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文化審議会

2003年6月30日 議事録
文化審議会文化政策部会(第2回)議事要旨

文化審議会文化政策部会(第2回)議事要旨


1. 日  時:平成15年6月30日(月)10時30分〜12時30分

2. 場  所:霞が関東京會館シルバースタールーム(霞が関ビル35階)

3. 出  席  者:
(委員) 高階部会長,津田委員,富沢委員,川本委員,木村委員,熊倉委員,佐藤委員,都筑委員,中村(桂)委員,根木委員,山野委員,米屋委員
(文化庁) 銭谷文化庁次長,森口文化庁審議官,寺脇文化部長,木曽文化財部長,高塩政策課長,河村芸術文化課長ほか関係官

4. 概   要
(1)    配付資料についての確認があり,前回議事要旨について,意見がある場合は1週間以内に事務局に連絡することとされた。

(2)    事務局より,検討事項等について説明がなされた後,以下の意見交換が行われた。(以下,○:委員,△:文化庁)
   本来,文化芸術支援は,公的なものと民間との二本立てが望ましい。公的な支援は既に評価が確立したものに対して行われがちである一方,民間の支援は,いわば好きなものを自由に応援できる。
     文化産業として成功が見込まれるものは,民間で支援することが必要だが,日本の税制は,所得税,相続税や固定資産税などで非常に制限されている。
     民間がもっと文化芸術に資金を出すよう仕向けるような税制システムがなければ,公的な支援のみの状況が今後も続くのではないか。
   
   人間は,科学技術を持ったがゆえに,だんだん本来の自然から離れてしまった。人間が自然ともう一回触れ合う,あるいは人間らしさ,動物らしさというものを取り戻すのが文化なのではないか。
   
   科学の中で新しい自然観,生命観が生まれ,新しい形での価値観をつくろうとしている今日,新しい時代を表現する手段としては芸術以外になく,特に舞台芸術が適している。
     新しいことを行おうとするとき,小回りがきくのは官より民である。官はむしろ,先を見据えて方向を示し,民間を活性化するという役割を担うべきではないか。
   
   文化芸術の頂点の伸長と,裾野の拡大の2つの理念は重要であるが,文化庁は,頂点を引き上げる方に比重を置いた方がよいのではないか。文化庁には,文化芸術創造プラン,芸術文化振興基金による助成,舞台芸術振興事業があるが,この3つが真に役割分担して相互に補完しているかをもう一度見直してみる必要がある。
     芸術文化振興基金による劇団への少額の助成が,芸術の普及に役立っているかどうかも見直す必要がある。
   
   中・長期的な目標として,文化芸術支援における国,地方公共団体及び民間の役割分担を確立するべきで,その際,フランス型,アメリカ型のどちらか一方ということではなく,複合的な新しいシステムが必要である。芸術団体重点支援事業は,頂点の引き上げをもっと前面に出すべきだが,支援全体については,頂点と裾野という今のバランスを保つことが必要である。
     芸術団体重点支援事業については,支援対象団体を絞り込むことが必要であり,今は公演企画数等を評価基準としているが,むしろ公演回数,1回公演当たりの観客動員数,予定入場料等を基準として評価していく必要があるのではないか。
     将来的には,事業支援・公演支援から運営支援に移行していくべきである。ただし,3年に1回しか催されないが芸術性の高い公演,実験性の高いもの,長期的なプロジェクトなどに対する支援は別途考える必要がある。
   
   舞台芸術でも分野によって収支構造は全く異なる。評価に際しては,芸術性というのは主観的なものであるので,団体の活動状況や実績などを重視して評価してほしい。
     団体においては,決算の概要の他に,その公演の目指す目標についても,具体化して外部に示していくことが必要ではないか。また,人材育成,教育的活動等様々な活動を複合的に行っている劇団と,商業的な活動を行っているところは区分して考えてはどうか。主催公演だけでなく,巡回公演や教育的活動も支援対象とする必要がある。
   
   資料5に書かれてないが,ドイツでは,東西ドイツの統一に伴う旧東側への支援のために,旧西側や外国人の芸術家が多額の税負担を強いられているということが大きな問題となっている。
     また,アメリカでは,引退した演奏家を楽団が寄附金を集めるための要員として再雇用すると,集めた寄附金の大半がその人への給料でなくなってしまうという事例もあるようだ。
     資料3の4ページの国際芸術交流推進事業について,外国の芸術家の力量の判断,査定はどのように行われているのか。ヨーロッパの劇場のように,日本でも情報収集の組織を確立する必要がある。
   
