第5章 違法サイト(注1)からの私的録音録画の現状について

第1節 ファイル交換ソフトを利用した私的録音録画の現状について

 ファイル交換ソフトを利用した音楽ファイルや映像ファイルの私的録音録画の現状については、関係団体が行っている実態調査結果をもとに紹介する

1 調査方法

 ファイル交換ソフト利用実態調査は、関係団体が平成14年(2002年)から毎年実施しているもので、最新の平成18年(2006年)調査は、10団体・事業者(注2)が、6月13日から6月18日に、インターネット利用者を対象として、インターネット上のWebアンケートサイトを利用して行ったものである(有効回答者数:18,596人)。

2 調査結果の概要

(1)ファイル交換ソフトの利用率・利用者数

 2006年調査におけるファイル交換ソフトの利用率は、インターネット利用者のうち、3.5パーセントがファイル交換ソフトを「現在利用」しており、「過去に利用」していた8.6パーセントを合わせると、インターネット利用者の12パーセントがファイル交換ソフトの利用経験を有している。

<ファイル交換ソフトの利用率とその変化>



  • 現在利用者…平成17年7月以降にファイル交換ソフトを利用したことがある者
  • 過去利用者…平成17年6月以前にファイル交換ソフトを利用していた者
(出所:2006年ファイル交換ソフト利用実態調査)

<ファイル交換ソフトの利用者数>



 本調査では、ファイル交換ソフトの利用者数を約608.17万人と推定しているが、本調査は、インターネット上のウェブアンケートサイトによって行われているため、比較的利用頻度が高い利用者が回答していると考えられ、約5,060.21万人(インターネット利用者数)という数値をそのまま使って算定すると過大な推定値が算出されると本委員会にて指摘があった。

 このため、「2006年通信利用動向調査報告書−世帯編−平成19年3月(総務省情報通信政策局)」の利用頻度調査結果におけるインターネット利用者のうち、「パソコンを用いて毎日少なくとも1回はインターネットを利用する者」の割合は、2006年調査で全体の41.1パーセントであるところから、この数値をもとに算出した場合、2006年における利用頻度の高いインターネット利用者数は2,079.75万人となり、ファイル交換ソフト利用経験者数は251.65万人と推定される。

 この推定値は、2006年ファイル交換ソフト利用実態調査におけるファイル交換利用経験者数の608.17万人と比べると、かなり低い推定値になるが、上記のような指摘があったことから、より厳正な推定値として本中間整理(案)ではこの推定値を使用することとする。

 なお、年ごとのインターネット利用者数及びファイル交換ソフト利用経験者数は次のとおりであるが、年ごとに人数が確実に増加していることが分かる。

<利用頻度の高いインターネット利用者数の推移>

(単位:万人)
インターネット利用者数 「毎日少なくとも1回利用する者」の割合 利用頻度の高いインターネット利用者数
2006年調査 5,060.21 41.1パーセント 2,079.75
2005年調査 4,718.90 43.9パーセント 2,071.60
2004年調査 3,389.10 42.2パーセント 1,430.20
2003年調査 2,899.60 39.2パーセント 1,136.64
2002年調査 2,257.00 36.8パーセント 830.58

<ファイル交換ソフト利用経験者数の推移>

(単位:万人)

利用頻度の高いインターネット利用者数

ファイル交換ソフトの利用経験者数
現在利用者 過去利用者
2006年調査 2,079.75 72.79 178.86 251.65
2005年調査 2,071.60 55.93 130.51 186.44
2004年調査 1,430.20 37.19 52.92 90.11
2003年調査 1,136.64 38.65 34.10 72.75
2002年調査 830.58 24.92 28.24 53.16

(2)ダウンロードされたファイル数

 2006年調査では、ファイル交換ソフトの利用者が過去1年間でダウンロードしたファイル数の平均は、現在利用者が194ファイル、過去利用者が115ファイルである。

 過去4回の調査を比較すると、「51ファイル以上」の利用者が増加傾向にあり、一人で多くのファイルをダウンロードする傾向が強くなっているものと推測できる。

<ダウンロードされたファイル数(ファイルの送受信数)>

(出所:2006年ファイル交換ソフト利用実態調査)

(3)ジャンル別のダウンロード数

 2006年調査では、ファイル交換ソフトを用いてダウンロードしたファイルのうち、最も多いのは音楽関連ファイルであり、次いで映像関連ファイルであった。数は少ないが写真・画像関連ファイル、ソフトウェア、文書関連ファイルもダウンロードされている。

