著作権分科会 法制問題小委員会(第9回)議事録・配付資料

1.日時

平成19年10月4日(木曜日)10時〜11時40分

2.場所

アルカディア市ヶ谷 6階 「霧島」

3.出席者

(委員)

青山、市川、大渕、末吉、多賀谷、茶園、土肥、中山、松田、村上、森田 の各委員

(文化庁)

吉田長官官房審議官,山下著作権課長,ほか関係者

4.議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    • (1)中間まとめ(案)について
    • (2)その他
  3. 閉会

5.配付資料一覧

資料1
  文化審議会著作権分科会法制問題小委員会平成19年度・中間まとめ(案)

(参考資料)

参考資料1
  文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第2回)議事録
(※(第2回)議事録へリンク)
参考資料2
  文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第3回)議事録
(※(第3回)議事録へリンク)
参考資料3
  私的録音録画小委員会中間整理(案)抜粋 (著作権分科会配付予定 同中間整理(案)より抜粋)

6.議事内容

【中山主査】

 それでは、時間でございますので、ただいまから文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第9回を開催いたします。
 本日は、御多忙中のところお集まりいただきましてまことにありがとうございます。
 議事に入ります前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと特段非公開にするには及ばないと思われます。そして、既に傍聴者の方々には御入場していただいておりますけれども、こういう処置でよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【中山主査】

 ありがとうございます。
 それでは、本日の議事は公開ということにいたしまして、傍聴者の方々にはそのまま傍聴をお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。
 まず、事務局から、配付資料の確認をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】

 それでは、議事次第の1枚紙の下に配付資料一覧がございますけれども、本日、資料1点と参考資料を3点お配りしております。
 参考資料の方は、遅くなりましたが、第2回、第3回の議事録の確認が終わりましたので、本日配付させていただいております。それから、参考資料3として、私的録音録画小委員会の中間整理からの抜粋を配付しております。
 過不足等ございましたら、御連絡をお願いいたします。

【中山主査】

 よろしいでしょうか。
 それでは、本日の検討をしていただきたい事項は、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の中間まとめ(案)でございます。
 複数の論点がございますので、効率的な議論を行うために、議事を
1、「デジタルコンテンツ流通促進法制」及び「海賊版の拡大防止のための措置について。」
2、「権利制限の見直しについて。」
3、各ワーキングチームでの検討事項等について。
 この3つに分けまして、事務局より「中間まとめ(案)」に基づいて説明をちょうだいし、その後、それぞれの各論点につきまして自由討議の時間をとりたいと思います。本日は非常に議事内容が多数に及んでおりますので、進行の方をよろしくお願いいたします。

1「デジタルコンテンツ流通促進法制」及び「海賊版の拡大防止のための措置」について

【中山主査】

 では、初めに、「デジタルコンテンツ流通促進法制」及び「海賊版の拡大防止のための措置」につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】

 それでは、資料1の方を御覧いただきたいと思います。
 目次がございますけれども、今期の法制問題小委員会で議論した項目につきまして、第1節から第6節までにそれぞれにまとめております。それから、まだ前半で議論が終わっていないことについて第7節で軽く言及をしている。そういう構成で全体をまとめさせていただきました。
 第1節から、順に御説明させていただきます。
 デジタルコンテンツ流通促進法制につきましては、3ページからでございますけれども、基本的に第4回の小委員会で論点整理をしていただいたものをそのまま記載しているという構成になっております。
 ざっと、どういう議論の流れだったかというところを拾って御説明いたしますと、1ページ目のところでは、近時コンテンツが十分に流通していないというような御指摘で、デジタル化、ネットワーク化の特質に応じた新たな法制を提案する動きが様々に出てきておりまして、経済財政諮問会議などでも取り上げられまして、デジタルコンテンツ流通促進のための法制度を2年以内に整備する、こういうことにされていたわけでございます。
 次のページで、そういった形で様々提案されている諸提案の概要についてまず御審議いただいたわけですけれども、様々な提案は、4ページから5ページで書いておりますが、要は共通の問題意識というものが、必ずしもその中からは発見できなかったということでございますし。2のところでは、特に提案の中では「デジタルコンテンツに限定した特別法」というようなものが意図されている場合が多かったわけですけれども、いろいろと見てみますと、「デジタルコンテンツ」というものの定義がはっきりしていない部分もありまして、結局こちらの部分の結論といたしましては、そういったデジタルコンテンツに着目して特有の法制度を想定するよりは、まず、どういう中身が必要なのかをまず検討して、その後でふさわしい法形式を検討してはどうかということで結論としております。
 そのほか民間も含めました諸提案の個別内容につきましては、論点整理いただいたものをそのまま参考資料1として、82ページ以降に掲載する形としております。
 このように、共通の問題意識がなかなか見えない中で、3番目としまして、ではこの小委員会で何を検討するのかについてそこから先で検討課題を整理しておりまして、7ページの上の部分ですけれども、経済財政諮問会議で少なくとも問題意識としていたものについては、「既に制作されているコンテンツをインターネットなどで二次利用するに当たっての課題」、こういうことで、一言で課題意識が整理できたかと思っております。
 ただ、それだけで課題が十分だとは必ずしも言えない部分はあると思いますので、(2)で、それに包摂されない課題としまして、本小委員会で取り上げるべきものとしまして、「デジタル化、ネットワーク化のもとでの著作物等の利用形態、創作形態に応じた著作権制度」をあげております。様々な新しい創作形態が出てきておりまして、それについて整理すべき点もあろうかということで、そういった新しい利用の実態をまずは調査して、検討課題の整理を行った上で、本小委員会で改めて検討を行うことが適当ではないかという形でまとめさせていただきました。
 その次のページからは、先ほどの経済財政諮問会議などの問題意識に即した具体的な検討でございまして、コンテンツの二次利用の問題、特にテレビ番組が想定されていたわけですけれども、まず、著作権以外の権利についての問題が様々あるという現状分析を(1)のところでさせていただいております。(2)が著作権契約に関する課題ということですが、10ページで、著作権契約に関する課題を一言でまとめますと、二次利用についての包括許諾などができる部分のものは契約コストなどの問題はないわけですので、もっぱら想定されるものとしては、権利者に連絡がつかない場合ですとかそういったところについていかに利用を円滑化するか、そういった形で課題がまとめられるのではないかという形の整理にしております。
 それを受けまして、「今後の検討の進め方」というところですけれども、利用の円滑化ということであれば、過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会で現在まさにその課題を議論しておりますので、デジタルコンテンツ流通促進法制の検討は、まずは同小委員会の検討を着実に進めていくべき。その検討の状況を見守りつつ、そのほか、ここから漏れる課題などを含めまして、改めてこの小委員会で総合的な検討を行っていくことが適当ではないか。そういった形でまとめさせていただきました。

