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2.IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について

5. テレビ放送の同時再送信等にかかる著作権契約の現状

(1) 放送の同時再送信

 
1 放送事業者との契約

   放送事業者は、著作権法上、著作隣接権者として有線放送権及び送信可能化権を有する(注11)。また、2.でも触れたとおり、有線テレビジョン放送法及び電気通信役務利用放送法においても、事業者が放送を受信して同時再送信を行う場合には、放送事業者の同意が必要である旨が定められている。したがって、有線放送事業者又はIPマルチキャスト放送事業者が放送の同時再送信を行う場合には、最初に、放送事業者の許諾及び同意を得る必要がある。

 実際の契約処理については、有線放送による地上放送及びBS放送の同時再送信の場合、放送事業者は、第三者の契約処理を必要とする場合は有線放送事業者の責任で行うことや、放送内容に一切変更を加えないで再送信することなどを条件に、有線放送事業者に対して有線放送テレビジョン放送法に基づく再送信の同意を与えており、事実上はこれにより、放送事業者の著作隣接権としての有線放送(第99条第1項)の許諾も併せて与えていると考えられる。なお、CS放送事業者については、番組供給の契約形態であり、当該契約の中で許諾及び同意が与えられている。

 なお、IPマルチキャスト放送による地上放送及びBS放送の同時再送信については、現在のところ実態はないが、実際に再送信を行う場合は、同様の契約形態になると考えられる。

 
(注11)  局制作のドラマ等については、映画製作者として著作権者の立場でもある。

2 管理団体との契約

 
(ア) 地上放送及びBS放送の同時再送信

 
1 有線放送

   地上放送及びBS放送を受信してCATVによって同時再送信する場合については、社団法人日本音楽著作権協会(以下「JASRAC(ジャスラック)」という。)、協同組合日本脚本家連盟(以下「日脚連」という。)、協同組合日本シナリオ作家協会(以下「シナリオ作家協会」という。)及び社団法人日本文芸家協会((旧)社団法人日本文芸著作権保護同盟)(以下「文芸家協会」という。)の権利者4団体が、日脚連を窓口団体として個々のCATV事業者に包括的に許諾を与えており、区域内再送信と区域外再送信に区分した低率な使用料を一括徴収している。

 また、社団法人日本芸能実演家団体協議会(以下「芸団協」という。)については、実演家は放送の同時再送信について著作権法上の権利は与えられていないが、現行著作権法の制定以来、CATV事業者との契約に基づき、CATV事業者から実演利用の補償金を受領している(上記権利者4団体に芸団協を加えたこの契約は、一般に「5団体処理」と言われている)(注12)。

2 IPマルチキャスト放送

   地上波放送及びBS放送を受信してIPマルチキャスト放送によって同時再送信する場合については、現在、利用の実態がないため、権利者団体による著作権契約のルールはない。なお、実演家及びレコード製作者に係る契約については、現在、芸団協及び社団法人日本レコード協会(以下「レコード協会」という。)において、集中管理の整備を進めているところである。

 
(注12)  補償金の受領の可否については訴訟が提起されており、高裁では芸団協が勝訴したが、現在、最高裁で争われているところである。

(イ) CS放送の同時再送信

 
1 有線放送
   CS放送を受信してCATVによって同時再送信する場合については、JASRAC(ジャスラック)は、個々のCATV事業者と包括許諾による一括処理を行っている。日脚連、シナリオ作家協会、文芸家協会は、放送事業者等の番組提供者との契約の中で、CATV事業者がCS放送を受信して同時再送信することも含め許諾を与えている。

 また、実演家及びレコード製作者には、放送の同時再送信に関する著作権法上の権利はないが、局製作の番組をCS放送局に提供する際には、番組提供者は複製について権利者から改めて許諾を得なければならない。これについて、レコードに録音された実演及びレコードについては、芸団協及びレコード協会が番組提供者に包括的な許諾を与えている。なお、映像実演については、現在、当該複製について、実演家又はその所属事務所と番組提供者の間で個別処理による許諾が行われている。

