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資料3

デジタル放送における「私的録画補償金」の必要性について

平成19年6月27日
日本放送協会 ライツ・アーカイブスセンター 石井 亮平

1   デジタル放送におけるコピー制御
 デジタル放送におけるコピー制御は、デジタル・コピーの氾濫による放送番組の不正利用を抑止する一方、視聴者の利便性や権利者の利益を著作権法の趣旨に則って確保しようするものであり、あくまで著作権法30条の規定が前提になっています。即ち、著作権法30条の制限規定の範囲内での複製と私的録音録画補償金制度による権利者に対する補償の2点が確保されなければなりません。もちろん、メーカーが録画機器の附属したチューナーを多数販売しているということも考慮される必要があります。

2 デジタル放送と配信事業の相違
 NHKのデジタル放送においては、音楽や映像など有料の配信事業と異なり、事業者の側で個々の視聴者の視聴や録画の可否をコントロールする「視聴制御」は行われていません。公共放送の特質や放送法の趣旨から考えても、そうしたコントロールはすべきではないと考えられます。したがって、配信事業のようなアクセスコントロールや課金システムを含むDRMとは、考え方の本質において異なるコピー制御であると考えられます。

3 私的録画の対価を放送事業者が支払うことについて
 また、補償金を支払う人は、私的録画によって何らかの便益を受ける人であるとすることがより合理的であると考えられます。もし仮に放送事業者が視聴者の行う録画に対する報酬を権利者に対して支払う(例えば、放送事業者が支払う出演料や著作物使用料にその対価を上乗せして支払う)ことは、録画を行わない視聴者にも結果的に録画の対価を負担いただくことになりかえって不公平を生むことになるのではないかという懸念があります。

4 スクランブル信号との関係
 現在、NHKのデジタル放送におけるコンテンツ保護は、その技術的なエンフォースメント(コピー制御信号に無反応の受信機を排除するための契約上の強制力)として、B−CASシステムを用いて放送波にいわゆる「スクランブル」をかけて実施しています。しかしこれは「2」でも述べたとおり、個別の視聴者の視聴可否を行うための視聴制御とは異なり、放送運用規定に準拠して製造された(即ちコピー制御信号に対し正しく動作する)受信機であればすべてスクランブルが解除されるという機能のために使っており、個別の視聴制御を行う機能は有していません。したがって、上記1〜3で述べた考え方は、放送波に外形的にスクランブルがかかっているかどうかということとは本質的に関係のあるものではありません。

 以上のように、デジタル放送においてコピー制御が行われているから私的録画補償金が不要であるとは考えられないのであり、もし放送が完全に録画禁止になればともかく、私的録画が可能である以上、私的録画補償金制度を維持した上で、その制度の対象とされるべきものであると考えます。


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