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文化審議会

2003年12月3日 議事録
文化審議会著作権分科会  契約・流通小委員会(第8回)議事要旨

文化審議会著作権分科会  契約・流通小委員会(第8回)議事要旨

1.   日  時 平成15年12月3日(水)10:30〜13:00

2.   場  所 文部科学省分館201・202特別会議室

3.   出席者  
      委員)
紋谷主査、安念、飯田、石井、今川、上原、大森、加藤、久保田、児玉、佐々木、寺島、土肥、生野、橋本、森田の各委員、齊藤分科会長

      文化庁)
吉川著作権課長、川瀬著作物流通推進室長、溝口著作物流通推進室室長補佐他

4.   配付資料:

資料1        文化審議会 著作権分科会 契約・流通小委員会(第7回)議事要旨(案)

資料2   文化審議会 著作権分科会契約・流通小委員会 報告書(案)



5.   概  要:

   事務局から資料に基づき説明があった後、各委員により以下のような意見交換が行われた。(以下、委員:○、事務局:△)


文化審議会 著作権分科会 契約・流通小委員会 報告書(案)について

○   5ページ(1)の「また、例えば」の部分で、破産法59条の解釈について、ライセンサーについて言えば、契約の段階ではもう全部やることはやった、あとは何もすることがないから、それは未履行ではない、義務の全部を履行し終わったという解釈もしようと思えばできる話。解釈だから、それも一つの考えではないか。「範囲を限定的に解することにより」ということを、例えば「このように解する」などとして、そういう解釈もあり得るのではないかぐらいのことは書いてもいいのではないか。

△   趣旨としては委員のご指摘のとおり。破産法について、いろいろと解釈があり、例えば継続的に給付しているようなものについて、3年間の継続的給付を約束して、6ヵ月間で倒産した場合、あと2年6ヵ月の部分をどう見るかというようなことが確かにある。それは履行したという考え方や、2年6ヵ月分は履行していないという考え方、特に月決めで使用料を払う場合、月末締めで使用料を払うというような、いろいろと考えがある。
   ただ、ある委員から、制度改正という前に今の報告書のままだと、現行法ではどうしようもない、だから制度改正というようなニュアンスが少し出ているので、調査研究というのは現行法の解釈である程度救えるという指摘があった。

○   5ページ(1)の「また」の部分で、第三者による債権侵害だが、解釈、運用で故意を要件とするのならば、破産法の例と不法行為の例は、順序だけを入れかえた方がよい。

○   7ページの下の注で、趣旨はわかるが、「第三者に対抗するための登録等は考えられないので」という表現ぶりが気になる。
   ここでの第三者は、単に利用許諾を受けた者という意味での第三者。上2つの第三者とは、そういう者も含むし、著作権を取得した者も含むという広い意味の第三者だと思うので、下で「第三者に対抗するための登録等は考えられない」とすると、ここでの第三者は狭い意味で使っていることになる。ここでは、第三者ということではなくて、「単に利用許諾を受けた者に対抗するための登録は考えられないので」とし、上の第三者は、取得した者という意味になると解される文章の方がわかりやすい。このままでは、直接破産法の要綱には適用がないが、このように解釈すれば適用があり得るという意味になってしまうのではないか。

○   15ページのまとめの1について、「民法や破産法等の現行法の解釈」と書かれているが、解釈だけではなく類推適用も含めて、適用の範囲に当たるのではないか。

○   9ページと15ページまとめ3の「著作物等を利用する権利を特定し得る最低限の情報を公示する」という文脈の特定という言葉は、「識別し得る」という方がよいのではないか。例えば債権とか動産の担保化のときに特定性がないといけないが、特定性というのは識別可能性のことであるから、ここで特定可能性と書いてあると、若干概念がずれる。特定という言葉を強く読むと、例えば包括的にすべてという場合には特定していないが、「特定し得る」というときの特定はもっと狭い意味になるので、「識別し得る」の方がよい。

○   12ページで「状態債務関係の移転」が見出しの中に出てくるが、状態債務論というのを民法でどうとらえるかというのは非常に厄介なところがある。現在でも一般的ではあるが、状態債務とは何かよくわからない。状態債務論から結論を導くものとしてはどうかという指摘が一般になされている。本文中で「一種の状態債務関係として」というところはいいが、見出しに「状態債務関係の移転」となると確立した法理のような感じになるので、少なくとも見出しの方は取った方が誤解を招かないのではないか。

