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「文化芸術の振興に関する基本的な方針について」(答申)

平成14年12月
文化審議会

4文文審第13号
平成14年12月5日


文部科学大臣
  遠山  敦子  殿


文化審議会会長          
    高階 秀爾        



「文化芸術の振興に関する基本的な方針について」(答申)




  文化審議会は,平成14年6月5日付け14庁房第115号をもって文部科学大臣から標記の件について諮問を受けた。
  本諮問を受けて,我々は,政府としての初めての文化芸術の振興に関する基本的な方針について精力的に議論を重ね,成案を得た。
  答申に当たっては,現在の日本人が追い求めている「熱いもの」とは何か,日本を蘇(よみがえ)らせる「熱いちから」とは何かという認識に立って,文化芸術の振興方策について考えた。答申の冒頭に我々の思いを「大地からの手紙」として付した。
  政府においては,本答申を踏まえ,基本方針に示された文化芸術の振興のための施策を,大胆かつ着実に推進していくことを切望するものである。



大地からの手紙


  日本は疲れています。日本は自信をなくしています。
  日本人は彷徨(さまよ)い続けています。

  戦後,ものを作り,ものを売って高度経済成長を果たした日本は,この半世紀を爆走しながら,富の代わりに何を手放し,何を見失ってきたのでしょう。
  無国籍風の若者たちが集う街では,崩れた日本語が氾(はん)濫し,乱れた性が行き交い,刹那(せつな)主義的なにぎやかさが日常の風景と化しています。
  だが,楽しげに遊ぶ若者たちほど,ふと寂しげな表情を見せるのは何故(なぜ)でしょう。
  若者たちを横目で見ながら,「昔は良かった」と嘆く大人たちの眼(まな)差しの奥に,疼(うず)くような情熱が消えずに残っているのは何故なのでしょう。
  若者たちも大人たちも,日本人すべてが,人生の土台となる「熱い何か」を探して,時代と闘っているのかもしれません。

  その昔,小さなパン1個で,満たされ癒(いや)されたことはありませんか?
  飽食の昨今,ご馳(ち)走を食べながら,心の空腹を感じたことはありませんか?

  富を得て,日本も,日本人も,お金で買えるものを買いすぎました。
  衣食足りたあとの富は,時として人間を豹(ひょう)変させ,礼節を忘れさせ,国の生命力さえも萎(な)えさせます。
  おなかをすかせた心に尋ねてみましょう。
  「欲しいものは何ですか?」「それは,この目に見えるものですか?」

  狂想曲は鳴り終わりました。
  立ち止まって,青空を見上げてみませんか。
  久しぶりに大地と話してみませんか。
  日本は今,日本を蘇(よみがえ)らせる「日本人の熱いちから」を待っています。



文化芸術の振興に関する基本的な方針


目      次

まえがき
第1  文化芸術の振興の基本的方向
  1.文化芸術の振興の必要性
  2.文化芸術の振興における国の役割等

    (1)国の役割
    (2)重視すべき方向
        1)文化芸術に関する教育
        2)国語
        3)文化遺産
        4)文化発信
        5)文化芸術に関する財政措置及び税制措置
    (3)地方公共団体及び民間の役割
  3.文化芸術の振興に当たっての基本理念
  4.文化芸術の振興に当たって留意すべき事項
    (1)芸術家等の地位向上のための条件整備
    (2)国民の意見等の把握,反映のための体制の整備
    (3)支援及び評価の充実
    (4)関係機関等の連携・協力
第2  文化芸術の振興に関する基本的施策
  1.各分野の文化芸術の振興
    (1)芸術の振興
    (2)メディア芸術の振興0
    (3)伝統芸能の継承及び発展
    (4)芸能の振興
    (5)生活文化,国民娯楽及び出版物等の普及
  2.文化財等の保存及び活用
  3.地域における文化芸術の振興
  4.国際交流等の推進
  5.芸術家等の養成及び確保等
  6.国語の正しい理解
  7.日本語教育の普及及び充実
  8.著作権等の保護及び利用
  9.国民の文化芸術活動の充実

    (1)国民の鑑賞等の機会の充実
    (2)高齢者,障害者等の文化芸術活動の充実
    (3)青少年の文化芸術活動の充実
    (4)学校教育における文化芸術活動の充実0
  10.文化施設の充実等
    (1)劇場,音楽堂等の充実
    (2)美術館,博物館,図書館等の充実
    (3)地域における文化芸術活動の場の充実
    (4)公共の建物等の建築に当たっての配慮
  11.その他の基盤の整備等
    (1)情報通信技術の活用の推進
    (2)地方公共団体及び民間の団体等への情報提供等
    (3)民間の支援活動の活性化等
    (4)関係機関等の連携等
    (5)顕彰
    (6)政策形成への民意の反映等



まえがき


  平成13年12月,文化芸術振興基本法(平成13年法律第148号)(以下「基本法」と言う。)が施行された。
  この基本方針は,基本法第7条第1項の規定に基づき,今後おおむね5年間を見通し,文化芸術の振興に関する施策の総合的な推進を図るために定めるものである。
  本基本方針の第1においては,文化芸術の振興の基本的方向として,文化芸術の振興における国の役割を明らかにするとともに,特に重視すべき方向性と留意すべき事項について定めている。第2においては,第1の基本的方向を踏まえて講ずべき基本的施策について定めている。
  なお,本基本方針は,諸情勢の変化や,施策の効果に関する評価を踏まえ,柔軟かつ適切に見直しを行うこととする。


