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資料4

過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会における意見発表

平成19年5月16日

国立科学博物館情報・サービス課長 井上透

1 博物館とは
博物館法

第1条  この法律は、社会教育法(昭和24年法律第207号)の精神に基き、博物館の設定及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もつて国民の教育、学術及び文化の発展に寄与することを目的とする。

第2条  この法律において「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関・・(略)

第3条  博物館は、前条第1項に規定する目的を達成するため、おおむね左に掲げる事業を行う。
1. 実物、標本、模写、模型、文献、図表、写真、フィルム、レコード等の博物館資料を豊富に収集し、保管し、及び展示すること。
(略2.3.4.5)
6. 博物館資料に関する案内書、解説書、目録、図録、年報、調査研究の報告書等を作成し、及び頒布すること。
7. 博物館資料に関する講演会、講習会、映写会、研究会等を主催し、及びその開催を援助すること。
8. 当該博物館の所在地又はその周辺にある文化財保護法(昭和25年法律第214号)の適用を受ける文化財について、解説書又は目録を作成する等一般公衆の当該文化財の利用の便を図ること。
9. 他の博物館、博物館と同一の目的を有する国の施設等と緊密に連絡し、協力し、刊行物及び情報の交換、博物館資料の相互貸借等を行うこと。
10. 学校、図書館、研究所、公民館等の教育、学術又は文化に関する諸施設と協力し、その活動を援助すること。
2  博物館は、その事業を行うに当つては、土地の事情を考慮し、国民の実生活の向上に資し、更に学校教育を援助し得るようにも留意しなければならない。

2 国立科学博物館の取り組み
 国立科学博物館は独立行政法人国立科学博物館法に基づき、自然史に関する科学その他の自然科学及びその応用に関する調査及び研究並びにこれらに関する資料の収集、保管及び公衆への供覧等を行うことにより、自然科学及び社会教育の振興を図ることを目的としている。
 本件に関しては、展示物の解説(音声、動画・静止画の映像を含む)や図鑑、自然観察手法などこれまで開発した膨大なデジタル・アーカイブを来館者だけでなくネットを通じて提供し、学習者が当館のコンテンツを利用した「マイミュージアム」を自宅や学校で作成することにより学習を深化させることを推奨している。
 また、科学系博物館ネットワーク事業において、信頼度の高い情報を提供するため約240館の同意を得てホームページ・コンテンツの自動収集を行い、Webサイト検索サービスとして国民に提供している。また、世界で1億2千万件流通している生物多様性情報(GBIF)の日本における博物館ノードとして、27館・4大学の保有する標本情報、約86万件を収集し海外へ提供している。

3 検討課題について
1   過去の著作物等の円滑化方策について
 各館は展示及び展示解説を充実させる努力を常に行っている。しかし、所蔵資料以外のデジタル・アーカイブ化にあたって、権利処理に多大な努力が求められると同時に、裁定制度の認知度は低く、その進展が阻害されている。簡易な新制度の検討をいただきたい。
2   アーカイブへの著作物等の収集・保存と利用の円滑化方策について
 ICTの進展に伴い、データ保存・再利用の規格が常に変化している。そのため、過去のデジタル化資産が陳腐化することによって、新規格による再デジタル化が博物館に常に求められている。その際、データ圧縮・解凍にともなう同一性保持が課題となり、より柔軟な新制度の検討をいただきたい。
 また、当館で行っている科学系博物館のWebサイト検索サービスは、当館に事務局を設置している全国科学系博物館協議会加盟館の了承を下に、自動収集を行っている。しかし、より科学技術を振興するためには、他の研究機関が開発したデジタル・アーカイブの流通・活用が求められており、デジタル・アーカイブ流通のためのインデックス切り出し等に関するより柔軟な新制度の検討をいただきたい。
3   保護期間の在り方について
 著作権法上の保護期間が終了し自由な利用が可能になることにより、広く一般に流通・知られ利用価値が高まることが予測される。博物館においては過去の作品等をデジタル・アーカイブ化し、インハウスだけの活用でなくWebに公開することにより、博物館法第3条に定める事業を積極的に展開しているが、著作権保護期間の延長によりそれらの事業に与える影響を考慮すべきである。
 著作物の公開に関して国際的な広がりが求められる中で、国際協調の観点からの保護期間の延長については、国内での利用状況や公的利益の妥当性などを勘案し、十分な議論が必要である。
4   意思表示システムについて
 博物館・視聴覚センター等社会教育施設を対象とした、自由利用マークが設定されていない。施設の設置目的を勘案すると、是非、国公立博物館の自由利用マーク新設をご検討いただきたい。

4 その他
 テレビ番組制作等において、博物館研究者・学芸員が出演だけでなく番組構成上の重要な協力をした場合も、その成果を学会発表、博物館教育事業への活用が不可能である。
 メディアにとって博物館研究者・学芸員の権利処理は対象外であり、今後、知的財権の処理にあたって、是非、ご検討いただきたい。


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