○   コンピュータープログラム等については、名前のついていないものがたくさんある。そういうものをライセンス許諾して、仮にこういう公示制度ができたといった場合に、識別し得るという内容いかんによって現実に登録ができないというようなことになると困る。識別し得るというのはどういう概念なのか。

○   識別し得るというのは、他の財産と識別し得るということで、ライセンスの対象か否かわからないといけないという広い意味なので、名前がついていないといけないということではない。
   つまり、当事者間で契約を結んでいるからには、ライセンスの対象か否かはっきりしているはず。それができるのであれば、それを示すような最低限の情報をファイリングすることもできるはずである。名前がついていなくても、当事者間で契約しているわけだから、ほかの形で対象を特定しているはずで、後日、紛争になったときにはライセンスの対象になっていることを、他の契約書等々、証拠を出すことにより後で明確にすればいい。譲り受ける場合には、当事者に問い合わせをして、その点がはっきりすればいい。そういう意味の端緒を与えるというものであるので、この制度を導入する場合は言われたような懸念がないように制度を組まなければいけない。

○   63条2項だが、ここにはその許諾に係る利用方法及び条件の範囲内においてその許諾に係る著作権等を利用することができる権利の射程範囲が抽象的に書かれている。識別についても、権利の及ぶ範囲についても、具体的な利用方法、条件、このあたりがはっきりしているとよいのではないか。
   問題が生じ得るのは、未知の利用方法まで許諾するということについて。ここがはっきりしていないと権利の及ぶ範囲について争いが起こるのではないか。

○   4ページの「悪意の場合、すなわち」と書き加えたのは、はっきりしてよい。利用許諾契約を承知しているということは、利用許諾契約の存在及び内容を知っているということなのか。悪意というところははっきりしているが、何を知っていたのかということか。

△   そのとおり。どういうライセンス契約かという中味がわからなければ、単に契約があるということではだめではないか。契約書のコピーを持っているとか、そういうことではない。少なくとも存在と内容を知っていることが必要。

○   先ほどの破産法59条の具体的な解釈だが、余り具体的な解釈論を示すことに事務当局が躊躇している理由が、他省庁の所管の法令の解釈について余り言うのはいかがなものかということであるならば、そんなことは心配する必要ない。業界が利益をあげる解釈論をすればいいのではないか。

△   5ページの第三者による債権侵害の問題であるが、近時は、譲渡の契約をして、対抗要件を付与するということと、譲渡行為がここの問題としては利用者の債権を侵害することとは別のことであるということで、積極的に第三者による債権侵害を認めるという考え方が有力に主張されている。実際に、そういう積極説がこれから主流になるのか。

○   昔は、自由競争の秩序を乱すような、信義に反する形で財産権を取得した場合のみ債権侵害が成り立つという考え方が一般的だったが、最近は、債権侵害は広く認めるというのが有力な立場で、今後こちらが有力になっていくだろう。
   ただ、それを前提に考えても、そこで問題となっているのは損害賠償の話であって、差止までいくかとか、それで承継までされるかというと、そこまで債権侵害から導かれてこない。一番いいのは、承継されるとか、そのまま使い続けることができる、といった何らかの救済があるという文脈だと思うので、最近の有力説でも問題は残っているという面がある。

○   破産法の59条1項の話だが、確かに現在でもいろんな解釈があるが、破産法の改正要綱試案ができて、これで立法がなされると、59条を適用しないというのは対抗要件を備えた場合である。それに利用権を設定する契約にはライセンス契約も含まれるという要綱試案を前提に改正を行うということなので、それを単純に反対解釈してしまうと、それに載っていない場合には59条を適用するという解釈が従来よりもできやすくなるのではないか。その要素も考えないといけないので、59条が改正になっていない時に主張されていた解釈論が改正された場合にそのまま維持できるかという要素もあるので、そういう点も考慮すると、具体的に「例えば」と書くといったことで対応できるのか。具体的なものを書くことは難しいのではないか。


〔契約・流通小委員会の報告書(案)について〕
   本日の意見による修正については座長に一任の上、12月8日開催の文化審議会著作権分科会に座長から報告されることとなった。

以上



(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室)

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