第1  文化芸術の振興の基本的方向
1.文化芸術の振興の必要性

  文化は,最も広くとらえると,人間が自然とのかかわりや風土の中で生まれ,育ち,身に付けていく立ち居振る舞いや,衣食住をはじめとする暮らし,生活様式,価値観など,およそ人間と人間の生活にかかわることのすべてのことを意味するが,文化を「人間が理想を実現していくための精神活動及びその成果」という側面からとらえると,その意義については,次のように整理することができる。
1 人間が人間らしく生きるための糧
  文化は,人々に楽しさや感動,精神的な安らぎや生きる喜びをもたらし,人生を豊かにするとともに,豊かな人間性を涵(かん)養し,創造力をはぐくむものである。豊かで美しい自然の中ではぐくまれてきた文化は,人間の感性を育てるものである。

2 共に生きる社会の基盤の形成
  文化は,他者に共感する心を通じて,人と人とを結び付け,相互に理解し,尊重し合う土壌を提供するものであり,人間が協働し,共生する社会の基盤となるものである。

3 質の高い経済活動の実現
  文化の在り方は,経済活動に多大な影響を与えるとともに,文化そのものが新たな需要や高い付加価値を生み出し,多くの産業の発展に寄与し得るものである。

4 人類の真の発展への貢献
  科学技術や情報通信技術が急速に発展する中で,倫理観や人間の価値観にかかわる問題が生じており,人間尊重の価値観に基づく文化の側からの積極的な働き掛けにより,人類の真の発展がもたらされる。

5 世界平和の礎
  文化の交流を通じて,各国,各民族が互いの文化を理解し,尊重し,多様な文化を認め合うことにより,国境や言語,民族を超えて,人々の心が結び付けられ,世界平和の礎が築かれる。

  このような文化の意義にかんがみると,文化の中核を成す芸術,メディア芸術,伝統芸能,芸能,生活文化,国民娯楽,出版物,文化財などの文化芸術は,芸術家や文化芸術団体,また,一部の愛好者だけのものではなく,すべての国民が真にゆとりと潤いの実感できる心豊かな生活を実現していく上で不可欠なものであり,この意味において,文化芸術は国民全体の社会的財産であると言える。
  したがって,個人,民間企業・団体等,地方公共団体,国などそれぞれが,自らが文化芸術の担い手であることを認識し,相互に連携協力して,社会全体で文化芸術の振興を図っていく必要がある。


2.文化芸術の振興における国の役割等
(1)国の役割
  文化芸術活動は,国民がこれを通じて創造性を発揮し,培い,個性を伸長し,自らの啓発を図ろうとする自発的,自主的な営みであり,文化芸術の享受もまた,国民自らに帰するものである。
  この点を踏まえ,文化芸術の振興における国の役割は,文化芸術活動の主体である国民の自発的な活動を刺激し,伸長させるとともに,国民すべてが文化芸術を享受し得るための諸条件を整えることを基本とするものである。  このため,国は,自ら諸条件の整備を図るとともに,地方公共団体の取組を促進し,また,個人や団体の活動としての限りがあるところに必要な手を差し伸べることなどにより,全体として文化芸術の振興が図られるよう所要の措置を講じていく必要がある。
  このことを前提としつつ,国の役割を整理すると,「文化芸術の頂点の伸長」と,「文化芸術の裾(すそ)野の拡大」を基本とし,「文化遺産の保存と活用」,「文化芸術の国際交流」及びそれらを支える「文化基盤の整備」に集約される。
  このような取組を推進することにより,新たな文化芸術が創造され,それが将来的に我が国の顔として,世界に親しまれる文化芸術となり,世界の文化の発展に資するよう努めていく。

(2)重視すべき方向
  上記(1)の国の役割を踏まえ,将来の我が国の顔となる文化芸術を創造していくため,次の事項を重視して,取り組んでいく。

1)文化芸術に関する教育
  国民が,文化芸術に対する関心と理解を深め,自らを含む社会全体がその担い手であるという意識を持って,文化芸術を創造し,享受していくためには,その基礎となる豊かな感性や創造性をはぐくむとともに,文化芸術に触れ,親しむことができる教育環境づくりが重要である。
  家庭,学校,地域が連携して,自然,歴史,伝統,文化に対する関心や理解を深め,尊重する態度を育て,豊かな人間性を涵養することが大切である。
  特に,学校教育においては,子どもたちが優れた文化芸術に直接触れ,親しみ,創造する機会を持つことができるよう,創造的な体験の機会の充実など,文化芸術に関する教育の充実を図る必要がある。同時に,教員一人一人が豊かな感性と幅広い教養を持ち,自己啓発に努めながら,教育活動を展開することにより,学校教育活動全体をより文化的なものとしていく必要がある。

2)国語
  国語は,長い歴史の中で形成されてきた国の文化の基盤を成すものであり,また,文化そのものでもある。
  同時に,国語は,我が国の先人たちの築き上げてきた伝統的な文化を理解し,考える力や表現する力を培い,豊かな感性や情緒を備え,幅広い知識や教養を持つために不可欠なものであり,今後の文化の継承と創造に欠くことができないものである。
  このような国語の重要性にかんがみ,国民一人一人が,国語についての認識を深め,生涯を通じて国語力を身に付けていく環境を整備する必要がある。
  特に,学校教育全体を通じて,国語力を向上させる取組が十分に行われるよう努めるとともに,家庭や地域などにおいて国語についての意識を高めていく必要がある。

3)文化遺産
  長い歴史の中で生まれ,はぐくまれ,今日まで守り伝えられてきた国民の貴重な財産である有形・無形の文化遺産は,我が国の歴史,伝統,文化等の理解のために欠くことができないものであると同時に,将来の文化の向上,発展の基礎を成すものである。
  近年の急激な社会構造の変化の中で,文化遺産を現代に生かす保存とその適切な活用の在り方を踏まえながら,実効性のある保存,活用のための方策について検討を進める必要がある。同時に,文化遺産の修復及び保存伝承のための基盤の充実,文化遺産についての体験学習の機会や文化遺産に関する普及啓発活動の充実などに積極的に取り組む必要がある。

