著作権分科会 私的録音録画小委員会(第16回)議事録・配付資料

1.日時

平成20年1月17日(木曜日)10時〜12時

2.場所

経済産業省別館 10階 1028号室

3.出席者

(委員)

石井、井田、大寺、大渕、華頂、亀井、河村、小泉、河野、小六、椎名、筒井、土肥、苗村、中山、野原、生野、松田、森田の各委員

(文化庁)

高塩文化庁次長、吉田文化庁審議官、山下著作権課長、亀岡国際課長、川瀬著作物流通推進室長ほか

4.議事次第

  1. 制度のあり方について
  2. その他

5.資料

資料
  著作権保護技術と補償金制度について(案)
参考資料
  私的録音録画と補償の必要性に関する考え方の変遷(PDF:96KB)

6.議事内容

【中山主査】

 それでは時間でございますので、ただいまから文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の第16回を開催いたします。本日はご多忙中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 議事に入る前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと特段非公開にするには及ばないと考えられます。そして、傍聴者の方々には既にご入場していただいておりますけれども、このような処置でよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【中山主査】

 ありがとうございます。
 それでは、本日の議事は公開ということにいたしまして、傍聴者の方々はそのまま傍聴をお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。
 まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【木村課長補佐】

 恐れ入ります、本日の配付資料の確認をお願いいたします。本日の議事次第、1枚物の下半分に示させてもらっておりますが、資料といたしまして1点、「著作権保護技術と補償金制度について(案)」でございます。そのほかに参考資料として1点配付させてもらっております。あと、ほか委員の席上にはこれまでの配付資料といたしまして、青いとじ込み資料でございますが、これも配付させてもらっております。
 以上でございます。漏れ等はございませんでしょうか。

【中山主査】

 よろしいでしょうか。
 今日は資料の著作権保護技術と補償金制度について(案)を事務局より説明を頂戴いたしまして、その後、意見交換を行いたいと思います。
 今日はこれ1点でございますので、十分ご意見を頂戴できればと思います。
 それでは、まず事務局より資料の説明をお願いいたします。

