第2章 私的録音録画の現状について

第1節 私的録音の現状について

 私的録音の現状について、平成18年に私的録音補償金管理協会(注1)が実施したアンケート調査「デジタル録音機器の利用実態に関する調査(注2)」(以下、「18年録音調査」という。)を中心にまとめた。

1 デジタル録音機器の家庭における保有状況

 18年録音調査はデジタル録音機器の保有者に調査を行っているところから、一般世帯におけるデジタル録音機器の保有率は分からないが、同協会が平成9年、平成13年及び平成17年に行った「私的録音に関する実態調査(注3)」(以下、「過去調査」という。)によれば、無作為抽出の調査対象のうち、デジタル録音機器を保有している家庭は平成9年で27.9パーセント、平成13年で62.4パーセント、平成17年で87.8パーセントと増加傾向で推移している(注4)ことが分かる。

2 デジタル録音機器の種類

 18年録音調査によると、デジタル録音機器を保有している家庭における各デジタル録音機器の種類は、MD録音機能付きミニコンポ・ラジカセは63.4パーセントとなっており、ハードディスク内蔵型ポータブルオーディオは25.3パーセント、フラッシュメモリ等内蔵型ポータブルオーディオは26.0パーセント、CD−R/RWドライブ付パソコンは77.4パーセントとなっているなど現行の補償金制度の対象となっていないデジタル録音機器も相当程度普及している実態が伺える。

<参考1:パソコン及びポータブルオーディオの普及率>

 パソコン及びパソコンなどからコンテンツを自動録音できる携帯プレイヤーの普及率(注5)(パーセント)

<参考2:ポータブルオーディオ(注6)の国内出荷台数の推移>

3 デジタル録音の経験と頻度

 18年録音調査によると、家庭においてデジタル録音機器を保有している調査対象者(注7)のうち、88.4パーセントの人が最近1年間においてデジタル録音を行っている。過去調査によると平成9年度は24.7パーセント、平成13年度は39.6パーセント、平成17年度は45.5パーセントとなっており、デジタル録音行為は年々一般化していることがわかる。

 また、平成18年録音調査によると、最近1年間にデジタル録音経験がある人のうち、「1週間に1回以上」の頻度で録音する人が約28.6パーセントとなっており、「1ヶ月間に1回ぐらい」の約30.4パーセントと合わせると約59パーセントとなるなど、録音をする人はかなり頻繁に録音をしていることがわかる。

<参考:最近1年間にデジタル録音をした人の頻度ごとの分布>

4 デジタル録音の態様

(1)デジタル録音の利点

 18年録音調査では、デジタル録音の経験者はデジタル録音機器等の使用について、「軽い、小さいなど扱やすいから」(約67.5パーセント)、「音質が劣化しないから」(約60.9パーセント)、「曲の並べ替えや消去が自在だから」(約59.8パーセント)等の利点を感じていることが分かった。

(2)デジタル録音の理由

 また、同調査と過去調査の結果から、デジタル録音機器を使って録音する理由はおおむね以下のように推移(注8)していることが分かった。



さらに、18年録音調査では誰のために録音したかの区別ごとにデジタル録音の頻度を調査した。この結果、「自分のため」、「家族のため」、「その他」の順であることが分かった。

(3)デジタル録音の音源

 また、同様に、18年録音調査と過去調査の結果から最近1年間にデジタル録音の経験がある人の録音源(注9)についての推移をみると、「レンタルショップから借りたCDなどからの録音」、「自分や家族が持っている市販CD、MD、テープなどからの録音」、「友人・知人から借りた市販CD、MD、テープなどからの録音」が高く推移していることがわかる。

5 デジタル録音の規模

 18年録音調査によると、デジタル録音機器等を使用して録音を行ったことがある人の平均的な録音量は以下の表のとおりである。パソコンやポータブルオーディオはもともと大容量の記録能力を持つ機器であるところから、多くの楽曲が録音されている実態が分かる。



 また、18年録音調査と過去調査をもとに、家庭においてデジタル録音機器を保有している調査対象者1人あたりの最近1年間におけるデジタル録音の回数の推移を見ると、平成9年で約9.2回、平成13年で約8.9回、平成17年で約10.5回と10回未満で推移していたところ、平成18年では約32.5回と数字に大きな差がみられる。これは、平成18年録音調査では過去調査と異なり調査対象にパソコン及びポータブルオーディオが加わっていることが原因と考えられ、単純な比較はできないが、最近の傾向としてはデジタル録音の平均回数は増えているといえると考えられる。

第2節 私的録画の現状について

 私的録画の現状について、平成18年に私的録画補償金管理協会(注10)が実施したアンケート調査「デジタル録画機器の利用実態に関する調査(注11)」(以下、「18年録画調査」という。)を中心にまとめた。