4)文化発信
  優れた伝統を生かしつつ,個性ある我が国の文化を育て,世界に発信していくことが重要である。
  そのためには,まず長い歴史や伝統の中で,諸外国との文化交流を図りつつ,形成されてきた我が国の文化についてよく知り,理解を深める必要がある。自己の文化について理解することは,他の文化に対する寛容や尊重の気持ちをはぐくむことにつながるものである。
  その上で,我が国の文化を,伝統文化から現代文化に至るまで,総合的かつ積極的に発信していく必要がある。このことは,我が国の文化が国際的に多様な刺激を受けて,新たな創造を加えつつ発展していく上で重要であるのみならず,国際社会における我が国の文化的地位を確かなものにし,世界の文化の発展や人類への貢献となるものである。

5)文化芸術に関する財政措置及び税制措置
  文化芸術については,社会全体でその振興を図っていく必要があるが,そのための方策として,フランスに代表される国による支援が中心の場合と,アメリカ合衆国に代表される民間による支援が中心の場合がある。我が国の文化芸術の振興の取組や文化芸術活動の状況等を踏まえると,国及び民間が双方の立場から文化芸術の振興を展開していく必要がある。
  このため,国及び民間双方による支援をより一層効果的なものとしていくことが不可欠であり,厳しい財政事情の下で適切な評価を行い,支援の重点化,効率化を図りつつ,必要な財政上の措置を講ずるとともに,税制上の措置等により文化芸術活動に対する民間からの支援の促進を図っていく。

(3)地方公共団体及び民間の役割
  地方公共団体は,自主的かつ主体的に,国との連携を図りつつ,それぞれの地域の特性に応じて,多様で特色ある文化芸術を振興し,地域住民の文化芸術活動を推進する役割を担っている。
  地方公共団体が,文化芸術の振興を図るに際しては,それぞれの文化芸術の振興のための基本的な方針等に基づき施策を進めることや,広域的な視点から,各地方公共団体が連携して文化芸術の振興に取り組むことが望まれる。
  また,個人や民間企業・団体等の文化芸術活動への支援は,自発性に基づくものであり,国民が文化芸術を大切にし,育てる意識の拡大につながるものである。また,国や地方公共団体の支援に比べ,自由で選択的な配慮が働き,文化の多様性に資することになるものである。民間からの支援を助長し,誘導するための条件整備や,機運の醸成が図られ,民間からの支援が拡大されることが望まれる。


3.文化芸術の振興に当たっての基本理念
  文化芸術の振興に当たっては,基本法第2条に掲げられた次の八つの基本理念にのっとり,施策を総合的に策定し,実施する。

  1文化芸術活動を行う者の自主性の尊重
  文化芸術は人間の自由な発想による精神活動及びその現れであることを踏まえ,文化芸術活動を行う者の自主性を十分に尊重する。

  2文化芸術活動を行う者の創造性の尊重及び地位の向上
  文化芸術は,活発で意欲的な創造活動により生み出されるものであることを踏まえ,文化芸術活動を行う者の創造性が十分に尊重されるとともに,その地位の向上が図られ,その能力を十分に発揮されるよう考慮する。

  3文化芸術を鑑賞,参加,創造することができる環境の整備
  文化芸術を創造し,享受することが人々の生まれながらの権利であることにかんがみ,全国各地で様々な優れた文化芸術活動が行われるよう,国民がその居住する地域にかかわらず等しく,文化芸術を鑑賞し,これに参加し,又はこれを創造することができるような環境の整備を図る。

  4我が国及び世界の文化芸術の発展
  優れた文化芸術は,国民に深い感動や喜びをもたらすとともに,世界各国の人々を触発するものであることを踏まえ,我が国において文化芸術活動が活発に行われるような環境を醸成して文化芸術の発展を図り,ひいては世界の文化芸術の発展に資するよう考慮する。

  5多様な文化芸術の保護及び発展
  人間の精神活動及びその現れである文化芸術は多様であり,こうした多様な文化芸術の共存が文化芸術の幅を広げ,その厚みを加えるものとなることを踏まえ,多様な文化芸術を保護し,その継承・発展を図る。

  6各地域の特色ある文化芸術の発展
  各地域において人々の日常生活の中ではぐくまれてきた多様で特色ある文化芸術が我が国の文化芸術の基盤を形成していることにかんがみ,地域の人々により主体的に文化芸術活動が行われるよう配慮するとともに,各地域の歴史,風土等を反映した特色ある文化芸術の発展を図る。

  7我が国の文化芸術の世界への発信
  我が国と諸外国の文化芸術の交流や海外の文化芸術への貢献が,我が国の文化芸術のみならず,世界の文化芸術の発展につながることにかんがみ,我が国の文化芸術が広く世界へ発信されるよう,文化芸術に係る国際的な交流及び貢献の推進を図る。

  8国民の意見の反映
  文化芸術の振興のためには,文化芸術活動を行う者その他広く国民の理解と参画を得ることが必要であることを踏まえ,文化政策の企画立案,実施,評価等に際しては,可能な限り広く国民の意見を把握し,それらが反映されるように十分配慮する。


4.文化芸術の振興に当たって留意すべき事項
  文化芸術の振興のための施策を講ずるに当たっては,各施策の枠を越え,横断的に以下の事項に留意して,取り組む。
(1)芸術家等の地位向上のための条件整備
  芸術家等(基本法第16条に規定する「芸術家等」を言う。以下同じ。)が活発な創造活動を行い,優れた文化芸術を国民が享受するとともに,新たな芸術家等が育成されていくためには,芸術家等がその能力を向上させ,十分に発揮でき,安全で安心して活動に取り組める環境を整備することが重要である。
  芸術家等や文化芸術団体などの取組と連携しつつ,芸術家等の創造活動のための諸条件の整備や,芸術家等に対する積極的な顕彰等を行い,芸術家等の社会的,経済的及び文化的地位の向上に努める。

