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文化政策部会(第12回)議事録

1.日時: 平成16年11月1日(月曜日) 10時〜12時5分

2.場所: 東京會舘本館11階 ゴールドルーム

3. 出席者:
(委員) 高階委員,津田委員,富澤委員,川本委員,佐藤委員,都築委員,中村(桂)委員,根木委員,山野委員,米屋委員,吉本委員
(事務局) 加茂川文化庁次長,森口文化庁審議官,辰野文化財部長,湯山文化財鑑査官,吉田政策課長,他

4. 議題:
(1) 地域文化の振興と発信について(課題の整理とまとめ)
(2) その他

5. 議事:
高階部会長 皆さん,おはようございます。ただいまから文化審議会の文化政策部会第12回を開催いたしたいと思います。本日はご多忙中,ご出席いただきましてありがとうございます。
 最初に,今回,中村桂子委員がご出席でいらっしゃいますので,ご紹介いたします。
 それでは,早速議事に入りたいと思います。事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

吉田政策課長 お手元の議事日程をごらんいただきますと,今日の議題は「地域文化の振興と発信について(課題の整理とまとめ)」という形でございます。配付資料といたしましては,前回,第11回の議事録が資料1でございます。この後,部会長のほうからお話があると思いますが,「今後の日程について(案)」というのが資料2でございます。それから,資料3が「地域文化の振興と発信について」,これは仮題でございますけれども,取りまとめのイメージ(案)でございます。
 以上でございます。

高階部会長 お手元におそろいと思いますが,資料1の前回第11回の議事録(案)につきましては,委員の皆様にご確認をいただき,ご意見がございましたら,1週間以内11月8日月曜までに,事務局へご連絡をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは,本日はまず今後の日程についてご相談,ご説明をしたいと思います。資料2をごらんいただきたいと思います。「今後の日程について(案)」というものがございます。2月上旬に予定されております総会までに,この部会としての提言を取りまとめるということを考えております。それまでに,本日を含めて3回ほど部会を開催するという予定にしております。また,昨年度と同様に,この提言案の作成に当たりましては,この文化政策部会委員の方の中から何名かお願いして,提言案作成チームを結成したいと考えております。いかがでしょう,よろしゅうございましょうか。
 それでは,その提言案作成チームをお願いしたいと考え,部会長である私から委員を指名させていただきたいと思いますが,よろしゅうございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

 恐れ入ります。
 それでは,本日欠席されている熊倉委員と,根木委員,吉本委員,米屋委員の4名の方にお願いしたいと思います。4名の皆様,今後よろしくお願いいたします。
 それでは,次に資料3,「地域文化の振興と発信について(仮題)の取りまとめのイメージ(案)」につきまして,事務局からご説明をお願いいたします。

吉田政策課長 お手元の資料3をごらんいただきたいと思います。先ほど部会長のほうからお話がございましたように,この回も入れまして,あと3回ほどこの部会を予定しております。13回,14回,12月と1月のところで提言(案)について、もう少し報告書の文章になったものでご議論いただきたいと思っております。今回はその前の段階でございまして,今後も先ほどチームの設置につきましてご了解いただいておりますが,その提言案作成のチームで少し肉付けをしていくベースになるものとして,今回資料3を作成しました。
 1枚目のものが,全体の報告書の構成案だとお考えいただければと思います。ここでは,四部構成を考えておりまして,まず第1部のところが,「地域文化を振興する意義」というところでございます。ここはどちらかと言いますと,理念論を述べているというところでございまして,細目といたしましては,地域文化に関する基本認識,そして地域文化振興の背景,それから「文化力」と地域文化の関係,地域の現状,そして地域文化の振興の担い手といった項目をこの第1部の細目として考えております。
 第2部のほうは,「地域文化の現状」でございまして,後ほど少し詳細にご説明いたしますけれども,これは「文化に関する世論調査」ですとか,あるいは「地方における文化行政の状況について」など,これまでの統計資料や,さまざまな調査資料等々,そうしたものに基きまして,できるだけ客観的に数字などを用いて,地域文化の現状を明らかにしようとする部分でございます。
 それから,第3部が,「地域文化の振興に当たっての課題と方策」というところでございまして,これまでの地域文化振興の方策に関する視点についてご議論いただきましたが,その視点に基づきまして各課題ごとに優れた事例を取り上げて,課題に対する考え方や対応策について分析・検討をするというところでございます。
 それから第4部が,「地域文化の振興のための方向性」というところでございます。ここでは第3部までの作業を通じまして浮かび上がってまいりました地域文化振興のための課題と,具体的な取り組み事例の分析・検討を踏まえ,今後地域文化を一層振興していくための方向性と方策に関し,関係者に対して期待される役割といったものについて,提示をしたいと思っております。
 こうしたことにつきまして,提言案作成チームによって詳細な検討を行いたいと考えております。
 1枚めくっていただきますと,今申し上げました四部構成を少し文章として落としたものでございます。第1部の「地域文化を振興する意義」という部分につきましては,これまでこの部会の議論で出されましたさまざまなご意見をある程度項目別に整理いたしまして,集約しているものでございます。ここについては,改めて個々ご紹介することはいたしませんが,この後の第3部の方につながっていくところとお考えいただければと思います。
 少しめくっていただきますと,5ページのところが第2部の「地域文化の現状」でございます。先ほど申し上げましたように,これまでの統計資料や調査資料に基いて地域文化の現状をできるだけ客観的に明らかにするものでございます。これは今後さらに詳細な検討が必要でございますが,現段階では,(1)として,内閣府が実施しました「文化に関する世論調査」から関連部分を抜粋したいと思っております。また,(2)として「地域の文化関係予算の推移」につきましては,私どもで都道府県や市町村のご協力を得まして,「地方における文化行政の状況について」という形で,その把握に努めておりますところの結果を抽出してまいりたいと考えております。
 それから,(3)は「文化施設等の現状」でございます。これは文部科学省の社会教育調査や公文協等が行っております調査の結果等を活用して記述してまいりたいと思っております。
 (4)は「文化活動の現状」でございまして,ここはふさわしい数字がなかなかないところでございますが,できるだけ議論を広げまして,ここの部分をつくってまいりたいと思っております。
 そして,6ページをお開きいただきますと,第3部でございます。これまでの課題に基づきまして,課題ごとに優れた事例を取り上げ,課題に対する考え方や対応策について分析・検討するという部分でございます。視点1から視点6まで,これは前回,こういった視点でご議論いただきましたが,それに基づいて整理をしております。
 視点1は,「地域文化を振興するために地域の「文化力」をいかに結集するか」ということでございますが,ここについて1から4という,細目を立ててみました。1つは,「地域文化振興計画の策定等を通じた地域の「文化力」の結集」ということでございます。地域住民の民意をくみ取っていく仕組みということで,その関連で1つ課題を立てまして,それに対して事例を拾っていくという流れでございます。
 それから,その次は,地域の文化資源を地域住民がまず知ることが重要であるということから,2といたしまして,「地域住民自身による地域の文化資源の再発見・再認識」といったことについて,事例を1つ挙げてみたいと考えております。
 それから,3は,「民間と行政等との連携」ということでございまして,この関連でもいろいろと新しい動きがございますので,その関連の事例を取り上げたいと思っております。
 それから,狭い意味の文化だけではなくて,福祉ですとかそういった分野にも文化というのが非常に大きな力を持っているということがこの部会の中でも種々議論があったところでございまして,そのあたりを取り上げるということで,4の項目を立てております。福祉などの「文化以外の分野との連携」により,「文化力」を発揮するということで,事例を挙げてみたいと思っております。
 次の7ページをお開きいただきますと,視点2は「地域文化活動を活性化する人材をいかに育成し、確保するか」という問題でございます。まず,文化芸術の実際の担い手となる創造者の育成も重要であって,具体的には専門家を全国に還流させて,外部から刺激を与える仕組みづくりが必要ではないかといったご意見もございました。それに沿いまして,5としまして,「地域文化活動を実際に担う人材の育成・確保」というところでは,文化芸術の創造者を全国に還流させる仕組みということで,1つ事例を取り上げたいと思っております。
 また,6としまして「地域文化活動を支える人材の育成・登用」というところで,アートマネジメントを担う人材の育成・登用ということについて事例を取り上げてみたいと思っております。この点は現在事務局の方で,適切な事例の選択を進めているところでございまして,今日の段階でここに例として出す状況にまでは至っておりません。
 それから,7でございますが,「文化ボランティアの推進と活用」ということでございます。ここでは地域住民が文化ボランティアとして参加しやすい仕組みをどうつくるかということで,1つは,地域住民を文化資源として活用し,文化活動に参画してもらっている事例。それから,もう1つは,文化ボランティアとして活動してもらうインセンティブを付与している事例といったところから,事例として取り上げてみてはどうかと思っております。
 それから,8は,「大学等の教育機関との連携」ということでございます。人材育成機関としての大学等を活用し,大学の地域貢献を促すということで,事例を取り上げてみたいと思っております。
 それから,9でございますが,「文化行政・公立文化施設の運営にあたる人材の育成・登用」ということでございます。文化に愛着を持った人を育成・登用することが重要であるというご意見を踏まえまして,そうした人に実際文化行政・公立文化施設の運営に当たってもらうという課題を立ててみました。その中では,指定管理者制度で,NPO法人等を指定している市町村の事例や,文化と地域に愛着を持った人に文化会館の運営を任せている事例等を取り上げてまいろうかと思っております。
 8ページをお開きいただきますと,視点3でございますが,これは「文化活動を支える拠点・資源というものをいかに活性化するか」ということでございます。10は,「文化施設(文化会館、美術館,博物館等)の活用」でございますが,その課題としましては,文化施設のネットワーク化の事例を取り上げてみてはどうかと思っております。
  11は,「文化財の活用」ということでございます。これは,伝統芸能と伝統的建造物群という2つの視点から事例を取り上げてはどうだろうかというふうに思っておりますけれども,今のところまだ具体的にこの事例ということまでの抽出に至っておりません。
  12は,「学校施設や社会教育施設(公民館等)の活用」ということでございます。既存の遊休施設の有効活用という事例で,廃校になったものを文化施設へ転用する事例といったものを取り上げてみてはどうかと思っております。
 それから,視点4は、「子ども・青少年の文化活動への支援をどのように進めるか」という問題でございます。いわゆる子どもと申しますと小学生というように対象が狭くなる感じがございますが,部会の議論を通してこれを高校生の年代くらいまでも含めた青少年ということで,とらえ直したところでございます。そうした子ども達による地域文化の継承が世代間の乖離を減少させるという意味で重要ではないかということで,それを意図した子どもや青少年の文化活動への支援とするよう,視点を少し修正しております。
 学校での取り組みにおいて,鑑賞や実技といった芸術体験に加えまして,表現教育が重要であるということが,これまでの論議にもございました。そこで,13として,「学校との連携により子ども・青少年の芸術体験・表現教育と推進する」ということで,これは学校と文化芸術団体との連携ですとか,あるいは学校と企業との連携ですとか,そういった部分に関連する事例を取り上げてみたらいかがだろうかと思っております。
 その下に黒丸で書いておりますけれども,学校や教員の理解といった問題。それから,学校の教員は非常に多忙ですから,その手間や時間を少しでも減らせるようなサポートの体制,そういったものが課題として挙がっていると思います。
 そういう意味で,9ページのほうに移っていただきますと,課題の14ということで,教員の文化への理解を促進し,教員を支援する仕組みということで,ここはまだ具体的な事例を抽出するに至っておりませんけれども,取り上げてみたいと思っております。
 また,14は,「学校以外での子ども・青少年の文化活動を支える仕組みの構築」ということでございます。ここでは,子ども・青少年と文化活動支援ということについて,親と子で楽しめるという事例を取り上げてみてはどうかと思っております。それから,高齢者と子どもを結びつける仕組みづくりというところで,これは伝統文化こども教室事業の中から適切なものを何かピックアップできるのではないかと考えております。
 それから,視点5は「文化活動に関する情報収集・発信をどのように進めるか」ということでございます。まず15として「地域住民への適切な情報提供」ということでは,2つほど事例も取り上げてみたいと考えております。地域住民に効果的な文化情報提供をしている行政・NPO等の事例,あるいは文化芸術活動に参加したいときに,気軽に相談できる組織や人材をどのように確保していくか。こういったことに関する事例を取り上げてみたらどうだろうかと思っております。
 それから16は,「文化活動関係者及び全国に向けての情報発信」ということでございます。マスメディアへのアプローチの事例や,インターネットやミニコミ紙を活用した情報発信の事例,そういったものを取り上げてみてはどうだろうかと思っております。
 10ページをごらんいただきますと,視点6でございますが,「文化活動への資金的援助をいかに確保するか」ということで,資金的な問題でございます。17の「公的支援の活用」につきましては,今のところ具体的な事例の抽出ができていない状況でございます。今後また整理したいと思っております。
  18は,「民間資金の活用」ということでございますが,これは企業メセナというところで,地元出身者にこだわった長期間にわたる支援活動をされている事例。また,課題19では,CSR,つまり企業の社会的責任に基づく社会貢献活動に積極的に取り組んでいらっしゃる企業の事例について,メセナアワード2004で文化庁長官賞をお受けになりましたフェリシモの事例などを取り上げてみてはどうかと思っております。
 それから,19は,「個人による支援の活用」ということで,これは前回,吉本委員のほうからご紹介のありました市川市の市民活動支援制度といった部分について取り上げてみてはどうかと思っております。
 その下に,第4部として,「地域文化の振興のための方向性」について書いておりますが,ここは今見ていただきました,第3部の課題と方策というところの検討を通じまして,恐らく浮かび上がってくるであろう事柄を最終章,この第4部でまとめていくといった流れになっております。従いまして,ここの部分については今のところブランクの状態ということでございます。
 以上でございます。

