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第4章 著作権教育小委員会における審議の経過

平成15年1月24日
文化審議会

1  検討の内容
  
  著作権教育小委員会は,「著作権教育」の充実について検討するため設置された。
  「著作権教育」の充実について,「知的財産戦略大綱」及び「知的財産基本法」には,それぞれ次のように記述がある。
  
【知的財産戦略大綱】
(総合的普及啓発)
  2002年度から,広く国民に対し,ネットワークを利用した情報提供など,様々な方法により,知的財産に関する知識と意識の普及を図るための総合的な事業を実施する。

(学校教育)
  2002年度以降,知的財産意識の啓発,創造性の重要性に関する教材,副読本の提供など,初等・中等教育における知的財産に関する教育の推進を図るとともに,教職員に対する知的財産制度のセミナーの実施等により,知的財産に関する教育手法の研究等,教育者の知的財産制度に関する知識向上を図る。
(見出しは本小委員会において付加)

【知的財産基本法】
(教育の振興等)
    第二十一条  国は,国民が広く知的財産に対する理解と関心を深めることにより,知的財産が尊重される社会を実現できるよう,知的財産に関する教育及び学習の振興並びに広報活動等を通じた知的財産に関する知識の普及のために必要な措置を講ずるものとする。

  著作権教育小委員会では,これらに示された政府全体の方針について必要な施策の検討を行うこととし,具体的には次のような事項について検討を行った。


【検討事項】
○文化庁が「直接実施」すべき著作権教育事業の在り方
  (著作権教育の「サプライヤー」としての役割)
      ●対  象
      ●手  法
      ●頻  度    など

○著作権教育を実施する関係機関・団体等への「支援」の在り方
  (著作権教育の「プロモーター」としての役割)     
      ●関係機関・団体等が果たすべき役割を踏まえた支援策
      ●具体的な支援の手法(教材・資料等の開発・提供,指導法の開発,指導者の育成・研修等)  など

○著作権教育を実施する関係機関・団体間の「連携」の促進の在り方
  (著作権教育の「コーディネーター」としての役割)
      ●関係者間の役割分担
      ●情報交換・協議等の場の整備
      ●共同事業の推進  など  

*留意事項
  ・ 実際の教育現場における現状とニーズの把握に努める
  ・ 「全ての人々に必要なこと」と「一部の人に必要なこと」の区別など,目標を明確にする
  ・ 必要に応じて,「子どもを対象とする事業」と「大人を対象とする事業」を区別する
  ・ 「無断でしてはいけないこと」に関する教育に加え,「適切な契約を自ら行える能力やマインド」を養う教育に配慮する
  ・ 「モラルの向上」を実現することの可能性(具体的な手法等)を視野に入れる

  
2   検討の結果

  著作権教育小委員会は,平成14年6月21日に第1回を開催し,7回にわたり検討を行った。
  文化審議会著作権分科会においても,また,前身の著作権審議会においても,著作権教育という課題について,これを専門に検討する小委員会が設けられたのは今回が初めてである。
  この課題について集中的に検討を行う必要が生じてきた背景には,著作権というものが「すべての人々」に関わる問題になってきたという変化がある。我が国ではこれまで,産業界等で広く利用される著作物等について,一部の業界の関係者のみがそれらを「創作」し「利用」するという状況があったため,著作権について知識や意識を持つべき人々も限定されていた。
  しかし近年,コピー機やデジタル録音録画機器などの普及を始めとして,パソコンやインターネットなどに代表される情報技術の発達・普及等により,著作物の「創作手段」「利用手段」が爆発的に普及し,一部業界のプロの人々に限らず「すべての人々」が「創作者(権利者)」「利用者」になる時代を迎えた。このため,「すべての人々」にとって,著作権に関する一定の知識等が必要になっており,平成14年度から実施されたいわゆる新学習指導要領においても,中学校と高等学校において著作権教育を行うことが明記されている。
  このように,著作権に関する教育や普及啓発事業を展開していく必要性は,急速に高まりつつあるが,そのような活動は,それらが行われる「場」だけを考えても,学校,家庭,地域,職場など広範な広がりがあり,想定される活動の「形態」や「目的」なども,極めて多岐にわたると予想される。また,それらの事業や活動に対する「国の関わり方」ということについても,基本的な考え方から個々具体の事業や支援の在り方に至るまで,検討すべき課題は極めて広範にわたっている。
  このため,著作権教育全般の問題を初めて議論した平成14年度においては,著作権教育によって「目指すもの」について提言するとともに,今後著作権教育小委員会において具体的に検討していくべき課題の洗い出しを行い,それらの課題について,現場の関係者からのヒアリングや委員間の意見交換を行った。平成14年度においては,便宜上前記のような検討事項を設定したが,検討すべき課題を整理・分類する上での視点や角度についても今後引き続き審議し,必要に応じて修正や追加を行っていく予定である。
  平成14年度はこのような観点からの検討を行ったため,その検討の結果は,今後実施すべき施策の一覧や内容を網羅的に示したものとはなっていないが,ここに示された意見等を参考として,直ちに実施できる施策については早急に具体化がなされることが期待される。