【川瀬室長】

 資料のご説明の前に、意見募集の件についてお詫びと訂正になるわけですけれども、少しご報告をさせていただきたいと思います。
 昨年の11月28日に開催されました本小委員会におきまして、私のほうから本小委員会の中間整理に対して寄せられました意見総数について、約7,500通というご報告をさせていただきましたけれども、その後、詳細に改めて計算をしたところ、正しくは8,720通でございました。これは、意見につきましてはすべて事務局のほうで目を通しているのですが、単に数え間違いでございまして、同日に意見募集の概要をご説明いたしました時点以降で新たな意見が追加とか、発見されたわけではございませんので、ご了承ください。
 なお、内訳でございますけれども、8,720通のうち、団体からのご意見が110通でございます。個人からのご意見につきましては8,610通でございました。この場をかりまして訂正をいたします。
 なお、意見の内容につきましては、意見募集に寄せられた数が膨大な数でございまして、事務局のほうで整理が遅れていたわけでございますけれども、昨年の12月28日から文化庁ホームページにおきまして公開をしております。年末年始は庁舎引っ越しのために一時中断しておりましたけれども、文化庁のホームページから入っていただきますと、意見が見られるようになっておりますので、改めてご報告をしたいというふうに思います。
 それでは、資料のご説明にまいります。
 お手元の資料をご覧いただけますでしょうか。
 ご承知のとおり、10月にこの小委員会の中間整理をまとめたわけでございます。中間整理につきましては、今までの論点を整理した上で、そのさまざまな考え方について整理をしたわけでございますけれども、その中で一番大きな論点といいますのは、著作権の保護技術でございます。本日、この参考資料というものを配っておりますけれども、これが前回の資料でございまして、改めてお配りしているわけですけれども、その一番最初のページの2007年検討中というところに、著作権保護技術の評価(新たな問題点)というふうに書いていますけれども、やはり中間整理においても著作権保護技術の評価、すなわち著作権保護技術と補償の必要性、ないしは補償金制度との関係について、相当関係者間で大きな意見の隔たりがあったというところでございます。
 したがって、今回の資料につきましては、その著作権保護技術と補償の必要性、ないしは補償金制度ということで、私ども事務局のほうで整理をさせていただいたものを「著作権保護技術と補償金制度について(案)」という形で本日提示をさせていただいて、意見を頂戴したいというふうに思っているわけでございます。
 基本的には、考え方については、前回お配りしました、今回の参考資料としてお配りしております、「私的録音録画と補償の必要性に関する考え方の変遷」の中で、将来における私的録音録画についてというものについて前回ご説明させていただいたわけでございますけれども、その方向に沿った形で、この2007年の検討に当たってどのような考え方で整理をするのかという、そういう視点からつくったものでございます。
 それでは、内容についてご説明をさせていただきます。
 まず資料の1でございますけれども、権利者の被る経済的不利益と補償の必要性についてということでございます。
 著作権保護技術の施されました著作物等の私的録音録画に関する権利者が被る経済的不利益につきましては、例えば権利者の要請による保護技術等につきましては、原則として補償の必要性がないということは、関係者に異論がないと考えられます。
 中間整理でご記憶の方も多いと思いますけれども、補償金制度のなくなる場合の例示としまして、厳しい保護技術、または選択権が確保された保護技術というようなことで、事務局で試案という形で整理をさせていただきましたけれども、その後の意見募集でなかなか関係者からも厳しいご指摘があるわけでございます。その後、さまざまな関係者にもお話をし、整理をしたところ、権利者の要請による技術等につきましては、原則として補償の必要性がないというようなことになったわけでございまして、関係者に異論はないというふうに考えられるわけでございます。
 そうしますと、注の1でございますけれども、例えば次世代のオーディオ、例えばこれは現状普及しつつあるDVD−Audioでございますけれども、DVD−Audioにつきましては、一般に権利者側の要請に基づいて著作権保護技術が採用されるというものでございますので、この考え方に基づきますと、次世代オーディオについては一般に補償の必要性はないというふうに考えられるとのではないかということでございます。
 ただ、一方で、デジタル録音録画については、デジタル録音録画のそのものの特性、つまり、高品質、品質の劣化がない等の特性を有しているということもございます。それから、著作権保護技術の採用の経緯やその内容等につきましては、さまざまな過程を経て採用が決定されることもまた事実でございまして、上記のような権利者の要請による技術以外のすべての利用形態について、一律に経済的不利益は解消され、権利制限のもとにおいて補償の必要性がなくなるということまでは、そこまでは言い切れないのではないかというふうに考えられるわけでございます。
 そういうような1を前提にしまして、次に2ということになるわけでございまして、これが私的録音録画補償金制度による解決についてということでございます。
 補償金制度は、著作権保護技術がない時代に制度設計され導入されたものでございます。世界で初めて補償金制度を導入したのが当時の西ドイツでございまして、これは1965年に制度を導入しているわけでございますけれども、基本的にはそういった時代の制度設計ということでございます。著作権保護技術により、録音録画について一定の規制が行われる場合、今までのように事実上無制限の私的録音録画が行われる状況は解消されることになるわけでございます。これは事実関係ですから異論がないと思います。
 この著作権保護技術は、著作物の提供者または権利者の要請により機器メーカー等が開発している場合がほとんどでございます。これは過程の中で機器メーカー等が開発したものを提案をしたり、または要請に基づいて新規に開発したり、いろいろな形態があると思いますけれども、基本的には著作物の提供者や権利者がビジネスモデルを決定するときに採用するということでございますので、通常の場合にはこういったことが言えるのではないかというふうに思います。
