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文化政策部会文化多様性に関する作業部会第3回会合

  日時: 平成16年7月21日(水曜日) 14時〜
  場所: 東京ステーションホテル 2階 牡丹の間
  議題:
(1) 関係省庁の文化多様性に関する取り組みについて
(2) 文化芸術関係団体の文化多様性に関する取り組みについて
(3) 意見交換
(4) その他

配布資料 持ち込み資料


午後2時開会
池原課長 それでは、時間になりましたので、ただいまより文化審議会文化政策部会 文化多様性に関する作業部会第3回の会合を開催いたします。
 本日はご多忙の中、皆様ご出席をいただきましてありがとうございます。
 なお、小寺委員が、ご出席の予定でございましたが、中国からの帰国が遅れているということで、急遽欠席をされるというご連絡をいただきました。
 また、会議に先立ちまして、本日ご意見を賜るべくご出席をいただきました各省の皆様及び文化芸術関係団体の方々をご紹介をしたいと思います。
 まず、外務省より、文化交流部国際文化協力室長難波様でございます。
 外務省経済局国際機関第一課サービス貿易室長宇山様でございます。
 経済産業省より、商務情報政策局文化情報関連産業課課長補佐和久田様でございます。
 文化芸術関係団体より、日本レコード協会専務理事田辺様でございます。
 日本芸能実演家団体協議会より、部長の米屋様でございます。
 日本映画海外普及協会より、事務局次長の西村様でございます。
 画像情報教育振興協会より、文化事業部部長阿部様でございます。
 以上の皆様に本日はお越しをいただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
 なお、本日ご意見を賜る予定でございましたが、総務省におかれましては、都合によりまして本日はご発言については頂戴をしないということでございますが、オブザーバーとしてはご出席をいただいております。
 では、富澤座長に進行の方をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

富澤座長 それでは議事に入ります。
 事務局よりご紹介いただきましたとおり、本日は、外務省、経済産業省から、両省で進められている文化多様性に関する施策等をご説明いただくことになっております。
 また、文化多様性に関係の深い文化芸術関係団体として、日本レコード協会、日本芸能実演家団体協議会、日本映画海外普及協会、画像情報教育振興協会の4団体の皆様にご出席をいただきまして、コンテンツの海外展開の現状あるいは問題点などについてお話をいただく予定であります。
 まず初めに、事務局から配布資料の確認をお願いします。
(事務局より配布資料の説明)

富澤座長 では、早速議事を進めたいと思います。
 本日ご出席をいただきました方よりご意見を頂戴したいと思います。お暑い中、本当にありがとうございました。
 まず、外務省よりご発言をお願いいたします。質疑応答を含めて20分程度でよろしくお願いしたいと思います。どうかよろしくお願いします。

外務省難波室長 外務省文化交流部国際文化協力室長の難波と申します。事前に文化庁さんの方から要請がありました案件は、文化多様性について当省としてとっている施策、何を行ってきたか、あと無形遺産の条約との関係等でございますけれども、端的に申しますと、外務省として経済協力、それから経済等と並んで文化についても、外交として、ツールとしてそれなりの力を入れていきましょうという認識が持たれてからまだ10年もたっていないという感じでございます。もちろん現在は文化交流部が中心となって、いわゆる文化外交ということも、質的な問題は別として、経済協力ほどまでには量的にはいってないのですけれども、それなりのことはやってきている。
 ただし、文化の多様性ということになりますと、必ずしも多様性そのものについてどうこうとやってきたということは、はっきり申し上げまして余りないと言わざるを得ないわけです。
 しかしながら、外務省がこれまでやってきた文化外交というものは、そもそも多様性の発展という要素を多分に含んでいるのだと解すことができるのかと思います。特に当室は、ユネスコを中心とした文化協力をやってきておりますが、ユネスコに関しましては、ユネスコの憲章自体に広く文化の普及ということがうたわれておりまして、これはそもそも文化多様性の発展、多様性を尊重しましょうということのあらわれだと思います。当省としましては、その基本精神にのっとってそれなりの協力をしてきているわけでございます。
 したがって、多様性というものを広義に解釈すれば、今までやってきた日本の文化外交というものは多様性というものを基本的には踏まえてのものであるということが言えるのだろうと思います。
 より具体的に申し上げますと、ユネスコに関する日本の協力ですが、これは1つには有形遺産、つい先日も中国の蘇州で会議がありましたが、いわゆる世界遺産として世界各国が人類の共通の財産として今後とも保護していきましょうというリストに掲載する案件を選定するという会議ですが、これにも参加してまいりましたが、こういった有形の遺産、さらには無形の遺産、また、これはキャパシティビルディングに基づくものですが、人的資源の開発という、この3つの協力を基本にユネスコに対して協力してまいりました。具体的にはその3つに関する信託基金というものをユネスコ内に設けて、それに対して協力してきたということでございます。したがいまして、これは広い意味での文化多様性に対する当省の施策ということが言えるのではないかと思います。
 ただ、文化多様性という言葉そのものに着目する協力ということになりますと、これはユネスコにおいても、多様性そのものを扱った、多様性という言葉を使ったというものはつい最近であろうかと思います。なぜかというと、1つにはIT等情報通信技術の発達によって、グローバライゼーションということが世界的に問題になってきた。グローバライゼーションには2つの側面があって、1つはIT等の技術を通じて文化についてもその交流が非常にやりやすくなった、容易になった、その発展することが可能であるというプラスの面。他方、グローバライゼーションによって文化というものが単一化した強力な文化によって弱い文化が淘汰されてしまうという危惧があるというマイナスの面がある。この2つの側面について考えていく必要があるという、いわばその内的要因というよりも外的な要因が強かったのではないかと思っております。
 かかる状況において、ユネスコで多様性に関する宣言というものが採択されたわけですが、これはまさにその文化多様性というものをグローバライゼーションの波とともにますます守ると同時に発展していきましょうと、こういう発想に基づいて採択された宣言と一般的には解すべきだと思っております。それについては当省としてもそれなりの協力をしてきたということでございます。
 ただ、そこで注意しなくてはいけないのは、その中で単純に文化的側面だけではなく、経済的な側面を持った文化、当然に今問題となっておりますコンテンツ産業等の役割について、役割といいますか、影響について、これをある程度考慮していかなくてはならない。はっきり申し上げますと、今申し上げましたユネスコで採択された宣言の中にそれがはっきりと明記されたということでございます。
 非常に厳密な言い方をさせていただきますと、文化財というものは単なる商品や消費財としてとらえられてはいけないのだ、特別な扱いをする必要があるのだということがその宣言の中で明記された。
 ではこれについてどういうふうに扱っていったらいいのかということですが、この規定とほぼ同時期に、いろいろな、サミット、主としてサミット等の場においてこの辺のことをとらえて、それなりの発展をしていきましょうという流れはあるのですが、特にフランス等を中心に、言ってみれば文化財、純然たる文化財は別ですけれども、経済的な側面も持つ文化財については、特別な扱いをしてその発展を保持しなくてはいけないという考え方、そういう意見を主張する国がふえてきたということでございます。
 それが端的にあらわれているのが、まさに今ユネスコでこれから取り組もうとしております文化多様性条約の策定ということになっているわけです。もちろんこの条約につきましては、我々としてはまさにその多様性を今後とも維持し発展させていきましょう、そういう面から、法的規制になじむかなじまないかは別として、何らかの枠組みをつくるべきであるというのが大勢ですけれども、それとは別にフランス等が主としてこの条約をつくりましょうということで、推進派の役割を果たしているわけですが、彼らがねらっているのは、いわゆる映画産業、自国の映画産業がハリウッドに席巻されてしまう、したがってこういった状況を何とか阻止しなくてはいけない、そのために法的な枠組みを設けて、言ってみればまさに自由貿易を主とするWTOの枠外、WTOとは別のフォーラムでこれをしっかり守る必要があるのではないかということを言ってきている。
 したがいまして、ユネスコの場においては、純粋に多様性を守っていきましょうというピュアな発想と、その裏には、自国の特定の産業を保護しましょうという考えが入り混じった形で今提示されているという状況になっているということです。
 現在当省が直面している問題は、まさにその条約に対してどのように対応したらいいのかということでございます。この条約につきましては、もう既に専門家による会合が三度ほど開かれまして、これから、9月下旬に政府間交渉が始まるという状況になっております。今申し上げました専門家会合には、ここにいらっしゃる九州大学の河野先生にずっと出ていただきましたので、後で議論される場合には、私よりも先生にお伺いしていただいた方がよろしいかと思いますが、いろいろ問題点はあります。
 しかしながら、現段階では漠然とした形で文化多様性を守りましょうということではなくて、いわゆる国際的な法的枠組みをつくらなくてはいけないという差し迫った状況にありまして、一般的な議論云々ということではなくて、具体的にそれではどういうような形で法規制を行っていったらいいのかという問題に直面しているということでございます。
 その際問題になるのは、当然のことながらWTOとの関係ということになりますが、これにつきましては別途宇山室長の方から説明してもらいたいと思います。
 それが当省が今直面している問題ですが、それとは別に、昨年有形とは違う無形文化遺産についての条約がユネスコで採択されまして、今各国の批准手続きに付されている状況にあります。
 この無形遺産条約につきましては、日本が相当のイニシアチブをとって作成したということでありまして、広い意味では無形遺産、有形遺産も含めて文化多様性に資するということでありますので、それについては我が方としては、条約作成、それからもう既に日本につきましては批准手続きを終えております。現在行っているところは、まだ批准手続きを終えていない国に対してできるだけ早期条約の発効に向けて協力してもらうよう呼びかけているということでございます。
 等々の施策を通じて、狭義の文化多様性ではないですが、広い意味での文化多様性に対する貢献といいますか、尽力を行っているという状況にございます。
 簡単ですが、私の方からは以上でございます。
 じゃ、続きまして宇山室長の方からWTOとの関係についてお話しいただきます。

宇山外務省室長 宇山と申します。WTOとの関係で若干ご説明させていただければと思います。
 前回の記録等を拝見しておりますと、既にかなり小寺先生等のご説明があったかに見受けられますので、論点を絞りましてご説明したいと思います。
 まず第1は、この文化多様性条約の意図というのはどこにあるのか。いろいろな考え方があると思いますが、文化というのは経済のみの論理でとらえられない、したがって別のルールが必要だという考え方もあるのではないかと思っております。
 その場合に、私どもとして注意したいと思っておりますことは、確かに日本の、農業なども若干そういうところがあるのですが、やはりものによっては経済の論理だけですべてできないという、特別のルールが必要だという分野というのは確かにあり得ると思うのですが、その場合に、文化ということでWTOと全く別の、文化だけのルールでこれを規律するのか、あるいは文化といっても実際の活動としてはやはり経済活動の一端を担っているし、したがって文化の側面と経済活動の側面と2つの側面があるので、したがって文化の多様性というものも十分に考慮しなければいけないが、他方でやはり貿易のルールから完全に隔絶されるということも適当ではない。すなわち両者の調和したルールづくりというのが必要なのかというところではないかと思います。
 ご高承のとおり、まだ政府としてこの問題について統一見解があるわけではございませんが、この問題を考えていく上に幾つかご留意いただきたい点がありますので、ご紹介したいと思います。
 まず第1は、WTOというのは貿易自由化一辺倒の世界では必ずしもないということでございます。前回もいろいろご議論があったようでございますので、詳細は省略いたしますが、例えばサービス協定でいきますと、具体的に例えば内国民待遇や、それから数量規制を禁止するといった、これはマーケットアクセスと言っておりますが、そういった約束は各国がある特定のサービスセクターについてそれを約束する場合にのみ規律が生ずる、約束が生ずる。したがって、文化は非常にセンシティブだと考えている国の約束表にはこういった約束は基本的には書かれてない場合が多いということでございます。そのほかにも、一般例外や、あるいはWTOで最も重要だと言われている最恵国待遇につきましても例外措置が認められる。
 それから物についてのGATT(ガット)は、GATS(ガッツ)に比べるとより強い規律になっておりますが、それでも、よく見ますと、露出済み映画フィルムのクォータが認められていることや、先ほど言いましたような一般例外などに、例えば美術的、歴史的、考古学的価値のある国宝に関するものがあることなど、ある一定の配慮というのはなされていまして、そういった意味で文化多様性と貿易自由化というのは真っ向からコンフリクトを起こしているということでは必ずしもないのではないか。それだけの柔軟性をWTOはかなりの程度持っているのではないかという点でございます。
 したがって、現時点の調和がとれた文化と貿易のルールづくりというのは、最初からこれをあきらめて、あるものを修正して文化だけのルールをつくるということに持っていくと最初から考える必要はないのではないかということでございます。
 それから、もう1つは、文化多様性の議論で、先ほど難波室長の方からも申し上げましたとおり、文化多様性というのは、文化多様性の保護という面と、それから消費者として多様な文化にアクセスをし、それを消費するという、両方の側面があるのではないかということでございます。その場合に、文化多様性を発展させる、あるいは守っていく、そういった場合にどういう措置が必要なのかというときに、これも貿易との関係で考えると、いろんな貿易を規制する、ある一定の数量制限をするとか、物であれば関税をかけるとか、そういったやり方もありますし、弱い文化については実は補助金でそこに対応する、サポートしていくという考え方もあるわけでございますが、これはどのように考えたらいいのか。
 そこでご紹介ですが、たまたま今年のUNDPの人間開発報告、毎年出しておりますが、今年はたまたま「多様化世界における文化的自由」というものを出しておりまして、この16日にユネスコ本部で松浦事務局長とブラウンUNDP総裁などの公開討論が行われたようでございますが、この報告書を見ても、貿易制限によって文化の多様性の保護をすべきなのかということはかなり疑問である、やはりさまざまな文化的な活動についてはそれを支持する、支援するということはあるが、貿易を上から制限するという形については、これは文化多様性を促進するのかどうかということについてかなり否定的な見解が述べられております。そういった文化多様性の保護あるいは文化多様性へのアクセスという、両側面を見る必要があるのではないかということでございます。
 それから、第3番目に、まさに現代のIT技術の向上によってサイバースペースというものが広がっていく中で、国境規制というものが一体どのぐらい意味を持っているのかという問題もあろうかと思います。これは私よりもここにいらっしゃる皆様方の方がご存じだと思うのですが、そういった問題もあわせて議論していく必要があるのではないかと思っております。
 以上でございます。