高階部会長 ありがとうございました。
 それでは,ただいまのご説明の質問も含めて,資料3に基づいて論議に移りたいと思います。拝見しますと,第1部は理念的なこと,地域文化を振興する意義。これまでもいろいろ議論がございました。理念的なものでありますので,まずその作成チームの委員の皆様に文章をいろいろ考えていただくということになります。そして,第2部は資料,数字中心で,地域文化の現状をいろいろお調べいただきたいと思います。今回,内容に関してご議論いただきたいのは,第3部の地域文化の振興に当たっての方向と課題。これは今,大きく視点を6つにまとめていただいて,さらにその中にいろいろなポイントがございました。また,それぞれに事例を出していこうということになります。この提言が,同時に地域の文化振興に係って参考となる事例集にもしたいと思います。そこで,課題の立て方や方策,あるいは事例にどのようなものがあるのか等について,これはあくまで案でございますので,皆さまからいろいろご意見をいただきたいと考えております。
 それでは順序に従って,まず視点1のほうからご議論いただきたいと思います。今の資料3ですと6ページです。6ページの視点1に,「地域文化を振興するために地域の「文化力」をいかに結集するか」。これも,1234と項目が挙がっております。それぞれの事例もございますし,あるいは他にどういう事例があるのかですとか,提言作成の際にこういうことを入れたらいいというようなご意見あるいはご質問等をまず議論していきたいと思います。その順序で,それぞれの視点について,15分か20分ぐらいずつご議論いただく形で進めたいと思います。
 では,まずこの視点1,1234までございますが,どこでも結構でございます。どなたからでも,ご議論あるいはご意見,ご質問をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。これまでは比較的自由なご意見でいろいろとご提案もあったわけですが,今回はまとめる方向として,こういうことはぜひ強調してほしいとか押さえてほしいというようなことがあれば,ご議論いただきたいと思います。
 佐藤委員,お願いいたします。

佐藤委員 ちょっと皆さんお考えになっている間に,必ずしも今のことと関連がないかもしれませんが,1つだけ,こうやってまとめると少々気になることがあります。それは「文化力」という言葉です。この案では,さらにこの言葉に定義を与えようとしている。そのようにして「文化力」という言葉が流通して,今後その言葉のもとで各地域文化の保護が図られたり,いろいろな目標値が定められたりするというのはいかがなものか。それが正しいことかどうか,本当は前回の議論で申し上げなければならなかったのですが,それが少々気になっているということを申し上げたいと思います。
 それから,今の課題のほうでは,それぞれ事例が挙がるわけですけれども,事例の内容が成功に導いている要素と,それから特にその運営ですね。どういう形で運営されたかということがやはり非常に重要なポイントだと思います。それをぜひとりあげたい。これまで,いろいろ事例報告していただいた資料を読んでみても,内容についてはかなり触れられておりますけれども,実際の運営についての検証が重要ですね。建前の運営ではなくて,どのような形で,どういう方が担当して,どういうやり方で行われたのかということを,ぜひこの資料の中に入れていきたいと思います。

高階部会長 はい。それは大切ですね。事例集の場合,ただ並べるだけではなくて,中身を分析していただくことが必要だと思います。
 それから,「文化力」というのは,基本的には経済力ですとか国際的な視野ですとかをも含めて,文化芸術を国の基礎にしていくという意図が背後に見えるように,ということなのだろうと思います。
 「文化力」というのは,文化庁は他にも使っていられますね。特にときどき括弧に入れたりしているのは,割に新しい使い方だと思いますが。

吉田政策課長 「文化力」につきましては,これもまだ未定稿の段階ではございますが,3ページの3.「「文化力」と地域文化の関係」の(1)に,「文化力の定義」という項がございます。「文化力」は,これまで河合長官がいろいろなところで申されてきております。現在私どもも文化庁の様々な施策の説明をしたり,文化振興の重要性を説いたりする際に,この「文化力」という言葉を使っております。河合長官がよく使われる「文化力」の意義について,「文化には,人に感動を与え,人を動かす力がある」ということを今回書かせていただきましたが,そこのところを「文化力」という形で定義してお使いになったのかと思っております。
 「文化力」がどのようにその後作用していくかという部分につきましては,(2)の「経済力と文化力」という対置で説明する部分もございますが,基本は,「人に感動を与え,人を動かす力」でございます。特に人を動かすという部分で経済力と並ぶ大きな視点としてとらえるべきではないかといったところでございます。

高階部会長 そういうご説明でしたが,「力」という言い方をすると何となく権力傾向があるととられる節もあります。しかし,そういうことではないようですし,最近では,ソフトパワーということも言われていますね,「力」「フォース」というだけではなくて。ですから,先進的ないしは情緒面も含めて,あるいは一般の知恵も含めて,ソフトの面で人々に感動を与える。そういうような方向を文化の力ということで,やや新しい言葉の使い方ではあると思いますが,それによって,同時にこの提言に注目させるという効果もあろうかと思います。定義のところでは,その辺のことをはっきり出していただけば結構かと思います。

高階部会長 よろしゅうございましょうか。

佐藤委員 学問的な言語とか,政策的な言語として説明があれば,ある程度理解できるのですが,単純に言うと少々語感的に先ほど申した感じがありますので,ぜひ定義のところでその辺のことをフォローしていただきたいと思います。なぜなら,「文化力」という言葉だけが一人歩きする,他の言葉と組み合わされないときがあることが非常に怖いからです。むしろ,そういう不安要素も含めて,この言葉で言い尽くせない部分についても,ぜひお考えいただけるとありがたいと思います。

高階部会長 ありがとうございました。
 他にいかがでしょうか。どうぞ。

津田委員 今の佐藤さんのお話を聞いていて,以前私も「文化力」というのが前提になって出てくることに,もう一つあいまいだなと思っていたのですが,10月に釜山へ行きました際に,やはり文化力ってあるのかなと改めて考えたことを思い出しました。それはこういうことです。例えば軍事力という語に関しては,軍事制裁という語があります。経済力というのにも経済制裁というのがある。しかし,文化制裁という言葉はありません。「力」というのがあれば,それを用いた制裁というものがあるはずなのですが,文化にはないなと思っていたのです。
 私は毎年韓国に行くのですが,確かにワールドカップ以降,日韓がお互いに非常にいい関係になっていると感じます。今回行って,さらによくなっているのは,ヨン様,チェ様の威力というのがものすごくあるわけです。韓国は日本に対して,ある種の抑圧感のようなものと反感みたいなのが根強くあるのではないかと思います。加えて相変わらず教科書は,日本人ってあまりいいやつじゃないと書いている状況が,そのまま続いているのですが,今は本当に日韓始まって以来の親しい関係ではないかなと。これはやはり,日本に行ってみたいとか,日本人って思ったよりいい人だなという力が,韓国の人にも浸透してきている現れではないかと思います。韓国側では,まだ全面開放されていないとは思いますが,日本の歌がたくさん歌われているし,日本の映画やビデオ等もすごく見られ支持されてもいる。つまり,長年,数百年も,あるいは千年以上にわたって,経済力や軍事力に係わっていろいろなしこりを残してきた国と国との関係において,まさに「文化力」が,その壁を潰してしまったのではないかと思ったのです。ちょっときざな表現にはなりますが。
 ですから,その「文化力」というのは,文化が持っている,やはりそれは力なのでしょう。壁を潰すこともできるような。このように人を動かす何か具体的な事例を取り上げて書くと,読み手にも共通の「文化力」らしき映像が出てくると思います。しかし,感動を与えるという言い方だけからは私としても,まだ少々映像にはなり難い。だから,その辺,本当にできるだけわかりやすく伝える工夫が必要でしょう。
 例えば,このコップを見たら,みんなある程度共通したイメージを持てますね。「文化力」についても,何かそういうものがないとならいないのではないでしょうか。そうでないと,何か言葉だけが一人歩きして,10人いたら10人とも違うことを思っていて,賛成だ,賛成だと言っているようなことにならないかと少し心配をしたので,余分なことを言いました。

