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文化政策部会(第11回)議事録

1.日時: 平成16年10月7日(木曜日) 10時〜12時12分

2.場所: 東京會舘本館11階 シルバールーム

3. 出席者:
(委員) 高階委員,津田委員,富澤委員,熊倉委員,佐藤委員,都築委員,根木委員,山野委員,米屋委員,惠委員,吉本委員
(事務局) 河合文化庁長官,加茂川文化庁次長,森口文化庁審議官,寺脇文化部長,吉田政策課長,他

4. 議題:
(1) 平成17年度文化庁概算要求の概要について
(2) 今後の検討課題について
(3) その他

5. 議事:
高階部会長 皆さん,おはようございます。ただいまから文化審議会文化政策部会第11回を開催いたします。本日はご多忙のところ,ご出席いただきましてありがとうございます。
 それでは議事に入りますが,まず事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

吉田政策課長 お手元にお配りさせていただいております資料でございますが,まず第11回の議事日程。その後に資料1といたしまして,前回第10回の議事録でございます。
 それから,資料2が平成17年度の文化庁予算の概要に関する資料でございます。
 それから資料3が,文化政策部会におけるこれまでの主な意見を集約したものでございます。
 それから資料4が,地域文化振興のための方策に関する主な視点ということをまとめたものでございます。それに加えまして参考資料として,最近冊子にいたしましたが,平成13年度の「地方における文化行政の状況について」という冊子がございます。
 それから吉本委員から,この10月23,24日に札幌で行われます第2回全国アートNPOフォーラムの資料をお配りいただいております。
 以上でございます。ご確認いただければと思います。

高階部会長 ありがとうございます。
 吉本委員,何かつけ加えることございますか。

吉本委員 前回の議論の最後に紹介したと思いますが,チラシができましたので,ご参考までにということでございます。

高階部会長 ありがとうございます。
 それでは,資料1,前回第10回の議事録案につきましては,委員の皆様にご確認いただき,ご意見がございましたら,1週間以内,10月14日までに事務局にご連絡ということでお願いいたしたいと思います。
 本日は,まず資料2,平成17年度文化庁予算の概算要求の概要について,事務局からご説明お願いします。

吉田政策課長 前回,1枚だけの概要要求の内容の資料をお配りし,説明は省略させていただいておりました。今回改めまして,特に地域文化振興に関連いたしますものを主にご紹介申し上げたいと思います。
 最初のページをごらんいただきますと,これは全体像でございます。文化庁予算,前年度予算額と書いてございますが,16年度は1,016億円でございます。17年度におきまして1,132億円という形で,現在,概算要求をさせていただいているところでございまして,116億円の増要求という形にしております。
 このほか,文部科学本省の方に計上されております予算でございますが,地域教育力再生プランということの中に文化体験プログラム支援事業という,従来,文化庁の方の予算に計上されておりました事業も含まれておりまして,この関連も8億5,000万ほどの要求をしているところでございます。
 主な内容でございますが,3本柱になっております。まず1つ目の柱は,文化芸術立国プロジェクトの推進ということで,17年度に向けまして257億円余の予算を要求しております。
 それから2つ目の柱,文化財の次世代への継承と国際協力の推進ということで,344億円程度の要求をしております。
 それから,3つ目の柱は文化芸術振興のための文化拠点の充実ということで,これは国立新美術館などの整備などがございますが,その関連で445億円程度の要求をしているという状況でございます。
 その後の資料は,今申し上げたことを少し理念的に絵にしたものでございます。始めに横長の資料がございます。これが地域文化振興に関する施策や予算などを整理した表でございます。この関連の個々の事業説明につきましては,6月にこの議論を始めましたときに,関連資料を配付させていただいております。お手元の資料集の第8回というところに個々の説明はございますので,継続事業については省略させていただきますが,17年度に新規で要求をしております公立文化施設の活性化による地域文化力の発信・交流の推進,それから重要文化的景観等の保存活用につきましては,改めて資料を配付させていただいております。
 まず,横長の一覧表をごらんいただきたいと存じます。柱といたしましては,「芸術拠点形成事業」ということで,文化会館や劇場あるいは美術館,博物館などが行います自主企画制作公演などに対する支援を行うものでございます。右側の方に対象機関等もご参考までにつけさせていただいております。
 それから,2つ目は「映画」の関係でございまして,地域において企画制作される作品の制作支援というものも行っております。
 それからその下は,しばらく子ども関係でございますけれども,本物の舞台芸術に触れる機会の確保のための予算でございます。それから伝統文化こども教室事業,さらに学校の文化活動の推進ということで,芸術家を派遣したり,あるいは高校総合文化祭の関連の施策をおこなったりしております。そして,「文化芸術による創造のまち支援事業」ということで,これは地域文化リーダーの育成ですとか,芸術文化団体の育成ですとか,そういったことを主にしたものでございます。
 それから,その次が公立文化施設,新規事業でございますけれども,これは後ほどまたご説明いたします。それから,国民文化祭でございます。そして文化ボランティア推進モデル事業というものもございます。それから,ふるさと文化再興事業というものも挙がってございます。
 次のページをごらんいただきますと,これは芸術文化振興基金によります支援ということでございますが,地域の文化振興を目的としたものもございます。それから,文化体験プログラム支援事業。これは先ほど申し上げましたが,17年度は文部科学省本省の方に地域教育力再生プランの一部として含まれているということでございます。
 その下は文化財の関係でございまして,まず史跡等の保存整備活用等の事業がございます。この中に,先ほど少々触れましたが,重要文化的景観保護推進事業が新規事業として組まれております。その下は文化財建造物保存修理等に関する事業でございます。それからその下は,伝統的建造物群,いわゆる伝統的な集落や町並みの保存に関する事業でございます。それから,重要文化財等保存活用事業ということで,国宝・重要文化財の保存に関するものでございます。
 一番下は,民俗文化財に関する伝承・活用事業といったものを,文化庁では地域文化振興との関連で実施する予定であるということでございます。
 さて,今回新規事業として立てたものとしましては,まず公立文化施設の活性化による地域文化力の発信・交流の推進というものがございます。これは,これまで芸術情報プラザ事業という形で,公立文化施設協会を中心に実施しておりました事業を組みかえて,新規の事業にしたものでございます。6つの柱がございます。そのうち,(3)から(6)までのものは,これまでの芸術情報プラザ事業の中でも取り組んでおりました事業でございます。全く新規というのは,(1)でございまして,地域連携型自主企画・制作事業への支援というものでございます。
 また(2)は,これまで新進芸術家の公演事業として実施しておりまましたものの中から,地域出身の新進芸術家の行うものを切り出して,こちらの事業に組み込んだものということでございます。
 この考え方は,その下にもう1枚,三角形になった図がございますけれども,情報流通と人材育成と,創造活動と,そういった幾つかの切り口を相互の連携を生かしながら,公立文化施設の活性化を図っていく必要があろうということでございます。特に,これまでの芸術情報プラザ事業の中では,少し不十分でございました創造活動に対する支援部分を,今回17年度予算要求の中で,新たに新規項目として取り上げているということでございます。
 それから,もう1枚,重要文化的景観等の保存活用でございます。これは,先の通常国会で文化財保護法の一部が改正されまして,重要文化的景観あるいは民俗文化財の中に民族技術を追加する,あるいは登録文化財の範囲を拡大するというような改正が行われました。これらは,いずれも地域文化振興と密接なかかわりがございますが,関連でその改正事項にかかわる保存あるいは活用に関する事業を立てたものでございます。
 以上でございます。

高階部会長 ありがとうございました。
 ただいまのご説明について何かご質問ございますでしょうか。どうぞ,富澤委員。

富澤委員 今度の新規事業の中で,重要文化的景観等の保存活用というのが挙げられているところは大変いいことだと私も思いますが,6億円ということで特に場所を想定しているということではないのですね。

吉田政策課長 もちろん法改正に至るまでに,こういった文化的景観につきましては,いろいろと調査を行っております。それを具体に保護法による選定を行うためには,さらに専門的な調査を行い,加えて文化審議会文化財分科会における審議なども経た上で決定していく必要がございます。また,文化的景観の場合には地域における取り組みが,まず最初になければなりませんので,そういった地方での文化的景観に対する取り組みの様子を眺めながら進めて参ることになります。従いまして,現段階で具体的にここが,というようなことは申し上げられない状況でございます。

富澤委員 こういう事業は,多分環境省でも進めているのではないかと思います。この間,飛行機の中で小池環境大臣と隣り合わせたときに,大臣もそのようなことを仰っていました。ユネスコの文化遺産登録など,環境省もそういうことで進めているということでしたが,その辺の振り分けというか,協調関係というのは,どのようになっているのでしょうか。

吉田政策課長 この文化的景観につきましては,さきの通常国会で,同時期に景観法と呼ばれる景観の保護に関する一般的な法律ができたわけでございます。この景観法は国土交通省,農林水産省そして環境省,三省が共管をしている法律でございます。今回,文化財保護法による重要文化的景観というのは,景観法の中で定められております景観のための地域指定のようなところがございますが,そこを1つの基盤にして,その中から非常に文化的価値の高いものをピックアップしていく仕組みになっております。従いまして,土台には景観法というものが一つございまして,その上にこれが乗ってくるという形になりますので,先ほど申し上げました三つの省とは相互に連携しながら景観の保護を図っていく仕組みにしております。

富澤委員 ありがとうございました。

高階部会長 ほかに何かございますでしょうか。
 特にございませんようでしたら,それでは,次に資料3,文化政策部会におけるこれまでの主な意見と,ちょうど関係がございます資料4,地域文化振興のための方策に関する主な論点について事務局からご説明をお願いします。