(2)国民の意見等の把握,反映のための体制の整備
  文化芸術は,国民すべての生活や社会の在り方に深くかかわるものであることから,文化芸術の振興に関する政策の形成に当たっては,より多くの国民の意見等を集約し,反映させていくことが重要である。
  文化芸術の振興のための基本的な政策の形成や,各施策の企画立案,実施,評価等に際して,芸術家等や学識経験者のみならず広く国民の意見等を十分に把握し,それらが反映される体制の整備に努める。

(3)支援及び評価の充実
  文化芸術活動に対する支援については,公正性及び透明性が確保され,国民の理解を得ることができるよう,施策の目的に応じ,適切な審査方法及び評価に従って実施し,その結果を公開する。また,支援に際しての評価の方法について,文化芸術の各分野の特性を十分に踏まえ,定量的な評価のみならず,定性的な評価を含む適切な評価方法を開発,確立していく。
  さらに,より効果的な支援を行うため,支援の仕組みや方法などの在り方及び多様な手法の活用について検討を進める。
  なお,公的な支援を受けている芸術家等や文化芸術団体に対しては,その活動成果等の積極的な国民への還元や,適切な情報公開,鑑賞者等の拡大や効果的な運営などの努力を求めていく。

(4)関係機関等の連携・協力
  文化芸術の振興に関する施策を推進するに当たっては,関係府省間の密接な連携・協力体制を整備し,総合的かつ一体的な推進を図る。
  また,関係機関,地方公共団体,関係団体等との連携を深め,効果的に施策を推進していく。


第2  文化芸術の振興に関する基本的施策
  第1の「文化芸術の振興の基本的方向」を踏まえ,国は,以下のような施策を講ずる。
1.各分野の文化芸術の振興
  文化芸術の振興に関する施策を講ずるに当たっては,基本法に例示されている文化芸術の分野のみならず,例示されていない分野についてもその対象とし,基本法における例示の有無により,その取扱いに差異を設けることなく取り組んでいく。
(1)芸術の振興
  多様で豊かな芸術を生みだす源泉である芸術家や文化芸術団体等の自由な発想に基づく創造活動が活発に行われるようにするため,次の施策を講ずる。
  ・  「文化芸術創造プラン(新世紀アーツプラン)」の推進等により,我が国の芸術の向上の直接的な牽(けん)引力となる創造活動に対して重点的に支援を行い,世界に誇れる文化芸術活動を伸長する。
  ・  広く優れた芸術を創造し,国民に親しまれるようにするため,地方公共団体や関係団体の取組にも留意しつつ,幅広い文化芸術団体の活動に対し,「芸術文化振興基金」などによる助成を行う。
  ・  内外の優れた芸術作品の鑑賞機会を提供し,芸術の創造の推進に資する芸術祭等の充実を図る。
  ・  新国立劇場における公演の充実を図る。

(2)メディア芸術の振興
  近年の情報通信技術等の進展に伴い,メディア芸術は,広く国民に親しまれ,新たな芸術の創造や我が国の芸術全体の活性化を促すとともに,諸外国に対して文化芸術のみならず,我が国への理解や関心を高める媒体ともなっていることを踏まえ,次の施策を講ずる。
  ・  メディア芸術の一層の振興を図るため,多元的な資金の導入,関連拠点の整備などメディア芸術に係る人材養成から製作,保管,利活用までを一体的に進める方策について検討を行う。
  ・  メディア芸術作品の製作・上映等への支援,漫画,アニメーションなどの海外発信及び国内外の映画祭等への出品等を推進するとともに,優れたメディア芸術の製作者等の育成を図る。
  ・  国内外の優れたメディア芸術作品を鑑賞する機会,特に,子どもたちの映画の鑑賞機会の充実を図る。
  ・  優れたメディア芸術作品に対する発表や顕彰の場であるメディア芸術祭等の充実を図る。

(3)伝統芸能の継承及び発展
  我が国古来の伝統芸能は,長い歴史と伝統の中から生まれ,守り伝えられてきた国民の財産であり,将来にわたって確実に継承され,発展を図っていく必要があることから,次の施策を講ずる。
  ・  伝統芸能が有する歴史的・文化的価値の理解・普及を図るとともに,公演等への支援を行う。その際,我が国の文化芸術の向上の牽引力となる実演家団体が実施する国内外の公演活動に対する支援を重視するとともに,伝統的な音階や技法を用いた新作公演活動の展開も図られるように配慮する。
  ・  国立劇場,国立能楽堂及び国立文楽劇場における公演や,各地域における普及のための公演を推進する。
  ・  伝統芸能の所作や楽器に触れる体験をする機会の提供を通じて,伝統芸能に親しむ人々の拡大を図る。特に,子どもたちが伝統芸能を身近に親しむことができる機会の充実を図る。
  ・  伝統芸能の表現に欠くことのできない用具等の製作・修理等に必要な伝統的な技術の継承及び原材料の確保を図る。
  ・  ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「人類の口承及び無形遺産の傑作宣言」を通じて,世界的にたぐいのない価値を有する我が国の伝統芸能を世界に発信する。

(4)芸能の振興
  芸能の創造活動が活発に行われるよう,次の施策を講ずる。
  ・  「文化芸術創造プラン」による芸能の創造活動への重点的な支援や,関係団体の育成などを図る。
  ・  広く国民に芸能が親しまれるようにするため,幅広い活動に対して,「芸術文化振興基金」などによる助成を行う。

(5)生活文化,国民娯楽及び出版物等の普及
  生活文化,国民娯楽及び出版物等の普及を図るため,次の施策を講ずる。
  ・  地方公共団体や関係団体の取組にも留意しつつ,生活に密着した衣・食・住に係る生活文化や,国民の間で定着し,長い間楽しまれてきた国民娯楽に関する活動を推進するとともに,関係団体の育成を図る。
  ・  子どもたちが生活文化や国民娯楽を身近に親しむことができる機会の充実を図る。
  ・  国民生活や社会を支える文化創造の基盤である出版物,レコード等の普及を図るための環境整備を図る。