高階部会長 ご指摘のとおりだと思います。抽象的なことだけではなく,わかりやすい実例など,作成チームの方で頭を絞っていただきたいと思います。特にここは大きな標題においても「文化力」と,括弧付きで視点として提示されておりますので。
さて,この視点1の中にいくつかポイントがあるわけですが,私が先日京都で「京都創生」のシンポジウムというのに出させていただいたときのことに関して申します。京都のまん真ん中で生まれて育ったという方が,京都には文化的なことがいろいろあると言うけれど,京都の人が自分たちのことをよく知らないということを強く言っておられました。私なんかは外から見ているのですが,知らないというよりも,知っているけれどもあまりにも当たり前で,改めて意識しないということがあろうかと思います。地域にあるさまざまな資源が,現地の人に意外に生かされていないという点。これは,この視点の2の中で出てきた問題です。私も大原美術館にいて,倉敷事務所に移った際に同様に感じたものですから,ここはぜひ押さえていただきたいという気がします。
 他に何かございますでしょうか。富澤委員。

富澤委員 今のお話を伺っていて,私はこういうことを感じました。文化そのものにはパワーというものへの志向はないと思うのですが,ある面から見ると,文化が非常に大きな力になっている例がたくさんあるということです。例えばイタリアとかフランスなどという国はそういうものを積極的に活用して,むしろ軍事力よりも文化の力というもので各国に影響を与えようとする,かなり意図的な姿勢をとっているのではないでしょうか。
 地域文化に支えられて国全体の文化がしっかりと発信されることで,世界の多くの人にメッセージを送ることができる。その意味から言えば,やはり文化というのは大変大きな力になっているだろうという気がしています。政府では小泉首相が,外国人の日本を訪れる力が非常に弱いと言われている。現在日本には,外国から年間500万人の人が来るのですが,これは韓国とほぼ一緒ぐらいで,世界のランキングで言うと33位ぐらいのようです。対して,フランスやイタリアは年間7,000〜8,000万人の人が世界から押し寄せる。やはりそれは,みんな文化に憧れてそれらの国を訪れている。それを見て小泉さんが500万人を1,000万人しようという目標を掲げて,今関係の省庁で一生懸命そのための方策を考えているところです。最近は各国とも,観光を自国の国力を高めたり,諸外国に対して自らの存在感を発信していくための非常に強い手段と考えています。観光をそうした捉え方で見た場合も,私は文化こそがその基盤になっていると思っています。景観や名所旧跡などの従来からの観光的な捉え方も含めて,基本には文化というものが,その国のブランドになるのだと思います。
 その意味で,この具体的な課題と方策の中に入るかもしれませんが,観光の中で文化をいかに生かしていくかという視点も入れていただければ,また他との連携も取れたりするのではないかという気がします。

高階部会長 貴重なご意見です。
 根木委員,どうぞ。

根木委員 前にも少し申し上げたかもしれませんが,経済学の人たちはよく,文化芸術の外部性ということで,いろんな効用があるとおっしゃっている。確かにそれは文化の持つ1つの力であろうと思います。それからもう1つ,長官がおっしゃっている,人に感動を与え,人を動かすというのは,まさに文化芸術の本質面のお話だろうと思います。
 そういった本質面と,それから経済学者の人たちが言っています外部性という効用面と。この両者を総合した概念として「文化力」ということを言ってよろしいのではないかと思います。それを,手段として使う云々というところまで特に言う必要はないのでしょうが,そういった総合力として発揮できるものとしての「文化力」というものが根底にある。そういった認識でよろしいのではないかと感じております。

高階部会長 山野委員。

山野委員 かなり本質論に入っておりますが,私からも一言。全体に見て,文化を語るには歴史的視点がどうしても必要だと思います。例えば遠い昔に起こったことをずっと続けているところもあれば,それが消えてしまうところもある。しかし,消えてしまったかに見えて,またどこかに出てくるというようなこともあります。そういう場合,日本は長い歴史を持っている国ですから,文化遺産がたくさんあると思います。それを大事にする視点をどこかに立てたい。そうすることで,今日本には老人が多くなっておりますが,老人の出番も多くなってくるのではないかと思います。
 この案全体の中では,子どもとの付き合いの場面において老人の出番が記されていますが,もう少し年寄りを大事に,かつうまく使うところもあっていいかという感じがします。

高階部会長 貴重なご意見だと思います。歴史性の重視ということと,老人の知恵なり経験を生かす方策ですね。これも文化の中に入ると思います。
 はい,どうぞ。

津田委員 もう1つ,住民の民意をくみ取るという言葉がありますが,くみ取るというのはやはり上からしゃもじですくうという形で,これはむしろ集めるというようにしておかないと。役所が民間から集めるときには,くみ取ると言うのではないかという感じがあります。やはり地域文化というのは本当に住民が主体であるという姿勢を骨太につくっておく。そうではあるけれども,住民だけではできないのも事実ですから,そこを行政が支援するのだと,終始一貫してそのようにしておかないと。ここを,くみ取ってとか斟酌してとかとしてしまうと,どうしても政策を上から決めるという言い方になると思いますので,そこのスタンスだけ,はっきりしておいたほうがよいと思います。

高階部会長 その言い方は確かに大事ですね。

米屋委員 それに続けて,この1についてお伺いします。住民が委員に入って,文化振興マスタープランを策定している例は他にもいろいろあると思います。この春日市については,どういう点がユニークといいますか,よいとされて挙げられているのか,その点をもう少しお聞かせいただければと思います。

事務局 事務局から説明させていただきます。この春日市の例は,春日市文化振興マスタープランについて,審議会を立ち上げて作成する際,10人の委員の内訳が,学識経験者3,関係団体3,それから市民が4名となっておりまして,審議会に市民が積極的に多く入って作成したということがまず1点ございます。
 それから,地域でシンポジウム,それからワークショップを4回程度開催しておりまして,積極的に市民の方々の中に入って作成した経緯から見て,現段階でこの例を取り上げさせていただいております。

高階部会長 よろしゅうございましょうか。こういうマスタープランなり,あるいは条例その他審議会等に市民の方を多く参加させる,あるいは主体にするという例はいろいろあろうかと思います。
 それから,実際にあるかどうかわかりませんが,アメリカなどでは,物をつくっていくとき,パブリック・インボルブメント,いわゆるPI方式で,箱物にしても最初からどういうものをつくるかという段階から,市民の意見を反映させることがあります。そのようなシステムが,日本でも考えられていっていいと思います。そのようなことで,もし事例があれば,中身がわかるようなことを教えていただきたいと思います。
 他に。吉本委員。

吉本委員 この第3部に関して,今視点が6つ出ていると思うのですが,その全体構成について見ると,視点として少々位相の違うものが,いくつか一緒に入っているような気がします。例えば,視点2は人材確保の問題,それから視点3は地域資源とかリソースの活用の問題,それから視点5は情報の問題,視点6は資金の問題ということで,どちらかというと手段的なことが入っています。
 それで,あとの視点4学校の子どもたちのところも,手段といえば手段なのですが,先ほど来話も出ている,文化力の展開の方向性という問題として見ると,やはり子どもや教育の現場についてより大きく捉えていく必要があるだろうと思います。
 その意味で,この視点1をどうまとめるかにもよりますが,現状この中の小項目4としてある「文化以外の分野との連携」の部分を,大きく視点のひとつとして一本独立して立てるのがいいと思います。今の形でもここに高齢者福祉の話が出ているわけですが,改めて文化以外の分野との連携として,高齢者や福祉の分野と,子どもの分野の2つがあるという形にしてはいかがでしょうか。
 それとあともう1つは,地域文化そのものの話がやはりこの案の中には出ていなくて,ただそれを地域文化そのものの話として捉えようとすると,例えば3,000市町村あれば3,000種類あるような話になってしまうので,そこは中身には触れられないと思うのですね。しかし,個々触れられないのであれば,それぞれの地域の実情によってそれぞれに違うものであることを前提に,地域の文化を振興するための手法手段の問題として,先程言いましたように,人材の問題,地域資源のリソースの問題,情報の問題,それと運営財源の問題があるという具合に整理する方法があると思います。現状ではここの課題と方策のところにおいて,具体的にこんな事業展開をしていきますという事業の中身の分類と,地域文化を振興するためのいろいろな基盤整備や手段についての分類の部分とが,同じような位置づけで入っているので,それを整理する方法があるのではないかという気がしております。

高階部会長 それを作成チームでまとめていただき,わかりやすい形があるならば,それを出していただいて,次回に皆さんからご意見を伺いたいと思います。その視点にはいろいろなものがあって,事務局として特に重要なものをクローズアップしたのだと思います。ただ,これにはバランスの問題もありますし,あまり細かくなるとどこが大事かということがわからなくなりますので,これが言いたいというところに集中させることが必要かと思います。そこは,皆様のご議論を踏まえて,チームのほうで議論していただきたいと思います。
 はい,中村委員。

中村(桂)委員 今の文化以外の分野との連携というところにかかわって申します。私自身は科学の分野におりまして,今確かに文化というと,芸術となるかと存じますが,社会全体では,やはり科学技術社会になって,私たちは否応なくその中にいると思います。そうしますと,私などは生物の分野におりまして,今,生き物,生命に関するいろんな問題を考える際に,これは科学の問題だと言ってしまってはだめで,これをまさに文化の問題だと捉えるべきだと思っております。
 ですから,文化以外の分野との連携という中にだけ入れるという意味ではなくて,この後に博物館というようなものも文化振興の中に入っていますが,現代の科学技術社会の問題を考えることも文化の中に入いるということです。文化力という面でも,そこは大事になると思います。

高階部会長 中村さんのご領域を排除する気はありません。おっしゃる意味で重要な文化だと思います。能登川町の博物館でしたか,昆虫等の自然観察を非常にうまく生かしている例もありました。そのあたりを,どういう形で表現するか。文化と言うと,確かにこれもまた一般的に何となく芸術を中心とする感覚があって,それも大事なのですが,もっと広い視野も持つべきだということですね。特に今の文化以外の分野との連携について,全体のまとめ方でちょっと考えていただきましょう。視点の組み直しの中で,先ほど富澤委員が言われた観光の問題については,私も大事だと思います。これも連携かもしれません。人を集める,あるいはそのための文化資源の掘り起こし等とももちろん関係があります。観光立国と総理が言っていらっしゃるのは,文化立国につながると私は思います。そういうことも入れていく必要が十分あろうかと思います。
 どうぞ。