吉田政策課長 まず,資料3をごらんいただきたいと存じます。6月からこれまでヒアリングも含めまして3回,このテーマについてご議論いただいているわけでございます。ヒアリングは一応前回で終わらせていただきましたが,これから来年1月を1つの目途にまとめを作成してはどうかと思っております。その意味で,今回から少し本格的な議論をしていただくために,これまで3回の部会でお出しいただきました意見を整理したものでございます。
 まず,1は「地域文化の基本理念」ということで,理念をもう少し述べているところでございます。ここのところは,委員各位よくご承知の部分もございますので簡単に紹介させていただきます。まず,地域文化振興の必要性ということについて幾つかご意見がございました。また,地域文化のとらえ方ということにつきましても,ここでは幾つかの切り口をご提議いただいたと考えております。
 それから,2の「地域文化振興の課題」では,まず文化活動の場の問題について精査していただきましたのが(1)。始めに創造活動の展開に関する支援と活動の場の確保の問題,それから地域の文化団体にも活動の拠点となる施設が必要であるという問題。その次の公立文化会館につきましては,ハードとソフトの話になりますが,建設だけではなく,いわゆるソフトの整備が重要であるという視点。その次には,利用者に目を向けるような職員の意識改革の問題,そして公立文化会館の運営に関する評価の問題,さらには指定管理者制度とのかかわりについて,これまで意見がありました。
 それから,(2)は人材の育成でございますが,アートマネジメントの知識経験を有する人の問題,それから文化と行政システムの両方に精通した専門家といったものが地域にも必要ではないかというご指摘。そして,学芸員の資質として,地域の人材を発掘してコーディネートしていく能力が必要ではないかというご指摘。
 それから,これは,ヒアリング団体の方からでしたが,地域学芸員という形で地域住民を巻き込んでいく仕組みといったもののご紹介もございました。
 また(3)のNPO等の課題といたしましては,NPOの事業に関して現場も含めて評価できるシステムの確立の問題がございました。
 それから,その次は各地のNPOを結ぶものとして,共通の目標を持ち,意見交換して共通問題を認識していくことが重要である,というご指摘もございました。
 さらには,運営財源や人材の問題などもご指摘がございました。
 その次に(4)としては,文化活動への子どもの参加が重要であるという意見。
 (5)のその他の項目としましては,コストの問題,あるいは市町村合併の影響,それから教員との関係などについてのご指摘がございました。
 その次のページをご覧いただきますと,3としまして「地域文化の振興のための具体的施策」の(1)文化活動への支援ということで,まず最初に地域のネットワークを活用して,いろいろな分野の優れた芸術文化を巡回公演できる仕組みの推進について。次は,広域的に多様な文化の展開を進める上で,活動分野の調整を始め,文化団体等の相互の話し合いができるような仕組みをつくるべきこと。
 それから,その次が,全国的に活躍するアドバイザーとの継続的な関係の維持,あるいは全国的な文化団体からの指導,そういった全国を視野に入れた交流と情報交換というものが有効ではないかということ。
 その次でございますが,地域外の人にも見てもらって,外部からの刺激を受けた方がよいというご指摘。そして,地域の住民が行政,学校,企業,そういったものをつないでいくNPOを育てていくことが大切ではないか,というご指摘などがございました。
 次に(2)の基盤の整備でございますが,ここは文化施設とそれ以外の施設の連携。そして市町村レベルを超えた少し広い地域における文化活動のあり方の検討をしてみてはどうか。それから,遊休施設や人材の提供というようなものも考えるべきではないかということでございます。
 それから,(3)は,文化を大切にする気運づくりということで,伝統文化の維持に貢献した企業の表彰の話,あるいは優れたプロデューサーの発掘,支援ということで,それに対する顕彰の方策について。それから,後継者問題ということで,伝統文化をいろいろな人に理解してもらい,地域外からも支援してくれる応援団をつくってはどうか。さらに,天然記念物の保存といったものも,地域づくりの上で有効であるといったコメントもございました。
 その次のページをごらんいただきますと,(4)として文化活動への子どもの参加ということで,地域にある文化施設をどのように子どもに活用してもらうか考えるべきではないか。あるいは,コミュニティでは,伝統芸能等の文化活動や,学区や世代を超えた交流が,コミュニティの一体感を醸成するということで,そういった点を重視すべきではないかということ。関連で,スポーツ少年団と同じような文化少年団を結成してはどうかといった話が,ヒアリング団体の方からございました。
 それから,4の「地域文化の担い手の育成」ということでございますが,社会教育や生涯学習に携わる方について,地域の文化活動の支援といったものが考えられないかとか,あるいは自治体職員の継続的な文化に対するかかわりといったものをどうするか。さらに,財団法人の問題でございますけれども,公務員と嘱託の専任職員の混在の問題で,公務員はある一定の年限で定期的に異動するということがございますので,それにかかわる問題をどう解決していくかということ。さらに地域にある大学との連携の問題,そして文化ボランティアについて,その支援方策の工夫といったこともございました。
 そして,5の「地域文化の発信」は,(1)の地域文化の振興方策に関する事例紹介ということで,事例を発掘して全国へ紹介をするということと,全国的なネットワークの構築という点についてのご意見。
 (2)としまして国際交流でございますが,地方自治体の国際交流は活発であるので,文化の発信として国際交流を活用すべきであるという,ご意見もございました。
 こういった,これまでのご意見に対する,私どもの整理の仕方につきましてはいろいろとご意見があろうかと思いますが,これらを踏まえまして,本日の議論をしていただくためのたたき台という形でつくりましたものが,資料4でございます。視点という形でこういった切り口で議論していただいてはどうだろうか,ということでお示ししているものでございます。
 視点1は,「地域文化を振興するために地域の『文化力』をいかに結集するか」という点で,3つほど柱を立てさせていただいております。1つは地域文化振興の基本方針等の策定,よくグランドデザインという言葉で言われることがありますが,こういったものを地域でつくる際に留意すべき点は何かということ。
 それから,その次は民間と行政と,その地域文化の振興にかかわる者の間の連携でございますが,文化活動団体やNPOとの連携をどのように進めるべきか,その際の留意点は何か,そして地域文化振興と申しましても,大きな地域振興,地域づくり,まちづくり,そういったものとの関連も非常に深いわけでございまして,そういった地域振興の関係者,まちづくりや観光等との連携をどのように進めるべきか,またその留意点は何かという点も論点としてあろうかと思います。
 最後の相談体制の整備というのは,地域住民が文化活動を行いたいといった意欲を持っていた場合に,それをうまく引き出せるような相談体制を,地域にどのようにつくっていくかという点を挙げております。
 それから,視点の2でございますが,これは「文化活動を支える人材をいかに育成し,確保するか」という問題でございます。これにつきましても5つほど柱を立てさせていただいております。1つは地域文化活動を活性化するための人材開発というタイトルにさせていただきましたが,地域において文化活動をコーディネートする能力を持った人材をどのように育成するか。また,アートマネジメント担当者の能力を高めるために,どういった研修といいましょうか,資質向上策が望ましいのか。そして,文化行政担当者に期待される役割は何なのか,という点を挙げさせていただいております。
 さらに文化ボランティアの関係でございますが,まずは,地域住民が文化ボランティアに参加しやすい仕組みをいかにつくっていったらいいのか。それから,文化ボランティアの力をより発揮していただくためにはどうしたらいいか,ということを挙げさせていただいております。
 次は,地域住民が文化活動に参加しやすい環境や仕組みの確立ということで,まず,参加意識を高めるための方策,そして地域住民と文化活動団体を結ぶ仕組み,そして,その地域にある企業の持つ人材やノウハウというものを提供してもらうにはどうしたらいいか,というようなことを挙げさせていただいております。
 次は大学等の教育機関との連携でございまして,これは人材の育成という問題,それから大学などの持ちます専門知識や能力を地域文化の振興にどのように活用するか,という2つの視点で書かせていただいております。
 最後は文化行政や公立文化施設における人材の確保ということで,文化に精通した職員をいかに育成・確保するか。また,外部の人材を,こういった行政や文化施設にどのように活用していくか,ということも挙げさせていただいております。
 視点3は,「文化活動を支える拠点・資源をいかに活性化するか」ということで書かせていただいております。文化施設,文化会館や,美術館,博物館等といった文化施設の魅力をどのようにして高めていくか。次にネットワーク化の問題,そして指定管理者制度の問題についても論点として挙げさせていただいております。
 次は文化財の活用について,1つ論点として挙げさせていただいております。
 それから,その次は学校施設や,社会教育施設,公民館等の活用の問題について挙げさせていただいております。
 視点4でございますが,これは「子どもの文化活動への支援をどのように進めるか」ということでございます。これまでもさまざまな支援事業を実施してきたところでございますが,さらにそれを充実するという観点から,多様な本物の芸術体験の推進を進めるためには何をすべきか。それから,地域が子どもの文化活動を支える仕組みをどのように構築していくかということでございます。この中には,恐らく学校などの役割ですとか,あるいは文化団体の役割,そういったものも恐らく議論として出てくるのではないかと予想しております。
 最後のページは,視点5でございます。「文化活動に関する情報収集・発信をどのように進めるか」ということで,地域住民への情報提供の問題,それから,文化活動の関係者や全国に向けての発信の問題,その次は逆に全国の情報をどのように収集するか。最後にマスメディアへのアプローチということでございます。文化関係は,スポーツなどと違い,マスコミなどで比較的取り上げられないということがございますので,もう少しマスコミなどへの取り上げられ方を高めるためには,どういうことが考えられるだろうかということも,1つ挙げさせていただいております。
 最後の視点6は,「文化活動への資金的援助をいかに確保するか」という問題でございます。公的支援の問題,それから民間資金活用の問題,最後は個人による支援ということで,個人からの寄附などをどのように取り込むか,活用するかということを挙げさせていただいております。
 以上でございます。

高階部会長 ありがとうございました。
 これまでのご議論をまとめていただいた視点を出していただきました。今までいろいろヒアリングなどで自由に意見を出していただいて,資料なども拝見してまいりましたが,本日からの議論は,この部会の提言に反映されていくわけです。それぞれ皆様のお知惠を拝借したいと思います。ただいまのご説明への質問も含めて,これから議論をしたいと思いますが,進め方としては今の資料4に基づいて,足りないところはいろいろ仰っていただきますが,6つの視点に分かれておりますので,視点1から6までの順序で,最初に視点1について20分程度,視点2と3について30分,視点4について20分,視点5と6について20分と分けて議論したいと思います。多少時間がずれても構いませんが,この順に進めたいと思います。我々の提言に,このテーマをぜひ入れたいとか,こういう形ではどうかということも含めて,まず視点1について,一番最初のページ,地域文化を振興するために地域の文化力をいかに結集するか,具体的なことでも理念的なことでも結構です。それからまた,ご説明の質問でも構いません。いかかでございましょうか。どなたからでもお願いいたします。――どうぞ,惠委員。

惠委員 1つ目として,地域の文化力ということを地域の方々がまず知ることが重要かなと思います。そのことを,表現するとしたら,地域にある文化資源の評価と,みんなで認識するというような視点が,1に入るとなるとしてはいかがでしょうか。

高階部会長 そうですね,文化資源の問題は大事ですね。

惠委員 2つ目は,地域にある文化的資源と,それから,これを支えてきた文化という,いわゆる体現者や突出的に象徴される資産や環境というポイントだけではなく,実はこれを支えてきた地域の心意気といいますか,そういうものが文化力を支えているのだと思うのです。後ほど“コミュニティ”という言葉も出てまいりますが,そういう視点が地域文化振興の基本方針のベースですということを,改めて書いたらどうかなというご提案をしたいと思います。
 3つ目に,自然環境と歴史的・伝統的資源とのセット,例えば鎌倉のように背景となる自然もあわせて,文化資源としての重要な価値があるということです。私は環境側のトラスト運動などを行っていますので,背景によい舞台があってこそ文化的な活動が生きるという哲学が,どこかに入るといいと考えております。

高階部会長 ありがとうございました。
 『文化力』というのは,長官がいろいろおっしゃってくださっていますが,ここでも括弧でわざわざ囲ってありますので,それが何かということですね。今のように,建物など各種のハードの問題もあるけれど,それだけでなくてソフトであるとか,景観法ができてきましたから自然とのかかわりもあるということです。文化資源というものを含めて,総合的な『文化力』という視点を,あるいは最初に提示するといったことが必要だと思いますね。
 ほかにいかがでしょう。どうぞ,佐藤委員。

佐藤委員 多少理念的なことになるのですが,これまでの主な意見で整理されている形ですと,地域文化というのが,既に完結した1つの固有の形をもったジャンルとして考えられがちなのではないかと思います。しかし,私の専門である演劇の立場で言えば,少なくとも実演技術においては,本来地域文化がすべてなのです。演劇にしても,音楽にしても,舞踊にしてもそれは同様です。つまり地域地域に独自に文化があることが重要なのです。そういう意味では東京一極集中と言われる状態こそが,我が国の文化のある種の後進性をあらわしていると考えてもいいと思います。
 その点において,地域文化は単に地域に寄与するだけではなくて,我が国の文化力の基本的な考え方として,特にこれからは地域地域の文化を開発するという視点が必要だろうと思います。
 その関連で,これまでの意見の方で,地域文化のとらえ方の1項目に,「アマチュアの活動に基づく伝統的な文化とプロフェッショナルな活動に基づいた新しく創造していく文化の二つの側面から見ていくべき」とあるのは,理念的にはやや問題があるのではないかと思います。
 それから,もう一つは,その次の「地域文化の振興には,平均的水準の文化を全国に広めるという<文化格差の是正>と,地域の独自の文化を高める<文化の自律性の確保>」というところについて,これも文言自体に問題はないと思うのですが,平均水準の文化を全国に広めるということよりは,むしろ,創造的な文化をつくり出していくための基盤として地域の文化が必要なのだという面が,強調される必要があるのではないかと思っております。
 今回,せっかく地域文化を取り上げていただくならば,基本理念のところに「地域文化こそが文化力の基礎なのだ」ということを,ぜひ大きく謳っていただけばありがたいと思います。

高階部会長 大変重要だと思いますね。資料3の主な意見の地域文化のとらえ方のところで,確かにおっしゃるように,「格差是正」とか,そういうことの背後には何となく東京の方が上だよということがありそうだというご指摘です。そうではなくて,「地域こそが日本の文化」ということを理念的にはっきりと出していくことが重要だと思います。
 ほかにいかがでしょう。どうぞ,根木委員。

