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第1章  総括小委員会における審議の経過

  審議の経過

総括小委員会は、次の事項を検討する小委員会として設置された。
  (1) 著作権分科会における検討事項全般の整理
  (2) 他の小委員会に属しない検討事項の検討

   総括小委員会は、平成13年6月27日に第1回の会議を開催し、昨年、著作権審議会第1小委員会において検討が開始された「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約」(仮称。以下同じ。)締結のための著作権法改正について、引き続き検討を行った。また、著作権法制に関する基本的な課題について整理・検討を開始することとし、いくつかの議題について検討を行った。

「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約」締結に伴う著作権法改正について
 
  インターネットの利用の拡大など近年の情報化の進展等に対応して著作権の国際的保護の充実を図るため、平成8年12月に世界知的所有権機関(WIPO)において、「著作権に関する世界知的所有権機関条約」及び「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約」が採択された。
このうち、「著作権に関する世界知的所有権機関条約」については、平成9年及び平成11年の著作権法改正を経て、平成12年6月に締結されたところである。一方、「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約」については、平成9年及び平成11年の改正により、必要な法整備の大部分は既に行われているが、まだ締結には至っていない。
  この条約については、著作権審議会国際小委員会報告書(平成12年11月)において、早期に締結するという方向性が示されているため、総括小委員会においても、これを踏まえて検討が行われた結果、同条約を締結するために以下の点について早急に法整備を行うべきとの結論を得た。
  音の実演に係る実演家の人格権について
    (1)人格権の付与
  「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約」(以下この章において「条約」という。)
  第5条(1)においては、「音の実演」(生の聴覚的実演及びレコードに固定された実演)に関して、財産的権利とは別に、実演家に対して「人格権」(「その実演の実演家であることを主張する権利」及び「その実演の変更、切除その他の改変で、自己の声望を害するおそれのあるものに対して異議を申し立てる権利」)を付与することとされた。
  条約の締結を行うためには、著作権法を改正し、「音の実演」に関して、実演家に「人格権」(氏名表示権及び同一性保持権)を付与することが必要である。
  実演家に人格権を付与するに当たっては、条約の規定や現行の著作権法における著作者人格権に関する規定を踏まえ、適切な権利制限を法定する必要がある。
  なお、条約上の義務を超えて、いわゆる「視聴覚的実演」についても実演家に人格権を付与することについては、現在関係者間で協議が行われており、その協議の経緯を踏まえて、付与することを検討することが必要である。
    (2)実演家の死後における人格的利益の保護
  条約第5条(2)においては、実演家の人格権は、「その実演家の死後においても、少なくとも財産的権利が消滅するまで存続し、保護が要求される締約国の法令により資格を与えられる人又は団体によって行使される」こととされている。したがって、以下の措置を講ずることとすることが必要である。
  実演家の死後においてレコードに録音されたその実演を利用しようとする場合は、その実演家が存しているとしたならばその実演家の人格権の侵害となるべき行為をしてはならないこととすること。(実演家名の表示については、その行為の性質、程度、社会的事情の変動等によりその実演家の意を害しないと認められる場合を除く。)
  実演家の死後においては、その遺族又はその実演家が指定した者が、その実演家の人格的利益を損なう行為をする者に対して、差止請求や名誉回復等の措置の請求を行うことができることとすること。
    (3)その他
  条約上の義務ではないが、実演家に人格権を付与することに伴い、以下のような規定を設けることを検討する必要がある。
救済規定
  実演家の人格権侵害に対する差止請求権、侵害みなし行為、名誉回復等の措置の請求、罰則等に関して、所要の改正を行う。
共同実演
  2人以上の者が共同して行い、又は指揮・演出した実演であって、その各人の寄与を分離して利用することができないものを「共同実演」とし、実演家の人格権の行使について、共同著作物の著作者人格権の行使に関する規定と同様の規定を設ける。
  実演家の推定、実演家の実名の登録
実演家の生存中及び死後の人格的利益を確保する観点から、実演家の推定に関する規定や実演家の実名の登録に関する規定を設ける。
  レコードの保護期間の起算点の変更について
      レコードの保護期間は、従来は、「音の固定が行われた時」から始まり、「音の固定が行われた年の終わりから50年」をもって満了するとされていたが、条約第17条においては「音の固定が行われた時」から始まり、「レコードが発行された年の終わりから50年(固定後50年以内に発行されなかった場合には、固定が行われた年の終わりから50年)」をもって満了するとされた。
  現行の著作権法においては、レコードの保護期間は「その音が最初に固定された年の翌年から起算して50年」とされていることから、これを「その発行された年の翌年から起算して50年」(固定された年の翌年から起算して50年以内に発行されなかった場合には、固定された年の翌年から起算して50年)と変更することが必要である。
      また、保護期間の終期の起算点を「発行後50年」とすることに伴い、著作物と同様、レコードについても「発行」という用語の定義(「権利者による相当部数の複製物の作成・頒布」)を設けることが必要である。あわせて、レコードについても第一発行年月日の登録制度を設けることを検討する必要がある。
著作権法制に関する基本的課題について
 
  我が国の著作権法は、昭和45年の制定以来、経済、社会、技術等の変化に対応しつつ必要な改正を行ってきたが、これらは種々の新しい著作物・利用形態の出現等に対応して個別に行われてきたものであって、従来の制度の基本的な部分を見直す必要もあるのではないか、という指摘もある。 このため、総括小委員会においては、そのような見直しが実際に必要であるかどうかも含め、著作権法制に関する基本的な課題について、改めて整理・検討を開始することとした。
  本年は、各検討事項について、別紙のようにその性格に応じて分類した上で整理を行い、一部の事項については検討を開始した。今後も順次検討を進めていくことが必要であると思われる。

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