 過去4年間の調査と比較すると、音楽関連ファイルについては、いずれの年も多くのファイルがダウンロードされていることが分かる。また、映像関連ファイルについては、2005年から急速に増加していることが分かる。

<ジャンル別のダウンロード数>

(出所:2006年ファイル交換ソフト利用実態調査)
1 音楽ファイル

 2006年調査では、ファイル交換ソフトを現在利用している人の約3分の2が、過去1年間に音楽ファイルのダウンロード経験があり、現在利用者全体に対する過去一年間の平均ダウンロードファイル数は87ファイルで、2005年調査をやや下回っている。

<音楽ファイルのダウンロード数>

(出所:2006年ファイル交換ソフト利用実態調査)

 2006年調査におけるファイル交換ソフトによる音楽ファイルのダウンロード数(約6,300万ファイル)と2006年有料音楽配信売上実績におけるインターネットダウンロード数(約3,400万曲)を比較すると、ファイル交換ソフトによる音楽ファイルのダウンロード数の方が約2倍多い(次頁参照)。

 さらに、過去利用者によるダウンロード数も考慮すると、ファイル交換ソフトを利用したダウンロード数は、有料音楽配信によるダウンロード数を大きく上回るものと推測される。

<ファイル交換ソフトの現在利用者による音楽ファイルのダウンロード数>

  • 2006年のファイル交換ソフト利用経験者数のうち現在利用者数(72.79万人)に、音楽ファイルの平均ダウンロード数(87ファイル)を乗じて、ファイル交換ソフトの現在利用者による音楽ファイルのダウンロード数を算出すると、約6,300万ファイルと推定される。

【算出式】

72.79(万人)×87(ファイル)=6,332.73(ファイル)

<有料音楽配信における音楽ファイルのダウンロード数>

  • 一方、2006年有料音楽配信売上実績におけるインターネットからの音楽ファイルの年間ダウンロード曲数は、約3,400万曲と推定される。

【算出式】

シングルトラック 22,369千曲
アルバム 11,320千曲(1,132回×10曲)
合計 33,689千曲
  • 2006年有料音楽配信売上実績におけるシングルトラックの数量は曲単位であるが、アルバムについては曲数換算されていないため、アルバムに収録される曲数を10曲として換算。
(単位)数量:千回、金額:百万円
(出所:社団法人日本レコード協会)
  • モバイルのRingtunesとは、「着うた」のことである。
  • モバイルのシングルトラックとは、「着うたフル」のことである。
2 映像ファイル

 2006年調査では、ファイル交換ソフトを現在利用している人のほぼ3分の2の65.6パーセントが映像関連ファイルのダウンロード経験があり、平均79ファイルを過去1年間にダウンロードしている。

 2003年から2006年の推移では、一人の利用者が多くの映像ファイルをダウンロードする傾向が強くなっている。

<映像ファイルのダウンロード数>

(出所:2006年ファイル交換ソフト利用実態)調査)

 なお、2006年調査では、ダウンロードされた映像ファイルは、アダルト、映画(洋画)、アニメ、映画(邦画)の順に多い。

(出所:2006年ファイル交換ソフト利用実態調査)

<ファイル交換ソフトの現在利用者による映像ファイルのダウンロード数>

  • 2006年のファイル交換ソフト利用経験者数のうち現在利用者数(72.79万人)に、映像ファイルの平均ダウンロード数(79ファイル)を乗じて、ファイル交換ソフトの現在利用者による映像ファイルのダウンロード数を算出すると、約5,800万ファイルと推定される。

【算出式】

72.79(万人)×79(ファイル)=5,750.41(ファイル)

  • なお、有料映像配信に係る年間ダウンロード数は公表されておらず、ファイル交換ソフトを利用したダウンロードとの比較はできない。

(4)利用者の意識

a ファイル交換ソフトの認知状況

 ファイル交換ソフトを利用したことがない人のうち、「機能まで知っている」人は25.2パーセント、「名前は知っているが詳しくは知らない」人は54.5パーセント、合わせると約8割の人がファイル交換ソフトの存在を知っている。また、ファイル交換ソフトの認知度は年々増加傾向にある。

(出所:2006年ファイル交換ソフト利用実態調査)
b ファイル交換ソフトの利用を止めた理由

 過去利用者がファイル交換ソフトの利用を止めた理由としては、セキュリティ・ウィルスなどの心配を理由にする人が最も多く(46.2パーセント)、次いで著作権侵害などの問題があることが理由になっている(26.4パーセント)。

(出所:2006年ファイル交換ソフト利用実態調査)

