2.音楽出版社協会

●該当ページ及び項目名

103ページ 第7章 第2節 2 第30条の適用範囲から除外することが適当と考えられる利用形態

●意見

 海賊版からの私的録音録画や違法な配信サービスを利用した私的録音録画などを第30条の適用除外とするべきであると考えます。
 違法録音録画物や違法サイトからの私的録音録画を放置することは、ベルヌ条約のいわゆるスリー・ステップ・テストにある通常の流通を妨げる利用形態であり、また、著作者の利益を不当に害するものであることは明らかです。一部には、ダウンロードまで違法とするのは行き過ぎとの意見もあるようですが、明らかな違法複製物からの録音録画に限定するなどの条件を付すことによって利用者保護は十分可能です。
 違法複製物はすでにウェッブ上に蔓延しており、最近では違法な携帯電話向け音楽配信が甚大な被害をもたらしていることが指摘されています。30条の適用範囲から除外することにより、違法な行為を違法といえるようになることは、違法サイト対策としても大きな意味があると思います。

●該当ページ及び項目名

110ページ 第7章 第3節 補償の必要性について

●意見

 著作権者は複製権を有しており、ベルヌ条約においても、その制限については厳格な条件を課しています。第30条の規定により、私的利用のための複製については、権利者は権利を制限されています。「著作権法逐条講義」で加戸守行氏が述べているように「補償金とは著作権を制限する代償としての経済的対価、補償措置」であり、補償の必要性については、議論の余地なく必要と考えます。

●該当ページ及び項目名

123ページ〜 第7章 第4節 補償措置の方法について

●意見

 補償措置の方法としては、「中間整理」に「世界に例のない制度」として録音源・録画源の提供に着目した制度設計についても触れられていますが、現在行われている録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した方法から変更しなければならないほどの理由は見出しがたいと思われます。

●該当ページ及び項目名

126ページ〜 第7章 第5節 1 対象機器・記録媒体の範囲

●意見

 第7章第3節補償の必要性について、補償金は権利制限に対する代償という立場から意見を申し上げました。したがって、対象機器・記録媒体の範囲については、録音録画が行われる可能性がある機器は原則としてすべて対象にすべきであると考えます。
 現在の私的録音録画補償金制度の形骸化をもたらした大きな要因として、対象機器・記録媒体を専用機器・記録媒体に限定したことが挙げられます。機器・記録媒体における技術の進歩、使用形態の変化は予測しがたいものがあり、録音録画が可能なすべての機器・記録媒体を対象とできるようにすべきです。
 機器等の類型ごとの考え方としては、「a分離型専用機器と専用記録媒体」および「b録音機能が附属機能でない機器のうち記録媒体を内蔵した一体型のもの」については、私的録音録画小委員会でも対象とすべきとの意見が大勢を占めており、当然対象とすべきであると考えます。
 「c録音録画機能を含めて複数の機能がある機器でどの機能が主要な機能といえないもの」については、これに該当するパソコンは、現在私的複製に不可欠ともいえる役割を果たしており、これを対象としないことは、新たな制度の形骸化の要因となりかねません。しかし、同時にパソコンは、私的複製以外の用途も多様であり、すべてのパソコンを対象とすることは弊害が大きいことも明らかです。したがって、一定割合を対象とする方策を導入するべきと考えます。
 また、「e専用記録媒体以外の記録媒体」についても同様と考えます。
 「d録音録画機能を附属機能として組み込んだ機器」については、機器によっては私的複製に用いられる可能性が拡大することも考えられ、一概に対象外とすることには賛成できません。

●該当ページ及び項目名

第7章 第5節 2 対象機器・記録媒体の決定方法

●意見

 「中間整理」に現行制度の問題点として挙げられている2点(指定までの時間がかかりすぎる、技術を指定するため消費者に理解できない)は、まったくそのとおりであり、政令指定方式を、提案されている「法令で定める基準に照らして、公的な『評価機関』の審議を得て、文化庁長官が定める」方式に改めることに賛成します。なお、具体的な方式については今後の検討に待つことになりますが、現行制度の問題点を回避するものにすることがぜひ必要です。

●該当ページ及び項目名

第7章 第5節 3 補償金の支払義務者

●意見

 製造業者等を支払義務者とするべきであると考えます。
 私的複製を可能とする機器・記録媒体を製造販売することによって、製造業者等は大きな利益を上げています。しかも、私的複製を容易に大量に高音質高画質でできることをセールス・ポイントとして強調しています。これを可能としているのは、権利者の権利を制限することによってです。製造業者等は権利制限の代償として権利者に補償金を支払う義務があります。
 なお、製造業者等を支払義務者とすることは、利用者に支払義務がないということを意味するものではありません。

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