富澤座長 難波さん、宇山さん、ありがとうございました。
 それでは、今の外務省よりのご説明についてご質問あるいは議論、ご意見等ありましたら出していただきたいと思います。

佐藤委員 今の宇山さんのお話で、フランス、またカナダもそうなのでしょうが、それらの国がなぜWTOの場で、そのような一定の配慮があるにもかかわらず、一生懸命になってこの種のことをユネスコでやろうとしているのか、その辺についてはどういうふうにお考えになっていますか。

外務省宇山室長 これについては私も完全にこうだという認識は必ずしもないのですが、1つ言われているのは、カナダにつきましては雑誌のパネルケースというのがあったということが言われております。これはカナダが持っている雑誌について、これはアメリカとの関係でございますが、カナダ色のある雑誌の保全、保護政策をとっておって、カナダはこれはサービスであるというふうに認識をして、そこについては約束がないので、そういうことはできると思っておったのですが、実は先ほど触れましたように、サービスのルールに比べると物のルールはかなり厳しくなっております。
 そういうときにこれはWTO違反ではないかと、パネルに訴えられまして、カナダの主張は、雑誌というのはサービスで、これは物のルールには属さないのだと主張したところ、判決は物のルールにも二重に規制がかかるのだ、したがってカナダのとっている保護措置というのはWTO違反であるというのが出たということで、現行のWTOでは文化というのを守るには十分ではないという議論がかなり起こったという話を聞いたことがございます。

富澤座長 フランスはどうなんでしょうか。

外務省宇山室長 もともと私の承知している限りでは、GATT(ガット)が生まれるときからフランスというのは文化例外というのを非常につくりたかった。それからサービス交渉をウルグアイラウンドでやっているときも文化を例外にしたかったということでやってきていたと承知しています。そういった目から見ると、かなりの程度文化について強制的にWTOのルールがかかっている事態は避けられているという見方もできるのではないかと思います。
 現時点でどういうところに不満があるのか。例えばMFN、最恵国待遇につきましては、もちろんフランスを含めたECはオーディオビジュアルサービスについて例外扱いにしているわけですが、例外措置は原則10年間というのがあり、10年間たったら強制的に最恵国待遇の例外はなくなり、最恵国待遇がかかるとはなってないのですが、そこは原則として10年で終わりましょうということにはなっていまして、そういう点で全体としてMFNについては、ほかのサービスのルールと違いまして、原則はやはり最恵国待遇をかけるという、その中にやはりオーディオビジュアルサービスも入っている。例えばそういうところについてももう少し明確な形で例外扱いできないかという問題意識があるのかなと、これは若干推測もありますが。

富澤座長 ありがとうございました。
 ほかに何かございますか。

渡邊委員 今オーディオビジュアルサービスが最恵国待遇10年というようなことでその効力を失うということですけれども、オーディオビジュアルサービスというと、対外的に物につくりかえられている、管理されている、ということは、やはり文化も経済的側面から言えば、WTOの言い分である数量制限にかかったものに対する規制として一般的には受けるものである、というところが国際的に理解されている、こういう評価ですか。

外務省宇山室長 確かにいろんなソフトというのはキャリアミディアの中でも納められる形になっている場合もかなりありまして、そういう意味ではオーディオビジュアルサービスといっても、実は物の世界で実際に取引される場合もかなり大きいというのは恐らくそのとおりかなというふうに思います。そうなった場合に、それは物としてのGATT(ガット)のルールの規律のもとに置かれるということもそのとおりだなと思っております。

渡邊委員 そういう国際的な理解の中で、フランスが何をしようとしているのかというところですが、何をしたらフランスの意図が達せられるのか、その辺私たち見えてないものですから、そこら辺を少しご説明いただけますか。

外務省宇山室長 フランス政府の立場から説明するのは簡単ではないので、私もよくわからないところですが、一般的に言ってWTOのルールというのは、幾つかの例外措置がありまして、この例外を解釈する場合に、一定のほかの国際機関の約束が考慮される場合もあり得ると思いますが、それを超えてWTO協定自体の適用範囲のある文化なら文化のルールを変える、あるいは外すというものを、ほかの協定でこれを達成するということは実際問題としてはなかなかできないのではないかという感じがしております。これも実際技術的にどういうことができるのかというのは検討する必要があるかと思いますが、一般論としてはやはりWTOのルールというのは完結した体系になっておりますので、それについてはWTOの中で討議をしてやっていく分にはまだしも、それと違うルールがもう1個できるという場合は、基本的にはやはりそこにコンフリクトが生ずる可能性がありますので、それをある意味では別々のルールから別々の結論を出してしまうという可能性も場合によってはあり得るかと思っております。その場合には、これは専門家会議で議論になったようでございますけれども、2つの相反する意見があった場合に、それをどのように調整するのかという問題が出てくるということで、実際に貿易ルールの修正を別の方向が図るという問題というのは、これは必ずしも簡単ではないという感じがいたしております。
 他方、これまで全くなかった文化多様性というものが正当な規制の目的である、文化多様性というのが政治的に、国際政治の中で1つの明確な条約によってこれが規制の目的として認められるのだということが浸透していくという役割というのは、あるいはそういった推進をしている国の皆さんは期待をしている面があるのかもしれないないう感じがしております。
 フランスはどう考えているのかというご質問の答えになってないと思いますが、一般論的にそういうことはあり得るのではないかと思っています。

渡邊委員 物の形で移動していく、これは公共的なところで観念的な面も含めて、保護的な措置が取られている。一方メディアと言った場合には、電波の上であちこちに情報として、映像として配達されるということですね。体制上の問題があるというような場合には、逆に自国の中でそれの障害壁をつくって受信不可能というようなことがやられているわけですけれども、一般的に例えば異常な状態である、こう認識しているのですが、さっきも言及しました国境というのが一体どの程度の意味を持つのかということ、何も物をつくるという産業じゃなく、それを発信する方法論の問題は含めて、こういう文化の多様性にかかわりが恐らく出てくるのではないかという感じが大きくするのですが、その辺はいかがでございましょうか。

外務省宇山室長 一般的に言いますと、今電波の問題もおっしゃいましたし、それからインターネットの問題もあると思うのですが、従来非常に伝統的な物の貿易の形、空港や港に着いてそれが税関を通ってやり取りをされる、そこで必要な関税をかけることができるわけです。そういった形でのみいろいろな文化的な表現というのは物にくっついて交流していたという状況に比べると、国境の果たす役割というのはかなり変わっているというのは事実だと思います。まさにそういう電波とかインターネットの発達によりまして、通常の税関とかそういったものを通らないいろいろな形での情報が行き来できるという時代になっている。
 だから、現代において文化多様性と貿易の問題を考えると、そういう実際の情報の行き来、あるいはデジタルボーダレスというものの行き来というのは、実際は国境というのはかなり意識しない形で技術的には少なくとも行き来できるという状況があるわけでございまして、そういうのも念頭に置く必要があるのじゃないかと思っております。

富澤座長 ほかにいかがでしょうか。根木委員。

根木委員 外務省さんにおかれましては、文化交流部門と経済局で若干温度差があるような感じを受けたのですけれども、最終的にはどういうご対応を省としてはお考えなのでしょうか。

外務省難波室長 9月下旬に始まる政府間会合における我が方の立場というものを、大体基本ラインは同じわけですけれども、個々の点についてはこれから詰めていくことになります。
 その際に、多少の温度差というのは、それは何も外務省に限らず、ほかの省庁さんでも扱っている局によって、あるいは部によって変わってくるのだろうとは思いますが、基本的にはそれなりに妥協点といいますか、合意点を見つけて省全体でという形になろうかと思います。
 ただ、1つ言えることは、世界にいろいろな国際機関があるのであって、貿易ルールということになれば、これはWTOでしょうが、ここでやっている文化多様性というものは、必ずしも貿易ルールをつくるための条約ではないということです。多様性を促進させるための枠組みづくり、その中には当然のことながら貿易的な側面も出てくるでしょうと解するべきなんだろうと思います。
 したがいまして、基本線は一に文化的な側面から考えるのだ、もちろん我々としても既存の国際機関あるいはほかの条約との整合性というのは維持する必要があるので、その点について経済局とすり合わせを行って整合性のとれたものにしていくということですので、省内においてそれほどの摩擦があると私は考えておりません。
 それから、先ほどおっしゃられたフランスの立場ということですが、これはまさに政府間会合というものが始まってみないとわからないのですが、ただこれまでの専門家会合の結果を通じて、これはまさしく我々の推測ですが、考えているのは、あくまでも文化ということから、WTOの枠、要するに法的枠組みとは別なものをもしつくれたらということをフランスは目論んでいるということがこれまでの原案等からある程度うかがえるということです。
 それと、今事務局長は日本人ですが、パリに本部があるユネスコということで、フランスの影響力が強いと彼らは考えているのかもしれません。そういった点が1つの要素として考えられるのではないかと思っております。その辺につきましては、専門家会合に出られた河野先生の方がよりフランスの立場については詳しいお答えをされるのではないかと思いますけれども。

富澤座長 河野委員何かご意見ございましょうか。

河野委員 フランスの立場につきましては、かなり明快な線が専門家会合で初めから出ておりまして、学者が大体専門家ですが、政府関係者が出てきているのはフランスだけでございまして、フランス政府は専門家会合のときからスタンスを相当明快に出すということがございました。
 それから、本当にWTOを明快に意識しまして、オーディオビジュアルと言わないのですが、文化多様性という言葉の裏にはフランスのオーディオビジュアル産業というのが色濃く出てくるような議論を初めから展開されまして、アメリカは経済学者が実務家対応で出てこられたのですが、この方はグローバル化こそが文化を刺激し、文化を豊かにし、多様性をむしろ促進するのだということをいろいろな例を挙げて説明されたのですが、フランスの説明やそのほか、場合によっては感情的になるぐらいまで激しい議論をされまして、なかなか議論が成立しなかったということがございました。
 本当に、極めて明快な目的を持ってフランスが臨んできたということが、1回目の会合から相当明快に出ておりました。

富澤座長 ありがとうございました。
 先ほどの難波室長のお話で、外務省の考え方というのはかなりはっきり理解できたような気がするのですが、つまり、この文化多様性条約にどのように対応するか、内容をどうするかというのはこれからいろいろ議論が行われると思いますが、その議論する場所として、ユネスコという場で議論すべきであるという考え方、私どものこれまでの会合でもそういう考え方、WTOではなくてユネスコで議論すべきだろうと、こういう意見もかなり出たのですが、外務省の難波さんのお話では基本は文化的側面から考えるのだという理解でよろしいのでございましょうか。

外務省難波室長 貿易ルールをやるということがないわけですから、文化的な側面で議論をし、その過程においてどうしても貿易ルールと関連してくるという状況はある程度予想されるわけです。その場合に経済局と話し合いをして調整します。