根木委員 少し理念的なことにかかわるかもしれません。今,お二人の方が申されたことと,ちょうど裏腹の関係にあろうかと思いますが,基本的には地域住民が求めているのは,快適な生活環境を創出してほしいということではなかろうかと思います。これは結局,文化に裏打ちされた社会をつくってほしいというニーズではなかろうか。その際に,当然ながらハードとソフトの両面の調和と同時充足ということが必要になってくる。ハード面では環境とか,風景とか,景観という類のもの,これがバックグラウンドにある。ソフト面では地域住民の生活や行動といった側面ではなかろうか。そして,その間の連結をするのが文化であり,文化が両者をつなぐ一つのキー概念になってくるのではなかろうか。つまり,ハード,ソフトを統括する一つの概念として,文化というものがあるのではなかろうか。こういったことを一応ベースに置いて考えるべきではないかということが一つあります。
 もう一つは,文化の社会的財産ということが基本方針に謳われておりますし,そういったことを前提とした文化の果たす役割ということについても背景として一応きちんと押さえておく必要があるのではなかろうかということ。
 また,やや別の観点からなのですが,現代社会は国際化と情報化が進展している。そういった中でそれぞれの地域においては,競争の時代といいますか,地域間の個性を競い合う時代が到来しているのではなかろうか。そういった中で,地域住民の方々も,ある程度国際的,普遍的な文化の受容と享受といったことへの要求が強いだろうと思います。他方では,文化の画一化ということに対する地域の独自性のある文化づくりが必要となってきているのではなかろうか。このことは,文化の多様性ということにもつながってくることであろうと思います。そういった中で,視点の中にも書かれていますが,地域の文化を生かした魅力ある都市づくりということが非常に大きな課題になってきていると思います。
 そしてまた,文化芸術と産業や観光との関連。これも背景として押さえていく必要があるのではなかろうか。また,そういった中で,国際間あるいは地域間の文化の相互交流,さらには相互理解の必要性。これは情報の交流発信ということともつながってこようかと思いますし,その1つの手段としてITを活用したいろいろな方策も,当然その延長線上に浮かんでくると思います。このような事項も,理念的な側面ということで,バックグラウンドとして考えていただければいいのではなかろうかと思います。
 具体的な論点としてあがっている基本方針等の策定で留意すべき点はどうかということについてですが,恐らく,これから各自治体におかれては,文化振興条例などを制定していかれるのではなかろうかと思います。その条例のもとに基本方針といった文化計画が,行政計画として策定される。そういった構図になるのではなかろうかと思いますが,文化振興条例の中に,本来盛り込まれるべき事柄と申しますと,四つぐらいあると思います。
 第一は基本理念をきちんと明示するということ。第二は,でき得る限り財政的な支援措置の裏づけを規定すること。そして第三が,文化計画などの策定ということに関する根拠を置くこと。そして第四が,これは審議会等を通じてということになろうかと思いますが,そういう場面に住民が政策決定に参加できるような仕組みを構築していくこと。この四つであります。
 そうしますと,基本方針等の中で留意すべき点は,今申しました文化計画等の策定という部分を除いた三つの点をある程度押さえた上で,行政計画としての基本方針を策定される必要があるのではなかろうかと思われます。

高階部会長 ありがとうございました。
 特に我々の提言の場合には,基本理念をまず押さえることが最初ですが,今のお話ですと,民間と行政との連携とか,住民との連携を具体的にどうしていくかということも,ある程度踏み込んで,特に住民参加,いろいろな方式があると思いますが,お役所と文化民間団体NPOとの関連というのは,どうあったらいいのか。あんまりお役所の方の押しつけでは困る。しかし,それなりの支援体制が必要で,それから住民参加の場合も,今の根木委員のように,審議会ということもできますし,最初からパブリック・インボルブメント方式をとるとか,いろいろな実例もあるでしょう。それぞれの地域で,一体どうしたらいいかということを考えておられると思うのですが,そのときにヒントになるようなことを,この提言の中に盛り込めればと思っております。

高階部会長 ほかにいかがでしょう。吉本委員。

吉本委員 これまで地域文化というものが何を指すのかということが,余り議論されないまま,漠然と来てしまったような気がします。ただ,地域文化とはこういうものだという定義をしようとすると,それはそれでまた大変なことになると思います。その場合には,地域文化というのは,できるだけ広くとらえた方がいいと思っております。ただ,最初の方で,なぜ地域文化の振興が必要なのかというあたりのことも出せるといいかなと思うのです。
 そのときに,提言の後ろの方に,子どもの話が出てきていますけれども,文化力というのが,地域にとって,例えば教育とか,福祉とか,いわゆる狭い意味での文化というところ以外に非常に効果があるのだということを強く打ち出したらどうかなと思います。とりわけ,今,少子高齢化が進んでいますから,数の少ない子どもたちが,いかに健全に育つかということが重要で,そこに文化の力が活きてくると思うのです。
 また,増え続ける高齢者の方々に,極端に言えば,お亡くなりになる直前まで元気でいていただくためにどうすればいいかということもあると思います。
 子どもの話は後で出てくると思うのですが,例えば高齢者については,先日富良野に行く機会があって,そこで富良野演劇工房のお話を聞いたのですが,そこは演劇リハビリテーション事業ということで,高齢者向けの演劇のワークショップをいろいろとおやりになっている。そこでは,様々なことが起こっているらしいのですね。例えばお年寄りの方がトンカチを持った瞬間に,昔の記憶がよみがえったとか,普段はすごくおとなしくて全然しゃべらないようなお年寄りの方が,あるお芝居を見終わった瞬間,「ああ,おもしろかった」と言って元気に帰って行かれたとか。そういう具合に,ほかの政策ではできないような効果が文化にはあると思いますので,繰り返しになりますが,なぜ地域文化の振興が必要かといったときに,できるだけ広い,文化以外の領域にも文化力の効果があるのだということを,提言の頭の方で謳うのがいいと思います。

高階部会長 最初の惠委員の「文化力とは何か」というのと,吉本委員の「なぜ地域文化が必要か」ということ,そのことをわかりやすく説明する。特に最初の理念的なことは必要だろうと思います。
 ほかにはいかがでしょう。特に地域文化について,これからそれぞれ振興条例などが出てくると思うのですが,視点としてもう一つ,「地域」というのをどういうふうにとらえればいいのか,という問題があります。条例をつくるとすれば,その単位は各自治体ということになるのかもしれませんが,さっき佐藤さんがおっしゃったように,町ごとに,そこの伝統的なものがあるかもしれないし,県なりに何かがあるかもしれないし,特に民間との連携ということを考えると,もう少し広い地域もあるのかもしれません。いずれ市町村合併が進んでいきますから,自治体の枠も変化しますが,それぞれの自治体の条例だと,どうしてもやや硬直した形になってしまうのではないかということがあります。
 県なら県ということもあるのですが,多分,どこまで考えるか,その辺の視点も,どういう形で入れていくかです。特に民間では,行政の枠を超えたNPOなどもあるわけで,行政エリアにとらわれずに互いにうまく連携がとれる方策というのも,必要ではないでしょうか。その意味で「地域」といったときに,みんな頭の中で,何を,どこまで考えるかということが大切だと思います。

高階部会長 はい,熊倉委員。

熊倉委員 文化の重要性あるいは役割ということにおいて,既にもう幾つかのご意見が出たことと同じなのですが,2点ほど思うことがあります。まず始めに,文化の多様性の確保というふうに言われるのは結構ですが,「地域文化」といったときには,ともすると地域の中に閉じこもりがちになってしまうことが懸念されます。ことしの概算要求に対する先ほどのご説明で,地域の,例えば新進芸術家の支援という視点,大変すばらしいと思うのですが,1点,「地域出身の新進芸術家」というところで,「地域出身」という限定が若干気になりました。地域に固有ものが大切なのはもちろんですが,それまでその地域で見たことも聞いたこともないようなものを,呼んでくることも非常に重要なのではないかと思います。その意味で,異なる価値観や,異なる文化への理解力を高めて,この情報化社会におけるコミュニケーション能力のベースを養うべきであるという点も,文化力の重要なポイントとして言及いただけるとありがたいと思います。
 それからもう一つは,地域文化振興の基本方針等の策定において,「文化政策」というものが,これから非常に重要になってくることを,ぜひどこかで明言したいと思っております。政策策定にかかわって,政策課長がおっしゃっているように,民意をどういうふうにくんでいくのか。市民のニーズを,これまでの審議会方式だけでなく,もっと恒常的に社会科学的な方法も駆使して,的確にくみ取っていくという面からも,文化政策の策定に高い専門性や,予算措置に直結したスキームの展開を実現していく力をもつことも必要だと考えます。
 更に言えば,以上のことを踏まえ,総花的な理念だけを基本的な方針として述べるのではなくて,具体的で独自性のあるアクションプランを打ち出していかないと,看板倒れになってしまうということがあると思います。

高階部会長 ありがとうございます。
 はい,どうぞ,惠委員。

惠委員 先ほどの地域の話で,基本方針等における言葉として「地域」というのが,もし自治体というくくりをイメージしてしまうのであれば,例えば「文化圏」ですとか,何か別のエリアのくくりを示す言い回しを括弧に入れて追加する必要があるのではないかと思います。
 なぜそう思ったかと申しますと,私がかかわっている,あるひとつの河川の流域でのNPO活動等について言えば,それは自治体の領域や省庁間の枠を超えるエリアの広がりを通して展開していきます。そのときに,「圏域」ですとか,そういう言い回しをすると,くくりの言葉として,割とすんなりいくのかなということがありましたので。

高階部会長 それも1つ考えましょう。――津田委員,どうぞ。

津田委員 地域文化という場合,確かに一口に「地域」といっても,行政単位でいっても5,000人ぐらいの村から300万ぐらいの大都市もあるし,非常に難しいですね。それでも,地域文化の厚みというのが日本文化の基本になるという理念は,どのような規模の地域という場合でも,徹底した方がいいと思います。文化庁が文化行政としてその振興を図ろうとする場合に,例えば大分県でやったような一村一品運動のように,どんな小さい一地域であっても,何か一つの特徴のある文化,この場合造形芸術とか,お祭りとか,いろいろなものがあると思いますが,そうしたものをしっかりと見極めて捉えていくことが必要かと思います。例えば,福井県の丸岡で,日本一短い手紙ということで,「おせん泣かすな馬肥やせ」というものがあります。丸岡というのは本当に田舎ですけれども,そういう意味での文化力というのを,今持っているわけです。このように地域での振興というのは工夫次第でできるのであるということ,そのことを伝えられる指針になるようなものが要ると思います。
 今,地方文化で一番困っているのは,支え手になる住民の無関心であると思います。例えば諏訪市であれば,特にニューカマーと言われる,そこにある社宅等に入居してきたような人は,あの御柱祭りであっても全くといっていいほど参加しないと聞きます。そういう形で地方の文化がやせ細っているというのは,この前もヒアリングでここへ来られた方がおっしゃっていたところです。けれども,そのような地方文化,地域文化というものこそが,結局は住民の幸せに繋がるということを,いかに説得力ある形で打ち出せるかが非常に大事かと思います。
 それからもう一つ,少々気になるのは,「地方の文化団体の活動拠点となる施設が必要だ」というような文章が出てくるところです。これについては,確信をもっては申せませんが,基本的には,文化施設は十分に利用されることなく,むしろ余っているのではないでしょうか。むしろこれからは「ハード」よりも,「ソフト」が地方文化振興にとって非常に重大な決め手になる,そういう時代が来ているということをアピールすべきではないでしょうか。
 今後,少子化によって子どもがさらに減っていきますと,全国で小学校や中学校がたくさん余って参ります。その結果,それらを文化施設に転用しなければならないような時点というのが予想できるわけです。そうした中で,「拠点となる施設が必要」という文言を,地方の行政の首長がご覧になって,やはり施設をつくらねばなどと思われたら,それは違うということです。ですから,いっそ「ハード」については,今は既に整っている。むしろ「ソフト」としての利用を考えろということを謳う必要があると思います。特に地方にお願いしたいのは,お金は出しても口は出すなということです。地域文化の担い手というのは,郷土愛に燃えた,その土地の人が中心になっていくべきなのですが,今の現実を見ると,そのような人に対しても,お金は出さないけれど口は出すという形の地域助成が多いのではないでしょうか。そうではなく,あくまでも地方行政には,とにかくお金は出して口は出さない姿勢を堅持して地域文化を支援しなさいと,何かマニュアルとは言わないまでも,率直にわかりやすい形で,今後の地方の文化行政に対して反映されるような提言を打ち出していくのが非常に重大である。そのような時期にあるのではないかと思います。
 以上です。