 そうしますと、機器メーカー等は権利者が望まない録音録画の抑制について、やはり一定の役割を果たしているということは評価しなければならないと考えられるわけでございます。今までの無制限の私的録音録画とは違って、やはりメーカー等の役割というものも、これは評価しなければならないということでございます。
 その次でございますけれども、そうしますと、補償金制度は、私的録音録画の拡大に伴いまして、権利保護と利用の円滑化に関して録音録画機器等のメーカーに補償金の支払いについて一定の協力を求めるという考えをもとに制度設計されているわけでございまして、著作権保護技術が普及しまして、録音録画の制限に機器等のメーカーが一定の役割を果たしているという現状から、著作権保護技術の開発・普及のみならず、補償の必要性がある分野であっても、協力義務者か支払義務者かにかかわらず、機器等のメーカーに一定の負担、これは協力義務者の場合であれば、一定の事務的な負担、または、支払義務者であれば金銭的な負担ということになると思いますけれども、そういった一定の負担を強いるのは関係者の理解を得られなくなってきており、現行の補償金制度による解決は、今後縮小し、他の方法による解決に移行すべきであるというふうに考えられるわけでございます。
 理論的には様々な考え方があろうかと思いますけれども、少なくとも今までのこの小委員会の経緯から関係者の理解が得られないということではないかというふうに思っているわけでございます。
 注2は、そうは言いましても、著作権保護技術により録音録画の制限を緩和しまして、関係者の合意により補償金制度で対応するという選択肢を、これを完全に否定するという必要はないわけでございまして、本小委員会での合意というのはなかなか難しいわけでございますけれども、将来、そのような合意が成立すれば、補償金制度を存続させるという、その可能性を否定する必要はないんだろうと思います。
 それでは、2で補償金制度についての縮小、他の方法への転換ということでございますけれども、補償金制度による対応を検討する分野、すべての分野について補償金制度による対応をやめるのかというと、やはりそういうわけにもいきませんので、その3でございますけれども、2のとおり補償金制度による対応を縮小するということとしますけれども、当面、補償金制度での対応を検討する必要がある分野としては、次のとおりではないかというふうに思います。
 アが音楽CDからの録音でございまして、音楽CDは基本的に録音自由のメディアでございまして、SCMS方式による第一世代の録音しかできないものもありますけれども、それ以外はSCMS方式に機能していないという主張があるわけでございます。
 イは、無料デジタル放送からの録画でございます。我が国の無料デジタル放送の新しい著作権保護ルールでございます、通称でございますけれども、ダビング10につきましては、これは総務省さんの審議会の中で検討され、総務省の情報通信審議会の第4次中間答申という形で公開され、その線に沿った形で新たな保護ルールが実施されようとしているところでございますけれども、このダビング10の採用に関する一連の経緯等から、1で述べましたように、権利者の要請により策定されたものではないのではないかということです。
 さらに、無料放送は他の放送等に比べまして公共性が非常に高い放送でございまして、できるだけ多様な情報や娯楽を積極的に国民に提供するという使命を有しているところでございまして、例えばコピーワンスという技術、今、放送で採用されている著作権保護技術の中にコピーワンスという選択肢も、当然あるわけでございますが、そういったコピーワンスという技術的に採用が可能な方法を選択権の一つとして確保することが事実上できない、つまり、ダビング10に移行しますと、権利者の意向によってコピーワンスも採用できるというようなことは、技術的には可能なんですけれども、事実上はできないというような特殊性がございます。
 また、無料放送であることから、権利者と利用者との契約上でも対応できないという特徴があるわけですから、このイについても補償金制度による対応を検討しなければならない分野になるというふうに思うわけでございます。
 なお、そのダビング10につきましては、これは総務省の第2次中間答申でもありますように、暫定ルールというふうに位置づけられているわけでございますけれども、例えばその暫定の見直しの際に、権利者の要請などに基づく新たなルールが導入された場合には、これは1の整理に返りまして、補償金制度は必要ないというふうに考えられるところでございます。
 最後に、4でございますけれども、4は権利者が被る経済的不利益の解消につきましてでございます。
 著作権の保護技術が採用されている分野の中で、この3という、今、説明しました分野以外につきましては、現行の補償金制度による解決が不適当であるということにしましても、その1で述べましたように、利用者の私的録音録画によりまして権利者が経済的不利益を被り、また補償の必要性も否定されないという利用形態も残るわけでございます。したがって、そういった権利者が被る経済的不利益を解消するためには、著作物等の提供者を介する場合も含めまして、権利者が契約によって経済的利益を確保できる場合においては、契約モデルによる解決に委ねるべきというふうに考えまして、前回の12月18日の考え方の整理の中に入ってくるわけでございます。
 この場合、問題になるのが、契約環境の整備でございまして、30条の2項を改正しまして、私的録音録画について無許諾、無償の録音録画を認めた上で契約モデルに移行するということも、これは事実上の話で考えられるでしょうけれども、利用者の利便性の確保とか、また利用者が大きな不利益を被らないかということが大前提でございますけれども、そういうことを前提にして、例えば可能な分野−これは中間整理でも議論されています配信事業分野なんかが該当するわけでございますけれども−から30条の段階的縮小を行うことにより、権利者が契約により、その利益を確保しやすくすることを考慮していく必要があるんじゃないかというふうに考えられるわけでございます。
 以上でございます。