富澤座長 ほかにないようでしたら、続いて経済産業省の和久田さんからご発言をお願いしたいと思います。

経済産業省和久田課長補佐 経済産業省文化情報関連産業課の和久田でございます。よろしくお願いします。
 私どもの方は、経済産業省の中で文化情報関連産業と書いてありますが、いわゆるコンテンツ産業の振興をしているセクションでございまして、今回は特に国際展開に向けた取り組みということで私どもの政策の一端をご紹介させていただきたいと思います。
 お手元の資料の中で、横長の「これまでの我が国コンテンツ産業国際展開に向けた取組」という資料と、もう1つ参考資料として、縦長の「コンテンツ産業国際展開行動計画WG」の資料と2つございますが、今回はその前者の横長の紙に沿って簡単にご紹介をさせていただきたいと思います。
 まず、1枚めくっていただきまして、簡単に私どもの政策の流れを書いた書類がございますが、昨年ぐらいからコンテンツ産業の振興の中で、国際的に国際展開をするために一体どういう戦略が必要なのかということを検討するための研究会、これは座長にウシオ電機の牛尾会長をお招きしまして、弊省の中でいろいろな検討を進めてまいりました。
 それについては、国際展開WGの提言という形で今申し上げた参考資料の提言をまとめ、これらについては政府全体の取り組みの中で、例えばこのページで言いますと下の方の丸ですが、本年5月の知財推進計画、これは内閣総理大臣の下に設置されている内閣推進本部の決定の文書の中にも反映し、あるいはその右下の丸のところですが、新産業創造戦略、これは本年の6月に閣議決定をした骨太の方針の中にも反映するなど、いわゆるコンテンツ産業を1つの新産業として、その中でそういった産業が国際展開をしていく上で一体どういった政策が必要なのかということをいわゆる政府レベルのさまざまな中で議論してきているということでございます。
 こういった流れの中で、立法府の中でもコンテンツ促進のための動きがございまして、この1ページ目の右の方の丸ですけれども、コンテンツ促進法、これが本年の5月に成立をした、そういった大きな動きが政府及び立法府の動きでございます。
 具体的に一体何をしているかということが2ページ以降に書いてございますが、これは先ほども申し上げた研究会の取りまとめの中身を中心に幾つかの項目ごとに解説をしております。
 1つは、「市場情報収集に向けた国際拠点の整備」と書いてありますが、いわゆる日本のコンテンツが外に出ていくと、そこで海賊版の問題が起きてしまうということで、特に北京や上海など、そういった事務所に海賊版対策の専門家を配置して、企業の相談等とは別として、活動するようなことを、本年度から実施をしています。
 その次の、「情報発信力強化と国際取引市場の創設」ということで、これはいわゆる日本の国内で外からのバイヤーなりを呼び込んだ場の検討をしている。これは東京国際映画祭に併設というか、東京国際映画祭の機会を利用して、その中で映画にとどまらずさまざまなコンテンツを輸出するためのマーケットと呼んでいますが、ブースをつくって、そこで日本のコンテンツを紹介していく、そういった規模を持つための予算を本年度から確保して、まさに1から始めるというようなことでございます。
 その次の3ページ目のところですが、今申し上げたのは日本国内でのマーケットづくりということですが、外のマーケットでも日本のコンテンツの紹介、出展支援というのをやっておりまして、これはジェトロを通じてやっておるのですが、例えばこの前のカンヌ国際映画祭では、1つジャパンブースというのをつくって、そこで日本のコンテンツの紹介をしたというような取り組みも本年度から実施をしておるところでございます。
 その次の4ページ目のところですが、海賊版対策強化の中で、1つは先ほど申し上げた拠点整備ということですが、それ以外にも、例えば統一認証マークの整備、これは日本のコンテンツであるという商標を各国、例えば中国や台湾など、問題になりそうな国で商標を登録して、ジャパンコンテンツであるということを商品にシールを張ることによって、確かにこれは日本の、コピーでない本物であることがわかるような措置をとれないかということで、これは今年中に商品を登録し、それをもとに各国でエンフォースメントしやすくなるような対策をする予定であります。
 それから、その次の提言4のところですが、「人材育成、人材交流の促進」ということで、特にプロデューサーとか、あるいはクリエーターとか、そういった者の育成事業や、アジアなどでは現地人受け入れに対してライセンス契約のあり方など、著作権なり、そういったものについての研修的な事業をやっていくということであります。
 その次の5ページ目のところですが、提言5のところで「新しい流通モデルの確立」これはいわゆるモデル事業を本年度からやる予定になってございまして、国際的に共同開発をするなど、日本のコンテンツを海外に流通させるときに、いろいろなビジネス上の問題など出てきますので、そういったものを洗い出して、モデルをつくるための委託費というものを本年度から確保しまして、モデルを整備しようという予定になってございます。
 当方もいろいろ事業をやってございまして、特に本年度から進める予定の事業が多いのですが、特に日本のコンテンツの海外への流通の道筋をつけるための事業というのを本年度は集中的にやっているところでございます。
 それ以外のところについては、お時間の関係がございますので簡単にご説明しますが、例えば7ページ目のところでございますが、先ほども少し申し上げましたが、内閣の知的財産戦略本部の中で、ウシオ電機の会長を座長として、具体的には8ページ目にあるようなコンテンツジビネス振興政策を策定して、この中でも特に海外展開というものを1つの柱として議論をしておりますし、あるいは9ページ目のところの、これは先ほど申し上げましたが、コンテンツ促進法というものが議員立法で5月に成立されまして、コンテンツ振興のための基本的な施策や振興のための政策というものが規定をされております。
 具体的には10ページ目にあるように、いわゆる事業法ですが、さまざまなプログラム規定が規定されていますが、例えば19条、海外における事業展開の促進ということでレコード事業も明記をされておるところでございます。
 11ページ目は飛ばしていただきまして、12ページでございますが、新産業創造戦略、これは先ほど申し上げた各ページの中でも出ておるものですが、この中で7つの分野というものをその戦略的な分野として規定をして、その中でコンテンツについては、2010年に15兆円の規模、今現在は11兆円ぐらいですが、1.5倍近くに持っていこうということで、その中では国際展開の促進によってそういった市場の拡大を図るというのもこの中で規定をしております。
 以上が私からのご説明でございますが、また具体的な日本のコンテンツの海外展開、今後それぞれの団体さんからもご説明があるかもしれませんが、いずれにしてもそういった日本のコンテンツ産業が実際に海外との共同開発なりあるいはライセンスによって外に出て行く動きというのはかなり強くなってきておりまして、本年度からそういった取り組みについて、弊省でもさまざまな形でその支援、サポートをしていくというような方向になっているということについて改めて申し上げて、私の説明を終わらせていただきます。

富澤座長 ありがとうございました。
 何かご質問等ございましたらどうぞ。

佐藤委員 ただいまお話を聞いていまして、日本のコンテンツ産業を外に持っていくという基本的な戦略を今立てておられるという感じがしたのですが、例えばフランスを含めたEUが、EU圏の資本でつくった映画であれば、50%までの上映枠を設ける、例えば日本映画やアメリカ映画の入ってくることを一定の限度で抑えるという、一方で守りの話が動いています。それついて経産省で、守りの話というのは全くないということは、基本的には貿易はどんどん有利になって、その形を大きく立てた方がいいという基本的なお考え方がバックにあるのかどうかというのが1つです。
 もう1つは、通産省のOBが文芸春秋か何かに書かれていた記事では、我が国のコンテンツ産業の行方がそれほど安泰ではないと読んだのですが、テレビを見てもそうなのですが、アニメの原画部門でつくっているのは韓国や中国など、下請けに出すということ、それが結局、ある日知らないうちに技術移転が行われ、ある意味で生産の拠点が海外に移っていくということが十分将来的には考えられるわけです。そういう点から考えて、今の日本全体の貿易量に比べて、一体コンテンツの貿易額というのはどんなシエアを占めていくのか。ネットで調べてもなかなか経産省のデータの中で、これだけ儲かっている、これだけ我が国の輸出になっているというのが見えてこない。その辺の流動性との絡み合いといいますか、そういう点についてお尋ねします。

経済産業省和久田課長補佐 1点目については、私どもはあくまでコンテンツ関連の産業振興の立場として政策を行っていますので、余り大きな話を申し上げる立場にないと思うのですが、基本的なコンテンツの国際流通といいますか、コンテンツの国際的な流れの中で、一体弊省はどういうスタンスで、国際的にどういう状況にあるのかという基本方針については、基本的には確かに世の中にいろんな動きはあるにせよ、例えば中国や韓国を見ても、外資規制がだんだん緩んできたというか、あるいはスクリーンクォータという、映画館での上映についていろいろな規制というのは基本的には緩和されるといいますか、自由化されるような流れになってきていかのかなと思います。
 その中で、日本についてのマーケットは開放するし、日本のコンテンツを世の中でもいろいろな方が見られ、また、世の中のいろいろなコンテンツも日本で見られる。そういう意味では消費者、視聴者にとって多様なコンテンツの享受が可能であるような仕組みをつくっていこうということで、それはいろいろな動きがあるにせよ、世の中では国際的にもそういった流れになっていく、どうしたらそれを行えるかなというのが私どもの課の基本的な認識でございます。
 2点目については、確かにおっしゃるとおりの動きがございます。特に問題になっているのはアニメです。いわゆるアニメの動画の部分、単純作業に近い部分というのは、かなりの割合フィリピンでつくっているなど、いろいろな空洞化の動きがあるのは事実だと思います。
 それについては、これからどれだけコアの部分が出ていくかという、いろいろ注視をしていかなくてはいけないと思うのですが、少なくとも今の時点では、アニメでもいわゆるコアになる部分というより、むしろある画面とある画面をつなぐ部分、非常に単純作業的なところのみが外に出ているというのが基本的な考え方で、それほど技術流出には今のところはつながってないのかなという気がしています。
 ただ、いずれにしても、先ほどお話もございましたように、具体的なデータ、コンテンツ周りのいわゆるデータのストックというのは必ずしも十分でないというのは、確かにおっしゃるとおりですから、現状把握というのはなるべく定形的にした上で、具体的にどういったもの、コンテンツの制作の中にはいろいろな制作過程がありますので、本当にコアの部分が残っているのか、あるいはそういったコアの部分に近いところまで出ていくようになっているかというところの現状の把握というのはこれからしっかりやらなきゃいけないという気がしています。
 特にデータを、具体的に市場規模はどのぐらいかというものについても、多分十分な把握はこれまでされてなかったと思うのですが、そういった反省も込めて、新産業創造戦略の中でも、現状の市場規模と今後の将来像なんかを具体的な報告の形で世の中にお示しをしたというような努力はしているというのが現状でございます。

富澤座長 審議官どうぞ。

森口審議官 コンテンツの海外運営規模は、税関の受付でも3%と言われていまして、10兆円の3%ですので、ほとんど海外には出てない、コンテンツ産業について、日本は潜在的には非常にあるのですが、まだ具体的にその力を発揮してない。アメリカはそれに対し、海外に17%、そういう状況になっています。

渡邊委員 そうすると今の日本政府の置かれている立場について、コンテンツ産業は専ら規制するのではなくて、これからは新しい道に向かって、ある程度ITや機械の分野などは攻撃的でしょうが、その分野を育てるということについてはどうお考えか。
 つまり、今、コンテンツ産業は大体国内的な需要が中心であるが、それは将来海外に向かっていくという立場に立っているわけでしょう。現在の日本の状況というのは、専らコンテンツ産業の育成が重点的なのでしょうか。

経済産業省和久田課長補佐 そこはいろいろな面があると思うのですが、まず育成と言った場合、コンテンツ自体を創造する能力を強化するというのも1つあると思います。あるいは流通経路のいろいろな細かい点もあると思うのです。それはコンテンツ自体を強くするということから、もう少し通りやすくする、そういった意味での国内産業の構造改革というのが必要だと思います。あるいはその構造改革の一環として、外に出していくために日本のコンテンツの生産能力を強くする、また国内の構造改革を進めていくためにも国際的な道筋というのをしっかりつけていく必要があるのかなと考えていまして、私どもがやっている国際展開の仕組みというのは、日本のコンテンツを強くする、その創造力を強くするというよりは、むしろ日本の構造改革を進めるためのさまざまなコンテンツ制作者にとっての道筋のオプションを増やすという観点で行っていまして、その点、そういった道筋をつくらなければという気がしております。

渡邊委員 相対的な問題でしょうが、特にアメリカのコンテンツ産業が日本に向かってくるという要素が幾つかあるのでしょうか。

経済産業省和久田課長補佐 特にゲームなどは最近アメリカが強くなっています。例えばゲームソフトなど、そのようなコンテンツが出てくるのに対抗するために日本として個々的に日本のゲームソフト産業を強くするための産業政策をやっているつもりは私どもには全くなく、むしろそういった個々の競争というのは民間でやっていただきたいと考えている。私どもは、コンテンツ制作者が創造的な活動を行ったものが世の中になるべく出やすくするという意味での国内での構造改革と国際展開の道筋をつけるというような政策をやっていると理解していただきたいと思っております。

富澤座長 先ほどのお話で、我が国のコンテンツ産業の国際展開の戦略というのはここへ来て急速に盛り上がってきたような印象を受けましたが、ただコンテンツ促進法という、これは議員立法ですが、ことし5月にできたばかりで、それに基づいてまたいろいろ施策があるのでしょう。例えば海賊版対策ということで、北京、上海に1名ずつの配置するというのですが、1人の配置でどの程度成果が上がるのか。配置から期間も短いですが、成果は上がってきているのでしょうか。

経済産業省和久田課長補佐 実は配置と書いてありますが、まだ配置は終了しておりません。そういう意味で言えば、専門家を置くというよりは、むしろそこからどういったネットワークがしっかりできるかというのが問題だと思いますので、専門家がまず配置をされ、そこから現地の例えば弁護士、弁理士等へのネットワークを築くところが重要になってくるのかという気がしております。その辺については多分来月ぐらいには具体的な制度もお話をされると思いますので、本年度いっぱい、一体どういうネットワークがその専門家から、企業から相談を受けたときに適切な専門家のところにつなげるような体制ができているかといったようなものを本年度中にぜひ実行したいと考えております。