中村(桂)委員 もうひとつだけ,地域という言い方はややもすると,日本国内における東京に対する位置づけのみに収まってしまう感があります。例えば,東京一極集中に対抗して地域でも頑張ろうという,あくまで日本国内しか見えていないような形になってしまう。しかし,フランスやイタリアの場合,地域そのものの特色が国際的な関心を呼んでいて,例えばある地域のひとつのお祭りを見るためにその国を訪れるということが現実に起こっている。我が国でも地域の主体である人々が国際的な視野をもってその在り方を誇れる。そのような意識づけができる文化の振興を図っていくべきであり,そんな文化力の結集の指向性があっていいかと考えております。

高階部会長 それも重要で,先ほど山野委員が言われた歴史性の問題もあって,地域であるけれども,国際的に考えれば,それは個々に長い日本の歴史にもつながるということもあろうかと思います。そしてまた逆に,それぞれの地域の独自性ということはもちろん大事なのですが,特に今回は地域文化をテーマにしているのですから,一極集中を排すという視点もまたどこかで出てくるのだと思います。同時にそれは,国際的な視野に立つことで,その問題だけではない広がりが,いくつもの層にわたって出てくるのだろうと思います。いろいろとお考えいただきたいと思います。
 他にいかがでしょうか。視点の重なり合いのチェックですとか構成についてもお考えいただきたいと思います。もちろん,基本的にはこの事務局案で順に進めていきますが,先ほどのご意見のように,これはこちらに入れたほうがいいとか,組み替えたほうがいい等のご意見も,この段階では出していただいて結構だと思います。その意味では,この「地域文化を振興するために地域の「文化力」をいかに結集するか」という,この視点1の題名といいますか,視点自体も,このとおりでなくても構わないと思います。よろしいでしょうか。
 それでは視点2のほうに移ります。視点1の問題とも関係があれば戻っていただきますが,地域の文化活動における,人材育成の問題です。これは,今までにもいろいろ議論をされてきましたので,何らかの形でまとめるべきだろうと思います。これに関してもいろいろなご意見があろうかと思います。この視点2で挙げられているポイントには,5から9までがございます。これにつきましても,もっと他の視点があるとか,この辺は他に回したほうがいいということもあろうかと思います。人材に関して,具体的な例があればご指摘もいただくということで,ご議論していただきたいと思います。事務局のほうで,これまでの実例をいくつかお挙げになっています。例えば,大学等の教育をどういうふうにやっているというようなこと,あるいは文化行政官を育てようというようなことを学校教育で実際にどの程度やっているのか等々。ここにも書かれていますが,特にアートマネジメント人材の養成については,やっと始まったぐらいで,現状どのような状況であるのか関心が高いところでもあります。いずれにしても,実効性ある事例・手法といったものを地域に敷衍していくということも,今回の提言からの展開としてあろうかと思います。

吉田政策課長 左様ですね。アートマネジメントの関係が実はこの視点2の6のところで,「アートマネジメントを担う人材の育成・登用」というところで挙げられているのですが,具体的にどういった事例がいいか,先生方のほうでご教示願いたいと考えております。

高階部会長 ええ,どこの大学で行われているですとか,民間でも行われているとか。あるいは,いわゆる学校教育ではない現場で,実際に今までいろいろ行っておられるとか。また,ここが非常に大事なところですが,それにはどういう効果があるのかというような点でご議論を願います。はい、佐藤委員どうぞ。

佐藤委員 今その6のところは,実際にその研修自体をやっている事例も大切ですが,研修の成果を情報として送り出すシステムを持つことが重要だと思います。それで,おっしゃっているように,日本ではまだまだそうした情報の送り出しが研修の主になる事業のひとつだという認識が少ないのですが,それでも何かうまい形で勉強したような情報を出している団体とか,あるいは職員研修を自分たちで手厚くやっているという情報発信をしている組織などに,関心のある方が足を運んで見に来るようになってきている。
 それから,もう1つ,ここで教育が挙がっていますが,教育は子どものところと人材育成のところでしか挙がっていないので,ぜひ「文化以外の分野との連携」のところでも挙げていただきたいと思います。と言うのも,1つにはもちろん教育ですから人材育成の面もありますが,やはり基礎的な情報の収集,リサーチという問題について一定の役割を担うことができるのではないかという面に注目しているからです。特に,地方の場合,地域におけるメリットが大きいと思います。ですからその点をぜひ,単純に人材育成だけではない形で,強調することが大事だと思います。

高階部会長 そうですね。資料の集積,利用ということが大事だと考えます。
 他にいかがですか。今のところ9のところで,文化行政,文化施設の運営に当たる人材の育成・登用。これもこれまでいろいろ議論が出た重要なことだと思います。つまり,実際の芸術家だけではなくて,行政あるいは施設の運営の管理に当たる人。これについては,これまでの議論を踏まえて文化に愛着を持った人を育成・登用することが重要というのは当然考えていただきたい。行政のシステムとして,あまりクルクル変わってもらっても困ると。ある程度,そこに定着して,ネットワークを構成しながら実務を行っていくことが必要なことは,ご指摘があったとおりです。そういうようなことも,提言に入れていただくほうがよろしいかと思います。これは,部会としての提言ですから,文化庁に対するご要望も入ってよろしいかと思います。
 他にいかがでしょうか。確かに,教育や先ほどの観光等,あらゆる視点がそれぞれに絡み合っていますので,どこの視点に人材育成問題をまとめるか,あるいはいくつかの視点に分けて考えていくという方向性もありましょう。いずれにしても,適切な形でわかりやすく,論理的な構成ができるよう,作成チームでも考えていただくのがよろしいと思います。
 どうぞ,川本委員。

川本委員 今のところ,私どもの現場にいると元気が出なくなっている状況もありますので,こういう提言は非常に大切だと思います。現場としましては,成功事例集というのを何とか提言に組み入れて,自分のところでの実践活動のヒントにしたいというのが切実な主張であります。実は,前ページとここに書いてあることは細々ながら,我々のところでも全部行っております。しかし,そこから先,どこへいくのかというところが非常に難しい。特に,ここに書いてございますような人材育成で文化ボランティアということについては,参加してくださる方々の,参加意欲が非常に旺盛です。そして,その中にはリーダーとしての資格,能力を持った人が必ず見つかります。そういうことは提言できるかどうかわかりませんが。
 私などは,アートマネジメントというのは,熊本ではおそらく大学に講座がありませんので,県立熊本大学にアートマネジメントの講座を設けたらどうかと思います。私のところに優秀な職員がおりますので,講師として派遣する。そして,そこで学んだ人たちが,芸術文化の流通問題や,ネットワークのこと等に係わって力を発揮したり,先ほどの地域住民の意向をどのように反映させていくかというお話がございましたが,例えばアンケートを取ったり現地調査をしたりして,動向を分析する。そのような連携をとっていけないかと思って,実際そういうことも提案しているのですが。大学の方にそのような話をすると,いいですね,おもしろいですねとおっしゃってはいただけますが,具体的な検討をどの程度していただけたかとなるとやや心許ないものがあります。
 そのようなこともございまして,文化活動活性化のための人材育成という観点からは,私自身気持ちが落ち込むような状況もございます。

高階部会長 川本委員のような方が元気の出る提言を,ぜひともお願いしたいところですね。

川本委員 そうですね。提言は提言でもちろん大切ですが,的確な事例をお伝えできることが,やはり重要でしょうね。過日,文化庁から「文化ボランティア実践事例集」が出ましたね。あのようなものを,たくさんつくっていただくと,現場の我々にとっては大いにヒントになります。アートボランティアの方々も,どのようにその意欲を持続させるか。既に活動されている方が,自身の活動を評価し新たなモチベーションを抱ける方策を探るためにも,事例を示していくことが大切だろうと思っています。

高階部会長 それはできるだけ,それぞれの視点について要素を1つずつ挙げていますが,それに係わった事例集にもしたい。それも,単に羅列するのではなくて,どういう点がよかったと分析をしたものが必要です。いろいろな立場で活動している,あるいは活動しようとしている方々が,別のフィールドの在り様も視野に入れられるようにすることが必要です。先ほどの話一つとってもそうです。教育にしても,学校教育もあるし現場教育もあるしといった中で,川本委員もおっしゃったように,異なる分野との連携が大事だと思いますね。学校に任せておけばいいのではなくて,演劇関係なら劇団と学校とをどうつなげるかといったような局面で,さまざまな問題を共有し互いの理解を深めるためにも,それぞれの観点ごとにうまくいっている元気の出るような例を出していきたいと思います。
 はい,根木委員。

根木委員 大学でのアートマネジメント教育について,もうご承知かと思っておりますが,念のため申し上げます。私どものところでも,大学院の応用音楽学専攻ということで,アートマネジメントと,音楽療法のコースを持っております。それから,音楽環境創造科が取手に学部としてできておりますが,このうちの一部もアートマネジメントの人材養成を行っている状況でございます。
 私ども以外にも,東京大学で文化資源学専攻というのが大学院の人文社会研究科の中にできておりまして,どちらかというと,こちらは美術館,博物館系統ですが,音楽系,舞台芸術系のものもやっていらっしゃいます。それから,同時に文化政策に関してもおやりになっている方がいらっしゃるということでございます。
 それから,文化政策学部をつくっておられるのが京都橘女子大学。そして,静岡県立大学。また以前から,アートマネジメントに特化した形で,昭和音楽大学が芸術運営学科をつくっておられますし,慶應大学がこれは固有の養成コースではありませんが,アートマネジメントに関する学内の全学部共通科目を開講しておられます。
 また,近年の全国の国立大学教育学部改組にあたって,既にいくつかの大学が,アートマネジメントの養成コースを設けておられる。
 そのような状況ではあるけれども,いかんせん卒業した人たちの行く先が,今のところなかなかない。そのために迂回措置として公務員試験を受けなければいけないというネックもございます。つまり,供給,サプライサイドの方は割と整いつつあるのですが,受け入れ先にまだ確たるものが制度としてでき上がっていないという状況でございます。
 それからもう1つの問題は,果たしてアートマネジメント人材の養成については,学部レベルで行ったほうがいいのか,大学院で行ったほうがいいのかということでございます。学部レベルでやりますと,極めていろんなことを知識として広く浅く吸収しなければならなくなる反面,大学院で行うと課題ごとに深く研究できるが,全体として理論的に筋の通った体系化がなかなか図れない。そういったことで,学部は一般的な既存の学部を卒業して,大学院レベルでやるほうがいいのかということもあって,その辺の捉え方が,現状における1つの大きな課題であろうかと思います。いずれにせよ,今実態としてはそういったことが,各地の大学で進んでいるという状況でございます。

高階部会長 今の卒業生がどうするかということは今後の重要な問題です。また,実際にこれまで地域の文化施設や行政と大学などの連携等,うまく人材が活用されているような例があれば,ぜひお出しいただきたい。それから,教育に関しては,実地の研修が必要だと思いますが,美術館等ですと当然実習が入ってきて,アートマネジメントについて実務をともなって学ぶようなことになる。そうなると文化施設なり,芸術団体なりとの連携が必要になろうかと思います。また,そこにどういう効果があるのか。今これから大きな問題になっていくと思います。
 それらをどこまで提言に入れるかという問題はありますが,人材育成の重要性を指摘されている以上,そのヒントなりあれば,ぜひ入れていきたいと思っております。
 米屋委員。