2.文化財等の保存及び活用
  文化財は,我が国の歴史の営みの中で自然や風土,社会や生活を反映して伝承され発展してきたものであり,人々の情感と精神活動の豊かな軌跡を成すとともに,現代の我が国の文化を形成する基層となっている。今日の社会構造や国民の意識の変化等を踏まえ,新たな課題にも積極的に対応することが求められていることから,次の施策を講ずる。
  ・  建造物・史跡等の文化財の周辺環境や文化的景観,近代の科学・産業遺産,生活用具等の歴史的な価値を有する我が国の文化的な所産などの保存・活用方策について検討を進める。
  ・  生活,教養,嗜(し)好等に関する技能・技術に関し,特に,消失のおそれのある民俗技術について重点的に調査や記録作成の措置を進めるとともに,その特性や実態に応じた保護方策について検討する。
  ・  有形文化財(有形民俗文化財を含む)について,その種別や特性に応じて計画的に保存・修復を進める。また,保存施設等の整備,建造物の安全性の向上,防火安全対策,伝統的建造物群保存地区をはじめ文化財集中地域等における総合的な防災対策の検討など,防災対策の充実を図る。その際,科学的な調査研究の成果を生かした取組を推進する。
  ・  無形文化財(無形民俗文化財を含む)について,伝承者の確保・養成や,用具の製作・修理など,保存伝承のための基盤の充実を図るとともに,記録映像等の活用を図る。
  ・  伝統的な様式表現を伴う身体文化について,適切に保存及び活用を図る。
  ・  文化財の保存技術について,選定保存技術制度の活用等により,その保存を図る。
  ・  「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約」に従い,地方公共団体等と連携して,我が国の文化遺産の登録推薦を進めるとともに,登録後の文化遺産の適切な保存を図る。
  ・  国民が文化財を理解し,親しむ機会の充実を図るため,文化財の特性や保存に配慮しつつ,情報通信技術や様々な映像技術など多様な手法も用いて,公開,活用を推進する。特に,史跡等については,必要に応じて史実に基づいた復元等の整備を行うことにより,国民に分かりやすい形での公開を促進する。
  ・  子どもたちが,学校や地域において継続的に文化財を学習,体験できる機会の充実を図る。
  ・  文化財の保存及び活用に当たり,地方公共団体,大学,専門的機関,NPO(民間非営利組織)・NGO(非政府組織)などの民間団体の活動や,文化ボランティア等の自主的,主体的な活動との適切な連携協力を促進する。
  ・  独立行政法人文化財研究所が,科学的・技術的な調査研究に基づく保存修復において我が国の中心的な役割を果たすことができるように,その充実を図るとともに,同研究所や大学等における文化財の保存修復等に関する研究水準の向上及び人材の養成に努める。


3.地域における文化芸術の振興
  地域における多様な文化芸術の興隆は,我が国の文化芸術が発展する源泉となるものである。全国各地において,国民が生涯を通じて身近に文化芸術に接し,個性豊かな文化芸術活動を活発に行うことができる環境の整備を図る必要があることから,次の施策を講ずる。
  ・  地域住民の文化芸術活動への参加を促進するための機会や,各地域における公演・展示等への支援を行う。
  ・  都市と農山漁村の共生・対流の推進の視点も踏まえつつ,各地域の歴史等に根ざした個性豊かな祭礼行事,民俗芸能,伝統工芸等の伝統文化に関する活動の継承・発展や,生活・生業に関連して形成された文化的景観の保護を図る。
  ・  地域の特色ある文化芸術や,豊かな自然を生かしたまちづくりなど地域に根ざした文化芸術活動を促進する。
  ・  地域の文化芸術活動の指導者や地域の文化芸術団体の育成を図るとともに,地域間の文化芸術の交流を促進する。
  ・  「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」(平成9年法律第52号)に基づいて,アイヌ文化の振興を図るとともに,アイヌ文化の伝統等に関する知識の普及及び啓発を図る。


4.国際交流等の推進
  文化芸術に係る国際的な交流及び貢献の推進を図ることにより,我が国の文化芸術活動の発展及び世界の文化芸術活動の発展に資するため,次の施策を講ずる。
  ・  伝統文化から現代文化に至るまで魅力ある我が国の文化を総合的かつ計画的に発信するため,官民を通じた国際文化交流を進める上での理念や具体的な方策等を明確にし,関係府省及び国際交流基金その他の関係機関等の緊密な連携・協力の下,国際文化交流を推進する。
  ・  文化芸術に関する国際的な相互交流や意見交換を推進するとともに,我が国の文化人・芸術家等と海外関係機関との交流を強化することにより,国際的な人的ネットワークを形成する。
  ・  文化交流の国内の拠点である国立の文化施設,文化交流機関等において,相手国の対応機関との継続的な専門家の交流や各種事業の共同実施を推進し,国際文化交流のネットワークづくりを推進する。
  ・  関係機関の連携,ネットワークの有効な活用を通じて,芸術家や文化芸術団体の相互交流,各分野の文化芸術の国際交流,国際フェスティバルの開催,我が国の文学作品の翻訳による海外発信などを推進する。  
  ・  二国間又は国際機関を通じて,人類共通の財産である世界的な文化遺産の保存修復のための協力や,人材育成,共同研究などを積極的に展開するとともに,「文化財の不法な輸入,輸出及び所有権移転を禁止し及び防止する手段に関する条約」(平成14年12月9日発効)の適切な実施を図る。