【中山主査】

 ありがとうございました。
 それでは、今、事務局から整理をしていただきましたこの案につきましての意見交換を行いたいと思います。
 何かございましたらお願いします。
 松田委員、どうぞ。

【松田委員】

 既に議論されたところでございますけれども、複製の保護技術、著作権保護技術と、それからCD録音録画の関係についてであります。このペーパーの整理で、私はいいんだろうなというふうに思って、今、見ておりました。
 著作権保護技術のコンテンツに付与する、つけるという経緯は千差万別なんだろうと私は思います。例えば映画のパッケージにおいて、1回のコピーもノーというような選択をして、それで売る場合もある。これはまさしく権利者がそれをそういう商品として販売するんだという決断のもとにやっている。それ以外のものでも、例としては、このペーパーではダビング10の話が出ているわけなんですけれども、私はダビング10の採用はいろいろな諸事情から決まってきたんだろうというふうに思うわけであります。多分、放送のマルチユースをさらに促進するようなことが背景にあり、なおかつ機器メーカーの新しい需要ということも背景にあり、そこである程度総合的な判断がなされてダビング10が決定されていったんだろうと思います。
 このダビンク10につきましても、将来的にどうなのかというのは、まだまだわからないところではありますけれども、こういう諸事情による選択のときに、全部私的録音録画は排除されていい、補償金制度が排除されていいというふうには、私は考えるべきではないだろうというふうに思っています。やはり30条の原点に戻って、30条は私的利便における著作物の利用を一定範囲で自由にすることによって著作物を楽しみ、享受し、文化の発展、科学の発展にも資するような、そういう積極的な位置づけをし、そして、それを超えるものについては一定の有償化を図っていかざるを得ないという、こういう要請から出ている、と私は考えております。
 保護技術の諸事情によって、具体的に検討していかなければならないということのペーパーのポリシーは、私は支持できるものではないかなというふうに結論的には思っています。ただ、この議論は結局はどうなるかというと、私的録音録画の補償金を具体的に決めるときに、この問題をさらにそこで検討せざるを得ないという問題を引きずっているということもあるのではないかなというふうに思います。

【中山主査】

 ありがとうございます。
 ほかにご意見ございましたら。
 小泉委員、どうぞ。

【小泉委員】

 今、川瀬室長がご示唆されましたとおり、この線で関係者間で事実上合意が成立しているならば、それ自体について私がどうこう言う立場にないんですけれども、この紙が世の中に出たときに、国民というんですか、一般の方が読んで納得が行く内容になっているかという観点からコメントしたいと思います。私の理解では、この案は、保護技術というものが権利者の要請によってかけられたものか、そうでないものかによって、補償金をかけるかを決めるんだという前提に立っていること重います。ただ、問題は、ユーザーの側あるいはコピーできなくなる立場から見ると、保護技術が権利者によってかけられたのか、提供者がかけたのかというのはわからないわけです。わからないけれども、法律上、そうなっているから納得してくださいというのもわかるんですけれども、そうであるならば、もう少し理由づけというのが必要なんじゃないかなという気がしています。
 例えば、まだこれは本当に素案だと思うので、揚げ足をとるつもりは全くないんですけれども、1ページの最初のポツ、2行目のところで、「例えば権利者の要請による技術など」となって、これ、かなりぼかした形になっていますよね。1ページの2の2つ目のポツの1行目でも、「提供者又は権利者の要請により」技術上はかかっているとなっています。一方、次のページにいくと、最後、これは議論の決め手になっていると思うんですけれども、2ページの3のイのところで、ダビング10というものは経緯等から、権利者の要請によってかけられたものじゃないから著作権法としてはかくかくしかしがでとらえるというふうになっています。一つ筋は通っているんですけれども、そこをもう少し、なぜ著作権法の補償金との関係では権利者の要請のものについてか、そうじゃないかによって考え方が分かれるのですということを、私は結論自体をどうこうしろというんじゃなく、なぜそうなっているかということをぜひ説明した方が、このペーパーを見た方が、納得するかどうかは別として、一応論旨が理解できるんじゃないかなと思いました。
 以上です。

【中山主査】

 その点、どうぞ、室長。

【川瀬室長】

 小泉委員のご指摘はごもっともだと思います。ただ、少しご説明をさせていただきますと、このペーパー、最初の1のところで、「例えば」ということなんですけれども、その3行目を見ていただくと、「関係者に異論はない」ということでございまして、中間整理を公表しまして、その後、いろいろな関係の方のお話も聞き、意見交換をさせていただいたんですけれども、先生おっしゃるとおり、理屈がどうのこうのというようなことは、もちろん大事で、重要なんですけれども、少なくともこういう部分に関しては関係者でコンセンサスができるということです。したがって、多分、立場によってある権利者の要請というところを超えたところで、ある立場の方はここも必要ないじゃないかと、またある立場の方はこの部分必要ないじゃないかというようなことがあろうかと思います。それは中間整理で意見として整理はされているわけでございますけれども、そういう中でもこの部分だけについては関係者のコンセンサスがあるんではないかというような意味で使わせていただいている部分です。
 それから、2のところの2つ目の丸の最初のセンテンスの「著作物の提供者又は権利者の要請により」というところは、これは1の場合には権利者の要請があれば補償の必要性はないんだろうということなんです。それで、2のところは、これは基本的には著作物の提供者とか、権利者の要請によってメーカー等が著作権の保護技術を開発し、または事前に開発したとしても、それを採用するのはこういった人たちが採用するということになりますから、最後のところで機器メーカー等が一定の役割を果たしているというところを導き出すための一つの前提ということになっているわけでございます。
 もちろん理論的には提供者の意見というのが権利者の意見なのかどうかというところはございますけれども、そこら辺は、これはご承知のとおり、簡単なエッセンス版でございまして、また報告書等をまとめられるような状況になれば、そこでまた詳細についてはご議論いただけるものというふうに考えておりますし、ご指摘の点は私どもも重々承知しておりますので、その辺は今後は理論的な集約というものに努めたいというふうに思っております。