富澤座長 どうでしょうか、ほかに。
 それでは、ないようですので、続いて、関係団体の方よりご意見をいただければと存じます。
 まず初めに、日本レコード協会様よりご発言をお願いしたいと思います。

日本レコード協会田辺専務理事 日本レコード協会の田辺でございます。本日はこうした発言の機会をいただきまして大変ありがとうございます。
 当協会は41のレコード会社を会員社といたしまして、現在日本のレコードの売り上げの90%以上を占めています。今日はレコード産業の立場で、音楽文化の多様性並びに国際展開について報告させていただきます。
 用意いたしました資料は、「日本のレコード産業」と書いた印刷物、それからA4の横長のもの、2部ございますが、きょうは時間の関係でこちらのA4の資料でポイントを報告させていただきたいと思います。産業統計の方はまた後刻ごらんください。
 「文化審議会文化政策部会」とあります2ページ目をごらんいただきたいと思いますが、まず、レコードは趣味嗜好性の極めて強い文化商品でございまして、消費者、リスナーにとりましては選択の幅の広さというのが最も重要であると認識しております。
 こうした中で我々日本のレコード業界の売り上げは現在世界第2位の状況ですが、世界で最も多種多様なCDを発売しております。2003年度も1万3,500タイトルのCDを発売し、3ページに具体的な音楽カテゴリーごとの内訳を載せておりますが、そのうち7,500タイトルが日本の音楽でございます。さらにこの中の4分の3が、演歌、ポップス、ニューミュージックなどの流行性に富む曲であります。こういったヒット曲とともに、一方で日本の伝統文化を受け継ぐ貴重なジャンルとして民謡・純邦楽・童謡といった分野のレコードも幅広く発売をしております。
 年間で発売される新譜数というのが左側の表で、右側の方がカタログ数でございます。民謡、純邦楽や教育教材は年間で発売される商品数に比べてカタログ数が多く、カセットを含めるといずれも3,000近くのタイトル数になっております。こういった商品がいかに息長く長い時間かけて好まれて購入されているかということでございまして、ライフサイクルが短いヒット商品と異なり、こういった商品を長く提供していく努力がレコード業界にはあります。
 もう一方、こうした伝統文化を受け継ぐ実演家の中で、最近は邦楽の東儀秀樹、津軽三味線の吉田兄弟、和太鼓の鬼太鼓座や林英哲など幅広い世代で人気のある実演家が出てまいりまして、今後も活躍が期待されているところでございます。
 このように、我が国は新譜数、カタログ数から見て世界で最も多種多様な音楽を楽しむことができる環境下にあるわけですが、それでは日本の音楽文化多様性の課題は何かということで、もう一度2ページ目をご覧ください。
 1点目が平成13年に制定された文化芸術振興基本法でございますが、この中には伝統芸能の継承及び発展、生活文化、国民娯楽の普及、さらには学校教育における文化芸術活動の充実、和楽器の義務教育における必須化など、新しい施策がいろいろ盛り込まれています。こういったことでこの法律が文化の多様性に大きく貢献するのではないかと期待しており、レコード協会も文化芸術推進フォーラムなどの活動を通じて文化の多様性に取り組んでいるところです。
 それから、今年になりまして成立いたしましたコンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律でございます。先ほども経産省からご説明がございましたが、こういった法律により、国内の産業振興はもとより、国際的流通についても積極的に促進策が盛り込まれております。日本の文化多様性、国際的流通の両面にわたりまして、この法律をバックに、私ども協会も積極的に取り組んでまいる所存でございます。
 3点目でございますが、日本のレコード業界が世界で最も豊富なカタログを持ち、毎年多種多様な作品を提供できるのは、日本独特の著作物の再販売価格維持制度が極めて重要な役割を果たしているからであると認識しております。国民の皆様が豊かな音楽文化を享受する上でこの制度は今後も存続が必要であると考えております。
 以上が日本の音楽文化多様性でございます。
 続きまして、国際的流通についての説明に移りたいと思います。音楽に国境はないと昔から言われておりますけれども、世界のレコード産業は、原盤ライセンスや製品の輸出入によって活発な国際間の流通を行っております。音楽のこうした国際的な流通が確保されている中で、レコード売り上げの上位国における国内外の音楽の売り上げ状況はどうなのかということを今回整理してみました。4ページをごらんいただきたいと思います。
 左側の円グラフが国別の売り上げ構成比、右側がそれぞれの国における国内音楽と外国の音楽、日本で言えば邦楽と洋楽と称しておりますが、国内外の比率を国別に並べたものです。
 音楽について、世界最大のアメリカが約40%のシエア、日本が15%で第2位でございますが、トップのアメリカでは94%が自国の音楽で占められております。最近アメリカにもいろんなものが入ってきているという状況が伝えられておりますが、海外の音楽の売り上げ率はわずか6%という状況でございます。
 それからイギリス、フランス、ドイツ、ヨーロッパ各国をごらんいただきたいのですが、自国の音楽の比率はフランスが62%、イギリスが52%、ドイツが48%、イタリア47%ということで、ヨーロッパ各国では一番フランスが高いわけですが、大体半分位の状況にあります。
 そういう中で、日本はアメリカとヨーロッパの中間、一言で言えば非常に調和のとれた状況ではないかと認識しています。ここ数年洋楽の比率は、大体20%から30%の間で推移をしております。
 だからといって、日本の音楽市場が閉鎖的ということでは決してございません。世界の多種多様な音楽、洋楽の新譜だけでも6,000タイトルを発売しており、これはほかの国にも引けをとりません。それだけの種類の新譜を出しながら、なおかつこれだけ日本の音楽が売れているということは、日本人の自国の音楽に対する関心が非常に高いと理解をしております。
 世界第1位のアメリカは、原盤ライセンスを中心に世界のマーケットの中で大きなビジネスをやっております。ところが日本のレコード産業は輸出入比率が約1対10ということで、大幅な入超産業にとどまっております。今後我が国の音楽が国際的に流通拡大していく上での課題でございますが、2ページ目のマトリックスの表の右下をご覧ください。
 大きくはアジアと欧米とございますが、まずアジアを中心とした取り組みというのが優先課題と思っております。こちらのトップの、音楽レコードの還流防止措置導入に伴う積極的展開ですが、近年アジア各国で日本のポップミュージックの人気が非常に高まっておりますが、アジアでライセンス生産したCDが非常に安価に日本に逆流してきているということで、日本のレコード会社は海外展開に消極的にならざるを得ませんでした。しかしながら、6月初めに著作権法が改正されたことによりまして、音楽レコード還流防止措置が来年の1月から施行されることとなりました。これを機会に、今各レコード会社とも積極的にアジア市場進出に向けて取り組もうとしております。
 それから、2点目が、アジア諸国における海賊版対策、これも先ほど経産省のご説明にありましたが、各省庁挙げまして、今この海賊版対策に積極的取り組みが行われようとしております。世界レコード産業連盟、IFPIという組織の調査によりますと、アジア各国は海賊版比率が非常に高く、中国では90%、台湾では50%、韓国、香港では25%に達していると見られ、音楽産業全体に大きな影響を及ぼしております。
 こうした海賊版封じ策でいろんな手が今打たれようとしておりますが、先ほどの経産省の説明にもありましたように、統一認証マークを制定活用し、新しい海賊版封じ策につなげる、というのもで、私どもレコード業界も、他の産業と一緒になり、展開していくつもりです。
 最後の課題は、音楽文化交流の拡大でございます。最近では中国女子十二楽坊、韓国の「冬のソナタ」のサントラ盤等、非常に多様な音楽がアジアの方から入ってくるようになりました。こういったアジアとの相互交流の動きを加速するため、ことし10月には東京国際映画祭と連携しまして、アジアの音楽関係者が一堂に会した東京・アジア・ミュージックマーケットを開催すべく、現在準備中でございます。
 こういった形でいろいろアジアを中心とした取り組みを進めているわけでございますけれども、最後に一言だけ、欧米における取り組みについて報告させていただきたいと思います。
 これまで坂本龍一、喜多郎といったアーティストがアメリカでグラミー賞を受賞するなど、インストルメンタルの分野では欧米のマーケットでも大きな成功例があります。
 しかし、ボーカルの分野ではなかなか成功例がありませんでしたが、この秋、アメリカのメジャーレーベルから全世界に向けて、日本で800万枚という過去最高の売り上げを誇りました宇多田ヒカルが、いよいよワールドワイドでデビューするということで、レコード業界は大きな関心を持っております。このように、アジアだけでなく欧米の音楽マーケットに向けてもいろいろトライをしているところでございます。
 以上、レコード業界として現在取り組んでおります状況について報告させていただきました。ありがとうございました。

富澤座長 田辺さんありがとうございました。
 ただいまレコード協会様よりご説明がございましたが、ご質問、ご意見があればお出し願いたいと思います。
 今の田辺さんのお話で、輸出入の関係で見ると大変な入超だというお話があったのですが、それにもかかわらず、全体としてみると30%いってないということは、日本の文化性が高いのか、あるいは言葉という障壁があるゆえなのか、その辺はどのようにお考えでしょうか。ヨーロッパと比べて非常にその比率が低いですが。

田辺日本レコード協会専務理事 1つは日本語という言葉の問題があると思います。メロディーやリズムというのは邦楽も洋楽も一緒です。歴史の中でそれぞれ非常に似通った音楽がヒットしたということもございますが、基本的に洋楽のマーケットが30%以下でずっと続いているという状況については、やはり英語の詩の問題もあると思います。洋楽を国内で広く伝える場合、邦楽に比べてメディアが限られてしまうというプロモーションの制約もございます。ただ、最近はインターネットの普及などで、新しいメディアの普及によって洋楽の環境も変わりつつあります。

富澤座長 ヨーロッパの諸国で、イギリス、フランスや、ドイツ、イタリア、スペインもそうですが、半分ぐらい、大体50%前後海外から入ってくるわけですが。そのほとんどはアメリカから輸入されるのですか。

田辺日本レコード協会専務理事 ヨーロッパの他の国の音楽もあると思います。例えば日本にしますと、フランスのものも入ってきますし、ドイツのロックも入ってくる、シャンソン、カンツォーネ、もちろんイギリスのロックミュージック、ビートルズを初めとしてその後のもの等、お互いに行き来しているものもあると思いますが、やはりアメリカのものが一番多いと思われます。また、フランスが高いのは、1つは、放送におきまして、一定時間以上、自国語の音楽をかけるという1つのルール化がされているわけでございます。ただ発売の制限はございません。自国の作品と海外の作品をこういう割合で出すとか、そういう制度はないのですが、放送におきまして若干そういった動きはあると聞いております。

佐藤委員 今、田辺さんのお話、大変関心を持って聞かしていただいたのですが、インターネットでアメリカなどはCDを注文すると、日本のものより安いです。ただ安いというのではなく、日本のCDは付加価値をつけるために、楽譜が日本語で入る、解説の本が付いているなどとしている。そのようなアクセサリーを取り払った純粋のものでいうと、日本の市場で買う値段でみると、向こうからのものの方がはるかに安い。
 そこで、今後一体どういう方向で我が国の競争力を高めていくということをお考えになっているのか、あるいは場合によっては何か保護的な要素を取り入れるような動きが将来出てくるのか。そして国全体で見ると、ライセンスの支払いや、いろいろなお金を向こうに支払い、そして日本のレコード会社がつくっているわけです。だからそこは国内産になっているが、ソフトは全部海外から来るということになっているのではないかと思うのです。だから宇多田ヒカルさんのような人がゴマンと出てくればそれに越したことはないですが、今後の傾向として、文化庁が何かしたらどうか、何か頑張ってやったらどうかというような話にはならず、十分これでレコード業界はもうかっている、だから別に入超になっても構わないよという話ですか。

田辺日本レコード協会専務理事 まず価格について、アメリカは確かに18ドルや、安いところで13ドル、14ドルですが、日本に入る輸入盤は2,100円、2,300円などで売っております。
 ではなぜアメリカが安いのかと申しますと、ロットの問題が大きく影響しています。普通の工業商品に比べるとCDなどの文化商品は製造コストが非常に低く、構成比は付属品を含めても10%以下でございまして、大量生産になりますと、固定費割合が減り、利益が非常に高くなります。ちなみにレコード業界は、先ほど1万3,000種類、年間発売すると申し上げましたが、利益を生んだ商品というのはわずか十数%です。こうした一部の商品がほかを全部カバーして、多種多様な商品を出しています。レコードの発売は極めてハイリスク、ハイリターンのビジネスでございまして、売れれば売れるほど非常に、1枚あたりの利益は高いものになります。アメリカは全世界をマーケットにしておりますから、1枚当たりは非常に安くできます。ですが、ヨーロッパのイギリス、フランスのCDの価格は為替レートで変動しますが、日本とほぼ同じような水準にあります。先ほど、日本が将来、アジアに展開することが課題と申し上げましたが、やはり日本の音楽マーケットを広げていくという中に1つ解決策があるのではないかと思っております。日本の音楽が今アジア各国で非常に受けております。こういった国々に市場を広げ、そこで回収した投資コストをまた日本に再投資する、それが日本の消費者にも安くCDを提供できることにつながると考えております。

