文化審議会
2002/10/04 議事録文化審議会著作権分科会契約・流通小委員会(第4回)議事要旨 |
文化審議会著作権分科会契約・流通小委員会(第4回)議事要旨
1 | 日時 平成14年10月4日(金)10時30分〜13時 | ||
2 | 場所 経済産業省別館10F1020号会議室 | ||
3 | 出席者
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4 | 配布資料 |
5 | 概要
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○: | ライセンシーの第三者対抗要件の問題は、債権的なライセンス契約を物権の譲渡に優先させるという、大変大きな問題である。著作物の利用はほとんどライセンス契約であり、そのライセンス契約は企業活動の中心に位置付けられるものであるから、それに対する非合理的な不利益が生じればかなり議論をしてでも検討しなければならない。 物権と債権の立場の問題だけでなく、ライセンシー同士の優先順位をどのように整理するのかということを議論しなければならない。又破産法第59条等を見てもわかるように、現行の破産法は破産管財人に選択権があるため、ライセンシーの立場が一般債権者と同等の地位に置かれてしまい、この点アメリカの破産法とは明確に違う。アメリカの破産法はライセンシー側に選択権があり、継続的に製造販売できるような処置をしている。ライセンサーである権利者が破産したことによる不利益をライセンシー側に負わせることは市場経済活動からすると不合理な状況になっていると言わざるを得ない。選択権はライセンシー側にあるべきと考える。 |
○: | ライセンシーを保護すべきというスタンスで議論するとしても、ライセンサーを保護すべきもの、ライセンシーを保護すべきものと両方の場合があり得る。まずはシンプルなライセンサーとライセンシーの関係、ライセンシー同士の関係を物権、債権の二重譲渡等について整理が必要ではないのか。事務局側において整理していただきたい。 |
○: | 破産管財人は、破産者の債権債務関係の財産整理をする際、どのような財産があるかは勿論のこと、どのようなライセンス契約があるのかということを調べ上げるのが最も重要な仕事であるから、実務からすると、破産管財人はライセンス契約に係るライセンシーの存在を認識している場合がほとんどである。 ライセンシーの存在を知って財産整理をする場合は、第三者的地位としてライセンス契約を解除せず、ライセンス契約を付けて権利を譲渡して換金するなど、最もトラブルが生じない状態で破産実務を行うものである。 現行の破産法下でのトラブルは、実務経験上殆んどないと認識している。極めて稀なケースとしては、ライセンス契約の存在を破産管財人が知らずに売却した後、ライセンシーの存在を知ったケースにおいて譲受人とライセンシー間の問題が生じることがあり得るといった程度である。 |
○: | 破産管財人はまず承継される契約に拘束されることになり、それは破産法第59条に規定がある。ただ理論的に特定人としての第三者的な管理人として、解除又は履行をなし得ると思われる。 |
○: | 破産管財人がライセンシーの存在を知らずに権利を譲渡した場合、これは破産管財人が第三者的地位に基づいて処理をしたことに他ならない。第三者的地位について破産法上において規定はないが、そもそも同法第59条及び第60条における行為をする前に既に第三者的地位があって、債権に対抗できる物権取得者と同等の地位があると考えられる。実際には、破産管財人はその地位を主張することはない。 |
○: | 主にコンピュータプログラムの問題に関してライセンサーとライセンシーの問題が説明されていたが、実務上はそれに限らず、番組製作者と放送事業者の間にも同様の問題がある。放送番組を二次利用する際には契約によって様々な利益を担保させているが、急速に変化する社会経済においてM&Aを始めとする権利の譲渡が今後ますます増加すると予想されるため、権利の譲渡があっても、契約が承継されるとありがたい。 |
○: | ネット配信においても、音楽の原盤や、電子出版についても破産等の問題が生じており、今後ますます権利の流動化が進むので、破産等による権利関係の問題は多くなると認識している。 |
○: | プロダクションの立場として、ある番組制作会社とある放送局との間で放送のライセンス契約をしていたが、契約期間内に放送権が番組制作者から別の番組制作者に譲渡され、その別の番組制作者が先の契約内容に反したライセンスを別の放送局に与えてしまうことも十分あり得るわけであり、コンピュータプログラムだけでなく、テレビ放送番組等の契約においても同様の問題が生じる。 |
