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文化審議会

2003年9月24日 議事録
文化審議会著作権分科会   契約・流通小委員会(第5回)議事要旨

文化審議会著作権分科会   契約・流通小委員会(第5回)議事要旨

1.   日  時 平成15年9月24日(水)14:00〜16:00

2.   場  所 経済産業省別館10階1020号会議室

3.   出席者  
      委員)
紋谷主査、安念、飯田、石井、今川、上原、大森、加藤、久保田、児玉、佐々木、寺島、土肥、生野、橋本、松田、森田の各委員

      文化庁)
吉川著作権課長、吉尾国際課長、川瀬著作物流通推進室長、他

4.   配付資料:

資料1         契約・流通小委員会第4回議事要旨(案)

 
資料2−1   旧仲介業務法と著作権等管理事業法の比較  
2−2   著作権等管理事業法施行後の状況について(加藤委員より説明)

 
資料3   「意思表示システム」の開発・普及のあり方について

 
資料4   「契約・流通小委員会」の検討状況について(案)

 
参考資料           「自由利用マーク」パンフレット   (PDF:2,870KB)


5.   概  要:

   事務局及び加藤委員から資料に基づき説明があった後、各委員により以下のような意見交換が行われた。(以下、委員:○、事務局:△)


「著作権等の集中管理のあり方について」

○著作権等管理事業法の施行により新規の管理事業者が参入してきたが、管理者団体毎に異なった規則の解釈や異なった管理体系になっている場合があり、その調整を利用者が自らやっている実態がある。
   事例としては、少ないが、音楽について、一任型の管理の作品と非一任型の管理の作品の別が不明確なところがある。一任型の信託楽曲という前提で利用計画を立てて公表したら、「指し値」と言われることがあった。利用者側としては、管理事業者が同じような区分の楽曲で、非一任型管理の「指し値」の曲を増やすのであれば、利用者としてはコストが高いので使わない、使いにくい、ということになる。利用者側が混乱する要因の一つにもなる。

○音楽については、従来の仲介業務法では、JASRACのみが集中管理を行っていたので、JASRACから許諾をもらうことで全て解決していた。それはそれとして、便利な状況だったわけだが、今後、権利者が色々な管理先を選択できることで、1つの楽曲について、JASRACが管理する著作権が、権利全体の比率として95%しかない、残りの5%の権利に係る部分は権利者が分からないという場合、利用者は自らリスクを負うことになるので、利用者側が一方的にリスクを負うのではなく、何かよい方法はないかと感じている。この辺は今後の検討課題にしていただければと思う。二年経って、色々細かい点について、感じるところがあるので、機会があったらその辺の話をさせていただきたい。

○利用者にとって管理事業法の施行はどうだったのか、経済的影響はどうだったのか、その点はまだ見える形では、はっきり出ていない。これからだと思う。言えることは、今まで参入できなかった者が参入できる、これは絶対に良いことで、結果がどうであったかは、それぞれの事業者の努力の問題であると思う。
   説明資料中に、使用料規程の制定・変更における問題点として利用者代表以外の利用者の意見が反映されにくいと書いてあるが、制度としては、利用者代表をもって一括りに利用者としているが、利用者によって利用実態が違っているということがある。

○コンサートライブのビデオ、劇場映画、或いはアニメーション、これらは確かに利用のされ方が違うので、ある意味では別々の利用者代表が必要ではないかとも思うが、現実問題としては、団体のメンバーは一緒であるから、そういう中で調整するということでいいのではないかと思う。それとは別に利用区分というのは見直していただいたほうがよいと思う。特にこれから映像配信の話になってくると、今までとはかなり違ってくる。今、映像配信の件で利用者団体が集まり相談しているが、そこでも状況の違いが目立つ。利用者代表者をどうするか、利用区分をどうするか、という問題は、制度を見直すという視点でもう一回検討したほうがよいのではないかと思う。

○放送に関して運用上の問題が起こっているということは、管理事業法に関してはない。ただし、音楽については、利用申請の窓口が増えたことであるとか、コストの問題とか、一部「指し値」の部分が増えることによりコストが上がるというようなこと等、利用者側からすれば「困ったな」という問題が出てきていることは事実。その事実だけをもって、この制度を良し又は悪しと判断すべきではないと思うが、現実としてそういう現象が起こっている。
   もう一つ利用者として非常に困るのは、管理事業者について、新規参入が認められるようになったことは、理念としてはよいのだが、管理事業者として登録したという報告はあるが、いつから稼働するという連絡がない事業者が多い。ホームページはあるが、使用料規程は事務所に行かないと見ることができない。そうなると、利用者としてはかえって個別の権利者に電話して話した方が早いという、「何だこれは」という状態が実際起こる。指定管理事業者になっていないような事業者の運用上の問題が、利用者側としては出つつある。

○管理事業者にはなっていないが、今後インターネット、その他の様々な媒体への対応として、集中的な管理をしようと努力しているグループがここ2、3年の間にいくつか出てきている。このような団体の責任者が管理事業法のことを十分理解しないままに管理しようとすると、利用者側が「こういう管理をしないと管理事業法の登録義務違反である」と一々教えている状況がある。できたばかりの法律なので、どうより良い制度にしていくか、使いにくい部分をどうするか。制度上の問題として、指定管理事業者は問題が出たとしても、色々な解決方法がありえるが、そうじゃない管理事業者をどうするか考えていかなければいけない。