【中山主査】

 確認ですけれども、権利者が権利制限をした場合には、補償金は要らないだろうけれども、権利者以外の提供者が権利制限をした場合は今後の課題であると考えてよろしいんですか。

【川瀬室長】

 これは著作物の提供者と権利者というのが完全に別々かというとそうでございませんで、著作物の提供者が権利者である場合もありますし、それから権利者の意を酌んで著作物の提供者がそういった要請をしている場合もあろうと思います。そこは少し理論的には整理しなきゃならんとは思いますけれども、その辺は今後、少し事務的にも整理したいと思います。

【中山主査】

 ほかにご意見は。
 どうぞ、苗村委員。

【苗村委員】

 私もこの考え方が現実的な対応、解決の方法だろうと思いますので、基本はこれでよろしいと思うんですが、2ページ目の3で書かれているところについて、ちょっとコメントだけします。
 例えば、音楽CDからの録音というものを、少なくとも当面は補償金制度によって対処するという趣旨で、現実的だとは思いますけれども、一つはレンタルCD、あるいは友達が買ったCDを借りてコピーすることをどうするかという問題と、従来は録音するもとが何であるかではなくて、その録音した媒体、具体的にはMDだったり、ほかの媒体だったりするということについて注目したわけですが、今度はソースのほうを注目するということで、幾つか新しい問題が出てくると思います。
 典型的なものは、パソコンのハードディスク、あるいは携帯電話の中の記録媒体に録音するのも入るのかというたぐいの問題があると思いますし、また一方、音楽CDから、例えばデジタルラジオで放送されたものを録音するのはどうするか。要するに、音楽CDがもとになったものはすべてなのか、直接CDからの録音に限るのかといったことを整理しなければいけないだろうと思います。
 それから、無料デジタル放送もある意味では似ていまして、従来はDVD−RWなどに録画する場合に補償金がかかっていたのに対して、ハードディスクについてもかけるのか、また、その録画をしたものを別の媒体に、ダビング10のルールで録画したときにも再度かかるのかという、そういった問題がありますので、まだ議論は要ると思いますが、ただ、方向はこの方向で、あと細かい詰めをしていくのが現実的だろうと思います。
 以上です。

【中山主査】

 ありがとうございました。
 確かにこれは基本的な方針ですから、これから詰めなければならない点はたくさんあろうかと思います。
 ほかにご意見ございましたら。
 どうぞ、椎名委員。

【椎名委員】

 質問なんですが、権利者の要請によるというフレーズが、先ほど小泉先生のご指摘のとおり何回か出てくるんですが、3の一番下のところのダビング10は暫定ルールであって、例えば権利者の要請などに基づく新たなルールが導入された場合・・・というふうに、ここだけ「など」という言葉が入っているんですけれども、これの意味合いというのは何かあるんでしょうか。

【中山主査】

 室長、どうぞ。

【川瀬室長】

 基本的には、1のところで「例えば、権利者の要請」というふうになっておりますので、したがって、先ほどから言っていますように、これは簡単なペーパーなんですけれども、ほかに、例えば合意とか、そういうこともあるかもしれませんし、そういう意味で「など」とつけているわけでございます。ほかにあるかもしれないというところで、ちょっと含みを持たせた考え方でございます。

【中山主査】

 よろしいですか。

【椎名委員】

 ほかにどういうものがあるのか、ほかの合意というのは、例えば。

【川瀬室長】

 例えば、先ほど言っていますように、もともとの基本的な考え方の整理のときに、例えば権利者の要請等によるものが補償の必要性が要らないというふうにしていますので、その表現に引きずられる形で、例えばここを「権利者の要請等」というものを入れなければ、基本的には前のところの「例えば」というのをとらなければならないわけですから、そういう文章の表現のつなぎという点で「など」というものを入れているということでございます。