  著作権教育が目指すもの

  多くの人々が著作物を「創作」「利用」するような時代とは,すべての人々が「権利者」にも「利用者」にもなる時代であり,著作権に関する教育も,単に「違法行為を行わない(権利侵害者とならない)ための知識の修得」ということに止まらず,適切な契約等を通じて「権利者」として自らの権利を正しく行使したり,新しいビジネスの開発などにより「権利者」「利用者」として著作権制度を適切に活用したりすることができるよう,必要な知識・技能・態度等を広く普及させることを視野に入れるべきものである。
  すなわち,著作権に関する教育が目指すべき目標は,「社会のすべての人々が,著作権について,各人にとって必要な知識や意識を持ち,知的創造活動の所産である著作物を創ったり,既にある著作物等の利用が適切に促進されること」である。
  こうした基本的な目標を達成するためには,広く多くの人々を対象とした著作権教育というもの自体が,まだ緒についたばかりのものであるということを踏まえる必要がある。すなわち,今後学校で実施される予定の著作権教育を経ずに,既に社会で活動している多くの人々についても,基礎的な部分から著作権教育を実施していく必要があり,現在の過渡期においては,例えば年齢毎に段階を追った方策では不十分な場合もある。
  さらに,日常生活や仕事において必要とされる知識等の内容やレベルについての多様性に関しても留意する必要があり,高度な内容をすべての人々に教えようとして「著作権は難しい」という偏見を助長したり,逆にすべての人々に必要な内容が欠落したりすることのないよう,十分な注意が必要である。
  例えば,既に社会で活動する人々を含めた「すべての人々」を視野においた場合の具体的な目標や,特に学校教育と大学教育が果たすべき役割を考えた場合の具体的な目標については,次のようなものが考えられる。


(1) 「すべての人々」を視野においた「目標」

1   すべての人々について達成すべき基本的な目標
〈利用者として〉
  ・ 「無断でしてはいけない行為」について知り,権利者の了解を得て利用することができること
  ・ 「引用」や「私的使用のためのコピー」など基本的な例外について知り,これに基づいた適切な利用ができること
〈権利者として〉
  ・ 自分が持っている権利について知っていること
  ・ 利用内容やその効果を十分に理解した上で「了解」を与えることができること

2   著作物の創作・利用を仕事として行う人々について達成すべき目標
  ・ 関係する分野の著作物の創作や利用形態について,「権利」や「例外」などの「法律ルール」に関する知識を持っていること
  ・ 関係する分野の著作物の創作や利用形態について,適切な「契約」やビジネスでの活用等ができること


(2) 学校教育における著作権教育

  学校における著作権教育の基本的な目標は,初等中等教育の修了までに前記(1)の1の目標を達成する必要がある。このため,すべての児童生徒の発達段階に応じ,例えば次のような段階的目標を設定することが考えられる。