高階部会長 ありがとうございました。これは民間と行政との連携の問題でもあって,我々の提言は,なるべく多くの人に読んでいただきたい。特に実際に地方行政担当の方に見ていただく際に,熊倉委員がおっしゃったように,具体的に何かやろうという人のヒントにもなるような形にしたいのです。単に文章で,お役所的に出して終わりではなく,むしろ必要に応じて後からでもパンフレット的にしてみんなで読めるスタイルのもの。そんな中にあっては,なるほどこういうことができるのだ,とわかるような具体例も欲しいと思います。理念的には今のそれぞれ皆さんがおっしゃったことでいえば,特に行政との関連ですと,多様性の問題が非常に大きいと思います。美術などでも,ある県の美術館が,行政のくくりを越えた,そこの地域ということで隣の県と一緒に展覧会をやろうとした場合に,特に若い人の作品を公募して他県の若い人に賞を出そうとする。すると,なぜ隣の県の人に出すのだという意見が出て,話がまとまらなくなる。結果,一緒にやれなくなるという問題が実際あるのです。そして多様性の観点から,そういうことが大事な問題なのだという意識を持たせることが求められているわけです。もっと広くいえば,地方文化の多様性を認めていくことが,国際的な活動にも必要なのだということの重要性を説く必要性があると思います。
 その場合に,熊倉さんがおっしゃったコミュニケーションというものもまさに力であって,むしろ文化はコミュニケーションだという議論もあるくらいですから,そういう観点から文化資源もあるし人材もあるし,という問題も含めて,理念の中で説いていったらいいと思います。
 そこで人材の問題や,その他個々の問題に移りたいと思いますので,視点1の理念的なことは,後に事務局でまとめていただきたいと思います。
 次の視点2,人材。まさに人をどうするかということです。それから,視点の3として,今までも出てきましたハードの問題。文化施設,今おっしゃったように公的な文化施設,まさに公民館とか学校の利用とかについても,もう十分に整っているのかということ。あるいは,どういう形で使うのかというようなことも含めて伺いたいと思います。人材育成をいかに確保するか,拠点・資源をいかに活性化するかについて,ご意見,あるいは具体的な提案をお願いしたいと思います。
 それでは,どうぞ佐藤委員。

佐藤委員 この人材育成のところで1つ問題点は,ここに挙げられているところによれば,文化に対するどちらかというとアドミニストレーターを中心に考えているわけですけれども,その中にあって文化活動の実際的な担い手の育成ということが,実はすごく重要だと思うのです。特に地域文化というのは定住的なものと,外から刺激を与える移動的な部分があると思うのですが,移動的な部分というのは,専門家を全国に還流させるというシステムをつくらないとだめだと思うのです。地域で育った地元出身者だけがその地域の文化を活性化させるのではなくて,外から専門知識を持ったレベルの高い芸術家が入ってくることによって,その地域の文化的なものが発見されたり,育成されたりする。これは地域の問題でも,前から議論があるように,関西圏であるとか東北圏だとか,やや広域的な拠点が担うべき仕事だと思います。ただし,この場合の地域というのは,必ずしも自治体にとらわれる必要はありません。特に人材育成の専門家の育成,プロフェッショナルな表現者の育成については,むしろ文化的な領域の拠点としての文化会館や大学が中心になって,例えば社会教育施設の借料の問題であるとか細々した点までを包括した,人材育成のプログラムの作成と運営を担うべきではないかと思います。
 もう一つ,人材に関して欠けているのは,先ほどから出ている地域の意欲をどうやって掘り起こしていくかということです。つまり文化を受益する意欲のようなものをつくるために,どういう事業があるといいのかということです。実はこれは,後からそれを支えていく経済的な基盤をつくることにも繋がっていく問題なので,ここのところの方策をこの部会の中で一度詰めてみる必要があると思うのです。理念的にはみんなわかっているのだけれども,先ほどから出ているように,自分たちが生活していて,その中で文化というものが本当に欲しいというような意欲を引き出していくという事業やプログラムについては,考えてみる必要があるのではないかと思います。

高階部会長 ありがとうございました。
 どうぞ,米屋委員。

米屋委員 一番最初の見出しが,「地域文化活動を活性化するための人材開発」となっているのですが,「開発」というところに,少々引っかかっております。というのも,実はもう人材はあらゆるところにいらっしゃるからです。先ほどの視点1の民間との連携というところや,行政のスタンスというところにかかわっていくのかもしれませんが,そうして専門的な能力だとか地域の情報を既にたくさん持っているような人たちを,どう評価して,文化振興を進めるべきポジションにどう位置づけていくかということが大事であると思います。また,音楽の専門家,演劇の専門家というところは見て参りましたが,文化政策の専門性という視点では今まで余り捉えられてこなかったのではないかと思います。芸術ジャンルの専門家ではなくて,地域と文化を結ぶ役割の専門性を持つ方を,どう評価して,それを地域文化振興の仕組みの中に位置づけるかということが問われているのだと思います。

高階部会長 ありがとうございます。むしろ人と人との連携や,文化振興の制度運用やということですね。確かに「人材開発」というのは何となく上から意向を広めていくような感じがある。
 どうぞ,山野委員。

山野委員 人材はもういる,といわれるのですが,いない分野もあります。例えば評論家というのは地方にいないのです。

高階部会長 そうですね。それは大きい。

山野委員 評論というのは,世界の動向に通じていて,自分の足元にあるものを導けるかという,ここで言えば世界と地域を結びつける役割を果たすのではないかと思います。例えば東京まで地方から出てきて,東京でいろいろなことをやっているのを見ていて,改めて自分のところを見て「これはやっぱりいいよ」というと説得力があると思うのですが,その土地にいるだけでは,本当にいいのかどうかというのはなかなか言えないわけです。批評家,評論家というのは大体が貧乏ですから東京まで行かれないし,見られない。しかも地方の評論家の知名度はありませんから,東京の劇場に入れてくれないとか,いろいろな問題があるのです。その辺で評論の分野において,もう少し何か良い方策を考えられないかなと思います。

高階部会長 なるほど,それは非常に大事ですね。美術の場合も,国際美術評論家連盟というのがあって,そこのメンバーのカードを提示すると,世界中どこの美術館でも入れてくれるのですが,日本だけはだめなのです。日本の場合にはお役所がそれぞれで,もしそういう大事な人なら,前もって名簿を出してくれれば招待券を送るといいますが,一々世界中に対してそうしたことができるわけはないので,カード1枚で入場入館を認められるようなことができればいいかもしれません。

山野委員 日本より海外へ行った方が,かえって劇場に入れてもらいやすいです。

高階部会長 割にそうです。
 惠委員,どうぞ。

惠委員 今のお話を,提言の中に説得力を持たせて書くためには,地域文化活動を活性化するための職能や人材の体系化をした上で,この分野は十分いらっしゃるとか,この分野は足りないとか,そういう研究的な視点できちんと捉えていく必要があると思います。

高階部会長 そうですね。いいご指摘ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょう。どうぞ,吉本委員,根木委員,富澤委員の順序で。

吉本委員 人材育成の問題は確かにすごく大切なことだと思います。しかし,一番のポイントは働く場所をどうやってつくるかということの方がむしろ大切で,今もあちこちの大学でアートマネジメントを勉強した卒業生が出ていますけれども,働こうといっても実際場所がないということが一番大きい問題だと思います。一つは,文化会館が指定管理者制度になりましたので,それで民間等が入れば,そういうところに活躍できる場所が,ひょっとしたらふえるかもしれないと思います。ですが現状では,本当にこの分野の仕事をやりたくてやりたくて仕方がない,情熱もあるし能力もある,という若い人たちはNPOをとりあえずつくる。つくってはみたものの,それで生活できるわけはない。だけど何とか頑張っている。そういうことがあるのですね。だから,働ける場所をつくっていく。育成するというよりも,育っていけるような土壌をどうつくるかということが,一番大切なような気がします。具体策で何があるかと言われると,非常に難しいのですが,そういうこともここに盛り込まれたらいいと思います。

高階部会長 ありがとうございます。
 根木委員,どうぞ。

根木委員 確かに,あちこちの大学でアートマネジメントの勉強をした学生が大分ふえつつあるのですが,残念ながら働く場所が余りないということで,結局は公務員試験を受けて,一旦役所に入った上でという,迂回ルートをとらざるを得ないことになっています。したがって,その辺に構造的な変革をしなければならないと思います。
 それからもう一つ,そういう専門性を大学で勉強した人に対して,あるいはもう既にそのような専門性を身につけていらっしゃる方々に対して,民間ベース乃至,大学や関係機関の連合体で,何らかの資格制度をつくって,それを付与すれば,専門性を高めるということにもつながってくるのではないでしょうか。ただ,行政サイドからこれをやるのは非常に難しいでしょうし,時代に逆行していますので,何か民間の方でそういったことができる形を考えてはどうかということを言うと,非常にやりやすくなるのではないかと感じております。

高階部会長 それは大きいですね。何か資格というか,行政に関して,例えば美術関係だと専門がそれぞれあるわけですね。学芸員がいないといけないとか,これは資格制度があるわけです。それも少し上級のものが必要などといろいろあります。それから,技術者は当然資格があるでしょうね,照明とか何とか。アートマネジャーのようなものは,だれでも私がなりますというのではない資格をということで,学校では出せるのでしょうか。それぞれ,どういうふうに外国などではやっているのかという問題があるかと。

熊倉委員 私は基本的には,例えば教員免許のような国会資格的なものは,いらないのではないかと思っております。そうしたものには,どうしてもシステムが形骸化しやすいという弊害があると思うのです。学芸員制度でも同様ですが,資格を持っているからといって即戦力になるかというと,実は全然そのようなことはない。資格を持っているのは,必要条件ではありますが,十分条件としては機能していないことがあります。
 それに対して,別の取組として次のようなことが検討材料としてあります。今,私の大学のキャンパスがある取手市で,市が予算の一部を出して,大学が専門性や外との制度的なネットワークを提供して,市民の方々がボランティアとして運営をする,まちの中でのアートプロジェクトを行っています。文化庁からもご支援をいただいていますが,そこにことしからインターン制度を取り入れました。1年間,現場で地域と文化をつなぐ体験をして,将来そういう仕事をすることにつなげたいという人を募集したところ,都内在住の方,あるいはまちづくりに携わりたいという地元の主にシルバー世代の方々,そして東京あるいは関西の都市圏から引っ越してきた若い人もあって,そういう仕事を志したいという方々約30名に集まっていただけました。既に半年たちますが,そのうち約10名ほどがずっと継続的に手弁当で来てくれています。我々で勝手に修了証のようなものを差し上げますよとは申したのですが,そういう現場経験を,中長期的な期間積むことをめざしたわけです。例えば学芸員だと二,三週間,教員免許でも今長くて3週間ぐらいの実習をしますが,もう少し長い期間,毎日でなくてもいいので,経験していただきたいわけです。ただ,インターンとして,一方でフリーターのようなことをしながら来る人たちに対して,我々には交通費すら払う費目も予算もない事態にあるわけです。それに対して,例えば日産自動車はアルバイトをしないと食べていけないけれども,NPO活動に非常に興味があり活動実践をしている何十人かの学生や大学院生に対して,毎年NPOに代わって時給1,000円と交通費を払っています。このように年間最大で三百数十時間までのボランティア活動に対して,アルバイトと同じお金を出して支援するという奨学金制度を設けていらっしゃって,結果として多くの若者が文化には限りませんがNPOの分野での経験を積むことができる環境をつくっています。そういうようなこともヒントになるかと思います。

