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文化政策部会 文化多様性に関する作業部会 第5回会合

  日時   平成16年8月27日(金曜日) 10時〜
  場所   文部科学省 10F−1会議室(10F)
  議題
(1) 文化多様性に関する基本的な考え方(案) とりまとめ
(2) その他

配布資料
    文化多様性に関する基本的な考え方について(案)
    文化多様性に関する基本的な考え方について(案)(見え消し)
    「文化多様性に関する基本的な考え方について(案)」に対する意見 概要(意見募集結果)




午前10時5分開会

池原課長
 それでは、時間になりましたので、ただいまから文化審議会文化政策部会文化多様性に関する作業部会第5回の会合を開催いたします。
 本日はご多忙のところご出席をいただきましてまことにありがとうございます。
 本日は河野先生が所用によりご欠席でございます。また、井上国際統括官は遅れて出席される予定です。
 それでは、富澤座長に進行をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

富澤座長
 皆さんおはようございます。
 それでは、早速ですが議事に入りたいと思います。
 まず、事務局から配布資料の確認をお願いいたします。

池原課長
 資料でございますが、まず議事次第がございまして、配布資料は3つございます。
 資料1は「文化多様性に関する基本的な考え方について(案)」でございます。これについては、現在の予定では9月9日に文化審議会文化政策部会が開催される予定でございますが、そこに本作業部会の報告ということで、富澤座長からご報告をいただき、製本する予定の(案)でございます。
 次に資料2でございますが、これは前回の第4回の作業部会で配布をさせていただきました資料1に関して、第4回の作業部会でのご審議、また関係省庁、文化庁内でのその後の調整、また第4回作業部会で配布をしました資料1について、インターネットで意見募集いたしましたその意見などなどを踏まえて変更をしたものでございます。変更箇所は赤字、それからそれについて修正したものを最後に委員の先生方にお送りをいたしましたが、それについて佐藤委員と根木委員からコメントをいただきましたものを黒のアンダーラインで修正をしたものでございます。
 それから、資料3でございますが、第4回会合の後、2週間インターネットで意見募集を行いました結果の概要でございます。
 なお、議事録でございますが、第4回の議事録を参考までに配布をさせていただいております。後日文化庁のホームページに掲載をする予定でございます。第3回までの議事録については既に掲載をしてございます。
 以上でございます。

富澤座長
 ありがとうございました。
 ただいま事務局からご説明のありましたことについてご質問、ご意見がありましたらお出し願います。――ないようですので議事を進めてまいります。
 これまで本作業部会は4回の会合を開催し、その間、各委員におかれましては毎回熱心なご審議をいただいてまいりました。本日、本作業部会の報告をとりまとめたいと存じますが、その前に「文化多様性に関する基本的な考え方について」、文化庁のホームページで実施された意見募集の結果について事務局からご説明をお願いしたいと思います。