1 デジタル録画機器等の普及状況

(1)デジタル録画機器等の家庭における保有状況

 18年録画調査(郵送・一次調査)によると、デジタル録画機器の普及率は約27パーセントとなっている。また、テレビチューナー付パソコンを除くと約23.9パーセントとなる。

デジタル録画機器保有率

(2)デジタル録画媒体の利用状況

 平成17年に社団法人日本映像ソフト協会が実施した調査(注12)(以下、「17年録画調査」という。)によると、最もよく録画・ダビング(注13)するメディアについて、録画・ダビングする人(注14)のうち約54.6パーセントの人がVHSを挙げており、次にDVDレコーダーやテレビ内装のハードディスクドライブ(約17.8パーセント)、DVD(約6.7パーセント)、パソコンのハードディスクドライブ(約6.2パーセント)、その他等となっている。このことから、依然としてアナログ機器等を利用した録画がかなり頻繁に行われていることが伺えるが、同時に、デジタル録画に関しては、現在補償金制度の対象となっていない機器での録画行為が相当程度行われていることが分かる。

<参考1:保有DVDレコーダーのハードディスク内蔵状況>

 社団法人記録メディア工業会「DVDメディア消費者報告書」によると、DVDビデオレコーダー使用者のうち、所有機器にハードディスクが内蔵されていると答えた人の割合の推移は以下のとおりである。

<参考2:録画関係記録媒体の需要推移>

 社団法人記録メディア工業会「AVメディア国内需要推移」によると、録画用DVD及びフルカセットビデオテープの需要推移は下記のとおりであり、アナログ録画用カセットテープの需要が減少する一方、デジタル録画用DVDの需要が増加していることがわかる。



<参考3:録画機器(VTR、DVD録画機等)国内出荷台数推移>

 社団法人電子情報技術産業協会「民生用電子機器国内出荷統計」によると、アナログ録画用のVTR(注15)等の国内出荷は減少しており、DVD方式の録画機器の国内出荷が増加していることが分かる。



2 デジタル録画の経験と頻度

 18年録画調査によると、家庭においてデジタル録画機器を保有している調査対象者のうち約95.7パーセントが最近1年間に実際にテレビ番組の録画の経験があった。

 また、18年録画調査によると、テレビチューナー付パソコン以外のデジタル録画機器でテレビ番組を録画した経験のある人のうち、一週間に一回程度以上デジタル録画を行う人は80パーセントを超えており、同調査と17年録画調査及び平成10年に日本映像ソフト協会等が行った調査(注16)(以下、「10年録画調査」という。)とを比較すると、録画の頻度は増加傾向にある(注17)ことがわかる。

3 デジタル録画の態様

(1)デジタル録画の理由

 18年録画調査では、デジタル録画機器を用いて録画する理由別に録画経験を見ると、「見たい番組の放映時間に、外出していたり、手が離せない場合に、後で見るため」(約94.3パーセント)、「同じ時間帯に複数のチャンネルで見たい番組が重なった場合に、見られなかった番組を後で見るため」(約79.9パーセント)など、多くの人がタイムシフト目的の録画を経験していることが分かった。

 また、「興味ある番組やその一部を保存するため」(約81.9パーセント)と、保存目的の録画も経験率が高い。なお、平成17年録画調査における録画の理由の調査結果と比較すると(注18)、特に保存目的の録画経験者の割合が高まっている。このことの理由としては、調査方式の違いから単純な比較はできないが、17年録画調査ではアナログ録画も調査対象としていたところ、18年録画調査ではデジタル録画のみが調査対象となり、デジタル録画ではアナログ録画に比較してより簡単、便利に保存ができるようになったことが反映されているのではないかと考えられる。



 また、18年録画調査では、誰のために録画したかの区別に着目すると、自分のための録画の頻度が高いが、家族のためにも比較的頻繁に録画行われていることが分かった。

(2)デジタル録画の録画源

 また、デジタル録画源(放送種類別)ごとの最近1年間の録画の頻度をみると、地上波放送(アナログ)が最も高く、1年間で経験した割合は約90パーセントとなっており、次に多いBS放送(アナログ)は30パーセント強となっている。CS放送(デジタル)、地上波放送(デジタル)、BS放送(デジタル)は15〜20パーセント程度である。

4 デジタル録画の回数の推移

 18年録画調査によると、以前にアナログ方式で録画した経験がある人のうち、デジタル録画機器を所有したことで録画頻度が増えた(注19)と答えた人は約65パーセントであり、減ったと答えた人は約15.8パーセントであることと比較すると、録画機器のデジタル化により全体の録画回数は増えていると考えられる。

 また、デジタル録画機器を所有したことで録音頻度が増えた人は、その理由として「デジタル録画機器は媒体の交換が不要でたくさん録画できるから」(約68.4パーセント)、「デジタル録画機器は録画の設定が簡単だから」(約66.6パーセント)等を挙げる割合が高かった。

前のページへ

次のページへ