高階部会長 そうですね,それはいいお話だと思います。特に文化ボランティアの話も後で入っています。学生なんかの若い人はそれでいいと思います。しかし,ボランティアは,手弁当が本来だと長官も言っておられますように,シルバー世代で持ち出しでも何かやりたいというような方をどうやって増やすかということですね。
 では,富澤委員,それから米屋委員。

富澤委員 ありがとうございます。
 地域文化の基本理念に戻るかもしれませんが,「地域」といった場合に,今の行政区域,市町村であるとか,県だとか市町村,そういうものと文化との結びつきというより,私はむしろ江戸時代の三百諸公の地域と文化の結びつきというのを連想します。つまり,例えば室町時代に起こった文化が地域の伝統として大事に守られているという場合も,江戸時代の何百年かの間にそれが大事に育てられ現代に伝わっているわけです。むしろ明治以降百数十年の行政組織は,それを破壊してきたのではないかと思います。つまり藩閥政府が自分たちの政治をうまく進めるために,府県制度を置いて,地域と文化の結びつきを破壊してきたような感じさえします。その意味でいうと,「地域」というのは今の行政区域と全く違う。それでは何が地域だと聞かれると困るのですが,文化の場合は今の行政区域と結びつけて考えない方がいいということが一点あります。
 それから,文化といった場合,以前部会長の「勉強すれば頭がよくなる。スポーツをすれば体がよくなる。心をよくするにはどうすればいいか。それが文化なんだ」というお話があって大変感動的でありました。現代人がいろいろなストレスに悩まされたり,あるいは心の病を持つのは,文化に触れることが少なくなった,あるいは自然に触れることが少なくなったからだと思います。ですから先程来出ている,その地域の景観としての文化と自然,文化と暮らしの結びつきというものが,人間性の回復,あるいは強化につながっていく。そうしたことに意識的になることがまさに現代的文化の維持であるということを,基本理念にすべきだろうと思います。
 そういうことになると当然人材も,今の行政単位ではなく,もう少し広いといいますか,いろいろなところでいろいろな文化に携わっている人,あるいはそういうものに参加している人たちのネットワークづくりが大切になります。先ほどそういう人たちをどう評価するかというお話がありましたが,まさにそうであって,そういう人たちをどうやって表に出して有機的なネットワークを創出するかということになると思います。
 それに関して言えば,1つは,その地域に地方大学がありますね。そこで,アートマネジメント等を研究している人,あるいは実際に携わっている人たちもいらっしゃるでしょうし,各市町村の学校の先生とか,あるいは父母会とか,あるいは地方新聞などもネットワークにつながってくるだろうと思います。そういう人たちをその地域に於いて,いかに浮き彫りにするか。そして,文化の担い手として,いかに中心的役割を果たしていただくかということになるでしょう。

高階部会長 そうですね。実際問題としてそれは大きいです。県なり市なりという行政の枠組みだけで済まないところがある。
 米屋委員,どうぞ。

米屋委員 先ほど,コーディネーターなどの位置づけと申しました中には,その報酬をお支払いするということも含めています。例えば先ほどの概算要求でご説明がありました文化体験プログラム支援事業ですとか,伝統文化こども教室事業,こうした中に,コーディネーターの費用というのは対象経費になっていないのですね。

高階部会長 なるほど。それは大きいですね。

米屋委員 すごくいい活動をされている方々がいらっしゃるのですが,やればやるほど持ち出しで,これは早く何とかしてさしあげたいなと思うことがございます。
 それとまた,こういう状況の1つの背景は,行政の文化化などといって地域の文化行政が非常に活発になってきた歴史的な流れがあると思うのですが,その中で調整役や事務局機能は行政が専門に持つということで,民間が行うことを想定しないで,その仕組みがつくられてきた。そうしますと,地域の文化行政担当者にお会いすると,「うちはアマチュアしかいませんでね」ということをおっしゃる。プロがいないから行政が頑張らねばならないという構図がずっとあるのですが,そうしたアマチュアの活動を前提にして文化行政を進めてきたからこそ,プロ化できなかったといいますか専門家が民間の中に育たなかった構造があると思います。まだまだ地方では行政が頑張らねばという側面は多いと思いますが,何が何でも行政主体,主催の事業としてやるのではなく,自治体は後方支援に回って,民間団体が前面に出られる仕組みを工夫していくという,行政手法の転換も必要です。

高階部会長 これは大きな問題です。指定管理者制度の問題も関わってきますね。
 山野委員,どうぞ。

山野委員 今の件に関連しまして,文化庁の重点支援等は,マネジメント料は対象経費になっていません。ですから,国内研修でバレエ団に入ってきている若い子達が,マネジメント面でとてもよく働くのですが,研修期間を過ぎてしまうと使えなくなってしまう。せっかく育ちかかっているところを更なるステップアップにつなぐという意味で,マネジメントの方も,支援対象の経費として認めてほしいと思います。

高階部会長 はい,どうぞ。

津田委員 確かに,こういう仕事は飯が食えないのが非常に悩みで,地方でも育たない。では,ある期間,国なり地方行政で給料を出すかというと,そんなことはもちろんできないわけです。学芸員等いろいろな話が出ていましたが,私は酒の業界におりましたので,ワインソムリエという資格が身近でした。これは,結構難しい。あのワイン,どれも同じような味をするのを飲んで,これはブルゴーニュ云々というのをピタリ当てないとなれません。それでホテル等で皆働けるかというと,資格はあるけれども働けない人の方がはるかに多いわけです。ですが,今はホテルのそういった酒を扱っている人はまずは皆,その資格を取得していて,胸へブドウのピンをさしている。

高階部会長 それはどこが出すのですか,民間ですか。

津田委員 民間のソムリエ認定団体が出します。昔は割に簡単に取れたのですが,このごろ希望者が多くてたいへん難しくなっています。そういうふうに考えてみると,今,一流のホテルで非常にいい給料で働いている人は,カクテルコンテストとか,全国レベルで入賞した人ばかりです。同様に,例えばシアターオリンピックというのがあって,この前,静岡でやりましたが,シアターの国体みたいなのをやって,そこで高い評価を得た人が朝日新聞や日経新聞などでも紹介されるという仕組みをつくると,その人も収入がふえるのではないでしょうか。特に地方ですと,そうした仕組みにしていかないと,自立していけないのではないかという気がします。
 ヨーロッパは今でも行っていますが,EU諸国の中で,その年の文化都市というのを決めます。マンチェスターとか各都市が立候補してやっています。日本国中を,これは文化庁で補助を出して,日本国内でその年の文化首都を制定するとして,地方に持って回ったら,そこでもちろん人も集まり,それが生活の糧になるというような人もふえるのではないでしょうか。
 私は,関西で2府4県の知事が集まったところで,各県で文化予算を年間に5,000万円位しか使っていないから,「頼母子講(たのもしこう)をやりませんか。5,000万円ずつ,2府4県で出し合ったら3億になりますから,当たった人は,その年の文化首都になりましょう」と提案して,3人の知事は賛成してくれましたが,別の3人の知事が反対で実現しませんでした。というのは,6年か7年の回り持ちになると,そのときは知事職を辞しているかもしれないというわけです。落選しているかもわからないと。自分の今の選挙に役立たないのではおやりにならないというのですね。これが政治の実際かなと思うのですが,そういうふうに考えると,何かみんなおもしろがって参加できて,実入りにもつながるというようなことを考えないとなかなか活動できないのかと,今お聞きしたことと併せて思いました。

高階部会長 いや,今の国民文化祭ではないけれど,マネジメントなり,調整なり,さっきお話のあった評論なりを食えるようにするために,そういったところを直接支援するのではなく,評価することも含めて役所ではなく民間ベースで自律的に行えるような制度をつくることができれば大きいと思います。いろいろとありがとうございました。
 特に人材育成で,大学との連携をどうするか。これについても,それぞれの大学でも大事だよといっていますし,民間企業の方でも大事だよといっていますが,それをうまく連携させないといけない。地方によって美術館は知事部局所管で,学校といろいろやろうとするのですがうまく進まない。連携がうまくとれないことの,一番のネックは実は教育委員会ですと言われかねないような状況があるようです。その点,それぞれの良さをうまく生かすようなことも考える必要があろうかと思います。

津田委員 1つだけ,よろしいですか。

高階部会長 どうぞ。

津田委員 「文化に精通した職員」という記述がありますが,これはやめていただきたいと思います。精通した人などいないですよ。文化に愛着を持ったとか,執着を持った人を育てるのはいいのですが。第一,自分で精通しているなんて言う人にろくな人はいないです。

高階部会長 ありがとうございます。
 それでは続いて,これも随分議論がありました視点4の子どもに関してお願いいたします。子どもを文化活動に関わらせることは理念として当然出てくるのですが,これまで本物の芸術体験ということでも,実際問題は大変なのですね。美術館でもどうすればいいか苦慮している部分もある。子どもが来ると,ほかのお客さんはうるさくて困るとか,遠慮してほしいとかということも出てくる。それから子どもを専門に扱う人がいないと安全上の問題があるとか,特に幼児が来たときに備えて,託児所等をつくって専門の保育士が必要だとか。他にも具体的な問題はたくさんあると思いますが,この視点4について,どうぞ,お願いします。

惠委員 イギリスのナショナルトラスト運動で保有している資産を会場として,環境演劇としてのお芝居を子どもたちに体験させたりしている。600年前のまさにここでは,こんな暮らしをしていたという,その様子を再現するお芝居を子どもたちが演じたりしています。

高階部会長 ほう,子たちが演じる。

惠委員 ええ。そのシナリオを書くのを,みなボランタリーに地域の資産を支えることを誇りとするグループが行っています。あるいは専門家を夏の間だけ呼んでワークキャンプをおこなったりすることもあります。そういうプログラムを民間が行っている例がありますので,子どもたちが体験のバリエーションをふやす何か事例の紹介をします。

高階部会長 それは大事ですね。

惠委員 それで,興味を持ってやってみたいと思っていただくといいのですが。

高階部会長 ありがとうございます。事例をいろいろ出していく必要があろうかと思います。
 ほかにいかがでしょう。佐藤委員。

佐藤委員 地域が子どもの文化を支える仕組みの構築の中で,地域と子どもの結びつきというのは非常に強いのですが,同時に高齢者の存在を考える必要があると思います。高齢者といっても日本の場合,高齢社会になって非常に幅が広くなってきています。ここのところで定年後まもない層がふえてきた。そんな中でちょうどリタイアをなさってから10年から15年ぐらい,75歳ぐらいまでのお年寄りと子どもを結びつけるシステムというのは,地域文化の実際的な担い手同士が,例えば託児所や各種の直接的なワークショップ等で,出会いの場を見いだせるということに非常に重要な意義があると思います。これから文化を振興する新しい仕組みを構築する際に,そういう考え方を入れたモデル事業を想定していただけるとありがたいと思います。

