのうぶたい    
        春日神社能舞台 1棟   (近代以前/その他)
                兵庫県篠山市 春日神社

   春日神社は,篠山城(ささやまじょう)の北約350mの地にある。
   現存する能舞台は,篠山藩主第13代の青山忠良(ただなが)の寄進により,文久元年(1861)に建立されたものである。
   入母屋造(いりもやづくり)の舞台は方形で,南に刎高欄付(はねこうらんつき)の脇座(わきざ),東に後座(あとざ)を設ける。この北には橋掛(はしがかり)が北東に延び,北側にある鏡の間及び楽屋に接続する。橋掛は両下造(りょうさげづくり),鏡の間及び楽屋は切妻造(きりづまづくり)で,南側が一室の鏡の間,北側が二階建の楽屋になる。
   春日神社能舞台は,正統的な格式に加え,床下に音響施設の大甕(おおがめ)を具備した構成になり,西日本でも屈指の近世能舞台として,高い価値がある。
   造営の経緯、大工、絵師などが明らかとなる歴史史料,舞台用装置などが残ることも重要で,地方における近世芸能文化の展開を知る上で,貴重な遺構といえる。

○指定基準=意匠的に優秀なもの,歴史的価値の高いもの


6   近世たたら製鉄の鉄師頭取の大規模住宅
  さくらいけ                                     にたちょうかみあい   おもや
        櫻井家住宅(島根県仁多郡仁多町上阿井) 主屋
ほか8棟
(近世以前/民家)
  かべや                                  かべやりんさん
  島根県仁多郡仁多町   財団法人可部屋集成館・有限会社可部屋林産

   櫻井家住宅は,島根県東部仁多町の南端部の山間にある。
   江戸前期に屋号を「可部屋」と称して鉄山業(てつざんぎょう)を営み,宝暦5年(1755)には鉄師(てっし)株仲間の代表である鉄師頭取(とうどり)を松江藩より拝命し,鉄山業を取り仕切った。
   主屋(おもや)は元文3年(1738)の竣工,古蔵(こぐら)が少し前の享保20年(1735)の建設,その他の建物は主屋より遅れて順次建造された。主屋に接続する座敷は,藩主御成(おなり)が行われるようになった19世紀初期の増築である。
   櫻井家住宅は,近世におけるたたら製鉄の中心地奥出雲にあって,狭隘(きょうあい)な谷間に鉄師頭取の屋敷構え全体を伝える遺構として貴重である。
   主屋は,この地方の民家のなかでもひときわ大型で,上質なつくりになり,保存も良好である。御成の座敷は,江戸時代後期の数寄屋風書院の好例を示している。

○指定基準=意匠的に優秀なもの,流派的又は地方的特色において顕著なもの


7   別子銅山を支えた実業家の先駆的な近代和風住宅
     ひろせけ おもや  
        旧広瀬家住宅    主屋ほか6棟   (近代/住居)
                愛媛県新居浜市 新居浜市

   旧広瀬家住宅は,住友家(本店)の初代総理人(そうりにん)を務めた広瀬宰平(さいへい)の建設した住宅である。明治20年代に移築・新築併せて全体が整備された。
   敷地の東側に表門を開き,その西奥に主屋が建ち,これに続いて新座敷,離れを設けるほか,敷地周囲に乾蔵(いぬいぐら),金物蔵・米蔵,門番所を配している。
   2階建の主屋は,2階座敷を望煙楼(ぼうえんろう)と称し,新座敷は,大工棟梁八木甚兵衛(やぎじんべえ)の手になり,いずれも数寄屋風の意匠を凝らした上質なつくりである。
   旧広瀬家住宅は敷地内の建築がほぼすべて残り,改造もほとんどなく,明治中期の大規模和風住宅の姿を今日に伝える遺構として貴重である。
   主屋及び新座敷は,眺望を意識した部屋を複数持つなど,住宅機能のみに留まらず迎賓館としての役割を兼ね備えた構成も特徴的であり,高い価値がある。

○指定基準=意匠的に優秀なもの,流派的又は地方的特色において顕著なもの


8   技術的完成度が高い現存最古の昇開式可動橋
    しょうかいきょう       
        旧筑後川橋梁(筑後川昇開橋)   1基   (近代/その他)
  もろどみちょう  
  福岡県大川市・佐賀県佐賀郡諸富町    大川市・諸富町

   旧筑後川橋梁は,有明海に注ぐ筑後川河口より約8.5km上流に位置する昇開式の可動橋(かどうきょう)である。佐賀線の建設に際して,筑後川の舟運に配慮し,可動橋として計画され,昭和7年4月に起工,同10年5月に竣工した。
   橋脚及び両端部橋台の下部構造と,可動桁,吊上塔(つりあげとう)及び控えトラス桁,さらにその両側に配した鈑桁(ばんげた)等の上部構造からなり,全体で507.2mと長大である。
   旧筑後川橋梁(筑後川昇開橋)は,わが国に現存する最古の昇開式の可動橋として,貴重なものである。
   大規模な構造躯体と技術的完成度の高い可動装置の設計及び施工を,専門を異にする技術者らの高度な協同作業のもとに実現した,鉄道可動橋建設技術の確立を表徴する遺構として,重要といえる。

○指定基準=技術的に優秀なもの,歴史的価値の高いもの




国宝・重要文化財(建造物)指定基準

    昭和26年5月10日文化財保護委員会告示第2号
第1次改正   昭和30年5月25日文化財保護委員会告示第29号
第2次改正   昭和50年11月20日文部大臣告示第153号
第3次改正   平成8年2月9日文部大臣告示第6号


重要文化財

  建築物、土木建造物及びその他の工作物のうち、次の各号の一に該当し、かつ、各時代又は類型の典型となるもの
  (一)意匠的に優秀なもの
  (二)技術的に優秀なもの
  (三)歴史的価値の高いもの
  (四)学術的価値の高いもの
  (五)流派的又は地方的特色において顕著なもの

国宝
  重要文化財のうち極めて優秀で、かつ、文化史的意義の特に深いもの


(参考)国宝・重要文化財(建造物)指定数(答申・官報告示後)

  建造物種別 国宝 重要文化財
件数 棟数 件数 棟数






神社建築 36 58 555 1,102
寺院建築 152 158 834 1,086
城郭建築 8 16 52 234
住宅建築 12 20 93 148
民家建築 0 0 320 659
その他 3 3 192 261
小計 211 255 2,046 3,490







宗教建築 0 0 15 15
住居建築 0 0 54 133
学校建築 0 0 31 56
文化施設 0 0 24 34
官公庁舎 0 0 19 24
商業・業務 0 0 14 15
近代化遺産 0 0 16 16
その他 0 0 19 23
小計 0 0 192 316
合計 211 255 2,238 3,806

注: 国宝は重要文化財の内数
近世以前と近代の分類は機械的に明治元年で区切る
近代化遺産の単位は「構」

(文化庁文化財政部伝統文化課)

-- 登録:平成21年以前 --