池原課長
 それでは、資料3に基づきましてご説明をさせていただきます。
 前回の第4回の会合後、第4回の会合で配布しました資料について、インターネットで意見募集をいたしましたところ、6件の意見がございました。意見自体はもっと長いものですが、要約をいたしました。これについて第5回の会合の結果とあわせてインターネットで情報提供をしたいと考えております。
 まず第1件は、研究所の方から、特に省庁の連携による地域文化の振興が重要であるということでございます。
 第2件は、中間法人の方で、文化多様性に関しての基本的な考え方についての哲学的な視点あるいは生活文化的な視点が欠落しているのではないか。また、芸術エンターテイメントに偏り過ぎているのではないかといった意見でございます。
 3件目は、大学院の先生からですが、文化の多様性という場合には、社会的なマイノリティの文化の享受、それへの理解といったことについての言及がなされていないのではないか。また分野別に取組みを規定しているけれども、ジャンルにとらわれないでどのような支援ができるかという視点が重要ではないかということでございます。
 それから、4件目は、文化多様性の問題は自然・環境の保全を抜きにしては考えられないということで、文化庁が環境省、農林水産省などの関係省庁と連携しながら取組んでいくべきであると考える。
 5件目は、全体的に、国の枠組みを堅持しようというような印象があるけれども、多様な文化の集合体ということで、もう少し開放的、包容力を備えているといった感じができるような表現の工夫が必要ではないかということ。また国は国際社会においても、市民のさまざまな活動の自由を保障し、振興し、さまざまな施策を導入していくという、国の役割、大原則を確認した方がよいのではないかということ。
 最後に、6番目では、これはイギリスのプロジェクトの例を引用されておりましたが、さまざまな助成団体、基金等において「国際交流」という位置づけで助成申請が行われているが、文化の多様性という問題に対して、もう一歩踏み込んだ形での発展的な助成のあり方が必要ではないかといった点。また、学校教育において生徒を世界市民として育成し、和解と理解に関するプログラムを作成していくといったことが必要ではないか。また、日本においては、文化多様性を考えるときに、他者との共存・共生が可能なものとなり得るのかといったようなこと。また、そのために持続的で長期的な社会ビジョンと文化の方向づけが必要ではないかといったご意見でございました。
 次に、資料2について、簡単に修正点をご説明させていただきたいと思います。
 第4回の会合での委員の先生方からのご意見、また、その後関係省庁、文化庁内での調整、それから今ご説明いたしました意見募集による意見などを参考にして修文をしたものでございます。
 まず「まえがき」でございますが、前段の部分については、EPA(経済連携協定)などの、人々の相互依存が深まっているということをもう少し述べた方がいいのではないかということ。また、この後もありますが、NGOとかGATTといった英語の略称については日本語の説明書きを加えるようにいたしました。
 次に、「まえがき」後段部分でございますが、これは第4回の会合では、我が国の文化財保護と文化振興の取組み状況ということで説明してございましたが、なぜこの作業部会を立ち上げたかということを端的に示すためには、我が国のユネスコへの貢献という観点でまとめた方がいいのではないかということで、前半の部分、第1パラグラフは、第2章の本文に移しました。
 2ページでございますけれども、2ページの修文の部分は、我が国がユネスコにいろいろな意味で貢献をしているという記述を増やしております。その下の削除した部分については、同じく本文、第2章に移動をいたしております。
 その後、ユネスコにおいて検討される文化多様性に関する条約についても、我が国が積極的な貢献を行うことが期待されているという文章を入れて、このために作業部会を設置して検討したといたしました。
 次に、第1章でございますが、第1章について文化の多様性についての定義については前回のご意見を踏まえて修文をいたしております。
 次に、3ページでございますが、3ページの特に真ん中で、「戦間期、ロシア革命を逃れた芸術家たちが集まったベルリン、パリ等で」云々の部分については、前回グローバリゼーションのプラスの面をもう少し強調してもいいのではないかというご意見がございまして、ここに追加をさせていただいております。
 その下の部分でございますが、グローバリゼーションと文化の多様性の関係について、「グローバリゼーションによる問題を過度に意識することなく」という部分を、「グローバリゼーションの利点と問題点の双方を考慮しつつ、」としております。ここは先日、先生方にお配りしたものから黒のアンダーラインを引いておりますように若干修正をしております。
 それから、4ページでございます。まず、「芸術文化の二面性」という部分については、文化の持つ固有の価値というものをもう少し強調した方がいいのではないかという委員の先生からのご意見を踏まえまして、表題を「文化の持つ固有の価値」としまして、その下半分にございます「文化の中には、一見すると経済の発展とは関係のない」云々という部分を、むしろ経済的な部分より文化そのものの価値が重要である表現に直しております。
 その次の(2)の部分については、特に記述の正確性を図る観点で修文をいたしました。
 次に、5ページの第2章の部分でございます。第2章の「また80年代以降には、」の部分は、「まえがき」の部分から移しております。
 その下の「こうした日本文化の特質や最近の状況を踏まえ、」云々の部分については、ここは国の役割ということを少し明記をいたしましたが、意見聴取において出された意見等を踏まえた記述をいたしております。
 その下にあります学校や地域での子供たちの文化への触れ、文化芸術への関心を高めるという部分も意見聴取の意見を参考にして書き加えてございます。
 次に、5ページの2の「分野別の我が国の取組み」という部分でございます。ここは修文しておりませんが、ここで文化の多様性を保護、促進する観点から、生活文化やアニメーション、ポップミュージックなど、幅広い分野を支援していく必要があるということで、意見募集でありましたジャンルを超えてという部分についてはこの記述である程度対応できているのではないかと考えております。
 次に、6ページでございます。まず1の「文化遺産」についてですが、1つは地域の風土や歴史性を重視するという意識で我が国が名勝等の保護をする制度を従来から設けてきているという点、また、文化財保護法を逐次改正をし、また最近では本年5月に文化財保護法を改正して、棚田や里山のような風土に関する保護制度について、従来の名勝等に加えて地域の歴史や風土とのかかわりの中で育まれてきた景観(文化的景観)を文化財として位置づけたといったこと、また、点的にとらえるだけではなくて、面的に把握する施策を一層推進しているものということで、前回の会合でのご意見を踏まえて修文、追加をいたしました。
 それから、7ページでございますが、7ページの上から2行目のところで、「関係省庁が連携しながら」ということで、意見聴取の意見を踏まえて若干文言を追加いたしました。
 次に、2の「オペラ、オーケストラその他の舞台芸術等」でございますが、これも前半の部分は「まえがき」の部分から移しております。
 また、その下の「世界各国で共通の表現形式で発展してきている分野の舞台芸術等は、グローバル化の進展により、国際的な相互理解を一層深める役割を担えるものとしてその可能性が期待される」云々の部分は、意見聴取の意見を踏まえて修文をいたしております。その下の部分についても、「幅広い分野の文化活動を普及していく観点から多面的な評価がなされる環境の整備にこころがけることが重要である。」これも意見聴取の意見なども踏まえて修文をいたしております。
 次に、3の「メディア芸術」の部分でございますが、これも前半の部分は「まえがき」の部分から移動をしております。その下の部分は若干表現ぶりをわかりやすくしたものでございます。
 8ページの第3章に入る前の上の部分でございますが、委員の先生からのご意見を踏まえて、「こうした取組みにより、世界中の人々が「楽しい文化を創造する日本の魅力」を発見し、我が国がメディア芸術の本場として何度でも訪れてみたい国として憧れを持たれるような存在になることを目指すべきである」と修文をいたしました。
 第3章でございますが、まず第3章自体を「提言」という形にいたしております。これは第4回の会合では、第3章を1と2と分けておりまして、2の部分を提言部分といたしておりましたが、2の部分を削除いたしまして、全体を提言という形にしてございます。
 まず、最初の「文化多様性条約策定に向けての我が国の基本的な立場」でございますが、この前半の部分は時系列を踏まえて正確を期するようにいたしました。
 それから、2の「文化多様性条約の対象範囲、他の条約との関係」については、委員の先生の意見を踏まえて修正をいたしております。
 9ページ第2段落にあります、「その意味で、文化多様性に関する条約の目的は、今後の人類の文化のあるべき姿を理念的に示すことが必要である。一方、条約の対象範囲は、先行する世界遺産条約や無形文化遺産保護条約を勘案した上で、慎重に検討する必要があり、原則として、先行条約の規定が及ばない事項に限定されるべきである。」これは前回の審議を踏まえてこのような修正をさせていただきました。
 次に、3の「各国の権利義務」でございますが、これにつきましては、次の4「文化多様性条約策定に対応する具体的な措置」の部分にユネスコでのデータベース構築や文化政策について議論する場を提供するという部分を移すということで、若干短くいたしております。
 4の「文化多様性条約策定に対応する具体的な措置」でございますが、ここは1の「国際的な措置」と、2の「国内的な措置」という形で2つに分けました。
 まず、1の部分については、従来3の「各国の権利義務」と、それから一番最後の提言部分にあったものをまとめてここに記載をしてございます。
 次に、2の「国内的な措置」でございますが、これについては、特に一番最後の行、「しかし、このようなクォータ制や外資の市場参入規制のような極端な措置は文化多様性の障壁となる恐れが考えられるため、基本的には規制措置をとるのではなく、各国が人材育成、補助金、税制控除等を活用した環境整備を行うことが望ましい。」ということでございます。これについては、このことは文化遺産とか舞台芸術も含まれるのか、メディア芸術だけなのかという前回のご審議なども踏まえ、かつその後の委員の先生方からのご指摘なども踏まえて修文をいたしました。
 さきに述べましたように10ページ「2.我が国の今後の取組み(提言部分)」については、他のそれまでに出てきている部分と重複がございましたので、すべて削除をさせていただいております。
 なお、資料1は、先ほどもご紹介いたしましたように、9月9日に予定をされております文化審議会文化政策部会に富澤座長からご報告をしていただきたいというふうに考えている報告の正本にするための案でございますが、これについてつけております資料等についてもご意見がありましたらこの場でいただければと考えております。
 以上でございます。