5.芸術家等の養成及び確保等
  多様で優れた文化芸術を継承し,発展させ,創造していくためには,その担い手として優秀な人材を得ることが不可欠であることから,次の施策を講ずる。
  ・  今後の文化芸術活動の発展等に伴い必要とされる新たな分野の芸術家等の養成及び研修体制の整備や,優れた才能を発掘し,能力を引き出すため早期の教育システムについて検討を進める。
  ・  学芸員,舞台技術者・技能者,文化財修理技術者等の専門性の向上を図るための資格の在り方について検討を進める。
  ・  芸術家等の海外留学や国内研修の充実,各分野の文化芸術団体等が行う研修への支援,次代を担う新進芸術家が活動成果を発表する機会の充実,世界的な芸術家による指導の機会の充実などを図る。
  ・  伝統芸能の伝承者や文化財の保存技術者・技能者,文化施設や文化芸術団体の管理運営者,企画・管理担当者(アートマネージャー),舞台技術者,技能者,学芸員など,文化芸術活動に携わる幅広い人材の養成及び確保,資質向上のための研修の充実を図る。
  ・  大学等や国立の文化施設等における教育及び研究の充実を図る。


6.国語の正しい理解
  言葉は,意思疎通の手段であると同時に,その言葉を母語とする人々の文化とも深く結び付いている。このような文化の基盤としての国語の重要性を踏まえ,個々人はもとより,社会全体としてその重要性について認識し,国語に対する理解を深め,生涯を通じて国語力を身に付けていく必要があることから,次の施策を講ずる。
  ・  分析力や論理的思考力,表現力,創造力など,これからの時代に求められる国語力や,そのような国語力を身に付けるための具体的方策について明らかにし,家庭,学校,地域を通じて,総合的に国語教育の質的量的充実が図られるよう,新しい時代に向けての国語力向上施策を推進する。
  ・  学校教育に携わるすべての教員が国語についての意識を高め,実際に生かしていくことができるよう,学校の教員の養成及び研修の各段階において,国語力に重点を置いた取組を進める。
  ・  家庭や地域において,国語に対する意識を高めるため,言葉に関する講演会の開催や体験活動を推進し,国語力の育成及び,向上を図る。
  ・  近年の外来語・外国語(いわゆる片仮名言葉)の氾(はん)濫などの状況や放送・出版等様々な媒体が人々の言語生活に及ぼす影響等を考慮し,国民に分かりやすくするという観点から,公用文書等における表現を工夫するとともに,国民の言語への影響に関する関係機関の自覚を求める。
  ・  独立行政法人国立国語研究所や大学等の関係機関における調査研究の充実を図る。


7.日本語教育の普及及び充実
  近年,日本語を学習する外国人は国内外ともに増加しており,また,学習の目的も多様化している。このような多様な学習需要や社会の変化に対応し,外国人の我が国及び我が国の文化芸術に対する理解の増進に資するよう,次の施策を講ずる。
  ・  国内における日本語教育を受ける対象者の拡大に対応し,日本語教育の指導内容・方法等の調査研究,日本語教育教材等の開発及び提供,日本語教育に携わる者の養成及び研修など,日本語教育の充実を図る。
  ・  地方公共団体などの関係機関や日本語ボランティア等との連携協力を図りつつ,地域の実情に応じた日本語教室の開設や,幅広い知識や能力を持つ日本語ボランティアの養成及び研修など,地域における日本語教育の充実を図る。
  ・  海外における日本語学習の広がりにこたえるため,日本語教員等の海外派遣・招へい研修を推進するとともに,インターネット等の情報通信技術を活用した日本語教材・日本語教育関係情報の提供を推進する。


8.著作権等の保護及び利用
  文化芸術の振興の基盤を成す著作権等について,国際的な動向を踏まえるとともに,「知的財産基本法」(平成14年法律第122号)及び「知的財産戦略大綱」(平成14年7月3日知的財産戦略会議決定)に沿って,その保護の充実を図るため,次の施策を講ずる。
  ・  メディア芸術を支えるデジタル・コンテンツ産業も含め,著作者等の権利の適切な保護を図るため,国際的に条約の検討が進められている放送事業者や実演家の権利の拡充など,ネットワーク上での著作権の保護強化等を図る。
  ・  我が国では,著作物等の創作時・利用時における契約システムが十分に機能していない面があるため,権利者や利用条件等が曖昧(あいまい)となり,適切な保護や円滑な利用の促進に支障が生じているとの指摘がある。このため,著作物等の適正かつ円滑な流通を促進する観点から,新技術と著作権契約システムを組み合わせた著作物等の新しい流通システムの構築に向けた取組を支援する。また,ネットワーク上での著作権契約システムの研究開発や,著作物等の利用可能範囲に関する権利者の意思表示システムの開発・普及を行う。
  ・  国内外において我が国の著作物等の海賊版を防止・撲滅するため,官民が連携して対策に取り組む体制づくりを行うとともに,二国間,多国間の枠組みを通じ,適切な保護を求める。
  ・  デジタル化,ネットワーク化に対応した国際的な著作権保護を進めるため,WIPO(世界知的所有権機関)などで行われている新たな国際ルールづくり等において積極的な役割を果たす。
  ・  インターネットやパソコンの普及など,情報技術の発達・普及による権利者及び利用者の急激な拡大により,著作権に関する知識や意識がすべての人々に必要不可欠なものとなり,著作権の保護や適切な契約の習慣が広く多くの人々に受容される状況を作っていくことが,必要となっている。このため,学校教育,ネットワークを利用した情報提供など,様々な方法により,著作権に関する知識と意識の普及を図る。
  ・  著作権の侵害については,基本的に,権利者自らが侵害の事実を発見・立証する必要があるが,情報通信技術の進展に伴う著作物等の創作・利用形態の多様化が進むに従い,権利侵害行為や損害額の立証などが困難になってきている。このため,著作権に係る権利行使の実効性を確保するため,司法による権利救済に係る諸制度の充実を図る。