【大和著作権課課長補佐】

 続きまして、第2節「海賊版の拡大防止のための措置について」、御説明いたします。
 この第2節は大きく2つの項目に分かれておりまして、一つは、11ページ以降の「海賊版の譲渡のための告知行為の防止策について」、もう一つは、18ページ以降の「親告罪の範囲の見直しについて」でございます。
 まず、1番目の「海賊版の譲渡のための告知行為の防止策について」ご説明いたします。
 これにつきましては、法制問題小委員会の第2回から第5回にかけまして御審議いただいた資料等を再構成して、さらにデータ的なものを追加したわけでございますが、特に、当時御議論いただいた際には、「海賊版の広告行為」というふうな言葉を使っておりました。
 これにつきまして、広告関係業界にも意見を聞いてみましたところ、「広告」というものについて法律上の定義はないわけですけれども、一般には、広告主の名をもってメディアを通じて有料にて情報を提示することを言うそうでございまして、この問題の端緒となっているようなインターネットオークションでの販売の申し出といいますか、そういった行為は、一般に「広告」とは言わないということで、混乱を招く恐れがあるのではないかというふうな御指摘がありましたので、とりあえずこの報告書の中では、「譲渡告知行為」、この用語が適切かどうかはわかりませんし、仮に立法化する際にそのとおり使うかどうかはわかりませんけれども、とりあえずこの報告書においては、「譲渡告知行為」ということで整理させていただいております。
 まず、問題の所在につきましては、現行の著作権法では海賊版にかかわる行為では複製権のほか、情を知って「頒布する行為」、あるいは情を知って「頒布の目的をもって所持する行為」ということでみなし侵害が規定されているわけですけれども、頒布の前段階の行為である海賊版の譲渡告知行為については侵害行為とはみなされていないため、インターネットのオークションサイトを通じて海賊版を販売する申し出等が行われてしまっている。
 これについて、プロ責法でも発信者情報の開示、あるいは情報の削除請求の手続がありますけれども、同法の限界もあるということで、譲渡告知行為を何らかの形で抑えられるようにする必要があるのではないかという点が問題の発端でございます。
 12ページ、13ページにその類型を幾つか示させていただきまして、これら以外にも恐らくあるかとは思いますけれども、いわゆる海賊版の譲渡告知行為には主にこのようなものが考えられるけれども、ケースによっては現行法でも対処できる。しかしながら、ケースによっては対処できない。例えば行為類型3、行為類型5といったものについては、現行の著作権法の中で規制することは困難だというのが現状かと思われます。
 そこで、検討の結果といたしまして、15ページでございます。幾つかの類型については現行法でも対応できるけれども、一部の類型については対応できない可能性があるので、「上記行為類型1〜5がいずれも対象となるよう、海賊版を販売するために譲渡告知行為を行うことについて、権利侵害を構成するようにすることが適当である」というふうに方向が示されたかと思います。
 「その際」ということで、まず、権利侵害を構成する際には、複製権と並ぶような新たな支分権を設けるものではないということ。
 それから、海賊版取引に加担する意識を持たずに、譲渡告知行為だけを引き受けただけのものなどが過大な調査義務を課されるということになると、非常に混乱する、いわゆる広告業界にまで萎縮効果を生じさせてしまう等々の影響もあることから、一定の動きをする必要がある、というふうな意見が出たかと思います。
 このようなことから、権利を侵害する行為によって作成されたもの、または、同様の輸入物品の販売のためにインターネットを活用して譲渡告知行為を行うことについて、「情を知って」などの一定の要件の下で著作権等を侵害する行為とみなすこととすることが適当である、というふうに方向を打ち出しております。
 なお、その際、インターネット以外の媒体を通じてどう扱うかということでございます。これにつきましては、「問題としては同様である」というふうな御意見もあったかと思いますけれども、匿名性の高いインターネット環境においてはプロ責法における限界があるというふうな事情もありますが、他方、それ以外の媒体といいましても、かなり多様にわたっている。放送や新聞・雑誌などのいわゆるマスコミから、チラシの印刷まで多様にあるわけでございます。それらを、インターネットもあわせて一律に取り扱うことは必ずしも妥当ではないというふうに考えられますため、それらの事業の実態等々を見極めた上で必要な措置を講じる、というふうな考え方で整理してはいかがかと思います。
 それから、もう1点、譲渡告知行為の場を提供した者に対する規制ということでございます。これにつきましても、実効性の観点から、「そのような場を提供した者についても規制が及ぶようにしてはどうか」という意見があったわけでございますが、権利者においても、そのようなことまでは現時点でしなければならない必要性を感じていない、要請もないということ。さらには、仮に法的責任を追及する場合であっても、現行のままであっても、例えばプロバイダに情報の削除請求をしたにもかかわらず、著作権侵害であることを認識しながら放棄していったような場合には、判例においても、著作権侵害に加担したと評価できる場合もある。あるいは、ケースによっては権利侵害の幇助にもなり得るというふうな対応の道は残っていると考えられます。
 このようなことから、場を提供した者に対する法的責任の追及につきましては、本小委員会の司法救済ワーキングチームにおいて検討されておりました「間接侵害」の問題の中で整理することが適当である、というふうに結論づけたところでございます。
 もう1項目、「親告罪の範囲の見直しについて」でございます。18ページ以降でございます。
 これにつきましても、問題の所在といたしましては、これまでも、本審議会、あるいは前身の著作権審議会におきましても、非親告罪化についての議論が行われてきたところでございますが、近年、罰則強化などの法改正が行われるなど、状況の変化がございましたので、改めてそういった問題について、非親告罪化の問題について検討する必要があるというふうに考えられたわけでございます。
 現行規定の趣旨等を紹介しておりますけれども、19ページの後段では、「捜査実務の現状」ということで、捜査、訴追の手続等を紹介しております。
 その後、20ページでは、捜査の課程においては、捜査の端緒が告訴・被害申告であるか否かを問わず、権利の帰属や内容等についての権利者からの事情聴取は当然に行っているというふうな状況なども紹介しておりまして、一般的に被害者の意思と全く無関係に訴追が行われるということはないというのが捜査・訴追手続の現状でございます。
 そこで、参考資料等々、諸外国における立法例なども紹介した上で、論点の整理といたしまして、23ページの一番下以降でございます。
 論点の整理に当たっては、幾つかの視点に分けておりまして、著作権等の侵害行為の性質と親告罪の関係について。それから、2番目に、法定刑と親告罪との関係について。それから、3番目に、人格的利益への配慮と親告罪との関係について。さらに、非親告罪に関する実務上の問題というふうな点から整理を行いました。
 まず、「侵害行為の性質と親告罪の関係について」は、一般に親告罪とされる罪には、24ページの上に示しましたAのような類型、Bのような類型というふうに言われていますけれども、著作権侵害罪を見てみると、侵害の態様というのがさまざまなので、この罪はA、この罪はBというふうに明確に線引することが困難なところがあるのではないか、というふうに整理をしております。
 また、「法定刑と親告罪との関係」につきましてはさまざまな意見がございまして、例えば罰則が強化されたというようなことを踏まえて、規範意識の観点から、「権利者が告訴の努力をしない限り侵害が放置されるというような現状は適切ではないのではないか」という意見などがあったわけでございます。
 一方で、先ほども言いましたように、著作権侵害への態様というのはさまざまでございますので、実態として、権利者自身も引き続き処分するまでもないと許容しているような場合もある。このような侵害態様の多様性、あるいは表現の自由にかかわる面があることを踏まえると、被害者の意思を尊重した方がよいというふうな意見もあったわけでございます。
 また、「人格的利益への配慮」につきましては、特に訴追して事実を明かるみに出すことによってかえって被害者の不利益になる恐れがあるというような点もあるわけでございますので、これはまた別の視点から考える必要がある、という意見があったかと思います。
 さらに、4番目の「実務上の問題」といたしまして、基本的には現在、親告罪であることが著作権法の違反事件の捜査の大きな障害になっているという認識はない。
 あるいは、告訴が得られずに捜査が中断する場合もあるけれども、こういった事例の多くは、告訴以外の捜査協力も得られない場合であって、親告罪であることだけが原因ではないのではないか、という考え方。
 あるいは、被害者の協力や意向を抜きにして訴追をすることは非常に困難で、告訴というものが権利者からの協力意思を表示する役割を果たしている、こういった面から、非親告罪にすれば強化されるというふうには直ちには言いにくいのではなかろうか、という意見。
 また、逆に社会に警鐘を鳴らすという意味で、検挙する価値の高い事件に関しては、告訴の取り下げによって捜査が中断するというような問題は解決される、こういった面もある、という意見があったわけでございます。
 もう一つ別な観点でございますが、仮に非親告罪化するとした場合の範囲ということで議論が行われました。これにつきましては、先ほども言いましたように侵害への態様がさまざまであるというような観点も踏まえますと、例えば常習犯については、常習侵害罪のようなものをつくってはどうか。
 あるいは、かつて罰則の強化の議論の中で、強化するものと強化しないものを区別するような考え方があったので、それを参考にするというふうなご意見が示されております。
 また、同一の犯罪について、一部は親告罪とし、他の一部は非親告罪とするようなことは想定されていないのでなかなか難しい、というふうなご意見もあったわけでございます。
 これらの意見を踏まえて、(4)としてまとめを整理しましたところ、「以上のような意見を踏まえると、著作権等の侵害罪についての範囲の見直しについては、侵害行為の多様性や人格的利益の関係を踏まえると、一律に非親告罪化してしまうことは適当ではない。」とまとめております。
 先ほど紹介しましたように、例えば現行の犯罪類型のうち、一部を新たな犯罪類型とするというような考え方でございますが、これにつきましては、「そのような要件の設定が立法技術上可能かどうか。あるいは、非親告罪がふえるわけですが、そういった場合の社会的な影響を見極める必要である。こういったことから、慎重に検討することが適当である」というふうにまとめたところでございます。
 以上でございます。

【中山主査】

 それでは、ただいまの説明を踏まえまして、各論点ごとに意見交換を行いたいと思います。
 まず最初は、デジタルコンテンツ流通促進法制に関しまして、御意見があればお願いいたします。
 どうぞ、多賀谷委員。

