全体
ユーザーに一定の自由度を約束し、メーカー等は商品開発の自由度を確保し、権利者の不利益も生じない・・・という安定した三角形に少しでも近づけるために、私的録音録画補償金制度はまだまだ優れた制度だと思います。きちんとした制度に再構築して、その安定感の中で、それぞれがのびのびと目的を達成できる環境を実現するべきだと思います。
104ページ 第7章 第2節 2 a 違法録音録画物、違法サイトからの私的録音録画
権利者の被る不利益の不当性から考えると、違法録音録画物、違法サイトからの私的録音録画は、第30条本来の趣旨に合致するものとは云いがたいと考えます。よって、第30条の適用範囲から除外することに賛成しますが、一方で、第30条の適用範囲からはずすことにより、違法状態が蔓延するような事態とならぬよう留意するべきです。
108ページ 第7章 第2節 2 a 適法配信事業者から入手した著作物等の録音録画物からの私的録音録画
適法配信事業者から入手した著作物からの私的録音録画を第30条の適用範囲からはずすことに賛成しますが、配信事業者が配信の対価に含めて徴収する私的複製の対価について、その金額の明確化や、権利者へ衡平な分配が行われることを実現させるための関係者間のルール作りが前提となります。
また、「配信後の私的複製を制限しない場合」については、権利者の私的複製に関する裁量権が、市場の動向や配信事業者のビジネス上の判断に事実上委ねられるような形になることから、30条の適用範囲からはずすべきではありません。
110ページ 第7章 第3節 1 権利者が被る経済的不利益
補償金は、あくまでも第30条1項で権利者の権利が制限されていることへの代償措置です。
114ページ 第7章 第3節 2 (3)著作権保護技術の範囲内の録音録画と権利者が被る経済的不利益の関係
イ-に述べられている「著作権保護技術により複製に一定の制限がある場合、権利者は予見可能であるので補償の必要がない」との考え方は間違っています。
116ページ 第7章 第3節 3 (1)経済的不利益に対する利用形態ごとの評価 (2)経済的不利益に対する全体的な評価 (3)権利者の受忍限度と補償の必要性
タイムシフトやプレイスシフトが権利者の不利益にならないという意見がありますが、それらが私的録音録画の全てではなく、通常様々なかたちの私的録音録画が混然として行われています。よって、そのことが権利者の不利益すべてを否定する根拠とはならないと思います。
また技術や機器、媒体の進歩に伴って、制度導入時に比べれば、それらの機器、媒体を利用した私的複製のボリュームも飛躍的に拡大していることから、権利者の被る不利益も拡大し受忍限度をはるかに超えていると思います
119ページ 第7章 第3節 4 著作権保護技術により補償の必要性がなくなる場合の試案
イの「著作権保護技術の内容について権利者の選択権が行使できるようなり、そのような実態が普及したときは補償の必要がない」との考え方を採用することについては反対です。
著作権保護技術に関する権利者の裁量権が、市場の動向や配信事業者のビジネス上の判断に事実上委ねられるような形になる懸念があり、そうであれば補償の必要性がなくなるとは考えられないからです。
123ページ 第7章 第4節 1 補償金制度による対応
権利者への補償措置は、補償金制度により対応することが適当であると思います。
補償金制度は、私的領域におけるユーザーの利便性の確保と、権利者の保護との間を調整する方法として今もって優れた方法であり、かつリーズナブルな制度であると考えます。また、私的な複製に使われる機器、媒体を販売することで利益を上げる機器等の製造業者等が関与しないような制度設計はあり得ないことから、アの「録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した制度設計」とすることが妥当であると思います。
126ページ 第7章 第5節 1 対象機器・記録媒体の範囲
129ページのアに示されているように、「録音録画機能が附属機能かどうかにかかわらず著作物等の録音録画が行われる可能性のある機器は原則として対象にすべきであるという考え方」を採るべきだと思います。
ただし、パソコンなど多目的な汎用的機器については、補償金額の決定のプロセスにおいて、実態調査等による私的録音録画への関与割合に応じて補償金額を按分するなどの配慮を行う必要があります。
また仮に今回はパソコンが見送られるような場合にも、パソコン用のCD−R/RWについては、音楽CDを複製する媒体として利用される実態が顕著であり、その影響も大きいことから制度の対象とすることが望ましいと考えます。またこの場合、パソコンと同様に、補償金額の決定プロセスにおいて、一定の配慮を行うことが望ましいと思います。
133ページ 第7章 第5節 2 対象機器・記録媒体の決定方法
対象機器、記録媒体の決定にあたっては、技術の変遷や多機能化に対応でき、かつ迅速に指定が行われるような仕組みが必要です。公的な「評価機関」の審議による場合には、委員構成の公平性や審議過程の透明性が担保されることが重要であり、その議決方法を明確化した上で、一定期間が経過しても結論が得られないような余地を排除すべきです。
135ページ 第7章 第5節 3 補償金の支払義務者
メーカー等は、私的な領域で権利者の権利が制限されていることに由来して、大きな利益を上げています。よって、メーカー等を支払い義務者とするべきです。
138ページ 第7章 第5節 4 補償金額の決定方法
補償金額は、対象となる機器や媒体の実態調査等に基づく私的録音録画への関与割合や、利用の態様、著作権保護技術の影響等を加味して決定されるべきです。
また現行制度で採用されていいる、対象機器・媒体の価格に比率を乗じて算出する方式(定率制)をやめて、一定の金額を課金する方式(定額制)に変更するべきです。
また補償金額を決める際は、前出の評価機関などの場において、その議決方法を明確化した上で、一定期間が経過しても結論が得られないような余地を排除すべきです。
また、パソコンやパソコン用のCD−R/RWなど多目的な汎用的機器、媒体については、補償金額の決定のプロセスにおいて、実態調査等による私的録音録画への関与割合に応じて補償金額を按分するなどの配慮を行うことが望ましいと思います。
139ページ 第7章 第5節 5 私的録音録画補償金管理協会
録音と録画をひとつの管理協会で管理することが妥当であると考えます。
140ページ 第7章 第5節 6 共通目的事業のあり方
現状の比率、目的で維持することが妥当と考えます。
141ページ 第7章 第5節 7 補償金制度の広報のあり方
この制度について広報をすることは、消費者、メーカー、権利者のいずれにとっても有意義なことであると考えます。