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はじめに

  情報技術の発達・普及により,著作物の創作手段・利用手段等が社会全体に普及するとともに,多種多様な著作物等が広く流通するようになったため,極めて多くの人々が著作権と関わりを持つ時代を迎えており,これに伴い,広範な施策を総合的に推進することが必要になっている。

  また,国全体として,発明,著作物,植物の新品種などの「知的財産」を重視していこうという機運が高まっている。平成14年2月25日,政府は,我が国産業の国際競争力の強化,経済の活性化の観点から,我が国としての知的財産戦略を樹立するため「知的財産戦略会議」を設置し,同年7月3日には「知的財産戦略大綱」を決定した。さらに,この大綱における提言を踏まえ,同年11月27日には「知的財産基本法」が成立した。

  これらにおいて示された知的財産戦略に関する政府全体の方針の中で,著作権に関係する部分は,次の5つの分野に整理することができる。

  第一の分野は,「法律ルールの整備」である。我が国の著作権法は,累次の法改正によりインターネットへの対応等について国際的に見て極めて高い水準にあるが,社会や技術の変化に対応した権利付与の在り方や権利制限の見直しなど個別の事項に関する課題や,著作権法の単純化など著作権法全般の在り方に関する課題についての検討が必要である。

  第二の分野は,「円滑な流通の促進」である。すべての人々が著作物の「権利者」「利用者」となる時代を迎えているが,我が国では,著作物の利用について,契約を結んでも書面を作成しないか,作成しても内容が必ずしも明確でない傾向があるなど,著作物等の円滑な流通に不可欠な「契約システム」の開発・普及が遅れており,このような状況を改善するための方策について検討が必要である。

  第三の分野は,「国際的課題への対応」である。パソコン一台あれば著作物のコピー等が簡単にできるようになり,インターネットを通じて国境を越えた著作物の流通が活発に行われるようになったことを踏まえ,アジア地域における海賊版対策の強化や「視聴覚的実演」,「放送機関」の保護に関する新条約などの国際的ルールづくりへの参画の在り方について検討が必要である。

  第四の分野は,「著作権教育の充実」である。インターネットやパソコンなど,著作物の「創作手段」「利用手段」が急速に拡大・普及しているため,著作権に関する知識と意識が広く多くの人々にとって不可欠なものとなっていることから,著作権教育の在り方について検討が必要である。

  第五の分野は,「司法救済制度の充実」である。著作物等の利用形態の多様化に伴い,権利者が侵害行為を発見・立証することや,損害額を算定・立証することが困難になっているため,損害賠償制度の強化や裁判手続きの改善などについて検討を行う必要がある。

  これら5つの分野についての種々の課題を幅広く検討するため,平成14年度の審議においては,各分野に対応する5つの小委員会を設置し,「知的財産戦略大綱」や「知的財産基本法」に示された政府全体の方針を具体化するために必要な施策等の検討を行った。

  これら5つの小委員会の平成14年度における検討の概要は,以下の各章に示したとおりである。

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