米屋委員 今アートマネジメントのことが出ましたので申し上げたいと思います。私は今年度,熊倉委員の教えていらっしゃる学生さんに,取手校で授業をさせていただいております。また,所属先の芸団協で,現職者向けの研修をやっております。取手の学生さんたちは,非常に熊倉先生のご指導がよくて,いろいろな現場に行っているので,学部生にしてはかなりの実践力がある方たちだと思います。でも,いかんせんやはり学部レベルですと,社会的なお仕事での様々な関わりの面で,まだまだ経験不足というところがあります。
 対照的なのは現職者ですが,私どもでは現職者であるかどうかに関しては,受講の際にかなり厳しくチェックします。しかし,それが行政所属の方か,劇団とか民間の方なのかということはあまり区別せずに受け容れることで,立場の違う人たちがお互いにディスカッションしながら1つのことを考える内容の研修を実現させていて,これがなかなかいい効果を挙げております。現職者には,自分たちのやっていることを体系的に見直す機会がなかなかありません。ですから,本当はそういった方々に向けたレベルの高い研修を受けやすい制度を整備し,供給していくことが必要であると常日ごろ考えております。これまでのアートマネジメント研修では,そういった学生さんと現職者の違いが,まだまだ一緒くたにされている気がいたします。
 そして先ほど根木委員もおっしゃいましたが,学部レベルのアートマネジメントは,そういった分野の専門家として働くことを目指している方には,もちろん必要です。しかし,むしろ行政の他の分野に行かれる方,例えば財務省に行こうと思っているような,そういう方にこそ文化政策の基本理念を学ぶ機会を一般の大学の中で持たせることができないかと思っております。
  5のところではJCDNの例が出ておりますが,新潟で金森穣さんが芸術監督になられて,ダンス・カンパニーが常駐するというような例がありますので,できましたら,専門家がフランチャイズといいますか,定住型で活動している事例を含めていただきたいと思います。

高階部会長 それは教えていただいて,ぜひ入れていただきたいと思います。別に,ここに挙がっている例も,これだけ,あるいはこれをぜひということではなく,他にあればもちろんいろいろ並べていただくし,もっといい例があればそちらを出すということはあろうかと思います。
 津田委員,どうぞ。

津田委員 本当に人材さえいい人があれば,地域文化の振興はできると思います。問題は1にも2にもここだと思います。ところでアートマネジメントといっても2通りあって,1つには根木委員のところで育てていただいた学生さんが,例えばサントリーホールなどでも,何人かはマネジメントで活躍しているわけです。そのような,いわばある程度学芸的な専門力を持った上で経営のわかる人を育てるというのは大学のシステムでおやりいただけるものかと思います。もう1つは,現在地域文化の振興にすごく活躍している方々,例えばこの前ここへ来ていただいたダンスボックスの大谷さんや,京都の三条でミュージカルホールを何とか経営に乗せようとしている小原啓渡さんのような方。という,この方も割とよくアートコンプレックスというので新聞に出たりしていると思いますが,彼らは現在おやりになっている活動とは直接的には関係のない勉強を学生時代にはなさっていたといいます。こういう具合にお名前が出たときに,あああのかたかとわかるような個性的な方々によるマネジメントということがあるわけです。
 ところが,後者のような方々の養成ということなると,これはもう非常に確率が悪いわけです。ですから,何かそういうことに意欲を持って実績も上げてきていらっしゃる方に,先ほど米屋委員がおっしゃったように,現職者としてスポットをあてるようなサポートができないかと思います。そのように名実ともに実績,いわゆる実地主義でやっている方々に,例えば経理的なものとか,あるいは財政の手当の方法とかいうような面でも,更に力を発揮していただけるよう,系統的に学べる機会を提供できるようなシステムが,現実的かつ,効果的だと思います。
 それと,地域文化の振興でたいへんに成功している例は,湯布院映画祭だと思います。この間釜山に行ったときに実感しましたが,釜山映画祭も9年で世界的に有名になってきている。彼らにすれば既存の日本の映画祭に比しても,自分たちの映画祭の出来に対する自負があるようです。しかし,そんな彼らも湯布院映画祭のことには,高い関心をもっています。湯布院映画祭というのは,確か東宝かどこかで仕事をしていた溝口さん夫妻が,湯布院の温泉の後継ぎになって帰ってこられた。そして湯布院はこれではだめだと,映画祭での地域興しに本腰をお入れになった。その湯布院映画祭によって,湯布院温泉は全国的に見てさほど大きな規模ではないのに,非常に有名になっている。地域文化の振興として,あれほど成功した例はないと思います。
 そのように,地元をものすごく愛している方で,なおかつマネジメントのできる人材を育てるというのが,地域文化にとって必要です。そこで先ほど申し上げたような,実地的にある程度芽の出かけている方や既に大いに活躍されている方の研修機会を設けるとともに,地方の行政の中でそこに携わっている方,あるいは地方に住んでいる方で,そういうことに関心のある方を集めて定期的に文化庁で研修をうけられるようにする。例えば夏期講座とか,そういう形でやっていくというのが,一番現実的な方法ではないかと思います。人材の育成というのは,本当にこれに始まってこれに終わるほど重要な問題であると同時に,これは個人の能力,個人の個性にも関わることなので,制度としてある程度集団的にやるとしたらこういう形かと思います。

高階部会長 そうですね。特に地域におられる方が非常に重要な役割を演じられて,それぞれ地域の施設で文化活動が展開されていくわけです。視点3では,その文化活動を支える拠点・資源をいかに活性化するかということで,これも広く言えば資源なのですがそれとのつながりもあって,いろいろと議論が出ております。学校教育とか文化施設の中でどうやってその人材を受け容れるか,あるいはそこでさらに育てるかということも当然あろうかと思います。そのときに,学校や様々な公教育とつなげていくということも大事だと思います。
 どうぞ。では根木委員,吉本委員。

根木委員 先ほどの補足になるかも知れませんが,各地に地域政策学部とか文化政策の総合政策学部といったような,そういう政策系の学部なり学科ができております。そこに地元というか,地域の行政官の人たちで,政策一般をやりたいという人も入っております。そうした方も,事実上その大学に入って実際やっておられることは,文化政策なりアートマネジメントの勉強をやっているというケースもかなりあちこちに出て参りました。とは言え,組織的にまだでき上がっているとはいえない状況ですね。

高階部会長 吉本委員,どうぞ。

吉本委員 この人材育成のところで,先程来話が出ていますけれども,実際に働く場所の問題というのがあったと思います。特に大学等で学んだ人間が現場に出ていくと,たぶんいろいろな就業形態があると思いますが,いわゆる就職という形で行くのが,全体のパーセンテージでいくと本当に少ないと思います。だから就職というのも,確かに1つの大切な方法だとは思いますが,それがすべてではない。やはり大学で学んだ人間や,若くてずっとやりたいと思ってきた人間が,現場とどうやってコネクションをつくっていけるか,あるいは現場で仕事をできるある種のコミュニティのようなものにどう入っていくかということが問題なのだと思います。そういう道筋・回路のようなものをできるだけたくさん用意するということを,人材育成とあわせて行った方がいいかと思います。
 その1つの方法として,どれだけ効果があるかわからないのですが,最近文化会館などで,インターンを受け容れているケースがあります。それは将来的にその文化会館で働くことにならなくても,インターンをすることによって,そこでいろいろな現場の人たちとのネットワークができて,本当にやる気がある人はそこにどんどん積極的に働きかけていって,何か仕事を見つけて入っていくといいます。やはりそういう現場に出ていける道筋のようなものをできるだけたくさん確保するというようなことも,十分考えていただきたいと思います。

高階部会長 実際の活動上の方策ですから,そこを強化するのも当然だと思います。美術館などでも,学芸員の資格というのは,学部レベルで取れるわけで,実習が必要なので美術館も実習の場を提供しているのですが,現状では実習期間が非常に短くて物足りないということがあります。制度の上からは,そうした問題もありますが,より現実的には美術館などで実習を受け容れて,その際のコネクションで,人手が足りないときにはアルバイトに来ていただくことができるわけです。逆にそれはまた,アルバイトに来た学生にもプラスになって,その繋がりで就職できるというケースがわりにあります。実際に文化活動というのは,学校での講義だけではもちろん済まないわけですから,実にいろんなケースがあろうかと思います。それがうまく機能しているような例,あるいは今後こうしたらいいというような提言はぜひ入れていきたいと思います。
 その視点3も含めて施設,あるいは文化財の活用や学校教育施設のことも今まで出てまいりました。議論を進めます。

津田委員 文化財の活用という意味で見れば,いつも同じことを言って申しわけないけれども,この間たまたま犬山にある明治村が,ひょっとしたらなくなるのではないかと聞きました。入場者数がひところの半分ぐらいになっているようです。私は日本人の文化離れはそこまで来ているのかと思いました。明治村も,素晴らしいところです。ところが,やはり近鉄がバファローズを手放したように,あれも名鉄がやっていて,リストラその他で相当厳しい。
 こんなのは単なる噂かも知れないが,近鉄が劇場を手放すというのは早くから聞いていまして,まさかそんなことないだろうと社長にも確かめていたのですが,結果的に5年ぐらい経つと本当になくなってしまい,いくつかの劇団が困っている。犬山の明治村も,今は噂かも知れませんし,決して何も確かめた事実でもありませんが,ひょっとしたらまたそういう具合になるかも知れない。あそこは,単なる遊園地ではありません。本当に素晴らしいですよ,日本の文化として。これも調べていませんが,恐らくあそこも固定資産税を払っているのではないかなと思います。あれだけ広大な土地の固定資産税を払っているとすれば,本当にそんな話が起こってくる可能性がありますよ。
 だから,本当に何回も言うのだけれども,文化財,美術館,博物館とか劇場とかのうち民間でやっているものについて補助金を出せとは言いませんが,税金を取るのはいかがなものかと思います。国であれ地方であれ,税金をとるのをやめて,地域文化の振興について理解しているという姿勢を見せないとならないと思います。民間でやっているものは,今は経済効率の世界であり,株主総会でも許されない状況です。あんな無駄遣いして配当しろというレベルの問題になるのですかね,まだまだ。だから,そこは国でも企業の文化的な活動の価値を認めているのだということを示すことで,支援していくためにも,この問題もどこかへ入れておいてもらわないと。積極的なことではないのだけれども,民間の文化活動についてはそういう具合に支援していかないと。確かに当初は相続税対策で始めた美術館もあるでしょう。けれどもここで,2代,3代目の経営者になって,本腰を入れて運営しようという段になって閉鎖した美術館も結構あります。
 このような格好で民間の美術館が倒れていって,国立,公立だけになってしまうとすると,多様性が出てきません。だから,やはり民の力も借りる必要がある以上は,民のそういう点にも配慮しないと。吉本委員,いかがですか,この点について。