富澤座長
 ありがとうございました。
 まず、池原さんから意見募集の結果についてご説明があったのですけれども、数は少なかったですが、かなり建設的、中身のあるご指摘、ご意見ではなかったかと思います。それを取り入れていただいて、今、ご説明のあった文化多様性に関する基本的な考え方というものをまとめていただいきました。相当すっきりしたものになったと思いますが、本日このとりまとめに当たりまして委員の皆様からご意見を順次頂戴したいと思います。どうぞよろしくお願いします。どなたからでも結構ですし、あるいはきょうは最後ですから皆さんにご意見を述べていただければありがたいと思います。まず「まえがき」から入っていくか、全体でも結構ですが、どうぞご意見のある方はよろしくお願いいたします。
 ちょっと細かいことで恐縮なのですけれども、何点か気がついたのは、「古来より」と幾つか出てくるのですね。これは「かねて」と同じで、よりは要らないので、いにしえよりとか、古くからとか、そういう方がわかりやすいのではないでしょうか。古来で使うなら「古来」です。
 それから提言の中の「クリアリングハウス」というのは専門用語ですか。私がイメージしているのは情報センターみたいなことだと思うのですが、何かそれとはまた違うニュアンスのものでしょうか。

池原課長
 情報センターのことです。

富澤座長
 要するに情報センターでわかるなら情報センター、あるいは「情報センター(クリアリングハウス)」でいいのではないかと思うのですが。
 いかがでしょうか。小寺委員いかがですか。

小寺委員
 前回、前々回、失礼して申しわけありませんでした。池原課長から全体のご説明をいただいて気づいた点がございますので申し上げたいと思います。
 これは今富澤座長からお話があった提言の部分でございますが、この中の「国内的な措置」の部分です。この中に、具体的にどういうことが望ましいかということですが、これは表現ぶりの問題ですけれども、具体的に規制措置が望ましいとか、環境整備を行うことが望ましいとか、そういう表現よりも、これは条約の中にどういうことを書き込むかということが提言ということになりますから、「規制措置をとるのではなく」ではなくて、規制措置を安易に認めるのではなくとか、また「活用した環境整備」については、各国が人材育成、税制控除等を活用することは認められるようにすることが望ましいとか、そういう形で条約上の権利義務という形で表現された方が文章としてはすっきりするかなと思いました。
 もう1点、これは言葉の問題ですが、この「国内的な措置」で、「補助金、税制控除等の公共政策」という言葉があるのですが、文科省ではこういう場合に公共政策という言葉を使われるのでございますか。よく他省庁では、施策とか、そういう言葉がむしろ一般的だというように思うのですが、何か公共政策という言葉が何となくこの報告書の中で浮き上がっているような気がいたしますので、別途言葉をお考えいただければというように思います。
 以上です。

富澤座長
 今の表現を明確にするという意味では、私もその方がわかりやすいと思うのですが、いかがでしょうか。考え方ということでわざとこういうふうにぼかしてある、そういうことでもないのですか。
 今の小寺委員のご意見も踏まえて、ほかの皆様いかがでしょうか。根木委員いかがでしょうか。

根木委員
 1つは細かいことで恐縮ですが、表現の仕方について、「すべて」というのが漢字と仮名の両方あります。5ページの10行目あたりの「すべて」は、文化芸術振興基本法をそのまま引かれたという意味で平仮名を、それ以外の「全て」は漢字を使われたのかなと思ったのですが、これについて統一すべきかどうかが気になっておりました。
 それから、先ほどの小寺委員のおっしゃった「公共政策」ですが、これについてはただ単なる施策というよりも、ある程度文化芸術に関しては公共性があるという前提条件が関係者の間には一般化しており、そういった意味で、それらに関してとられる施策には公共性があるというニュアンスを含めた意味で「公共政策」という言葉をここで使っても悪くはないという感じがします。

富澤座長
 佐藤委員いかがですか。全体あるいは個々の部分で、何かあれば。

佐藤委員
 根木さんのお話について私はよくわからないので、「公共政策」について改めてお考えいただきたいと思うのですが、全体的には徐々によくなってまいりまして、ほぼ骨格、中身、非常によくできてきたと思います。
 細かいことですが、目次の修正が行われておりませんので、中身と照らし合わせていただいて目次を直していただきたいというのが1つです。
 2つ目のコメントといたしましては、11ページに、先ほど座長の方からも「クリアリングハウスのような機関」というご指摘がありました。もちろんユネスコでクリアリングハウスという言葉は使っていて、今度の条約案の中にもクリアリングハウスという言葉は出てきていると思います。これは文化庁の方でお考えいただきたいと思いますが、「クリアリングハウスのような機関」というと、またユネスコがこういう機関をつくってお金のかかることをやるということについては若干消極論もあると思うのです。だから、そういう「機能」を持たせていくというようなことがあるのかなという気がいたしました。
 あと同じように、概要の色刷りの方はよくできていると思います。例えばスタンスという言葉がそのまま残っているので、本文の文章と調整をしていただければと思います。
 それから最後に、小寺さんがおっしゃったように、提言の部分は特に条約策定へどう臨むかということとの絡み合いがあるわけですので、そういう意味合いを文の中に入れていくということは、恐らく文化庁としても今後対処方針などをお考えになるときにそれにのっとって考えるということでやりやすくなるのかなという気がいたしました。
 以上です。

富澤座長
 ありがとうございます。
 とりあえず全体を見ていただいて皆さんのご意見をいただいた上で、今のご指摘の問題について改めて議論したいと思うのですが、渡邊委員はいかがですか。