【椎名委員】

 その3のところにも「例えば」と入っているんですよね。ですので、センテンス的には、ここは「など」がなくてもよいんではないかというふうに思いました。意見として申し上げておきます。

【中山主査】

 しかし、この「例えば」をとってしまうと……

【椎名委員】

 「例えば」は残して、「など」は要らないんじゃないかなと思いました。上が「例えば」があるから「など」をつけているというお話だったんですけれども、下にも「例えば」があるわけです。と、単純に思ったわけです。

【中山主査】

 室長、いかがですか、そこは。

【川瀬室長】

 そこは少しまた検討させてもらえますでしょうか。私の心づもりとしては、中間整理の段階で、先ほど言いましたように、私どもとしては事務局試案という形で厳しい制限とか、そういったものも入れているわけでございまして、それに対していろいろとご批判あるのは承知はしているところでございますけれども、これだけなのかなと。正直言いまして、短期間の間にいろいろと意見を聞いてまとめたわけでございますので、申しわけないですけれども、そう何か強い意味があって入れているわけではございませんので、例えば先ほども言いましたように、この問題について整理が整えば、当然報告書という形になると思いますので、そういった段階になれば詳細な議論というものが、当然改めてするわけでございますので、そういった中で、私どもとしてもう少し整理をしたいというふうに思っています。

【中山主査】

 報告書への前段階の骨子と考えてよろしいですね。

【川瀬室長】

 そうです。本当のエッセンス版でございまして、例えばこれを見ていただくと、センテンスごとにこれは何だ、あれだということがたくさん出てくると思います。それは私どもも承知をしていますけれども、この案は関係者の方にとっては非常にドラスティックな案といいますか、今までとは少し内容が違うといいますか、そういう案でございますから、そんな例外をたくさん書くとか、そういうことよりも、骨子といいますか、コアの部分についてまずお示しをして、あとの肉づけにつきましては、これからいろいろな段階がございますので、そういったところで肉をつけていこうと考えています。その際に、やはりいろいろなご議論があると思うんです、それはだめだとか、これを入れてほしいとかということは。それはまた改めて調整をしたいという意味でして、今回の段階で少し表現が不適切な部分があるということは重々承知しておりますし、それはさまざまな立場の方から見て、いろいろなご意見があることも承知していますので、その辺は何とぞご容赦いただきたいというふうに思っております。

【中山主査】

 そういう趣旨でこの文章を読んでいただければと思います。
 ほかに何かご意見、あるいはご質問ございましたら。
 どうぞ、河村委員。

【河村委員】

 急に見せていただいた案なので、全体に細かいことを意見として断定することはできないのですが、2ページ目の3の部分について、私は、総務省の委員会のほうにも出て、ダビング10に至る検討や、それが採用された場面にも参加しておりましたので、ここへ来てここにスポットライトが当たって、補償金として残す何か大きな柱のようなところにこれが入ってきた事態を見て、これまでは全体的に補償金制度について申し上げるようにしてきたのですが、やはりこの問題に対して、消費者としての意見、視聴者としての意見をここではっきり言わなければいけないのではないかというふうに思っています。
 このダビング10というものについて、3つの異なる角度から意見を申し上げたいんですけれども、1つはCDのレンタルですとか、パッケージを売るとか、そういうビジネスに関するものについての補償金と、公共性の高い、基幹放送である地上波の無料広告放送に対しての、保護技術がどうであるなら補償金が何であるという考え方を、一律に考えるということは非常に抵抗感を感じます。これは同列に考えずに、別にしてもいいんじゃないかと。基幹放送に対しては、補償金について、別の考え方があってもいいのではないかというふうに思っています。
 もう1つは、ダビング10になったということが大変な緩和であるとか、権利者の要請によらない、不本意な大きい数であるというようないい方についてです。これはコピーワンスを基準にしておっしゃる論議なわけですね。
 ところが、コピーワンスというのはだれの要請で、どういう理由でなったかわかりませんけれども、消費者、視聴者は全然知らないところで決められて、いきなり1個しかできないというものになったときでも、補償金額は一切再検討されなかったわけですね。よくよく考えてみますと、デジタル録画機に補償金がかけられたというのは、アナログ放送は保護技術をかけられていませんから無制限にできてしまうと。アナログ放送のデジタルコピーが無制限にできてしまうから補償金が必要なんだといって採用されたものだと聞いています。デジタル放送が始まり、保護技術が採用され、しかもコピーワンスになって、無制限から1個になっても金額が全く変わらなかった。これは合理的じゃないですね。
 消費者、視聴者から見ると、例えばそれでも補償金だというのなら、金額を無制限分の1にするべきだと考えます。それで10個になったから緩和だというのなら、無制限分の1を10倍にするというような、そういうことであれば納得がいきます。勝手に決まったコピーワンスの1個を基準にして、ダビング10だから緩和されて大変というような言い方は、金額の決定の面から見ても納得できません。
 もう1つはまた別の角度の意見です。先ほど小泉先生がおっしゃったことは、私が、まさにもやもやと感じていたことを大変論理的におっしゃっていただいて、なるほどなと思いました。これはダビング10についてということよりも、今度の案の全体についてですが、3の、補償金制度により対応を検討する分野というのがあって、一般の消費者にとって納得感がある理由づけというのがあるとしたら、複製が自由にできるというものではないかと思いました。
 小泉先生もおっしゃいましたけれども、権利者の要請とか、権利者の意思が反映されているとかいないとか、そういう何か証明しにくいものが要件になるというのは、何かもやもやとした感じが残ります。もしそうだとすると、権利者の側が厳し目の意見を言っておけば、何でも緩和、自分の意見よりは緩かったのだから補償金が必要だというふうにもなりかねません。
 消費者から見ると、技術によって複製が何個であるとか、何回であるとかということがなく、自由にできるものに関しては補償金を払うという考え方であれば、わかりやすいということはできると感じました。