富澤座長 ほかに何か。河野委員。

河野委員 1つだけお願いいたします。
 私はクラシック音楽が大変好きなのですが、自分でも最近買わなくなっておりますが、ドイツのオーケストラについて、CDを売りたいのだけれども売れないという話を聞きました。レコード産業そのものの規模は最近どういう推移であろうか。縮みがちなのでしょうか、あるいは拡大志向なのか、そういうことを教えていただければと思います。

田辺日本レコード協会専務理事 まず世界のマーケットは4年連続マイナスでございます。資料の26ページをご覧ください。
 98年から2002年まで載っておりますが、2002年の世界のオーディオレコード売り上げは310億ドルでございます。これは前の年の333億ドル、その前が366億ドル、さらに385億ドルと見ますと、3年連続マイナスで、実は昨年2,003年も、統計が変わりましてビデオ込みで、ここには載っておりませんが320億ドルという実績をIFPIは発表しております。オーディオだけ見ると300億ドル強ということで、残念ながら4年連続でございます。
 それから日本でございますが、日本のマーケットは、同じ資料の6ページをご覧ください。1998年の6,075億をピークに後退し、2003年は音楽ビデオ、オーディオレコード含めて4,562億というのが総生産金額でございます。残念ながら世界では4年連続、日本では5年連続とマイナスが続き、何とかこれを回復したいということで頑張っているところでございます。

富澤座長 よろしいでしょうか。
 それでは、続きまして、日本芸能実演家団体協議会様よりご発言をお願いいたします。

米屋日本芸能実演家団体協議会部長 それでは、私ども通称芸団協と申しておりまして、演劇、音楽、舞踊、演芸などの古典から現代ものまで非常に幅広い分野の舞台芸術、芸能の実演家や舞台施設スタッフ、それから制作者、プロデューサーといったものを構成員といたします67の団体を会員として構成しております。本日はこのような機会をいただきましてありがとうございます。そういった芸能の立場から実情のご紹介と意見を述べさせていただきます。
 まず、日本の芸能の一般論に入ります前に、そもそも文化政策は、基本的な考え方といたしまして、市場に任せておくだけは供給が少なくなる文化というのがあるので、したがって財政、税制、そういった公的支援ですとか民間支援を是認するような制度を整えて、多様な文化が共存し、人々が多様な文化を享受できるようにするというのが、これが文化政策の基本でございますので、これを国際間で見るならば、市場取引だけに任せておくと存続が難しくなる文化があるということは当然のことでして、何らかの文化政策によって国や地域がそれぞれの独自の文化を守ろうとすることが支持されるべきなのではないか。こういった文化の多様性を確保するということが、国内においても国際間においても重要なテーマであるということを基本的な立場と考えております。
 それを考えますと、事前にいただいた条約案文の要約の資料で、人権の尊重や自由の原則、アクセスと選択の自由、こういったようなことが掲げられております。特に文化資産が、将来の世代の利益のための資産としてこの中に触れられております。これは文化を生み出すシステム、有形、無形の環境総体をとらえた包括的な概念ですが、その持続性の原則に言及されているということを私どもとしては高く評価したいと思います。
 といいますのも、芸術家やスタッフですとか、そういった芸能にかかわる専門家としましては、人間的な資源の中で継承され、発展されてきた能力、技能、表現という無形の文化を、守るべきもの、資産として掲げられているからということからですが、これは貨幣価値ではかるような経済効率優先ではなかなか評価されにくいものですし、そういったものが一たん失われてしまいますと、なかなか復活するのに難しいという観点からも、そういったところを重視していきたいなと思うことがございます。
 今日は日本の文化の特徴についてということでこれから述べさせていただくのですが、国際的な問題や国内の政策に直結するという観点から少しお話したいと思います。
 日本の文化というのは、ご承知のように古くから海外渡来の文化、さまざまな文化を利用して、我が国独自の文化として融合させたり発展させたりしてきている。ルーツの違う文化が共存して、多面的な文化を特徴としております。
 舞台芸術、芸能の分野でも、歴史の古いものから明治維新後あるいは戦後移入されたポピュラーカルチャーなど、実に多元的にさまざまなものが同時に存在しているというのが特徴です。
 私どもは、ライブだけでなく、メディアを通じてとか、パッケージ商品にされたコンテンツなどの中にもちろんかかわっているのですが、ライブの方で申しますと、古典芸能なども継承されている一方で、例えばクラシック音楽では、2003年の日本演奏連盟の統計では、少なくとも1万回以上のコンサートが行われているのですが、そのうち8,045回が日本人による演奏会で、2,522回が来日アーティストということです。これはオペラ・バレエ、それからポピュラー音楽を含んでおりませんで、そういったものも含めますと、この2割強というのは多いとか少ないとかいうのはありますが、感覚としましては、日本は海外のアーティストにとっては非常にお客様がたくさん来るマーケットというふうに目されていると思います。本国では何もしてないのだけれども、日本でだけ活動しているような、そういったグループもあるぐらいと言われておりまして、これは先ほどレコード協会さんの方からもお話がありましたが、ざっくり申しますと文化の入超ということも考えられるのかなと思いますが、舶来ものを珍しがるとか、積極的に取り入れる国民性というものもあるでしょうし、海外がルーツの文化の本場ものを見たいというような意識が高いというのの影響かななどと思います。これがアメリカなどで考えますとかなり違っておりまして、アメリカは歴史が違うせいもありますが、そもそも情報誌などの芸能紹介などを見ても、海外アーティストと国内アーティストを分けるという考え方はございません。国内でやっているものはすべてアメリカの音楽というようなとらえ方で、今魅力があるかどうか、そういう観点だけで評価もされて、活躍の機会も与えられるというような国です。ヨーロッパの場合はアメリカと違ってもう少し国や地域がアイデンティティにこだわっているかと思いますが、日常的に国籍の違う人が混在して暮らしている環境ですので、日本では国内で余り文化の多様性ということを意識されておりませんでしたが、そういった点ももう少し意識化されているのかなと思います。
 したがって、日本の状況を考えますと、国内の伝統のあるものと海外のものを切り離して、2分法で考えたがる傾向がございますが、その区別をした上で海外からのものを積極的に採り入れているという感じだと思います。
 こういった日本らしい文化を守って発展させていく、あるいは発信していくということを国際的に見ますと、2つの対応、アプローチが必要かと思っております。日本で一般的に伝統芸能と申しますと、形を守っている表現、これが伝統であると受けとめられておりますけれども、これが西洋でどうかといいますと、伝統的な舞台芸術とは表現形式をかなり変更させながら発展していくという考え方があります。そうしますと、日本的な伝統文化というものを保護、発展させていく、あるいは発信していくという考え方と、もう1つは全世界共通の表現形式で流通している分野、エリア、その中で日本の独自性をどういうふうに主張していくのかというような視点も必要になるかと思います。外形的に見て日本らしさが一目でわかるというふうな部分では国際文化交流の範疇で、相互に理解を促進するために海外交流するなどというようなことはこれまでも行われておりますが、あるいは無形文化遺産の保護活用で国際協力をされているというようなこともございますし、文化財保護行政の長い経過もございますが、それに対して、表現形式が万国共通のところでは、余り日本らしさというところが意識されてこなかった、政策課題としてなかったのではないかなというふうに感じます。
 例えば、オペラ、バレエ、オーケストラなどのクラシック音楽などの場合は、世界共通の芸術として存在するわけですが、それは世界で市場があるということに関連して存在するもので、そういったところに国際的な摩擦が生じる可能性があります。日本の文化を発信したい、どんどん市場で活躍していってほしいということもありますが、ある程度バランス感覚が必要とされる部分なのかなと思います。
 一例で申しますと、日本のクラシック音楽の演奏家あるいはバレエダンサーが国際的コンクールで賞を取る人も少なくございません。そういう方が海外でそのまま活躍をされるということも多いわけですし、海外で評価されないと一流じゃないというような思い込みも結構強く、海外留学を志す音楽家の卵なども非常に多いのが現状です。そういう人が海外の研修制度の恩恵を受け、海外の市場で活躍の場を与えられ、そういった方々が日本の文化のよいイメージをつくってくださっているという側面もあるのですが、少なくとも形式としては日本独自のものではなくても、その中で日本らしさというものを表現してくれているのかなということがございます。
 ところが、アメリカでは、さっき申しましたように実力があれば国籍に関係なく活躍のチャンスが得られるようになっているのですが、ヨーロッパの場合はオーケストラ、オペラなどで、これまで雇用されていた演奏家が非ヨーロッパ人であるという理由で職を失ったり、なかなか職に就けなくなったりするような現象も昨今は数多くあると聞いております。日本の音楽関係者の中には、海外アーティストが多過ぎる、優遇され過ぎる、入ってくるなというような保護主義的な声を上げる方もいますけれども、国籍にかかわらず、芸術家が仕事を得たり研修の機会を得たりするときに、どういうふうに整えていくかということが肝心なのかなと思います。よって、極端な保護主義ではなく、国の中の人材育成システムや教育の場の充実ということが関係してくるのでしょう。そうすれば海外への人材流出ということもなくなってくるのかもしれませんし、親日派の外国の人が日本で活躍していく、あるいは海外にまた戻っていくというようなことも起きるのかと思います。
 先ほど来オーディオビジュアル産業ということで、映画などのことはこの映画の関係の方がお詳しいのかと思いますが、先ほど物の流通というようなお話がありましたが、そういったものが順調に進むには、それがつくられる現場で働いている芸術家やスタッフの労働市場という問題がございます。したがって、全世界的に活発になっていくのはよろしいのですが、仕事の量がどうなるのか、仕事の環境がどうなるのかということで考えますと、実演家やスタッフの立場としましては、ときには慎重に運ばなければならないのかなと。自由な取引だけというのではままならないものがあるのではないかなと。先ほど申しましたいろいろなシステム、文化的な環境というものを継承していくという観点からは、何らかの対策が必要になることもあるのではないかというように考えております。
 最後に、アジアの国としてどう考えるかということにちょっと触れさせていただきたいのですが、昨今の映画祭、各国で行われていますコンペティションなどを見ますと、世界というか、西洋の尺度だけではなく、多様な文化の視点で賞を与えるというような姿勢が非常に強いように見受けられます。そのようなときに、多元的な文化を特徴としてきた日本が、アジアの国としてさまざまな文化を主張し、共通性の違いを認識しながら文化の継承発展を意識的に行っていくべきではないかなと。西洋一辺倒の世界ではないというような立場での発言というものが必要になってくるのではないかと思います。
 一つ例を申しますと、日本の伝統文化あるいは各種の民俗芸能もそうですが、アジア諸国には伝統の中で培われてきた優れた表現というのが多々ございます。これを市場中心の考え方では、著作権制度で必ずしも保護されないという側面もございますし、そうした文化を大事にしていく姿勢というのも日本は重視していくべきなのではないかと思っております。
 したがって、文化政策としましては、もう少し、滅びそうなもの、消滅しそうなものを保護するというだけではなく、文化産業や産業の文化的側面ということを視野に入れ、芸術と産業との連動性を考慮して、自由な経済活動を基本としながらも文化の独自性を尊重する、バランスをとりながら積極的に、かつときには慎重に組み立てていかなければならないのではないかなと考えております。
 きょうは資料とかは特にご提出はしていませんが、簡単ですが、そのように考えております。

富澤座長 米屋さんありがとうございました。
 ただいまの芸団協さんのご説明について、ご質問、ご意見があればお出し願いたいと思います。
 それでは、時間の関係もありますので、また後でまとめてご意見、ご質問を伺いたいと思います。続いて、日本映画海外普及協会様、よろしくお願いします。