高階部会長 それは非常に大事なお話だと思います。
 どうぞ,根木委員。

根木委員 子どもに対して高齢者というのは,たいへんいいと思います。その前に,「子ども」という言い方だと,何となく小学校の児童以下という感じで,「青少年」といったようなくくり方もあるのではなかろうかという感じもしますが,この辺はいろいろ検討すべきかと思います。
 また子ども,青少年と高齢者との間をつなぐ必要性があるわけです。特に伝統文化に関しては,最近の若者にそれを継承させようとはしておりますが,実際そこに世代間の断絶がある。そのなかで,高齢者がこれまで培ってきた文化的伝統を次世代にどうつなげていくかということが問題ですし,逆の面で子ども,青少年が,それを主体的にどう継承していくかという問題もあります。
 それからまた,若者と高齢者との接触と相互理解によって,世代間の乖離を是正することにもなると思います。そういった観点を,子ども青少年と,高齢者とを並べることによって明確化していくことも考えてよいのではないか。
 それからいま一つ,視点3文化財の活用について。何となくこれはやや有形文化財中心かなという感じがなきにしもあらずですが,当然ながら,伝統芸能,民俗芸能のたぐいも念頭に置かれていることと思います。この部分に関していうと,文化財の「活用」ということだけでよいのかということがあります。伝統文化,特に無形遺産に関しては保存継承という保護の側面と,それから一歩進んだ創造発展という振興の面もあるのではないでしょうか。その両者の境界は非常にあいまいで,保存継承は保護のカテゴリーでしょうし,創造発展というのは,振興のカテゴリーに入る。無形の,とりわけ伝統的な芸能の類に関しては,その両面を考えなければいけないのではないか。そうすると単なる活用という表現でいいのかどうかという感じがしております。
 それからもう一つ,先ほど地域文化のエリアの範囲のお話がありました。惠委員が文化圏云々というふうなこともおっしゃいましたし,それから富澤委員もおっしゃっておられましたが,たしか今から二,三十年前に,中教審が文化に関して最初の答申を出したときに「文化活動圏」という概念を打ち出していました。あるいはこれをもう一回洗い直して,掘り起こすということも検討していいのではなかろうか。

高階部会長 わかりました。今の,特に視点3のところで,資源をいかに活用するかという問題ですね。根木委員がおっしゃったように文化財というのはハードだけ,つまり物だけではなくて,最初に惠委員がおっしゃった自然ももちろん入るでしょうし,あるいは無形のものも入る。ですから,拠点・資源というのは,物だけではなく文化資源として無形のものまで広く見渡す視点が必要だろうと思います。そうするとただ活用するだけではなくて,振興発展させないと失われる地域の伝統に,向き合っていくということがあるでしょう。そのなかで改めて保全とか,再生とかいう問題も出てくると思います。
 どうぞ,吉本委員。

吉本委員 何点かあります。最初の「芸術体験」という言葉についてですが,恐らくこれまで,学校の芸術系の授業というのは鑑賞か実技ということだったと思います。このあたりは,恐らく米屋委員の方が詳しいと思いますが,最近は「表現教育」というようなことが言われるようになりました。これは表現する力を養うことが重要で,そのことに芸術が非常に力を発揮するということが言われていますので,何か「芸術体験」という言葉だけではなくて,そういう「表現」ということを盛り込めないかと思います。そのときに,ここまで書けるかどうかわかりませんが,今の一般的な学校では,音楽と美術は授業でやっても,演劇・舞踊系の舞台芸術というものは正式な形で入っていない。しかし,表現教育には,むしろ舞台芸術の方がより効果的ということがあります。また,演劇は,それに取り組めば音楽の要素も美術の要素も全部ある総合芸術ですから,コンテンツとして,そういうものを積極的に取り上げるということも書き入れていいのではないかと思います。
 あともう一つは,学校とホールや文化団体との連携が大変重要だということです。先日,この部会でも一度ご紹介した北海道の朝日町に行っていたのですが,そこは人口1,800人で中学校の全校生徒が23人。そこで中学校祭というのをホールで行ったのですが,1週間先生も生徒も,朝から晩までそこに缶詰で,本番前のけいこに取り組んでいました。そうしたなかで何が起こってきたかということですが,まず大変驚いたのは,職員室がホールに移転してきていたということです。研修室に職員室という看板が出ていました。「学校に電話したらどうなるのですか」と伺うと「いや,自動転送していますから。」とのこと。それで,なおかつ先生と生徒がけいこに必死で時間がないので,校長先生と教頭先生がロビーのようなところで給食の配膳をしているのです。そういうことが起こるとホールが教育の場になるし,文化と教育が渾然一体となっているわけです。ホール担当の方に聞くと,そうした学校との関係づくりは,決して容易なことではなく,「まあ,こういうことができるまで10年間,地道な活動をした結果,ホールというものが,そういう教育的な事業のできる力をもっていると理解されてきた」ということでした。文化ホールなどによる学校との連携,とりわけ先生にこういう取組の大切さ,教育的に大きな意味があることを理解してもらうような工夫が必要なのですね。学校の音楽の先生で,果たして地元のコンサートホールに演奏会を聴きに行った人が何人ぐらいいるのだろうかと思いますが,つまり,先生自身がそういうことを肌で体験していないと,これは進まないと思いますので,ぜひ学校側の理解,先生の理解というのが必要かなと思います。

高階部会長 今のような事例は,ぜひ出したいですね。実際に子どものことをやりたいときに,どうやったらいいかというのは,学校の先生もいろいろ縛りがあるでしょうから,こういうことがありますという事例は大事だと思います。
 米屋委員。

米屋委員 この項目に関しましては申し上げたいことがたくさんありますので,部会を1つつくっていただきたいくらいなのです。1つは,「子どもたちに文化」をといったときに,現状においては細切れで情報が流通しているだけです。そうではなくて,子どもの暮らし総体という視点であったり,教育総体であったりと,もっと大きな理念から「文化」という観点に入らなければならないのではないかということが1つ。
 それと,文化に関して「本物の」という言葉を使ったときの「本物」の意味を,国レベルの施策に限ってなのですが,もう少し考え直していただいた方が良いかなと思うことはあります。
 それは少し置いておいて,1つご紹介したいのは,私はイギリスとアメリカのことしか詳しくはわからないのですが,イギリスは1990年代の中ぐらいに文化政策を一旦まとめまして,その後,「創造性」ということを非常に重視した非常に分厚いレポートを出しています。そして,2000年ぐらいからイングランド,ウェールズに関しては「クリエイティブ・パートナーシップ」という施策で,スコットランドでは「クリエイティブ・リンクス」といっていまして,似たようなことをアメリカでも「クリエイティブ・ラーニング」といっているのですが,教育と文化と多少の雇用政策というものが一体化した非常に大きな施策が投入されています。それは,私たち先進国が生き延びていくためには,「子どもたちの創造性」というのが最大の政策課題であるという位置づけで,かなり広範囲にわたって行われています。それらには,継続的であるということと,地域を選んでモデル事業的に行っているということがあります。その担い手もあのイギリスのような国でさえ,いわゆるハイアートというところだけではなく,非常に文化の幅を広くとらえて,そうしたノウハウを持っている専門集団であれば,非営利,営利もほとんど問わない形でいろいろな文化団体といいますか芸術団体,あるいはタジロとか,そのようなところと組んで,地域の子どもたちに継続的に学校の授業の内外,両方で,そういった文化に触れて,「創造性」を養うという環境づくりをしています。
 今まで,どうしても日本の場合,特に国の施策の場合は,頂点の伸張というのがありましたので,その施策の対象としても,何か割と一点豪華主義的なところに片寄りがちだったり,出身者であるとか,何らかのモデル事業としての口実的なきっかけがあったりしたわけですが,これからはより総体としてとらえた施策とするべきではないでしょうか。その場合に,文化庁だけではなくて文部科学省ですとか厚生労働省とか,関連するところと合同での大きな施策づくりというのが本当は必要なのではないかなと思います。そしてそれは,国レベルで行うというよりは,実際に生活に密着したレベルで,どんな工夫ができるかということを,幾つかの層で考えなければならないことなのかなと思っております。

高階部会長 ありがとうございます。
 熊倉委員の手が挙がっていましたね。

熊倉委員 はい。この分野では非常におもしろい活動をしているNPOがあります。例えば今,米屋委員のおっしゃった一点豪華主義ではなくて,もっと若手のアーティストたちを学校に派遣して,単なる鑑賞教室ではないワークショップ型の,非常に手間のかかるプログラムを推進している「芸術家と子どもたち」というNPOがあります。
 あるいはホール拠点型では,晴海にあります第一生命ホールというところを運営している,「トリトンアートネットワーク」というNPOがあります。そこでは,ホールに来る若手の弦楽四重奏団に保育園や,幼稚園や,小学校を軸にして地域に対し非常に小まめな訪問演奏をさせています。それを単に垂れ流し的に行うのではなく,若手アーティストにとっての非常に厳しい芸術的な修行の場とも位置づけて,果たしてあなた方の演奏は本当に相手に伝わっているだろうかというようなことで演奏家たちに強くフィードバックを求めていったりする。そういったところは,非常に手間がかかる。しかし,手間をかけていくことで,地域と若手演奏者の両者にとって非常に豊かな可能性を創造できる分野だなという気がします。
 また,「トリトンアートネットワーク」は,第一生命ホールにおいて年に1回,ボランティアベースで,地域のボランティアの方々が出演者も選び,その運営もすべてが手づくりという,「親子で一緒に聴くコンサート」というものを行っていらして,これが大変な人気なのです。このホールは自主事業での稼働率がなかなか苦しいのですが,その中にあって唯一満員になる企画です。去年拝見しましたらコミュニティを超えて,多摩地区や横浜などの遠いところからもニーズがあったようです。「親子で楽しめる芸術体験」というところに,非常にニーズがあるなという気がします。

 最後は,学校との連携においての現状について。例えば私ども芸大でも芸大生が学校に来てくれることはウェルカムであるというふうに,学校の先生方は現場レベルでは芸術家の皆さん学校に来てください,おっしゃいます。しかし,学校の先生方にお時間がなくて,「どういう人に来てもらいたいですか」というようなヒアリングをするのでさえ,1カ月ぐらい前にアポイントメントをとらないと,30分のお時間すらなかなかとっていただけない状況です。このように時間的にいっても余りに先生方がお忙し過ぎる,あるいは生徒を外へ連れていくようなときにも,引率人員確保の問題,足つまり交通手段の経費の問題等諸々あって,そういう日常的な状況にあって,せっかく総合的学習の時間がありながら,それをなかなか有効に活用できていないのかなという気もいたします。その意味で,何か先生の時間や手間をサポートしてあげられないかなと思います。

高階部会長 そうですね,それは大きいですね。
 あと,都筑委員,いかがですか,芸能の伝承とか,子どものところにどういうアプローチをなど,ご意見を。

都筑委員 こういう意見がまとめられて,それが地方へ行ったときに,何かやらないといけないと,すごいプレッシャーがかかるだろうなと思います。それで,何かやろう何かやろうと,地方自治体等が,じたばた,じたばたしたら,その中からポツンといいものが出てくることがあり得るかもしれない。そこを的確にすくい取っていかねばならないだろうと思いました。
 例えば,「六中ソーラン」。北海道の中学校で,荒れた学生生徒をロックソーラン節で,踊らせることによって,中学校の荒れがおさまり,それが全国大会に出て,大臣賞か何かを取るというところまでいって,今やビデオは出るし,海外にも広がっている。それは,ロックソーランを歌った歌手がいて,それで踊れないかと考えた人がだれかいて,それに振りを付けてやろうと言った人がいて,そして反抗しながらもついていった生徒がいるわけで,全く偶然の産物だと思います。それが全国へ広まった。文化というのは,本来,盛り上がってくるものが本当に残っていくのであって,だんじり祭りは死人が出ても続いていくでしょうし,阿波踊りは永遠ですし……。

高階部会長 今は阿波以外でもやるし。

都筑委員 ですので,じたばた,じたばたされる自治体を拝見していて,それを何か的確に拾ってクローズアップして差し上げられるようなシステムをつくることを希望します。

高階部会長 そうですね,次の発信なり,情報発信・交流の問題にもかかわってきます。今おっしゃったように,いろいろなことを,少しじたばたさせることを文化庁はねらっているのだと思います。その中で,こういうのはいいよとか,あるいは今までもこういうのはあったよということも,ぜひ加えたいと思います。
 吉本委員,どうぞ。