9.国民の文化芸術活動の充実
  国民がその居住する地域にかかわらず等しく文化芸術を鑑賞し,参加し,創造することができる環境を整備し,心豊かな社会を実現していくため,特に,高齢者,障害者,青少年などへのきめ細やかな配慮等を図りつつ,次の施策を講ずる。
(1)国民の鑑賞等の機会の充実
  ・  国民が身近に文化芸術を享受できるよう,各地域における様々な文化芸術の公演,展示等に対する支援を行う。
  ・  国民文化祭の開催をはじめ,国民の文化芸術に関する参加や関心を喚起する機会の充実を図る。
  ・  国民の文化芸術活動への参画に資する文化ボランティア活動を活発にするため,各地域や文化施設等においての文化ボランティア活動の場の整備,情報の提供,相互交流の推進などの環境の整備を図る。

(2)高齢者,障害者等の文化芸術活動の充実
  ・  文化施設等において,高齢者,障害者,子育て中の保護者等が文化芸術を鑑賞し,参加し,創造しやすい環境の整備を促進する。
  ・  文化芸術活動の公演・展示等において,字幕や音声案内サービス,託児サービス,利用料や入館料の軽減などの様々な工夫や配慮等を促進する。
  ・  高齢者,障害者,子育て中の保護者等の文化芸術活動に配慮した活動を行う団体等の取組を促進する。

(3)青少年の文化芸術活動の充実
  ・  完全学校週5日制の実施も踏まえ,青少年が各地域において多種多様な文化芸術に直に触れ,体験できる機会の充実を図るとともに,学校や文化施設等を拠点として,子どもたちが伝統文化や生活文化を継続的に体験・修得できる機会の充実を図る。
  ・  青少年を対象とした文化芸術の公演,展示等への支援を行うとともに,各地域における社会教育関係団体などによる,青少年の自主的な文化芸術活動の場や機会の充実を図る。
  ・  各地域において青少年に対する指導や助言を行う指導者の養成及び確保を促進する。
  ・  各地域の美術館,博物館,文化会館,図書館などにおける児童生徒向けの教育活動及び体験の機会の提供を促進するとともに,学校教育との連携・融合を促進する。

(4)学校教育における文化芸術活動の充実
  ・  初等中等教育から高等教育までを通じて,歴史,伝統,文化に対する理解を深め,尊重する態度や,文化芸術を愛好する心情などを涵養し,豊かな心と感性を持った人間を育てる。
  ・  「総合的な学習の時間」などを活用し,積極的に,文化芸術に関する体験学習など文化芸術に関する教育の充実を図るとともに,優れた文化芸術の鑑賞機会の充実を図る。
  ・  子どもたちに対する文化芸術の指導を行う教員の資質の向上を図るとともに,各教科の授業や部活動において,優れた地域の芸術家や,文化芸術活動の指導者,文化財保護に携わる者等が教員と協力して,指導を行う取組を促進する。
  ・  授業において,和楽器を用いたり,長い間親しまれてきた唱歌,わらべうた,民謡など日本のうたを取り上げる等,我が国の伝統的な音楽に関する教育が適切に実施されるよう配慮する。
  ・  全国高等学校総合文化祭など文化芸術の発表機会の充実を図る。


10.文化施設の充実等
(1)劇場,音楽堂等の充実
  劇場,音楽堂等が,優れた文化芸術の創造,交流,発信の拠点や,地域住民の身近な文化芸術活動の場として積極的に活用され,その機能・役割が十分に発揮されるよう,次の施策を講ずる。
  ・  法的基盤の整備や税制上の措置などの方策により,劇場,音楽堂等の活動の円滑化,活発化を図る。
  ・  各地域の劇場,音楽堂等の公演等への支援,芸術家等の配置等の支援,情報の提供などを充実するとともに,他の劇場,音楽堂,学校等と連携した活動を促進する。
  ・  各地域の劇場,音楽堂等の施設設備の適切かつ安全な環境の確保を図るとともに,施設の管理運営等に関し,それぞれの目的等に応じて,多様な手法を活用してサービスの向上,運営の効率化等の配慮が行われるよう促進する。
  ・  国立劇場や新国立劇場等における公演の充実を図り,国民に質の高い文化芸術の鑑賞機会を提供するなど,国立施設としてふさわしい活動を推進する。また,「国立劇場おきなわ」を開設し,組踊をはじめ沖縄の伝統芸能の保存・振興を図るとともに,伝統文化を通じたアジア・太平洋地域の交流の拠点とする。
  ・  劇場,音楽堂等における活動に不可欠な企画・管理担当者,舞台技術者・技能者,文化施設の職員等の資質向上のための研修の充実を図る。

(2)美術館,博物館,図書館等の充実
  国民の要望の多様化,高度化を踏まえ,美術館・博物館が優れた文化芸術の創造,交流,発信の拠点や,地域住民の文化芸術活動の場として積極的に活用され,その機能・役割が十分に発揮できるよう,次の施策を講ずる。
  ・  美術館,博物館の活動がより円滑かつ活発となり,質の高い展覧会の開催などが促進されるための施策について,法的整備も含め,検討を進める。
  ・  寄附等に係る税制上の措置などの方策により,所蔵品の充実や安定した運営を図る。
  ・  国内外の優れた美術品等の鑑賞機会の一層の拡充を図るため,利用者の要望に対応したサービスの向上や,登録美術品制度の活用を進める。
  ・  各地域の美術館,博物館の展示等への支援を充実するとともに,学習の場としての機能の充実や,他の美術館,博物館,社会教育施設,学校等と連携した活動を促進する。
  ・  国立美術館,国立博物館が,国内外の美術館,博物館の連携の中核的・指導的役割を十分に発揮できるよう各機能の充実を図るとともに,「九州国立博物館」(仮称)及び新しい国立美術展示施設を開設し,国民の文化芸術活動の機会の一層の充実を図る。
  ・  魅力ある施設づくりの核となる学芸員等の資質向上のための研修の充実を図る。
  ・  優れた文化財,美術品等の積極的な公開・展示を進めるため,映像技術や情報通信技術を活用した記録・保存・公開を促進する。
  ・  多様化・高度化する国民の要望に対応した情報拠点として,国民に親しまれる図書館づくりを進めるとともに,「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」(平成14年8月2日閣議決定)に基づき,子どもの読書活動の推進を図る。