渡邊委員
 いろいろご指摘がございますので、特別に大きな変更を求めるところはございません。最初の文章の中で、間違っていることを言っているのではなくとも、読みづらい記述があったのですが、その辺をもう少し読みやすくしてほしいと思います。確認ということで言えば、グローバリゼーションの問題点から文化多様性というのが改めて出てきた1つの背景というのがある。要するに経済的マイノリティとか、それがまた文化的マイノリティの維持の困難というところに連動してしまったということが一番の根本の問題点ではないかと思うので、その部分が意識された文章であればいいと私は思っています。
 ですから、意見募集の中でその件について指摘があったということで、その指摘をもとに修文されているということであれば結構だと思っています。
 この修文をしている3ページ目のところで、「戦間期、ロシア革命を逃れた芸術家たち」云々とあるのですが、確かにこれはそうですが、ベルリンではその後ナチスドイツが出てきて、芸術の追放運動が始まったというようなこともあるので、ベルリン、パリというと何か、ベルリンにとってはいいことだけ言っているという感じがします。芸術の追放がされたあのときが、歴史と文化政策というのを非常に強力に結びつけてヒトラーが行政指導したという大きな問題を起こしたわけですので、こういう文章をつくるときに、あのときには歴史学者を含めてみんなヒトラーの思想に賛同していったという議論があります。その辺を含めて、少し意識しておいた方がいいと思います。
 あと、「グローバリゼーションと文化多様性」云々というのがあります。3ページの方ですが、本来は文化の多様性というのは基本的には人の問題ですが、今地域と国との関係という形で、いわゆる文明の衝突というようなことであらわされています。基本は人々の文化等の価値観の問題ですけれども、文化間の偏見をなくす、取り去るというような努力が、今まさに逆にいろんな意味で文化的偏見をつくり出している、文明的偏見とも言うようなこともあるので、その辺を少し気にしています。ここで、「全ての人々」という問題にしていくのがいいのかどうかということで、少々不安がございました。
 また、5ページで、日本国でも地域という言葉を使うわけですが、これはいずれ英訳をなさると思います。先日も、今年10月にユネスコで文化庁の共催で行われるシンポジウムの下準備の会議があったのですが、地域というのは、この場合で言うといわゆるローカルコミュニティーとしかとらないので、地域という文字の使い方、用語の使い方が、国内的な意味と多く広い世界的な意味とでは異なる点を少し注意していただけたら結構だと思います。

富澤座長
 ありがとうございます。
 私自身も個人的には、日本の文化というのは何千年かの歴史の中で中国文明、中国文化との影響を長く受けてきているわけですが、近代の100年ぐらいは西洋文明、西洋文化を取り入れている。大半は中国あるいは朝鮮半島の影響でしょうが、決してそれと同じではなく、もう少し幅広い、海洋文明までも含めた日本独自の文化を打ち立てているわけで、決して中国の文明そのものではないわけですから、その辺がここで言う文化の多様性ということだろうと思うので、日本の文化の持つ多様性というのをもう少し強く出してもいいのかなというような気はしております。今ご指摘のあった、例えば戦間期のロシア革命を逃れたベルリン、パリの文化というようなことを書くことについて、このところを、例えば日本の独自の文明を簡単に触れたり、あるいはアメリカもいろいろな文化を多民族の中で花開かせたのが近代文明だと思うので、そういうことも触れたりすれば、今の渡邊委員のご指摘も対応できるのかなという気がしました。
 全体的には今各委員がおっしゃったように、こういう流れでいいのではないかということでありますが、特に今の皆さんのご意見を聞いたうえで、ご指摘がありましたらぜひお願いしたいと思うのです。どうぞ佐藤委員。

佐藤委員
 追加で申しわけございません。
 4ページの(2)の「自由貿易と文化多様性の関係」の中に「国宝の保護」と書いてありますね。これはGATTの方に国宝という言葉が入っていて、それを日本語訳にして国宝と訳しているのでしょうか。
 また、今日は河野先生がおいでにならないので、河野先生のところで言うのは申しわけないのですが、参加者の委員のリストに河野先生のところに「ユネスコ専門家会合日本代表」とありますけれども、これは日本代表ではないはずなので、この表現は直しておかれた方がよいと思います。
 以上です。

池原課長
 個人としての立場ではあるのですが、幾つかの国から専門家がいらっしゃっているということで、これまで日本代表という言い方をしていたのですが、もう一回確認をして、修正が必要であれば修正させていただきます。

富澤座長
 それはお調べいただくということで、よろしくお願いします。
 小寺委員どうぞ。

小寺委員
 佐藤さんからのお話のあった点ですが、実は国宝というのは、GATT20条にナショナルトレジャーと書いてあるためにあえてここに書かれたのだと思います。

佐藤委員
 日本で言う国宝とは違いますか。

小寺委員
 違います。
 だから場合によるとこれは括弧書きにされるか、それとも、いわゆる日本の国宝ではないというような意味を出すような表現ぶりになさった方が誤解は招かないかなと思います。GATTの条文の訳自身がよくないのです。これは50年代のもので、訳文が内閣法制局を通ってないものですから少しよくないので、そういう点もここに出てきているのだろうと思います。
 そういう表現ぶりで1点だけ私も気になっているのは、これは先生方のご意見をいただきたいと思っているのですが、最後の提言部分で、これは実態には関係しないのですが、本日直されているところで、10ページでございますけれども、「少数者の参加しかない文化」というように表現され、文化って参加という観点から表現するのかどうなのか。私は全く素人ですが、素人の感じから言うと、少数者によってしか支えられていないとか、そういう、つまり参加よりも別の表現の方が何となく、私にはしっくりするというように思います。
 以上でございます。

渡邊委員
 同感です。言葉どおりだと、何かイベントがあって、そのイベントに人が入ってないという意味になってしまうと思うのです。要するにこれはマイノリティの文化に対する配慮だと思います。それはご指摘のとおりで、私もその辺は訂正したほうがよいと思います。
 小寺先生にお伺いしたいのですが、GATTの中で、あるいは国宝と言っているものは、要するに登録されたという、あるいは法律的な規制のかかった、あるいは保護の措置のとられるような文化財あるいは文化的オブジェクトを言っているのですか。

小寺委員
 私の理解はそうではなくて、もうちょっと広く、各国において貴重な財産である、要するにいわば文化財であるというように考えられているものを指すと思います。

渡邊委員
 社会通念上で、でしょうか。

小寺委員
 ということだと思います。

富澤座長
 だとすれば、そういう表現の方がいいと思われます。今小寺委員がおっしゃったような表現がいいのではないでしょうか。

渡邊委員
 今の件にかかわるのですが、この文章の中でも文化財と文化遺産という言葉が使われているように、最近文化遺産という言葉を文化庁も使い始めた。それは世界の情勢の中で文化財、文化遺産と表現されている部類が多いことからですが、我が国ではやや特殊な文化財という言葉ができてしまっています。それとの関係で文化遺産というのはより広く、法によって登録されたもの以外についての大切なものもみんな文化遺産とするのだという、かなり包括的な概念です。
 同様に、今の社会通念上大切なものであれば文化遺産という言葉で置き換えても何ら差し支えない。ただこの場合は有形ということになるのでしょう。