吉本委員 そうですね。今お話を伺って,特区の制度などで何か支援ができないかなと思ったのですが,あの制度は税制に対しては難しいのでしたね。

高階部会長 しかし,これは文化政策部会ですから,国の文化政策にかかわることで,税制の問題もいろいろと出てきたので,すぐにはいかないにしても,やはり言っておくことは必要だと思います。

吉本委員 視点6のところで,資金的援助の項目がありますので,そこの中に民間の文化活動,特に文化財だとか文化施設とかに係って,特に固定資産税が一番わかりやすいと思いますが,そういう事柄も入れてやれるのでしょうか。何らかの考慮をすべきだというようなことを,この部会から盛り込むというのはあり得ると思います。

高階部会長 これは重要な問題だと思いますし,以前に審議会全体でも議論が出たと思いますので,審議会側からの提言として,とにかく言っておく。そして,できればそちらの方向で,国として考えていただく。これは国全体の問題になりますから。ということは文化政策も非常に重要なポイントになろうかと思います。うまく入れていくということは必要だと思います。文化財を活用するために,そういう税制が非常に大きなネックになっているということもあるわけです。
 いかがでしょう,他に。どうぞ,山野委員。

山野委員 パフォーミングアートですと,お稽古をする場所の確保がとても大変です。文化施設というほどのものではなくても,稽古場を貸してくれることがとても大事なのです。ところが,民間の施設を借りますと税金が高いものですから,借用料が高いわけです。それを行政のほうで貸してくれる。金沢がどうもやっているようですが,小さい劇団なんかがとても助かっていると聞きます。そういうことも何とかならないかなと感じております。

高階部会長 この文化活動の視点の12のところで,学校施設や社会教育施設,公民館等の活用という項目があります。遊休の施設のみならず,現在運用されている施設の活用場面でも税金の問題がでてくる。使いたいけれども税金の問題があると。やはりそれとなくこの問題も入れておいたほうがいいかもしれない。

山野委員 それともう1つ,その施設を貸してくれるときに,公平ということで,例えばカラオケの集まりなども含めてみな同じ扱いなのです。その辺では,画一的な公平原則を外してもらいたい。つまり,地域としてこれは大事だというものには優先的に割り振るというようなことも検討が必要ではないでしょうか。

高階部会長 これはやり方の問題として,そのあたりをうまく実施しているところがあればぜひ。普通の行政だとどうしても公平性ということを言うでしょうから,文化政策の視点でどうすればいいか。これも大事なことですね。
 根木委員。

根木委員 先ほどの文化財のことに少し関わりますが,津田委員が言われた明治村ですが,あれは恐らく不動産文化財を1か所に集めてという,その辺にかなりしんどいところがあるのであろうかなという感じがします。
 一方,文化財保護法も改正になりまして,というより,もう何年か前から登録文化財制度ができておりまして,現地保存といったような方向で進んでいるところですね。ですから,不動産文化財に関してはそういった現地保存を念頭に置きながら,そこで生活もしながら文化財そのものを活用していく。それがやはり基本にあるべきではなかろうかという感じがしております。ということは,そういったもろもろの文化財のネットワーク化を図る。エコミュージアムということがよく言われているのですが,そういったものの考え方が,とりわけ不動産文化財に関しては,これから必要なのではなかろうかと思います。ある1つの町や村が,ミュージアムタウンといった形で機能する方向性を考えるべきではなかろうかと。そんな感じがしております。
 それから,税に関わっては山野委員のおっしゃった傾向が問題ですが,これは確かにあちこちでニーズが高い事柄であるようです。何らかの格好で前々から言われてはいますが,問題意識としては,地域文化振興のインフラに関わることでもありましょうから,やはりこれを念頭に置いた格好で,若干触れる必要があるのではなかろうかという感じもしているところです。

高階部会長 はい、津田委員

津田委員 確かに,不動産文化財だから地域に置いておいて,それが地域振興に役立つというのはよくわかりますが,不動産でもやはり動かして,例えば神戸の谷崎潤一郎邸などは,道路を広げて潰してしまうのは,惜しいから明治村へ持っていこうということで,それはそれで非常に意義があると思います。もともとの現地にある不動産は保護してやるが,集めたら保護しないということにはならないようにしていただかないと,と思いますがいかがでしょうか。

根木委員 ある程度津田委員のおっしゃったようなことに従って,税制も考えるべきだと思います。

高階部会長 考え方としては非常によくて,すぐそこの帝国ホテルだって,そうでなきゃなくなってしまうのが明治村で生きているわけですから,大変大事だと思います。

根木委員 また一方で,明治生命館などのようにすぐ隣りで現地保存しているような例も出ていますね。

高階部会長 現地保存ができればもちろん望ましいけれども,なくなると困るということとの兼ね合いですね。それを言えば,実は彫刻や絵画もだいたいが本来は教会等の建物付属のものです。それを博物館や美術館に持っていっていいのかという議論ができてきて,場合によっては返せという図式のものもでてきています。本来のある場所で鑑賞すべきだという議論ももちろんあり得えます。それもそれなりに意味があると思います。しかしそのことと,絵画等を利用して地域文化を振興させるというのは,文化芸術の問題として比較しながら考えるべき問題だろうと思います。地域に移ることによって,その地域が新しい文化的な意味を得るということは十分あり得ることだろうと思います。
 それと,現在あるもの,今津田委員がおっしゃったような文化財を生かしていくためのネックとして,例えば税金の問題があるならば,その文化財を生かせるようにしたいということは考えるべきだろうと思います。
 そして,これも国の政策と絡んでくると思いますが,先ほどからも議論になっています視点4の子どもの教育,これも教育だけではなくて,青少年の文化活動への支援,これは特に将来のために子どもが大事だということはこの部会でもたびたびご指摘ありましたし,さらに言えば,高齢者も一緒にということはこれまでご指摘のとおりです。特に,連携した活動で,ここでは学校との連携というような例が挙がっておりますが,それから学校以外との連携として,どういうことがあるのか。事例としていいものがあればぜひ教えていただきたい。あるいは方法として,高齢者と一緒にというのは非常に重要なポイントだと思いますが,これも実際の事例などお考えいただきたいと思います。
 それぞれの文化団体,あるいは劇団とか,それから美術館も,子ども向けのプログラムというのは最近もちろん考えられていると思います。それが特に地域と結びついて,地域の文化活動となっているものについて,いくつかの例が挙がっておりますが,他にも実際いろいろ例があると思います。その中で,特にこういう方向がよかったとか,あるいはこういう点に問題があるということがあれば,ご指摘いただきたいと思います。
 学校との連携で,教員が多忙だとか,あるいは学校のプログラムに入りにくいということは,これは私も美術館等でよく聞きます。美術館に子どもが来てほしいときに,暇がないとか,あるいはバス代が出ないとか,いろいろな問題があって実現しない。ひとつひとつは些細なことかもしれないのですが,実際それがネックになっていることがある。地域文化活動をするときに,学校の教員の理解も大事ですし,その他にも,行政的な公教育の場合ですといろいろな問題があろうかと思います。それらをうまくクリアしているような例があれば,教えていただくことが大事です。
 津田委員,どうぞ。

津田委員 我々が今国立劇場を運営している立場から見ると,確かに,今子どもたち,もっと言えば日本全体で,芸術,美術の活動に参加しない人が本当に多くなっていると感じております。やはり,芸術,美術の活動に参加することが人間形成に非常に大切だと思う立場からは,何とか興味を持たせられるように工夫していくということが大切だと思います。
 今朝テレビを見ていて反省したのですが,地震があって見舞いに持っていくというと,多くがミネラルウォーターとインスタントラーメンだというわけです。神戸のときも,ミネラルウォーターとインスタントラーメンはもう要らないとずいぶん言われました。そして,今日テレビを見ていると,今回の被災地で,絵を描くのに子どもたちがクレヨンや色鉛筆をものすごく欲しがっているというのです。そうしたものを見舞いに持っていくという発想が,私自身にも全くなかった。恐らく地震の見舞いにそういうものが行っているということは,今もほとんどないのではないかと思います。我々自身の在り方として,子どもたちに芸術,美術に興味を持たせるような暮らしぶりをしているのだろうかと考えて猛反省しました。
 やはり,国の文化政策としては,音楽会とかバレエとかに,とにかくなじませるように,国全体でやっていくんだと。お絵描きとかお習字などのようには,本当まだなっていないのではないかなという気がしました。
 だから,Jリーグでチェアマンをなさっていた有名な川淵三郎さんは,確か子どものとき,NHKの児童放送劇団に入って,かなり活躍していらしたというけれど,そういうことがおそらく彼の後のスポーツ生活にも役立っているのではないかなとか思います。だから,小中学校でよく行われている,学校行事として劇などを見させることについても,政策として本当におもしろがらせるという点も考えないといけないと思いました。

高階部会長 米屋委員。

米屋委員 それに関してですが、これまで確かに子どものための鑑賞教室を苦労していろいろ行ってきているのですが,最近伺ったところでは,市町村合併で来年度予算がどうなるかわからないということで,普段ですと,今ごろもう来年度のお話をして,だいたいできるかできないかというお話を始める時期のようですが,今年はそれどころではないということになっていると聞きました。と申しますのも,都市部ですとそうした行事についても,わりに学校が主体的に決めるのですが,郡部ですと生徒数が少ないこともあって,公立文化施設の方や教育委員会の方が鑑賞教室のためにいろいろなアレンジをして,それを先生方が採用するかどうか決めるというようなことで成立している状況があります。ところが,合併問題に関わってそこが動かなくなっているというお話なのですね。
 今申し上げたのはいい事例ではないのですが,最後の方向性ですとか提言の中に,そういった状況への配慮という事項を盛り込ませていただけたらいいなと思っております。

高階部会長 そうですね。困った事例ばかりを並べてもよくないかもしれないが,そうした問題があるならば,それに対してどうすればいいかということは,言っておく必要があるかもしれませんね。
 山野委員。

山野委員 子どもの問題というのは,やはり親の問題なのですね。子どもというのは,1人で劇場等へは行けない。親が連れて行くわけです。ところが,親が全然そういうことに関心がないと,絶対無理です。
 例えば,学校で子どもがいいもの見てうちへ帰ってきて,それを話題にしようとしても親が反応できないというようなことですととても困る。その意味で,やはり子どもの問題は親の問題でもあると思うのです。親の教育を何かここでやるというのはどうかなと思います。

