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文化審議会

2003年11月19日 議事録
文化審議会著作権分科会  契約・流通小委員会(第7回)議事要旨

文化審議会著作権分科会  契約・流通小委員会(第7回)議事要旨

1.   日  時 平成15年11月19日(水)10:30〜13:00

2.   場  所 文部科学省分館201・202特別会議室

3.   出席者  
      委員)
紋谷主査、安念、飯田、石井、今川、上原、大森、加藤、児玉、佐々木、寺島、土肥、生野、橋本、松田、森田の各委員

      文化庁)
森口長官官房審議官、吉川著作権課長、吉尾国際課長、川瀬著作物流通推進室長、他

4.   配付資料:

資料1        文化審議会著作権分科会契約・流通小委員会(第6回)議事要旨(案)

資料2   文化審議会著作権分科会契約・流通小委員会報告書(案)



5.   概  要:

   事務局から資料に基づき説明があった後、各委員により以下のような意見交換が行われた。(以下、委員:○、事務局:△)


「契約・流通小委員会」報告書 骨子(案)について

1.著作物等の利用許諾契約における利用者の保護」に関する意見

○   我々の業界の実態について相当程度理解を示していただいたことには感謝を申し上げたい。本小委員会で色々と検討いただいたわけだが、我々の業界としては、書面契約の存在による対抗制度というのが一番適切なものであろうという基本的な立場は変わっていない。
   他の知的財産権の制度における検討の中でも、書面契約の存在による対抗制度によるライセンシーの保護について、他の業界から提案されていると側聞しているが、米国の状況等とも照らし、なぜ日本の著作権法・知的財産権法の下でライセンシーの保護が薄いのかについての、実態に即した議論がなされていないのではないかと思う。
   今回の報告書案で一番気になったのは、13ページ5.まとめの箇所。提言ということで14ページ4が挙げられており、登録による公示の制度を基本とすべきということになっているが、我々の業界としては、書面契約の存在によりライセンシーが譲受人に対抗できるという制度としていただきたいという考え方は変わっていないことを指摘させていただきたい。
   米国の現行法が、書面契約の存在があればライセンシーが著作権の事後的な移転に対して対抗できるという制度にしたかについて、その審議経過を調べてみた。現行法の母体となっているのは1976年法だが、その審議の際のハウスレポート、これは委員会の報告書だと思うが、そこで、ライセンシー保護のスキームについて、何故現行法のスキームとしたかについて、簡単な言及があった。現行法のスキームにすることことについては、映画製作者(motion picture producers)の側から、やはり反対意見が出たことが述べられている。その理由は、やはりnonexclusive licenseが著作権の移転に付随することにより、その著作権の価値にdrasticなeffectを与えるということである。
   しかし、レポートは、仮にnonexclusive license について何らかの登録を要求するとした場合、それに伴うimpracticalitiesとburdens、日本語に訳せばおそらく非実効性・非現実性及び負担となるのだろうが、それらは登録制度を設けることによって得られる限定された利益を上回るという認識を示している。
   このような経緯で米国のスキームが作られたことを考えると、本小委員会の報告書は、実態に配慮した簡易な登録制度という案でまとめいただいているわけだが、米国は、登録システムはどのようなものであれ、やはりそれのもたらすimpracticalitiesとburdensは、それを設けることによって得られる利益を上回るという認識を示して現行法のスキームを採ったのではないか。
   これまでの、本小委員会での審議の経緯において、他の委員から提起された問題というのは、現行の我が国の法制度との整合性が最大の障害であるということであったと思うが、我が国の制度がそうなっているのだから我慢しろと言われても、我々は納得し難いところがあるので、その辺の事情を反映していただきたいと考えている。