【多賀谷委員】

 8ページの「放送に関するビジネス上の課題」のところについて、2つほど申し上げたいのですけれども、1つは、ビジネス上の課題として、大体私が発言したようなことがある程度取り上げられているのですけれども、もう一言申し上げれば、著作権法は、放送で使われたコンテンツが、放送でもう1回再利用されるということについては、例えば商業用レコードの二次利用についての95条とか97条の規定が置いてあるけれども、放送で乗ったコンテンツがブロードバンドで、通信でもって二次利用されることについては規定がない。その法規定上のギャップが、実質上ビジネス上の課題となっているということがありますので、何らかの形でそういうニュアンスを入れていただければと思います。
 それから、もう1つは、この下から4行目のカのところで、「地上波のテレビにスポンサー広告が払う金額が下がってきており」というのは、私がそう言ったかもしれませんが、ちょっと言いすぎでありまして、スポンサー広告が頭打ちといいますか、余り、ほとんど上がらなくて、景気の変動によって下がったり上がったりしてきている。他方において、インターネット等の広告はじりじりと右肩上がりに上がっているという、多分そういう状況でありますので、ちょっとそういうふうに表現を直していただければと思います。
 以上です。

【中山主査】

 では、黒沼さん、お願いします。

【黒沼著作権調査官】

 後半の方は、すみません、確かに断定しすぎたかと思いますので、修正させていただきます。
 前半の御指摘の方は、「放送に関するビジネス上の課題」のところではなく、まさに放送以外の利用のときに、著作権を改めて契約する必要があるというところが課題だということで、これは、ビジネス上の課題ではなく、著作権契約に関する課題というところで、今のような御趣旨を書かせていただいております。

【中山主査】

 ほかに、何かございましたら。
 よろしいでしょうか。
 それでは、引き続きまして、海賊版の拡大防止のための措置につきまして、1、海賊版の譲渡告知行為の防止策について、2、親告罪の範囲の見直しについて、の2点でございますけれども、それぞれ御意見がございましたらちょうだいしたいと思います。
 まず、最初は、海賊版の譲渡告知行為の防止策について、御意見をちょうだいしたいと思います。何かございませんでしょうか。
 どうぞ、松田委員。

【松田委員】

 確認だけでございます。
 16ページのところに、この検討の結果のCなのでありますけれども、インターネットを活用して譲渡告知行為を行うことについて、「情を知って」などの一定の要件のもとで、著作権等の侵害をする行為とみなすこととするという方向性が出ております。
 この「情を知って」の時的な段階なのでございますけれども、1つは、広告を、告知行為を行う段階で「情を知って」ということであればこれに当たるというふうに法制をするのか、後日であっても、「情を知って」しまえばその後のインターネットでの送信は違法になるのかの、この2つの立法の仕方が実はあるのだろうと思っています。
 現行法制も、複製権侵害のブツについては、113条の1項の2号によって、「情を知って」頒布する者は違法になるのですが、これはいつの段階でも、情を知れば、その後はだめなのであります。
 この形態と、それから譲渡権侵害については、最初に取得したときに「情を知って」いなければ、あとは全部適法になるわけです。これは、113条の2の形態であります。
 私の意見としては、この新しい状況では、違法複製物、権利を侵害する行為によって作成されたものの譲渡告知行為でありますから、113条の2の形態ではなくて、113条の1項の2号の形態の「情を知って」を立法化すべきだろうと思っておりますが、そういう理解でよろしいでしょうかということでございます。私は、そうしないと、実際上、この告知は止められないというふうに思っているからであります。

【中山主査】

 その点はいかがでしょうか。

【大和著作権課課長補佐】

 事務局としては、「情を知って」頒布であれば、1項の2号と同じ時点というふうに考えております。

【松田委員】

 そうすると、権利者が告知行為を知って、その後、情を知らせるために告知者に対して内容証明等を送付すれば、その後は情を知ったことになりますので、その後の告知行為は止められるというふうになるわけです。私は、そうすべきだろうと思っているわけです。

【中山主査】

 わかりました。「情を知って」ということだけで、条文がそれで止まっていれば、恐らく松田委員のおっしゃるとおりの解釈になると思うのですけれども、ただ、内容証明で知らせたら、即、情を知ったかどうかというのは、これは今、現行法の解釈ではいろいろ問題のあるところではないかと思うのですけれども。

【松田委員】

 それはべつに、告知ではなくて、権利侵害のブツかどうかの頒布の問題でも同じでございまして、それとも同じだと思っています。
 ただ、後になって告知しても、もう止められないという条文のつくり方はどうかなというふうに思っている次第です。

【中山主査】

 そうすると、解釈の問題はべつとして、現行法の113条の1項2号の。

【松田委員】

 はい、その展開であろうと。

【中山主査】

 そうですね。それでよろしいでしょうか。この点につきまして、何かご異論がございましたら。
 それでは、これは、今、松田委員のおっしゃったような趣旨ということにしたいと思います。
 ほかに、何かございましたら。よろしいでしょうか。
 それでは、次の親告罪の範囲の見直しについての御意見をちょうだいしたいと思います。
 この点についてはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、ただいまの問題はそういうことにしたいと思います。

2権利制限の見直しについて

【中山主査】

 次に、権利制限の見直しについて、議論をちょうだいしたいと思います。
 事務局より、「権利制限の見直しについて」の説明をちょうだいした後、(1)薬事関係、(2)障害者福祉関係、(3)ネットオークション関係、各論点ごとに自由討議を行いたいと思います。
 それでは、説明をお願いいたします。