○非常に大きな問題として、利用者代表以外の声が反映しにくい法制度であるということがある。全員の意見を聞かなければ運営してはいけないということになると問題であるから、これはこれで一つの割切りとして十分に理解するところであるが、一方で利用者代表をつくって、そことだけは法律上できるだけ協議をするということになると、利用者代表以外の声がこぼれやすい制度になる。今から思うと、もしかすると、この構造というのは、独占禁止法の精神から言うと、広い範囲を占める利用者団体と広い範囲を占める権利者団体との間で物事が決まっていく枠組みというのは、ひょっとしたらこの枠組み自体が大きく精神的に問題がある部分があるのかもしれないと思ったりもする。その辺については法制度的にはもうひとひねりあったほうがよいと思う。施行から二年目、ちょうど色々な実態が出てきたところであり、諸々良い点、悪い点感じているところがある。

○言語の著作物の分野で、日本文芸著作権保護同盟が新しく日本文芸家協会に承継されることになったが、現在、小説、原作の分野について、出版社が代理管理というか、窓口になるという傾向が非常に増えている。

○資料2−1の別紙2に記載されている団体の大半と契約しているが、二年経った総括としては、ほぼ順調と言ってよいと感じている。それなりに機能しているのではないかと評価している。今後の問題は、管理事業法にかかっていない非一任型の管理の部分をどうやっていくかというところ。管理事業法の目的にあるように、利用を円滑にするという点で、やはりこの問題は避けて通れないのではないか。
   せっかく管理事業法の中で円滑に利用するための裁定制度といった仕組みが作られているので、これは利用者側の宿題かもしれないが、法の趣旨を生かしながら制度を上手く活用し、円滑な著作物の利用を考えていかなければならないというのが今後の課題ではないか。

○現在、著作権を信託し受益権を証券化して一気に資本の回収を図り、次の文化資産を創造するための投資に結びつけようという動きがあるが、信託を引受けている管理事業者は、そういう証券発行業務を見据えた事業、及びそれに関する法制度の問題を検討しているのか。

○JASRACは著作権をプロモートする立場ではないし、受益権を証券化して資金を集めてクリエートするという立場でもない。あくまでも維持管理型。JASRACのような団体は、証券化の分野についてそれが良い悪いという立場にはない。資産の流動化が盛んになる結果として、新しいコンテンツが増えると、当然そこには音楽が使われるだろうし、そして作られた著作物が流通していくことについては、我々としては賛成である。
   将来的に、JASRACが信託譲渡を受けた著作権の処分を行う、証券化する、そういった場合は信託業法の免許を受けてやらなければならない。そういうことをJASRACのような性格の団体がやることが、ユーザやコンテンツの流通のためになるのであれば別だが、多分ためにならないだろうとJASRAC自身は判断している。

○証券化については、それこそ、専門集団の金融庁の監督下でいわゆる金融業やっているところと組む、というこになるかと思う。信託を活用して受益権を証券化する場合、流通しているコンテンツがいくら稼いでくるか、というのが証券化で支払う原資になる。今、いい形で流通しているからこそ、そのコンテンツ、或いはコンテンツのツールが証券化の対象になるということ。制度が事業をつくるのではなく、事業が存在しているものをどうやって法制度上きれいに切りわけるかということで考えると、おそらく、現在管理事業者として実績を有している事業者が例えば信託銀行と組むことによって、特定のコンテンツが証券化され、さらにそれを生み出した著作者に、証券化の結果として回収を早めた形で、資金が還流する。
   文化庁が金融庁と行っている議論の流れというのは、将来的にそういう途を開くことになる。つまり信託業法の中において、別の背景で成立したものが尊重されて、それが既存の金融業と密接に結びつくということは、最終的には、全員のプラスになっていくと考える。

○証券化という話が出たが、証券化の一つの方法として信託受益権を証券化するという方法があるが、JASRAC等に信託する場合、委託者が受益者となるが、その受益権を証券化することを認めないような約款上の規定はあるのか。

○原則的に受益者は信託者自身、若しくはその継承者としている。ただし、色々な事情があって受益者を指定することも一部認めている。今回の信託業法の改正についてだが、特に音楽の場合は、信託会社が管理事業者に再委託するにしても、そこには訴権が含まれているのかどうかは再委託を受ける側として重要。
   それから、コンテンツは使われて初めて価値を生むのであり、信託業者もこれが一体いくらで証券化できるか、つまりどのぐらい使われるか、果実を生み出せるかという見通しがないものを、むやみやたらと信託を受けることが可能なのだろうか。
   資金調達の面から言うと、音楽ではなくて、映像が中心になっていくのだろう。その意味では、クリエーターが資金を集めて作品が作りやすくなるということは、良いことである思うが、音楽単独で、一部の音楽だけの信託を引受けて、JASRACに管理を再委託するとしても、そんなに金にはならない。信託銀行も音楽著作権の信託を引受けを考えているようだが、今のところ自ら管理事業をやるつもりはないようだ。