【中山主査】

 その点に関しまして、華頂委員どうぞ。

【華頂委員】

 今、河村委員のおっしゃったことでちょっと補足したいんですけれども、映画製作者の複製に対する基準は、コピーワンスでも何でもなくてコピーネバーですね。それが基準です。それから、回数で言えば、ゼロかそれ以外ということです。

【中山主査】

 亀井委員。

【亀井委員】

 この資料を拝見いたしまして、JEITAとしては持ち帰って検討するしかないんですが、文章として読んだときにどう読むかというところは、対応を検討するというのは、恐らく今、河村委員がおっしゃったようなことは、対応を検討するうちの一つになっておるのかなというふうに読むのかなと思って理解いたしました。補償金が直ちに要るという、決定づけられたというふうに書いてあるということではないというのが、今の私の理解でございます。

【中山主査】

 室長、どうぞ。

【川瀬室長】

 河村委員のご意見でございますけれども、まず第1点目の基幹放送と著作権の関係でございますけれども、これは確かに委員ご指摘のとおり、その基幹放送が他の放送と違うということは、私どもも十分認識しているわけでございますけれども、ただ、著作権との関係でいいますと、基幹放送だから自由に著作物が利用できるというわけではございませんで、当然、これは他人の財産ということになりますので、例えば放送に利用する場合にも、例えば著作者の許諾権が働くということになりますから、それは運用ルールの中で一定の使用料を払って使うということになっているわけでございますから、確かに利用の公共性によって権利制限をかけるということは、著作権の中にあるんですけれども、そこはやはり権利者の財産権の利用ということが伴いますので、そことのバランスの中でどう考えていくかという問題だということだと思います。したがって、補償の問題もそういう中で考えていく必要があるのではないかと思っております。
 また、コピーワンスからダビング10への経緯の点でございまして、まさしく委員ご指摘のとおり、コピーワンスの時代の問題、それからダビング10の時代の問題ということになるわけですけれども、まさに補償金制度につきましては、著作権の保護技術が新たな問題として俎上に上がってきたわけでございますけれども、検討の時期が遅過ぎたんじゃないかというご指摘はともかくとしまして、そういう意味でこの小委員会を開きまして、そこの問題について改めて整理をしていこうということで検討しているということで、少し時期が遅れたのかもしれませんけれども、その点はこの委員会の場で改めて審議していくということでございます。
 なお、その3点目のご意見でございますけれども、やはりアナログの時代とデジタルの時代というのは、大きな違いがあるんだと思います。著作権保護技術の問題が出てきましたのも、それはデジタルの複製といいますか、それは例えばもとの音源と同じようなクオリティができるとか、複製が容易であるとか、大量にできるとかという特徴もございまして、著作権の保護技術というのができたわけでございます。
 したがって、そのコピーが、言うなれば補償金制度という考え方は、確かにそういうお考えはあろうかと思いますけれども、まさにデジタルの時代の中で著作権の保護技術が社会に現に受け入れられていると。その中で補償金制度をどう考えていくかということは、アナログの時代とは少し違った観点から考える必要があろうかというふうに思います。
 以上でございます。

