戻る
資料   2


大学生・大学院生による著作権侵害事案


社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会
専務理事   久保田   裕


1   はじめに

   インターネットが重要な社会基盤として認知されるなか、ACCSでは、著作権侵害等について、各種情報受付窓口を設置し情報を集めたり、独自の調査活動を行いながら、実態の把握に努めて参りました。
   こうした実態把握の中で判明した侵害行為に対しては、調査及び通知活動を行っているほか、悪質なものに対しては、権利者による法的措置を支援をしたり、さらには再発防止のための教育活動にも力を入れているところでございます。
   このたび、大学生が関与した著作権侵害の案件について、以下の通り、抜粋してご報告します。

2   現状について

1東京大学院生による海賊版販売    

   東京大学院生が東京大学のサーバを経由してインターネットに接続し、無許諾でアップロードされていたソフトウェアを集めて海賊版を作成。海外メールサービスを使って匿名で顧客にリストなどを送っていたほか、代金の受け取りは、偽名での代金引換郵便や、偽名で契約した都内数カ所の私設私書箱に送金させるなど巧妙な匿名工作を行っていました。自宅および東大研究室などが家宅捜索が行われ、その後逮捕。判決は懲役10ヶ月(執行猶予3年)が決定しております。

2京都大学生による海賊版販売

   京都大学生が自宅のパソコンからインターネット経由の電子メールでリストを送りつける方法で顧客を募集、販売していました。ソフトウェアのリストなどを顧客に送る際には、海外の転送メールサービスを悪用して身元を隠していたほか、偽名で開設した銀行口座に海賊版の代金を振り込ませたり、海賊版を郵送する際の発送人の名前も架空のものにするなど二重・三重の偽装工作をしていました。自宅などの家宅捜索が行われ、その後逮捕。判決は懲役1年6ヶ月(執行猶予3年)が決定しております。

3北海道大学生による海賊版販売

   北海道大学生が電子掲示板を悪用して海賊版ソフトのリストを掲載、電子メールで注文を受け取り、郵送によって販売していました。自宅などが家宅捜索され、その後、書類送検されています。

4東北大学院教育学部中国人留学生らによる海賊版販売

   インターネットのホームページに広告を掲載しての海賊版販売事件が発生。銀行口座は女性会社員宅から盗んだ保険証を使って開設していました。被疑者は2名でそれぞれ、懲役2年(執行猶予4年)、懲役1年6ヶ月(執行猶予3年)の判決が決定しています。なお、一人は帰国したため、捜査機関によって国際指名手配の手続きがとられたとのことでした。

   以上、平成10年ころからこれまでに、約10件近くの事犯について大学生が加害者となっており、その行為は、著作権侵害以外に有印私文書偽造、家宅侵入などが併合されるなど、悪質性を極めております。

3   まとめ(※カッコ内は『学生における違法コピー実態調査報告書』のページ)

   ACCSが平成12年度実施した『学生における違法コピー実態調査報告書』(学生の内訳は、大学生53%、専門学校生47%)によれば、違法にソフトウェアをコピーしたことがある経験者は、過半数を超える188人(全数368人)。友人・知人からのコピーが大部分で、学校・研究室からのコピーも10%以上ありました。コピーしたソフトは、趣味用が67%、一般ビジネス用が42%、学習・実習用が35%、通信用13%でした。(12p)
   違法コピーをする理由については、「お金の節約のため」と答えたのが圧倒的に多く63%、「他人に勧められた・もらうことができる」が51%、「試しに使った」が25%、なかには「買いに行くのが面倒」、「コピーですますと決めているから」がそれぞれ5%もありました。(13p)
   また、コピーしたことがないと回答した学生に、その理由を聞いたところ、「方法がわからない」29%、「著作権法違反だから」が28%でした。(15p)
   さらに、ソフトウェアに著作権があると認識しているのは88%で、コピー未経験者82%より経験者のほうが94%といった結果がでました。(17p)
   使用許諾契約書は、「ほとんど読まない」が48%、「使用許諾契約書とは何か」とわからないというのが13%でした。「必ず読む」は8%、「たいてい読む」が29%でした。(23p)
   著作権の学習機会については、「あった」人が32%、その機会の中で、新聞・雑誌からが16%、本が12%と、活字媒体によるものが多くありました。(24p)
   コピーを他人にあげる行為に「抵抗がある」は18%、「ややある」36%、「抵抗がない」は40%にものぼりました。「コピーは絶対よくない」は、わずか7%でした。「学生がコピーを使うのは許されるべき」とするのが14%、「学生でなくても個人レベルのコピーは許されてよい」が27%、「著作権は大切だが、多少のコピーはやむを得ない」が55%もありました。(25p)

   以上、これら結果から推測されるのは、まず一つに著作権に関する学習機会が少ないため、著作権法に関する正しい知識を得ていないということ。次にコンピュータが簡単に操作できるようになり、法規範を乗り越えてしまっていることに気づきながらも、安易に違法コピーを行っているということ。これらは、法律違反をしているという”事の重大性”の認識が乏しいことと、”自分だけは大丈夫”という身勝手な考え方に起因しているものと推測されます。

   特に最近は、P2P(ピアツーピア)の一技術である”ファイル交換ソフト”を悪用した著作権侵害事犯も多く、大学生を対象としたヒアリング調査では、「大学構内では足跡(ログ)が残ってしまうので、主に自宅で行っている」、「自分にとって著作権はどうでもよい、気にする人が守ればいいし、自分は気にしないから守らない」、「摘発があってもそれは”違法駐車”のようなもの”運が悪い”という感じ」といった意見があり、規範意識・情報モラルを、早急に指導・徹底していく必要があると思われます。

以上




ページの先頭へ