富澤座長
 では、今の点は先ほど小寺委員がご指摘いただいたような、国宝というと私どもも一定の概念がありますので、そうではないというふうに書いていただきたいと思います。
 それから、言葉の問題を言えば、先ほどのクリアリングハウスのところで、9ページの機関というのが機能の方がいいのではないかということですが、私もそう思うのですが、ほかの先生方この点はいかがですか。機関と言うと、確かにご指摘のようにまた新しい機関ができるのかというような、それほど大ぶりな話じゃないと思います。情報交換とか、いろいろ議論ができる場という意味ですから、そういう情報センター的な機能を整備すべきだという表現にしていただければと思います。
 それからもう1つ、先ほどご指摘がありました公共政策ですが、そこはいかがでしょうか。ここは議論が分かれたところですが、一般的というか、各省が使っているような施策、政府用語の施策がいいのか、あるいははっきりするためにこういう公共政策にした方がいいのではないかという、両方ご意見があったわけです。

小寺委員
 私、特にこだわりませんけれども、中を取ると、公的施策あたりがこなれているのかなという感じがいたします。

富澤座長
 根木委員どうぞ。

根木委員
 前段の方で市場の失敗の問題などの言葉があるものですから、それを受ける格好で、それに対応するのは公共政策だという、その辺の関連性を踏まえた表現として適当ではないのかということが一つあります。また、今一つは、先ほど申し上げました文化芸術の公共性ということが最近言われていることによるものです。それはナショナルトレジャーなどとも絡んでくるわけですが、社会的財産ということもしばしば云々されており、それを前提として文化芸術に対する施策というのは公共政策の重要な一環であると言ってよろしいかと思います。そういった意味から公共政策という言い方そのものに特に私としては違和感がないのですが、若干浮き上がるということであれば、先ほど小寺委員が言われたように公的な政策ないし公的な施策といった言い方でも差し支えないとは思います。ただ、これは英語に直した場合にはどうなのでしょうか。同じような表現になるのでしょうか。
 また、先ほど「少数者の参加」云々ということで、少数者の参加しかない文化、あるいは少数者で支えられている文化というふうにおっしゃいましたが、すっきりと少数者の文化と言ったらどうでしょうか。

渡邊委員
 マイノリティを意識するのだったらそのような言葉を出した方が誤解がないと思います。何か参加しかない、少数者に支えられている、支持されているという文化は、現代文化の中でたくさんあると思います。

根木委員
 少数者でしか支えられないという言い方をしますと、例えば先端的な芸術活動などはやや異質、突出したもので、通常人とは違う、変人、奇人がやっているという、そういう文化が何となく想定されます。したがってマイノリティの文化ということを特に考えようということであるのならば、少数者の文化といったすっきりした表現の方がかえっていいかなという感じがします。

富澤座長
 そうですね。佐藤委員。

佐藤委員
 今の少数者の文化ですけれども、これはかなり政治的な意味合いがありまして、これまでのユネスコの議論でも、マイノリティをどう扱うかというのは各国大変な問題でして、これは1つの争点になるのですね。そういう明瞭に少数者の文化と、こう言い切ると、だれもがこれはマイノリティの文化というふうにとるということになるとすると、むしろそこに火種を残すような表現じゃないかなという気がします。だからそこのところは文化庁としてどういうふうな解釈をされるか、これは作業部会の報告だから、それはそれでいいという解釈でいいとなればそれでいいのですが、恐らく実際の条約策定会議では大変な問題、前の無形遺産のときにも大変な問題になりましたので、それを最終的にどう決着するかというのは、各国極めて政治的な問題になって出てくるだろうというふうに想定されます。

渡邊委員
 それもご指摘のとおりだと思います。それで日本の場合はアイヌ民族、それを民族と表現するかどうかの問題があるのですが、アイヌ文化振興法を政治的な決着としてつくりました。そういう対応で、はっきり先住民という言葉で認めたわけではないですが、一応歴史的な、あるいは事実として、存在としての認識は政治的にはつくったというふうに認識してもいいのではないかなと思います。

池原課長
 確かにアイヌの文化の問題については今渡邊委員からお話があったようなことですが、同時に佐藤委員からありましたように、今日は河野先生がいらっしゃらないのですが、専門家会合の中でもこの少数者の文化の規定ぶりについてはいろいろな専門家の間で議論があったということがございまして、今後についてもまたいろいろな意見がユネスコの場でもあると考えております。
 実はここの部分ですが、ここは当初考えておりましたのは、非常に芸術性が高くて、そういったものを保護していくことが今後引き続き必要ですが、ポピュラー、大衆文化ではないということで経済的に運営が難しいということで、なかなか補助金などがないとやっていけないという、これまでの作業部会の中でも何人かの委員からありましたようなことを念頭に置いておりまして、その表現の仕方が非常に難しくて、何度も何度も修正をしているのですが、少数者でなかなか支援がしてもらえなくて経済的になかなか立ち行かないというようなことをうまく表現できないかというふうに考えております。

渡邊委員
 改めて文章を読むと、ここはマイノリティの文化を言っているのではないのですね。やはり商業主義との関係で、先端的あるいは先鋭的な芸術活動が行いにくくなるというような部分も含めて考えているということですか。ですから、余り少数者だけで見ていると、こっちの方が間違っていたということになる。

根木委員
 マイノリティも含めているのであれば、参加という言葉を生かした方がいいような感じもするのですが。「少数者の参加しかない文化」、「少数者の参加する文化」と言うと言葉としておかしいでしょうか。

渡邊委員
 参加するというのは、何か主体がちょっとはっきりしません。主体があって参加するという形が成り立つわけですから。

根木委員
 そうですが、言葉の裏にはやはり参加するというか、参加すべきものがあるはずですが。支えられるというとまたこれ、反面として滅びゆくというニュアンスも感じられます。そうではなく、先端的な我々一般社会通常人には理解できないような芸術表現をも同時並行して念頭に置かなければいけないというニュアンスであれば、支えられるということにもなるのでしょうが、やはりそれに対して参加しているということになるでしょう。急には思いつきませんが、工夫されたらいかがでしょうか。

渡邊委員
 いや、意味合いが理解されていれば、よいのではないでしょうか。我々も少し誤解しているところもあるのかもしれませんけれども。少数者の社会的基盤の弱い、少数者というと必ずしも少数者じゃなくても社会的基盤の弱い者もありますかね。

