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資料2

「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」ヒアリングにおける提出意見

2007年4月27日

文化審議会著作権分科会
過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会
主査 大渕 哲也 殿

日本音楽作家団体協議会(FCA)
社団法人音楽出版社協会(MPA)
社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC(ジャスラック))

1  過去の著作物等の利用の円滑化方策について
私たちは、作品や権利情報のデータベース化を推進し、利用者がこれらに容易にアクセスして検索し、著作物等を利用できるようにするための取組を進めています。
 著作物等の利用をより円滑にするためには、著作者や作品に関する情報をデータベース化し、利用者がこれに容易にアクセスし、作品を利用できる環境を整備することが必要です。現状でも、例えば音楽の分野では、膨大な量のデータを収録したデータベースが既に公開されていますが、私たちは、さらに、様々な分野の著作者団体・権利者団体の連携・協力により、分野横断的な情報検索を可能にするポータルサイトの構築に向けた取組を進めています。
 そもそも「過去の著作物等」とは、いかなる著作物等をいうのでしょうか。もともと文化芸術作品は時代を超えて存在する性格のものであり、単に現在利用されていない状態にあるからといって、「過去の著作物等」と称する姿勢には違和感を覚えます。
 すべての著作物は、それが保護期間内であれば権利者の許諾を得て利用が可能であり、許諾条件に従って利用されることを権利者が拒むことは、通常はあり得ません。また、保護期間が切れた著作物であれば、人格権を侵害するような利用形態を除けば自由に利用が可能です。
 作品や権利者情報の検索、許諾手続の簡便化等の改善をさらに図っていくことは当然必要なことであり、私たちはそのための努力を傾注しているところですが、現在商用的に利用されていない著作物であるからといって、それが利用手続の問題であるとするのは正確ではありません。権利者の犠牲の上で著作物等の利用の促進を図ろうとする行き方は、およそ文化を尊重する立場とは程遠いものであり、決してあってはならないことだと考えます。
 円滑な利用を阻害する要因は、多くは権利者が不明の場合であり、その解決を図る手段は現在の裁定制度の改善です。より簡便・簡略かつ低廉に裁定制度が利用できるように早期に改善すべきです。また、複数の権利者がいて、全員の許諾が得られないために著作物の利用ができないという問題は、共有著作権の権利行使に当たって、一定の条件の下で利用が可能となるような措置について検討が必要であると考えます。

2  アーカイブへの著作物等の収集・保存と利用の円滑化方策について
文化的資産の保存を目的とするアーカイブの構築については、保護期間の在り方とは別に適切な対応策を検討すべきです。
 著作物等の文化的資産をアーカイブ化して利活用することは、文化の継承・発展のためにも意義深いことと考えます。その際の障害の一つとして、著作権者が不明であること、保護期間の満了時期が判明しないことなど著作権上の問題が挙げられており、保護期間延長反対の論拠とされることもあります。しかし、保護期間を延長せずに「死後50年まで」で据え置いたとしても、この問題が解消しないことはいうまでもありません。
 アーカイブへの著作物等の収集・保存と利用の円滑化ついては、保護期間の在り方とは別に、契約による対応を含めた適切な対応策について検討すべきであると考えます。例えば、文化的資産の保存として公益性が認められる「特別の場合」について、著作物等の「通常の利用を妨げず」、かつ、著作者等の「正当な利益を不当に害しない」という条件の下で、アーカイブ化を容易にするための適切な措置を検討することが必要です。

3  保護期間の在り方について
時代の進展の中で文化芸術の振興を図る上で、また、著作物等の国際的な流通を推進するためにも、保護期間を延長すべきです。
 時代を超えて愛される名作を享受する人々が支払う対価は、創作者の創作活動を支える基盤となり、更には、出版社、音楽出版社、レコード会社等によって新たな創作に投資されることによって、現在活動する創作者や次代を担う新人に多くの創作の機会が与えられます。
 一部の特権階級がパトロンとして芸術を庇護するのではなく、多くの市民の力で文化芸術が育まれる現代社会においては、著作権制度の充実こそが文化芸術振興の基盤であり、時代に相応しい適切な保護期間の設定はその基本となるものであって、創作のインセンティブを高め、新たな作品を生み出し、世に広める土壌を豊かにする上で重要な役割を果たすことは間違いありません。保護期間を延長して創作のサイクルの源泉を豊かにすれば、より多くの新たな才能がその真価を発揮する機会を獲得し、そうした才能を支える関係者の意欲を刺激することにもなるでしょう。現代は、そうすることによって生み出される質量ともに豊かな著作物を強く求めています。
 また、ネットワークが急速に発達した現代社会において、著作物等の適切かつ実効性ある保護を行うためには、保護期間についても国際的な協調を図っていく必要があり、我が国との文化交流が圧倒的に盛んな欧米諸国等と同様の保護期間に延長する必要があります。
 著作権を少しでも早く消滅させて、「公有」の名の下に自由に利用しようとする考え方は、文化芸術の最も基本である創作を軽視し、商業的観点からの利用を偏重する以外の何物でもありません。このような考え方の下では、思想・感情のみならず表現までをも過去の著作物から安易に借用した作品がネット上にあふれることはあっても、創作的な表現を本質とする豊かな文化芸術のこれからの発展は望むべくもありません。それは結局、文化芸術の愛好家、消費者に大きな不利益をもたらすことになります。

4  戦時加算制度の解消について
早期に戦時加算制度の解消を図るべきです。
 連合国民の著作物についてのみ通常約10年の保護期間を延長する戦時加算制度が、第二次大戦終了後62年も間近いという現在において、しかも、実質的に我が国にのみ課せられているということは、どのような観点からも正当性を欠いていると考えます。
 太平洋戦争当時に比べコンテンツビジネスの市場規模が桁違いに拡大し、連合国側の著作権者に対して逸失利益をはるかに上回る利益が還元されている現在においてはなおさらです。
 また、加算日数は、平和条約の批准日やベルヌ条約等による著作権保護関係の開始時期によって国ごとに異なるだけでなく、著作権の発生日や譲渡の有無によって同一の著作者についても作品ごとに異なるため、これを正確に特定するには国外の関係先に古い資料の提供を依頼するなど膨大な量の調査が必要となり、円滑な利用の大きな阻害要因となっていることも問題です。
 著作権制度について国際的な調和が求められている現在、保護期間を「死後70年まで」に延長することによって、戦時加算適用後の保護期間「死後50年プラス10年余」よりも高い水準の保護を内外の著作権に等しく与えることとして、戦時加算制度の解消について連合国側の理解を得、その実現を図るべきです。

5  意思表示システムについて
私たちは、一定の条件の下に自由な利用を認める著作権者の意思を表示する仕組みの実用化を目指します。
 著作権法の権利制限規定の適用がない利用行為についても、著作権者が一定の範囲で自由な利用を認める意思を有し、実行しようとしているケースも多いと思います。こうした場合に、その対象となる作品や利用の条件を的確に利用者に伝える仕組みがあれば、利用者・権利者双方の時間と労力を節約し、円滑な利用に資することになり、新たな流通を促進させる可能性も生まれてきます。
 私たちは、作品、権利者情報のデータベース及びポータルサイトを整備する中で、そのような著作権者の意思を表示する仕組みの実用化を検討する考えです。

以上


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