西村日本映画海外普及協会事務局次長 財団法人日本映画海外普及協会の西村と申します。
 日本映画海外普及協会は通称ユニジャパンと申しておりますが、設立されたのは1957年、外務省と当時の通産省との共管によって設立された財団でございます。
 その目的というのは、名前のとおり日本映画の海外輸出を目的として設立されたもので、ただ設立されたのは1957年という、もう50年近く前のことですが、その当時というのは、黒澤明監督の「七人の侍」や「羅生門」というのが国際的に評価を受けて、あるいは小津安二郎監督などの作品が国際的に評価を得て、そのような機運に乗って日本映画をもっと海外に知らせていこうという目的で設立されたわけです。それ以降、日本映画産業自体がいわゆる斜陽という形で60年以降傾いてきた段階と並行しまして、この日本映画海外普及協会の活動自体も非常に小さくなっておりました。
 この4〜5年ぐらいだと思うのですが、日本映画が海外で非常に評価を得てくるようになりまして、日本映画海外普及教会の活動も活発になり、現在、お配りしましたような活動を続けております。
 日本映画というのが国際的に評価を受けた転機になりましたのは1997年と思っております。この年の5月のカンヌ映画祭、そこで今村昌平監督の「うなぎ」という作品がグランプリを受賞いたします。同じそのカンヌ映画祭で、カメラドールという新人監督のための最高賞がございますが、そこで河瀬直美監督の作品が受賞いたしまして、そのカンヌ映画祭で2本の日本映画がそれぞれの最高賞を受賞しました。また同じ年の9月のベネチア映画祭、ここで北野武監督の「HANA−BI(はな−び)」がグランプリを受賞し、そういった国際的な非常に権威のある映画祭で日本映画が受賞が続いた。つまり大ベテランである今村昌平監督、中堅監督である北野武監督、新人監督である河瀬直美監督という、3世代の日本の監督がそれぞれ最高賞を受賞したということで、非常に日本映画が興味を持たれたということがございます。
 同時に、その年の6月に、アメリカで「Shall we ダンス?」という周防正行監督の作品が一般公開されました。これは日本映画としてはアメリカで広く好評を受けたわけですが、約10億円の興行収入を上げたということで、映画祭での作品的、芸術的評価だけではなく、商業的な評価もあわせてその年に得たということで、日本映画が海外的に非常に興味と関心を引いた年だったわけです。同じ年の夏ですが、これは日本で「もののけ姫」という宮崎駿監督の作品が大ヒットいたしまして、これがやはり世界に、日本にアニメがあるということで、大いに日本映画を知らしめた年だったわけです。
 その1997年以降、日本映画が海外の映画祭で上映される、あるいは海外のマーケットに日本映画が出ていく、一般公開される、そういったことが全く特例ではなくなってきたというようなことがございます。
 そこで、日本映画海外普及協会、ユニジャパンといたしましては、そういった時代の流れに乗りまして、ますます日本映画の情報、それから日本映画のコンテンツ、作品、それから日本映画にかかわる人々、そういった人々の国際的な流通をさらに活発化していこうということを活動の基本的な目的としております。日本映画の情報をどんどん海外に出していく、作品もさらにどんどん出していく、同時に人の交流も続けていこうという目的でございます。
 現在やっておりますのは、お配りした幾つかの印刷物がございますが、まず、日本映画の海外向けの年鑑、イヤーブックをつくっております。この浮世絵の表紙のついた小冊子がそうですが、お持ちした資料が少なくて皆さんにお配りできなくて申しわけございませんでしたが、こういった冊子がございます。これは毎年1回発行しております。その年に公開された代表的な日本映画50作品の紹介、それからその年の日本映画の産業統計、公開本数や、観客動員数、映画観の数などの産業統計を海外の人たちに知っていただくための統計。それからもう1つが日本の映画産業のダイレクトリー、例えば日本の制作会社、日本の映画学校、映画祭についてどんなものがあるか、その住所と連絡先を網羅したものを毎年とっておりまして、発行しております。
 それからもう1つが、イヤーブックは年鑑ということですので、前年の作品が対象になっております。したがって必ずしも新作というわけではありませんので、さらに新しい作品をフォローしていこうということで、「New Cinema from Japan」という冊子を年に二度つくりまして配布しております。これは年鑑ではなく、今まさにつくられている映画、新作の情報をここに掲載し、同時にその映画の制作あるいは配給をやっている会社のプロフィールを紹介するというものです。
 それと、こういった内容は同時に我々のホームページの方に掲載いたしまして、ホームページでこういった冊子が行き渡らないところにも、いつでも海外からアクセスいただけるように載せております。
 この年鑑というのは、文化庁の人材育成支援事業という事業からの補助事業として行っているものです。それから「New Cinema from Japan」という新作カタログ、これは国際交流基金との共同事業で行っております。それから日本映画のホームページ、これは自転車振興会からの補助事業ということで行っております。
 こういったことが日本映画の情報を知らせていこうというためのいろいろなツールでございます。
 それからもう1つ行っているのが、こういった情報を配布する場所を海外に確保しようということで、海外の主要な映画祭、カンヌ映画祭など主要な映画祭に日本映画ブースあるいは日本映画パビリオンといったものを出展いたしまして、ここの現場で海外の人たちに日本映画の情報を配布しているという活動を行っております。これはことしのカンヌ映画祭でも行いましたけれども、今回は経済産業省、文化庁、それからジェトロ、それから我々ユニジャパン、4者が共同で日本映画の政府館といった形を出展いたしました。
 それからもう1つ行っていますのが、これも文化庁からの委託事業として行っておるものですが、日本映画海外展開助成という、日本映画の海外映画祭あるいはマーケットへの出品助成です。日本映画というのはまだまだ海外のマーケット的には必ずしも大きいものではございませんので、特に独立系の映画会社等にとっては海外に出品することの費用負担が非常に大きいという現状でございます。そういったところで、その出品の費用を一部負担、補助していこうということで、映画祭あるいはマーケットに出品するための外国語字幕の製作、それから人の派遣、それから宣伝製作グッズ、海外向けのポスターであったりチラシであったりパンフレットであったり、そういったものの制作費の一部補助というものをやっております。これも文化庁の日本映画海外上映等支援事業の予算で、昨年、平成15年からスタートいたしましたが、昨年の年間の予算が、ブース出展と、それから資金支援合わせて7,700万円の予算で行っております。
 以上が我々の活動でございますが、先ほども先生方のご質問の中で、日本映画海外展開の方は今どういうレベルにあるのだというご質問があったと思いますが、日本映画の国際化といったことについて、3つのステージがあるというふうに考えております。
 まず最初のステージというのが海外の映画祭への出品、そこでの受賞によるプロモーション効果ということであると思います。それから第2番目が、映画祭にとどまらず、一般の観客向けの市場に日本が出ていく、つまり海外で日本映画の配給と一般公開される、これが第2のステップ。それから第3ステップが、日本映画に対して海外からさらに資金を導入していく、あるいは国際的な共同制作をしていく、そういったことが第3ステップになっていくと思っております。
 では、現在日本映画がどの辺に位置しているか、これは必ずしも一般論としてはいえないのですが、最先端の人たちは既に海外と共同事業をしている人がいるわけですが、一般的に申しますと第2ステップの中ほど、ちょうど日本映画が海外の一般観客へ届き始めたその中ほどにあると考えております。
 そういったことのデータなんですけれども、ヨーロッパにEUの団体の1つであるオーディオビジュアルオブザーバトリーという組織がございまして、そこがヨーロッパで公開された映画のデータというものをつくっております。これは1996年以降の公開された作品のリストになっておりますが、そこに120本の日本映画がデータとして掲載されております。1996年以降、ヨーロッパを中心にして120本ぐらいの日本映画が公開されているということです。
 そのうち、フランスがやはり一番日本映画の公開が多いのですが、大体70本ぐらいがフランスで公開されているということになっております。ただ、マーケット的にはやはりアメリカが非常に大きいということがございまして、アメリカではまだ日本映画というのは公開は非常に少ないのですが、一番有名な例は「ポケモン」、これはアメリカだけで既に1,500万ぐらいの観客数を動員しております。大抵の日本映画というのは、ヨーロッパの国で公開されても、北野武監督といった著名な監督の作品で10万単位の観客数動員にとどまっているのが現状でございます。そういった経過でございます。
 日本映画の場合、特に海外との接点をつくって、これをどんどんつくっていく、それで日本映画人と海外の映画人が共同事業をしていくときに必要なこととして、日本映画産業の透明性といったことが要求されてくるということもあります。これは必ずしも日本映画の海外進出とはまた別問題かもしれませんが、海外から見た場合、非常に日本の映画産業にアクセスしづらいという現状がございます。つまり日本映画の製作会社、あるいはその配給会社の英語の資料すらないというのが現状でございます。どこにだれに聞いていいのかわからない。例えばこういう作品を買いたいのだけれども、その作品の権利を一体どこのだれが持っているかということのデータが公開されてないというのがございまして、そういったところにアクセスしていくことが難しい。それから同時に日本側の産業データ自体が非常に少ない。例えばフランスや韓国とお互いの協力という格好でよく話をするのですけれども、フランスや韓国では先ほども言いましたように、フランス国内あるいは韓国国内で公開された外国映画、自国映画を含めて公開データといったものが公表されております。それぞれのホームページについては見ることができるのですが、日本でフランス映画が何本公開されて、それの観客数あるいは興行収入がどれぐらい上がったのだといったデータが実はないわけです。そういったことを日本国内で整備していくことが必要があると思っております。
 これは国の動きというよりもむしろ業界団体が率先してやっていく必要があると思うのですけれども、従来の日本映画産業というのは、ある種閉鎖的な世界の中で進んでおりまして、特に経済的に問題がなかったということでそれが常態化しておるわけですが、今後海外からの資金を導入する、あるいは日本国内でも他の産業から資金を導入していくといったことを考える上で、マーケットの透明性といったことは必要になってくるかと思っております。
 もう1つ、日本映画の海外へのアピールということですが、今必要になってくると思うのが、1つは一番大きな問題というのはスターの存在であると思っております。日本映画がこれだけ海外でポピュラーになってきて、アニメのキャラクターも非常に人気があるわけですが、ただ日本のスター、国際的に通用するスターがなかなか日本にいないというところであります。
 例えば、最近韓国のスターが非常に日本で人気が出て、ぺ・ヨンジュンという人が来ると日本で大騒ぎになる。あるいは香港のスターや、中国のホジー、チャン・リーといった国際的なスターがいる。そういう人たちが例えばカンヌ映画祭でスポットを浴びて、自国のある種のブランド化を進めているわけですが、残念ながら日本映画の場合、そういった日本映画の顔となるようなスターがいないというのが実は障害だという話でした。そういったスターをつくっていくということも戦略的に必要なことではないかと思っております。
 ちょっと駆け足になりましたけれども、以上でございます。

富澤座長 西村さんありがとうございました。
 ただいま日本映画海外普及協会様のご説明にご質問、ご意見等ございますか。根木委員どうぞ。

根木委員 1つお伺いしたいと思いますが、独立系の映画で出費等が大変というお話でございましたが、日本における上映の機会というのはやはりご苦労なさっているということでしょうか。

西村日本映画海外普及協会事務次局 海外にとどまらず、日本の国内でも独立系の作品を全国に公開していくということは非常に困難な状況がございます。日本の映画館数ですが、スクリーン数というのですが、これはこの2〜3年莫大にふえてきているわけです。現在は2,600ぐらいあるわけですが、それの大きな原因がシネコン、シネマコンプレックスの普及ということでございます。60年以降日本のスクリーン数というのは減ってきたわけですが、これが3年ぐらい前から上向きになり、一時期は1,700まで落ちたのが2,600ですから、全国いろいろな箇所に、これまで映画館がなかった都市にシネコンができていて、映画を見る機会がふえてきているということがございます。
 ただ現実には、シネコンというのは基本的にはお客様が入れば上映しましょうということでありますので、実はそれはハリウッド映画に限らず日本映画でも、大ヒットすれば公開ができるのですが、小規模な映画がなかなか公開されない。シネコンの進出によって地方の映画館が、既存の映画館がどんどんと店じまいしてしまって、そういった上映機会がなくなってきているという現状がございます。
 これは、エースジャパンという団体がございまして、国際文化交流推進財団という団体ですが、ここがこの2年間、日本の各県単位でどのような映画が公開されてきたかというリストを調べています。そうすると、東京にいる限りは非常に日本映画、また日本映画に限らず海外の映画も見る機会はあるのですが、恐らく世界で一番多くの映画を見る機会があると思っておりますが、それが地方に行った場合には非常にその機会が少ない。そういったデータを今つくりつつあります。
 それを救済する方法はないかということで、ことし初めてコミュニティシネマの推進協議会という名前の団体ができまして、そういった地方での映画の、ここで言う多様性を確保するための映画館、そういった市民のための映画館をつくっていこうじゃないかという動きが動き始めたところでございます。