1)薬事関係

【黒沼著作権調査官】

 それでは、27ページ以降が権利制限の見直しの部分になります。27ページから薬事関係、31ページから障害者福祉関係、42ページ以降がネットオークション等関係になっております。
 まず、薬事の部分からまいりますけれども、前々回に御議論いただいたばかりで比較的記憶にも新しい部分だと思いますので、結論の部分だけ御紹介させていただきたいと思います。
 29ページになりますが、まず、権利制限は製薬企業から医療関係者への情報提供のうち、自主提供部分を除いてということで要望があったわけですけれども、これらは薬事法の努力義務規定に基づくものでありまして、患者の生命、身体に関わるものであって、迅速な対応が求められることも多いことから、個別に許諾に時間をかけることが不適切な場合もある。そういった基本認識のもとで、現状を考えますと、許諾を得ることに困難な場合も多いということも確かに考えられますので、権利制限の形で何らかの対応を図ることが適当という意見が多かったということで1の部分はまとめております。
  2の「権利制限による対応を行う場合の方向性について」のaの権利制限の範囲でございますが、これは様々御意見があったわけでございますけれども、多かったと思われる部分で取りまとめ案を示させていただいておりまして、3行目あたりからですが、薬事法第77条の3に基づく情報提供であること、医療関係者の求めに応じたものであること、それから、自らが提供する医薬品等についてその適正な使用のために必要な情報の提供を行う場合、こういった3つの考え方で絞ってはどうかとまとめております。
 その心はと申しますと、「つまり」以降の部分ですが、自主的な提供部分は含まれないということと、医療関係者から求めがあった場合でも自社の提供している医薬品の安全性などに直接関係しない文献を提供するものの場合は含まないということがその趣旨でございます。
 bの部分は、権利制限を行う際には、通常の使用料相当額の補償金の支払いを義務づけることが適当、そういった御意見が多かったと思いますので、そのような取りまとめ案とさせていただいております。
 それから、30ページでは、そういった形の基本設計の上でさらに留意すべき点があるのではないかということで、3点ほど、aからcまで整理させていただいております。
 まず、aの部分ですけれども、仮に補償金制度を導入しつつ権利制限するということになりますと、それが実際に運用されるためには、補償金の額についてあらかじめ権利者側と利用者側とで共通理解ができていないと、実際の運用は難しいわけでございます。
 こういったことにかんがみますと、現在製薬企業と日本著作権出版権管理システムとの間で契約交渉をやられているわけですけれども、まだその利用条件で合意が得られていない部分があるということを伺っておりまして、そういった状況にあるということは、補償金制度が実効的に機能するのかという面で、多少懸念を挟まざるを得ない部分があるのかと思っております。補償金制度が実際に運用できるかどうかを見極めるという趣旨で、まず当事者間の合意形成が図られるのかどうか、そういう状況を見なければいけないということか、一つポイントとしてあるのではないかと思っております。
 それから、bは権利制限の範囲に関係する留意点ですけれども、対象範囲がみだりに拡大するというようなことを防ぐために、条文上は範囲を明らかにしたとしても運用上それが確保されるかどうかという観点から、実際に運用する者なり関係者の間で、運用基準ですとか、そういったガイドラインの作成などの適切な措置が講じられることが適当ではないかという点が2番目でございます。
 3番目は、前々回の最後の方に出た御意見ですけれども、本来の趣旨が患者の生命、身体に関して迅速な対応が必要だという趣旨なので、そういう趣旨に基づいて権利制限するのだとすれば、本来は製薬企業からの文献の提供を待たなくても、医療関係者自らが必要な情報を取得できるような体制、こういったものが本来一義的には必要なのではないかと考えられるわけでございます。実際、諸外国においてはそういった運用が主であるという状況も御紹介がありましたので、このような状況を考えた場合には、仮にこの権利制限を実現した場合でも、引き続き関係省庁も含めまして医療関係者自らが情報取得ができるような体制の整備を引き続き検討を行って、その状況を見つつ、この権利制限は引き続き存続する必要があるのかどうかを事後的にもチェックしていくことが必要なのではないかということで、留意点として書かせていただきました。
 4の結論といたしましては、実効的な制度運用に向けて必要な環境が整うこと、もしくは、その事後的なチェックが行われるというようなことを前提としまして、一定の要件のもとで権利制限を行う方向で検討することが適当ではないかとさせていただきました。
 引き続きまして、31ページ以降の障害者福祉関係の部分ですが、こちらも結論の部分だけ御紹介させていただければと思います。35ページのところに、検討結果を記載してあります。
 こちらは、幾つか要望事項があったわけですけれども、それぞれの結論の前に、まず全体の方向性として1にまとめておりまして、まず、障害者にとって録音物などの障害に応じた形態の著作物がなければ健常者と同様に著作物が享受できない状況に対して、情報アクセスの保障、情報格差の是正、そういう観点が必要だろうということで、今回の権利制限が提案されているというふうに理解しておりますので、そういった形のものであれば、基本的に高い公益性が認められるのではないかという点。それから、そういった観点から、著作物を利用できる可能性を基本的に確保する方向で措置を検討すべきとか、日本独自のものではないということで諸外国の例を参考にして同程度の立法措置を講ずべきというような意見があったわけでございます。このようなものを基本的な方向性としてはどうかということでございます。
 そうは言いましても、諸外国の立法例は、非常に抽象的な規定もございまして、我が国の法制でどこまでそれと同じものが実現できるのか不透明な部分もありますので、2以下では個別の要望事項についても、それぞれどういうふうに対応すべきか補足的に記載してございます。
 まず、2視覚障害者関係のaの部分、障害者の私的複製に代わって複製を行うという措置ですが、まず、一定の利用形態のものについては、第30条の私的使用目的の複製の、本人の手足として複製をしているような場合と理解することができるような場合があるのではないかというのが、まず1点でございます。
 そうでないような形態、第三者で大量にその複製のみをまとめて行うような機関があった場合には、第30条の範囲ではとても読めないであろうということで、別途、第37条3項の規定を拡大するような措置が必要ではないかということ。今第37条3項の録音図書の作成は、貸出しの用に供することなどと限定があるわけですけれども、こういった場合に限らないこととするというような措置が適当ではないかということでaの部分はまとめております。
 cの部分は、現行の第37条3項の複製を行う主体は点字図書館等の一定の施設が指定されているわけですけれども、こういったものの拡大について要望があったわけでございます。
 これにつきましては、36ページの下の3行あたりが端的に書いてございますけれども、利用者の確認等が行えるという体制が整えられている、そういったような形で、視覚障害者福祉等の施設と同様の取り組みが可能と認められる施設については、複製主体として含めていってはどうかということで書かせていただいております。
 次のページですけれども、視覚障害者以外にも対象者の範囲を拡大していったらどうかという要望もあったわけでございます。
 これにつきましては、可能な限り権利制限の対象に加えることが適切ではないかとする一方で、「もっとも」のところですが、権利制限の規定の範囲を明確化しておく必要というのは引き続きありますので、そういった観点も踏まえまして、規定の明確性を担保しつつ可能な限り範囲に含めていくよう努めることが適当というまとめをさせていただいております。できる限り頑張るようにというような趣旨でございます。
 eの部分は、その他の条件として出た意見をまとめておりまして、まず1段落目で、今後障害者向けの市場もそれなりの規模になってくる可能性があるという観点から、営利事業については慎重に検討すべきではないかという意見がありました。
 「また」以下のところでは、あらかじめ障害者が享受できる形態で著作物が市販されている場合については権利制限を適用しないとすることが適当ではないか、ということでまとめをさせていただいております。
 その次の3聴覚障害者関係ですけれども、こちらは38ページで基本的に対応すべきとしておりますが、b以降のところで多少留意点がございます。「複製を行う主体について」という部分では、こちらも専門の施設以外にも複製主体を広げてはどうかということがあったわけですけれども、40ページに幾つか留意点をまとめておりまして、同じように利用者確認が行えるような体制が整えられていることを条件に複製主体を広げていくことも考えられるとする一方で、聴覚障害者の場合はもっぱら映像資料になりますので、映像資料の場合には字幕等を付しても健常者にとっても利用価値が損なわれない可能性がある。そういう懸念がありますので、録音図書に比べれば、より慎重な体制が求められるのではないかという留意点が1点。それから、放送や映像ソフトなどの場合には、コピーガードがかかっている場合がございます。そういった複製抑止のための技術的な手段がかけられている場合には、その辺をどう対処するか、より高い技術的な体制も必要になってくる。そういった点が留意点としてあるのではないかと思っておりまして、こういった体制が確保されるかどうかを見極めた上で、複製主体を考えていくのが適切ではないか、という結論にしております。
 それから、今のような留意点との関係で、dの部分のような条件があり得るかなと思っておりまして、1のところでは、健常者にとっての利用価値が損なわれない可能性に対応する部分ですけれども、利用登録制などのほか、複製物について技術的保護手段を施すなどの流出防止のための一定の取り組みが可能となっていることを条件とすることが考えられるのではないかということでございます。
 こちらは、実際に聴力障害者情報文化センターでの取り組みでは、一度そういった貸出し用の映像資料などをつくった後に、コピーガードなどをかけて、市販のDVDと同じような取り扱いになるような取り組みをされているようですので、それと同じような観点で、この1のところを書かせていただいております。
  2は、これは視覚障害者関係と同じでございますけれども、あらかじめ利用できるような形態で提供されているものがあるときは、権利制限から除いてはどうかという点でございます。
 最後のeの部分は、貸出しのほかに公衆送信をするという要望があったわけでございます。これは、もっぱら聴覚障害者を対象としたCS放送のようなものを念頭に置いているということでございましたが、権利制限を認めていくとする場合には、利用者の限定の手段等が確保されていることなどが前提となるべきではないかというようなことで記載をしております。
 その次、41ページは3知的障害者、発達障害者関係ですけれども、こちらはなかなかポイントを捉えにくい要望だということもありまして、ざくっと現状を整理するような形で記載をしております。まずaのところでは、学校教育、社会教育、職業訓練、こういった教育機関での活用であれば、現行法でも「教育を担任する者」の手足としてということで、許諾を得ずに複製できる場合があるのではないかということで整理をしております。
 bの部分では、そうは言ってもそれ以外の対応方策が必要な場合、特に今後何か中核的な機関で複製をしていくというようなことがあった場合には、現行法で対応できない場合もあると考えられますので、そういった場合の対応方策として、視覚障害者関係、聴覚障害者関係の権利制限の対象者を拡大することをできる限り検討すべきということを先ほど記載しましたが、そういった中で可能な限り、障害等によって著作物の利用が困難な者についてもこの対象に含めていくように努めることが適当ではないか、としております。
 その次が、ネットオークション関係ですけれども、こちらは43ページの3以降に結論部分を書いております。
 考え方といたしましては、商品情報の提供は、売主に求められる義務の履行として必要不可欠なものであるという前提がありまして、そのために、特に隔地者取引などの場合には、画像の複製・掲載を行うことはやむを得ない部分があるであろう。その一方で、仮にこの画像掲載等ができないということになりますと、本来、取引行為には著作権は及んでいない場合があるわけですけれども、そういったときにも、事実上、著作権の影響で取引ができないということになりかねないというようなことがあります。
 その両者の調整の観点から、取引行為に必要な限度において権利制限の対象とすべきであるというような意見があったということが、前半になります。
 bのところは、とは言いましてもインターネットなどに一度画像を掲載しますと、販売目的以外でもその画像が複製されたり、その他で流出いたしますと、権利者の利益に及ぼす影響が大きくなる、そういった場合もあるのではないかということで、こういった弊害を抑える必要があるという意見を御紹介させていただいております。
 この点については、例えば権利者の利益を不当に害するようになる場合を対象から除外するというようなことが一つ考えられますし、そのほか、技術的な保護手段によって対応していくことですとか、もしくは、掲載の期間なり画質なりについて一定の条件をつけるといったような形で関係者間で一定のルールみたいなものがつくられていくような環境が整っていく、そういったことも考えられるのではないかということでまとめております。
 cの部分では、対象とするものは、先ほどの売主の義務との調整だというようなところを考えますと、公売などの公的なものに限らず一般のショッピングサイト等も含めた制度設計とすべきということでまとめております。
 以上、まとめますと、譲渡権等を侵害することなく美術品等を譲渡等することができる場合には、こういった美術品等の画像を複製・掲載する行為について権利制限を行うことが適当ではないか。その際、立法化に当たっては、権利者の利益を不当に害さないための条件について、様々な取引の実情なども含めて適切な検討を行いつつ進めていくべきではないか、そういった形でまとめさせていただきました。
 以上でございます。