○: | ビデオグラムの場合も同様の問題があり得る。 |
○: | 破産法第59条の「双務契約二付キ破産者及び其ノ相手方カ破産宣告ノ当時未タ共二其ノ履行ヲ完了セサルトキハ」の規定において、「履行を完了」の意味を考える必要がある。アメリカではライセンス契約とは新しく利用する権利を設定し、処分することを指すため、契約成立後は全部履行しており、約束を撤回しないという考え方がある。このような解釈をとれば、既に履行していると解釈することもできるのではないのだろうか。 また、「履行」とは契約全体として捉えるのか否かという問題もある。条文上では「完了」とされているので、一部履行ではいけないという議論もあるかもしれない。しかし、ライセンス契約において「全部」又は「一部履行」となるのかは必ずしも明確ではなく、著作権のライセンス契約について破産法第59条の解釈を検討してもいいのではないか。破産法第59条において、ライセンシー側に何ら選択権がないのはおかしいが、この点については、実務的にも理論的においても解釈で解決できる部分があるのかもしれない。 |
○: | ライセンス契約において、ライセンサーは不作為債務を負っており、使用料との関係において有償双務契約非典型契約という判例がある。しかし、破産法第59条の適用においては、履行は完了しているという解釈もあり得ると思っている。 |
○: | コンピュータプログラムのライセンス契約の実務からいうと、その契約内容において、単に複製したものを頒布するものから、必要な改変等を加えて利用する場合等、様々な形態がある。契約の中にはバージョンアップ時のサポートサービスに係る付随的な義務もあるが、それ以外の部分を一部履行と捉え得るのか。破産法第59条でいう、双務契約の双方未履行とはどの範囲で考えるべきか。 |
○: | 特許法において先使用における通常実施権というものがあり、これは特許出願の日より前から、同一発明に関し実施している場合においては、特許権者に対抗することができるものである。著作権の譲渡とライセンス契約においてその対抗関係においての立法的対処の可能性として、「契約の先・後又は契約者の確定日付によって決する」という案があるが、確定日付に対する実効性、契約日付の操作による権利の濫用のおそれ等があることから、「ライセンスにより著作物を利用しているという事実を示す」ことで対抗すべきではないかと考える。 |
○: | 契約の先・後等により対抗することは任意操作が簡単にできる以上、不安定である。また、破産管財人が故意にライセンサー又はライセンシーに不利益になるような整理をすることは考えにくい。従って、まずはライセンサー、ライセンシーも含め、実際に保護しなければいけない者はいるのか、いるとすればどちら側を保護すべきなのかと段階に分けて考えなければならない。 |
△: | 今後このライセンス契約におけるライセンシーの対抗問題に関し、議論する上でどのように進めればいいのか、意見があればいっていただきたい。 |
○: | 破産法上におけるライセンシーとしての地位、それ以外の対抗関係に立った場合の問題を整理して議論する必要があるが、事務局の方できちんと整理して、案のようなものを示していただきたい。 |
○: | 今回の問題の論点は、破産法における問題、対抗の問題、契約に即した解釈上の問題と3つあるが、まずは、契約で整理できないかどうかを検討して、それから破産法、対抗等の問題を考えるべきである。 |
○: | 著作物は情報財であり無体物であることから、占有がなく物権法的な処理になじまないので登録等を考えることはないと思っている。今回の事例で特に問題になると思われるのは、ライセンシー間の問題で、それぞれ独占的なライセンスを受けているケースである。契約で解決することも考えられるが、何らかの制度で考えるべきではないかと思っている。 |
○: | 破産法第59条は、ライセンサー又はライセンシーのそれぞれの利益を区別して規定していないため、このような問題が生じる。 |
(2) | 事務局から文化審議会著作権分科会「契約・流通小委員会」の検討状況について(案)について説明があった後、以下のような質疑応答が行われた。 (以下、委員:○、事務局:△) |
○: | 「自由利用マーク」に関して、著作権者が実際にこのマークを利用するとは考えにくい。 |
○: | 様々な考えを持った権利者がおり、著作物の円滑な流通を促進する意味において、この会議で整理することは意味があると考える。 |
6. | 閉会 事務局から今後の日程について説明があった後、閉会になった。 |
(文化庁著作権課著作物流通推進室)