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文化審議会

2003年7月16日議事録
国語分科会読書活動等小委員会(第6回)議事要旨


国語分科会読書活動等小委員会(第6回)議事要旨

平成15年   7月16日(水)
14時00分〜16時30分
霞山会館      「霞山の間」

〔出席者〕
   (委員) 甲斐主査,舘野副主査,阿刀田,臼井,岡部,勝方,手納,小林各委員(計8名)
   (文部科学省・文化庁) 山口国語課長,氏原主任国語調査官,鈴木国語調査官,中神国語調査官,小椋専門職ほか関係官

〔配布資料〕
   1    国語分科会読書活動等小委員会(第5回)議事要旨(案)
   読書活動等小委員会のまとめ

〔経過概要〕
   1    事務局から配布資料の確認があった。

   前回の議事要旨について確認した。

   配布資料2について事務局の朗読と説明があり,その後,配布資料2の内容について意見交換を行った。

   第7回読書活動等小委員会は,7月22日(火)の午後2時から4時30分まで,霞山会館「霞山の間」にて開催することが確認された。

   協議における主な意見は次のとおり。

   資料2のようなまとめ方ではインパクトがないので,柱立てを前に持ってきて提言の部分を短くコンパクトにまとめたらどうか。

   提言編,事例・資料編と分けたらどうか。今の段階ではデータが大事で,それがあると説得力がある。具体的には学校図書館図書標準の通知と達成率3割の根拠,自治体が策定中の推進計画,自治体による格差などのデータがあれば良いのではないか。

   大人が変わるべきであるという視点も大切で,子供に対する教育を超えた提言をすべきである。また,子供がなぜ本を読まないのかについても議論する必要がある。さらに,どこを対象にした提言を出すのかはっきりさせるべきである。

   内容的にはおおむね資料2のようにしか書きようがないだろう。読書は自発的・個人的な営みであり,特効薬はなく国は地方自治体や民間が行う様々な読書活動推進の試みを支援するくらいしかできない。子供が本を手にすることができる環境整備が必要で,その整備の状況について情報を開示し,それに対する評価を行っていくことが大事である。この委員会としては,地方や民間の様々な取組事例の紹介を行うくらいしかないだろう。インターネットで紹介するなどして,自治体を励ますような提言をすべきである。

   まず提言を前面に出し,資料は後に付け,インパクトのあるものにした方が良い。資料2は今までの議論で出てきた意見を網羅しており,たたき台としては良くできている。どの内容も重要だが,重要なものとそうでないものとに分けて議論することが必要である。

   例えば,最初の提言は1ページ程度にまとめ,第1に「学校図書館図書標準を達成すること」,第2に「学校のカリキュラムの中に読書活動を明確に位置付けること」,第3に「図書館の相互連携を図ること」,第4に「「長」が前面に出てくること」などのようにコンパクトな言葉でまとめ,次にその提言の解説などを出して,その後に事例や数値での資料を付けるという構成はどうか。資料2についてだが,この資料自体はこれまで我々が議論してきたものをよくまとめていると思う。

   読書活動は生涯教育にかかわるものであるから,全国民への呼び掛けにすべきもので,いろんなところを意識して作るべきである。

   答申は文部科学大臣に対して答えるもので,後は文部科学大臣が考えるべきことであろう。

   文部科学大臣から諮問を受けて議論しているが,地方自治体や民間は国とは違うので,文部科学大臣に答申しても自治体や民間にどのような効果があるか疑問である。これは文部科学大臣に言うもの,これは地方自治体に言うものなどと分けて言うべきで,もっと緻密に考えた方が良い。今は地方分権の時代で,財源を移譲し使い方を自治体住民の意思で決めるような議論にもなっている。

   今は地方分権の時代というが,実態として投票率も低く,住民がどれだけ関心を持って地方自治をやっているか疑問である。「地方分権だから住民の意思だ」とはなっていない。図書整備のための地方交付税をきちんとそのために使っていないことは,地方分権のマイナス面と言える。
   五つくらい大きな柱を決めて,大・中・小の項目を設け,例えば「図書館の整備をせよ」という項目の下に「自治体は到達度を公表せよ」を入れたり,「学校教育の中の柱にせよ」の下に「通知表などに読書欄を設ける方法もある」などのような構成にすれば良いのではないか。

