ここからサイトの主なメニューです
資料10

過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会 検討課題に関する当協会の考え方

平成19年5月16日

社団法人日本レコード協会
専務理事 生野 秀年

1. アーカイブへの著作物等の収集・保存と利用の円滑化方策について
(1) 図書館、放送事業者等が取り進めているアーカイブ事業については、その文化的意義に鑑み、著作権法が既に権利制限規定(著作権法第31条第2号、第44条第3項)を整備しており、これと著作権等管理事業法に基づく包括的権利処理の組み合わせによって、アーカイブ事業を推進すべきであると思料する。
(2) 当協会は、レコードを使用した放送番組に関し、一定の保存・利用方法については平成3年より複製権の集中管理事業を実施しているほか、ネット利用についても、昨年10月より送信可能化権の集中管理を開始し、他のレコード製作者団体の協力を得ながら、幅広いレパートリーの権利管理に努めている。
(3) 当協会は上記の集中管理事業に加え、他団体と連携して、歴史的・文化的資産であるSP盤及び原盤の音源アーカイブ事業も推進しており、こうした民間レベルでの取組みの促進により、アーカイブ事業の円滑化を図るべきである。

2. 保護期間の在り方について
(1) 音楽文化の発展は、楽曲創作・実演提供・原盤製作が一体となって成し遂げられるものであり、三者の保護期間も調和的に設定される必要がある。しかるに、現行著作権法の下では、楽曲の著作権が著作者の生存中及び死後50年間保護されるのに対し、レコードの保護期間は発行後50年間で終了するとされており、レコードの保護が十分に図られていない。ついては、著作権との保護水準の格差を解消するために、レコードの保護期間の延長が必要だと考える。
(2) 無体物である著作物とは異なり、レコードは音を固定した物理的媒体である。したがって、文化的所産であるレコードを良好な状態で次世代に承継するためには、物理的媒体のデジタル化及びリマスタリング等が不可欠であり、その費用負担が避けられない。保護期間の延長により、その費用負担をして過去のレコードを商品化することへのインセンティブが働き、結果としてレコード文化の承継及び発展に寄与することが期待できる。
(3) 他方、レコード製作者の著作隣接権は、類似する音を固定したレコードを新たに製作することには及ばないため、レコードの保護期間を延長しても、新たな創作及び準創作行為に対する制約とはならない。
(4) 音楽配信の普及により、レコード製作者は、過去のレコードを含め、従前より多様な品揃えを提供することが可能となり、レコードの経済的価値が高まっている。既に21カ国が50年を超えるレコードの保護期間を採用しており、わが国も、レコード売上第二位の国として、映画著作物の保護期間(公表後70年)ないしレコード売上第一位のアメリカの例(発行後95年)などを参考としながら、レコードの保護期間に関する国際的潮流を主導すべき立場にあると考える。
以上



参考

50年を超えるレコード保護期間を有する国(21カ国)

アメリカ 発行後95年又は創作後120年のうち、何れか早い時点
インド 発行後60年
エクアドル 発行後70年
オーストラリア 発行後70年
グアテマラ 固定後75年
コートジボワール 公衆への伝達後99年
サモア 発行後75年
シンガポール 発行後70年
チリ 発行後70年
トルコ 固定後70年
ニカラグア 発行後70年
バーレーン 発行後70年
バングラデシュ 発行後60年
ブラジル 固定後70年
ブルキナファソ 固定後70年
ベネズエラ 固定後60年
ペルー 発行後70年
ホンジュラス 発行後75年
ミクロネシア 発行後75年又は創作後100年のうち、何れか早い時点
メキシコ 固定後75年
モロッコ 発行後70年

各国の保護期間は、上表以外の例外もある。
(国際レコード産業連盟[IFPI]調査、2007年1月)


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