【中山主査】

 ほかにご意見はございますでしょうか。
 どうぞ、野原委員。

【野原委員】

 1点、ほかにというよりは重複するんですけれども、先ほど小泉委員の言われたことについて賛成ですので、ぜひ進めていただきたいと思います。
 全体を通して、いろいろなところに配慮し、関係者の方々との調整をやられたということがひしひしと伝わってくる資料で、そういう意味で事務局の方々大変努力されたんだろうと思いますし、関係者の方々も十分検討された上でこういう形が出てきているかなと思います。その意味ですばらしい案だと思いますし、基本的な流れはこれでいいと思います。
 ただ、これがひとり歩きをして読まれるということを考えると、全体を通して利用者の利便性の確保ということが薄いと思います。資料全3ページの中で、利用者の利便性確保について触れているのは最後のページだけなんですね。しかも、補償金制度ではなく契約によって対応する場合の契約環境の整備をする際にはという整理の中で利用者の利便性の確保が前提として必要であると出てくるということで、そういう意味で、それ以外については利用者不在で、著作権者と機器メーカーが調整をしたという印象が感じられるという資料になってしまっていると思います。どこか、冒頭でも構わないと思うんですけれども、そもそもこういう著作権保護技術や補償金制度によってつくられていくその市場環境は、利用者の利便性を確保することが重要なんだと、このことを大前提に詳細を調整していくとこうなるんだと伝わるようにぜひ配慮いただきたいと思います。

【中山主査】

 室長、どうぞ。

【川瀬室長】

 ご意見はごもっともだと思いますので、私どもは先ほどから言っていますように、消費者の利益、消費者の利便の確保というものについてないがしろにしているわけではございませんので、それは中間整理の段階でも十分配慮しているつもりだと思いますけれども、確かにご指摘のように、最後の部分的にしか出てこないというところもございますので、その辺はこれを変更する機会というのがございましたら、そのところについては、もう少しその点に目を向けて整備をし直したい。また、そういう機会がございませんでしても、最終報告のときには、当然のことながらそういったものについて、ある程度きちっと言及をした形で整理をさせていただくというふうに考えております。

【中山主査】

 著作権法の世界、プレーヤーには、現在では一般のユーザーというか、消費者が入ってきておりますので、ぜひその点の視点からも検討を加えてまいりたいと思います。
 ほかに。
 どうぞ、小六委員。

【小六委員】

 全く今のことと同じことをもう一度強調させていただきます。
 権利者の立場からしましても、ユーザーの方の利便性をきちっと確保するということをきちっと評価したいと、そのように思います。権利者も一利用者であるということをきちっと書いていただいて、ですから、利用者の利便性は必要なんであるということは、ぜひ必要であると考えております。

【中山主査】

 そうですね、ユーザーからそっぽ向かれたら、恐らく権利者にとっては損害だろうと思いますので。
 ほかに何かございましたら。
 よろしいでしょうか。
 予定されている時間より大分早いわけでございますので、何かございましたらお伺いしたいのですが。
 もし意見がないようでございましたら、本日の議論はこの程度にしたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。
 最後に、次回の小委員会の内容も含めまして、事務局から連絡事項ございましたらお願いいたします。

【川瀬室長】

 本日はどうもありがとうございました。
 本日事務局のほうから提案しましたこの著作権保護技術と補償金制度についての案でございますけれども、本日の議論を聞いていますと、検討に値しないというようなご意見がなかったようでございますし、先ほど私が少し言いましたように、内容についてはかなりそれぞれのお立場の方に譲っていただくといいますか、そういう内容が含まれておりますので、この場で、これで案がとれるということは私どもも考えておりませんので、特に団体推薦で出ておられる委員の方々につきましては、それぞれの組織に持ち帰っていただきまして、これを踏まえてその内容について十分検討していただきたいというふうに思いますので、ぜひご検討をよろしくお願いしたいということをお願いをして終わりたいと思います。
 なお、次回の小委員会でございますけれども、1月23日の10時から12時を予定をしております。次回は今期の文化審議会の著作権分科会における最後の小委員会でございますので、その今期の取りまとめも含めまして、今後の検討の進め方についてご審議を賜るというふうに予定をしております。
 以上でございます。

【中山主査】

 この案に基づきましても、恐らくまたこれから検討すべきことは多々あると思いますが、これで一応、冷静にテーブルについて話をするという素地はでき上がったのではないかと思っております。
 それでは、本日はこれで文化審議会著作権分科会の第16回私的録音録画小委員会を終わらせていただきます。
 本日はありがとうございました。

(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室)