○   8ページ最終段落だが、ここでは仮に公示制度を採る場合にどのような検討課題があるかについて記載されているが、我々は以前から登録制度の問題点の一つとして、特許の場合、現行の制度ではライセンサーの協力がなければそもそも登録ができないという点を指摘している。いかに簡易な制度であっても相手が了解しないと登録できないのであれば根本的な問題であるので、登録の主体というのも重要な検討課題であろう。その辺についても報告書で言及していただきたい。
   10ページ3の第二段落だが、これは書面契約の存在により、利用許諾を物権的権利の変動に優先させるかことについて現行制度との関係を議論していると理解。米国の制度が全て良いと申し上げるつもりはないが、米国の著作権法でも、私の理解では、著作権が二重譲渡された場合の優先関係は登録の先後によるという原則が採用されていると思う。ただし、非独占的なライセンシーとその後の著作権の譲渡との関係ということでは、以前から申し上げているように書面による契約があるライセンシーを勝たせることになっている。米国も基本的に同じような事情あって、それでもなお、このようなスキームでライセンシーを保護しているとういうことを指摘したい。
   11ページ(2)の「対抗要件によらない保護(利用許諾契約の承継)」という点だが、この案について以前に検討した際に我々としてコメントしているが、この案の根本的な課題は、既に記載してある破産時の保護の観点が一つと、もう一つは、ライセンシーとしてなす術がない、自分を保護する主体的な手立てがないこと。要するに、譲受人の事情次第でライセンシーが保護されるされないということになってしまい、ライセンシーが自ら利用の継続を図る手立てが取れないことが課題としてあると考えている。
   12ページ3だが、契約上の地位を承継させない場合の問題としてアからウまで挙げてあるが、本当にこれらが問題と言えるのかと我々は思っている。
   まず、アとして「著作権等の譲受人は自らの著作物等が利用されているにもかかわらず使用料が請求できない」ということが挙げられているが、例えばプログラムの著作物の利用許諾契約というのは千差万別であって、必ずしも対価の支払いがあるとは限らない。例えば共同開発契約の中では、相互に持っているプログラム情報を開示し共同開発に利用するという規定がよく設けられるが、このような場合には何ら対価の規定はない。共同開発の一方当事者が、例えば資金調達等の理由で権利を第三者に譲渡した場合、その第三者は今までの無償であったものについては使用料を請求できないという見解もあると我々は理解している。
   イについてだが、著作権を譲渡した譲渡人がなぜ引き続き著作物の利用を許諾できるのかということだが、法律でそのような効力を生じると規定すれば、契約関係が承継されなくても、債権なりを対抗できるという解釈が可能ではないだろうか。従って、承継されない場合の問題として本質的といえるのだろうか。
   ウについてだが、ライセンサーが破産した際、破産管財人が、著作権を第三者に譲渡するが、その譲受人にライセンス契約を承継させず、そして破産手続が終了し破産財団が解散した場合はどうなるのかという点は、我々も気になっていたところ。このような場合は、例えば、残務処理が決了していないという解釈ができるのであれば問題にならないという気もする。
   13ページ5だが、「著作権等の譲渡取引の際、譲渡人と譲受人の契約により、譲渡した著作権等に関し、譲渡人による著作物等の利用を認めること、譲渡前に締結した利用許諾にかかるサブライセンスを認めること等、譲受人が債務を引き受けるにあたって一定の条件を付すことは可能と考えられるが」とあるが、前回私が申し上げたのは、現行の著作権制度は利用許諾を対抗することができないので、我々は既に利用許諾を第三者に与えている著作権等を譲渡する場合には、我々が引き続き既存ライセンシーに利用を許諾できるというサブライセンスの権利を取得する、又は譲受人に対し譲渡人が既にライセンス契約を結んでいるライセンシーに新たに同一のライセンスを与えるという約束をして、著作権等の譲渡を行う。利用許諾の対抗制度ができたとしても、従前の契約がデフォルトしないように、譲渡人も様々なアレンジを行うことになると思うが、そういう契約上の工夫と対抗制度の関係を前回議論したと思う。そうであれば、2行目の「譲渡人による著作物等の利用を認めること」という記述は、妥当ではないのではないか。