1   自分が創ったものに関して「他人からされたくないこと」などを考えさせ,人々が創ったものの利用について「決まりを作ること」の必要性を理解させること
2   現行の法律ルールに基づき,「無断でしてはいけないこと」などの「決まり」の具体的内容を理解させること
3   自分が創ったものについては「無断で利用されない」という権利を持つことを理解させ,他人に「了解を与える」ことについて,自ら判断し意思決定ができるようにする

(3) 大学における著作権教育

  大学においては,既に初等中等教育において前記(1)の1の目標が達成されていることを前提として,さらに高度な教育を実施することが望まれるが,その目標としては,次に例示するように,第一に,大学レベルの教養教育的な側面があり,第二に,前記(1)の2と関係する専門教育的な側面があると思われる。

1   教養教育
知的財産権に関する制度全体の概要と,その中における著作権の位置づけや意義について理解すること
国際的な制度の内容・動向などについて理解すること

2   専門教育
〈工学部等の技術に関する専門教育〉
「技術的保護手段」「権利管理情報」など,技術と緊密に関わる法制や契約などについて,高度な知識・技能を持つこと
〈法学部やいわゆる「ロースクール」(法科大学院)などでの教育〉
著作権法制全般について高度な知識を持つとともに,「契約事務」「訴訟実務」等について高度な知識・技能を持つこと
〈教員・司書などの専門教育〉
各分野に関する権利制限規定や契約などについて,高度な知識・技能を持つこと


  共通の留意事項

  著作権教育に関する事業・活動は,これまでも,文化庁,関係団体,学校等によって実施されてきたが,「すべての人々」が「権利者」「利用者」になる時代を迎え,さらに広範・強力にこれを展開していくことが必要になっている。
  しかし,既に述べたように,そのような活動については,今後様々な活動が活発化するに従い,その「目的」「場」「形態」などが極めて多岐にわたる状況になることが予測されるため,議論の混乱を防ぐために,著作権教育小委員会では,様々な著作権教育事業について「共通して留意すべき事項」を整理した。その概要は,次のとおりである。

  
(1) それぞれの事業・活動の「目標」を明確にしておくこと
  著作権に関する知識や意識は「すべての人々」にとって必要なものとなってきているが,日常生活でパソコンやインターネットなどを使うだけの人々が存在する一方で,仕事として高度な著作権契約書を自ら作成しなければならない人々も存在するなど,既に述べたように,各人が必要とする知識等の内容やレベルは,それぞれ異なっている。
  このため,様々なニーズに応じた多様な著作権教育事業が企画・展開される必要があるが,それらのすべてについて,「何を目標としているのか」「誰のどのようなニーズに対応しようとしているのか」ということを,常に明確にしておくことが必要である。

(2) 現状の把握と事業の効果の「評価」を適切に行うこと
  著作権教育に関する事業や施策の企画・実施に当たっては,まず,人々が現在持っている知識等のレベル,著作権教育に対する多様なニーズ,既に行われている著作権教育の内容など,現状を適切に把握することが重要である。特に,専門的な分野の教育事業で起こりがちな,「人々が知りたいこと」よりも「専門家が知らせたいこと」を教えようとするという事態を避けるためには,学習者のニーズを含む現状の把握が必要である。
  また,関係する事業等を実施した後には,それが元の現状をどのように変えたか(どのような効果があったか)ということを適切に把握し,「評価」(目標と結果の比較)を適切に行うことが必要である。事業を行った結果は,次の段階に向けての現状となるものであり,毎年定例的に行っている事業がいつの間にか人々のニーズと乖離しているといった事態を防ぐためにも,こうした評価を行うことが重要である。

(3) 「広がり」のある効果を目指すこと
  環境,情報,国際,福祉など,新しく生じた課題(生涯学習の分野で「現代的課題」と呼ばれているもの)に関する教育事業においては,教育活動・学習活動の効果が「点」に止まってしまうことが少なくないということが,多くの事業に共通した問題であった。このため,著作権教育についても,関係する事業の効果が,活動に参加した個人・学校・企業のみに止まらないよう,その「広がり」に留意することが重要である。
  例えば,個別の学校や企業を対象とした事業を行うだけでなく,地域全体をとらえて,関係する事業を集中的に,かつ相互の有機的連携を持って実施していくことや,一定の学習を終えた人々が核となってさらに普及活動を自発的に進めていくことなどが望まれる。約90万人の教員を対象としたパソコン研修については,まず核となる教員の研修を行い,それらの教員が各自治体や学校で講師の役割を果たしていくシステムがとられている。すべての人々が実際に参加する事業を全国的に展開することは極めて困難であり,こうした工夫が必要である。