根木委員
 社会的認知度が低いといったような、そういうことでしょうか。

富澤座長
 今のところは、議論をやっているうちにそんなにはっきりむしろ書かない方がいいというような、幅を持たしておいた方がいいというような感じですか。

渡邊委員
 いろいろ複雑な要件がここに入っている。だからその後の、文化活動なら少数者の文化活動と言えばいいのだけれども、しかし文化とあるから、ある一定の歴史的な背景を持ったもの自身が文化であると認識すれば、やはり少数者と言ったときの文化というのには、やはり一種マイノリティの意識がどこかに入っていると言わざるを得ない。その後の文章でも、「そのため、文化の保存及び振興に当たっては、」そういう文章があるので、文化の保存というのは、つまりは時間的な経過を経たものという、そういう事実を根底に持っていると思うので、やはりそうすると、単純な文化活動ではないということになってくるのでしょうか。ここの文章は大変ニュアンスの深い文章なので、何かそこはそのように読み解いてくださいというのであれば、ややあいまいな形で残していく。具体的にするとかえって問題が大きいというのであれば、それも1つの方法ではないかと思います。

富澤座長
 どうでしょうか、今渡邊委員がおっしゃったようなことで、今後また条約化するときに問題が出てくるでしょうが、とりあえずは少し幅を持たしておくということでよろしいでしょうか。

池原課長
 具体的にはどこに。

佐藤委員
 座長と副座長にお任せする。

富澤座長
 余り詰めないでおくということですね。

渡邊委員
 原案でよろしいという。

富澤座長
 原案のとおりでいかがですか。その中にはいろいろとそういう意味が含まれているのだという理解でいきたいと思います。
 それから、最初に小寺委員からご指摘のあった10ページの、条約に対する対処として考えているわけですから、もうちょっと条約的にはっきりした方がいいというところです。例えば最後のところの「基本的には規制措置をとるのではなく、」という表現じゃなくて、規制措置を安易に認めるのでなくと、その方がいいのではないかということです。
 それからもう1点は、人材育成とか補助金とか、税制控除、これは中央政府その他いろいろ含めたことをやっているわけですけれども、そういうものを活用した環境整備が認められることが望ましいですか。

小寺委員
 環境整備を行う。

富澤座長
 実施する。まあ実施だとちょっと強過ぎるかもしれない。

小寺委員
 等を活用した環境整備を実施できるようにすることが望ましい。

富澤座長
 望ましいと。その方が明快です。皆さんはいかがでしょう。それでよければそういうふうに書いていただきたい。
 先ほどの公共政策というところは公的な施策とか、あるいは公的施策でよろしいですか。
 「まえがき」があって、それから文化多様性の定義というものがここにきちんと書かれておって、一番大事なのは「我が国の取組み」であり、「提言」のところだと思うのですが。

池原課長
 先ほどの「少数者の参加しかない文化が駆逐される恐れがある。」ということですが、4ページの(1)の「文化の持つ固有の価値」の下の半分のところで、「文化の中には、」というところですが、ここで「当面は少数者にしか支えられないであろう先駆的な文化活動や文化遺産の保護などの重要な部分がある。」これらについては「効率性や合理性だけでは測ることのできない文化の厚み」があるということで、こういったものをいわゆる補助金とか税制控除などの公共的な政策によって保存、振興していく必要がある、ここを受けた形でございました。

富澤座長
 この4ページでは先駆的な文化活動や文化遺産の保護などが重要であると、明快に書いております。

根木委員
 そういう文脈の中であれば、今の10ページの1行目、2行目ですが、市場の失敗とか外部性云々ということは、広い意味でのマイノリティの文化とか、そういった社会構造的な側面を言っているのではないのだろうと認識できます。ただ、先ほどマイノリティ云々ということが出てきたものですから、ちょっと何かちぐはぐな感じがしておりました。しかし、「先駆的な文化活動」云々という大前提があって、それを受ける形ということであれば、そのままここに同じような表現で入れて首尾一貫させるということでよろしいのではと思われます。ただ、そうなると今度はマイノリティの方を無視する格好になるという感じもするのですが、その点はどうでしょうか。
 個人的な感じとしましては、この大学院助教授の方がおっしゃっている「社会的マイノリティ」云々という箇所、これは一般論、しかも抽象的な言い方をしていらっしゃるだけであって、むしろ後段の、「多様な文化という場合、ジャンルに捕らわれない芸術文化活動」云々という、この部分が今おっしゃったような先駆的文化活動などの側面に対応しているのではなかろうか。そういった意味で、この意見の3つ目のまるの部分を拾い上げた形で表現したということでよろしいのではないかという感じがするのですけれども。
 したがって、「マイノリティの文化」云々ということについていろんな議論があるということであれば、全体の中でそれにも言及しているという説明ぶりにし、10ページのこの部分は先ほどの先駆的な文化活動について特に言及したのだ、それは1行目、2行目の市場の失敗とか外部性の問題を踏まえて考えた場合には、そのような先端的表現に関してはややもするとないがしろにされる傾向があるから、それではだめなので、そういったことに特に言及したのがこの部分だという説明ぶりにすれば筋は通るのではなかろうかという感じがします。

富澤座長
 そうすると、根木委員のご意見は、結論としてはこの今のここに書かれている表現でいいということですか。

根木委員
 「参加しかない」というのは確かに表現としては何となくぴんと来ないところがありますので、先ほどの4ページですか、それをそのままもう一度受ける格好にするかどうかということはあろうと思います。

富澤座長
 じゃ、ここのところは、「少数者の参加しかない文化」という表現ではなくて、4ページにあるような「少数者にしか支えられていない文化」、そういうふうにしておけば、これを受けるということで、それでいいですか。

根木委員
 私はどちらでも結構です。その表現でもいいですし、それから、今おっしゃったような趣旨であれば、この「参加しかない文化」という原案でも差し支えないのではないかという感じもします。

富澤座長
 いかがですか。では、今のままでよろしいですか。そういう理解であるという。佐藤委員どうぞ。

佐藤委員
 前にお使いになった文章をそのまま使うという方がいいと思いますね。

富澤座長
 そうですね。4ページを受けた形での文章ですから、そのままその表現をこちらに持ってくるということにしましょうか。
 逐次的には、この全体を見ていろいろな貴重なご意見を出していただきました。このほか細かいことでも、ここが気になるとか、ここはこうすべきだというのがあったらぜひご意見を出していただきたいと思いますが、どうでしょうか。佐藤委員どうぞ。