【中山主査】

 それでは、まず、薬事関係の権利制限につきまして、意見交換を行いたいと思います。御意見がございましたらお願いいたします。
 どうぞ、松田委員。

【松田委員】

 薬事関係の検討でございますが、これは私、審議のときにむしろ積極的に制限規定を導入せざるを得ないのではないかという意見を言ったものであります。
 結論としては、「一定の要件のもと権利制限を行う方向で検討」ということになっておりますが、この「一定の要件」というのは結局何かというと、前の29ページで、「著作権者に通常の使用料相当額の補償金の支払いを義務付けること」に多分なるのだろうというふうに思うわけであります。
 これも、恐らくこういう規定を設けることは相当だろうと私は思っておりますが、こういう制度ができましても、担当するMRの方がこの制度に乗れるような仕組みを、日本製薬、薬物連合体ですか、連合会の方で受け皿をつくってもらわないと、恐らく実効性がないだろうと思うわけです。
 といいますのは、日々医療機関に接して情報を提供しているMRが、簡易にシステムに乗ってこんな権利制限ができるような情報の一元化というものができないと、権利処理はスムーズにいかないだろうと思っています。権利者団体の方で整備をするだけではなくて、利用者団体の方もこのシステムとして確立するということが必要だろうというふうに思います。
 30ページには、「ガイドラインの作成等の適切な措置」というふうに書いてありますが、これは情報を啓蒙するというだけではなくて、システムを確立して、担当者がこの処理に乗れるようなシステムを構築すべきだということも意見として入れたらどうかというふうに、私は考えています。

【中山主査】

 その点はいかがでしょうか。

【黒沼著作権調査官】

 それでは、30ページのbの部分で、今言われたようなものも、取組例の1つとして記載を工夫したいと思います。

【中山主査】

 これは一般大衆の話ではなくて、製薬企業の話で、制約権もありますので、それはそう難しくなくできるのではないかと思いますけれども。
 ほかに。どうぞ、村上委員。

【村上委員】

 私は基本的にはこれで結構だと思います、というか、かなり制限がかかってあるので、薬事法で情報を提供する義務が課されている。それから、医薬・医療関係者の求めに応じ、自己が提供する医薬品等について、さらに、今言われたように一応補償金の義務はうたってあるということで、医薬品に関する情報提供に関する権利制限としてはこれで結構だと思います。
 ただ、こう書くと、ほかの業界にもというかビジネス一般に結構広く読める書き方になっているので、例えば事業法で努力の情報提供義務があって、それで、お客なり利用者の求めに応じて自己が提供するものについて、何らかの必要があった場合には、権利制限を広くしてもいいのかということが、これだけから見るとそう読まれかねないもので、今考えているのは、例えば食料品とか、爆薬物などの危険品とか、もしくは危険建造物みたいな、かなりそういう類似な法制の業種というのがあるので、そういうところにもかなり広がりかねないような要件になっています。そこで一つお聞きしたいのは、そういう業界とか、医薬品以外の業界からは、特に著作権で権利制限を設けろとか何とかそういう意味の要望が寄せられているのか、そういう問題は生じていないということで、現状の認識としてはとりあえず医薬品だけの問題ということに限ってということで受け取ってよろしいでしょうか、という質問になります。

【中山主査】

 その点はいかがでしょうか。

【黒沼著作権調査官】

 現在のところ、ほかの分野からの御要望は特に伺ってはおりません。また、29ページのaの部分でも、特に薬事を取り上げた趣旨としまして、実際に患者さんがいらっしゃる場合ですとか、特に生命、身体への配慮の面から、時間をかけた場合には非常に不都合が大きいだろうというふうな特殊性があるのだろうとは思っておりますので、そういった点は記述しているつもりでございます。

【中山主査】

 よろしいでしょうか。
 ほかに何かございましたら。どうぞ、市川委員。

【市川委員】

 本当の感想だけでございますが、私自身はどちらかというと消極の意見を述べたのですが、留意事項とかの中で、いろいろ配慮すべき点もちゃんと取り入れていただいておりますし、松田委員の御意見もいただきまして、本当にいいまとめをしていただいたというふうに思っております。

【中山主査】

 ありがとうございます。
 ほかに、何かございましたら。よろしいでしょうか。
 それでは、基本的にこれを御了承していただいたということにいたします。

2)障害者福祉関係

【中山主査】

 引き続きまして、障害者福祉関係の権利制限の見直しについて御意見をちょうだいしたいと思います。何かございませんでしょうか。
 私から一つ聞いてよろしいでしょうか。
 40ページの上の方の映像資料についての字幕の件ですが、要するに資料に字幕をつけるということなんですけれども、これは日本語の普通の資料が多いと思いますが、資料に字幕がついているのを健常者は買わないと思うんですね。字幕が邪魔ですから。そうすると、権利者には損害がないのではないか、仮に字幕がついたものを健常者が買った場合も、やはり1部それで売れているわけですから、何か権利者の方に損害があるのだろうかという質問なのですが。

【黒沼著作権調査官】

 懸念される点としましては、例えば映画のDVDが販売されているような場合にはコピーができないようなものが販売されているわけですけれども、仮に字幕を付すためにこのコピーガードを除去して字幕を付与して複製をしましたとして、それをそのまま貸出しなどにした場合には、要するにコピーガードがかかっていないような状態のものが市場に出回りますので、そういった点では、そこから複製物ができるとか、市場でコピー禁止のものが出回っているものに比べるとそういった懸念があるというようなことでございます。

【中山主査】

 そうすると、技術上の問題がある、テクニカルな問題があるということですね。そうでしたら、そう旨を書いた方がいいのではないかと思います。これだと、一体権利者にどのような損害が生じるのか、という疑念が生じるのではないかと思うので。

【黒沼著作権調査官】

 では、そのようにちょっと記述を工夫したいと思います。

【中山主査】

 そうですね。検討してください。
 ほかに、何かございませんでしょうか。障害者については、こんなものでよろしゅうございましょうか。

3)ネットオークション関係

【中山主査】

 それでは、次に、(3)、ネットオークション関係の権利制限の見直しにつきまして、御意見をちょうだいしたいと思います。何かございませんでしょうか。
 よろしいでしょうか。この点についてはもっと多くの意見が出るかと思ったのですけれども、もしございませんようでしたら、先に進んでもよろしいですか。

(「異議なし」の声あり)

3各ワーキングチームでの検討事項等について

【中山主査】

 それでは、次の議題に移りたいと思います。
 まず、前回の本小委員会での各ワーキングチームの報告のございました、(1)検索エンジンの法制上の課題について、(2)ライセンシーの保護等の在り方について、(3)「間接侵害」等に係る課題について、この3点につきまして、事務局から説明をちょうだいして、その後、各論点ごとに議論をちょうだいしたいと思います。
 それでは、説明をお願いいたします。