(3)地域における文化芸術活動の場の充実
  国民が身近に,かつ,気軽に文化芸術活動を行うことができる場の充実を図るため,次の施策を講ずる。
  ・  各地域の文化施設や公民館等の社会教育施設について,地域の芸術家,文化芸術団体,住民等が円滑に利用しやすい運営を促進する。
  ・  学校施設については,学校教育に支障のない限り学校教育以外の利用が認められていることや,学校教育に利用される見込みのない余裕教室や廃校施設については,様々な用途への転用が可能となっていることを踏まえ,地域の芸術家,文化芸術団体,住民等の公演・展示や練習の場として,また,文化芸術作品等の保存場所としての利用を促進する。
  ・  学校や,文化施設以外の施設など様々な場について,地域の芸術家,文化芸術団体,住民等による文化芸術活動での幅広い利用を促進する。

(4)公共の建物等の建築に当たっての配慮
  ・  公共の建物等の施設の整備に際して,建物の外観等が,周囲の自然的環境や地域の歴史,文化等との調和が取れたものとなるよう形状,色彩,デザイン等について配慮するよう努める。


11.その他の基盤の整備等
(1)情報通信技術の活用の推進
  情報通信技術の活用は,文化芸術の創造活動のみならず,その成果の普及や享受を通じて,人と人との結び付きを強め,協働・共生社会の実現に資するなど,多様で広範な文化芸術活動の展開に貢献するものであることから,次の施策を講ずる。
  ・  文化芸術に関する情報や画像等について,地理的制約を受けずにその活用を可能とするネットワークの構築を推進する。
  ・  我が国の多様な文化芸術,映画フィルム,文化財等について,デジタル技術,インターネット,CD−ROM等を活用して,保存,展示,国内外への公開等を推進する。その際,デジタル化された画像等を文化芸術活動以外の様々な活動においても活用しやすくするよう配慮するとともに,学校教育における活用の促進の観点から,子どもたちが理解しやすいものとすることにも留意する。
  ・  情報通信技術の活用のための研究開発を推進する。
  ・  文化芸術関係者の情報通信技術の活用の推進を図るための取組を促進する。

(2)地方公共団体及び民間の団体等への情報提供等
  地方公共団体,芸術家等,文化芸術団体,NPO,NGO,文化ボランティア等が行う文化芸術の振興のための取組を促進するため,次の施策を講ずる。
  ・  国内外の文化芸術に関する各種の情報や資料,特色ある取組事例等を積極的に収集し,提供する。
  ・  国内外の文化芸術関係者等が,国の文化芸術の振興に関する施策の内容や,国内外の文化芸術に関する各種の情報,専門的知識等を把握することができるよう,情報通信技術など様々な方法を活用して,積極的に提供していくとともに,相談,助言等の窓口機能の整備を図る。
  ・  地方公共団体,芸術情報プラザなどの文化芸術団体等による情報提供のための取組を促進する。

(3)民間の支援活動の活性化等
  個人や企業・団体等が文化芸術活動に対して行う支援活動を促進するため,次の施策を講ずる。
  ・  文化芸術活動に対する寄附の促進を図るための税制上の措置の活用等を講ずるよう努める。
  ・  文化芸術団体等と連携しつつ,文化芸術関係者が寄附等を受けやすくなる仕組みの整備を促進する。
  ・  文化芸術関係者をはじめ広く国民に対して,文化芸術活動に対する寄附等に関する税制措置の現状,企業等による支援活動の状況,多様な方法による文化芸術活動への支援の事例などについて,文化芸術団体等と連携をしつつ,情報の収集及び提供を行う。
  ・  文化芸術関係者の寄附金等の確保のための活動の促進を図るとともに,社会全体で文化芸術活動への支援を促進していくための機運の醸成を図る。

(4)関係機関等の連携等
  ・   文化芸術の振興に関する施策を効果的に推進するため,国,地方公共団体,企業,芸術家等,文化芸術団体,NPO,NGO,文化ボランティア,文化施設,社会教育施設,教育研究機関,報道機関などの間の連携を強化する。
  ・  文化芸術と教育,福祉,医療その他の分野の連携が図られ,地域で人々が様々な場で文化芸術を鑑賞し,参加し,創造することができるよう,芸術家等及び文化芸術団体と,学校,文化施設,社会教育施設,福祉施設,医療機関等との間の協力の促進に努める。

(5)顕彰
  ・  これまで顕彰の機会が少なかった文化芸術の分野も視野に入れ,文化芸術活動で顕著な成果を収めた者や,文化芸術の振興に寄与した者に対して積極的に顕彰を行う。

(6)政策形成への民意の反映等
  ・  文化芸術の振興のための基本的な政策の形成や,各施策の企画立案,実施,評価等に際しては,芸術家等,学識経験者その他広く国民の意見を求め,これを反映する体制の整備を図る。
  ・  各地域において,国及び地方公共団体の文化行政担当者,芸術家等,文化芸術団体等が,各地域の文化芸術を取り巻く状況や活動状況,文化芸術の振興のための課題等について,情報や意見の交換を行う場を積極的に設ける。
  ・  情報通信技術を活用して,広く国民が文化芸術に関する政策提言等を行うことができる仕組みを構築する。

-- 登録:平成21年以前 --