高階部会長 京都の造形大,私も若干関係しているのですが,子ども芸術大学というのは必ず親と一緒に来なさいということで,親子一緒にという方策をいろいろ考えているようですが,それも大変重要な問題ですね。
 他に何かございますでしょうか。よろしいですか。
 では続けて,視点5の情報収集・発信の問題,それから既に話題になっています視点6の資金的援助の問題についてお願いします。視点5,6も含めて,今までの部分に戻っても結構ですが,ご指摘,ご意見いただければと思います。いかがでしょうか。
 情報の問題に関しては,地域の中でも意外に廻っていない部分というのがあるので,当然それぞれ活動しておられる方は方策を考えていると思いますが,いい例があれば教えていただきたい。また,特にここでもこれから探されるのかと思いますが,相談ボランティアといいますか,文化活動をしたいときにどうすればいいかというようなことを相談できるような窓口といいますか,そのあたりの実態についてはいかがでしょうか。調査してみると文化活動をしたいと漠然と思っておられる方はいるけれども,いったいどうしていいかわからないというような例が出て参ります。ですから,そうしたニーズをフォローできている例,あるいは対応についての考え方についてのヒント等を教えていただきたいと思います。
 どうぞ,山野委員。

山野委員 いろんなものをとにかく記録して残しておくということが,後になってみるととてもよかったということがあるのですね。実際,何を記録して何を残していくべきかというのはとても難しいところです。だから,こんなものまでというものまで残すという具合に,個々の記録活動については,大きく網を広げるような形で進めておく。その上で記録されたものを,どこかの機関がそれをまとめる場所をつくるというようなことができるといいと思います。つまり,建築などの,いわゆる物ですと割合にいろいろと残ったりします。けれども,お祭りとか,お神楽とか,形がすぐ消えてしまうものというのはなかなか残らないものですから,そういうものを残す何らかの工夫をしたいですね。

高階部会長 地域文化のためにも大事ですし,これはやはり文化政策ですね。例えば劇団等で,お芝居,パフォーミングアーツ関係の資料館のようなものはあるのですか。明治以降,例えばプログラムがずっとそろっているといったような。それぞれの劇団はたぶん持っていらっしゃるでしょう。しかし,例えばフランスですと,アルセナルに行くと,演劇関係資料館というのがあって,プログラムからチラシから,ともかく集められるだけ集めてあって,みんな調べるのに使っている。こうした問題は,地域だけのものではないし,一劇団の問題だけでもないと思う。あくまで国の問題だと思います。

山野委員 そうしたものは,日本だとだいぶバラけているのではないでしょうか。個々にあちこちの大学の図書館に入っているとか,例えば早稲田の演劇博物館に入っているとか,それがそれぞれ個別にやっているものですから,どこにあるかというのがわからない。

高階部会長 では,それを今度はネットワーク化というか,わかるようにするような方式が必要ですね。美術館の場合もそうで,カタログというのがそれぞれバラバラにあって,これも非常に重要な資料なのですが,なかなかまとまっていないので,今ネットワーク化しようということを考えています。
 どうぞ。

津田委員 歌舞伎とか文楽はよく残っていますね。驚くほど。それから,日本国中のお祭りは,千里の民博にまず網羅されて残っているのではないですかね。一方,各独立の演劇等はおそらく残っていないのではないかと思うのですが,どうですかね。そういうのちょっと無理ですよね。だから,どこまでを残してどこまでをとらないかというのも問題だとは思うのですが,これもそれこそ文化庁の政策として,国として必要なレベルについては,国立劇場や文楽劇場,能楽堂等の事業として,予算化していく必要もあるでしょう。

高階部会長 ええ,これは予算が要りますよね。

津田委員 はい。必要な経費は使って,ものとしてはほぼ完璧に残っているという。そして,どなたにでもお見せできるという,そういう仕組みが求められる。

高階部会長 根木委員。

根木委員 民俗芸能などは,あらゆる保存が難しい状況になりつつありますね。ああいったものは,映像化して残すということを文化庁はやっておられるのだろうと思いますが。ただその映像化して残す場合に,どの範囲まで撮ればいいのかという,その方法論ですね。これがどうもまだきちんとしたものがないのではなかろうかと思います。正面からだけ写真かビデオを撮っておけばいいのか,後ろから撮るのか,上から撮るのか,横から撮るのか。その辺について,後世その芸能がなくなったとしても,それを復活するに当たって最低限どこまで必要なのかという。その辺の手法がどうもでき上がっていないのではないかという感じがしております。京都の某大学では,そのような口演芸術に関して映像化して残す場合に,その手法の開発ということをやってはいらっしゃいますけれども,なかなか確たる方法論というのが,まだでき上がっていないという状況にあります。

高階部会長 それについては,根木先生の学校等で考えていただくとして,少なくとも今ある方法でともかく残しておかないとならないということはあるわけです。ですから,この文化活動に関する情報収集・発信で,発信は大事ですけれども,情報収集の中にやはり今の資料の問題はどうしても必要だと思います。地域特有のもの等,どうやって集めるかというのも大きな問題です。当然お金が絡むし,個人,民間だけで済まない部分もあろうかと思います。事が情報発信・提供ということになると,すぐに例えば電子機器を使う使わないといった機械の問題になりやすいので,中身についてどうするかという議論が非常に重要だと思います。
 山野委員,どうぞ。

山野委員 それについては,どこがやるかというのを決めてもらいたい。例えば,音楽関係の資料は,どこがやると。その上で,必要な予算をそこへかける。そして他でいろいろとダブって行ってきたものを整理するという必要があるのではないかと思うのです。

高階部会長 そうですね。これはやはり国の文化政策の大きな問題だと思います。
 川本委員。

川本委員 私も,将来は情報政策センターのようなものをやりたい。それこそ,本当にこれが何十年後かに実現すれば,箱などは要らないのではないかと感じたわけです。全県下のこういう施設を結んで,それで中央の情報も発信するし,地域の情報も発信する。既存の劇場施設の更新期には,ぜひそういう施設をつくりたいということを考えます。ここに新しい環境情報センター機能を持たせることに加えて,外部の何かやりたい人のご相談に乗るような役割も持たせる。参加したいときに気軽に相談できる。そういうニーズもあるでしょうから。ただ,建物を建て直すとなると,やはり著作権か何かの問題があるわけでしょうか。

高階部会長 それはまたいろいろ,そういう問題がありますね。

川本委員 既存の施設を活かすとしても,例えば空間を有効利用するために,館内レストランの配置を変えるなど,いろいろ考えてはいるのですが,やはり建物は建築家の著作権が及ぶわけですね。

高階部会長 ええ,そうですね。これは著作権の問題が大変,特に実際利用していく場合は大きいです。建築家が生きている間はもちろん著作権という問題があります。亡くなられた後でもある程度続くし,ずっと後になっても,今度は貴重な文化財として,壊しては困るということがあって,その辺ももちろん兼ね合いだと思います。古いものを守りながら活用していくということは。もちろん文化庁の著作権課では,そういうあたりは考えられているわけですよね。

吉田政策課長 建築の著作物というのは大変実用的な側面があるものですから,増改築などをするということについては,一部その著作権を制限するということもございます。つまり,規模にもよりましょうが,著作物だから絶対改築はできないということではなく,そこはなぜ改築するのかというあたりで,建築家の方と相談されて,よりよい方向になったというのであれば道は開けてくることがあるのではないかと考えております。

川本委員 なるほど,有難うございます。いずれにしても申し上げたいのは,この文化情報に関してそういった拠点があればいいということです。

高階部会長 そうですね。
 どうぞ。

吉本委員 情報の問題は,今いろいろ議論が出ている中で,2つの方向があると思います。1つはストックとして,アーカイブをどうつくっていくかということ。もう1つはフローの部分で,今起こっているいろんな地域文化の活動に関するライブな情報を,どうやってビビッドに伝えていくかということ。何か両方ちょっとベクトルが違うと思いますが,その辺を明確に出せるといいと思います。

高階部会長 両方,私は必要だと思います。そのことはぜひ提言いただきたいと思います。
 どうぞ,佐藤委員。

佐藤委員 川本委員のおっしゃったこととも関連するのですが,そのフローの情報の部分について,この情報発信は,ここが一番私はやっぱり国の政策が関与できるところだと思います。要するに情報発信したものを受信し,再加工して,さらに外へ出していくというシステムをつくらないとならないが,それは国の仕事だろうと思うわけです。例えばどこかでお祭りがあるとして,その地域がいきなり国際的に発信するというのは現状では無理があります。やはり関連する情報を集めておいて,政策的に出すものを選んでいくため,情報を集めてから再加工して出すという流れを,ある種の中位のセンター,上位のセンターという形でもって一貫していくといいのではないかと思います。今回の場合は割とその地域の事例になっているわけですけれども,政策提言の中にそういう1つのシステムづくりみたいな考え方を少し取り入れて,そのどこに位置づけられる事例なのかということをはっきりさせるべきです。さもないと,例えば地域と国際性の問題などが空論になってしまう可能性があります。

高階部会長 そうですね。
 他にいかがでしょうか。視点6の資金援助に関しても,公的資金はもちろん必要だということはあるのですが,民間資金の活用,それから個人支援,これらも今後とも増やしていくためにどうすればいいか。従来だと,日本はこのあたり例えば外国に比べて,割に弱い部分ですけれども。
 どうぞ。

富澤委員 2つあるのですが,1つは,今の情報の話は,国全体がインターネットを活用した,従来はe−Japan構想ですか,今u−Japan構想で,ユビキタスネット社会ということで,これは国家政策,戦略として大きくやっているわけで,そういう中に,やはり文化というものを盛り込んでいくということも必要ではないかということです。そうすると,今言ったような話もかなり大きく推進されるでしょうし,文化庁のこの方面へ取り組み状況はよくわかりませんが,今後とも積極的努力をされたほうがいいのではないかということが1つ。
 それからもう1つは,資金のことですが,やはり今日本は金融資産は世界一と言って,みんなお金を持っているといいます。どこにどういうふうに持っているのかわかりませんけれども,それがうまく活用されていないという面がありますが,それには成熟社会になって,買いたいものがないという面もあると思うのです。そんな中で文化というものにお金をかけたいという意識は,私はかなりあるのではないかと思います。これまでにも,そういう人たちはたくさんいたわけで,そういう善意の資金をどうやって集めるかということ。どうやってオーガナイズするかということが問題です。今のところ,それがないものですから,私も文化にお金を使いたいということに対するインセンティブを,どうやったらうまくつけられるかと考えてはいるのですが,なかなか名案がありません。やはりそういうものは,地道な努力を続けていくしかないのでしょうが,何かそれなりのインセンティブがあれば,個人の善意のお金を大きく活用することができるのではないかなと考えています。川本委員のご発言にあったことや,地域での活用も含めて,何かその辺のところで知恵があったら,かなり有効ではないかという気がします。