○   例えばクロスライセンスのように双方が相手の権利を利用するような契約関係の場合に、一方の当事者が自己の著作権を第三者に譲渡したといった場合に、その他方の当事者はそのライセンシーでありまた自己の著作物についてはライセンサーであるわけだが、その自分の著作物の利用権まで相手方の著作権の譲受人に利用許諾を認めなければこの利用の権利を対抗できないということであれば非常に困る。報告書では合理的な解釈が求められるところと書いてあるが、もう一歩踏み込んで、クロスライセンスの場合には譲受人がライセンシーの地位までを当然に取得することはないという明確な言及を入れていただきたい。
   5.の「まとめ」について、13ページ2についてだが、「制度整備に当たっては、破産時における破産管財人の利用許諾契約の解除の場合のみならず、著作権等の譲渡に伴う利用許諾契約の解除の場合も」とあるが、この「著作権等の譲渡に伴う利用許諾契約の解除」というのはちょっとニュアンスが違うのではないか。
   14ページ4についてだが、我々としては書面契約の存在による対抗要件の付与によるライセンシーの保護制度を提言の中に盛り込んでいただきたい。昨年の審議のまとめにおいても「保護対象を特定する方法・方式については、個々の案の利点を活かしつつ複数の案組み合わせた案を検討していくべきである」との言及があるので、簡易な登録制度だけに提言の内容を絞るのではなく、やはり外国の例から見ても非常に現実的だと思われる書面契約の存在による対抗要件の付与という制度について、提言の中になるべく反映していただきたい。
   前回事務局から提示いただいた骨子案では書面契約の存在による対抗制度への言及があったわけだが、今回の報告書のまとめからは割愛されている。我々の立場から申し上げると割愛は困る。むしろ積極的に提言の中に盛り込んでいただき、今後の他の知的財産権における同様の検討の際この案は議論されると理解しているので、それと整合性が取れる形の提言にしていただきたい。

○   私は今の委員の発言には若干違和感を覚える。本日はこれまでの議論のまとめの場であるので、これまでの議論の中ででていた論点のまとめ方についての意見に留めるべきだと考える。書面契約の存在による対抗要件の付与を強く希望されるところは理解するところだが、それ以外の細かい点については、分けて審議させていただきたい。細かい点になるとここで一からの議論を蒸し返すことになる。
   米国の例、或いは委員の業界の事情を挙げていただいたが、我々が審議しているのは我が国の著作権制度全般であって、委員の業界の事情は大変よく分かるが、それ以外の業界ではまた違った実態があるところとのバランスを取らなければ法制度はできない。この場では色々な意見が出たわけだが、それを並列的にまとめているこの事務局の案については、大まかなところでは私自身は違和感を持っていない。
   ただし、まとめのところで書面契約の存在による対抗要件制度をどう盛り込むのかという議論はあろうかと思うが、その他の点については色々な議論があったということを紹介すべきであろう。
   委員のただ今の説で論議を進めると、ライセンシーを保護する制度はできないということで終わる。委員の業界の慣習に沿った制度であるならば我々の業界は作ることには反対である。米国では書面による契約が当たり前であろうが、委員の業界では書面による契約が通常かもしれないが、例えば我々の業界と権利者団体とのライセンス契約は団体協約であり、個別の契約書があるわけではない。その辺もやはり業界によって実態が違うところ。このまとめのように全体的に並列的な書き方はありがたい。

○   報告書のまとめ方だが、先程の委員の発言は、書面契約の存在による対抗要件制度だけを記述すべきと言っているわけではなく、登録による公示制度以外に書面契約の存在による対抗制度という選択肢も報告書に残して欲しいという趣旨であると理解。だとすると、果たしてそういうことも駄目であるという議論でまとまっていたと言えるだろうか。この報告書案では、登録制度についてはこれを基本にすべきであるとポジティブに記述し、他方書面契約の存在による対抗制度については、そういう制度もあるとは言っているが、譲受人の利益にならないと言っておりネガティブな記述になっている。私はライセンシーの保護について審議の全てに出席していたわけではないが、全体の議論はそこまで収斂しただろうか。収斂していたのなら今更それを蒸し返すのはフェアではないが、そうでないのだとして、かつ委員のおっしゃるように選択肢として残してほしいということであるなら、並列的書き方をしておいても構わないのではないか。

○   報告書案の書振りだと、いわゆる登録制度、それが簡易なものであるかどうかは別として、それに収斂させることを小委員会の提言としてまとめているように思ったので、私も本小委員会の一員であるが、私としてはこのような提言には賛成していないということで先程発言させていただいた。我々としても登録による公示制度は一切排除し、公示によらない書面契約の存在だけで対抗できる制度にすべきだというふうなことを申し上げるつもりはない。他の業界には我々とは別の意見があるということは理解している。我々の要望する制度も選択肢として残していただきたいというのが発言の趣旨。