吉本委員 現行制度のことなのですが,今も文化庁の子どもを対象にした事業で,芸術家等派遣事業等の枠があると思うのですが,これに対する申請はたしか各学校から教育委員会を経由して上がってくることになっていて,しかも来年度の授業で,このアーティストを呼びますというのが決まっていないとだめというようなことになっていたかと思います。そうすると,来年度異動するかもしれない先生が決められないわけです。なおかつそれは,たしか1回程度の講話をするような,そういう書き方になっているのですね。さっき熊倉委員が紹介された「芸術家と子どもたち」のツツミさんという方と,一度文化庁の担当の方とお話を伺ったのですが,制度があっても,なかなかうまく活用されるような仕組みになっていなくて,まず文化庁か都道府県の教育委員会に行って,そこから各市町村の教育委員会に行って,そこからまた学校に行ってというステップを踏んでいかないとならない。そして,こういうことの重要性がわかっていらっしゃらない方々がその途中の何段階かにいらして,そうなると具体的に活用されにくいと思うのです。
 ですから学校経由ではなくて,例えばNPOのような立場の方も含めて,そういうことは重要だとわかっている方が,この制度を利用できるような形にならないだろうかと思います。しかも1回だけの実施ではなくてワークショップ形式で,シリーズで,例えば半年間やりますとか,何かそういうものにも対応できるような制度設計ができないものだろうか,と思います。

高階部会長 これは制度の問題ですね。教育委員会を教育する必要がある。いろいろと実際にどうやればいいのか。ネックになっているところがあれば,それを避ける方法は何かというように。
 惠委員,どうぞ。

惠委員 視点4の中の,「本物の芸術体験」について,「芸術」だけでなくて「自然」や「歴史的」事象ということもあわせていただきたいと思います。それと,どこに入れたらいいかわからないのですが3ページの一番下,「天然記念物の保存を通じて」という項目がございますが,天然記念物の保存がスポット的なもので,今,鹿やお猿さんがふえ過ぎたりして,天然記念物に指定されているものが害になるような現実があります。そこで,保存ということについても本物のフィールド環境に対して,しっかりしたつき合い方の見通しをもったものにしていきたいと思います。

高階部会長 それこそ本物ですね。
 米屋委員。

米屋委員 先ほど,吉本委員や熊倉委員からもご紹介がありまして,学校の中でアーティストが継続的に活動していくという,そういう活動が最近注目されていますが,反面,鑑賞教室が流行遅れの悪者のようにされている部分もあります。しかし,実は日本では子どもたちに劇を見せるとか,子どもたちに劇をつくらせるという歴史は坪内逍遥以前からずっとあって,いろいろピークもあって今に至るわけです。それに対して,演劇大学がないせいもありまして,何に問題があったのか,どこがよくなくて流行がすたれたのか,あるいはどこがいいのか等,一定の検証による鑑賞教室に対する評価が,演劇人の間にさえ共有されていません。ところが,鑑賞教室はささやかなものでも,やり方によってはすごくよくなるものです。また,実際にいろいろな人に会って,最初に見た舞台芸術は何でしたか等の話を伺ってみますと,そんな大層な芸術である確率は非常に低く,実は身近なものに幼児の時分に触れていて,そこから人間形成が始まっていたということが多いのですね。
 そういうことを考えますと,鑑賞というのは実はとても能動的な活動で,そういったところが余り理解されていないのかなということがあります。それと,コストの面を考えますと,ある学校のある学年全体の生徒に対して,鑑賞教室ではなくてワークショップ形式で,一クラスに6回ずつアーティストを派遣する活動を全クラスに行うと考える。それが,更に例えば東京都内全クラスにやりましょうということを考え,なおかつそれを全部教育委員会や何か公的な支援に頼って一律に行えるのかといえば,それはとてつもなく実現性の低い数字になってしまうと思います。そうではなく最近は学校のイニシアティブで各種のスタイルの様々なプログラムを選択できるようになっていますので,それぞれの主体性に基づいたニーズにあった取り組みの実現を,教育委員会などだけでなく民間の力と支え合えるような仕組みの開発をしなければならないと思います。さもなければ,生徒の側から見れば,たまたまラッキーだったクラスに当たったとか,偶然にそうした機会にめぐり合えたという状況にしかならないと思います。

高階部会長 それは非常に大きい問題で,視点6がまさにそれですから,ではあとの残り時間で5,6,文化活動への資金の問題へ参りましょう。今の演劇の場合もそうですが,公的支援ももちろん大切ですが,そればかりに頼るわけではなくて民間資金をどうするか,さらに津田委員なんかもおっしゃっている個人の資金をどういうふうに取り込むかということ。そのためには,現在どういう問題があるのかというようなことも含め,提言の中にこれこそ,ぜひやってほしいということを盛り込みたいと思います。
 それから視点5の情報交流,発信,それから評価ということがここに入ってくると思います。それらも含めて,視点5,6についてどうぞ。これもおっしゃりたいことがいっぱいある方がいらっしゃると思います。ご自由に,いかがでしょう。
 では,吉本委員。

吉本委員 まず資金援助のところについて,これは前の方にNPO等のことも出てきていますが,先日の大谷さんの報告にもあったように,NPOで何が大変かというと,立ち上げの時期が一番大変なのですね。たしか大谷さんの発言だと4カ月間は本当に無償で,オープンまで行くことができればオーケーだけれども,それこそが一番の難問なわけです。今の助成金の制度というのは,どうしても事業助成になっていまして,事業をやることに対してある一定割合の資金援助が出る。むしろNPO等は,その具体的な事業立ち上げの前段階で非常に苦労されているので,そういう立ち上げ時に,資本市場でいうベンチャーキャピタルに相当するような形で,NPOの立ち上げ,つまり起業を支援するような,そういう助成の仕組みはできないかと思います。とりわけ,NPOは本当に小さな団体が多いので,例えば重点支援対象の一団体に拠出されている資金があれば,十や二十のNPOは育つかもしれないということもあると思います。ですから運営支援というと,ちょっと問題があると思うのですが,何に使ってもいい,事業助成ではない形の,小さいファンドでNPOが割と自由に使えるようなものが創設できるといいと思います。

高階部会長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょう。佐藤委員。

佐藤委員 資金援助について,公的支援,民間資金の活用,個人の支援の活用,これをどのようにしてリンクさせるかということですが,私は特に公的支援が民間資金の活用と個人の支援の活用を促すようなプログラムへ進行するべきだろうと思います。今度,文化庁が助成金を大きく変えられて,変えられた方向というのはプロジェクト中心になって非常にいい方向へ変わったと私は評価しています。そういう場合に,一つにはそれぞれの団体が民間資金なり個人による支援の活用についてどれくらい活動しているかということ,それからそういう実績を金額ベースでどれだけとっているかということは,実はその団体に対する事業評価として一番はっきり出てくるところになります。その意味でこれは芸術団体にとって厳しい制度になると思います。しかし,それをやることによって,今度は民間資金を提供する側も評価の対象になってくるということがあるので,ぜひ,活動と資金をリンクさせるために,公的支援の活用をむしろ民間ベースによる資金支援の活性化のために利用する方式を考え,具体的な施策を考えていただきたいと思います。それと先ほど都筑委員がおっしゃったように,文化というのは雑草の面があるわけです。放置しておかなければいけない。これも公的資金でしかできないですね。放置しておくという,つまり,間口を大きく広くとって,そこに非常に長いスパンで投資をするという事業です。ですから,その辺で,民間資金や個人支援とのすみ分けも必要だろうと思います。長期,しかも幅広い運用に柔軟性を持った公的支援が,今後考えだされることを強く希望しております。

高階部会長 前にもここで話したイギリスなんかでやっているマッチングラント,それについては日本でも,やりかたがいろいろあると思いますが,それぞれの自助努力も必要だとか,ただ頼るだけではないとかいう,それもうまいやり方を,ぜひご紹介いただきたいと思います。
 ほかにいかがでしょう。山野委員。

山野委員 基本的にはお客様が金を払って見に来るということがとても大事だ思います。日本のお客様というのは,何かとてもいいものを見ないと損だという意識が強くて,自分でもっていいか悪いか判断するというところが欠けているのですね。自分で見に行って判断するというような気風を何とか育てたい。パチンコなんかですぐ1万円,2万円すってしまう人が,わずか3,000円の入場料はけちるわけですよ。だからお金の使い道をもっと上手に,自分の判断力を試しに行くのだという方に向けたいですね。

高階部会長 なるほど。さっきおっしゃった評論の重要性とか,マスメディアとの関連というのも,大変大きな問題になろうかと思います。
 ほかに,どうぞ,都筑委員。

都筑委員 「移動芸術祭」というのがありまして,それの視察に行ったことがあります。東北のある漁港では,魚の他に何もないのです。映画館もない。劇場は公民館があって,そこで落語をやったのですが,すごい吹雪の日で,お客さんが少ししか来なかった。「まちの娯楽って何ですか」と言ったら,一言「パチンコ」。それしかない。
 それから,福井の方に行ったときに,奥様方が「なにもすることがない毎日だ」と。何もすることがないと,何人かの方がたが口をそろえて,そうおっしゃるわけですよ。何もすることがないことはなかろうと,私などは思うのです。でもそういう人たちが動かなければ,地方地域文化,文化活動なんてものは絶対に活動してこないわけで,それをさせるにはマスメディアを動かすしかないと,私は結論づけをしていいと思います。あっちでもこっちでも,小さいこと,いいことはいろいろやってらっしゃるのだけど,それを知らせるのはテレビしかない。
 ラジオについてでしたけれども,そういう側にいた人に言わせたら,時々声がかかるのです「こういう事業をやるので放送してくれせんか」と。それで,話しを聞いておもしろくないとなれば,そういうものは放送しません。せいぜい,タレントの口からちょこっと言わせるぐらいのことしかしない。そうではなくて,マスコミのほうから面白いから取材に行け,といって取り上げてくれるような文化的な事業であってほしい。それから例えば芸術祭のテレビドキュメンタリー部門のテーマを地方文化に絞ってくれという依頼を文化庁がするとか。何か,そういうマスメディアの利用法も上手に考えなければいけないと思います。

高階部会長 そうだと思います。マスメディアに乗るようなことを考えなければ……。

都筑委員 乗らなきゃ伝わらないという,大前提があると思います。

高階部会長 私は同時にマスメディアにも問題があると思います。そういう受けの良さそうなものしか取り上げないというのは大変ぐあいがよろしくない。芸術祭や何かで賞を取れば取り上げるのなら,同時にマスメディアをもうちょっと考えて,ワイドショーみたいなところでも一般に向けて情報を発信するようなことがあってもいい。

都筑委員 ところが,目がそっちの方へ行ってない。

高階部会長 どうすればいいか。それも非常に大きな問題だと思います。
 はい,津田委員。

津田委員 今,話が出ているのですが,舞台芸術についてだけではないとは思うのですが,今,一番の日本の問題は,若い人が自分から劇場に来てくれないことです。例えば東京の国立劇場でも年間10万人か12万人の高校生を歌舞伎鑑賞教室に動員しています。10年やれば120万人ですから大変な数だと思うのです。それがこの間も国立の面接を二十何人に行いましたが,「歌舞伎を,見たことがあるか」と聞くと,十何人は見たことがあるという。ほかの人は地方の方だから無理なのですが,「いつ見たか」,「歌舞伎鑑賞教室で高校のとき」,「それ以後,来たことがあるか」と言ったら異口同音に「ない」というのです。結局,せっかく学生や,子どもたちに実際の体験をさせても,それがファンとしてのリピーターになっていない。実際に歌舞伎,文楽を上演している会場のお客さまの7割ぐらいが60歳以上。それからクラシックのコンサートも行っているのですが,7割,8割はやはり60歳以上で,現実問題として高齢者割引で収入が減少してしまうということまで起こっています。
 繰り返しますが今これが一番の問題で,地方で演劇をやっても,自分の金を払って来てくれる人がいないのですね。観客層さえ厚くなれば様々な処遇もできるわけですから,そういう意味で何とか,若い人に,来てもらいたい。子ども達であっても潜在的に抑圧している感情のようなものがあって,例えば芝居を見ることで自分の心も舞台の上での展開に合わせてカタストロフィーのような形で擬似的な自己実現ができる。端的に言えば胸がスカーッとして,それで非行しないというような効用も考えられるわけです。本当に何か国家規模の運動のような格好で広げて,1年に1度は音楽でも芝居でもバレエでも何でもいいから見に行こうというような運動はできないかなと思っています。私共もそれぞれの持ち場で,その努力はしようと思って,今取り組んでいるところです。
 もう一つは,ぜひ文化庁にお願いしたい。いつも同じことを言って申し訳ないのですが,税金の免除の件でお願いをしたい。