   読書活動の現状については,子供が本を読んでいないというだけでよいのか。資料2の後の方に出てくる内容もここに盛り込めるものがあるのではないか。

   一般の人には「学校図書館図書標準」が何なのか分からないのではないか。地方や学校によって到達度にばらつきがあるというが,なぜそうなっているのかをきちんと書いておくべきである。また,図書の予算は学校まで行き渡っているのか。

   例えば市政において,教育委員会には予算の権限はなく,学校図書館の整備について言えば,教育長がやりたくても市長がその気にならなければできないものである。

   学校図書館図書標準が3割しか達成されていないことを強調し,「都道府県別,市町村別の達成度を公表し住民の評価を仰ぐべきだ」などの徹底的な情報公開を求める内容を入れることが必要だ。地方自治体が策定している推進計画の中にも具体的な数値目標を入れるべきことを求めるべきである。

   「学校図書館を含めたデータの整備を行う」と提言に入れるべきである。データの整備は正に行政のやるべきことであろう。

   都道府県別のデータを文部科学省は持っているはずだが,公表してくれない。公表する場合は,固有名詞を出すことに意味がある。

   図書関係の調査については年中行っており,自治体も自身の状況は分かっているはずである。

   自治体の図書館における図書の充実は,その地域の議員の力が影響するという話を聞いた。議会や議員に向けて提言することも効果があるのではないか。

   読書は学習指導要領の総則で触れられているが,各論に入ると消えてしまうことが問題なのである。

   「教育することも必要である」という表現では弱い。家庭の環境が本を読むか読まないかに影響し,家庭の読書環境が整っていないと子供が自発的に読むようにはならない。本を読まない子供には学校教育が手当をすべきであり,そういう意味で今なぜ学校でやらないといけないのかを強調して書くべきである。

   学習指導要領に入れるという提言は,国民には何を意味するのか分からないのではないか。もともと学校では読書を行っており,改めて正面から位置付けるといっても何を言っているか分からない。専門家や教師以外の普通の人が分かるような書き方にして出すべきである。学習指導要領に位置付けても何が変わるのか分からないし,説得力を持たないのではないか。

   学校では読解指導はしているが,独立した読書の指導とは違うものだ。学習指導要領的に言うと,特別活動の中のHR活動で読書を行うことなどは,学年や担任の裁量でできることだ。

   今まで読書は国語科でやられているというニュアンスが強かったようだが,読書を国語科を超えた全教科にかかわるものであるとするなら,学習指導要領に書いておくことには意味があるのではないか。

   学習指導要領には全教科にかかわる総則と国語編とあるが,総則に入れるべきである。

   読書の評価というよりも入試での国語の配点を高くすることや,就職試験や教員採用試験の国語の配点を重視することなどを考えていくべきである。試験で必要となれば学校教育でも読書活動に力を入れるはずで,入り口と出口をしっかり押さえることが大切である。

   通知表のことだが,賛否が並列的にしか書けないようなので,それならば成績表にかかわるこの部分の記述はなくしてしまった方が良い。

   私は逆に徹底的に評価していくべきで,それをきちんと入れてほしい。評価の方法についてはデータが足りないので,他の評価の問題も踏まえての議論をしなければならない。例えば,以前ボランティア活動を評価することが問題になったが,その時の法令等の文言と現在自治体でどのように取り組まれているかについて知りたい。ボランティア活動でも点数化することは問題になったようだが,記述式で面接の参考にするようなことは良いと思う。

   提言として「検討してはどうか」くらいは書けるかもしれないが,「成績表で評価せよ」や「入試に入れよ」とは,国やこの委員会では言えないのではないか。

   読書活動は大事ではあるが評価も義務付けもしないというのはどうか。国語力のベースとなる本はあるはずで,それをどの程度理解しているかの評価はあるべきである。その評価を子供の何らかの実績として入れることを検討してほしい。例えば日本の古典の一部についてのテストがあっても良いのではないか。

   古典読解はすでに国語科でやっており,それはこの小委員会で議論している読書活動とは違うのではないか。

   評価の問題については,学校現場に近い人は消極的であるようだ。読書が余暇活動ではなく大きな問題であるということを意識してもらう必要がある。

   学校教育では,読書は余暇活動的位置付けで教育課程外のものと意識されているのが現状だ。評価が突然入ってくると現場としては戸惑うはずだ。

   現状では読書活動をプラスに評価する必要があるが,点数化することは問題が大きい。

   読書活動は学校の全教科にかかわるという意識を持ってもらいたい。


(文化庁文化部国語課)

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