第3章 私的録音録画補償金制度の現状について

第1節 対象機器・記録媒体の範囲及び決定方法について

 補償金制度の対象となる録音録画機器及び記録媒体は、著作権法及び同法施行令で規定されている。法律では対象とする機器・記録媒体の範囲を定め、その範囲内において、施行令によって具体的対象機器・記録媒体を技術方式及び主たる用途の要件により特定して指定するという方法がとられている(いわゆる政令指定方式)。具体的には以下のとおりである。

1 著作権法上の定義(第30条第2項)

 法律では、対象機器及び記録媒体を次のように規定している。法律の基本的考え方は、対象範囲を、私的使用を目的としたデジタル方式の録音録画機器及び記録媒体であって主たる用途が録音録画であるものに限定すること、また立法時の機器等の開発状況から対象機器を用いて対象記録媒体に録音又は録画する行為とすることである。

ア 機器

 デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの(注1)及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するもの(注2)を除く。)であって政令で定めるもの

  • (注1) 本来私的録音録画に供されない業務用機器を除く趣旨である。
  • (注2) 留守番電話機等の録音録画機能が附属機能である機器を除く趣旨である。

イ 記録媒体

 当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であって政令で定めるもの

2 著作権法施行令の規定(第一条及び第一条の2)

 施行令では、録音録画技術の内容及び「主として録音(録画)の用に供するもの」という用途に関する要件により、対象機器を特定している。記録媒体は、指定された対象機器に用いるものとして指定される。具体例としては次のとおりである。

ア 録音機器(第一条第一項)(該当例:CD−R)

 次に掲げる機器(略)であつて主として録音の用に供するもの(略)

  • 一〜三 (略)
  • 四 光学的方法により、四十四・一キロヘルツの標本化周波数でアナログデジタル変換が行われた音を直径が八十ミリメートル又は百二十ミリメートルの光ディスク(一枚の基板からなるものに限る。)に固定する機能を有する機器

イ 録画機器(第一条第二項)(該当例:DVD−RW)

 次に掲げる機器(ビデオカメラとしての機能を併せ有するものを除く。)であつて主として録画の用に供するもの(デジタル方式の録音の機能を併せ有するものを含む。)

  • 一 (略)
  • 三 光学的方法により、特定の標本化周波数でアナログデジタル変換が行われた影像又はいずれの標本化周波数によるものであるかを問わずアナログデジタル変換が行われた影像を、直径が百二十ミリメートルの光ディスク(レーザー光が照射される面から記録層までの距離が〇・六ミリメートルのものに限る。)であつて次のいずれか一に該当するものに連続して固定する機能を有する機器
    • イ 記録層の渦巻状の溝がうねつておらず、かつ、連続していないもの
    • ロ 記録層の渦巻状の溝がうねつており、かつ、連続しているもの
    • ハ 記録層の渦巻状の溝がうねつており、かつ、連続していないもの

ウ 記録媒体(録音)(第一条の二第一項)

 前条第一項に規定する機器によるデジタル方式の録音の用に供される同項各号に規定する磁気テープ、光磁気ディスク又は光ディスク(小売に供された後最初に購入する時に録音されていないものに限る。)

エ 媒体(録画)(第一条の二第一項)

 前条第二項に規定する機器によるデジタル方式の録画(デジタル方式の録音及び録画を含む。)の用に供される同項各号に規定する磁気テープ又は光ディスク(小売に供された後最初に購入する時に録画されていないものに限る。)

3 具体的機器及び記録媒体

 平成19年10月現在、対象機器及び記録媒体は以下のとおりである。

録音 機器 DAT(デジタル・オーディオ・テープ)レコーダー
DCC(デジタル・コンパクト・カセット)レコーダー
MD(ミニ・ディスク)レコーダー
CD-R(コンパクト・ディスク・レコーダブル)方式CDレコーダー
CD-RW(コンパクト・ディスク・リライタブル)方式CDレコーダー
記録媒体 上記の機器に用いられるテープ,ディスク
録画 機器 DVCR(デジタル・ビデオ・カセット・レコーダー)
D-VHS(データ・ビデオ・ホーム・システム)
MVDISC(マルチメディア・ビデオ・ディスク)レコーダー
DVD-RW(デジタル・バーサタイル・ディスク・リライタブル)方式DVDレコーダー
DVD-RAM(デジタル・バーサタイル・ディスク・ランダム・アクセス・メモリー)方式DVDレコーダー
記録媒体 上記の機器に用いられるテープ,ディスク