1)検索エンジンの法制上の課題について

【黒沼著作権調査官】

 それでは、46ページ以降が、今ご紹介のあったワーキングチーム関係のまとめでございます。
 第4節は「検索エンジンの法制上の課題について」として、前回、デジタル対応ワーキングチーム関係で御報告があったものを記載しております。
 全体といたしましては、それほど大きな変更があったわけではございませんが、検索エンジン関係の権利制限の正当性の根拠、もしくはその範囲を考える際に、当事者の意思に許諾の推認が考えられるからということを前面に押し出すのか、それとももっと別の公共的な観点を根拠とするのかといった御議論もございまして、それによって結論が変わってくるというような御議論があったかと思います。そういうことを踏まえまして、修正を加えております。
 具体的に記述を変えてございますのは58ページ以降でございます。権利制限を仮にするとしたらという部分の中の記述で、dの「権利者保護への対応」ということで、基本的には検索エンジンで複製されるようなものは著作物の提供そのものを目的としているわけではなく、それほど権利者に与える影響は大きくないのではないかという前提で出発していますけれども、個別事情によっては、権利者の利益に悪影響を及ぼされる場合もあり得るということで、そういった場合の措置をどうするかというところです。それにつきまして、検索エンジンサービスとしてここでは自動的に様々なサイトを収集するようなものを対象として考えていますので、検索エンジンサービス提供者が権利者や著作物等の個別的な事情を認識するのは現実的に不可能だということで、権利者側から検索対象として利用されることを拒否する旨の意思表示を行うことが必要ではないか、という点がまず1点あります。
 ここから先は、前回は、事前にそうした意思表示をした場合、事後に意思表示をした場合ということで分けてあったのですが、それについて、事前と事後とで異なるのはおかしいのではないかというような御指摘もありましたので、今回は技術的回避手段を用いた意思表示、もしくはそれ以外による意思表示ということで、全体の構成を改めております。
 技術的な回避手段によって事前に行った場合には、基本的に検索エンジンのクローラーというソフトウェアが働かない形になりますので、それはそれで対応できるのですが、2番目の部分は、仮にそういった技術的な回避手段を使って、私のページは複製しないでくださいという措置をしても、次にクローラーが来るまでは検索エンジン側のサーバーに以前に収集してしまったものは残ったままですので、そういったタイムラグが存在する場合がある。そういった場合には、例えば電話、郵便、メールなどによってそういったものを回避したいという要望があるということが考えられるわけです。
 こういった場合をどのように考えるのかということにつきまして、基本的には対応するよう要望があるということを記述しております。ただし、「他方」というところでは、権利制限の安定性に影響を与えて、権利制限を設ける意義を損なうようなことになる恐れもあるのではないかということで、技術的にそういった通知なりを受けてどこまで対応可能なのかという、そういった技術的な問題にも関係しますけれども、そういったものも含めて、そのような措置を講ずることを認めるかどうか、必要かどうかというのを検討する必要があるのではないか、そういった留意点の指摘の形の記述に変えさせていただいております。
 大きく変わったところは以上でございます。

【中山主査】

 それでは、検索エンジンの法制の問題につきまして、御意見があればちょうだいしたいと思います。
 多賀谷委員、どうぞ。

【多賀谷委員】

 私、この会議のとき一部出ていなかったかもしれませんので、念のために聞きたいのですけれども、この検索エンジンというのの範囲ですけれども、例えばYouTubeのようなものは入らないと理解してよろしいでしょうかね。

【中山主査】

 その点は。

【黒沼著作権調査官】

 具体的に何が入るか入らないかというような、個別の事業ごとにそれを区分けするような作業は必ずしもしているわけではありませんけれども、どういうものが範囲としてふさわしいのかは慎重に検討する必要があるのではないかということは留意事項として記載しているところでございます。

【多賀谷委員】

 ここで、要するにクローリングをするのは主にロボットで行うということを前提にして書いてあるわけですけれども、YouTubeのような場合には、私は技術的なことはわかりませんけれども、入れるのは個人が多分入れていると思うんですよね。だから、これとは多分ちょっと違うような話になるのではないかという。そこにおいて違法コンテンツを探し出して、勝手に入れているというようなところが言えるんですね。

【黒沼著作権調査官】

 補足でございますけれども、今の御指摘のような点もありますが、ここで検索エンジンサービスとして対象とすべきものをどういうふうに定義づけているかと申しますと、55ページの一番下の、「権利制限の対象範囲」というところで、どういうものを検索エンジンサービスとして考えていくべきかというところで、検索エンジンの目的として、著作物が存在するオリジナル・ウェブサイトへの誘導をもっぱら目的とするものというような目的の部分、そのほか行為態様もありますけれども、そういったところで絞っていくべきではないかという基本的な観点を示しておりますので、そういった観点から絞られていくのではないかと思っております。

【中山主査】

 今、多賀谷委員がおっしゃったのは非常に大切な問題で、多分近いうちに相当いろいろな技術が発展してきて、多くの未知のものが出てくる可能性もあるかと思いますけれども、今のところは頭としてはYouTubeは入らないということでよろしいですね。

【黒沼著作権調査官】

 はい。

【中山主査】

 ほかに何かございましたら。
 どうぞ、森田委員。

【森田委員】

 先ほどの58ページのdの「権利者保護への対応」の中で、最初の段落の「権利者の私権との調和の観点から、何らかの措置を講ずるべきである」とありますが、この「何らかの措置を講ずるべき」という部分の「措置」の意味内容について確認したいと思います。理屈からいうと、権利制限がある範囲には及ばないということになれば、その範囲の外になった部分については権利侵害になりますから、権利者が一定の請求をすれば削除等をするというのは、通常の差止めと同じものであって、特に何か削除請求権というのをここで創設する必要はないのではないかと思います。そういう目で見てみますと、例えば59ページの真ん中あたりに「権利者が‥‥当該著作物の利用停止又は削除を請求できるような措置を講ずることとなろう」というのは、そういうことを踏まえた上で、権利者が具体的なシステムとして「要求があったときにはこういう対応をします」という制度を組むことをいうものとして理解できるように思います。そうしますと、59ページの一番下から2行、「なお、著作権のみならず」以下の部分には、「著作権者のみにこのような権利を付与する」のはどうかという意見もあったということが書かれてありますが、ここは、何か特別な削除請求権を付与するという前提でそういう権利を付与するのはどうか、という意見があったというふうに読めますので、そこのなお書き以下の部分との対比で見ると、その前の部分では、何か著作権については特別な削除請求権を付与する、前回、個人情報保護法との関係の議論もありましたけれども、著作権者に何か特別な利用停止又は削除請求権というのを規定するという前提で「措置」が書かれているようにも読めてしまいます。
 そこで、私が確認したいのは、58ページの「何らかの措置を講ずるべき」というのは、何かそういう特別な削除請求権を検索エンジンとの関係で創設するということなのか、それとも、あくまでここは権利制限の範囲はどうなのか、そして、権利制限の範囲は先ほどの意思表示との関係でどういうふうに要件立てがされるのか、という問題設定なのか、そのあたりについて御確認したいと思います。

【中山主査】

 その点についてはいかがでしょうか。

【黒沼著作権調査官】

 なお書きより上の部分は、全面的に書きかえた部分ではあるのですけれども、このなお書きのところは確かに前回の記述が基本的に踏襲された部分でありまして、ちょっと整理をしてみたいと思います。

【中山主査】

 では、また後で。
 茶園委員、どうぞ。

【茶園委員】

 これは、権利者保護への対応として具体的に何をするかということについて、まだ詰め切っていないところがございまして、一応ここで明らかとしていますのは、何らかの措置を講ずるということでして、その措置の具体的内容としましては、一応の結論として、まず、最初の技術的回避手段による意思表示に関しては、権利制限の対象外にするということでございます。
 次の技術的回避手段以外のものにつきましては、それこそ何らかの対応ということなのですけれども、権利制限の対象から外すということもあり得ると思いますし、あるいは、これは前回そういう書き方をしたのですけれども、権利制限を認められた上で、何らかの削除請求というものを認めるという在り方もあると思うのですけれども、その具体的内容についてはここではオープンにしているということでございます。
 「なお」以下につきましては、ここで「権利」と書きましたので、本文ではオープンにしているものを限定しているかのような誤解を招くことになっているのかもしれません。ここは、肖像権、プライバシーに関しましては、現在、権利制限とかそういうものは全くない状態ですので、こういう書き方になっているということでして、誤解が生じないような書き方をちょっと考えなければいけないのかもしれません。
 以上です。

【中山主査】

 どうぞ、森田委員

【森田委員】

 御検討いただくということで結構ですけれども、権利制限がかかる場合であっても削除請求ができるという点がちょっとわかりにくいところです。
 つまり、権利制限がかかっているわけですから、一般原則に従えば権利侵害がないわけですから削除請求はできないはずですが、その場合でも削除請求ができるというのは、権利制限を認めたことの趣旨との関係で何か理屈としては不整合な感じがするものですから、その点も御検討いただくということであれば結構ですけれども、そのような感想を申し述べたいと思います。