○   英米のように、契約は全て書面でなければならないという制度を取っている国もある。フランスのように書面は一応の証拠という考え方を採る国もある。その中で我が国の制度をどう位置付けるかの問題だが、米国法について大分言及があったが、米国では書面がなければ契約は全て無効であるが、我が国の場合はそうでない。そのあたりも踏まえ、一つの方法として書面契約の存在による制度も考えられるという意見が出たというところで承っておきたい。

○   10ページのドイツ著作権法第33条だが、 ここで類例として挙げるべきではない。ドイツは著作権を譲渡するという制度がない。従って、通常のライセンス契約と独占的ライセンス契約の関係が33条に規定されているにすぎない。
   通常のライセンス契約があって、事後に独占的ライセンス契約が成立した場合、先の通常ライセンスはその影響を受けないと書いているだけで、この状況は我が国の著作権法と民法の解釈においても同様。従って、ここにドイツ著作権法第33条を類例として挙げることは適切ではない。

○   まとめについてだが、これは二年間にわたる議論について、かなり現実的な登録手続と公示制度により、譲受人にも不利益がないようにしようという配慮をした案であると思う。であるから、それはそれなりに評価しなければならない。
   しかし、本小委員会には民法の先生もおられるので、是非ここで考えていただきたいのだが、14ページの4について、簡易な登録制度と書いてある、対抗要件のある利用許諾の存在の可能性を示すだけの簡易制度。本来、公示による対抗要件というのは権利の存在の「可能性」を示すものではなく、権利の存在を示さなければならないもの。それによって法的安定性が確保される。
   ところが、利用許諾の存在の「可能性」を示すだけの簡易な登録制度ということになると、私もこのメリットは充分承知しているが、実際の紛争ではどういうことが起こるかということを示しておきたい。
実際の紛争では、著作権の譲受人Xが、従前からライセンス契約のあるYに対し、著作権に基づく妨害排除請求権としての不正使用差し止め請求を起こすことになる。原告は、自分が著作権者である、被告は不正使用をしていると言う。
   対抗要件の取得の先後で勝ち負けを決めることになるが、この場合、著作物の特定ができているかどうかが争点になる。
   つまり、権利の存在の「可能性」を示すだけの公示であるから、勝ち負けを決める裁判官は、公示が「可能性」として充分かどうかを審議しなければならない。被告Yは、相当事由があったこと、つまり著作物の特定可能性として充分であったことを主張することになる。これに対して、民事訴訟法上のルールとして、原告はその根拠事実を減殺するような事実を主張することができる。相当事由に対する抗弁・再抗弁を行うことができる。このような制度を作る場合、以上のような問題が必ず起こるということを認識していただきたいと思う。裁判になれば相当性の判断になるということを付問しておきたい。
   もちろん、譲受人が簡易な登録制度に基づく対抗要件の存在を認めて、既存の利用許諾を尊重するということになれば問題は起こらない。取引ルールとしてこれが定着することになるのであれば、私はこのような法律制度を作ることは極めて優れていると思う。