佐藤委員
 今の段階で修正をお願いするわけではないのですが、この議論の過程でベルリン・東京枢軸ではないですけれども、少し喚起された考え方としては、この考え方の基本は、我が国も国際交流をしていく、もっとしていきましょうと。それで、メディア芸術のところでだけ日本がそういう場所として、そういう環境を整えた場所として世界からメディア芸術の実際にかかわる人たちがやってきたらどうでしょうかと、そういう楽しい場をつくりましょう、こうなっていますね。
 それで、私はもしベルリン、パリの表現をここに残すとするならば、東京がいいのか大阪がいいのか京都がいいのか、それは別にして、日本の中にそういう何か国際的な場所ができるということをもう少し明確に打ち出せないものかなと。メディア芸術のところではそういうふうに私、読んだのですけれども、もう少し、メディア芸術にかかわりなく、あちこちでいろんなイベントが最近行われて、山形で世界のドキュメンタリー映画祭をやっているとか、いろんなことをやり始めている。日本のいろんなところで行われているそういった国際的な行事の中に、日本が文化の1つの発信地になっていく、国際的な場所になるというようなことがどこかに打ち出せないのかなという感じがしました。

富澤座長
 今のご意見、非常に私重要だと思うのですが、そういうことができるのかできないのかは別としても、そのぐらいの気概を持ってやるということは、特に文化立国を考える上では大事だろうと思うのですが、それはもう何もアニメとか、そういうものに限ったことではないです。

池原課長
 今の佐藤委員のお話ですが、3の「メディア芸術」の最後に、「我が国がメディア芸術の本場として何度でも訪れてみたい国として憧れを持たれるような存在になることを目指すべきである。」といった表現がございますが、これをもっと全体に通じるようにするということで、5ページの1の「今後の我が国の文化政策の基本的方向」の最後にそういった表現を書き込むか、あるいは「分野別の我が国の取組み」で、1「文化遺産」2「舞台芸術」3「メディア芸術」とありますが、その4として「共通の分野の取組み」として書き込むということは考えられるかとは思います。

佐藤委員
 今のご意見ですが、5ページの「今後の我が国の文化政策の基本的方向」の第2段落の最後の文章に「国においても日本の様々な文化芸術を広く世界に発信し、文化芸術に係る国際的な交流の推進を図ることが必要である。」と、こう書いてあるのですが、これまでの流れで理解すると、メディア芸術のところは日本が場になるのですね、そう理解できる。だけどこれはどうも違うのですね。場をつくるというよりは、日本の中のものを外に発信するという意味での国際交流と、こういうように理解できるのですね。ここの文章をもう少し広げていただいて、基本的にそういうスタンスを取ろうじゃないかということにしていただいて、特に今メディア芸術が非常にそういう面で先端的なところを走っているから、特にそのことについて具体的に触れていただくということの方が考えやすいのじゃないかなという気はいたしました。

富澤座長
 今までのご意見は、要するに8ページの「メディア芸術」のところの最後のところですが、日本が文化国家として何度でも訪れてみたい、外国人がリピーターとなっていただくというようなことが非常に重要で、これは結局今の政府の観光立国でもそうですが、日本にわずか年間500万しか来ない、それはやはりリピーターが来ないから、1回来て終わりということからなので、フランスとかイタリアに年間7,000万人もの外人が訪れるというのは、やはりたくさんの人がリピーターで行くわけです。何度行っても愉快だ、楽しいということだろうと思うので、そこのところは日本全体としても非常に大事なことだと私も思います。
 したがって、ここのところを、このメディア芸術のところに限定してしまうのではなくて、取り出して、我々の目標として掲げるということは大事ではないかということだろうと思うのです。それをどこに取り上げていくかということですが、先ほど課長が言われた4として書くか、あるいは提言の中に入れるのはどうですか。いずれにしてもどこか特筆した方がいいのではないかと私自身思うのですが、渡邊委員どうぞ。

渡邊委員
 「文化の分類ごとの国の支援の在り方」の中の「文化遺産」というのは、これは行政の方法論がずっと書いてあり、いかに日本が魅力的な国であるか、文化的な国であるかということについては言及がないのです。そういう文章の続きの中に突然、何度も訪れてくれるというような話になってくるので今言ったような問題が起きてくる。やはり全体の構造を受けるような形で、政策の結果、日本が現代においても魅力のある国として存在しているのだというところで、総まとめの文章にしてしまった方がいいのかもしれません。メディアのところだけで強調しているのは、近年の文化庁の政策的課題にかかわっているという認識はあるのですが、文書構造から言えば、座長のご指摘のようなことで、1つ切り離して、日本の文化的現実というものを売りに出すということで文章を1つまとめてもらった方がいいのかもしれないと思っております。

富澤座長
 根木委員。

根木委員
 私も渡邊委員と同じような意見でございまして、突出した部分だけを余り強調すると、文化帝国主義的な感じに受け取られないとも限らない恐れも何となくしております。また、外から日本の文化に対して魅力を感じてもらうということは、メディア芸術だけでなく、いろんな側面があると思います。そうすると、それ全体をどこかでうまく集約する格好で軟着陸をさせる方が全体の構造としてはいいのではなかろうか。文化遺産にしろ、2のオペラ、オーケストラ等の舞台芸術にしろ、文化発信ということはそれぞれについて書いておりますので、場合によってはそういったものを全部どこかに集約をしてまとめるという方法があるのではないでしょうか。もう少し抽象、一般化した形で前文か後文か、どこかにくっつけるといった処理の仕方があるのではないかという感じがします。

富澤座長
 皆さんそういうようなご意見なので、どうですか、メディア芸術に限ったことではないわけで、やはり日本をもうちょっとアピールしていこうと。それだけ誇るべき文化を持っているのだということで、このところを4にして切り離しましょうかね。メディア芸術の後に4とつけて、池原さんのご提案のとおり4でそれをきちんと書いていく、それでいかがですか。根木委員それでいいでしょうか。

根木委員
 よろしいのではないかと思います。

富澤座長
 それではそういうふうにしていきたいというふうに思います。

佐藤委員
 今のご意見で思うのですけれども、これは文化の分類ごとの国の支援の在り方を述べているので、4が総合的な話になると、ここの中では収まらないと思います。したがって、むしろやはり全般的なところで堂々と書き込む。だから基本的な立場のところで堂々と書いておくと。それは全部に引っかかるという書き方をしていただいた方がいいのではないのかなと思ったのですが。