吉田政策課長 今富澤委員の前半のご質問といいましょうか,ご意見といいましょうか,e−Japan重点計画の中で,文化関係ということでは,「文化遺産オンラインシステム」を今文化庁で進めております。これは,全国の美術館,博物館を結んで,先ほど吉本委員がおっしゃったストックとフローも意識しながらですが,全国の美術館や博物館が持っております,ある意味では文化財になるというような貴重な美術工芸品等々を精密画像化してインターネット上で提供できるようにしようというものです。あわせまして,それぞれの館が今実際にどういったイベント等を行っているのかということも,ご紹介できるような仕組みをつくろうということで,今年度から試行版ということで,今試験公開をしております。参加はまだ30館程度でございますが,これを広げていくということを私どものほうで現在計画をしております。また,それを美術館,博物館だけではなく,いろいろな文化会館やその他の施設等まで広げていくというのも,将来の1つの方法ではないかと思っています。

富澤委員 だから,u−Japan構想の中で,文化というものが国の政策の中で主要な柱になるというようなことになれば,先程来の文化力という,国のパワーの1つになるということになるのではないかと思います。

高階部会長 なるほど。はい,どうぞ,中村委員。

中村(桂)委員 u−Japan構想でもやはり,重要なのは税金だと思います。私は,民間で研究活動を文化活動だと思って行っていますが,様々なご協力をお願いするときに気持ちの上でも,非課税になるものでしたらお願いができるが,課税対象になるようだとお願いできないということがあります。もちろん全体としてのシステムをつくることは大切ですけれども,それ以前に,もう各々の活動している人たちにとって,税金の負担が変わってくることで,格段に動きが違ってくると思うのです。ですから,ここはまさに税金だと,私は思います。外国を見ていたら,もう個人だって法人だって,みんなそのインセンティブでどんどん進めていらっしゃる。ぜひここは税金について,お願いしたいと思います。

高階部会長 それは意見として,ぜひ私も,大変重要だと思います。
 吉本委員,それから佐藤委員。

吉本委員  18の民間資金活用のところで,事例として紹介するといいと思うのが,企業メセナ協議会が行っている助成認定制度というものです。それは寄付金控除を受けられるものですが,その窓口が確か全国の都道府県の文化振興課や文化振興財団等にも広がっていますので,地域にいてもそういった制度が利用できるということをここで紹介したらどうかと思いました。
 それともう1つは,ここは資金的援助となっているので,ここで取り上げるのがいいのかどうか少し迷ったのですが,逆に経営感覚を重視するとか,非効率な運用を見直すということも打ち出すべきではないかと思います。あるいは,このごろはコンテンツビジネス的なことをよく言われますが,様々な地域文化というのはそういうお金を生み出すリソースとしても有効ではないか,というようなことを少し入れてもいいかという気がしております。

高階部会長 そうですね。経済的な側面というのは必要かもしれません。
 佐藤委員。

佐藤委員 2点あります。1つは広い意味で資金援助とあるのですが,人材派遣の事例というのはいくつか企業から公的な機関へというものもあります。
 もう1つは,税制のときに,財団による運営を前提とするように一般論の中で話を広げようとしますが,やはりここでは特定文化目的ということを強く主張する必要があると思うのです。これからは同じ財団の中でも,文化目的財団についてのわかりやすい政策的な配慮をしていくようにしないと,税制に関わる対象が少し広がることによって節税対策というような意味合いが強調されてしまい,文化振興という意味合いが薄まってしまうという形になりかねない。従って,どこかに文化目的を割と強調するような形をぜひ提言の中に入れていただけるとありがたいと思います。

高階部会長 他にいかがでしょう。全体に戻って,それぞれこれから考えていきたいこととか,よろしいですか。
 中村委員。

中村(桂)委員 最初の意義のところですが,文化を振興することはいいことだということは当たり前なのですが,この社会全体がどうなっていくかということが気になっています。社会全体として命を大切にするということを,文化振興との関わりにおいても,その基盤としていくようにしたいのです。ところが,今外交とか経済とか政治とかというところになると,私はその点が少し危うくなっているような気がします。これに関しては,文化や地域から支えていけることなのではないか。本当に生活に根差した形で,文化から命の大切さを基本にした社会にしようというメッセージが出せるのではないかと思っております。これは最初の意義の中に,その旨を入れていただけたらというお願いですが。

高階部会長 非常に大きな切実な問題ですね。文化は単なる豊かさとか心の豊かさの部分だけではないということをうまく。

中村(桂)委員 文化からきちんとやっていくということが大事かなと思っています。

高階部会長 米屋委員。

米屋委員 私も,この資料3を受け取って,最初に読んだときに,冒頭の文化力の議論に戻るのですが,地域文化という言葉でかなり拡散しているということもあって,何かゆとりがあるといいなというぐらいの,そういうトーンに受け止められないかなという気がしました。人を動かす力とか活力のもとというようなことはあるのですが,今後これは言葉の選び方になると思いますが,私自身は,もっと革新的な力,創造していく,新しい創造を行う源というような,もっと積極的な意味で,文化力というのをとらえたいなと思っています。別に佐藤委員のご指摘もありましたので,そのことは皆さんと共有されているとは思っておりますが,その辺が果たしてどうなのかなということを,迷いながら議論を伺っていたところでございます。

高階部会長 今中村委員もさらに強調されていたので,ぜひそれは出していただきたいと思います。
 他に。都筑委員,いかがでございましょう。

都筑委員 これが理想的に全国で展開した場合,いったいどういう図ができ上がるのか,私には少しイメージが湧いてこないのです。
 その地域文化というものの1つの例として,ヨーロッパのどこか湖のある小さな村で,毎年1回湖上オペレッタというのをやっているところがある。40何年の歴史があって,それが評判になって各国から見に来る。36回公演,完売である。これどういうことなのだろうと,私たちには想像できない世界なのですね。でも,地方から生まれた文化としては,1つの超一流のものができ上がっているのではないかと思います。毎年1回オペレッタの演目を変えて,50回近い歴史を刻んでいる。そういうものが,日本のあちこちから出てくればいいわけですか。

高階部会長 それは望ましい形でしょうね。

都筑委員 それをやるには,前も出ていましたけれども,担当なさる部署ですね。私自分の経験からしか申し上げられませんが,上方の演芸資料館ができたときに,できる6年も前の段階,一番基礎の準備を担当された役所の方が,演芸の世界にはまってしまって,建物を立ち上げる前に,演芸の論文がかけるほどの勉強をなさったのです。ところが,立ち上がって見にきてくださって,現在のご所属を伺ったら,病院関係にいらっしゃるという。いったい,自治体はどういう考えでこの人間を動かしていたのだろうか。あそこまで演芸という仕事に打ち込んだ1人の役人を,どうして生かしていけなかったのかと。そういう疑問が大きく出ました。地域の文化振興に係わることがあちらでもこちらでも出てくるのは非常にいいけれども,それを本当に熱情を持って維持していけるのかどうか。3年で交代するような人たちの間で,手続は引き継げる。でも,熱情は引き継げないということで,歯ぎしりしたことがありました。

高階部会長 それは今までにもご指摘があったことで,ここでもまたぜひ出していただいて。

都筑委員 だから,そうしたものがたくさん出てくる。その中から残ってくるものが,こういうものなのだろうと思っています。

高階部会長 そうですね。提言が,すぐ実現されるかどうかは別としても,これはぜひ実現していただきたい,これはぜひ必要だということは盛り込んでいただくことにしたいと思います。
 もう時間となりましたが,何か他にぜひこのときにというご意見がございましたら。
 根木委員,お願いします。

根木委員 先ほど米屋委員がおっしゃった創造の力云々ということですが,私も実は少しこのペーパーを拝見していて若干気になったのが,市民の文化活動ということで,創造活動までたぶん入っているのだろうとは思いますが,創造という側面が少し薄いのではなかろうかという印象が,若干ありましたことです。文化活動と言う場合には,こういう言い方も何ですが,学芸会レベルの仲良しクラブのものという,そんなニュアンスが何となく強いものです。ここは,やはり地域での芸術文化の創造ということも,一応視点としては押さえておかないといけないのではないかという感じがします。

高階部会長 それはそうですね。

根木委員 それからもう1つ,5ページ目の行政機関はサポート役ということで,やや腰が引けたような形になっていますが,やはりもう少し積極的な意味合いが行政にあってもいいのではなかろうかと思います。確かに文化芸術に関しては,支援行政が核であると同時に,施設等の設置者行政ということでしょうが,これを全部まとめますと,給付行政なのですね。給付行政というのは,現代行政において非常に大きな部分を占めているわけでして,行政としてはやはり,その給付行政の最たるものが文化行政になろうかと思いますので,もう少し積極的な意味合いをここに入れておいたほうがいいのではないかと,そんな感じがいたしております。

高階部会長 創造活動ということは当然入ってくるのだと思います。それから,公的な役所の役割については,役所が全部仕切るというのは具合が悪い。創造活動までをですね。という意味合いにおいてサポートという形をとっているかと思いますが,サポートというのが弱ければ,どこまでどういう形とするか。例えば,先ほどの資料整理のようなこと,あるいは情報活動のようなことは,役所に積極的に関わっていただくべきだと思います。しかし,個々の作品の中身までいろいろ指導はしていただかなくてももちろんいいわけですから,その役割をはっきりさせていただけるならば,ぜひ入れていただいたらよろしいかと思います。

川本委員 企業メセナのことが出ていましたけれども,公立文化施設と民間企業というのは,意外とコミュニケーションがないかと思います。芸術家に対するメセナに加えて,公立のいろんな県,市町村立の,そういった施設等に対するメセナも将来あり得るように,何か,マッチメーカーじゃないですが。

高階部会長 情報の流通とマッチメーカーの問題ですね。

川本委員 あと,私どもなどが自主事業を行うときに,銀行等にお金をもらいにいこうと言うのですが,役所へ帰ると明治時代来の官員さんだからでしょうか,県から来ている職員は行こうとしません。でも,これからはそれこそ何か公立の施設と企業等とのその面での話し合いのようなものがあっていいかと思います。

高階部会長 それはもう非常に大きい課題ですね。
 いろいろ問題が新しく出てまいりましたので,では次回のこれからの日程を,ご説明いただきますが,今日ご指摘いただいたことについては,特に原案作成チームでは,十分にもんでいただき,大変だと思いますが次回にお出しいただく。作成チームにはもう少し,汗をかいていただくことがあろうかと思いますが,最後の重要な段階ですので,お願いしたいと思います。
 それでは,事務局のほうから日程について。

吉田政策課長 次回は,12月8日水曜日,14時から16時を予定しております。それまでの間,提言案作成チームで数度のミーティングを開きまして,提言案を作成させていただくことにいたします。

高階部会長 これで,議事を終了したいと思います。
 それでは,どうもありがとうございました。
午後0時5分閉会


(文化庁長官官房政策課)

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