「意思表示システムの開発・普及について」

○玄人は限定した権利しか許諾しない。まして自由に使って良いという者はいない。

△「自由利用マーク」については、文化庁内でもよく理解してもらえないところがある。利用してもらうために色々と工夫しなければならないと思っている。一方で、我々がパンフレットを送付すると、団体によっては非常に関心を示し、もっと話を聞かせてほしい、パンフレットをもっとほしい、という反応もある。
   確かに一般の著作者の方に付けてもらうことははなかなか難しいと思うので、地方公共団体等の公的機関が、一般向けにホームページ等に掲載する著作物については、広く周知したい、勝手にプリントアウト等してもらっても構わないと考えている場合が多いと思われるので、その辺を中心に普及すれば、ある程度普及するのではないかと思っている。

○これまでも何回か本小委員会に報告していただいているところだが、逆説的だが、地方公共団体とか国の税金でやっているものに対しては、「非自由利用マーク」というのを貼らない限り、その著作物は自由に利用して良いというのを義務づけてもいいのかもしれない。「自由利用マーク」がついているもの以外の利用は法的にグレーということ。乱暴な言い方だが、国が著作権を尊重することを全面的に訴えるのであれば、グレーなものは自由に利用できないということを明確にしてしまうということをやってもいいのではないか。逆に言うと、「非自由利用マーク」がついていないものは全部自由利用というのもあると思う。
   もともと営利目的の著作権者は多分これから外れる。国、地方公共団体、その他がベースになることであるならば、そのぐらいのことをやっても構わないのではないか。

○「自由利用マーク」という言葉自体が非常に難しいところがある。弁理士会では学校新聞、教育新聞に今後積極的にマークを付け、認知してもらうことを考えている。
   それから、このマークを普及させるためには、脚本といった分野ではなく、よく著作権フリーと書かれているソフトが多く出回っているが、ああいったものに積極的に使ってもらうことから進めるのも一つの方法だと思う。
   普通の人は「自由利用マーク」について全く分からないのだから、インターネットで著作権フリーの語で検索した場合、「自由利用マーク」が当たるような仕掛を作る、著作権フリーを検索すると常にこれが出てくるようにするといった工夫すると良い。

○国・地方公共団体の出版物からマークをつけるのが一番良いと思う。小学校に普及すれば相当なもの。営利を目的とする業界にも積極的に使ってもらうとよいのではないか。著作権に限定せず、こういった自由利用について興味を持っている者は他の知的財産の世界でも結構多い。

○せっかく策定したものであり、できるだけ使えるものになるとよいとは思うが、最初の検討の際、私はこの3つのマークの内、「コピーOKマーク」はやめたほうがよいと言った。一旦マークを付けると撤回が非常に難しいという性格があり、特にホームページといった撤回が難しいものについて、「コピーOK」、つまり有料でなければ営利目的も可というのは、権利者としてはマークを付けることに非常に抵抗感がある。そういう意味で、普及のためには、非常に限定して「障害者OK」「教育OK」に限定すると抵抗感なく付けやすいと考える。最初は、権利者がマーク付けることに抵抗感のない分野のみから普及を始めてはいかがかと申し上げたが、色々な議論があり、結局、策定されたマークには「コピーOK」も入っている。やはり「障害者OK」「学校教育OK」の、理解が得やすい分野を特に進めていく、3つのマークをパラレルを進めるよりは、理解を得やすいものから進めていくことも一つの戦略ではないか。

○国や地方公共団体が作る著作物については、「国民の税金で作るものであるから」という理念は大変よく分かるところだが、国や地方公共団体が作る印刷物、ビデオ、或いはホームページ等については、何らかの形でプロが関与していることが一般的。幾層にもわたってプロが関与している。ホームページを作る場合、ホームページを作るプログラムを組むところで当然どこかに委託するのであって、行政が自ら作っているわけではない。経験上申し上げると、地方公共団体は意外にそのことが分かっていない。税金で作られる著作物からというのは、気持ちとしては大変よく分かるが、これを進める時は、同時に地方公共団体への著作権教育を進めることが重要。

○このマークが策定されて随分経っているが、私自身、いまだインターネット上でお目にかかっていない。こういうものは、一旦皆が使い始めると、どんどん利用がすすむもの。マークがあること自体インターネットでホームページを開いている者は知らない。また、付けようと思っても、どこに行ってどういうふうにダウンロードすれば使えるのかということもよく分からない。それが現実ではないか。
   その意味でもっとPRすることが重要。このような制度を我々は作ったのだから、もっとPRしないと普及しない。とにかく、こういうマークがあって、自由に自分のホームページに付けてもよい、ということが分かるような仕組みをつくれば、或いは皆に使ってもらえるようアプローチすれば良いのではないか。


「審議経過報告(案)について」
   契約・流通小委員会審議経過のとりまとめについては、座長一任の上、10月15日の第10回著作権分科会に報告されることとなった。

以上



(文化庁著作権課著作物流通推進室)

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