【中山主査】

 文章の点については、お考えいただければと思います。
 では、多賀谷委員、どうぞ。

【多賀谷委員】

 技術的回避手段の話なんですけれども、私は技術のことはいまいちわからないのですが、この場合、技術的回避手段がどういう形で設定されるのかといいますか、要するに、ウェブサイトにあるコンテンツを投稿した場合に、それがすべての検索エンジンによって広がらないような形でガードをかけるのか、それとも、選択的に一部の検索エンジンには引っかからないけれどもほかのはフリーにするかとか、何か仕組みによって意味が違ってくると思いますので、そこら辺をできればもう少し、今回は無理かもしれませんけれども、できればそこら辺のところを問題にしていただきたいと思うのです。
 実際上、今のインターネットの世界は、すべての人が利用できるシステムと、それから、SNSのように限定的な人だけ入れるところがあって、例えばそういうところである種の検索エンジンを使って見ていると、外からは見えない形で利用されているというような状況が出てくると思うのですけれども、そういう状況にもどういうふうに対応するかということを、やはり検討しなければいけない時期に来ているだろうと思います。

【中山主査】

 かなり技術的な問題があると思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。現在、この回避手段というのは、例えばGoogleだけやるとか、Yahooだけやるとか、そういうことはできるのですか。それとも、できないのですか。

【黒沼著作権調査官】

 基本的には、ロボットテキストというような標準的な回避手段があるらしいのですけれども、そういったものをサーバーに設定した場合には、例えばYahooだけはだめですとか、Googleだけはだめですといったようなテキストの設定の仕方もできるというようには聞いております。

【中山主査】

 どうぞ、茶園委員。

【茶園委員】

 その点は、技術的なことで私も余り十分に理解していないのですけれども、わずかな記述なのですけれども、48ページの注の51のところに、触れさせていただいております。
 先ほど説明していただきましたように、共通に、基本的にはあらゆる検索エンジンに反応するとというようなものもあれば、個々のものに対して反応するというようなやり方もできるということのようであります。

【中山主査】

 よろしいですか。
 それでは、ほかに何かございましたら。どうぞ、松田委員。

【松田委員】

 61ページなんですけれども、これは結論的には全然問題がないと考えておりますが、表現の問題なんですけれども、61ページの6行目に、「最後に」という段落があります。これは同一性保持権の問題として書かれていて、オリジナルの画像の改造度が落ちたような場合のことについての説明をしているわけです。
 これは、結論的には、著作権法上問題ないでしょうという結論になっていて、私もそれには賛成です。
 これには2つの理由が書いてあります。「もっとも」というところから始まっていて、「これらの変更は利用者にとっては明らかなものであり、よって著作者人格権的利益を害することにはならない」というのが1つの理由であります。
 ここのところなんですが、この「利用者」というのは、多分このシステムを利用する人たち、こういう意味だろうと思うのですが、それでよろしいんですよね。著作物の利用者ではないですよね。ですよね。はい。
 それでいいといたしましても、見る側が、明らかに原作品とは違うものだからということがわかっている場合には、人格権の問題が生じないというのが、ちょっと結論として早すぎないかなというふうに私は思うのですが。
 むしろその後の、検索エンジンにおける利用の目的、対応に照らし、「よいもの、やむを得ないと認めない限り」に当たるのだという、この結論だけでいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

【中山主査】

 その点。茶園委員、どうぞ。

【茶園委員】

 そう言っていただけるとありがたいのですけれども。
 恐らくは、一般的にはこのように解されるであろうと考えておりまして、多くの場合、松田委員に言っていただきましたように、20条2項4号で対応できるのではないかと思うのですけれども、サムネイルとかにはいろいろなものがあり得ることから、4号以外にも根拠がありうるのであれば、書いておいた方がいいであろうということでここに書かせていただいております。むしろこの部分が不必要とか、ない方がよいということであれば、削除するようにいたします。

【中山主査】

 松田委員の御心配は、こう書くと、検索エンジンの問題だけではなくて、あらゆるところで、見た人が「あ、これは本物ではない」とわかればそれでいいというようになってしまう危険性があると、こういうことですね。

【松田委員】

 さようでございます。

【中山主査】

 そういうことなら、これ、削除したらどうでしょうか。よろしいでしょうか。
 やむを得ないという、これだけで理由としてはもうセーフになるわけですから十分だろうと思いますので、では、そこはちょっと、よろしくお願いします。
 ほかに、何かございませんでしょうか。
 私が言うのもおかしいのですけれども、この権利制限は他の権利制限の規定と異なっていまして、他の権利制限は、制限すれば権利者に大なり小なり何らかの影響を与えます。しかし検索エンジンに関しては、仮に権利制限をしないで「日本でだめ」と言っても、全く同じものがアメリカで行われるだけであり、日本ではその種の産業が成立しないという効果しかありません。今日本人の多くは検索エンジンを使っているけれども、あれはアメリカにサーバーがあるなんていうことを知らないで使っています。権利制限をしてもしなくてもユーザーにとっては全く同じであり、権利者にとっても全く同じということになります。権利制限の効果は、日本の産業をつぶすかどうかというだけであり、そういう特殊な権利制限の規定なのではないかと思います。
 余計なことを言いましたけれども、何かほかに御意見がございましたら。
 それでは、これでよろしいでしょうか。

2)ライセンシーの保護等の在り方について

【中山主査】

 では、次にライセンシーの保護につきまして御説明をお願いいたします。

【大和著作権課課長補佐】

 資料1の64ページからの第5節、ライセンシーの保護等の在り方について、それから、その後の73ページ以降の第6節、いわゆる「間接侵害」に係る課題等について、あわせて御説明させていただきます。
 これらにつきましては、基本的に前回、第5節については土肥座長から御報告いただいたとおりでございます。
 1カ所、ちょっと文章表現を修正させていただいておりますので、そこを説明させていただきます。71ページ、第5節の最後に当たります「おわりに」のところでございます。
 ここは、前回の結び方は、ライセンシーの保護に係る登録制度を提案した後に、事業者の中には独占的、排他的な権利の創設とか、あるいは規約内容の承継といったことにむしろ関心を持っている事業者もあるというようなことから、こういったことにも配慮して慎重に検討というふうな結びをしていたところでございますが、そのような独占的、排他的な権利の創設、あるいは契約内容の承継の問題はそれはそれとし、利用できる地位の対抗要件の問題については、ここに紹介しましたように制度設計を提案しているわけでございますので、ここのところは、本日の資料のとおりまとめさせていただいた方が適切ではないかということで御提案申し上げます。
 読み上げますと、「おわりに。ライセンシー等の保護等の在り方については、特許等の登録制度との整合性なども踏まえると、新たな登録制度を創設することは、例えばライセンサーが破産した場合などにおける対抗要件が具備されることとなるため、基本的にはこのような方向で法改正を検討すべきである。
 その際、著作物の取引に関する多様なビジネスの実態もあることから、制度設計の詳細については、関係業界の意見も聞きながら、より活用しやすい制度となるよう、さらに適切な方策の検討も含め、引き続き検討すべきである」、こういった、例えば前回の当委員会でも御議論がありました特定方法の工夫の問題というような実務上の課題があると思いますし、この報告書で提案しているスキームが、登録制度の利用者にとって簡便性があると言えるかどうかというふうな問題もございますので、こういった点について業界の意見なんかも聞きながら進めてはどうかという結び方にしたものでございます。
 続いて、第6節も引き続き御説明させていただきますが、これにつきましては、前回、大渕座長から御報告いただいたとおりでございます。
 なお、ちょっと微修正ですが、76ページの真ん中あたりに、先ほど御紹介しました海賊版の譲渡告知行為との関連でこの司法救済も検討していただいたわけですが、76ページの真ん中あたりの「なお」の段落で、「海賊版の広告行為に関し」云々という記述がございますが、先ほどの「譲渡告知行為」ということと用語を整理させていただいてはどうかというふうに思っております。
 以上でございます。

【中山主査】

 それでは、ライセンシーの保護の在り方につきましての御意見をちょうだいしたいと思います。何か御意見がございましたら、お願いいたします。
 これにつきましては、特許法の方が先行してしまったという事情があるし、しかし、そうは言っても著作権は特許権とは違うのだという事情もありますし、いろいろな難しい点もあろうかと思いますけれども、こういうまとめでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