第2節 補償金の支払義務者について

1 支払義務者(第30条第2項)

 私的使用を目的として、指定機器により指定記録媒体に録音又は録画を行う者(利用者)

2 支払の特例及び協力義務者(第104条の4)

3 返還制度(第104条の4第2項)

 機器等の購入者は、購入した機器等を専ら私的録音録画以外の用途に供することを立証して、支払済の補償金の返還を請求することができる。

支払い特例の仕組み

第3節 補償金の額の決定方法について

1 補償金の額の決定方法の仕組み(第104条の6)

 指定管理団体(4を参照)は、私的録音録画補償金の額の決定(・変更)に際し文化庁長官の認可を受けなければならない。

(1)意見聴取義務(同条第2項)

 指定管理団体は、補償金額の認可に際し、あらかじめ製造業者等の団体の意見を聴かなければならない。

(2)文化審議会への諮問(同条第5項)

 文化庁長官は、補償金額の認可に際し、文化審議会に諮問しなければならない。なお、実際の審議は、学識経験者で構成されている文化審議会著作権分科会使用料部会で行われる。

2 補償金の額

 個々の録音録画機器及び記録媒体に係る補償金の額は以下のとおりである。

  特定機器 特定記録媒体
録音 基準価格(注3)の2パーセント 基準価格(注3)の3パーセント
上限:シングルデッキ1,000円、ダブルデッキ1,500円
録画 基準価格(注3)の1パーセント 基準価格(注3)の1パーセント
上限:1,000円

第4節 指定管理団体について

1 文化庁長官による団体の指定(第104条の2、第104条の3)

 文化庁長官は、権利者に代わって補償金を受ける権利を行使することを目的とする団体を録音と録画についてそれぞれ1個に限り指定することができる。

【指定の要件】

  1. 民法第三十四条の規定により設立された公益法人であること。
  2. 権利者団体、実演家団体、レコード会社団体等であって利益を代表すると認められるものを構成員とすること。
  3. 2.の各団体がそれぞれ次の要件を備えるものであること。
    • 営利を目的としないこと。
    • 構成員が任意に加入し、又は脱退することができること。
    • 構成員の議決権及び選挙権が平等であること。
  4. 権利者のために私的録音録画補償金を受ける権利を行使する業務を的確に遂行できる能力を有すること。

2 指定管理団体による補償金を受ける権利の行使(第104条の2)

(実際に設立されている指定管理団体)

録音

社団法人私的録音補償金管理協会(sarah)
平成5年3月設立、文化庁長官指定

録画

社団法人私的録画補償金管理協会(SARVH)
平成11年3月設立、文化庁長官指定

3 補償金の徴収及び分配

(1)補償金関係業務の執行に関する規程(第104条の7)

 指定管理団体は、補償金の分配に関する事項を含む業務執行規程を定め、文化庁長官に届け出なければならない。

(2)補償金の徴収(注4)

 対象機器又は記録媒体の購入者は、3(2)の補償金の額を購入と同時に支払う。指定管理団体は、対象機器、記録媒体の出荷実績に応じ、補償金支払の協力義務者である製造業者等から補償金を徴収することとなる。なお、徴収された補償金の額の推移は、録音・録画それぞれにつき以下のとおりである。

(3)分配割合

 指定管理団体に支払われた補償金は、以下の割合で関係団体に分配され、当該関係団体を通じて個々の権利者へ分配されている。

録音

録画

第5節 共通目的事業(第104条の8、施行令第57条の6)について

1 共通目的事業の趣旨

 指定管理団体が受け取った補償金は、原則として権利者に分配されるが、私的録音録画の実態は正確に把握できないところから、一定の額については、権利者全体の利益を図る事業(共通目的事業)のために支出することとされている。

2 事業の内容等(第104条の8第1項)

 共通目的事業の範囲は、「著作権及び著作隣接権の保護に関する事業」と「著作物の創作の振興及び普及に資する事業」の2種類が法律に明記されている。具体的には以下のような事業が実施されている。

3 共通目的事業への支出額(第104条の8第1項)

 法律では、指定管理団体が徴収した補償金の総額のうち、共通目的事業のために支出しなければならない額は2割以内で政令で定める割合に相当する額と規定されている。これを受け、現在の支出割合は施行令で2割とされている。
 なお、共通目的事業に宛てられる金額の推移(注5)は以下のとおりである。

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