  文化庁による関係施策の在り方

  前記の留意事項を念頭に置きつつ,平成14年度においては,新たに様々な著作権教育事業を企画しつつある文化庁の役割を中心に,検討を行った。
  基本的に多様で広範なものである著作権教育というものについては,文化庁が果たすべき役割だけをとっても極めて多くの側面や検討課題があるが,平成14年度においては,それらを便宜上次のように分類して検討を行った。

  1   文化庁が「直接実施」すべき著作権教育事業の在り方
(サプライヤーとしての役割)
  2   著作権教育を実施する関係機関・団体等への支援の在り方
(プロモーターとしての役割)
  3   著作権教育を実施する関係機関・団体間の連携の促進の在り方
(コーディネーターとしての役割)

  それぞれの側面について,著作権教育小委員会において各委員から表明された意見は,  次のように整理される。

(1) 文化庁が「直接実施」すべき著作権教育事業の在り方

広く一般に対する情報提供の拡大
  これまでも行ってきた「著作権講習会」等は引き続き実施することが望ましいが,全国民の参加を実現することは不可能であるため,インターネット等を活用して,子どもたちも含む多くの人々に,それぞれのニーズに応じた情報を提供できる方策(例えば,多様な人々からの様々な質問にインターネットを通じて答える「バーチャル著作権ヘルプデスク」の構築)を実施する必要がある。
  また,インターネット等の活用だけでなく,マスメディア等を通じた情報提供についても検討していくべきである。

講習会修了者等を通じた普及啓発の拡大
  講習会等の著作権教育事業に参加した人々は,既に一定の知識等を有しており,また,共通するニーズを持つ人々との接触もあると考えられるので,こうした人々に各職場・地域等での普及啓発の核としての役割を果たしてもらえるよう,(例えば,「著作権指導員」の制度化など)適切な方策を企画・実施する必要がある。

多様な教育プログラムの開発
  著作権教育事業については,実施主体,目的,場,学習者等について,今後ますます多様化が進むと思われることから,それぞれのニーズに対応した多様な教育プログラムを検討していく必要がある。特に,企業関係者を対象とした著作権教育のためのプログラムの開発は遅れており,ニーズの多様性に配慮しつつ,企業関係者向けのプログラムを開発していく必要がある。

(2) 著作権教育を実施する関係機関・団体等への「支援」の在り方

  既に述べたように,文化庁が直接実施する「著作権講習会」などの事業は,すべての人々の参加を得ることはできない。このため,学校を始めとして,社会の中で著作権に関する教育事業や普及啓発事業を実施する関係機関等への「支援」ということが,文化庁による施策として極めて重要である。
  特に学校については,平成14年度から実施されているいわゆる新学習指導要領により,中学校・高等学校において著作権に関する教育を行うこととされているが,実際に指導に当たる教員について,著作権に関する知識や意識が十分ではないという状況にあり,教員研修等において著作権がより広範に取り上げられる必要がある。

1   学校における著作権教育への支援

児童生徒に対する指導法の開発と教員への提供
  新学習指導要領等に基づき,各学校の教員が適切な著作権教育を実施できるよう,適切な指導法の開発を行うとともに,これを教員研修等を通じて広く普及させることが必要である。なお,指導法の研究に当たっては,児童生徒の発達段階への配慮が不可欠であり,例えば,基本的には「ルール」である著作権について,感覚として身につけさせることや,単に知識を教えるだけでなく児童生徒に考えさせるような配慮を伴う指導法が必要である。