第2節 違法な携帯電話向け音楽配信からの私的録音の現状について

 違法な携帯電話向け音楽配信に関する私的録音の現状については、著作権関係団体が行っている実態調査をもとに紹介する(関係団体による実態調査結果については、枠囲みで表示)。

1 調査方法

 「違法な携帯電話向け音楽配信に関するユーザー利用実態調査」は、社団法人日本レコード協会が、平成18年(2006年)11月3日から11月8日にかけて、携帯電話ユーザーを対象として、モバイルアンケートによって行ったものである(有効回答者数:1,036人)(注5)。

2 調査結果の概要

(1)違法サイトの認知率・利用率

 違法サイトの認知率は、全体で74パーセントであり、多くの携帯電話利用者が違法サイトの存在を知っていることが分かる。なお、若年層ほど認知率が高い傾向がある。

 また、利用率としては、「よく利用している」(11.2パーセント)と「たまに利用している」(24.3パーセント)をあわせて、全体の35.5パーセントの人が違法サイトを利用している。なお、若年層ほど利用率が高い。

年代別違法サイト利用・認知状況
(出所:違法な携帯電話向け音楽配信に関するユーザー利用実態調査)

(2)違法サイトへの音楽ファイルのアップロード経験率

 違法サイトへの音楽ファイルのアップロード経験者は、全体では17.7パーセントである。なお、12才から15才の経験率(33.0パーセント)が最も高い。

違法サイトへの楽曲アップロード経験の有無
(出所:違法な携帯電話向け音楽配信に関するユーザー利用実態調査)

(3)違法サイトからのダウンロード

a 着うた

 違法着うた(注6)ダウンロード数は、全体では平均で月2.75曲である。なお、若年層ほどダウンロード数が多い。

年代別違法サイトからの月あたりダウンロード頻度(着うた)
(出所:違法な携帯電話向け音楽配信に関するユーザー利用実態調査)
b 着うたフル

 違法着うたフル(注7)のダウンロード数は、全体では平均で月1.42曲である。特に、12才から15才のダウンロード数(2.45曲)が最も多い。

年代別違法サイトからの月あたりダウンロード頻度(着うたフル)
(出所:違法な携帯電話向け音楽配信に関するユーザー利用実態調査)

(4)違法音楽ファイルの推定ダウンロード数

 違法サイトからのダウンロード数は、2006年調査によれば年間推計約2億8,700万ファイル(曲)(違法着うた2億3,4000万ファイル/違法着うたフル5,300万ファイル)である(注8)。

 推計された違法着うたの年間ダウンロードファイル数(2億3,400万ファイル)は、2006年有料音楽配信売上実績(社団法人日本レコード協会調べ)の着うた(Ringtunes)のダウンロード数(2億2,675万回(前掲第1節2(3)1「2006有料音楽配信売上実績(年間)」図表参照))を上回っている。

 また、違法着うたフルの年間ダウンロードファイル数(5,300万ファイル)は、同有料音楽配信売上実績の着うたフル(シングルトラック)のダウンロード数(5,582万回(前掲2(3)1音楽ファイルの図表参照))に匹敵する数値である。

第3節 違法サイトに対する権利者団体等の取組状況について

1 動画投稿サイト

  YouTubeなどの動画投稿サイトへの違法投稿に対しては、著作権関係23団体が違法アップロードに対する削除要請や著作権侵害行為を未然に防ぐ具体策の実施について要請・協議を行っている。

 一方、社団法人日本音楽著作権協会では、動画投稿サービスの適法な利用に向けて、あらかじめ利用許諾条件を提示するなど、動画投稿サイトの健全化に向けた動きもある。

2 パソコン向け違法配信

 パソコン向けの違法配信に関しては、社団法人日本音楽著作権協会や社団法人日本レコード協会などの権利者団体が、違法サイト開設者に対する警告や法的措置、プロバイダ制限責任法に基づく送信防止措置の要請などを行っている。

3 携帯電話向け違法配信

 携帯電話向け違法配信に関しては、社団法人日本音楽著作権協会や社団法人日本レコード協会が、レンタル掲示板などを利用して違法に音楽をアップロードしているユーザーに対する警告や法的措置、プロバイダ制限責任法に基づく送信防止措置の要請などを行っている。
 また、音楽関係権利者6団体と携帯3キャリアが、携帯電話向け違法音楽配信の根絶に向けた諸施策及び啓発活動等について共同で検討を行っている。

4 ファイル交換ソフト

 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会、社団法人日本音楽著作権協会、社団法人日本レコード協会では、ユーザーに対する警告・法的措置や大学等の教育機関に対するネットワーク管理の協力要請など、様々な取り組みを行っている。

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