高階部会長 これはぜひ……。

津田委員 今,たまたま私が前サントリーにおりまして,サントリーはサントリーホールと美術館の,2つをつくっていまして地方税を払っているわけですが,集客施設というのは一等地に建てているわけですから,当然税金が物すごく高いわけです。例えば大原美術館のように,あれがなかったら倉敷市が困ると思いますが,恐らく地方税を払っていると思います。ところが,今,私のいる国立劇場は税金を払わないでいい。そのことだけでも運営コストの面から民間としては同じ料金だと,本当にやっていけないのです。
 今,私が心配しているのは,東京の歌舞伎座です。建物が極めて古くなっていますが,あれを建て直すとしても,恐らく採算になかなか乗りにくいものですから,なかなか踏み切れないのではないでしょうか。要するに文化貢献施設については,施設面での資金援助のようなことはしなくてもいいけれども,税金を免除するというような格好での応援ができないでしょうか。そうでないと,民間の芸術支援に大きなお金が出てこないのではないかなと。大阪で小劇場が相次いでつぶれたのも,それなのです。近鉄なども,あれだけ球団も手放すような状態の中で大劇場と小劇場の地方税を払うのが大変で,それでは割に合わないから,つぶしてしまおうというようなことになってしまった。
 だから,文化政策として,たとえテナントで入っているコンサートホールでも,結局は地方税が家賃になってきますから,そういう税金の免除をやってあげないと今後本当に困るのではないかと思います。地方自治体が施設を建てるより,民間が建設に資金を使ってくれる方がよっぽど文化のためにはなるのだから,視点7ぐらいでいいから,そういう支援もあるのではないかなと思うのですけれどもね。

高階部会長 それは大事な問題だと思います。

富澤委員 今のことについて敷延して言えば,近鉄が劇場をつぶしたとき,近鉄はずうっと赤字部門を整理して,リストラを長年にもわたって行ってきていたわけです。それのうちでも,かなり早い段階で劇場をつぶした。しかし,だれも反対の声が出なかったのです。一番最後は野球の球団のリストラで,そうしたらこれは物すごい反対で,結局合併して売却したものですから,これでリストラが完成したわけです。来年度からは黒字ということになるわけです。
 そういう意味で,文化というものに対して,市民レベルの問題で仕方がないのかもしれないが,まったく理解が深く広くないと同時に,津田さんが言われたように行政の理解がない。これは特に地方行政ですね。固定資産税ですからね。固定資産税が高いのですよね。一等地にありますから。

津田委員 それで,広いところでしょう。

富澤委員 今まで文化施設というのは大きいですから,そういうことがあると思います。
 それからもう一つ,先ほどから出ているマスメディアの活用。なかなかマスメディアが取り上げないというのですが,この場合は多分,地方のマスメディアのことでしょうね。私もずうっと全国紙にいましたけれども,全国紙の場合,いろいろなものを取り上げるものですから,領域が細かいものはなかなか取り上げられないということがあります。けれども,地方のマスメディア,ローカルな新聞,ローカルなテレビというのは,そんなことはないはずだと思います。アピールが足りないのではないかと私は思います。アピールをして1回であきらめないで,またアピールをすれば必ず取り上げるし,取り上げるべきものだし,取り上げる余地はあると思います。ですから,まずアピールをするということが第一番でしょうか。それで取り上げてくれれば,その地域の人たちはみんな知りますから。まず知ることから始まる,そういうことではないかなと思います。

高階部会長 働きかけが弱いということは確かにあると思います。
 では,惠委員。

惠委員 視点6から外れるかもしれないというのも含みなのですが,例えば若者が全国のいろいろな芸術を見て回るという仕組みを何か整えたい。例えばヨーロッパではユースホステルを安く,交通費も非常に安くして,入場料ももちろん安くする。いろいろな意味の政策のセットですね。そういう政策のセットを視点7ぐらいにリンクしないと効果があらわれないので,そこも書けたらなと思っています。

高階部会長 米屋委員。

米屋委員 マスメディアへのアプローチの件なのですが,都筑委員のおっしゃることも本当にそのとおりだなと思いながら,この項目には文化に携わるものとして,マスメディアだけに頼っているのはどうかという,ある何か,思いがありまして。というのは,最近,どうしても「有名ですか」ということをよく聞かれます。それはメディアに乗ったか乗ってないかということが余りにも大きな尺度になり過ぎてしまっていることの現れではないか。むしろ地域文化というのは,そういう即物的ではない「見識」というものを地域の中に育てていくものではないのかと。この角のおじさん,テレビには出ていないけれども,これこれに関しては,すごく優れているということを,昔はまちの人が知っていたわけです。そういったものがどんどんメディアで壊されてきたというのが流れではないのか。
 地域文化の振興とは,そうすることが,自分の目で見て,自分で判断する力を地域の人々がその文化によってきちんと持つということにつながっていくのだと思います。ですので,ちょっとそういったニュアンスが最終的には提言に加味されるべきでしょうし,そうなると,地域のミニコミとか口コミとか,ネット上のコミュニケーションとか,多様な尺度というものに光を当てるべきなのではないのかなと。○高階部会長 そうだと思います。地域住民との間のネットワークが非常に大事だということは強調すべきだと思います。

米屋委員 それと,視点6の個人による支援の活用ですが,民間支援にもかかわるのですけれども,現在,企業メセナ協議会の助成認定制度というのがあるんですが,これが事業を対象としていますので,本当に必要な事務局を支えるとか,コーディネーター,マネジメントを支えるというようなところに,なかなか活用できないのです。個人による支援,個人寄附,現場でも地方自治体への寄附ですと,所得免除の控除の対象になるはずですので,地域の場合,先ほど根木委員が,条例の中に財政的な支援の裏付けということをおっしゃいましたが,地域で積極的に文化基金というようなものを活用して,個人寄附を集めるなり,ゆかりのあるふるさとに寄附してください,という呼びかけをするなり,そういうような動きを,もう少しアピールしてもいいのじゃないかなという気がします。

高階部会長 個人寄附のやり方を考えないと,普通だと美術館に寄附しても税金がかかるということがあるものですから,こういうことに使いたいという目的をはっきりさせるような形にするとか,1人では少ないかもしれないけれども,プールできる形を考えるとか,いろいろやり方を考えるべきだと思いますね。
 根木委員と吉本委員で,そろそろ終わりにお願いいたします。

根木委員 視点5にかかわるのかどうかわかりませんが,冒頭でも申し上げましたように,情報化社会になっておりますので,ITを活用した情報の発信ということは当然考えてしかるべきではなかろうかということ。そして,IT活用ということになりますと,発信だけではなくて,ネットワークの形成ということも必要でしょうし,新しい文化の創造という面でも当然あらわれてこようかと思います。そのことは地域文化であれ,グローバルな文化であれ,差異はないと思いますので,何かそういうITに関する視点も必要ではないだろうか。
 それから,公的支援の活用のところですけれども,国や地方自治体等が効果的な支援云々という場合に,国と自治体とで若干対象や内容が違ってくるのではなかろうかと思います。冒頭で,佐藤委員が主な意見のところで地域文化の振興について,平均的水準の文化を全国に広めるという文化格差の是正と,地域の独自の文化を高める文化の自律性の確保という二側面について言及されました。そして,前者に関しては,ややどうかなということをおっしゃったのですが,これはいつか私が言ったことでもありまして,佐藤委員がおっしゃったように,文化格差の是正というのは,要するに基盤整備という意味合いであります。そういった意味では,平均的水準の文化という言い方は非常に漠としておりますが,明治政府が全国津々浦々に初等教育を均霑(きんてん)させていきましたように,基礎基盤となるような文化的な環境の整備が必要であり,これは国の仕事ではなかろうかと思います。そして,それをベースにした上で新しい文化を独自につくっていくのは,むしろ自治体のやるべきことではなかろうかという感じがしております。その辺りで,国と自治体が行うべき支援の対象,内容に若干違いが出てくるのではなかろうか。
 ただ,八ヶ岳方式ではありませんけれども,国土全体から見た場合に,文化拠点をあちこちにつくるべきではなかろうかというようなことはある意味では国の仕事でありましょうし,同時にまた地域文化の振興とも絡んで,両者がダブっているといいますか,インターフェイスの面でもあるのではなかろうか。その辺をもう少し整理した上で国と自治体のすみ分け,役割分担はどうあるべきかということも,ある程度念頭に置いた上で書き込まれるのも,1つの方法ではないだろうかという感じがしております。

高階部会長 わかりました。
 もう時間が大分過ぎてしまいました。この議論は次回も続けたいと思います。
 最後に吉本委員,簡単におっしゃってください。

吉本委員 先ほどから税制の話が出ていますけれども,個人寄附で税制そのものを変えるのはとても大変だと思うのですが,市川市が1%何とか制度というのを始めて,それは住民税の1%を,納税者自身が使い道を決められるという制度なのです。例えば私の住民税を1%このNPOに寄附したいというと,市川市は別に予算を持っていて,それを住民の意向に沿って寄附するということで,住民は全く負担なしという制度ができているのですね。ですからそれをぜひ,事例で紹介してほしいなということです。
 あと,情報のところなのですけれども,今回,地域文化というテーマですので言いますが,文化庁からの情報提供は,どうしても都道府県経由になるので,本当に必要なところに届いていないのではないかという気がすごくします。比較対象として適切かどうかわかりませんが,地域のホールの方に聞くと,「地域創造」の情報はよく持っているのだけれども,文化庁の情報は余り持っていないということがあります。それはなぜかというと,全国3,000館のホールに,「地域創造」は直接ニュースレターを送っているのです。そういうピラミッド構造ではない形の情報発信方法を,ぜひ工夫されたらいいのではないかなというふうに思いました。

高階部会長 ありがとうございます。これまたいろいろとそういう事例の問題ですとか。また,確かにマスメディアに対してだけではないけれども,働きかけは非常に大事だと思います。私は,あちこち地方へ伺いますが,どこへ行ってもスポーツ新聞はあるのですね。それも3つも4つもあるので,あれを1ページ,文化の記事がうまく載るように,競馬の隣ぐらいに何か載せられないかと思うのです。そうすると,みんな読んでくれる。スポーツはそれなりに,また何かあるのでしょうけれども,その知惠を絞ること。
 それから,子どものことに関して言えば,津田委員がおっしゃったように,一度だけというのは,なかなか後が続かないのですね。それも高校レベルではちょっと弱いのかな。幼児から小学生のレベルで行う,美術館の子どもの体験について,これはアメリカの例ですが,3回連れていくと一生ファンになるそうです。だから,今までぐらいはやる。それもいろいろやり方があるかもしれません。いずれも大変重要な問題ですし,次回の部会も続けて参りましょう。ここまでの活発なご議論,ありがとうございました。こういう具体的な問題も含めて提言にまとめたいと思います。本日のところはこれまでにしたいと思います。いろいろとご意見ありがとうございました。
 事務局から次の日程等,お願いいたします。

吉田政策課長 次回は11月1日,月曜日の10時からでございます。きょうの議論の続きということでございますけれども,先ほど米屋委員の方からもございましたが,本日いろいろな資料を読んで,少したたき台をお示ししましたけれども,皆さまには言い足りないことが多々あろうかと思います。ファクス等で結構でございますので事務局の方に,きょう,言い足りないことがあったとすればご意見をお寄せいただけますとありがたいと思います。よろしくお願いいたします。

高階部会長 では,次回は11月1日ということでございますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は,どうもありがとうございました。
午後0時12分閉会


(文化庁長官官房政策課)

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