富澤座長 よろしいですか。
 それでは、最後になってしまいましたが、画像情報教育振興協会様にご説明をお願いします。

阿部画像情報教育振興協会文化事業部長 それでは説明させていただきます。
 画像情報教育振興協会の阿部と申します。通常はCG-ARTS協会という名称で活動しております。私の方からはメディア芸術から見た文化の多様性ということで、実際活動している内容や、その活動の中から感じたことをかいつまんでお話をさせていただきます。
 まず最初に、メディア芸術分野における現状の取り組みとしまして、フェスティバルがございます。主に文化庁さんと一緒にやっている内容が多いのですが、1つ目が「文化庁メディア芸術祭」。お手元に黄色いパンフレットがございますが、これが今年度の作品募集でございます。
 内容としましては、デジタルアート、CG、Web、ゲーム、アニメーション、マンガについて、ほかの国には例を見ないほど非常に幅広いジャンルの作品を対象にしたフェスティバルです。1回目のころは海外からの応募も皆無に等しかったのですが、去年の段階では43カ国から応募いただきまして、トータルでは1,584作品もの応募がありました。応募されている方々にヒアリングをしてみたところ、やはり日本のポップカルチャーやメディア芸術は、クールジャパンという言葉に表されているように、海外でも非常に評価が高いわけですが、日本で評価を受けたい、日本の評価軸で自分の作品を評価されたいという海外からのアーティストが非常に増えているようです。先ほど米屋部長の方からも、「日本としての評価軸を持ちたい。」というお話がありましたが、海外で評価されて、逆輸入して日本にやってくるのではなく、日本で評価して外に送り出すということが重要だと考えております。メディア芸術祭としても、そのような目的の一つでありましたが、その目的は少しずつですが、達成できているのではないかと思います。実際そのメディア芸術祭を受賞されたことをきっかけにされて、海外で高い評価を受ける日本人アーティストも何人か出てきております。
 2つ目が、国際交流年などに絡めまして海外で日本のメディア芸術作品を紹介するという事業を行っております。2002年には日本媒体芸術作品展、これが日本メディア芸術作品展、媒体というのが中国語でメディアという意味になります。そういったものを行いました。メディア芸術祭の歴代の受賞作品をまとめまして、北京で展覧会を行いました。河合長官にも行っていただきまして、大々的に行ったのですが、非常に好評でした。中国の政府、マスコミ、一般の方々からも非常に高い評価をいただきました。日本人って面白い作品をつくるんだね、日本人って楽しい文化を持っているんだねという、嬉しい評価をいただきました。
 海外に日本の文化を紹介していくときに、やはり日本の伝統文化を紹介していくということも非常に重要ですが、やはり現代の日本人が親しんでいる文化そのものを持っていって紹介するということも、国際交流の観点から見ますと非常に重要ではないかなと感じました。
 次が、国際アニメ・マンガフォーラムというものを2003年に日本ASEAN(アセアン)交流年を記念して開催いたしました。
 今までの議論の中で、日本のコンテンツ、日本の作品を海外にいかに持っていくか、海外にいかに売り込むかという感じの議論があるのですが、日本で強いジャンルというのがあります。アニメーション、マンガ、ゲームというのは非常に強いジャンルです。逆にそういった強いジャンルを持っている立場としましては、やはり受け入れる姿勢ももっともっと持たないといけないと思います。
 この国際アニメ・マンガフィーラムでは、ASEAN(アセアン)の国々の方々、ASEAN(アセアン)の国々のアニメーション、マンガといったものを日本に持ってきて紹介するということを行いました。アニメーション、マンガというのは日本の影響を強く受けている作品が多く見られました。しかし、中にやはり、それぞれの国の文化を反映さしたオリジナリティーを見せてくれる作品もありまして、そういったものを日本人が見るということも大事なのではないかと思います。
 次に、メディア芸術祭の受賞作品の海外紹介という活動をやっております。メディア芸術祭以外に、海外にはそれに先行する形で、アメリカのSIGGRAPH、オーストリアのARS ELECTRONICA、ドイツのトランスメディアーレ等々、いろんなメディア芸術関係のフェスティバルがございます。特にARS ELECTRONICAは今年で25周年を迎える非常に伝統あるフェスティバルですが、そのようなフェスティバルに日本の作家を紹介するということもやっております。メディア芸術祭の受賞者の中でも若手の作家さんや、インディペンデント系の作家さんを中心に紹介をしています。
 そのような活動で実感しているのが、日本らしい作品の方が受けるということです。やはり海外で求められているのは、欧米の模倣的な日本の作品ではなく、日本らしい作品といったものではないかと思います。
 先日「クレヨンしんちゃん」の原恵一監督と話をする機会があったのですが、今スペインで非常に「クレヨンしんちゃん」がヒットしているということです。非常に日本的な作品ではありますが、スペインで非常に人気があるということです。これから日本の文化を発展させていくときに、日本らしさということを追求していくということは非常に大事ではないかと思います。
 次のページにまいりまして、人材育成です。CG-ARTS協会の正式名称、画像情報教育振興協会という名前のとおり、教育のことが本業です。メディア関連の教育づくりをやっています。この分野は非常に歴史も浅いので、教育としての体系化や、整備も何もされていません。したがって、1985年ぐらいからCGや画像処理、マルチメディアといった分野の教育活動を行ってまいりました。あと、そのようなスキルをはかる制度として全国レベルの検定試験なども行っております。
 このようなものをつくっていますと、実はアジア各国の方から使いたい、参考にしたいというお申し出も幾つか出てきております。やはり中国、フィリピン、韓国あたりから来るのですが、アジア各国にあるのは、アメリカ産のソフトウエアの使い方マニュアルというものはたくさんあるのですが、基本的な仕組みを体系立てて学ぶもの、そのようなものがないので、CG-ARTSで作っているこういったカリキュラム、教材を参考にさせてほしいというような要請が幾つもあります。やはりメディア芸術というのはCGなどの高度な技術の上に成り立っているものですから、その技術の部分をやはり欧米に抑えられていては問題があると思います。日本として、アジアとして確固たる地位を築いていくためには、独自性を保つためには、そのような技術や仕組みなどについても押さえていく必要があるのではないかと思います。
 そして、学生CGコンテストや、文化庁の研修制度の方で、メディア芸術分野の推薦団体の活動も行っております。
 次のページにまいりまして、文化の多様性を保護・促進するために必要な施策ということで2つほどまとめてまいりました。
 1つは人材育成ということで、これはいろいろなところで論じられていますが、やはり文化の多様性を保護・促進するためには欠かせないものだと思います。アーティスト、技術者、プロデューサーの育成、あと、割と論じられないことが評論家の育成といったものも大事だと思います。正しく評論されなければ、優れた作品というのは出てきませんし、社会からも評価されませんので、やはり評論家というのは大事ではないかと思います。
 今まではアーティスト技術者、このあたりのクリエーターの育成までが論じられて、最近ようやくプロデューサーが論じられるようになってまいりまして、次のステップとしては評論家の育成までやっていく必要があるのではないかと思います。
 次に、先ほども申し上げましたが、日本の実情に合ったカリキュラムの構築ということは必要であると思います。また教育環境の整備というところも大事だと思います。まだまだこの分野は新しくて、脆弱な状態なので、教育環境をきっちりと整えていく必要があろうかと思います。さらに、若い優秀な才能を生かしていく仕組みづくりというのも大事かと思います。特にゲーム関係ですと、マーケットがやや停滞しがちになりますと、続編が多くなってまいります。若い人にチャンスを与えるのではなく、実績のあるプロデューサーに制作を任せてしまう、大作の続編をつくらせるという形になっていってしまいますので、やはり若い優秀な人を登用して、才能を生かせるような仕組みというのは大事ではないかと思います。この分野というのは非常にリスキーな分野でありますので、チャレンジできる社会というのをつくっていく必要があろうかと思います。
 2つ目が、やはり大きなものとして独自の評価基準の確立ということは欠かせないと思います。日本の評価というのはマーケティング中心だと思います。どれだけ売れたかといったものが評価軸でありますが、それ以外の評価軸というのはまだないように思います。それ以外の評価軸というのをしっかりとつくる、その延長線上でコンテストやフェスティバルの質的向上、これも実際よく発表する場がありませんという議論もあるのですが、発表する場はすでにたくさんあります。これからは、コンテストやフェスティバルの質的向上、海外からあそこのフェスティバルはすばらしい、日本のあのフェスティバルを見ておけば日本の優秀な作家は全部リサーチできるぐらいのものを育ててつくっていく必要があるのではないかと思います。そのようなものができれば、日本人が日本の優秀なアーティストを自らが発掘して海外に紹介していくということができていくのではないかと思います。
 最後に、文化の多様性を確保するための国際的な体制の構築についてということで、欧米の模倣、欧米の基準といったものが大きいので、アジアとして1つの文化的なまとまりをつくっていくということも大事ではないかと思います。日本がイニシアチブをとりながらも、各国の文化を尊重して、アジアとしての評価軸みたいなものがまとまってできればいいのではないかと思います。もっともっと人的な交流というのも促進していく必要があろうかと思いますし、人材育成の面においては、アジアで協力してメディア芸術分野の人材育成カリキュラムをつくる等、そういったことも必要ではないかと思います。
 世界中にいろいろなメディアアートのフェスティバルというのがあります。それぞれの国の基準で選ばれていますので、それが4年に一度とか集まる形で、メディア芸術とかデジタルコンテンツのワールドカップみたいなものを開くことができれば、文化的な交流といった面では、また文化的なその多様性をつくっていくという面でも、非常におもしろいことができるのではないかと思います。
 ちょっと駆け足ですけれども、以上でございます。

富澤座長 阿部さんありがとうございました。
 今のCG-ARTS協会様のご説明に何かご質問ございますか。
 今最後の阿部さんのご提案、大変貴重だと思います。特にアジアとして1つのまとまりをつくるべきであるということが大切で、それは何かそういう兆しや動きみたいなことはあるのですか。

阿部画像情報教育振興協会事業部長 最近すごく動きが活発になってまいりまして、実は先週の金曜日、土曜日、日曜日と上海の方でメディア芸術の日中韓の先生方が集まられて学会が開かれました。そこでアジアとして連携してこういったものをやっていく必要があるのではないか。そもそもアジアというのは多様性の国である、文化的にも非常にいろいろなものがあるし、民俗的にもいろいろなものがあるし、そういった国で、欧米の模倣ではない1つの評価というのができないかという議論はそちらの場でもされてはおりました。
 今だったら日本がやろうよと言えばついてきてくれると思いますが、数年もすれば、中国あたりが言うことを聞いてくれなくなってくるのじゃないかなという気はします。

富澤座長 ありがとうございました。根木委員どうぞ。

根木委員 今のお話と一緒ですけれども、アジアというのは東アジアという意味ですか。もう少し幅広く全般的に、すべてを含んだものなのか。

阿部画像情報教育振興協会事業部長 私が接したことのある限りにおいては、まずは日中韓を中心とした東アジアではないかと。ただ東南アジアについても、ASEAN(アセアン)各国につきましては非常に日本に対しては好意的ですし、日本のアニメーション、マンガといったものに理解を示されていますので、一緒にこういう評価軸をつくっていこうよと働きかけをすれば、仲間になってくれるのではないかなという気はします。

富澤座長 佐藤委員どうぞ。

佐藤委員 ちょっと前にお話いただいた米屋さんにお伺いしたいのですけれども、今回の話題になっている多様性の前に、無形の文化遺産の条約というのがございまして、そのときに実演家、実際に芸を持っておられる人々の権利をどう守っていくのか。その人たちが十分なお金をもらわないまま、テレビ会社が撮ってそれを配給していく。テレビ会社はもうけているが、実際にダンスをしたり歌を歌ったりする人たちには余り利益がない。特に外国の局ではそのようなことが非常に問題になりまして、維持していけないという状況が起きているわけです。特に大きな外国のメディアなどは、出してあげるからいいではないかと、こういう形で押さえ込まれていってしまうという状況がありまして、そういう権利の問題が出たのですが、今度の多様性の問題にも同じような要素が出てくると思います。
 その場合、余り例が政治的で難しいと思うのですが、第二国立劇場が外国から招いたプリマは世界の一流だからやらせればいいではないかと、日本側のパフォーマーはいやいやそれは困る、日本の人たちを育てる意味もあるので、プリマは日本人でなくていはいけない、こういう主張があって、もめました。
 このようなことから考えて、個人的なお考えでもいいのですが、お話の中でいろいろ出てきたことについては補助金を上げるなり何なりして人材育成をしていかなくていはいけないという面は、皆さんでいろいろおしゃって、ほかの分野でも同じです。しかし、逆にフランスが映画で上映時間を決めているとか、EU全体でやっていますが、そういうように逆に規制措置をとらなくてはいけないというような面についてはお気づきになっているか、あるいはお考えになっていることはありますか。

米屋日本芸能実演家団体協議会部長 今例に出されました新国立劇場に関しては、若干理解が違うのかなということがございまして、オペラ団体関係の方も別に日本人を出せと言っていたわけではなくて、日本のオペラの制作の状況というのを見てほしいということです。
 それはどういうことかといいますと、ヨーロッパやアメリカですと、1つの作品をつくったら、同じ作品が何ステージも上演されて、その制作費は、補助金も投入されていますが、ある程度の入場料で回収されている。ところが日本の場合は、1作品をつくっても6ステージとか多くて8ステージ、そうしますと、そこでオペラ歌手はステージしだけでは食べていけませんので、学校の先生をしている。そうしますと、練習時間を集中して3週間、4週間、1カ月半などというふうに取ることができずに、飛び飛びで3カ月稽古するという状況です。そこをヨーロッパの人々が8週間でやれと言ったというあたりで、稽古の考え方や制作費の考え方が、ヨーロッパの条件と日本の条件がかなり違っている。
 そういう中で、ギャラのレベルの問題やマーケットの大きさなど、そういったものが違うものを考えないで、いきなりヨーロッパ型のシステムでという言い方は難しいのではないかという議論だったと思うのです。
 したがって、市場がやはり成熟していないということと、もう1つはお客さんの問題で、歌い手は外国人だったらいい、日本人だったらだめという思い込みがややあるのかなというところもあります。
 芸団協としましては、実演家の地位向上、「芸術家の地位向上に関するユネスコの勧告」にもございますが、それにのっとって働きかけをしておりますし、著作権制度上では、映像作品に関する実演家の経済的な権利というのを何とか確立したいという働きかけはしております。
 また、文化芸術振興基本法ができまして、そういった芸術家の地位向上に関して、もっと改善しなければという動きが具体的に出てまいりましたので、まだその実現はされておりませんが、人材養成等のシステムから、そういった市場における契約条件、そういったところをやはり整備していかなければいけないなという、課題は山積みだと思います。
 ただ、だからといって保護主義的に制限するかということになりますと、逆にレコードや映画など、今お話にもあったように、海外進出をしていこうというところもありますので、出ていくものだけ出ていって入れるのは制限するというわけにもいきませんので、自由化をするのであれば国内の市場の透明性、開放性というのが問われるなということは十分認識しているかと思います。
 それで、人材育成等インフラを整備するとか、もっと国内の市場が成熟するような振興策を充実していってほしいというのが先に来ているのではないかなと思います。