2 IPマルチキャスト放送

   CS放送を受信してIPマルチキャスト放送によって同時再送信する場合については、JASRAC(ジャスラック)では、平成17年3月に関係団体間で合意された映像コンテンツをブロードバンド配信する場合の暫定料率を適用し、個々のIPマルチキャスト放送事業者に許諾を与えている。また、日脚連、シナリオ作家協会及び文芸家協会では、番組提供者との契約の中で、IPマルチキャスト放送事業者がCS放送を受信して同時再送信することも含め当該暫定料率に基づく許諾を与えている。

 また、実演家及びレコード製作者に係る契約については、放送の同時再送信であっても、CATVの場合と異なり、許諾権(送信可能化権)が働くことになるので、現在、個別処理による許諾が行われているが、芸団協とレコード協会において、集中管理の整備を進めているところである。

(2) 自主放送

 
1 放送事業者との契約(専用回線による送信を受信して行う送信(注13)のみ)

   専用回線による送信を受信して行う送信については、著作権法上の著作隣接権も放送法制上の同意権も働かないが、一般に、両者の間で番組供給契約が結ばれている。

 
(注13)  放送電波を直接受信する代わりに専用回線による送信を受信して、放送されている番組を同時に再送信する形態が存在するが、これについては、いわゆる自主放送に当たると整理される。

2 管理団体との契約

 
(ア) 専用回線による送信を受信して行う送信

  (1)の場合と同様の契約内容である。

(イ) 他人が製作した番組の提供を受け行う放送

 
1 有線放送

   放送番組を購入してCATVによって自主放送する場合については、JASRAC(ジャスラック)は、個々のCATV事業者と包括許諾による一括処理を行っている。日脚連、シナリオ作家協会、文芸家協会では、CATVによって自主放送することも含め、番組提供者に許諾を与えている。

 また、レコードに録音された実演及びレコードについては、(1)2(イ)(1)の場合と同様、芸団協及びレコード協会が放送番組の複製について個々の番組提供者に包括的な許諾を与えている。なお、映像実演については、個別処理による許諾が行われているが、現在、芸団協において集中管理の整備を進めているところである。

2 IPマルチキャスト放送

   放送番組を購入してIPマルチキャスト放送する場合については、現在、利用の実態がないため、権利者団体による著作権契約のルールはない。なお、芸団協とレコード協会においては、集中管理の整備を進めているところである。

(ウ) 自主制作番組の放送

 
1 有線放送

   自主制作番組をCATVによって有線放送する場合については、JASRAC(ジャスラック)では、個々のCATV事業者と包括許諾による一括処理を行っている。自主制作番組は、地域紹介用に製作されるものが多く、文芸や脚本に関する利用は想定されないことから、日脚連、シナリオ作家協会、文芸家協会の権利者団体との著作権契約のルールはない。また、商業用レコードを用いて有線放送を行った場合については、実演家及びレコード製作者に商業用レコードの二次使用料が支払われることになっている。なお、映像実演については、現在、個別処理による許諾が行われている。

2 IPマルチキャスト放送

   自主制作番組をIPマルチキャスト放送する場合の著作権契約のルールは、JASRAC(ジャスラック)、日脚連、シナリオ作家協会、文芸家協会では、自主制作番組のCATVによる有線放送の場合と同様であるが、実演家及びレコード製作者に係る契約については、現在、個別処理による許諾が行われている。なお、現在、芸団協において集中管理の整備を検討中である。

(3) ビデオ・オン・デマンド(VOD)サービス

   放送番組のVODサービスについては、平成17年3月に関係団体間で合意された映像コンテンツをブロードバンド配信する場合の暫定料率を適用して許諾を行っており、JASRAC(ジャスラック)、日脚連、シナリオ作家協会、文芸家協会では、平成18年度以降も引き続き同料率を適用している。

 一方、芸団協とレコード協会では、従来は個別処理で行ってきたが、現在、集中管理の整備を進めているところである。

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