教材等の開発・提供
  指導法の開発・普及とともに,著作権教育について特に不足していると言われる教材や資料について,適切なものを開発して提供することが必要である。こうした教材等については,その活用方法も合わせて開発・提供することが重要であるが,学校現場における著作権教育の多様性にも配慮し,教員等がそれぞれの創意工夫によって活用のしかたを変えられるような,柔軟性を持ったものが必要である。例えば,マンガを用いた読本やクイズ,ゲームの活用などといったことが一例として考えられる。

実践的研究の実施と事例の提供
  学校現場においては,指導法や適切な教材等の開発・普及が十分でないこと等により,児童生徒への実際の指導について,実践的な事例を求める声が高い。このため,既に実施されている著作権教育に関する活動事例の収集を行い,参考事例として提供を行う必要がある。さらに,指導法や教材等に係る開発の成果を,例えば「研究指定校」的なものにおいて集中的に活用し,実践的な研究や事例の蓄積を行うとともに,そうした事例や成果を広く全国の学校に提供していくことが必要である。

2   大学における著作権教育への支援

  大学においては,極めて多くの著作物等が創作・利用されているが,教育については大幅な権利制限が適用されること等を背景として,我が国の大学ではまだ著作権に対する関心は非常に低い現状にある。
  さらに,学習指導要領の存在や組織的な研修事業などにより,特定の情報や方向性を学校現場に伝達することが比較的容易な小・中・高等学校等とは異なり,大学の場合は大学の自主性を最大限尊重する必要があることから,大学における著作権教育への支援については,その具体的な方策について,著作権教育小委員会において更に引き続き検討することが必要である。
  平成14年度における検討では,大学における著作権教育への支援について,一般的な議論を行ったが,その中では次のような視点が示されている。

著作権に対する意識の向上
  学校や企業など,著作権に対する関心が急速に高まりつつある他の機関等と比べると,一般的に言って大学においては,そのような意識がまだ低い状況にある。
  今後は,大学における著作物の利用だけでなく,大学教員が創作した著作物の著作権に係る当該教員と大学や利用者等との関係など,大学においては様々な著作権問題が発生すると思われる。
  そのような問題の殆どは,著作権に関する正しい知識と,適切な契約の習慣によって対応できるものであるが,その前提としてまず,大学関係者の間で著作権というものに対する関心や意識を高めるため,適切な方策を検討していく必要がある。

研修の充実
  学校等と比較すると,大学関係者を対象とした著作権に関する研修は,非常に遅れた状況にある。教員,学生,事務職員などの立場や役割の相違により,必要な知識の分野・レベルや実際のニーズについては大きな多様性があると思われるが,大学関係者を対象とした各種の研修事業を実施する主体と連携協力して,そうした研修事業において著作権が対象とされるよう,適切な方策を検討していく必要がある。

3   地方自治体・社会教育施設等の公的機関等が実施する著作権教育への支援

  著作権教育を広く全国的に展開していくためには,地方自治体(都道府県・市町村の合計で約3,200自治体)や社会教育施設(公民館約19,000館,図書館約2,600館,博物館約1,000館)による事業を支援していくことも重要である。
  これらの機関等においては,現時点ではまだ著作権全般に対する関心や知識が必ずしも十分ではなく,著作権教育事業を広く展開していく準備も整っているとは言いがたいが,これらの機関等が有機的な連携協力を保ち,地域全体として著作権教育事業を展開していけるよう,今後適切な方策を実施していくことが必要である。
  この課題についても,検討すべき具体的な事項が広範多岐にわたることから,著作権教育小委員会において更に引き続き検討を行うことが必要であるが,平成14年度の検討においては,次のような視点が示されている。

自治体・社会教育施設の職員等を対象とした研修の拡大
  自治体や社会教育施設の職員等は,地域における教育事業・普及啓発事業の核となり得る人々であり,これらの職員等を対象とした研修において,著作権を適切に取り扱っていくことが重要である。このため,このような研修事業を行う主体と連携し,全国的に著作権に関する研修が実施されるようにすることが必要である。