3)「間接侵害」等に係わる課題について

【中山主査】

 それでは、引き続きまして、「間接侵害」等に係る問題についての御意見をちょうだいしたいと思います。
 市川委員、どうぞ。

【市川委員】

 すみません、前回欠席させていただいたもので、前回どういう御説明をしていただいたのかちょっとわからないので、とんちんかんなことを申し上げるかもしれないのですが、今後の検討の在り方ということになりますと、引き続いて、もう具体例などの検討は大体終わったということなんですかね。
 既に出ている裁判例とかがございまして、そういうものについては十分検討されて、将来的なものまですべてカバーするというようなことはもちろん今の段階ではできないとは思うのですが、その出発点としては、現在既に出されている裁判例でありますとか学説についてのある程度の検討が終わって、その中で、こちらの方向でというところでそこの方向性はかなり出てきて、それについて、表現上はわずかな表現だけれども、その背後にある意味というのはかなり大きなものであって、例えば特許法で言いますと「間接侵害」の独立か従属かとかいう問題も含めて、すべて背後にあった上でのちょっとした立法上の改正になるというイメージなのか、ちょっとその辺、すみません、前回欠席したものですから、御説明いただければ幸いです。

【中山主査】

 それでは、大渕座長、よろしいですか。

【大渕委員】

 これは、今御指摘があったとおり非常に難しい大論点であります。その辺を踏まえた上で、このような基本方針の下で、今後、今ご指摘のあったも含めてさらに総合的に検討を進めていくということなので、そういう意味ではすべてが対象になっております。

【中山主査】

 よろしいでしょうか。

【市川委員】

 はい。

【中山主査】

 ほかに、何かございましたら。
 末吉委員、どうぞ。

【末吉委員】

 今の市川委員の御質問を受けてと思ったのですが、私の理解としては、先回の御説明を伺っていて、これまでの判例法も踏まえて、その延長線上でさらに考えていこうということのようにお見受けしました。ですから、裁判実務に混乱をきたすとか、そういうことは全くないのではないかというふうに感想を持ちました。
 以上です。

【中山主査】

 ありがとうございました。
 市川委員がおっしゃるとおり、これは非常に大きい問題ですから、なかなか、最終までに行くにはかなりの紆余曲折、あるいは大きな作業が必要かと思いますけれども、その点はワーキングチームの方でよろしくお願いいたします。

【松田委員】

 たっぷり時間をかけた方がよろしいのではないですかね。

【中山主査】

 そうですね。
 ほかに、何か御意見がございましたら。
 最初に私が冒頭に「議事進行の方をよろしくお願いします」と申し上げたせいか、協力されすぎてしまったといいますか、ちょっと時間が余りましたので、全体を通じて何か御意見がございましたらちょうだいしたいと思います。
 どうぞ、末吉委員。

【末吉委員】

 この中間報告の内容とは全く関係ないことなんですが、一つ、今回の審議でちょっと私が感じたところなんですけれども、障害者の観点の権利制限でいろいろヒアリングもさせていただいて一つ感じたことは、もしかすると、必ずしも声の大きくない利害関係者というのがおられるような気がしました。
 というのは、ヒアリングなどを伺っていても、必ずしもその全貌が伺えたような心証では私はなかったということと、それから、今回はたまたまこういう点が論点でございまして、これはもう著作権課の方でいろいろなお声が上がっているかもしれませんが、なかなかこういう問題って声高に語れるものかどうか、ちょっと微妙なものもあるように思いましたので、できればこういう声をすくい上げるという方向感というか、そういうものはこれまでもお持ちだと思うのですけれども、今後とも著作権課に持っていただくと、こういう団体の方はすごく助かるのではないかなというふうに、ちょっと感想でございますが思いました。
 以上です。

【中山主査】

 ありがとうございました。
 その点、極めて重大な問題で、特に権利制限については、声なき声というのはあり得ると思いますね。
 例えば「デイジー図書」については非常に大事な問題だと思うのですけれども、つい最近まで声が小さく、ここに来て声が大きくなり、こういう議論ができたわけです。「デイジー図書」だけではなくてほかに、末吉委員がおっしゃったように、あるかもしれませんので、著作権課の方でもなるべくアンテナを広げていただければと思います。
 ほかに、全体を通じてで結構ですから、何かございましたら。
 よろしいでしょうか。
 それでは、きょうちょうだいいたしました御意見を参考にいたしまして、修正案を作成して、各委員にまた送付をさせていただくということにさせていただきたいと思います。
 具体的な修正の文言につきましてはお任せ願えればと思いますけれども、よろしゅうございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【中山主査】

 それでは、修正を加えまして、後日各委員にお送りしたいと思います。
 なお、取りまとめられました「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会中間まとめ」につきましては、10月12日に開催予定でございます文化審議会著作権分科会において私から報告して、分科会において審議をちょうだいした上で意見募集を行うことが予定されておりますので、御承知おきいただければと思います。
 最後に、私的録音録画小委員会における著作権法第30条の適用範囲の見直しにつきまして、事務局から説明をお願いいたします。

【川瀬著作物流通推進室長】

 それでは、参考資料3をごらんいただけますでしょうか。
 前回この法制問題小委員会でお配りしました資料は、9月13日に私的録音録画小委員会でお配りした資料の抜粋でございまして、その後の26日にさらに議論をしまして、その後の調整を経て、委員会としては、中間整理としては最終案ということでまとめたものを本日お配りしております。
 なお、文章の文言につきましては、幾つかの点で変更がございますけれども、内容、方向性については、前回説明したことから変わっておりませんので、御説明は省略させていただきます。
 なお、1点、5ページを開いていただけますでしょうか。5ページは検討結果で、違法録音録画物や違法サイトからの私的録音録画につきまして、30条からの適用除外をしてはどうかというくだりのところなのですが、その下の注釈の4を見ていただけますでしょうか。
 前回、中山主査の方から、YouTube等の投稿サイトについても違法になるのかというような御質問を受けまして、私、少し誤解をしまして、「そういうことになる」というような回答をしたのですが、投稿サイトについては、基本的にはいわゆるストリーミング配信サービスでして、ダウンロードを目的としているものではございませんので、今回の私的録音録画小委員会の検討につきましては、いわゆるダウンロードを伴うものということですので、投稿サイト等につきましては、ここにありますように一般にダウンロードを伴わないことが多いので検討の対象外ということでございまして、少し誤解を招く発言をしましたので、この場をお借りしまして訂正をさせていただきたいと思います。
 ただ、この注釈にも「ただし」がございますけれども、ネットワークの伝送の過程で行われる技術的手段として一時的蓄積が行われるわけですけれども、これにつきましては文化審議会著作権分科会で、仮に複製に該当するとしても、権利を及ぼすべきではないというような方向性の報告書が出ていますので、基本的にはそれについては問題ないということです。
 以上です。

【中山主査】

 ありがとうございました。
 私的録音録画小委員会の中間整理(案)につきましては以上のとおりですけれども、何かこの点について御質問がございましたらお願いいたします。
 よろしいでしょうか。
 それでは、若干時間が余りましたけれども、きょうの審議はこのくらいにしたいと思います。
 この中間まとめ(案)を各委員にお送りしたのがかなり遅くなってしまって、皆さんに正確に読んでいただける時間がなかったかもしれませんけれども、しかし、著作権課は人数が少ない中で大量の仕事を処理しておりまして、なかなか大変だということを御理解願えればと思います。
 それでは、最後に、事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】

 すみません、中間まとめ(案)を御送付するのが直前になってしまったことは本当に、こちらの不手際等ございましたので、お詫びを申し上げます。
 次回以降の日程でございますけれども、先ほども御紹介がありました文化審議会の著作権分科会の御意見等を踏まえまして、また、意見募集の結果等も踏まえまして、その後に開催を予定したいと思っております。日程はまだ調整中ですので、確定し次第、お知らせさせていただきたいと思っております。
 資料の準備につきましては、なるべく速やかに行うように努力したいと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【中山主査】

 今申し上げましたように、この審議会だけではなくてほかにもたくさん分科会があって、外から見ていましても本当にお役人は大変で、これ以上お願いすると体をこわすのではないかというぐらい大変なものですから、御理解願えればと思います。
 それでは、本日はこれで、文化審議会著作権分科会の第9回法制問題小委員会を終了させていただきます。
 本日はありがとうございました。

11時39分閉会

(文化庁著作権課)