○   ご指摘の「対抗要件のある利用許諾の存在の可能性を示すだけの簡易な制度」という記述は、私も表現振りは気になっていたが、利用許諾の対象となっている権利の「特定可能性」という意味であると理解した。もし疑義が生じるのであれば、その権利の対象となっているのは何かという「特定可能性」という言葉を使うとか、あるいは動産債権の世界での「識別可能性」という言葉を使うことも考えられる。
   不動産のような登録制度は、個々の権利はどういう権利であるかを詳述し、それについて登録することとしている。現在の著作権の登録制度はそれに近い制度かもしれないが、報告書案において提言している登録制度はそういうものではなく、どのような著作物が権利の対象となっているかを知るための手がかりとなる情報を公示するもの。
   例えば、包括的なクロスライセンスや一切の権利を対象とする契約については、それに含まれる個々の権利は特定されていなくても、訴訟になった時点では、これとこれが入っているということを事後的に特定できるので、それは特定可能性があると言える。
   こういう仕組みは、不動産の場合にはないけれども、債権の場合は、債務者不特定の将来債権の譲渡を登録できるよう改正が予定されている。それから動産についても、ファイリングシステムの導入が検討されているが、個々の動産について番号を控えるというのは非効率なので、ある程度まとめた集合動産としてファイリングする制度が検討されている。何が含まれているかという問題についての解決の見込みさえ立てば、特定可能性を示すだけでいいという制度を考えるべき。
   前回、不動産登記を念頭に置くと使いにくい登録制度になるという指摘があったが、それは不動産をモデルにすることが問題なのであって、利用許諾というのはむしろ動産・債権に近いものとして構組すべき。そうすると、それらに共通の制度・考え方が示されてくる。法制化も時期的に同じになると思うが、制度の横並びを考えていただくと、流動化や証券化等の様々なビジネスの際にも制度間の平仄がとれてよいと思う。

○   著作権法は、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り」と書いてあるが、著作権法は著作者の権利を守っていただければよいのであって、利用者の権利を著作権法に規定することには疑問を持つ。

○   新たな制度というのは、既存の業界や事業の実態を反映するところが入口になると思う。そういう意味で言うと、書面契約による保護を前提にしている業界では登録制度を新設しても、それを利用することは進まないのではないか。しかし、新規参入者、つまりこれまでその業界の秩序や伝統と全く無関係であった者が参入する場合には、登録という制度があれば、慎重にビジネスを行うということで、この制度を利用することがあるかもしれない。要すれば、A業界とB業界で考え方が真っ向対立するという議論は生産的ではない。登録制度が一つの方法論として存在しても良いのではないか、と考えること自体は有益なことと思う。

○   まとめの14ページまで見させていただいたが、おおよその方向性・内容は、これで結構だと考えている。前提として、破産時の双方未履行契約の問題と著作権譲渡時のライセンシーの対抗問題を同じ考え方で解決をすることが必要なのだろう。
   それから、公示による対抗力の問題、つまり対抗力の問題なので公示を必要とするということになるのだろうと思うが、その際、先程から事務局より紹介があったような契約書面をファイリングするような簡易な仕組み、これは権利の内容をきちんとすることができないものついては、個々の契約毎の簡易なファイリングシステムによる対抗を考えていくという方向性がよいのではないか。
   もちろん、登録制度の利用がスムーズに行われる必要があるので、検索システムについて充分考慮しなければ、利用許諾の存在可能性を示すことが難しいと思われる。そのような仕組みについて言及した上でのまとめにしていただければありがたい。
   著作物のような無体物について、有体物を前提に考えられた公示制度の適用は難しいと思う。従って、それぞれの利用許諾毎を軸にしたシステムにならざるを得ないのではないか。その場合、どのような著作物にライセンスがあるのかを譲受人が当事者として知り得るような仕組みが当然必要になるので、その確認システムを入れる必要があると思う。
   ライセンスの存在が付随することは、譲受人に不利益であるという意見もあるが、不動産の場合と違って、ライセンスがあればあるほど多くのライセンス料がライセンサーに入るという関係もあると思う。外国の法制度や状況を勉強する必要もあるとは思うが、著作物という無体物に関する対抗問題ということで考えていただきたい。

2.その他」に関する意見

○   22Pの集中管理事業のあり方について、二番目の意見に「利用者側の問題かもしれないが」という文言が入っているが、裁定制度は基本的に利用者と権利者が協力、共同してその趣旨を活かしていくことが必要かと思うので、この文言は削った方が報告書としてはすっきりすると思う。

○   著作権等集中管理事業のあり方について、「信託業法が改正された場合において、信託を使った資金調達の仕組みが問題となる。」という議論はあったが、これは直接に集中管理事業制度そのもののとは関係ないので、まとめとしては記載することは不要ではないか。

○   「信託業法が改正された場合において、信託を使った資金調達の仕組みが問題となる。」という記述は、他の記述と異質なものがいきなり出てきた感じがする。この一行だけでは何か全く関係の無い記述が出てきた感じがする。もし記載するのであれば、表現をひと工夫する必要がある。

以上



(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室)

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