富澤座長 河野委員どうぞ。

河野委員 私何も存じませんので、東京映画祭についてちょっと教えていただければと存じますが、ご存じの方がおられましたら、これは期間中に全部含めますと何本ぐらい上映されていると思ってよろしいですか。

西村日本映画海外普及協会事務局次長 ことしはまだ決まっていませんけれども、過去の例ですと大体200本ぐらい。

河野委員 それは何日間に。

西村日本映画海外普及協会事務局次長 9日間です。

河野委員 私、ベルリン市にいたことがあるのですが、ベルリンの映画祭ですと、たしか2週間の間にざっと、私はうろ覚えですけれども、600ぐらいやるのじゃないかと思うのです。それでとてもではないけれども見られないぐらいの、しかもものすごくマイナーなものや、特集などいろいろあって、舌を巻いた状態ですが、そのような方向にまで行くと見ておられますか。

西村日本映画海外普及協会事務局次長 東京の場合は非常に国際映画祭を成立させるのは難しい状況があると思うのです。その大きな理由というのは、映画祭がなくても東京というのは世界各国の映画を日常的に見ることができる環境があるわけです。例えばニューヨークやパリなど、同じような環境の中にある町というのは映画祭というのは余り育ってないのです。ドイツという国は日常的に映画を見る環境は決してよくはないです。公開されている本数が少なく、マーケットシエアの問題でいうと80%ぐらいハリウッド映画が占めたという現状でございます。そこで、映画祭がベルリンの市民にとって、ふだん見ることのできない映画を見るための絶好の機会になっているということが大きくございます。
 ベルリン映画祭というのは一般市民に開放された映画祭で、上映本数も多く、観客数も40万人ぐらいと言われておるのですが、恐らく世界最大の映画祭、観客数という意味では最大の映画祭であるかと思います。
 東京で難しい問題は、字幕の問題です。ベルリン映画祭では基本的にドイツ字幕をつける場合もあるのですが、英語字幕でも上映されている作品が多いです。日本の場合、どうしても日本語の字幕をつけなくてはいけない。そのことが映画祭側の費用負担になってしまっているわけです。それが非常に予算的に大きくなるものですから、余り大量の作品を上映することができないという、予算的な問題がございます。

富澤座長 今までのご説明まとめて、最後にご質問あるいはご意見がありましたら。

難波外務省室長 1点よろしいでしょうか。
 質問ですが、また多様性条約に戻るのですが、フランスにとっては映画というのも恐らく1つの話題にはなっている。当面フランスが念頭に置いているのはハリウッド映画ということですが、今のご説明ですと、日本も今、3つ挙げられて第2番目のステージに来ていると。まさに外国への進出を図っているところである、こういう状況にある。これから交渉するのでどうなるかわかりませんが、例えばフランスが自国の映画産業を保護するために一定の規制措置を導入をする、導入をしてもいい、導入する権利を付与するような条約が採択された場合、日本にとってそれは致命傷なのか。要するにアニメやマンガについては海外に行っているので、ある程度影響はあると思われるのですが、通常の映画でしたら、言葉の問題等もあって、ヨーロッパへの進出というのはそれほど容易ではないかなという感じもするのです。もしヨーロッパがある程度厳しい規制をするのであれば、もちろんマーケットとしてアメリカがあるし、アジアもある。したがってたとえそういうような規制を含む条約が採択されたとしても、日本にとっては大したことはないのだというふうに考えていいのか、その辺のところをお聞かせ願えればと思いますけれども。

西村日本映画海外普及協会事務局次長 あくまでも私見ですが、影響はないと思います。現在日本映画が海外で公開されている現状を見る限り、そのような規制にかかってくるような状況はないと思います。
 ただ、例えば韓国の場合、これは政府の規制によって日本映画は、昨年実写映画に関しては100%開放になったわけですが、まだアニメーションに関しては規制がかかったりしているために日本映画が公開されない状況があるわけです。そういう規制は撤廃してほしい、日本映画の立場から言えばそういうことがあります。
 ただ、一方で韓国が現在クォータ制をしいて、年間すべての映画館で140日間は韓国映画を上映しなきゃいけないという規制を設けているわけですが、そのことをもって日本映画が自動的に排除されているわけです。これは直接的な目的はハリウッド映画の進出をとめたいということですが、同時に外国映画ということで日本映画もその中に入っている。一方日本の市場というのは韓国映画が自由に入って来るわけです。今韓国映画にとっても最大の市場は日本になってきている現状があります。そういうところで、一方で規制をかけて、こちらは規制がないのにもかかわらず向こうがそのように規制をかけているという、その環境は余り健全ではないと思っております。

富澤座長 米屋さんどうぞ。

米屋日本芸能実演家団体協議会 今のことに関連しまして、むしろこういうビジュアルの自由化が進んだ方が、インフラやそこで働く芸術家に、与えられる影響は大きいと危惧しておりまして、私は映画にはそう詳しくないのですが、最近はポストプロダクションの国際的な分業などが進んでいて、ハリウッド資本がオーストラリアであるとか東南アジアであるとか、分けられる部分を安い労働力で得られるところで分業していく、あるいは米国ではユニオンの力が強いわけで、それも規制がかからないところで制作するというように、結果的に芸術家の労働条件が悪化するというようなことが起きていると聞いております。生産効率だけで安く安くというふうに流れますと環境が損なわれるのじゃないかなという危惧の方が強いかと思います。

富澤座長 渡邊委員どうぞ。

渡邊委員 映画の問題というのは、日本でも文化芸術基本法ができたとき、ヒアリングがあり、そこで、映画産業については、日本は必ずしも強い産業ではない。一時のような産業ではない。僕らは戦後育ちですから、娯楽といえばみんな映画でした。まじめに映画を見ていたという現実があります。しかし今はそういう映画産業は日本では下火になり、これは少したてば大きくなるかどうかわからないですが、そういう中でフランスが映画というものを象徴的にとらえていると思いますが、自国文化の保護政策の1つの武器要因にしようとしている。しかしそれは直接日本の映画には関係はないよということだろうと思いますが、しかしそれは今度逆な面で、例えばオーディオビジュアルのような日本の強い部分で将来問題が展開されていくということは全くないとも言えないだろうと思うのです。その辺が、僕なんか素人ですが懸念をしている。今自分たちの部分だけが問題になると考えての判断ではこの条約問題は片づけられないだろう。
 これはきょうヒアリングをしたりしていろいろご意見を伺っておりますが、これは第1回に入るときも問題にした点ですが、1つのカテゴリーを区分していると次から次へと話が出てくる。結局何だかわけがわからなくなってしまって、全体で保護政策的な点を許容できるかどうかというところに話が向いていくというのも心配な点がある。
 文化というのは本来は相互に交流していくというのは、これは1つの健全な状態だと思うのです。そこで、それは一般的な文化論としてはいいのだが、このように産業というところに結びつくときに、文化という面を基本にして、皆さん方がやっていけますような条約構成ができるかどうかというのが一番僕の頭の痛い問題です。
 それぞれの立場で、こういう文化の多様性については、当然これは理念としてはだれも反対する人がないし、我々もそのための努力をしてきたと思うのですが、皆さん方一般論としてで結構ですが、文化多様性条約に対する、大体まだ条約ができたわけでもないのであれこれ批判がましいことは言えないと思いますが、何か期待的なもの、こういうことで私は期待をしたいというようなところがございましたら教えていただきたいと思うのですが。

富澤座長 どなたからでも結構ですので、よろしく。阿部さんどうぞ。

阿部画像情報教育振興協会文化事業部長 私のやっている活動というのは皆様と違って経済的な活動ではなく、文化的な活動でやっているので、非常に単純で、皆さんすごく複雑だなという感想を得ているのですが、そういった中で今のご質問に対して思ったのが、やはり強者というのは思いやりをある程度持ってあげないといけないなと思います。
 例えば、先日韓国に訪問した際、韓国のマンガ家達と会ったのですが、マンガ家達から言われたのは、韓国のマンガ市場というのは70%ぐらいが日本の翻訳のマンガである、韓国のマンガというのはほとんど出て来られないような状況になっているということを初めて聞きました。
 そういったところでは、マンガの強い日本としてはある程度思いやりを持って、もうどんどん売り込めという形ではなく、ある程度自制を持ってやっていけないと思いますし、逆に日本に韓国のマンガ家達の作品を持ってきてあげるというようなお手伝いをするなど、自分の国の強い分野については相手に対して思いやりを持つことが必要ではないでしょうか。また、弱い分野というのは多分他国が助けてはくれませんから、自国できっちりと強くなるように育成していくということが重要なのではないかなと思います。

富澤座長 田辺さんどうぞ。

田辺日本レコード協会専務理事 日本の音楽について、昔は演歌、純邦楽、民謡、そういった中から、J−ポップス、ロック、ジャズなどいずれも欧米の音楽にすごく刺激を受けて発達してまいりました。その結果アジアでも日本の音楽が広く支持される状況になってきたわけですが、音楽の場合、あまり多様性の保護を強めて、垣根が高くなるとこれはこれでいけないのではないか、いろいろな音楽が融合していく中で新しい次の発展というものも出てくるのではないかと思います。
 現状の音楽ビジネスの中では非常に国際間の交流が活発化しておりますが、各国の文化を守ると同時に世界全体がどう動いてどういうものが生まれるのか、こういったところにも関心をもって取り組んでいかなくてはいけないと改めて感じています。

富澤座長 ありがとうございました。西村さんお願いします。

西村日本映画海外普及協会事務局次長 映画の場合、多様化ということが、すぐにフランス、韓国的な保護政策の立場からすると、アメリカに代表されるとおりそれはすべて自由にやるべきだと、規制はすべて撤廃すべきだという、その2つの陣営に分かれてしまいますが、日本としては全く中立の立場にあって、どちらにも立ってない。どちらにも立てない現状があると思っています。ただ、先ほどマーケットシエアの話が出ましたときに、アメリカに関して言いますと、自国映画のマーケットシエアというのは大体96%以上ずっと来ているわけです。例えば音楽でも94%というのがありましたが、もしこれが逆に、例えば日本映画が96%のマーケットシエアを持ったとしたら、多分アメリカの映画産業は黙ってはいないだろうと思うのです。ただ、アメリカのその96%というマーケットシエアは一体何か、構造的に何か問題があるのではないか。アメリカの言い分は、あくまでもアメリカの人たちはおもしろいからアメリカ映画を見ているだけなんだ、何もありませんということが彼らの言い分であるわけですけれども、本当にどうなのかというのはちょっと見てみる必要があるのじゃないかとは思っております。

富澤座長 米屋さんお願いします。

米屋日本芸能実演家団体協議会部長 きょうも映画でいくと市場透明性やデータが整備されてないというようなご指摘がありましたが、バランス、開放、人権、透明性の原則ということがございますが、国内がもっとわかりやすくなるということを私も期待したいなと思っております。芸能の分野もなかなか一言で状況がどうであるということを説明しきれないといいますか、文化統計がなかなか整備されていないという状況がございまして、そういったところでは国際交流をしようとしても見えにくい、わかりにくいというところがあるかと思いますので、それがわかりやすい世界になって、いろんな方々が日本でも活躍し、海外へも進出して、またCG-ARTS協会の方がおっしゃっていましたように、アジアの国々の方々初め、日本で人材育成のお手伝いをさしていただけるということで親日の人がふえるということも期待したいなと思っております。

富澤座長 ほかに何かご意見ございますでしょうか。ないようでしたら、きょうは、外務省、経済産業省、文化関係の団体の皆様、本当にお忙しい中を大変貴重なご意見をお聞かせいただきましてありがとうございました。
 時間がまいりましたので本日の会はこれで終わりにしたいと思います。
 次回は第4回になりますけれども、第4回の会合について、事務局よりご説明がございます。

池原課長 本日はどうもありがとうございました。次回の会合でございますが、前にお知らせをしてございますとおり、8月4日水曜日、14時から16時まで、文部科学省の10階の3会議室、前回の会合を行いました会場の並びの会議室で予定をしております。
 次回の会合におきましては、本日お配りしております課題の整理(案)を土台にいたしまして、第1回、第2回の会合での議論、また本日各省、各団体の方からいただきましたヒアリングの結果を踏まえて、作業部会としての報告書のたたき台の案を事務局の方で作成をしてご提示をさせていただきたいと考えております。次回の会合では、その報告書のたたき台の案をもとにして先生方にご審議をお願いできればと考えております。よろしくお願いいたします。

富澤座長 今の事務局のご説明について何かご質問ありますか。
 それではこれで文化審議会文化政策部会 文化多様性に関する作業部会の第3回会合を終了いたします。
 どうもご協力ありがとうございました。
午後4時48分閉会


(文化庁長官官房国際課国際文化交流室)

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