富澤座長
 では、分野別のところから取り出し、5ページの「分野別の我が国の取組み」からその部分を抜き出して、そしてその前の1の「今後の我が国の文化政策の基本的方向」の中にきちんとそれを書いておくということでいかがでしょうか。よろしゅうございますか。ではそういうふうにしてまいりたいと思います。小寺委員どうぞ。

小寺委員
 私は、報告書の文言についてはいいのですが、解釈の確認をしたいと存じます。最後の10ページに書かれていることというのは、一応何となく穏当に書かれているのでございますが、先ほど問題になった補助金、税制控除等の公的施策というのは、結局のところ内外差別をしてそういうことをやることも認めるのだというインプリケーションがここにはあると、つまり外国企業もしくは外国文化を上映もしくは何らかの形で導入するというような場合、そういう企業や物は対象にせず、自国もしくは少数者のそれについてだけ特別な補助金を出す、補助金は問題ないと思うのですが、さらには特別な税制控除を差別的に行うのだということをインプライされているのだということを確認をさせていただきたいと思います。
 それから、先ほど座長からご指摘のあった、規制措置のところなんですが、規制措置を安易に認めるのではなくというように、非常に適切なご修文をいただいたのですが、今後恐らくここでは、安易にということの具体的な意味がユネスコの場で問題になろうかと思います。したがって、役所の側で安易にということの具体的な意味を今後詰めていただくのだと、こういうようにこの文章で私は理解しておりますけれども、この点もあわせて確認をさせていただきたいと思います。
 以上です。

池原課長
 小寺先生が今お話があったとおりでございますが、実際、例えばどういうものについて具体的に必要なのかというようなことは今後のユネスコにおける審議の中でさらに詰めていかなければいけないと考えておりますが、基本的な考え方については今小寺委員からお話があったようなことを念頭に置いて対応してまいりたいと考えております。

富澤座長
 井上統括官が見えられたのだので、何かコメントがございましたら。

井上国際統括官
 遅くなりましてどうも失礼いたしました。特にございません。ありがとうございます。

富澤座長
 そのほか何か、ここが気になる、あるいはここのところはどうなのだというのがございますでしょうか。
 それでは、大体議論も尽きたのではないかと拝察をいたします。委員の皆様方からいろいろなご意見を拝聴しました。大変有益なご意見だったと思います。本日いただいたご意見に基づく最終的なとりまとめを今の皆さんのご意見に基づいて行いたいと思いますが、今後のとりまとめ方について、基本的なところは皆さんそれで一致されておるので、私にご一任いただければ、文化庁の方とよく相談しながら進めていきたいと思いますが、いかがでございますか。それでよろしゅうございますか。――ありがとうございます。
 それでは、委員の先生皆様方に集まっていただいてご議論いただく会合は本日が最後ということでございます。本日いただいたご意見などを踏まえた報告を、先ほど課長がおっしゃいましたように9日に文化審議会の文化政策部会に私から報告させていただくことにしたいと思います。ご協力ありがとうございました。
 この際ですから、この報告書と離れてご意見あるいはご感想等ございましたらよろしくお願いしたいと思います。――特になければ、最後に事務局の方から何か連絡事項等あればお願いいたします。

池原課長
 今座長の方からお話がありましたとおりでございますが、今後の予定といたしましては、座長とご相談をいたしまして、本日いただきましたご意見を盛り込んだものを報告書としてとりまとめ、9月9日開催予定の文化審議会文化政策部会で報告をしたいと考えております。またその際、各委員の皆様には報告書をお送りしたいと考えております。
 文化多様性の条約の策定に係る今後の予定でございますが、現在ユネスコ事務局より、専門家会合で議論された草案を踏まえて条約の事務局案が提示をされております。これについては11月中旬をめどに条約の事務局案について各国から意見をユネスコ事務局に送付をする予定になっております。
 また、9月20日から第1回の政府間会合がユネスコ本部において開催される予定でございます。その後、来年の1月にも第2回会合、また3回目の政府間会合が開かれるといったこともあろうかと思いますが、このあたりについては未定でございます。
 今後の条約策定におきましては、本作業部会でいただきましたご意見を生かして対応をしていきたいと考えております。政府間会合においては、文化庁からは佐藤委員にご参加をいただきたいと考えておりますし、また事務局では石原室長が主に対応をすることになろうかと思います。
 今後のユネスコでの議論の進捗状況につきましては、随時各委員の先生方にはご報告、ご連絡を差し上げたいと考えております。よろしくお願いいたします。

富澤座長
 ありがとうございました。
 今後の段取りについて、いろいろご経験の豊富な委員の皆様から何か事務局に、こうした方がいいとか、アドバイス等ございますでしょうか。――ないようでしたら、森口審議官。

森口審議官
 きょうが最後でございますので、最後に一言お礼の言葉を申し上げたいと思います。
 本当に短期間で集中的にご議論いただきまして、おかげさまでこの文化多様性、これは非常に奥の深い問題ということで、最初から委員の方々に審議に当たってもいろいろご迷惑をおかけしたのではないかと思うのですが、文化多様性とグローバリゼーションという大きな課題についてご議論いただきまして、おかげさまでいわゆる基本的な考え方というのはここである程度まとめていただいたのではないかなと思っております。
 今後、条約の交渉ということになりますと、いろいろな政治的な駆け引きもあり、なかなかこの基本的なスタンスどおりにはいかない面もあるわけですが、何よりもまず日本がその基本スタンスを固めておかないと、この交渉においてもなかなか難しいので、そういう意味でこのまとめていただいたものをベースにしていきたいと考えております。今後具体的な条約交渉が始まるわけで、それに当たっては外務省を初めとする関係省庁とも連絡を取りながら対処方針等を考えていくわけですけれども、その基本となるものがここでまとまったということでございますので、本当にお礼を申し上げたいと思います。
 ただ、今申し上げましたように具体的にこれがどういう形で条約になっていくか、まさしく政治的な駆け引きもございますので、今後いろいろな局面で、本日の委員の方々にはまたご相談もしていきたいと思っておりますので、ぜひ引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 本日までの5回の会合、本当にありがとうございました。おかげさまでまとまったということでお礼を申し上げたいと思います。

池原課長
 それでは、以上をもちまして第5回の文化多様性に関する作業部会を終了させていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

午前11時45分閉会

(文化庁長官官房国際課国際文化交流室)

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