   活動を開始したばかりでまだ実績のない小さな団体は,小規模の助成を3つぐらい集めて初めて公演が可能となる状況であるので,小規模の助成について引き続き行っていただきたい。
     アメリカやイギリスでは,支援の際に,観客を育成する努力や,民間からの寄附を集める努力を促す仕組み(マッチンググラント方式)がある。我が国でも単に支援を行うのではなく,団体が経営努力を行うことを助成の条件とすることを検討してはどうか。
     アメリカの文化団体では,資金調達のためのプロフェッショナルを置いているのが一般的である。日本では,個人や企業がもっと寄附するよう仕向けるための方法論がまだ未開発で,寄附者と文化芸術団体とのコーディネートをする人材が不足しており,このような人材の確保が必要である。
   
   企業は寄附金損金算入枠を使い切っていないという指摘もあるが,手続の煩雑さなどの問題もあり,制度をどのように使いやすくしていくかということも民間支援の大きな課題である。
   
   資料5に関連して,ブロードウエー,ハリウッド,スカラ座など,海外の団体・劇場の戦略プログラム,達成状況の評価等の具体例を示してほしい。
     収支が成立しない公演は現代に生きる舞台ではなく,公的助成を行う必要はないという考え方もできるのではないか。
   
   頂点の伸長と裾野の拡大は車の両輪だが,国としては頂点の伸長にやや重点を置いて支援すべきではないか。ただし,現段階では地域が責任をもって行えるだけの環境が整っておらず,国も頂点と裾野の両方に目配りして支援をする必要があるのではないか。
     映画の場合には,一度製作すれば複製・反復して上映できるが,舞台芸術は,上演回数にかかわらず概ね毎回同規模の経費がかかるため,もともと基本的に赤字構造であり,支援が求められる。将来的に舞台芸術も自立構造をつくり上げることが必要だが,そこまでの過程をどう設計していくかが国の政策の要諦である。
     オペラやバレエなどは,我が国ではまだ定着の過程にあり,国の支援がなければ,大きな支障が生じるのではないか。
     資金配分については,音楽,演劇,舞踊といった分野ごとに区分した支援ではなく,共同製作に対する支援など形態別に重点化を図ってもよいのではないか。
   
   海外では劇場を持たないバレエ団は少数である。我が国の舞踊の一層の発展を図るためには,優れたバレエ団が劇場をもてるようにする方策を考えるべきである。
   
   企業の中には,関心がなかったり,株主からの批判への心配などの理由から,寄付金の損金算入枠を使い切っていないところが多い。文化に多額の寄附を行った企業を文化庁が表彰してはどうか。雅楽の東儀秀樹氏のようなスターが現れると,その分野が活発になることから,日本人・外国人を惹き付けるスターを積極的に育てることが必要。そのため,現在第一線で活躍している人を積極的に顕彰してはどうか。
     小規模施設であっても長期間公演を行えば,演劇でも黒字を確保できる。青少年に目を向けるなど,文化芸術団体の側もファンを増やす努力が必要であり,特に伝統演劇はもっと観客動員のための努力をすべき。
     評価基準は主観的な芸術性よりも,客観的なものにすべきであり,商業演劇と思われているものでも,観客動員に努力して成功しているところは,評価すべき。
     映画については,外国語への吹き換えに対する支援など,外国でも通用するものをつくらせる仕組みが必要ではないか。
   
   演劇の場合,公益法人を設立しにくいため,株式会社や有限会社で活動せざるを得ないという事情があり,団体の目的が,その法人種別からはわかりづらくなっている。
     舞台芸術の中でも,分野によって,専門家を常時雇用するものと,作品ごとに契約するもの,また,長期間のけいこを必要とするものとしないものがある。一部団体が市場で成り立っているからといって,当該分野への支援が不要ということではなく,分野の特性に応じての支援方法をきめ細かく考えていく必要があるのではないか。
   
   頂点への支援は重要だが,裾野を育てることも大切である。例えば,重点支援の1割の額でよいから,若手や挑戦的な取組を行っている人に支援することも考えてはどうか。
   
   文化芸術創造プランの評価システムについては公表するようにしてほしい。
   
   脚本家,演出家あるいはプロデューサーなど,企業家的な個人の芸術家を支援する方策を考えてはどうか。
   
   初等教育,高等教育を含め,教育のプロセスの中に演劇が入っておらず,プロフェッショナルな人材を育てていくための高等教育機関も整備されていない。そのため,専門性を持った団体を評価したり,専門家を育成することが困難な状況である。
     支援・評価に当たっては,観客の意見の把握を団体に義務づけるなど,観客などの声を反映させる方策を評価体制の中に取り入れる必要がある。
   
   芸術文化振興基金と文化庁の助成との役割分担に整合性を欠くところが感じられるが,これらを整理して効果的にできないか。
   
   映画は今年度から字幕作成に対する支援を大幅に充実するとともに,海外での映画祭におけるブース出展についても支援を行っている。文化芸術創造プランについては,採択した後,採択先,審査の要綱及び審査員について,事後公表を行っている。
     外国の文化政策に関する追加資料については,今後提供を検討したい。

(3)    事務局より次回部会については,7月24日(木)に開催するとの説明があり,閉会した。


(文化庁長官官房政策課)

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