地域において著作権教育事業を企画・実施できる人材の育成
  前記のような研修においては,研修を受ける者自身が著作権に関して必要な知識等を身に付けるだけでなく,各地域において著作権教育事業を企画・実施する立場にある職員等については,地域の実情や学習者のニーズに対応した著作権教育事業を自ら企画・実施できるような資質の向上に努める必要がある。この場合,そのような教育事業の企画・実施に当たったり,実際に講師となったりする能力を備えた人材であることを示すための何らかの仕組みも工夫すべきである。

各地域における著作権教育のための指導法・教材等の開発・提供等
  指導法や教材等の開発・提供については,当面学校教育について実施していく必要があるが,学校向けの指導法・教材等の中には,各地域における社会教育等のために活用できるものも多いと思われる。また,学校教育における「研究指定校」のような試みは,各地域における社会教育事業にも応用できるので,例えば,著作権教育に関する「研究指定自治体」や「研究指定社会教育施設」などの試みも検討すべきである。

(3) 著作権教育を実施する関係機関・団体間の「連携」の促進の在り方

  著作権に関する教育事業や普及啓発事業は,一部の著作権関係団体によって従来から熱心に行われてきており,中には各学校,地域,企業などに対して,広くきめ細かい対応をしてきているものもある。
  しかしながら,各団体が実施している事業の内容を比較すると,例えば著作権制度一般を説明するためのパンフレット等の製作などが多くの関係団体で重複して行われているなど,各団体の連携協力を促進することによってより効率的で有効な事業を展開できるのではないかと思われる点が少なくない。
  このような連携協力を促進するため,平成14年度に文化庁によって,関係団体で構成する「著作権教育連絡協議会」が設置されているが,この協議会において具体的にどのような連携協力を進めていくかは,まだ検討段階にある。
  著作権に関する教育事業や普及啓発事業を実施してきている各団体の間には,主たる関心分野や主たる対象などについて多様性があり,それぞれの経緯や伝統を踏まえた事業が実施されてきているため,連携や共同は,実際の事業の場面では必ずしも常に容易であるわけではない。このため,この課題についても,著作権教育小委員会において更に引き続き検討を行うことが必要であるが,平成14年度の検討においては,次のような視点が示されている。

「著作権教育連絡協議会」等の「場」の整備・活用
  各関係団体は,それぞれの経緯・伝統等を踏まえた事業を実施してきているが,他の団体がどのような事業をどのような手法で行っているかといったことについて,情報交換を行うだけでも,大きな意義がある。このため,既に設置されている「著作権教育連絡協議会」等の場を活用して,著作権教育に関する事業を展開していくことや,既に事業を実施している著作権関係団体のみならず,利用者側も参加し,相互理解の上で事業を行うことなど連携協力の拡大も視野に入れ,関係団体間の情報交流を促進する必要がある。

連携協力の意義の周知
  各関係団体の担当者にとっては,従来から実施している事業を毎年継続して行う方が,既に確立されたノウハウを活用できるため,仕事がしやすいといった状況がある。しかしながら,社会全体の大きな変化を考慮すると,著作権に関する教育事業や普及啓発事業は,すべての関係者の力を結集して飛躍を遂げなければならない転機を迎えていると言える。このため,各関係団体の担当者等に対して,連携協力の意義を周知する必要がある。そのためには,連携協力により得られる,活動機会の拡大,事業内容の充実,コストの削減等の効果を具体的に示すことが必要である。

具体的な連携事業の研究
  前記連携協力事業としては,資料・教材等の共同開発・相互利用,共催事業等が考えられるが,いずれにしても各関係団体にこれまでに蓄積されたノウハウが十分生かされ,それを共有していくことが重要である。このため,「著作権教育連絡協議会」等の場を活用し,具体的な連携事業について研究を推進する必要がある。

  財政的措置,組織等の充実

  これまで,今後実施すべき施策を示してきたが,我が国の知的財産に関する教育を推進するためには,著作権教育を実施する文化庁,地方自治体,関係機関において,所要の経費の確保,組織・人員の充実を図る必要がある。


-- 登録:平成21年以前 --